コミュニケーションレポート 2010

ワコールホールディングス コミュニケーションレポート2010
社会との相互信頼づくり
目 次
ワコールの経営理念
1
CSRの目標
2
「女性共感企業ワコール」の検証
3
1. 「販売員」ではなく、なぜ「ビューティーアドバイザー」なのか
2. すべては店頭からはじまる
11
3. 人の手が支える“ワコール品質” 北陸ワコール縫製㈱
22
4. 女性の一生に寄り添う多彩な商品開発
26
5. 〈検証と今後の課題〉
《お客様とともに》
《社会とともに》
1 . ワコール ブレストケア活動
2 . 社会貢献活動
3 . ブラ・リサイクル
4 . 〈検証と今後の課題〉
《従業員とともに》
5
15
29
37
41
48
1 . 女性が働く「職場としてのワコール」
2 . 私たち若手がワコールを変革する
3 . 〈検証と今後の課題〉
51
54
59
社外監査役インタビュー
61
社会の変化に対応できる、「品の良い」会社であり続けてほしい
トップインタビュー
65
「女性共感企業」宣言から10年をふり返って
会社概要/編集後記
69
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ワコールの経営理念
ワコールの経営理念
ワコールは創業以来、常に女性の価値観や美意識を見つめ、時代を超えて
「美」
の本質を追求してきました。
そして、わたしたちの事業活動は、一人ひとりのお客様の声に耳を傾け、
謙虚に自らを変革し、人と人とが「互いに信頼しあう関係」を積み重ねること
で成り立っています。
こうした「相互信頼」の考え方こそがワコールの原点であり、創業以来の経
営理念でもあります。
ワコールの目標
社 是
経営の基本方針
世の女性に
わが社は相互信頼を基調とした
美しくなって貰う事によって
格調の高い社風を確立し
広く社会に寄与する事こそ
一丸となって
わが社の理想であり
世界のワコールを目指し
目標であります
不断の前進を続けよう
1.愛される商品を作ります
2.時代の要求する新製品を開発します
3.大いなる将来を考え正々堂々と営業
します
4.より良きワコールは
より良き社員によって造られます
5.失敗を恐れず成功を自惚れません
ワコールホールディングス CSR 2010
1
CSRの目標
CSRの目標
「社会との相互信頼づくり」
経営理念の「相互信頼」は、会社とお客様との関係だけではありません。会社と取引先企業様、
会社と株主様、会社と従業員、会社と地域社会、会社と行政、会社とさまざまな市民団体、そし
て広く、会社と社会全体を含めた、
「関係のあるべき姿」についての考え方でもあります。
社会から信頼され、私たちもまた社会の要請と期待に応えて信頼していただく…、そうした関
係があって初めて、健全な企業活動は遂行され、永続できると考えています。
利益追求のために「市場」だけを見るのではなく、そこに、社会に配慮する視線を加えて「社会
からも信頼される企業になっていく」、すなわち「社会との相互信頼づくり」、これがワコールの
CSR(Corporate Social Responsibility)の大きな目標です。
ワコールホールディングス CSR 2010
2
ワコールは創業以来、
「女性に美しくなって貰う」こと、
「女性が美しくなることをお手伝いする」
コミュニケーションレポート 2010
こと、
「女性の“美しくありたい”という願いの実現に役立つ」ことを事業の目的として努力してきま
した。60年にわたる事業活動を通じて、世の女性たちが自信を持ち、胸を張って活躍することに
貢献してきたとの自負があります。
「女性と共にある」ことは、今やワコールの存在価値そのものと
言っていいでしょう。
そして2001年1月、ワコールは「女性共感企業」を宣言しました。それは、女性の気持ちや感性
を大切にし、すべてのビジネスプロセスにおいて女性に共感し、共感される企業でありたいとい
う意思と、それに向けた行動宣言でもあります。
「 女 性 共 感 企 業 ワ コ ー ル 」の 検 証
ワコールホールディングス
お客様としての女性、従業員としての女性、社会全体の女性、すなわち世のすべての女性との、
相互信頼にもとづいた固い絆を結んでいきたいという願いを込めたものでもありました。
「女性共感企業ワコール」の検証
それから10年。
「女性共感企業」
の理念はどれだけ実現されてきたのか…。
今年度のコミュニケーションレポートは、それを検証するものとして制作しました。
中心となる編集メニューは、
「お客様とともに」
「社会とともに」
「従業員とともに」の3つから構成
されています。それは、顧客満足(CS=カスタマー・サティスファクション)
、社会の満足(SS=
ソーシャル・サティスファクション、
)従業員満足(ES=エンプロイー・サティスファクション)とい
う
「3つのS」
の実現は、CSR課題そのものであると考えるからに他なりません。
それぞれの分野での取り組みを、
「できていること」だけでなく、
「できていないこと」についても
率直に述べたつもりですが、今後の課題として、私たちが取り組んでいかなければならない点が
多々あるのは言うまでもありません。
コミュニケーションレポート2010
「女性共感企業ワコール」
の検証。
さまざまな点で不十分なところは多々あろうかと存じますが、ご一読いただき、皆様から叱咤
激励をいただければ幸いです。
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
「女性共感企業ワコール」の検証
お客様とともに
社会とともに
従業員とともに
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
「販売員」ではなく、
なぜ「ビューティーアドバイザー」なのか
ワコールでは1999年より、販売員の呼称を、そ
れまでのセールスレディからビューティーアドバイザ
ーに改めた。その意図するところは文字通り、お客様
が店頭で商品をお選びになる際、なによりも的確な助
言者としてお役に立ちたい…というものである。
商品を売る前に、まずお客様のご要望に耳を傾け
る。そうしてこそ初めて、お客様のニーズやウォンツ
にふさわしい商品のご提案ができる、と考えるからに
他ならない。
このことにこそ、
「女性共感企業ワコール」の姿勢が
象徴されている。
ワコールホールディングス CSR 2010
5
《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
「お客様に美しくなっていただく」
お手伝いをする
「ワコールの社会的使命は、お客様に美し
くなっていただくこと。言ってみれば、商
品はそのための手段です。だから、“まず販
売ありき”ではけっしてない。商品を通し
て、お客様に美しく輝いていただきたい。
それが私たちの願いであり、お手伝いをす
るのがビューティーアドバイザー(以下BA)
の役割です」
こう語るのは斎藤史。1979年の入社以来
東日本販売統括部 東日本販売企画部 百貨店東日本BA教育課 課長 斎藤 史
BAとして活躍。いったん結婚退社するが、
3年で復職し、現在はBA教育課課長として
をお客様に提案するのがBAなのです」
お客様の行動や表情、しぐさ、さらに服
後輩の指導にあたっている。
しかし、それはけっして簡単なことではな
装、持ち物などから、好みや潜在的なご要望
「たとえば朝、髪型が決まらないまま外出
い。お客様がご自分の要望やお気持ちをすべ
を感じ取る“からだサインキャッチ”、さら
すると、女性って一日が憂鬱になります。下
てお話ししてくださるとは限らない。いや、
に、お客様の何気ない言葉や、ちょっとした
着も同様で、お気に入りの下着を身につけて
そんな方はむしろ少数派だ。
つぶやきからお気持ちを感じ取る“ことばサ
外出すれば、からだがシャキッとするだけで
「そこで大切になってくるのが、来店され
インキャッチ”が大切、と斎藤は言う。
なく心もウキウキする。ボディを美しくとと
たお客様のちょっとしたしぐさや言葉を、
「たとえば商品をお見せしたとき、
“これで
のえたり、お気に入りの下着を身につけるこ
しっかりとキャッチする力を身につけるこ
もいい”と言われたとします。“これもいい”
とで満足感や自信にもつながる、そんな下着
とです」
“これがいい”
“ これでもいい”では、それぞ
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
れニュアンスが違いますよね。こうした、
く当日は雨のようなんです』とおっしゃった
ちょっとした言葉づかいにお客様の気持ち
そうです。そこで応対したBAは、その場で
が表れています。それらを聞き逃さない姿
“てるてる坊主”をつくり、商品と一緒に「ど
勢があってこそ、最終的に“これがいい”と
うぞ、お幸せになってください」という気持
言っていただける商品のご案内ができるの
ちを込め、お渡ししたそうです。そうした
だと思うのです」
ら、結婚式の当日はきれいな青空。お客様か
のBA個人のファンになってくださり、店頭
ら心のこもったお礼状をいただきました」
でご指名もしてくださいます。アドバイザー
手近にあった紙で“てるてる坊主”をつく
冥利に尽きるわけですが、そこには、人間と
る。ほんのちょっとした心遣いなのだが、そ
人間の信頼関係が築かれています。そんなお
こには
「お客様を思う気持ち」
が表れている。
客様との関係はワコールの財産であり、誇り
これら2つのサインキャッチがあって、そ
◆
です」と斎藤。
こに初めてコミュニケーションが生まれる。
「顧客は個客」
と言われて久しい。求められ
お客様と心と心を通わせ、お客様に喜んで
それも、心と心が通じ合う本当のコミュニケ
ているのは、お客様一人ひとりにきちんと向
いただく…、それができたとき「BAたちが
ーション。それが相互信頼につながり、女性
き合う“パーソナルな接客”であり、オリジ
自分の仕事のやりがいを感じ、誇りを持つ瞬
共感を実現させていく。
ナルなメッセージの発信だ。そうしてこそ、
間でもあるんです」
基本的な接客方法や豊富な商品知識はも
お客様の満足と共感が実現する。
ワコールとお客様とをつなぐのは、セール
ちろんのこと、そこに「お客様に喜んでいた
そんな姿勢を大切にするBAが、お客様か
ストークではなく、まさに心と心のコミュニ
だきたいという強い思いが必要なのです」と
らお礼状をいただくことは珍しくない。“悩
ケーション。それを、売場という最前線で担
斎藤。
みを聞いてくれて嬉しかった”
、
“自分が求め
っているBAたち。「女性共感企業ワコール」
「こんなことがありました。週末に結婚式
ていた商品を選んでくれてありがとう”…と
は、そうした数多くのBAたちによって支え
を控えたお客様がご来店されたとき、
『あいに
内容はさまざまだが、
「こうしたお客様は、そ
られている。
お客様と心が通じ合う
コミュニケーション
各売場に寄せられたお客様
の声は、BA教育の大切な
教材
ワコールホールディングス CSR 2010
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「ビューティーアドバイザーの声」は、
「お客様の声」かもしれない
活用しきれていない面がある」と山形は指摘
に、全国のビューティーアドバイザーの声を
する。
聞いて回る専任部隊があってもいいと思って
たとえば、新商品の開発。基本コンセプト
いるほどです」とも。
東京の伊勢丹 新宿店のワコール売場。伊
が決まって、サンプルがいくつかでき上がっ
お客様と直に接することができるのがビ
勢丹様とのさまざまな折衝を担当するのが首
た段階で、『どれがいいのか?』とBAに意見
ューティーアドバイザー。彼女たちに寄せ
都圏(百貨店担当)
店 販売三課の山形大次郎
を求められる場合が多く、
「そうではなく、最
られるお客様の声は、高い接客品質ととも
である。
初のコンセプトづくりからBAも参加するこ
にワコールの財産だ。山形は言う。「不況下
「伊勢丹様ではお客様の声をもとに大胆な
とがあっていい。加えて、色やデザインの展
の今、危機感を持って、それに真摯に耳を
お買い場(売場)改革に取り組み、お客様か
開プランを立案する際にも、BAの意見をも
傾けることが私たちに求められていると思
