なパワーの差ははっきりしない. 中速で踏んだ時にちょっとは力 CG 強いかなという程度のものであ ROAD IMPRESSIONS る.むしろ実用上の差は始動時 に出る.70 までのキャブレター 仕様だと,冬でなくてもコールドスタートにはチョークを要する ことが多いが,今度の 75 は簡潔なボッシュ・シングルポイント燃 料噴射なので,ただキーをひねればブーッとかかる.水温が上が るまでの息つきもない.エンジンマウントは75のほうが少し柔ら かく,急に踏んだり離したりした時のスナッチに関しては 70(そ んな嫌らしさがない)のほうがいい.シフトの感触も 70 のほうが カッチリしている. 1300cc の 70SL(向こう側)と並んだ 75SX.ホイールカバーの丸孔.ホイールアーチのトリ ム.フォグライトが SX 仕様の特徴.これほどストンとしたラインで,しかも明瞭な存在感 を打ちだしたところに,ウーノ・デザインの非凡さがある. ■軽快なイタリア式フットワーク エンジンが少し大きくなったぐらいでは,鼻先が重くなった感 小さな大型 FIAT UNO 75SX 触は出ていない.70とのハンドリングの違いは主にタイアによる もので,ピレリ P8(165/65R13 76T)は非常にしっかりしており, ガチッとした接地感が増した. コーナーでは依然として腰高だが, だからといって不安や危険の要素はない.しなやかさが売りもの ■最大排気量のウーノ のサンクなどにくらべ,パキッとした身軽さがウーノの特徴であ ヨーロッパ小型車の三本柱といえばゴルフ,サンク,それに る.ほかには,低速から中速にかけてのリアのポンポン感が,70 ウーノ.このうちゴルフは,もはや GAISHA!ではないといえるほ より少し減った.いっぽう,左右にすばやく切り返すようなとこ ど普及したが,なぜかルノーとフィアットが,本来の実力不相応 ろでは,細い P4(155/70-13)を履く 70 のほうが,ヒラリの一発 にくすぶっているのが気になるところ.もっともっと力を入れて を決めやすい. ほしいと思っていたら,ウーノ販売の元締めチェッカーモーター ス(Tel.03-722-3721)から,最高級バージョンともいうべき “75SX”が発売された. ■燃費よし 装備も充実 でも少し値上げ 約1000kmにわたったテスト期間の総平均燃費は13km/l,合法的 ウーノには 45,60,70 といったノーマル系列と,スポーツ版と なハイウェイ・クルージングでは 17.3km/l,アウトストラーダを してのターボ i.e. やアバルト・ターボがあるが,今度の 75SX は 飛ばしたとすると 14.4km/l,一般的な市街地や郊外道路の総合で ノーマルのほうのトップに位置するもの.もっとも,ノーマルと は 10 ∼ 11km/l と,いつでも非常に良かった.同行した 70 は基本 かファミリーとかいっても,さすが欧州を席巻したフィアットの 的にこれよりもっと経済的だが,さすがに高速でのトルクの余裕 小型車だけあって,どれひとつ取っても活発なエンジン,しゃ と若干のハイギアリングのため,ハイウェイでは 75 が有利だっ きっとしたシャシー,広く明るく趣味の良いインテリアなど,ほ た.かっ飛ばしても燃費がいいというのは,ヨーロッパ車の大き とんど万能のラナバウトばかりである. な美点である. 75SXはシリーズ最大の1498ccエンジンを積む.パワーはその名 “SX”というのはウーノの万全装備版の意味.その下の SL でも のとおり75HP/5600rpm.日本で売られるウーノはこれまで1300cc 集中ドアロック,フロント電動ウィンドー,マップライトなどは が最大で,もともと 1l 以下のファイア・エンジンでも,ぶん回せ 揃い,シートも質の良い布で張られるなど,すでに充分な状態だ ばコマネズミのようにめまぐるしく走れるのが身上だけに,それ が,これにデジタル計器類(最近のフィアットは日本車以上にこ はそれで充分あるいは充分以上だった.でも,いつでも思い切り れが好き)やフォグライトなどを加えたのが SX である.コール天 踏めるヨーロッパとは違い,渋滞での発進・停止の繰り返しや低 のシートはとても気分がよろしい. 速域での加減速が多い日本では, やはり排気量の余裕がいちばん, 価格は 3ドアが 218 万円,5ドアが 228 万円で,もうプジョー 205 そこで従来は西ドイツ/スイス市場に出ていた1500を,こちらに やルノー・サンクとの差はほとんどない.5ドアでも189 万円とい も持ってきたものである(ブラジル製のアルコール・フィアッチ う 70 のほうが,やはり買い得の印象は強い. も 1500 を積む) . (report =熊倉重春/ photo =内山 勇) ■高速巡航に余裕 70(1300cc)にくらべてプラス 200cc の差は高速加速の余裕に 歴然と現われる.70 だってけっこう活発ではあるのだが,たとえ ば 90km/hぐらいから 5 速のままグッと行きたい時,70 が床まで踏 むところを,75なら7分目ほどですむという程度の違いはあって, 高速巡航の心理的安楽さがかなり大きくなる.ギア比は75のほう がわずかながら高く,それでも加速感がいいのだから,これはか なりの余裕ぶりである.反面,それ以外のパターンでは,決定的 一見キャブレターふうだが, 実は 1ポイント・インジェク ション(集約噴射と呼んだ ほうがカッコイイか)の 1500cc エンジン. CG8808117
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