NMCC共同利用研究成果報文集13 (2005) CCA 防腐処理材の Cr,Cu,As の含有量 千 葉 啓 子 1 ), 内田信平 1 ), 本間義規 1 ), 世 良 耕 一 郎 1) , 齋藤勝美 3 ) 2) 岩手県立大学盛岡短期大学部生活科学科 02 0 -0 19 3 岩 手 県 岩 手 郡 滝 沢 村 滝 沢 字 巣 子 1 52 - 52 2) 岩手医科大学サイクロトロンセンター 02 0 -0 17 3 岩 手 県 岩 手 郡 滝 沢 村 滝 沢 字 留 が 森 3 48 - 58 3) 秋田県環境センター 01 0 -8 57 2 秋 田 県 秋 田 市 山 王 3 - 1 -1 1 はじめに ヒ 素 系 防 腐 剤 ( 以 下 C C A と 記 す ) は 木 材 の 防 腐 ・防 蟻 性 能 に 優 れ ,3 0 年 以 上 の 耐 久 性 が 確 保 さ れ る こ と か ら ,わ が 国 で も 1 96 0 年 代 半 ば か ら 1 9 9 0 年 代 に か け て C C A 処 理 さ れ た 木 材 が家屋の土台部分やエクステリアなどに多用された 理廃材の環境負荷の大きさ 3) 1) 。 そ の 後 ,薬 剤 の 毒 性 2) の 他 ,C C A 処 な ど か ら CCA 使 用 の 自 粛 や 新 薬 剤 ( 銅 系 保 存 剤 他 ) へ の 切 り 替 え が 行 わ れ た 。か つ て C CA 処 理 材 を 住 宅 土 台 な ど に 使 用 し た 家 屋 は 築 30 ~ 4 0 年 を 経 て , 現 在 ,解 体 時 期 を 迎 え つ つ あ り ,今 後 ,こ れ ら の 家 屋 の 解 体 が 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 そ こ で , CCA 処 理 材 を 含 む 建 築 廃 棄 物 の 処 理 方 法 を 検 討 し , 廃 材 の 再 生 利 用 に お け る 安 全 性 の 確 保 す る こ と を 目 的 に 研 究 を 実 施 し た 。 今 回 は , CCA 処 理 材 の 表 層 部 と 中 心 部 , 廃 木 材 お よ び 廃 イ ン シ ュ レ ー シ ョ ン ボ ー ド に 含 有 す る 元 素 を P IX E 法 に よ り 分 析 し ,CC A 処 理 材 に 含 有 す る Cr, Cu, As の 量 を 比 較 検 討 し た 。 さ ら に CCA 処 理 材 中 の As に つ い て は , そ の 化学形態についても検討したので合わせて報告する。 2 対象と方法 試 料 は 岩 手 県 内 の C C A 木 材 防 腐 処 理 業 者 よ り 提 供 さ れ た , C CA 処 理 を 施 し た ス ギ 材 , 中 間 処 理 場 か ら 採 取 し た 破 砕 廃 木 材 ,破 砕 廃 イ ン シ ュ レ ー シ ョ ン ボ ー ド で あ る 。こ れ ら 試 料 は ,カ ッ テ ン グ ミ ル に よ り 直 径 0 .5 m m の 木 粉 と し た 。C C A 処 理 を 施 し た ス ギ 材 に つ い て は , 表 面 か ら 約 10mm を は ぎ 取 っ て 表 層 部 , 芯 か ら 左 右 約 30mm を 芯 部 と し て 木 粉 を 作 成 し た 。 PI X E 分 析 の た め の 木 粉 の 前 処 理 は , F ut a ts ug a wa ら 4) の硝酸-マイクロウェーブ法を用 い た 。 こ こ で は , 木 粉 約 50 mg を テ フ ロ ン 製 の 小 型 分 解 容 器 に 入 れ , こ れ に 硝 酸 1m L と 内 169 NMCC共同利用研究成果報文集13 (2005) 部 標 準 物 質 と し て I n 10 0 0m g/ L 標 準 液 を 木 粉 に 対 し て 1 00 0 μ g / g に な る よ う に 加 え た 。 こ れ を 出 力 1 70 W の オ ー ブ ン で , 2 分 加 熱 , 1 0 分 放 置 , 2 分 再 加 熱 し て 分 解 し た 。 P IX E 分 析 用 の 照 射 試 料 は , 厚 さ 4μ m の ポ リ プ ロ ピ レ ン 製 の バ ッ キ ン グ フ イ ル ム を 貼 り 付 け た タ ー ゲ ッ ト フ レ ー ム に , 分 解 液 を 10μ g 滴 下 し て 作 成 し た 。 P IXE 分 析 は ,( 社 ) 日 本 ア イ ソ ト ー プ 協 会 仁 科 記 念 サ イ ク ロ ト ロ ン セ ン タ ー で 行 っ た 。 小 型 サ イ ク ロ ト ロ ン か ら の 2 . 9M e V の 陽 子 ビ ー ム ( 6 m m φ ) を 真 空 チ ャ ン バ ー 内 で 照 射 試 料 に照射し,これにより発生した特性 X 線を低エネルギー用と高エネルギー用の 2 台の Si ( Li ) 検 出 器 で 同 時 に 測 定 し て X 線 ス ペ ク ト ル を 得 た 。ス ペ ク ト ル か ら 検 出 元 素 の ピ ー ク 面 積 を 解 析 す る に は 解 析 プ ロ グ ラ ム ” S AP I X ” 5 ) ,ピ ー ク 面 積 か ら 定 量 値 を 求 め る に は 内 部 標準法 4) によった。 