らの支持を集めています。ワコールもこれ
っともっと反映させていい」
と言う。
うのです」と。
まで以上に、BAに寄せられるお客様の声を
◆
商品づくりに反映させる必要があると感じ
「日々お客様と接している彼女たちこそ、
ています」
お客様の好みや求めておられることを熟知し
日々、お客様と接しているBAの意見を、
ています。このことを深く掘り下げる必要が
商品企画などに取り入れる制度はもちろん構
あると私は思うのです。会社はどうしても数
築されている。その一つが
“スカッシュ”
。こ
字で物事を判断しがちです。しかし数字に現
れは、毎日、BAから上がってくる情報を全
われない、現場に寄せられるさまざまなお客
社的に共有する社内システムで、全国の店舗
様のご要望やご批判を、BAは日々受け止め
から寄せられる数は膨大。その他にも新商品
ています。お褒めの言葉も、お叱りの言葉も
開発に関するBA検討会や各種のアンケート
含めて。ですから、
“ビューティーアドバイザ
調査などが行われている。
ーの声”は“お客様の声”だと言ってもいいか
ただ、
「これらのシステムをまだまだ十分に
もしれません。そんな意味からも、私は社内
《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
東日本販売統括部
首都圏(百貨店担当)店 販売三課
山形 大次郎
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
首都圏(百貨店担当)店 販売三課 伊勢丹 新宿店 長谷川 雪路
ワコールホールディングス CSR 2010
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お客様の良き相談相手に
そもそも長谷川がBAという仕事を選んだ
けているのが「お客様の相談相手になりたい」
のには、あるきっかけがあった。
という思いだ。
「みなさん美しくなりたいと思
山形が担当する伊勢丹 新宿店のワコール
「実は中学生のとき、バストの大きさにコ
って来店されるわけですから、そのお手伝い
のBAは24人。長谷川雪路もその一人で、こ
ンプレックスがあって親にも相談できず悩ん
ができればと思っています。お客様がインナ
こに異動になってから12年になる。
でいました。そんなときブラジャーを買いに
ーを身につけて、満足そうな笑顔を見せてく
「伊勢丹様では、お客様が求められる接客
行ったお店の販売員さんが
『これでいいのよ、
ださると、私まで嬉しくなってしまいます」
水準もハイレベル。でもそれが私たちBAの
なにも恥ずかしいことなんかないのだから』
このように、
「お客様の良き相談相手になり
励みになり、レベルアップにもつながってい
と、やさしく言ってくれました。その言葉に
たい」という姿勢が、BAたちを日々成長さ
ます」
どれだけ慰められたことか…。そのときに思
せる。彼女たちがお客様から教えられること
若い後輩たちを指導する役割も担う長谷
ったんです。こんなすばらしい仕事はない。
は数多い。会社の教育トレーナーだけでな
川。お客様の応対が適切にできていたのかな
将来は下着の販売職に就こう!と」
く、お客様もまた、ワコールのBAを育てて
ど、毎日のように閉店後にBAが集まって反
そんな経験のある長谷川だけに、常に心が
くださっている。
《お客様とともに》
《お客様とともに》 1
省会を開いて話し合っている。
「インナーウェアは人には聞きにくいデリ
ケートな部分が多く、お客様の深層心理まで
汲み取らないとご要望がわからないこともあ
るんです。そこで、必ずご試着いただいてか
ら、どのような希望がおありなのかを伺うよ
うに指導しています。若いときにはことばサ
インやからだサインが読めないこともありま
すから」
山形とお買い場づくりの打ち合わせをする長谷川
ワコールホールディングス CSR 2010
10
《お客様とともに》
《お客様とともに》 2
すべては店頭からはじまる
毎日、数多くのお客様にご来店いただいているワコールの店頭。
お客様から信頼され、共感していただける店づくりが実現しているのだろうか。
いま、ワコールに求められる接客品質とはどのようなものなのかを考えてみた。
ワコールホールディングス CSR 2010
11
《お客様とともに》
《お客様とともに》 2
お客様には、お一人おひとりの
“物語”がある
い…言葉にすればありきたりかも知れない
が、ワコールのBAたちが大切にしている仕
事姿勢である。
「売る側の視点ではなく、大切なのはあく
だから、もし商品がお客様のご要望やおか
までもお客様の視点。ですから売場の店長を
らだにあっていなければ、そのことを申し上
していたときには、毎朝、出勤するとまず売
げることに奥村たちは躊躇しない。仮にその
場の周りを一周回って、遠めに自店を見るこ
場ではお買上げいただいても、それはお客様
とを日課としてきました。お客様にとって、
の本当の満足、ワコールとの本当の信頼関
入りやすくて楽しい売場づくりができている
係、それにもとづく息の長いお付き合い…に
かを点検するためです」
つながらないからだ。
こう語るのは、百貨店西日本BA教育課の
そのように考えるから、奥村はお客様への
寺田善美。最近まで、大丸神戸店の売場店長
DMも一つひとつを手書きで送っている。文
を務めてきた。
面も、一人ひとりのお客様の顔を浮かべなが
「そうなんです。寺田店長からは“常にお
ら書いている。印刷された文面の、ぬくもり
客様の立場と視線に立つ”ことの大切さを教
のないDMはお送りしたくない。それは奥村
えられてきました。そして、一人ひとりの
が、お客様をけっして画一的に見ていないか
お客様との息の長いお付き合いの大切さも」
らだ。
と奥村実生。大丸神戸店の売場で寺田の部
このお客様は、どんな食べ物がお好きか、
下として勤務し、いまは姫路にある山陽百
趣味は、ご家族は…を思い浮かべながら文章
貨店で、BAのサブリーダーとして若い仲間
を綴る。そんな努力があって、お客様も心を
の指導にもあたっている。
開いてくださる。
一人ひとりのお客様との息の長いお付き合
「ご試着のとき、BAはお客様のおからだ
ちゅうちょ
西日本販売統括部 西日本販売企画部
百貨店西日本BA教育課 寺田 善美
西日本(百貨店担当)店 販売三課
山陽百貨店 サブリーダー 奥村 実生
ワコールホールディングス CSR 2010
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お客様の声を
「聴く力」
、
それを会社に
「伝える力」
《お客様とともに》
《お客様とともに》 2
お客様のなかには、ご自分の娘や孫のよう
に若いBAに接してくださる方も少なくない。
寺田には、新人BAのときに出会って以
来、15年のお付き合いが続いているお客様
がいる。70歳を過ぎたその方は、寺田が教
育課に異動となったとき、わがことのように
泣いて喜んでくださったと言う。「“出世した
のも、あなたがここまで頑張ったからよ”と
励ましの言葉をいただきました。出世かどう
かはともかくとして、ここまでの人間関係を
築けていたのだと思うと、私も嬉しくて涙が
出てきました」と寺田。
を拝見することになりますから、まず、BA
来店されるお客様には、お一人おひとりの
こうした、お客様との信頼関係を築きなが
を信頼していただく。そのことがベースにあ
“物語”がある。
「なぜ」
、
「何を求めて」ワコー
ら、しかしBAには、もうひとつの大きな役
って初めて安心してアドバイスに耳を傾け、
ルにご来店くださったのか。それを理解し、
割がある。それは、その信頼関係をさらに強
商品をお買い求めくださいます。BAをご指
それに寄り添ってこそ、お客様の気持ちにお
固なものにしていくためにも、
「お客様の声を
名される方も少なくありませんが、これも、
応えすることができる。そして息の長いお付
ものづくりに反映させる」という役割だ。
お客様をけっして画一的に見ない姿勢があれ
き合いも可能になる。
ワコールでは、十数年前より「BA検討会」
ばこそ、と思うのです」
と寺田。
をスタートさせ、店頭に集まるお客様のさま
ワコールホールディングス CSR 2010
13
《お客様とともに》
《お客様とともに》 2
ざまなご意見を開発担当者とBAが一緒に検
討し、商品開発に反映させている。
奥村も3年間BA検討会に出席し、多くの
「お客様の声」を代弁し、自分の意見も主張
してきた。「そこでも言っていたことですが、
お客様は、
“誰にでも似合うもの”
ではなく
“私
に似合うもの”を求めておられるのです。そ
う、こんなのが欲しかったのよ!と心から喜
ばれるような、お客様の理想をカタチにした
商品がもっと増えて欲しい。商品のコンセプ
トをより明確にした、ターゲットを絞った商
品開発をしていかなければ」
と奥村は言う。
会社に伝える。BAにはそんな役割も求めら
があってはいけないということである。しか
単にアイテムを増やせばいいということで
れている。
しマニュアル化すればそれが解決できるわけ
はなく、より個性的な商品の開発と提供だ。
さらに「伝える力とは、会社に、だけでは
ではない。マニュアル化された一律的な接客
そのヒントは売場にある。それをものづく
なく、売場の仲間にも、です」と寺田。BA
や一方的な接客ではなく、そこに“そのお客
りに反映させるためにスカッシュやBA検討
がお客様からご指名をいただくのは嬉しいこ
様”へのオリジナルなプラスαを加えること
会があるわけだが、こうした制度を有効に機
とだが、そのBAが異動になればお客様のご
である。そうしてこそ、
「販売員ではなくアド
能させていくためにも、
「BAの聴く力、伝え
来店が途絶えてしまうことも、中にはある。
バイザー」と言うことができる。
る力が大切です」
と寺田。
「ですからチームワークも大切。
“このお客
お客様の声を「聴く力」、それを会社に「伝
店頭でのお客様の声は、宝の山だ。改善
様に信頼されている私”を一人から二人に、
える力」。BAは日々、その力を磨いている。
しなければならない点についての多くのヒ
二人から三人にして行かねばなりません」
そう、
「すべては店頭からはじまる」のである。
ントが隠されている。それを聞き逃さず、
それは、BAによって接客の質にバラツキ
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
人の手が支える“ワコール品質”
北陸ワコール縫製㈱
「ワコール ディア」
「トレフル」
など、主にランジェリーを製造する
北陸ワコール縫製㈱の新工場が2010年5月、福井県に完成した。
どのようにして高品質の製品を生み出しているか、
ワコールのものづくりの現場をレポートする。
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
手から手へ。
一針、一針、心を込めて、
お客様のもとへ
ワコールホールディングス CSR 2010
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厳しく詳細な基準の数々。
これが“ワコール品質”
の秘密
製標準秒数まで記載されていた。
熟練した縫製技術を身につけた職人技と言え
ワコールの縫製要領は隅々まで細かく決め
る。そこには お客様から信頼いただいてい
られている。ひとつの製品を縫うにあたって
る“ワコール品質”を支える技術と心意気が感
「これに従って、縫っていくんです」
は、品番ごとに事前検討を重ね、試作を踏ま
じられる。
縫製1課 職長の池田喜美代は、そう言っ
えて、製品設計通りの仕上がりになるよう、
て、1枚の用紙を見せてくれた。
細心の注意を払って手順が定められる。それ
【縫製指令書】
とある。
が
“ワコール品質”
とも言うべき、着ごこちの
そこには、使用する糸、針、縫い代や重ね
良さや耐久性、美しさなどを生むからだ。
代の幅はもちろんのこと、針目の大きさや縫
だが、本当の「技」はさらに深いところに
池田と話す中で、ちょっと意外な言葉が出
ある。
てきた。
池田が率いる縫製班が現在担当しているの
「私たち縫製の仕事は、メカニックとの協
は、スリップやキャミソールなどのランジェ
力なしには成り立ちません」
リー。透けるほど薄い生地や、繊細なレー
メカニック?
