275(vol.5).qxd 05.12.9 5:00 PM ページ 275 家具等の転倒防止 成16年に発生した新潟県中越地震、平成15年に発生した宮城県北部を震源とする地震及び十勝沖地震等 平 人的被害を伴った地震が度々発生しています。これらの地震においては負傷原因のうち、家具類の転倒・ 落下による負傷が3割から5割と大きな割合を占めており、対策が必要とされています。 東京消防庁は、転倒防止対策の実施率を向上させるため「転倒防止器具の取付け方法や安全な家具の置き方 に関する指導指針」を策定し、転倒防止に関する項目を整理しています。 人命に関する重要な項目として、リフォームに際し活用されることをおすすめします。 ■転倒防止器具の種類 L型金具 ベルト式、チェーン式、ワイヤー式、プレート式 ポール式(つっぱり棒式) 家具と壁をネジによって固定するタイプ 家具と壁をそれぞれネジ止めした金具を ベルト、金属チェーン、ワイヤー、金属 プレートといったもので結んだタイプ ネジ止めすることなく、家具と天井の隙間に 設置する棒状のタイプ マット式(粘着マット式) ストッパー式 家具の前下部にくさび状に挟み込み、家具を 壁側に傾斜させるタイプ 粘着性のゲル状のもので、家具の底面と床面 を接着させるタイプの器具 ■家具転倒防止器具の効果に関するイメージ (平成16年11月15日 公表) 効 果 備 考 ・L型金具② (スライド式) ・L型金具① ・ベルト式① (下部固定タイプ) ・プレート式 家具、壁面の取付 け部分や器具自体 に十分な強度が必 要。 ・ベルト式② (上部固定タイプ) 単独で使用 した場合 ・L型金具③ (下向き取付け) ・ベルト式③ (金具プラスティック製) ・チェーン式 ストッパー式 豆 知 識 ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 1 マット式 組み合わせて 使用した場合 (一例) ポール式 (つっぱり棒式) ポール式 + マット式 ポール式 + ストッパー式 家具の天板と天井 部分に強度が必 要。 備考:今回の実験では、家具に食器棚(H1800mm,D896mm,W406mm、重量64.5kg、内容物50kgオモリ)を使用し、床面はフ ローリングとしています。壁・天井等は固定に十分耐えられる強度を確保しています。また、使用した器具等は同型の製品でも材質、 形状等が異なることがあります。 これらのことから、使用する家具、室内環境、器具の諸元により、今回の結果が異なる場合も想定されます。 (東京消防庁による家具の挙動と転倒防止器具の検証より) 275 276(vol.5).qxd 05.12.9 5:00 PM ページ 276 ■家具類の転倒防止対策をした住まい方のイメージ 連結金具 ガラス飛散防止フィルム チェーン式転倒防止器具 扉解放防止装置(振動感知式) (振動感知式 振動感知式) ビン類落下防止具 扉解放防止装置(チェーン式) ストッパー式器具 つり下げ式照明器具の補強 ポール式器具 ポール式の固定補強 ガラス飛散防止フィルム 防炎カーテン L型金具(転倒防止) 豆 知 識 ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 2 避難経路の確保 ● 寝室には家具を置かないこと が望ましいが、家具を置く場 合は避難経路をふさがない配 置とします。 ガラス飛散防止(家具) (東京消防庁の資料より) 276 277(vol.5).qxd 05.12.9 5:00 PM ページ 277 ■転倒防止器具の取付け方法 対象家具−衣装タンス、整理タンス、食器戸棚、本棚等の家具類 (1)ネジ止めする器具を使用する場合の使用例 1 4 壁面への転倒防止対策の実施例 下地材 ベルト式、チェーン式等の 設定位置の推奨例 a寸法は小さい程良い 悪い例 付鴨居・横木 下地材 良い例 90°> L型金物 a 家具 家具 広がらない 家具 横木 家具 L型金物 90° 木ねじ 2本止め 下地材 30°までを目やすとし、 急勾配にならない L型金具を直接壁下地に固定する 2 ボード L型金具の下向き取り付けの実施例 家具 家具 下地材 下地材 1,2 柱や鴨居がある場合には、強度を確認し金具 等で固定する。 家具 L型金具を下向きに 取り付ける場合 L型 3 家具の上面後部にしっかりとした桟が入って いないものについては、板を渡して強度を確 保し金具を取付ける。 断面図 4 3 家具側に桟がない場合の転倒防止対策の実施例 両側と奥で 家具に固定 B 家具 B断面 チェーン式、ワイヤー式、ベルト式は、家具 側の設置位置と壁側の設置位置が近いほど固 定強度が高い。 