19 仮締切工の遮水について 三重県土木施工管理技士会 勝 矢 理 ※ ョンからの漏水を軽減するために、打設時に鉄粉を 1 .は じ め に セクションに挿入したり、パイルロックを塗布した 本工事は、県発注の橋梁下部工工事である。前年 りしたが、いずれもあまり効果がなかったようだ。 度までに、2 基の橋台及び 4 基の橋脚を完了。今回 今回は、水替えのホース延長が300 の工事では、2 基の橋脚工施工で河川内の工事とな なるので、水中ポンプを設置し維持管理することが るため、河川内に仮桟橋・作業構台を設置しての作 大がかりとなり、また、電気代を節約するために、 業となった。仮締切は、11 8 吋高揚程水中ポンプを常時 1 台(掘削完了時は、 のⅣ型鋼矢板をウォ ータージェット併用打設し、岩盤に 4 打ち込む ため約 1 枚当たりの打設時間は30分程度かかった。 くらいと長く 2 台稼働)で施工できるよう、矢板セクションから の漏水を軽減することを課題点とした。 土留め支保工は 2 段設置。 3 .対応策・工夫改良点 2 .現場における課題・問題点 11 この橋の工事に携わるのは今回が初めてであった のⅣ型鋼矢板をウォータージェット併用打 設し、岩盤に 4 打ち込むため約 1 枚当たりの打 が、県民局建設部担当者及び前年度までの施工スタ 設時間は30分程度かかるために、パイルロック等 ッフの苦労話、助言等により、今回の問題点の整理 の現代的な方法では、矢板のセクションからの漏水 ができた。問題にしたのは、前年度シートパイルで を軽減することは不可能に思われたので、昔ながら の仮締切工内の水替え工は、1 箇所当たり 8 吋高揚 の矢板のセクション遮水方法がないかをいろいろな 程水中ポンプを常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台 人に聞きまわったが、鉄粉をセクションに入れて錆 稼働)しており、その電気代は 1 ヶ月当たり50万 を促進させるなど、前年度にやってみた方法しかな 円程度かかったこと。それに対しての水替え工の設 かった。が、ある作業員から、以前に矢板を打設し 計は、矢板のセクションからの漏水はほとんどない て仕事をしていた時に、矢板のセクションに槙肌 ものとしており、4 吋水中ポンプ 1 台分しか計上さ (まきはだ)を詰めて遮水をしたということを聞き、 槙肌(まきはだ)について調べてみた。 れていなかった。 槙肌(まきはだ)は、 まいはだ 前年度においても、矢板のセクションからの漏水 とも言う。木 は新品を打設してもあることを説明したが、聞いて 造船に水が入るのを防ぐ『あか止め』に、板の間に もらえなかったようで、今回も同じように説明した 詰める造船材である。水を含むと膨張し、隙間を埋 が、結果は同じであった。前年度は、矢板のセクシ める。杉に比べ粘りがあるヒノキの皮を蒸し、たた −60− いて軟らかくしてから縄のようになったもので、矢 水も多い。しかしながら、この状態を有効に利用し 板のセクション遮水方法としては有効のように思え た遮水方法はないものかと考えていたところ、オガ たので、槙肌(まきはだ)を段取りするようにした。 クズによる遮水を、ある方から教えていただいた。 水替えの計画としては、前年度と同じように 1 その方法とは、オガクズを水の流れを利用してゴ 箇所当たり常時 2 台稼働(掘削完了時は、3 台稼働) ミのように隙間に流し込む、ということです。また、 できる容量の電力を準備したが、その時は槙肌(ま オガクズも槙肌(まきはだ)同様水分を吸収すると きはだ)で遮水できるのではないかと安易に考えて 膨張するので有効であるように思われた。そのこと いた。河川内の仮締切工が完了し、8 吋高揚程水中 をもとに早速オガクズによる遮水方法について検討 ポンプ 2 台を設置して水替えを行ったところ、水 を開始した。 深約 2 まず、材料のオガクズですが、近くの材木団地に から30㎝程度しか水替えができなかった。 これではとても次の工程に移ることはできないの て入手することができた。その際に、粒の大きさの で、用意してあった槙肌(まきはだ)をセクション 違う、のこぎりクズのオガクズ 2 種類とパウダー に詰め込むことにした。