ス、光沢のあるサテンなど、デリケートな素
何かと思えば、ミシンの保守管理・調整を
《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
メカニックと二人三脚で、
ベストを尽くす
材ばかりだ。「ランジェリーは曲線のやわら
かさが命」と話す池田。美しいシルエットを
実現するためには、縫製指令書の数字を満た
すだけでは表現できないことがある。そんな
とき、最後にものを言うのは、ほんのわずか
な手の技。ねらい通りの美しいラインを出す
ため、身頃の左右で手加減を微妙に変えるこ
北陸ワコール縫製㈱ 縫製1課 職長 池田 喜美代
とさえある。生地や糸の性質を知り尽くし、
ワコールホールディングス CSR 2010
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《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
専門に行うマシンのプロのことだった。
とりの仕事ぶりも見ながら、一枚一枚の細部
多少でもミシンを使った経験があればわ
への目配り気配りをする。言わば「鳥の目と
かることだが、ミシンはとてもデリケート
虫の目」
が必要とされる。
だ。糸調子の強弱、押さえ圧の強さ、送り
ものづくりの現場で最後にものを言うの
歯の高さなど、ほんの少しの加減で、仕上
は、やはり人の手。だからこそ「技術と志の
がりに雲泥の差が出てしまう。製造現場は、
継承が大切」
と池田。
秒単位のスピードと精度が求められるシビ
「お客様に喜ばれるものづくり。それこそ
アな世界。ちょうどF1のレーサーがそうで
がワコールのCSRではないでしょうか。そ
あるように、マシンと一心同体、メカニッ
して、そのために私たち製造現場がするべき
クとは二人三脚。ここにも、品質をかげで
ことは、やはり技術でそれに応えること。そ
支える職人がいる。
の技術を、より高めながら、ワコールの志と
北陸ワコール縫製㈱
代表取締役社長 矢野 秀幸
ともに次の世代へと継承していくことだと考
お客様に喜ばれるものづくり。
それこそがワコールのCSR
えています」
ミシンの向こうにまだ見ぬお客様の顔を思
総務経理課・品質管理課
課長 山田 英俊
いながら、池田たちはワコールのものづくり
職長として班を束ねる池田の仕事は、班全
を支えている。
体の工程管理とスタッフの技術教育である。
ラインで担当する製品は日々変わってい
く。素材やデザインが違えば、工程や求めら
ものづくり主義の
新工場が5月に完成
れる縫製技術も異なる。同じ素材でも色が違
うだけで、微調整が必要になることさえあ
北陸ワコール縫製㈱は敷地面積8 ,860㎡。
る。常に全体を把握し、縫製スタッフ一人ひ
甲子園球場の約3分の2に相当する広さで、
生産管理課・縫製課・技術課 課長 冨田 紹夫
ワコールホールディングス CSR 2010
18
鉄骨2階建て、延べ床面積4 ,929㎡の2010
配されることになった。とにかく生産現場第
の措置に関する指針」に照らして適切なもの
年5月から稼働した新工場である。
一。そんな思いがよくわかる。
であると、認定を受けている。
工場は1階のすべてを量産部門のスペース
品質を高めるための環境づくりにも、気を
とし、生産効率の向上を最重視。資材の荷受
配っている。加湿装置を設け、湿度は常時
けから裁断、縫製、検査、包装、出荷にいた
65%に保たれている。生地は生き物。デリ
る全工程が、同じフロアに集約されているた
ケートな繊維は、空気が乾燥していると生地
め、ものづくりの流れがとてもスムーズであ
荒れを起こし、糸も切れやすくなるからだ。
“ワコール品質”のための工夫やしくみは、
る。縫製部門のスペースも大きく確保。生産
「それでは品質を維持できませんから」
枚挙にいとまがない。
中のラインの傍らで、次品番のミシンの待機
そう話すのは、総務経理課・品質管理課課
たとえば生地の「放 反」。巻いたり折りた
や調整がしやすくなるなど、
「作業環境が飛躍
長の山田英俊だ。温度管理もしているのは言
たんだ状態で搬入されてくる生地を一反ず
的に向上した」
と代表取締役社長・矢野秀幸は
うまでもない。
つ振り落として限りなく生地本来の丈や巾
言う。
この工場の快適職場推進計画は、厚生労働
に近づけ、目を正してからでなければ、裁
その結果、受付や事務室・社長室は2階に
大臣が定めた「快適な職場環境の形成のため
断に進まない。また、生地は反ごとに区別
放反(ほうたん)前の解反(かいたん)
複数枚の生地を型紙に合わせてカット
《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
カイゼン提案数、年間300~400。
「もっともっと」の気持ちを、常に
ほうたん
一枚ずつ手作業でレースをカット
厳密な全数検査を実施
ワコールホールディングス CSR 2010
19
し、全パーツを同じ反から取る。これは、
微妙な染め加減の違いが、洗濯を繰り返す
信頼される企業で
あり続けるために
る。品質レベルを満たしているか、次工程に
手わたされる前に、早めにチェックをし、相
互確認をするためだ。毎日、2回行われてい
うちに、色の差異となってくる可能性まで
考えてのこだわりだ。
こうした数々の工夫とこだわりで“品質の
るチェックタイム。もちろん明日もあさって
また、仕上がった製品は、一点一点手にと
ワコール”を背負って立つ北陸ワコール縫製
も…。
っての全数検査を行っている。袖付きのラン
だが、
「維持、継承だけであってはならない」
一針、一針、心を込めて。一人ひとりの手
ジェリーなら、ワキの下の縫い目を手で伸ば
と、生産管理課・縫製課・技術課課長の冨田紹
と志が、ワコールの品質を支えていた。
して強度を確認する…というように、製品ご
夫は話す。
との特性に応じた厳格な検品基準に基づいて
「北陸ワコールでは、
『ワコール ディア』の
いる。検査員の厳しい目視検査に合格したも
ような、技術の粋を尽くした匠の技による、
のだけが、人の手でていねいに袋詰めされて
芸術品とも言うべき製品も生産しています。
いく。
そのため、単なる強度や耐久性といった物性
従業員の「カイゼン提案」から生まれた工
面による検査だけでは表現できない、美観を
夫も数多い。その一つがすべてのミシンに
重視した感性軸の検査も大切にしていきたい
取り付けられた「折れ針飛散防止ガード」だ。
と思っています」
万一、針折れが発生したときは、すべての断
常に高品質の製品を生み出すリーディング
片が揃うまで拾い集め、完全なかたちに復元
カンパニーであり続けるために、新しい価値
しているのだが、飛散した針を探すのはとき
も創り出していかなければならないと、冨田
に大変な時間がかかる。そこで飛散防止のた
は考えている。
めに開発されたものだ。この「折れ針飛散防
午後4時、縫製部門に音楽が流れ出した。
止ガード」は、今ではワコールの他工場にも
チェックタイムを知らせる合図の曲だ。全個
広く普及している。
班がミシンを一斉に止めて、皆が立ち上が
《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
WACOAL DIA
2010 SPRING & SUMMER
ワコールホールディングス CSR 2010
20
《お客様とともに》
《お客様とともに》 3
品質の確かさを実感した工場見学。
ものづくりの現場の姿をお客様にお伝えするのも
ビューティーアドバイザーの役割の一つ
さまざまなワコール・ブランドが並ぶ松坂
う意味を、実際に見ることで納得できた気が
屋名古屋本店。その中でビューティーアドバ
しました」。さらにブラジャーを一枚一枚、
イザーの宮口和美は、2年前からヨーロッパ
手に取って縫い目やレース、ホックの状態な
の繊細なレースなどを使ったランジェリーの
どを細かくチェックしていく検品工程や人の
ブランドである「トレフル」を担当している。
手で行われる袋詰め作業など、
「こんなにてい
「すっきりとしたシルエットやデザインレー
ねいに扱われて売場に届くんだと、ちょっと
スの美しさから、30~60歳代の幅広い年齢
感動してしまって…。今まで以上に商品に愛
層のお客様に好まれています」
と話す。
着を感じるようになりました」
そんな宮口は、インナーウェアの主力工場
それ以来、工場で見聞きしたことをできる
である九州ワコール製造㈱・長崎工場を2009
だけお客様にお伝えするようにしていると言
年12月に見学。その体験から多くのことを
う宮口。すると、お客様からは「ワコールは
学んだと言う。
高いと思っていたけれど、やっぱりそれだけ
40以上のパーツを組み合わせながら1枚
のことはあるのね。一度、身につけたら手放
のブラジャーに仕上げていく縫製工程では、
せなくなるのもうなずけるわ」という言葉を
ミシンに向かう従業員たちの真剣なまなざし
返してくださることもあると喜ぶ。
が忘れられない。「一針一針、丹精込めて縫
ビューティーアドバイザーとして、ものづ
われていくのを見ているうちに、頭ではわか
くりの現場の姿をお客様にお伝えすることの
っていたつもりだった
“品質のワコール”
とい
大切さを宮口は日々、感じている。
西日本(百貨店担当)店 販売四課
松坂屋名古屋店 キャリアブランドリーダー
宮口 和美
ワコールホールディングス CSR 2010
21
《お客様とともに》
《お客様とともに》 4
女性の一生に寄り添う多彩な商品開発
「お客様の満足」を実現するのは、優れた接客品質だけではない。
商品そのものが高い品質と優れた機能を持ち、
お客様から支持され、共感されることが不可欠だ。
ワコールでは、
“ゆりかごからゆりいす”
まで、
さまざまな年代の女性に対応した商品を開発。
年代によって下着に求められる機能も異なるため、
女性のからだを科学的に研究し、
ライフステージに応じたインナーウェアを世に送り出している。
ワコールホールディングス CSR 2010
22
母体保護と健やかな赤ちゃんの誕生を願って
ワコールマタニティ
よくばり産後ブラ
授乳期から卒乳期は、バストのボリューム
《お客様とともに》
《お客様とともに》 4
変化が大きく、サイズに合うようブラジャー
を替えていく必要がある。2009年に発売さ
れた、
「よくばり産後ブラ」は、そんな不便さ
妊娠前
妊娠5ヵ月
妊娠10ヵ月
産後3ヵ月
を解消し、1枚のブラジャーで授乳期から卒
産後1年
乳期まで使えるように工夫した製品だ。伸縮
女性の一生のなかで最も心身の変化が大き
減するように開発されたのが「骨盤研究所」
性のあるウレタン素材をカップに使用し、授
い妊娠から出産期。体型変化とともに生理や
だ。ガードルが苦手な女性でも着用しやすい
乳期のボリューム増加に対応。また卒乳期に
感覚も変わるため、からだのリズムに合わせ
素材が使われている。
近づくころは取りはずし可能な新開発のパッ
て、
“産前は快適に”
“産後はもっと美しく”
産後用は、
“たて・よこ・ななめ”に伸びる素
