広告ではないけど,実は広告です(酒寄孝治)

広告ではないけど,実は広告
です
質問:地域のコミュニティ新聞に,掲載
料を払えば取材を受けて記事にしてもら
えるコーナーがあります.このコーナー
を広告の代わりにすれば,広告規制の対
社会歯科学研究会
東京歯科大学
酒寄孝治
さ か よ り た か は る
象にはならないのでしょうか?
■広告でなくても実質的な内容から
広告と判断される
医療機関名を記載していれば要件を
有するものとはされないため,広告
回避することはできません.また,
には該当しません.
2月号の本稿において,医療機関
「広告規制のため,具体的な医療機
また,医療機関内の掲示や医療機
の広告は医療法で規制されているこ
関名は記載できません」といった記
関内で配布するパンフレットなどは,
とを取り上げ,広告とは,①患者の
述をしても,住所や電話番号等の情
情報の受け手がその医療機関の利用
受診等を誘引する意図があること
報から医療機関の特定が可能であれ
者 に 限 定 さ れ る こ と か ら,「 認 知
(誘因性),②医業・歯科医業を提
ば,それは「特定性」を回避できる
性」を満たすものではありません.
供する者の氏名・名称,病院・診療
ものではありません.
しかし,例えば医療機関内でも窓ガ
所の名称が特定可能であること(特
ラスに外から見える状態に掲示し,
定性),③一般人が認知できる状態
■通常の新聞・雑誌の記事は広告規
制の対象とならない
にあること(認知性),の3要件を
通常の新聞・雑誌等の記事は,こ
ではこの限りではありません.
満たすもの,と解説しています.
の3要件のうち「誘因性」を有さな
通常は広告とみなされないもので
今回の質問の場合はどうでしょう
いため原則として広告には該当しな
あっても,実質的に広告の要件を満
か.医療機関側が“掲載するための
いものとされています.医療広告ガ
たす場合には広告と判断され,不適
費用を負担して,記事の作成を依頼
イドラインでは,
「誘因性」の有無
切な広告には罰則も適用されます.
している”ことから,患者を誘引す
は「広告に該当するか否かを判断す
医療法上,医療機関の広告は“医
る意図がある,すなわち「誘因性」
る情報物の客体の利益を期待して誘
療に関する(患者の)選択の支援”
があると判断されます.もちろん
引しているか否かにより判断する」
のためのものと位置付けられていま
「特定性」「認知性」も満たします
とされ,新聞・雑誌の記事が特定の
す.適切な医療機関が選択できるよ
から,いわゆる「記事風広告」とし
医療機関を推薦している内容であっ
うに“広告が可能な内容”の拡大も
て広告に該当するため,医療広告ガ
たとしても,通常の取材に基づく客
行われてきましたが,患者の不利益
イドラインを遵守しなければなりま
観的な事実を記した記事であれば
にならないようルールに沿った適切
せん.もし,記事の中に,
「これは
「誘因性」の要件を満たさないもの
な広告をしなければなりません.
広告ではありません」
,
「これは取材
となっています.
に基づく記事であり,患者を誘引す
新聞・雑誌の記事以外にも,学術
詳しくはヒョーロン社刊『歯科五
るものではありません」といった記
論文,患者の体験談・手記,職員募
法コンメンタール』の143 ~ 149頁
述をいれてあったとしても,実際に
集に関する広告などは「誘因性」を
をご参照ください.
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THE NIPPON
Dental Review
Vol.75 No.11(2015 -11)
不特定多数が認知できるような状況
*