平成23年度 新潟大学長 新潟大学プロジェクト推進経費研究経過報告書(中間まとめ) 殿 申 請 者 所 属 医歯学系 代表者氏名 川村 宏樹 本年度、交付を受けたプロジェクト推進経費について、現時点までの研究の進行状況等を報告し ます。 プロジェクトの種目: 奨励研究 プロジェクトの課題:TLR2 依存性肝肉芽腫形成における Kupffer 細胞に対する NKT 細胞の制御機構 プロジェクトの代表者:所属 医歯学系 職名 講師 氏名 川村宏樹 分担者 0 名 プロジェクトの成果: (背景と目的) マクロファージ(Mφ)は、細胞上の Toll-like receptor (TLR) 2 で結核菌などの微生物を捕らえて 貪食し殺菌する。しかし、結核菌に代表される細胞内寄生細菌は、殺菌阻害能を持ち殺菌から逃れ ようとする。このように感染された Mφは、T 細胞から産生される IFN-や TNFの作用によって細 胞内殺菌の亢進や肉芽腫による封じ込めをおこなう。感染症における肉芽腫は主に肺や肝臓に見ら れるが、肺に比べ肝臓の報告は少なく肝肉芽腫形成は不明な点も多い。その理由として、肝臓には NKT 細胞と Kupffer 細胞(Mφ)といった免疫制御を担っている特殊な細胞が存在し、それら細胞が関与する 複雑なサイトカインネットワークが形成されている事などが挙げられる。そこで本研究は、TLR2 依存性 肝肉芽腫形成での Kupffer 細胞に対する NKT 細胞の制御機構の解析を目的とする。 (結果) ① 肝肉芽腫モデルマウスの作製 TLR は、細菌、ウイルスや真菌などの構成成分を認識して NF-κB などが活性化され、宿主の自 然免疫を誘導する。現在、TLR は 11 種同定され、TLR2 は最も多様な分子パターンを認識すること が報告されている。そのリガンドとして、グラム陽性菌のペプチドグリカン、結核菌のリポアラビ ノマンナンや真菌類のザイモザンなどが知られている。TLR2 欠損マウスに結核菌を感染させると、 肉芽腫形成が減少し死亡することが知られている。また近年、NKT 細胞にも TLR2 の発現が報告さ れた。そこで申請者は TLR2 を発現している NKT 細胞も肝肉芽腫形成に作用する可能性を考え、 C57BL/6 (WT)マウスおよび NKT 欠損(NKT-)マウスにザイモサンを接腫して、ザイモサン誘発性肝 肉芽腫マウスモデルを作成した。 ② WT と NKT 欠損マウスにおける肝肉芽腫数の検討 近年、NKT 細胞にも TLR2 の発現が報告された。そこで申請者は TLR2 を発現している NKT 細胞 も肝肉芽腫形成に作用する可能性を考え、NKT 細胞欠損マウスにザイモサンを投与して肝肉芽腫形 成の検討をおこなった。その結果、コントロールマウスに比べて NKT 細胞欠損マウスは肉芽腫数の 有意な増加が認められた。 (注)報告書は2枚程度とする。別紙による場合も同じ。 -1- ③ 肝肉芽腫マウスにおける肝内白血球分画の検討 肉芽腫数は、10 日目をピークとして 30 日程度で治癒する。そこで、経時的に肝臓から白血球を 分離して、肝内白血球の変化を検討した。そのお結果、感染3日と7日目で有意な Mφの分画の増 加と細胞数の増加が認められた。一方、NKT 細胞は分画の著名な減少が認められたが、細胞数の有 意な変動は認められなかった。 ④ ザイモサン投与による白血球上の TLR2 の発現の変動 ザイモサン投与により活性化した白血球は、細胞表面上の TLR2 の発現量が変化するか否か検討 した。その結果、NKT 細胞と Mφは、投与後1時間で TLR2 の発現量の増加が認められた。しかし ながら、T細胞では発現量の変動は認められなかった。 これらのことから、NKT 細胞は TLR2 からの刺激により活性化され、Kupffer 細胞の肉芽腫形成に 何らかの影響を与えていることが推測された。この影響を明らかにするため、ザイモサン投与によ る肝肉芽腫形成モデルマウスを用いて、Kupffer 細胞の肉芽種形成に対するサイトカインを中心とし た NKT 細胞の作用の解析を今後おこなう。 プロジェクト成果の発表(論文名,発表者,発表紙等,巻・号,発表年等) -2-
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