ドを使用することで、バストラインを美しく
なってもらえる商品開発を心がけている。
材を用いて、サポート感がありながら、から
ととのえることができる。さらに、ストラッ
だの動きをさまたげず、骨盤が安定するよう
プをはずさなくても、伸縮性のあるカップを
に工夫されている。産後のボディラインを美
めくるだけで簡単に授乳ができるように工夫
2009年、産前・産後の骨盤まわりをサポ
しく保ちたいというママの願いに応える製品
されている。
ートする新機能ボトム
「骨盤研究所」
が発売さ
の一つだ。
骨盤研究所
れた。妊娠しておなかが大きくなると、姿勢
のバランスをとるために上半身が反り身にな
り、腰への負担が大きくなる。そこで骨盤を
安定させることで少しでも反り身になるのを
防ぎ、ラクにおなかを支え、腰への負担も軽
編み立てによるパワー
切り替えで骨盤まわり
をサポート
「よくばり産後ブラ」
ワコールホールディングス CSR 2010
23
《お客様とともに》
《お客様とともに》 4
のびのびと動けて、やさしく包みこむ製品設計
キッズワコール
活動的で成長著しい3~9歳のキッズ世
「スゴ衣」ニットトップ
代。インナーウェア・パジャマを中心に、の
薄くて軽くてあたたかい画期的な「スゴ衣」
。
びのびと動けて、からだをやさしく包みこむ
子どもたちが寒い冬ものびのび元気に動ける
製品づくりを心がけている。良質な素材を用
ようにと開発されたインナーウェアだ。アウ
いたていねいな縫製による高品質な製品づく
ターとしても着られる綿混の「スゴ衣」もある
りに努めているが、品質を落とすことなくコ
が、いずれも子どもの成長過程における体型
ンを採用。また、汗に強く、吸汗速乾性にす
スト削減を図ることが目下の課題である。
変化などのデータをもとに設計されたパター
ぐれた夏用インナーウェアも開発されている。
ップのインナーウェアを開発。バストがどん
ウェブでからだの成長や下着の選び方を楽しく解説
どん大きくなっていく、
「ステップ2」のジュ
ワコールジュニア
ニア向けに、バストが1カップ成長した場合
ジュニア世代(10~15歳)は少女から大人
の女性へと成長する過渡期。自分のからだの
変化に不安を感じることも多いことから、正
しい知識が楽しく学べるように、ウェブサイ
ト上で、
「ガールズばでなびマガジン」
を発行。
また、保護者向けに「ガールズ白書」も発行す
「スゴ衣」
「ガールズばでなびマガジン」
「ガールズばでなびマガジン」
http://www.wacoal.jp/junior/bodynavi
でも着用できるように工夫されている。カッ
プやアンダー部分には伸縮性のある素材を採
用した、無理なくフィットするノンワイヤー
「ガールズ白書」
ブラで、バストをやさしく支えるテープ(特
http://www.wacoal.jp/junior/mother
許出願中)が使われている。
ふわプチブラ
るなど、ジュニア世代の気持ちに寄り添った
からだの成長に合わせたインナーウェアを
サポートを行っている。
身につけることが大切な時期なので、3ステ
「ふわプチブラ」
ワコールホールディングス CSR 2010
24
《お客様とともに》
《お客様とともに》 4
着脱しやすい
マジックテープⓇ
高齢者の身体状況に着目し、着ごこちの良さを追求
らくラクパートナー
シルバー向け総合ライフスタイルブランド
あんしんウォーカー
上下に開閉
できるファスナー
の「らくラクパートナー」
。インナーウェアの
転倒時の衝撃をやわらげるパッド入りガー
製品設計とサイズ設定のため、60~80代の
ドル。大腿骨頂部をカバーする三層構造と厚
開発され、いずれも肌への刺激の少ないフラ
年代ごとの平均値・標準偏差の調査計測を実
みの変化によるパッドを採用
ット仕上げによる縫製が採用されている。
施。それに基づいて独自のサイズ規格“コン
し、後ろ斜め方向への転倒時
フォート(ゆったり)
”
サイズを採用している。
の防御を考えて開発されたも
インナーウェア、サポートウェア、カジュ
の。さらに腹筋をサポートす
年齢を重ねた女性特有のふっくら体型をカ
アルウェアを中心に、健康な高齢者はもちろ
る当て布構造で、立ち上がり
バーする立体設計で、美しいシルエットを実
んのこと、介護する側・される側、双方が使い
時や歩行時の足運びを安定さ
現するパンツ。深めのはきこみ丈、総ゴムで
やすい“らくラク親切設計”
。人生の先輩であ
せるよう工夫されている。
ラクなウエスト、ひざまで開
る高齢の方々への尊敬の念をもって、いつま
でも健康で長生きしていただけるよう、身に
衝撃吸収パッド内蔵
パジャマ
カルソン(ストレートパンツ)
閉できる裾ファスナーを付け
るなど、機能性にこだわり、
つける衣類で貢献することを目指している。
着替えがしやすいように身体状況に応じた
しかもおしゃれなカジュアル
加齢による、肌のかゆみや筋力低下などの
ボタンを開発。くぼみがついて使いやすい
ウェアだ。
身体状況に対応した製品をさらに充実させる
「エッグボタン」
、指先に力が入りにくい方で
とともに、いくつになっても美しく装いたい
も留めやすい
「パッチンボタン」
、介護する人
という女性の願いに応える、よりファッショ
もご本人もラクに着脱できる「マジックテー
ナブルなデザイン開発を行っていくことが課
プⓇボタン」の3種類から選べる。寝たまま、
題だ。
座ったままで着替えられる
「全開パジャマ」も
ひざまで開けられ
るファスナー付き
※
「マジックテープ」
は㈱クラレの登録商標です。
ワコールホールディングス CSR 2010
25
◆検証と今後の課題
●2009年度は約60 ,000件の
お問い合わせをいただきました
担当部署と連携を図りながら誠意をもって対応いたしました
が、こうした「お申し出」には、改善のためのさまざまなヒントが
《お客様とともに》
お客様とともに
詰まっています。それだけに、それを“うまく処理”するのではな
2009年度、お客様センターにお寄せいただいたお問い合わ
く、“いかにヒントに気づくか”が大切。こうした視点と姿勢で、
せの総件数は60 ,453件でした。そのうち53%は、商品の在
各部門・部署においてなお一層の努力を続けてまいります。
庫、取り扱い店舗、商品特長などについてのお問い合わせです。
12 .1%が「お申し出」で、商品、販売員、宣伝販促活動などへの
「お申し出」の内訳としては、大半(94%)が商品と売場へのご
苦情が寄せられました。
不満のご意見で、販売員(BA)へのそれは3%でした。
一方でBAにはお褒めの言葉も多くいただいていますが、BAへ
のご不満のご意見は極力、これをゼロに近づける努力が必要であ
るのは言うまでもありません。商品と売場への「お申し出」を減ら
その他 5,092件
(8.4%)
●お問い合わせ内容の内訳(2009年度)
総件数 60,453件
お客様から一層の共感をいただけるよう努力してまいります。
特別対応
1,440件
(2.4%)
商品・販売員などへの
お礼 830件
(1.4%)
商品・店舗についての
お問い合わせ
32,277件
(53.4%)
資料・パンフレット請求 1,415件(2.3%)
ご意見・ご要望
1,070件
(1.8%)
修理依頼 10,985件
(18.2%)
すことを含め、各店舗でさらに研鑽に励み、お客様満足の実現、
◆
2009年度、HDI(ヘルプデスク協会)が発表した、国際基準に
よる企業の問い合わせ窓口の格付け結果において、ワコールは最
商品・販売員などへの
お申し出(苦情) 7,344件
(12.1%)
高の
「三ツ星★★★」を獲得しました。
今後、こうした高い評価に慢心することなく、お客様センター
のさらなる充実を進めていきます。
ワコールホールディングス CSR 2010
26
●
「からだのエイジングと美の法則」
を発表
~ワコール人間科学研究所~
2004年から始まったスカッシュ(SQUASH)。店頭に寄せら
1964年の発足以来、ワコール人間科学研究所(以下、人科研)
れるお客様の声と、それに対するBAの意見を週単位でまとめて
では毎年、4歳から69歳の日本人女性1 ,000人の人体測定を続
本社に送り、商品開発などの本社担当部署が素早く善後策を講じ
け、45年を経た現在、その計測人数は延べ40,000人を超えるに
て店頭に返すという、スピーディーな
「情報伝達」
「情報共有」
と
「お
至っています。
客様対応」
のシステムです。
豊富なデータと研究成果から数々のヒット商品を開発してきま
SPEED(速さ)、QUESTION(質問)、ANSWER(回答)、
したが、22ページ~25ページで紹介している“お客様のライフス
SHIFT(仕組み)の頭文字をとったものですが、毎週、ほぼ全ての
テージにあわせた多彩な商品”も、人科研の研究成果が開発を縁の
BAから店頭情報が寄せられています。
下で支えています。
それらに、販売店担当が、商品部が、物流が素早く反応し、お
2010年4月、人科研は「からだのエイジング(加齢による体型
客様のご意見を反映した製品の開発・改良、店頭での接客品質向
変化)と美の法則」を発表。からだのエイジングには一定の法則が
上に取り組んでいます。
あること、バストやヒップの形が、加齢により変化していく順序
今後は、レスポンス(対応)を、よりスピーディーにしていくこ
は決まっていること、バストは加齢により、形だけでなくやわら
とが課題。併せて、BAの意見を商品企画に反映させる「BA検討
かさも変化すること、からだに合った下着を着用してきた人ほど、
会」の一層の充実、商品部などの本社スタッフが意識的に店頭に
加齢による体型変化が少ないといった事実が明らかになりました。
出向いて「現場をより深く知る」
ことも重要だと考えています。
ブラジャー選びは、サイズだけでなく、加齢によるバストのか
《お客様とともに》
●スカッシュ
(SQUASH)
で、
店頭からの声にクイックレスポンス
たち、やわらかさの変化に対応したものを選ぶことがとても重要
です。ワコールのBAはこうした知識も身につけて、店頭で文字通
りのアドバイザーとしてお客様に接しています。今後とも、こう
した専門性を磨き、接客品質のさらなる向上を図ってまいります。
ワコールホールディングス CSR 2010
27
《社会とともに》
「女性共感企業ワコール」の検証
お客様とともに
社会とともに
従業員とともに
ワコールホールディングス CSR 2010
28
乳がんの早期発見・
ワコール ブレストケア活動
《社会とともに》
《社会とともに》 1
早期診断・早期治療支援
「ピンクリボン活動」
すべての女性が美しく、
そして「乳がんに、負けない」社会を実現することは、
「女性共感企業ワコール」の使命―――。
そんな思いから、
乳がんで悲しむ女性をなくすことを目指して、
3つの分野にわたる
「ワコール ブレストケア活動」を
展開している。
乳がんの
早期発見支援
「乳がん検診
サポート事業」
ワコール
ブレストケア活動
Wacoal Breast Care Act.