ヒ 素 の 化 学 形 態 分 析 は , C CA 処 理 を 施 し た ス ギ 材 の 表 層 部 と 芯 部 を 対 象 に , 形 態 別 砒 素 前処理装置付き原子吸光光度計で行った。 3 結果と考察 Ta b le 1 に P IX E 分 析 を 行 っ た 試 料 中 の C r , Cu , A s を は じ め と す る 元 素 含 有 量 を 示 し た 。 な お , 表 中 の 含 有 量 は 試 料 を 1 10 ℃ で 4 8 時 間 乾 燥 さ せ て 求 め た 含 水 率 で 補 正 し て い る 。 C CA 処 理 材 は 廃 木 材 お よ び 廃 イ ン シ ュ レ ー シ ョ ン ボ ー ド に 比 べ て , C r , Cu , As の 含 有 量 が 極 め て 高 く ,表 層 部 で は C r は 1 50 0 倍 ,C u は 3 0 0 0 倍 ,A s は 7 00 0 倍 と な っ て い る 。 芯 部 で も , Cr と Cu は 20 0 倍 , As は 13 00 倍 で あ る 。 表 層 部 に お け る Cr , C u , As の 含 有 比 は 1: 2 :1 と Cu が 最 も 多 か っ た 。 一 方 , 芯 部 で の こ れ ら 3 元 素 の 含 有 比 は 1 :1 :2 と A s が 最 も 多 か っ た 。 こ の こ と は , As が Cr や Cu に 比 べ て 木 材 に 浸 透 し , 定 着 し て い る こ と を示唆している。 1 Table 1 Elemental content (mg/g dry weight) in timber waste * Element Na Mg Al Si P S Cl K Ca Ti V Cr Mn Fe Ni Cu Zn As Br Rb Sr Pb Surface of CCA 2 <LOQ* <LOQ 0.207 ± 0.026 0.756 ± 0.053 0.183 ± 0.030 0.227 ± 0.014 <LOQ 0.306 ± 0.033 2.92 ± 0.18 0.027 ± 0.003 <LOQ 5.73 ± 0.30 <LOQ 0.877 ± 0.056 <LOQ 11.1 ± 0.2 0.247 ± 0.015 6.70 ± 0.51 <LOQ 0.077 ± 0.008 0.031 ± 0.004 <LOQ Mean ± SD Center of CCA General timber <LOQ 0.181 ± 0.033 <LOQ 0.236 ± 0.017 0.058 ± 0.007 0.293 ± 0.031 0.042 ± 0.001 1.49 ± 0.23 <LOQ 0.037 ± 0.008 0.063 ± 0.007 0.244 ± 0.029 <LOQ 0.051 ± 0.009 0.442 ± 0.058 1.02 ± 0.01 0.843 ± 0.066 1.88 ± 0.07 <LOQ 0.041 ± 0.015 <LOQ <LOQ 0.775 ± 0.030 0.004 ± 0.001 <LOQ 0.058 ± 0.004 0.179 ± 0.008 0.527 ± 0.046 <LOQ 0.001 ± 0.0 0.699 ± 0.028 0.004 ± 0.0 0.005 ± 0.0 0.026 ± 0.006 1.27 ± 0.07 0.001 ± 0.001 <LOQ 0.001 ± 0.001 0.003 ± 0.0 0.002 ± 0.0 0.011 ± 0.001 0.009 ± 0.0 <LOQ 0.002 ± 0.001 1 2 Insulation board 0.251 ± 0.006 0.035 ± 0.006 0.926 ± 0.020 0.349 ± 0.064 0.032 ± 0.008 0.652 ± 0.052 <LOQ 0.467 ± 0.039 1.78 ± 0.03 0.069 ± 0.003 0.001 ± 0.0 0.002 ± 0.0 0.039 ± 0.0 0.164 ± 0.012 <LOQ 0.003 ± 0.0 0.014 ± 0.0 0.001 ± 0.0 <LOQ 0.001 ± 0.0 0.009 ± 0.0 0.001 ± 0.001 * : Mean and SD of five measurements. * : Below limit of quantification. 170 NMCC共同利用研究成果報文集13 (2005) CC A 処 理 を 施 し た ス ギ 材 の 表 層 部 と 芯 に 含 有 す る ヒ 素 を 化 学 形 態 別 に 分 析 し た 結 果 ,表 層 部 , 芯 部 の い ず れ に お い て も 含 有 し て い る ヒ 素 の 化 学 形 態 は 無 機 ヒ 素 で あ っ た 。 C CA の 防 腐 性 能 は ヒ 素 の 優 れ た 定 着 性 能 に よ る と こ ろ が 大 き い と さ れ て い る が ,今 回 の 分 析 か ら も そ の 定 着 性 能 の 高 さ が 伺 わ れ , CCA 処 理 材 の 廃 棄 に つ い て は , み だ り に 焼 却 し て は な ら な いことや分別解体の徹底など,適正処理の重要性が示唆された。 