自動詞からの受動 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1. Dem Vater wird von dem Sohn gedankt. 父親は息子から感謝される。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 受動表現のポイントは, (イ)過去分詞プラス werden の形式を用いる (ロ)能動文の4格目的語が受動文の主語(1格)になる の2点です。その際に取り上げられた動詞は,当然のことながら,4格目的語をとる動詞 (=他動詞)のみでしたが,4格目的語をとらない動詞(これらをひっくるめて「自動 詞」と呼びますが)はどうなのかという疑問が出てくるものと思います。前もって結論を 述べるならば,「4格目的語をとらない動詞(=自動詞)も,人間の行為が感じられる場 合には受動形を作ることができる」のです。 他動詞のときに学んだ(a)受動の不定形は過去分詞プラス werden,(b)能動文の主語 (=動作主)は必要に応じて「von+3格」で表すという点は自動詞の場合も同一です。 問題は,自動詞から作る受動文における主語をどうするかです。自動詞は4格目的語をも たない動詞なのですから,受動文の主語にするものがないわけです。これには2つの「解 決方法」があるのですが,それを具体的に説明してみましょう。たとえば次のような3格 目的語をとる自動詞文を見てください。 2. Der Sohn dankt dem Vater. 息子は父親に感謝する。 1つの「解決方法」は,主語のことなど考えず,動詞を受動形にし,定形の動詞が第2位 であることを考えながら,適当な語句(たとえばこの場合は dem Vater)を文頭に置けば よいのです。そうしてできたのが上にも挙げた例文1なのです。 1.Dem Vater wird von dem Sohn gedankt. 注意すべき点は,日本語では「父は」というように主語として考えられる Vater もあくま で能動文の場合と同一の3格にすることなのです。受動文の主語(1格)になるのは能動 文における4格目的語のみでしたね。 他の「解決方法」は非人称主語 es を用いることです。これを上例1にあてはめると次の ようになります。 3. Es wird dem Vater von dem Sohn gedankt. 1 表現内容上,文例1と文例3とでは微妙な差異がありますが,みなさんは意味は本質的に 同じであると考えておいてください。この es はただし文頭にのみ置くことができるので, 文例1のように他の語句が文頭に置かれる場合には,この es は省かなければなりません。 また逆に,自動詞を受動形にした場合,文頭に置けるものがなにもないときには必ずこの es を用いなければなりません(文例5参照)。 以上で説明は終えることにし,次に2つほど実例を挙げますので,しっかり学んでくださ い。 4. Wir hoffen auf gutes Wetter. 私たちは好天を待ち望んでいる。 → a. Auf gutes Wetter wird [von uns] gehofft. 好天が待ち望まれている。 → b. Es wird auf gutes Wetter [von uns] gehofft. (意味は同じ) 5. Man* tanzt. → a. [誤]Wird getanzt. → b. Es wird getanzt. ダンスが行われる。 *能動文の主語 man は主語を明示しないためのものですから,受動文では表現されることがありません。 最後になりますが,自動詞の受動文においては非人称主語 es を用いても用いなくとも必ず 定形の動詞は,3人称単数になります。 2
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