美しいボディラインの
再生支援
「リマンマ事業」
ワコールホールディングス CSR 2010
29
《社会とともに》
《社会とともに》 1
ピンクリボン活動
「ピンクリボン・スマイルウォーク
仙台2009」に参加
スマイルウォークは朝日新聞社などが主催
する「ピンクリボンフェスティバル2009」の
締めくくりのイベントとして行われ、ワコー
2009年10月31日、仙台では3回目とな
ルも開催に協力。当日はウォーキングのスタ
る「ピンクリボン・スマイルウォーク」が開催
ート地点である勾当台公園市民広場にブース
された。テーマは『街と街を人と人でつない
を出展した。ピンクリボン活動に関する小冊
でいく。ひとりひとりがメッセンジャー』。
子を配布するとともに、美しいボディライン
約2600人が10キロと5キロの2コースに分
の再生をサポートする
「リマンマ事業」
などを
かれて仙台市内を歩き、道行く人々に、乳が
紹介。同時に、乳がん検診車「AIO
(アイオ)」
んの早期発見の大切さを訴えた。
を展示して参加者に内部を公開した。
スマイルウォークにブース出展
AIO
(アイオ)
を展示
ワコールホールディングス CSR 2010
30
乳がんへの関心を高める
「ピンクリボン・フィッティング・
キャンペーン」
ただくごとに「10円」を、お客様に代わって
ワコールから㈶日本対がん協会の「乳がんを
「ワコールに協力することで、
私たちも啓発される」
なくす ほほえみ基金」に寄付をする活動だ。
期間中、全国で113 ,910人にご協力いただ
「お客様にフィッティングキャンペーンの
乳がんへの関心を高めて、
「検診へのアクシ
いて、284 ,076枚のご試着があったことか
趣旨をご説明すると、“それなら協力します”
ョン」を呼びかけるワコールのピンクリボン
ら、ワコールより2 ,840 ,760円の寄付を行
“協力させてください”とおっしゃる方が少な
活動。活動の一環として2009年10月1日
った。さらに、ウェブサイトでも乳がんの正
くありません。大内屋様のご理解とご協力
~31日までの期間、全国各地にあるワコー
しい知識がクイズ形式で学べる「ピンクリボ
で、期間中は建物外壁に大きな垂れ幕を掛け
ルの売場で「ピンクリボン・フィッティング・
ン検定」を実施。受検1回につき5円をワコ
てキャンペーンをPRできたおかげで、予想
キャンペーン」に取り組んだ。これはお客様
ールから同基金に寄付する取り組みが行わ
以上のお客様にご試着いただきました」
にご自分のからだや乳がんへの関心を高めて
れ、1 ,685 ,170円の寄付につながった。
こう話すのは、大内屋 本店のビューティ
いただくために、ブラジャーを1枚ご試着い
ピンクリボン・フィッティング・キャンペ
ーンにご協力いただいた方に配布した
「My Bust Book」
とオリジナルチャーム
《社会とともに》
《社会とともに》 1
ーアドバイザー斉藤みゆきだ。ワコールでは
大内屋 本店様
ワコールホールディングス CSR 2010
31
仙台地区の11店舗でこのキャンペーンを実
「大内屋は仙台を中心に6店舗を展開して
身の勉強にもなり、多くのことを啓発されま
施したが、期間中、活動をご支援くださった
いて、すべての店でワコールさんに協力させ
した。もちろん“お客様への啓発”は大賛成
のが、大内屋 本店2 Fフロアマネージャーの
ていただきました。私たちも乳がんになる危
です。こんな素敵な社会貢献活動に取り組ま
山家麻美様である。
険性がありますから、協力することで自分自
れているワコールさんを、なかば羨ましくも
《社会とともに》
《社会とともに》 1
思っていたんです」
期間中、BAはキャンペーン主旨の説明や
ご試着などで、普段よりもお客様に応対する
時間が長くなる。そうしたとき、山家様をは
じめ大内屋のスタッフの皆さんが、ワコール
のBAに代わって接客してくださることが少
なくなかった。
東日本(専門店担当)店 販売二課 大内屋 本店 リーダー 斉藤 みゆき
大内屋 本店 2Fフロアマネージャー
山家 麻美 様
ワコールホールディングス CSR 2010
32
ワコールの乳がん検診の
社内受診率は約77%
「自分が受診していないと、お客様にもお
勧めしにくいですからね。会社に支援制度が
《社会とともに》
《社会とともに》 1
あるのでとても助かっています。これからも
ワコールがピンクリボン活動に取り組むよ
“ピンクリボンといえばワコール”と言ってい
うになったのは2002年9月から。今ではア
ただけるように、さまざまなところで会社の
メリカやアジアを中心に11カ国の海外グル
姿勢をPRしていきたいと思います」
ープ会社に活動が広がっているが、従業員の
日本人女性の乳がん検診の受診率は約20
大半が女性で占められていることから、ま
%と低い。20人に1人が乳がんになり、毎
「それは、フィッティングキャンペーンは
ず、社内での意識啓発を重視した活動からス
年10,000人を超える方が命を失っている現
ワコールさんだけのキャンペーンではない、
タートさせた。
状を考えたとき、社会に対する意識啓発にと
という意識が私たちにあったからだと思いま
乳がん検診の社内受診率を高めようと、啓
どまらず、一歩すすめて検診率を高める活動
す。斉藤さんたちワコールのBAさんも、大
発活動を行うと同時に、ワコール健康保険組
が必要になる。
内屋のスタッフも、同じように大内屋で働
合加入の全社員(20歳以上)と被保険者の配
く、言わば仲間です。全員でキャンペーンを
偶者を対象に、受診費用をワコールと健康
盛り上げたいという気持ちになりました」
保険組合が出し合って1人あたり1万円を負
POPのディスプレイをはじめ、山家様と
担。大半の女性は費用負担をすることなく検
斉藤が打ち合わせすることも少なくなかった
診が受けられるようにした。その結果、社内
が、そんな光景は、大内屋様のすべての店舗
受診率は現在約77%に。2012年には100
でくり広げられていた。このように「ピンク
%を目指して活動を行っていく。
リボン・フィッティング・キャンペーン」は、
斉藤自身も、毎年、マンモグラフィーと超
多くの百貨店や専門店のご協力を得ながら、
音波の両方で乳がん検診を受けている一人
全国各地で展開されたのである。
だ。
ワコールホールディングス CSR 2010
33
《社会とともに》
《社会とともに》 1
乳がん検診サポート事業
医療機関と協力し、
乳がん検診車「AIO(アイオ)」に
よる検診サポート事業をスタート
日本の乳がん検診の受診率は約20%しか
なく、欧米の70~80%台と比べるとずいぶ
ん低い。ワコールでは少しでも検診の機会を
増やすことで早期発見につなげたいと考え、
2009年10月から「乳がん検診サポート事
業」をスタートさせた。デジタルマンモなど
最新の検診機器を搭載した乳がん検診車を購
入し、検診事業を行っている医療機関を支援
ワコールオリジナル移動式検診車両
「AIO
(アイオ)
」
マンモグラフィ
する取り組みである。
実際の検診は医療法人社団プラタナス「イ
り組む医療コンサルタントの大石佳能子氏
ーク丸の内」
(東京都)に検診車を賃貸する形
(株式会社メディヴァ代表取締役)
の姿に感銘
で行い、より多くの女性に
“愛を”
届けるため
を受けた塚本社長が、
「ワコールにできること
にという思いを込めて、
「AIO
(アイオ)
」と命
はないか」と、大石氏に連絡を取ったのがき
名した。
っかけだった。
この事業は僻地医療や病院の再生などに取
「当時、ワコールさんがピンクリボン活動
超音波検診
(エコー)
ワコールホールディングス CSR 2010
34
《社会とともに》
《社会とともに》 1
をされていることは知っていました。しかし
境づくりをすすめている。
30年以上も前から、術後のケアをするリマ
乳がん検診サポート事業では、AIOで検診
ンマ事業に取り組んでこられたことは知らな
を受けて、万一、乳がんが発見された場合に
かったのですが、ワコールさんにしかできな
備えて、同クリニックで治療を受けたり、聖
い社会に貢献する貴重な事業だと思いまし
路加国際病院や東京大学病院など、提携先の
た。下着メーカーの使命として乳がんと真剣
医療機関を紹介できる体制が整えられた。今
に向き合おうとされていましたから、いろい
後は各地域の病院との連携をすすめ、安心し
ろ検討した結果、検診車の導入を提案したの
て受診できる体制づくりを目指している。
です。検診車があれば、職場やショッピング
「AIOによる乳がん検診事業をすすめるた
センターなど、どこでも気軽に検診が受けら
めに、現在、健康保険組合や企業などに検診
れるようになり、早期発見につながる素晴ら
を積極的に働きかけているところです。でも
しい事業になると考えたからです」
ワコールさんのように社内の受診率が約77
%と高い企業はほとんどありませんから、多
各地域の病院との連携をすすめ、
安心して受診できる体制づくりを
目指す
株式会社メディヴァ 代表取締役
大石 佳能子 氏
くの企業に見習ってもらいたいものです」
と同時に、
「ワコールさんも受診率を高める
された従業員のみなさんの思いや心理的な変
ためにどのような努力をされてきたのか、そ
化などについても知ることができれば、説
の結果、どんな医療的な効果があったのかと
得力のあるデータになるでしょう。これもま
この事業に協力する
「イーク丸の内」
は、
「女
いった点などを、積極的に公表していただけ
た、社会貢献の一つではないでしょうか」と
性による女性のための統合ヘルスクリニッ
ればと思います。そのことが受診率を高める
大石氏は指摘する。
ク」として、女性特有の疾患の健康診断と治
ための貴重なデータになると考えるからで
乳がん検診サポート事業はまだ始まったば
療を行っている。大石氏は同クリニックの運
す。また、検診を受けることに抵抗感のある
かり。いろいろな街角でAIOによる検診を受
営にも参加し、女性が安心して受診できる環