壁 ねじが効いている L型金具を板に固定 板厚さ12mm以上 家具幅に板を渡す(厚さ12以上) (2)ネジ止めしない器具による転倒防止器具の使用例 1 豆 知 識 ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 3 天井との間隙を収納ユニットで埋める例 天井 天井 収納ユニット 1 上下可動 収納ユニット 落下防止 家具 家具 上下すき間埋め収納家具で突っ張る方法 277 家具上部を収納ユニット等で家具本体と金具 で結合し、揺れによる脱落を防止する。 2+3 ポール式とストッパー式又はマット式器具を 併用。ポール式は天井との間隙が少ないこと が前提。特に大型家具は、ポール式+ストッ パー式又はポール式+マット式の併用が効果 的。 278(vol.5).qxd 05.12.9 5:01 PM ページ 278 2 ポール式転倒防止器具の設置例 奥に設置する 家具の両側の 側板部に設置 良い例 悪い例 天井との空きが少ない 天井との空きが大きい 家具 家具 家具 良い例 天井に面で力が加わるようにする 3 厚めの板を掛け渡す ストッパー式器具の設置例 天井 竿縁に掛かるようにする 竿縁天井の場合 ■家具の転倒による被害を拡大させないための対策 1 1 扉解放防止装置の例 収容物等の散乱防止 2 窓ガラスの破損防止 天板側 ガラス戸の破損・収容物の散 乱防止 3 上部家具の転落防止 底板側 チェーン式 2 振動感知式 ガラス飛散防止フィルムの貼付 プッシュ式 3 上下積み重ね家具の固定方法の例 横木に固定 下地材 横木 豆 知 識 家具 下段を固定 横木 下段 下段も横木に固定する ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 4 (東京消防庁 転倒防止器具の取付方法や、安全な家具の置き方に関する指導指針より) 278 279(vol.5).qxd 05.12.9 5:01 PM ページ 279 ■安全な家具の置き方 避難経路の確保 家具の配置と就寝位置 出入口 就寝部分 ドアが開かない 転倒 家具の高さ以上 就寝部分 家具 転倒 転倒 避難できない 悪い例 家具の側方が就寝部分 距離を家具の高さ以上確保 出入口 出火防止対策 ドア開放 吊戸棚 家具 転倒しても避難できる 転倒 落下 出火を防ぐ 家具 転倒 コンロ ストーブ 被害を拡大させない 良い例 家具の前面に置かない 対策のポイント 対策のポイントを以下に整理します。 【家具を固定する】 ●転倒防止対策の基本は、ネジによる固定である。その場合、家具を固定する対象は、 壁下地の柱、間柱、胴縁等とする。 ●木ネジは長めを使用する。 ●家具の転倒防止対策としては、L型金具で固定する方式が、もっとも安定した方法 である。 ●付鴨居は、強度が確認された場合、これに固定することが可能である。 ●ネジ止めしないタイプの転倒防止器具を使用する場合は、家具の上部と下部に対策 を実施する。 【その他の対策】 豆 知 識 ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 5 279 ●開き戸タイプの家具は、扉解放防止器具を取付ける。 ●ガラス扉には飛散防止フィルムを貼る。 【安全空間を確保する】 ●就寝する部屋には家具を置かない。ただし、置く場合は、頭の近くに置かないなど 就寝位置にも注意する。 ●避難経路をふさがない位置に家具を配置する。 ●重いものは下のほうに収納する。 ●上下2段式の家具などやむを得ず積み重ねる場合は金具などで連結する。 ●家具の上に物を置かない。 ●火気の周辺に家具を置かない。 280(vol.5).qxd 05.12.9 5:01 PM ページ 280 ■気象庁震度階級関連解説表 計測震度 震度階級 人間 屋内の状況 屋外の状況 木造建築 鉄筋コンクリート建造物 ライフライン 耐震性の低い 建物では、壁 などに亀裂が 生じるものが ある。 安全装置が作動 し、ガスが遮断 される家庭があ る。まれに水道 の被害が発生 し、断水するこ と が あ る 。[ 停 電する家庭もあ る。] 地盤・斜面 0.5 0 人は揺れを感 じない。 1.5 1 屋内にいる人の 一部が、わずか な揺れを感じる。 2 屋内にいる人の 多くが揺れを感 じる。眠ってい る人の一部が目 を覚ます。 3 屋内にいる人 棚にある食器 電線が少し揺 の ほ と ん ど が 類 が 音 を 立 て れる。 揺れを感じる。 ることがある。 恐怖感を覚え る人もいる。 4 かなりの恐怖感 があり、一部の 人は、身の安全 を図ろうとす る。