仮締切工の遮水について - JCM 土木施工管理技士会

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仮締切工の遮水について
三重県土木施工管理技士会
勝
矢
理
※
ョンからの漏水を軽減するために、打設時に鉄粉を
1 .は じ め に
セクションに挿入したり、パイルロックを塗布した
本工事は、県発注の橋梁下部工工事である。前年
りしたが、いずれもあまり効果がなかったようだ。
度までに、2 基の橋台及び 4 基の橋脚を完了。今回
今回は、水替えのホース延長が300
の工事では、2 基の橋脚工施工で河川内の工事とな
なるので、水中ポンプを設置し維持管理することが
るため、河川内に仮桟橋・作業構台を設置しての作
大がかりとなり、また、電気代を節約するために、
業となった。仮締切は、11
8 吋高揚程水中ポンプを常時 1 台(掘削完了時は、
のⅣ型鋼矢板をウォ
ータージェット併用打設し、岩盤に 4
打ち込む
ため約 1 枚当たりの打設時間は30分程度かかった。
くらいと長く
2 台稼働)で施工できるよう、矢板セクションから
の漏水を軽減することを課題点とした。
土留め支保工は 2 段設置。
3 .対応策・工夫改良点
2 .現場における課題・問題点
11
この橋の工事に携わるのは今回が初めてであった
のⅣ型鋼矢板をウォータージェット併用打
設し、岩盤に 4
打ち込むため約 1 枚当たりの打
が、県民局建設部担当者及び前年度までの施工スタ
設時間は30分程度かかるために、パイルロック等
ッフの苦労話、助言等により、今回の問題点の整理
の現代的な方法では、矢板のセクションからの漏水
ができた。問題にしたのは、前年度シートパイルで
を軽減することは不可能に思われたので、昔ながら
の仮締切工内の水替え工は、1 箇所当たり 8 吋高揚
の矢板のセクション遮水方法がないかをいろいろな
程水中ポンプを常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台
人に聞きまわったが、鉄粉をセクションに入れて錆
稼働)しており、その電気代は 1 ヶ月当たり50万
を促進させるなど、前年度にやってみた方法しかな
円程度かかったこと。それに対しての水替え工の設
かった。が、ある作業員から、以前に矢板を打設し
計は、矢板のセクションからの漏水はほとんどない
て仕事をしていた時に、矢板のセクションに槙肌
ものとしており、4 吋水中ポンプ 1 台分しか計上さ
(まきはだ)を詰めて遮水をしたということを聞き、
槙肌(まきはだ)について調べてみた。
れていなかった。
槙肌(まきはだ)は、 まいはだ
前年度においても、矢板のセクションからの漏水
とも言う。木
は新品を打設してもあることを説明したが、聞いて
造船に水が入るのを防ぐ『あか止め』に、板の間に
もらえなかったようで、今回も同じように説明した
詰める造船材である。水を含むと膨張し、隙間を埋
が、結果は同じであった。前年度は、矢板のセクシ
める。杉に比べ粘りがあるヒノキの皮を蒸し、たた
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いて軟らかくしてから縄のようになったもので、矢
水も多い。しかしながら、この状態を有効に利用し
板のセクション遮水方法としては有効のように思え
た遮水方法はないものかと考えていたところ、オガ
たので、槙肌(まきはだ)を段取りするようにした。
クズによる遮水を、ある方から教えていただいた。
水替えの計画としては、前年度と同じように 1
その方法とは、オガクズを水の流れを利用してゴ
箇所当たり常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台稼働)
ミのように隙間に流し込む、ということです。また、
できる容量の電力を準備したが、その時は槙肌(ま
オガクズも槙肌(まきはだ)同様水分を吸収すると
きはだ)で遮水できるのではないかと安易に考えて
膨張するので有効であるように思われた。そのこと
いた。河川内の仮締切工が完了し、8 吋高揚程水中
をもとに早速オガクズによる遮水方法について検討
ポンプ 2 台を設置して水替えを行ったところ、水
を開始した。
深約 2
まず、材料のオガクズですが、近くの材木団地に
から30㎝程度しか水替えができなかった。
これではとても次の工程に移ることはできないの
て入手することができた。その際に、粒の大きさの
で、用意してあった槙肌(まきはだ)をセクション