女性が多いという現実がありますから、受診
けられる日が来ることを期待したい。
ワコールホールディングス CSR 2010
35
《社会とともに》
《社会とともに》 1
リマンマ事業
美しいボディラインの再生支援に
取り組み、術後のケアをサポート
っている。
これらのリマンマ製品は2010年3月にオ
ープンした
「リマンマルーム大阪」
を含め、全
ブレストケア活動の3つ目の柱となるの
国6カ所の「リマンマルーム」で個別にご相談
が、
「リマンマ事業」である。乳がん検診サポ
を受けながら販売しており、同時に通信販売
ート事業やピンクリボン活動が、乳がんの早
も行っている。
期発見を支援するための活動であるのに対し
さらに毎年、各地で「採寸・試着などの無
の相談会は、これまで133会場で行われ、
て、リマンマ事業は「美しいボディラインの
料相談会」を開催。実際の製品を手に取って
18 ,000人を超える方々にお越しいただい
再生支援」に取り組み、術後のケアをサポー
ご覧いただいている。2009年度は山口を
たことになる。
トする事業だ。
はじめ、8会場で相談会を実施。約800人
数多くの女性のアフターケアを行ってき
乳がんを経験された方に、美しいボディラ
にご来場いただいた。1993年から続くこ
たリマンマ事業。インナーウェアメーカー
インと素敵な笑顔を取り戻していただきたい
としての社会的責任を自覚した事業であり、
との思いから1974年より取り組んでいるリ
「女性共感企業」ワコールならではの取り組
マンマ事業。手術やリハビリの専門家の意見
みである。
とワコールの長年の研究をもとに、からだへ
◆
の負担を軽減するパッドやインナーウェア、
『乳がんに、負けない』
水着などの製品を開発。バストの状態に応じ
ワコールのブレストケア活動は、これから
たさまざまな機能を備えたブラジャーや、自
も女性たちの健康を願いつつ、多彩な取り組
然な感覚でお使いいただけるパッドなどが揃
リマンマルーム大阪
みを続けていく。
ワコールホールディングス CSR 2010
36
《社会とともに》
《社会とともに》 2
社会貢献活動
「女性共感企業」を目指すワコールでは、
女性の健やかな毎日を願って多様な社会貢献活動に取り組んでいる。
女性たちに寄り添い、応援をする活動のいくつかをレポートしよう。
㈶京都服飾文化研究財団の監修のもとにつくられたワコールアンティークランジェリードール
(本社1Fホール)
ワコールホールディングス CSR 2010
37
《社会とともに》
《社会とともに》 2
ツボミスクール
小・中学生とその保護者向けに
「下着教室」
を開催
開かれた。
ツボミスクールの講師
(ワコールの従業員)
がワコール人間科学研究所の研究データなど
をもとに、体型の変化や大人と子どものから
だの違いなどをわかりやすく説明。さらに成
学校に無料配布されている小学4
~6年生向けの冊子。保健指導や
保健体育の副教材として活用され
ている。
長に合わせたブラジャーの選び方、バストサ
イズの正しい測り方についてゲームなどを交
小・中学生(小4~中2)とその保護者に、
えながら楽しく学んでいく。
下着やからだについての基礎知識を学んでも
最近は学校の授業として行われるケースも
らおうと、各地で開催している「ツボミスク
多く、また、養護教諭の研修会、学校保健委
ール」。思春期の子どもたちは、自分の身体
員会、PTAの研修会など、教育現場での開
的な変化に戸惑いや不安を感じることも多い
催が増えてきている。参加した子どもたちか
り多くの養護教諭が児童・生徒に指導できる
ため、きちんとした知識を身につけ、健康で
らは、
「スクールが楽しかった」
「恥ずかしがら
よう、希望される学校には、ツボミスクール
美しい女性に成長してほしいという願いを込
ずに自分のからだを理解するのは大切だと
の内容を抜粋した教材の無料配布や下着サン
めて始まった活動だ。
思った」など、たくさんの感想が寄せられて
プルの貸し出しを実施。2009年度は全国約
2001 年 の ス タ ー ト か ら こ れ ま で に
いる。教室が開かれた学校では、次年度以降
300校に配布したが、2010年度も継続し
20 ,000人余りが参加。2009年度の参加者
も継続して開催を希望される場合がほとんど
て配布を進める予定だ。
は5 ,014人にのぼり、各地の子ども会や学
で、高い評価を得ていると言えるだろう。
校、ガールスカウトなどで309回の教室が
ただ、講師が3人と限られているため、よ
貸し出し用の下着サンプル
http://www.wacoal.jp/company/tsubomi
ワコールホールディングス CSR 2010
38
《社会とともに》
《社会とともに》 2
乳房文化研究会
「乳房」について多角的な議論を展開
話題提供を受けながら、活発な議論を展開し
てきた。さらに多くの人に興味を持ってもら
えるテーマを設定し、議論を深めていくこと
女性のシンボルと呼ばれる
「乳房」
。乳房に
ついては医学、生物学、文化人類学、心理学
など、それぞれの専門領域で多くの研究がさ
れている。しかし、それらを横断的につなぐ
組織がなかったことから、その役割をワコー
ルが担おうと1996年、研究が深まることに
期待して、研究会を立ち上げた。
これまで、女性の
「こころ」
と
「からだ」
を取
が求められている。
2010年1月23日の定例研究会
●2009年度に行われた定例研究会
2009年8月8日
「現代親子のおかれる環境と子育て支援
~子育てから 子育ち・親育ちへ~」
柏木 惠子 東京女子大学名誉教授
田代 明美 コーディネーター
2009年10月24日
「罹患体験から語る〈乳癌〉の意味」
鈴木 淳子 アーティスト/女子美術大学講師
北山 晴一 コーディネーター
2010年1月23日
「人体の美しさを考えよう
~芸術学から・動物学から~」
高階 絵里加 京都大学人文科学研究所准教授
蔵 琢也 早稲田大学意志決定研究所 客員研究員
平田 多津子 コーディネーター
り巻く興味ある研究テーマで、各方面からの
http://www.wacoal.jp/company/nyubou-bunka
CFFC(NPO法人チャイルド&ファミリー・フレンドリー・コンソーシアム)
幸せな妊娠・出産・育児応援
民間の育児関連企業十数社、助産師ととも
より良い家庭づくり、子どもを産み育てやす
なれば、大きな成果もあげ
に、妊婦や子育て家族がここちよく暮らせる
い社会の実現を目指している。
られるのではないかと期待
社会づくりの推進を目的として設立された
これまでにマタニティマークの普及活動、
している。
CFFC。ワコールはCFFCに参画し、妊娠、
助産師による「祝い帯の巻き方講習会」や「悩
出産、子育て、家庭づくりに関する勉強会、
み相談」などを開催。育児の楽しさや家族の
シンポジウムなどの開催を通じて、
「育児が楽
大切さを伝えていく活動は個人や一企業では
しいものである」という社会的認知の促進、
成し遂げにくいものだが、加盟企業が一体と
マタニティマークを付けた
ストラップ
http://www.cffc.jp
ワコールホールディングス CSR 2010
39
《社会とともに》
《社会とともに》 2
cocoros
(ココロス)
「下着心理学」
を究める研究会
号)
に、共同研究者である菅原健介教授
(聖心
女子大学)との共著として連載した。引き続
き5月には「女性の心理と下着の研究サイト
下着に向けられた女性の思いを社会科学
cocoros」をオープンして研究成果を一般
的に検証する「 cocoros(ココロス)」。心
公開、日本繊維製品消費科学会の学会誌にも
理学の学識者のもとに随時、企業メンバー
論文を発表するなど、学術的な手法にもとづ
が参加して、5年前から共同で調査研究を進
く下着心理研究の社会的認知を広げている。
めてきた。
「下着心理学」
に関する研究は少なく、ほと
2009年度は過去の研究をまとめ、『隠さ
んど未開拓の学問分野。戦後の洋装下着の歴
れた衣服』と題して、朝日新聞出版の月刊誌
史的資料も有するワコールにこそ可能な「学
『一冊の本』
(2009年7月号から2010年3月
術的な社会貢献」
として期待されている。
http://www.cocoros.jp
公益財団法人 京都服飾文化研究財団
(KCI)
西欧服飾の研究から人間の豊かな文化を見直す
現在の私たちの衣服の源泉である西欧の服
の欲望」展を京都国立近代美術館と東京都現
飾、および服飾に関する文献や資料を体系的に
代美術館で開催し、好評を博した。
収集・保存し、研究・公開する京都服飾文化研究
近年はルイ・ヴィトン、シャネルなどの世
財団。西欧服飾の研究を通して人間の豊かな文
界的に著名なブランドから作品の寄贈を受け
化を見つめ直しながら、ファッションと私たち
るなど、その研究活動への評価が高まってい
が着る衣服をさまざまな角度から切り取り、そ
る。KCIギャラリーでの展示、研究誌の発行
の意味を問い直す研究を行っている。
なども継続的に行うとともに、ウェブサイト
2009年は「ラグジュアリー:ファッション
における収蔵品の公開も行われている。
「ラグジュアリー:ファッションの欲望」
於:東京都現代美術館 2009年
C
○京都服飾文化研究財団、畠山直哉撮影
http://www.kci.or.jp
ワコールホールディングス CSR 2010
40
《社会とともに》
《社会とともに》 3
ちゅうちょ
“捨てるのに躊躇する…”
そんな女性の気持ちに応える、
「ブラ・リサイクル」
お客様の不用なブラジャーを店頭で回収し、
産業用固形燃料として利用するワコールの
「ブラ・リサイクル」
。
キャンペーンも3年目となり、
2010年度は昨年より約150店舗多い約800店舗で実施された。
店頭での具体的な取り組みを、
「ウンナナクール」
渋谷スペイン坂店を通してレポートしよう。
ワコールホールディングス CSR 2010
41