眠っている 人のほとんどが 目を覚ます。 吊り下げ物は 大きく揺れ、 棚にある食器 類は音を立て る。座りの悪 い置物が倒れ ることがある。 電線が大きく揺 れる。歩いてい る人も揺れを感 じる。自動車を 運転していて、 揺れに気付く人 がいる。 多くの人が、 身の安全を図 ろうとする。 一部の人は、 行動に支障を 感じる。 吊り下げ物は激 しく揺れ、棚に ある食器類、書 棚の本が落ちる ことがある。座 りの悪い置物の 多くが倒れ、家 具が移動するこ とがある。 窓ガラスが割れて 落ちることがある。 電柱が揺れるのが わかる。補強され ていないブロック 塀が崩れることが ある。道路に被害 が生じることがあ る。 耐震性の低い 住宅では、壁 や柱が破損す るものがある。 立っているこ とが困難にな る。 固定していな い重い家具の 多くが移動、 転倒する。開 かなくなるド アが多い。 かなりの建物 で、壁のタイ ルや窓ガラス が破損、落下 する。 耐震性の低い 住宅では、倒 壊するものが ある。耐震性 の高い住宅で も、壁や柱が 破損するもの がある。 立っているこ とができず、 這わないと動 くことができ ない。 固定していな い重い家具の 多くが移動、 転倒する。戸 が外れて飛ぶ ことがある。 多くの建物で、 壁のタイルや 窓ガラスが破 損、落下する。 補強されてい ないブロック 塀のほとんど が崩れる。 耐震性の低い 住宅では、倒 壊するものが 多い。耐震性 の高い住宅で も、壁や柱が かなり破損す るものがある。 地割れや山崩 耐 震 性 の 低 い ガスを地域に送 れ が 発 生 す る 建 物 で は 、 倒 る た め の 導 管 、 ことがある。 壊 す る も の が 水道の配水施設 あ る 。 耐 震 性 に被害が発生す の高い建物で ることがある。 も 壁 や 柱 が 破 [一部の地域で停 損 す る も の が 電する。広い地 域でガス、水道 かなりある。 の供給が停止す ることがある。] 揺れに翻弄さ れ、自分の意 志で行動でき ない。 ほとんどの家 具が大きく移 動し、飛ぶも のもある。 ほとんどの建物 で、壁のタイル や窓ガラスが破 損、落下する。 補強されている ブロック塀も破 損するものがあ る。 耐震性の高い 住宅でも、傾 いたり、大き く破壊するも のがある。 耐 震 性 の 高 い [広い地域で電 建物でも、傾 気、ガス、水 いたり、大き 道の供給が停 く 破 損 す る も 止する。 ] のがある。 2.5 3.5 4.5 5.0 5弱 非常な恐怖を 感じる。多く の人が、行動 に支障を感じ る。 5.5 6.0 6.5 5強 6弱 6強 7 電灯などの吊 り下げ物が、 わずかに揺れ る。 軟弱な地盤で 亀裂が生じる 棚 に あ る 食 器 補強されていな 耐 震 性 の 低 い 耐 震 性 の 低 い 家 庭 な ど に ガ こ と が あ る 。 類、書棚の本の いブロック塀の 住 宅 で は 、 壁 建物では、壁、 ス を 供 給 す る 山 地 で 落 石 、 多くが落ちる。 多くが崩れる。 や柱がかなり 梁、柱などに た め の 導 管 、 小さな崩壊が テレビが台から 据付が不十分な 破 損 し た り 、 大 き な 亀 裂 が 主 要 な 水 道 管 生 じ る こ と が 落ちることがあ 自動販売機が倒 傾 く も の が あ 生 じ る も の が に 被 害 が 発 生 ある。 る。タンスなど れ る こ と が あ る。 ある。耐震性 することがあ 重い家具が倒れ る。多くの墓石 の 高 い 建 物 で る。[一部の地 る こ と が あ る 。 が倒れる。自動 も、壁などに 域でガス、水 変形によりドア 車の運転が困難 亀裂が生じる 道の供給が停 が開かなくなる となり、停止す 止することが ものがある。 ことがある。一 る車が多い。 ある。] 部の戸が外れ る。 耐震性の低い建 物では、壁や柱 が破壊するもの がある。耐震性 の高い建物でも 壁、梁、柱など に大きな亀裂が 生じるものがあ る。 ※ライフラインの[ ]内の事項は、電気、ガス、水道の供給状況を参考として記載したものである。 家庭などにガス を供給するため の導管、主要な 水道管に被害が 発生する。[一部 の地域でガス、 水道の供給が停 止し、停電する こともある。] 大きな地割れ、 地すべりや山 崩れが発生し、 地形が変わる こともある。 豆 知 識 ● 家 具 等 の 転 倒 防 止 6 (気象庁資料より) 280
© Copyright 2024 Paperzz