違う、のこぎりクズのオガクズ 2 種類とパウダー
に詰め込むことにした。その結果、かなりの効果が
状のオガクズの計 3 種類で、どれが一番有効であ
あり、当初は 2 台で30㎝程度しか水替えができな
るか試してみたかったので、いろいろな種類のオガ
かったのが、槙肌(まきはだ)をセクションに詰め
クズを頂いてきた。
次に、オガクズを入れるカゴは、河川の水流を考
込むことで、1 台の 8 吋高揚程水中ポンプで水替え
慮すると軽いものでは流されるので、鉄筋を溶接し
ができた。
思っていた以上の効果が得られたので、ますます
安易に水替えができるように思えた。水替えができ
てうなぎ採り用カゴのような形にして、その中にオ
ガクズを入れる網状の土のう袋をはめ込んだ。
たことにより、土留め支保工施工に進むことができ
オガクズは、そのままの状態ではカゴに入れて沈
た。その中で、切梁のキリンジャッキを張った時に、
めてみても、浮いてしまうのは明らかであるので、
槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクションに力がか
オガクズの比重を 1 以上にする必要がある。その
かり、新たな隙間ができ再び水が漏れだした。しか
方法として、紀州釣りのだんごの要領で、砂を混ぜ
しながら、漏れ出した箇所をこまめに補修すること
ることによって重みを持たせることにした。頂いて
で対応できた。
きた2種類ののこぎりクズオガクズを主に、パウダ
1 段目土留め支保工施工完了後、本格的な掘削作
ー状のオガクズを繋ぎとして配合し、その中に砂を
業となった。ここで問題となったことは、掘削機械
混ぜた。砂とオガクズがくっつくようにシャワーで
が矢板にあたると、切梁のキリンジャッキを張った
散水しながら混ぜた。その材料を矢板の外側に落と
時同様に、槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクショ
しこみ効果をみたところ、想像以上にオガクズがセ
ンに力がかかり、新たな隙間ができ再び水が漏れだ
クションの隙間に目詰まりし、遮水できた。オガク
した。これも前と同じように、漏れ出した箇所をこ
ズによる方法では、河床付近までしか効果がないよ
まめに補修することで対応できたが、掘削が進むに
うに思われたが、実際にやってみると、セクション
つれて河川との水頭差が大きくなり、水圧が大きく
の隙間を通って河床より1 . 5
なってきたので、最初に槙肌(まきはだ)をセクシ
あった。結果として 3 種類の大きさの違うオガク
ョンに詰め込むだけでは、遮水できないのではない
ズを混ぜたことで、細部までオガクズを目詰まりさ
かと思えてきた。これ以外に他に有効な方法を考え
せることができたように思う。オガクズと平行して
なければならなくなった。
槙肌(まきはだ)をセクションに詰め込んだことに
くらい下まで効果が
ここで、今回の施工場所は、河川の中であるので
より、水替え工は、8 吋高揚程水中ポンプを常時1
仮締切工の外側は、直接、水と接しているので浸入
台稼働(掘削完了時は、2 台稼働)で施工できた。
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仮締切工の土留め支保工の状態は日々変化する。
また、雨天により河川の水位が上昇したりするので、
う。電気代は予定の半額を目指したが、30%程度
の削減は達成できた。
また、熟練者の経験を聞き参考にするとか、欠点
槙肌(まきはだ)の状態は日々管理し、最良の状態
であると思われたこと(今回は、河川内の工事であ
を保った。
もう 1 箇所は、河川敷内であるので、仮締切工
るので仮締切工の外側が、直接水と接しているので
の外側は、直接、水と接していないためにオガクズ
浸入水も多い)が最大の利点であることに気づいた
での遮水はできなかったので、槙肌(まきはだ)を
ことは、大きな収穫であった。
セクションに詰め込むのみの遮水となったが、河川
また、シートパイルによる仮締切工においての水
内仮締切工箇所と同様、水替え工は 8 吋高揚程水
替え工の積算は実勢に合ったものにしてもらえるよ
中ポンプを常時1台稼働(掘削完了時は、2 台稼働)
う、このような実績、データ等の蓄積が非常に大切
で施工できた。
だと実感した。
※
4 .お わ り に
今回の遮水方法は、かなり有効な手段であると思
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丸亀産業株式会社