《社会とともに》
《社会とともに》 3
不用になったブラを回収用
回収されたブラ・リサイク
のブラ・リサイクルバッグ
ルバッグは密封したまま、
に入れて店頭に持っていく。
破砕し、RPFに加工される。
製紙会社で製造された紙で
RPFは製紙会社の燃料とし
ブラ・リサイクルバッグを
てリサイクル。
つくる。
ブラを回収して再資源化。そんなエコな循環の一部に、私もいる。
そう思うと、CSR――企業の社会的責任って、会社の誰かがすることじゃなく、
私自身の仕事がCSRの一部だったんだなって、感じるようになりました。
(㈱ウンナナクール 渋谷スペイン坂店 店長 成田 麻美)
ワコールホールディングス CSR 2010
42
3年目の
「ブラ・リサイクル」
前年の気づきをヒントに、
POPを改良
《社会とともに》
《社会とともに》 3
2009年に続き今年も、不用になったブラ
ジャーの回収期間はブラの日(2月12日)か
らアースデイ(4月22日)までの約2ヵ月。
「ウ
ンナナクール」渋谷スペイン坂店では約1ヵ
月前からポスターなどで告知を始めたが、
「お
客様の関心はとても高いです」と店長の成田
麻美。
「“どこのお店でやっているの?”というお
問い合わせも多いですし、メールマガジンの
ご案内を見て“回収バッグをもらいにきた”と
㈱ウンナナクール 渋谷スペイン坂店 店長 成田 麻美
いう方も多くいらっしゃいます。3年前の初
年度を思えば、本当に認知度が高まったなぁ
と実感しています」
「ウンナナクール」の顧客層にはナチュラル
志向の若い世代が多いこともあり、ワコール
の他店舗に比べれば、3年前のスタート時か
らお客様の反応は予想以上に良かった。
だが、当初はスタッフ自身にとっても初め
ワコールホールディングス CSR 2010
43
じっくり、ゆっくり、成長中。
今年の回収バッグは、言わば
「メイド・フロム・ブラジャー」
ての取り組み。資料での勉強には限界もあ
いたのだ。
り、特に多かったのが「で、結局何がどうな
「あ、これになるんだ!」。百聞は一見に
るの?」という、基本的な、けれど大事な疑
しかず。今年度はお客様の納得もぐんと早
問だった。
くなった。このディスプレイの工夫のきっ
「裁断、分別して、産業用固形燃料RPFに
かけは、前年の「アースデイ東京2009」会場
「環境にいい」
「エコに協力できる」と支持が
(代々木公園)で得られた気づきだ。RPFの
広がってきた「ブラ・リサイクル」
。だが、実は
アタマでは理解していたが、
「私たちが本当
実物を展示したところ、
「よくわかる」と好評
そもそものきっかけは、
「エコ」
ではなかった。
に実感したのは今年のPOPを見てから」と成
だったことから生まれたアイデア。前年の取
では何だったのだろう?
田は言う。今年のPOPには、プラスチック
り組みが着実に今年につながっている。
それは、2007年にワコールが実施した意
ケースに入ったRPFの実物がセットされて
識調査。61%の女性が、
「ブラジャーを捨てる
加工されます」
《社会とともに》
《社会とともに》 3
ちゅうちょ
と答えたのだ。
ことに、躊躇することがある」
ちゅうちょ
■ブラジャーを捨てるときの躊躇
ちゅうちょ
店長の成田も、そうだったと当時を振り返
55.4%
る。「実は私もたくさんあったんです。もう
※躊躇する理由
使えないブラがタンスに」
38.5%
躊躇する
ことはない
39%
29.6%
躊躇する
ことがある
61%
28.5% 26.0%
日々お客様に商品をおすすめするスタッフ
23.2% 21.7%
であると同時に、彼女自身も「ブラの捨て方」
14.8%
0.5%
その他
環境問題が気になる
いつか着る機会が来るかも
しれないと思う
愛着や思い出がある
なんとなく捨てられない
自分のプライバシーが
もれるような気がする
どうやって捨てればいいか、
方法がわからない
まだ着られると思う
捨てた後、誰かの目に
ふれるのではないかが心配
出典:「女性の心理と下着に関する意識調査」
㈱ワコールホールディングス/聖心女子大学
文学部 菅原健介教授との共同研究
に困っていた一人の消費者、一人の女性だっ
たのである。
「その悩みを解決したい」。「けれど、せっ
かく回収するなら、リサイクルでもう一度、
生かしたい」
そうした女性の気持ちに寄り添いたい、と
ワコールホールディングス CSR 2010
44
いう思いから「ブラ・リサイクル」は始まった
しかし、息の長い取り組みに育てること
のだった。言わば、
「自分たちのつくった商品
で、
「環境意識の啓発」や「企業価値の向上」に
に最後までていねいに向き合おうとする姿
つなげていくことができれば、という思いが
勢」。そんな会社の考え方に、成田は強く心
ある。だから、
「アクションを続けることに意
動かされたという。
味がある」というのがワコールの考え方であ
2010年は、回収バッグにも去年までとは
り、回収量やリサイクル効率はその次の要素
ひと味ちがう工夫がなされた。
それは、言ってみれば「メイド・フロム・ブ
気持ちにひびく取り組み。
だから続く、広がる
ラジャー」。回収バッグに使われる紙をつく
《社会とともに》
《社会とともに》 3
なのだ。
今後は、毎年恒例の取り組みとして継続し
ていくこと、
「店頭できっちり伝える」という、
る燃料に、2009年の「ブラ・リサイクル」で
現在、ごみの減量については、「3 R」の考
地道だが着実な努力を続けることに加えて、
得られたRPFが使われたのである。
え方が一般的に言われている。「3 R」とは、
リメイクなど幅広い取り組みを広げていくこ
始まりは、RPF加工を請け負う日本ウエ
①Reduce(リデュース=ごみをなるべく出
とも課題となりそうだ。
スト株式会社様からの「本当に循環するしく
さずにすむようにする)、②Reuse(リユー
成田は言う。
みをつくりましょう」というご提案だった。
ス=再使用する)、③Recycle(リサイクル
「学生時代、授業で“企業の社会的責任”に
RPFを製紙工場で燃やし、それを燃料にし
=再資源化する)を総称したもので、優先順
ついて勉強しました。そのときは“会社がや
て紙をつくる。そうしてこそ、リサイクルも
位もこの数字の通り。つまり、
「まずごみを出
ること”だと思っていた。でも今はちがいま
完成されたものに一歩近づく。
さないことを考えましょう」というのが、理
す。
『ブラ・リサイクル』の取り組みに関わっ
「ぜひやろう!」。そんな“裏方”の気持ち
想的な環境配慮のあり方である。
て、私自身の仕事も“企業の社会的責任”の一
は、店頭へも届いている。
今年の「ブラ・リサイクル」の回収実績は
部なんだと感じられるようになりました」
「そういうのって、いいですよね。なるほ
13 ,632袋、5 ,180 kg。年々回収量が増え
理屈ではなく、からだでCSRを“実感”で
どって思えます」
と成田。
てはいるが、ごみの減量に大きな効果があっ
き、
“共感”できる。それはまた、お客様の“実
たと胸を張れる数字ではない。
感”であり、
“共感”でもある。
ワコールホールディングス CSR 2010
45
「リサイクル」
「長く使う」
「再利用」
。
3つの視点で、
ワコールのエコをアピール
《社会とともに》
《社会とともに》 3
4月17・18日の2日間、東京の代々木公園で「ア
ースデイ東京2010」が開催され、135,000人の人出
でにぎわった。
ワコールでは、2009年に続いて今年もブースを出
展。回収バッグを配布するとともに、回収ボックス
を設置。
「ブラ・リサイクル」を呼びかけた。また、
「ランチ」の販売コーナーでは、アップリケマシーン
を持ち込み、エコバッグ、コットンTシャツといっ
た商品にその場でアップリケやフロッキーをほどこ
すサービスを実施。カスタマイズすることで、自分
だけのオリジナリティが表現でき、商品への愛着が
増す。
「手をかけて、長く大切に使い続ける気持ちに
つなげたい」と、
「ウンナナクール」販売部の石田か
おり、
「ランチ」ラフォーレ原宿店の店長・阿部文枝
らが応対に当たった。さらに、4人の作家とのコラ
ボレーションによるブラ・リメイク作品の展示も。
このように「リサイクル」「長く使う」「再利用」
という3つの視点で、来場者にワコールの取り組み
ブラジャーのレースをランプシェー
ドにリメイク
をアピールした。
ワコールホールディングス CSR 2010
46
初めて、海外でも「ブラ・リサイクル」
。
台湾ワコール㈱、40周年を機に約500店舗で実施
2010年度は、初めて海外でも「ブラ・リサイクル」が展開されたの
が大きなトピックだ。
《社会とともに》
《社会とともに》 3
「今年はぜひ海外でも実施を」と、海外のグループ会社に呼びかけた
ところ、今年(2010年)、40周年を迎える台湾ワコール㈱が名乗りを
上げた。グループ企業の台湾ワコール㈱は、かねてから環境への関心
が高く、40周年の企画事業として「環境愛・親自然美学キャンペーン」
を実施。エコイメージで統一した店頭キャンペーンを行い、台湾全土
の約500店舗で「ブラ・リサイクル」を実施。3月発売のキャンペー
ン商品・オーガニック素材商品「エコブラ」は大ヒットとなるなど、
大きな反響が得られた。
しかし難関だったのが、パートナーとなる処理工場探しだった。現
美風 華歌爾新概念店
地回収・現地加工をするために不可欠な、RPF加工工場が台湾にはな
かったのだ。次善策として、今年は「RDF」
(※)での再生をすること
にした。サーマルリサイクルの効率はRPFより下がるが、台湾唯一の
RDF加工業者である高峰資源再生服份有限公司が「これを機に台湾に
もRPFを導入したい」と熱望していることもあり、実施を決定。本社
から担当者が現地視察に赴き、情報提供なども行った。
順調に進めば、日本の環境技術を世界に伝える、その仲人をワコー
太平洋SOGO 復興館店
ルが担うことになる。
※RDFとは、一般廃棄物を原料とする廃棄物固形燃料のこと。主に古紙や廃プラスチック(繊維くずなどを含む)