4 まとめ CC A 防 腐 処 理 廃 材 の C r ,A s ,C u 含 有 量 は ,表 層 部 の み な ら ず 芯 部 に お い て も 高 い 含 有 量 を 示 し た こ と か ら ,今 後 C C A 防 腐 処 理 廃 材 の 徹 底 分 別 と 建 築 解 体 廃 棄 物 の 処 理 方 法 の 検 討 が必要であることが明らかになった。 参考文献 1) 岩 崎 克 己 : 我 が 国 に お け る C C A 木 材 保 存 剤 の 開 発 と そ の 処 理 木 材 市 場 の 盛 衰 の 技 術 的 背 景 , 木 材 保 存 , 2 9 , 1 9 2- 2 16 ( 2 00 3) 2 ) Ma s o n RW. A n d E dw a r d s I R. : A c u te to x i c it y o f c o mb in a t io n s o f s od iu m d ic h ro ma t e , s o d i u m a r s e n a t e a n d c o p p e r s u l p h a t e i n t h e r a t , C o m p . , B i o c h e m . , P h y s i o l . , 9 3 , 12 1 -1 2 5 ( 19 8 9) 3) S o lo - G ab r ie l e H M. , To wn s e n d T G. , Me s s i c k B. , Ca l itu V. :Ch a r a c te r is t ic s o f c h ro ma t e c o p p e r a r s e n a te - tr e a t e d wo o d a s h , J . Ha r z a rd M a te r. , 89 , 21 3 - 23 2 (2 0 02 ) 4 ) F u t a t s u g a w a , S . , H a t a k e y a m a , S . , S a i t o u , S . a n d S e r a , K . : P r e s e n t s t a t u s o f N M C C a nd s a mp le p r e p a r a t io n me t ho d fo r b io - s a mp le s , I n t . J . P I X E , 3 , 31 9– 3 28 ( 19 9 3) 5 ) S e r a , K . , Yan a g is a w a , T. , Ts u n o d a , H . , Fu ta ts u g a w a, S . , S a ito h , Y. , Su z u k i, S . a n d O r ih a r a , H . : Bio - P I X E a t Ta k i z a w a F a c i l i ty ( B io - P I X E w i th a Ba b y Cy c lo tr on ) ” , In t. J . PI XE , 2 , 32 5 -3 3 0 ( 1 9 92 ) 171 NMCC ANNUAL REPORT 13 (2005) Contents of chromium, copper and arsenic in CCA preserved timbers Keiko Chiba1), Sinpei Uchida1), Yoshinori Honma1), Kouichiro Sera2) and Katsumi Saitoh3) 1) Science of Living Department, Morioka Junior College, Iwate Prefectural University 152-52 Sugo, Takizawa, Iwate 020-0193, Japan 2) Cyclotron Research Center, Iwate Medical University 348-58 Tamegamori, Takizawa, Iwate 020-0173, Japan 3) Environmental Research & Information Center, Akita Prefecture 3-1-1 Sanno, Akita 010-8872, Japan Abstract We examined the contents of chromium, copper and arsenic in CCA preserved timbers by PIXE analysis. CCA preserved timbers contained large amounts of these metals both the part of surface and the center of timber. This result means that it is in need of the complete fractional demolitions of building using CCA preserved timbers. 172
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