その結果、かなりの効果が 状のオガクズの計 3 種類で、どれが一番有効であ あり、当初は 2 台で30㎝程度しか水替えができな るか試してみたかったので、いろいろな種類のオガ かったのが、槙肌(まきはだ)をセクションに詰め クズを頂いてきた。 次に、オガクズを入れるカゴは、河川の水流を考 込むことで、1 台の 8 吋高揚程水中ポンプで水替え 慮すると軽いものでは流されるので、鉄筋を溶接し ができた。 思っていた以上の効果が得られたので、ますます 安易に水替えができるように思えた。水替えができ てうなぎ採り用カゴのような形にして、その中にオ ガクズを入れる網状の土のう袋をはめ込んだ。 たことにより、土留め支保工施工に進むことができ オガクズは、そのままの状態ではカゴに入れて沈 た。その中で、切梁のキリンジャッキを張った時に、 めてみても、浮いてしまうのは明らかであるので、 槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクションに力がか オガクズの比重を 1 以上にする必要がある。その かり、新たな隙間ができ再び水が漏れだした。しか 方法として、紀州釣りのだんごの要領で、砂を混ぜ しながら、漏れ出した箇所をこまめに補修すること ることによって重みを持たせることにした。頂いて で対応できた。 きた2種類ののこぎりクズオガクズを主に、パウダ 1 段目土留め支保工施工完了後、本格的な掘削作 ー状のオガクズを繋ぎとして配合し、その中に砂を 業となった。ここで問題となったことは、掘削機械 混ぜた。砂とオガクズがくっつくようにシャワーで が矢板にあたると、切梁のキリンジャッキを張った 散水しながら混ぜた。その材料を矢板の外側に落と 時同様に、槙肌(まきはだ)を詰め込んだセクショ しこみ効果をみたところ、想像以上にオガクズがセ ンに力がかかり、新たな隙間ができ再び水が漏れだ クションの隙間に目詰まりし、遮水できた。オガク した。これも前と同じように、漏れ出した箇所をこ ズによる方法では、河床付近までしか効果がないよ まめに補修することで対応できたが、掘削が進むに うに思われたが、実際にやってみると、セクション つれて河川との水頭差が大きくなり、水圧が大きく の隙間を通って河床より1 . 5 なってきたので、最初に槙肌(まきはだ)をセクシ あった。結果として 3 種類の大きさの違うオガク ョンに詰め込むだけでは、遮水できないのではない ズを混ぜたことで、細部までオガクズを目詰まりさ かと思えてきた。これ以外に他に有効な方法を考え せることができたように思う。オガクズと平行して なければならなくなった。 槙肌(まきはだ)をセクションに詰め込んだことに くらい下まで効果が ここで、今回の施工場所は、河川の中であるので より、水替え工は、8 吋高揚程水中ポンプを常時1 仮締切工の外側は、直接、水と接しているので浸入 台稼働(掘削完了時は、2 台稼働)で施工できた。 −61− 仮締切工の土留め支保工の状態は日々変化する。 また、雨天により河川の水位が上昇したりするので、 う。電気代は予定の半額を目指したが、30%程度 の削減は達成できた。 また、熟練者の経験を聞き参考にするとか、欠点 槙肌(まきはだ)の状態は日々管理し、最良の状態 であると思われたこと(今回は、河川内の工事であ を保った。 もう 1 箇所は、河川敷内であるので、仮締切工 るので仮締切工の外側が、直接水と接しているので の外側は、直接、水と接していないためにオガクズ 浸入水も多い)が最大の利点であることに気づいた での遮水はできなかったので、槙肌(まきはだ)を ことは、大きな収穫であった。 セクションに詰め込むのみの遮水となったが、河川 また、シートパイルによる仮締切工においての水 内仮締切工箇所と同様、水替え工は 8 吋高揚程水 替え工の積算は実勢に合ったものにしてもらえるよ 中ポンプを常時1台稼働(掘削完了時は、2 台稼働) う、このような実績、データ等の蓄積が非常に大切 で施工できた。 だと実感した。 ※ 4 .お わ り に 今回の遮水方法は、かなり有効な手段であると思 −62− 丸亀産業株式会社
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