からなる産業廃棄物を原料とするRPFに比べて、発熱量が安定しないなどの課題がある。
ワコールホールディングス CSR 2010
47
◆検証と今後の課題
●店頭での「ピンクリボン・フィッティング・キャンペーン」
金」に寄付しています。参加者の推移は表の通りです。この活動
~これからもより多くの皆様に自分のバストのことを
を通して、今後も、より多くの皆様に自分のバストのことを、そ
知ってもらうキッカケづくりに~
して乳がんのことを知っていただければと願っています。
《社会とともに》
社会とともに
ワコールでは「自分のバストを知ってもらうこと」をスローガン
に、2006年度より10月の「ピンクリボン月間」にあわせて、
「ピ
ンクリボン・フィッティング・キャンペーン」をスタート。2008
●2010年、
「ワコールブレストケアプロジェクト」
がスタート
年度からはウェブ上で乳がんのことを知っていただくために「ピ
ンクリボン検定」も行っています。フィッティングキャンペーン
ワコールでは2002年より社内で「ピンクリボンプロジェクト」
では、お客様にご試着いただいたブラジャー1枚につき10円を、
を立ち上げ、社内外における「ピンクリボン活動」に力を注いでき
ウェブ上の検定では1回の受検につき5円を、参加者に代わって、
ました。そして2009年10月には「乳がん検診サポート事業」を
ワコールから㈶日本対がん協会の「乳がんをなくす ほほえみ基
開始しました。既存の「リマンマ事業」と「ピンクリボン活動」の3
つの活動の連携を強化するために「ワコールブレストケアプロジ
2007年度
2008年度
2009年度
ご試着いただいた
お客様数
(人)
111 ,989
113 ,841
113 ,910
ご試着いただいた
ブラジャーの枚数
(枚)
273 ,228
290 ,725
284 ,076
キャンペーン全体での
¥3 ,144 ,829 ¥4 ,410 ,115 ¥4 ,525 ,930
募金合計
内 ご試着からの募金 ¥2 ,732 ,280 ¥2 ,907 ,250 ¥2 ,840 ,760
訳 検定からの募金
※ ¥412 ,549 ¥1 ,502 ,865 ¥1 ,685 ,170
※2007年度はクリック募金
ェクト」
を新たにスタートさせました。
取り組みは始まったばかりですが、今後は3つの分野それぞれ
で、いままで以上に活動の深化、相互連携、広く社会への情報提
供…に取り組んでいく予定です。
中でも、
「乳がん検診サポート事業」と「リマンマ事業」について
は、医療機関などとの連携を深め、「必要な方への情報提供」によ
り積極的に取り組んでいきます。
ワコールホールディングス CSR 2010
48
《社会とともに》
●
「ブラ・リサイクル」
活動のさらなる拡大
●国内工場における裁断くずの減量
「ブラ・リサイクル」活動については年々、実施店舗が増え、
縫製工場では繊維材料の約4割が裁断くずになり、工場全体の
2010年は全国の800店舗で実施。2月~4月の約2ヵ月に13,000
廃棄物の約5割を占めることから、国内の縫製工場では以前より、
を超える回収袋が集まりました。
「年に一度、タンスがスッキリ整
「ブラ・リサイクル」同様、それを産業用固形燃料(RPF)にして製
理できます」とお客様の評価も高く、
「キャンペーン期間だけでなく
紙工場で利用するサーマルリサイクル※に取り組んできました。
通年で実施して欲しい」というご要望もいただいています。しかし、
こうしたサーマルリサイクルの推進と同時に、裁断くずそのも
通年実施のためにはさまざまなハードルがあり、ご要望にただちに
のを軽減すること(リデュース)も縫製工場における環境対応の大
お応えできる状況ではありません。ただ、実施店舗は、国内外で拡
きなテーマです。国内縫製工場ではCADを使ったエコ設計商品の
大していきたいと考えています。
比率向上で裁断くずの削減を進めています。
2010年は、初めて海外でも展開したのが大きなトピックで
また、新潟ワコール縫製㈱などでは、綿を中心とした天然素材
す。台湾ワコール㈱が全土の約500店舗で実施し、多くの回収袋
の生地の裁ちくずや端切れを、福祉施設や学校に提供して再利用
が集まりました。今後は他の国々での実施が望まれるところです
していただく(リユース)活動なども行っています。今後も、でき
が、台湾がそうであったように、パートナーとなる処理工場の確
るところから環境負荷軽減のための取り組みを行っていきます。
保が大きな課題。しかし本業とリンクした社会貢献活動であるだ
けに、そうした課題にチャレンジし、
「ブラ・リサイクル」活動を世
廃棄物を単に焼却処分するだけでなく、焼却の際に発生するエネルギーを回
界に広げていきたいと考えています。
2008年
※サーマルリサイクル
収・利用すること。結果として資源
(石油・石炭)
の節約と焼却ごみの削減につな
2009年
2010年
実施店舗数
619店舗
650店舗
800店舗
回収袋数
6 ,209袋
9 ,500袋
13 ,632袋
RPF加工重量
3 ,000㎏
3 ,590㎏
5 ,180㎏
がります。
ワコールホールディングス CSR 2010
49
《従業員とともに》
「女性共感企業ワコール」の検証
お客様とともに
社会とともに
従業員とともに
ワコールホールディングス CSR 2010
50
《従業員とともに》
《従業員とともに》 1
女性が働く「職場としてのワコール」
もともとワコールは、女性が活躍する部署の多い企業だ。商品企画、デザイン、パターン、
生産の現場、そしてお客様に直に接する販売の最前線…。いずれの職場も、女性の情熱や生活
感覚を熟知しなくてはできない仕事である。そうであるが故に、多くの職場で女性従業員が、
女性ならではの感性とビジネススキルを発揮し、男性に伍して仕事に取り組んでいる。
そんな“従業員である女性”からの共感なくして「女性共感企業ワコール」の実現はありえない。
ここでは4人の女性従業員に、女性が働く「職場としてのワコール」を語ってもらった。
ワコールホールディングス CSR 2010
51
◆
年々、充実してきた出産休暇や育児休業制度
同期入社した女性で、今も会社に残っているク
リエーター職は私一人です。しかし今はいろん
はその指導者として、ここ2年弱の間に5回も
な点で改善されてきて、ワコールでは結婚した
直江 千代
現地に行っています。このようにワコールで
から退職するという人は少なく、契約社員を含
インナーウェア商品企画部 は、私のような子どもを持つ女性にも権限と裁
めて多くの女性従業員が出産休暇や育児休業を
商品設計課 ファンデーション
量が委ねられ、大きな仕事が任されています。
取得しています。
このことは、育児と仕事を両立する女性支援の
今後は、男性従業員の育児休業取得をいかに
制度や環境が、年々整ってきたことが大きな要
増やしていくか、が課題ではないでしょうか。
ブラジャーのパタンナー一筋にやってきまし
因のひとつになっていると思います。昔は他の
これは日本企業全体のテーマでもありますが、
たが、最近、海外の縫製工場に設計知識も持た
会社もそうであったように、出産休暇や育児休
「ワコールがその先陣を担う!」くらいの意気
せようということになり、こちらから出向いて
業といったものが十分ではありませんでした。
込みがあってもいいのではないかと思ってい
現地メンバーを育成することになりました。私
結婚すれば退職するのが当たり前。ですから、
ます。
チーフパタンナー
1985年入社
◆
魅力的な「ママさん従業員の自主的サークル活動」
の大きさを痛感。直江さん同様、任された仕事
に不足はありません。
ーにはいろいろ悩むところ。でも、それだけ重
要な仕事だと自覚しています。
3人の子を持つ母ですが、ワコールには
わ く わ く
「WACWAC母の会」というママさん従業員の会が
私自身BAの経験はありませんが、逆にそれを
あります。毎回、昼食をとりながら育児をはじ
武器にしようと思っているんです。それは、“売
めとしたさまざまな情報交換を行い、仕事と家
る側”に立つ前に、まず“買う側”に立つというこ
庭の両立についての悩みもいろいろ話し合って
とです。言ってみれば消費者目線。ですから、
います。私は立ち上げメンバーで、保育園への
教育課でビューティーアドバイザーの研修用
必要以上に専門用語は使うべきではないと思っ
入園心構えを相談したり、相談されたり…。会
冊子を企画・制作しています。なかにはボロボロ
ています。また、BAは個人情報や薬事法につい
社の休暇制度とは別に、こうした従業員の自主
になるまで使ってくださる店舗もあって、責任
ての知識も必要ですから、トレーニングメニュ
的なサークルがあるのもワコールの魅力ですね。
手島 朋子
WB事業本部 事業管理部 教育課 1991年入社
《従業員とともに》
《従業員とともに》 1
ワコールホールディングス CSR 2010
52
男女の区別なくダイバーシティ(人材多様性)教育の推進を
でも、これは当社に限ったことではありま
ネスについては、実際の乳がん検診車製作か
社」には、いい面・悪い面の両方があって、悪
ら購入、また事業骨子の組み立てなど、ワコ
く言えば男女が対等ではなく、
「やさしく包み
事業企画課
ール側の担当者として業務全般に関わらせて
込まれる女性」の自立を妨げてしまうことが
1 9 8 7年入社後、ドイツ留
いただきました。私自身、仕事の手ごたえは
あるかもしれません。一方、女性の側にも問
学のために退社し、2 0 0 1
十分感じています。
題があって、そのことに安住して、積極的な
ワコールは、とにかく「女性にやさしい会
発言やアクションを起こさないことを反省し
社」ですね。幹部社員を含めて、男性のみん
なければいけないのかもしれません。そんな
これまで、新規事業の立ち上げや、そのた
ながやさしい。そして皆さん人がいい。女性
意味からも、男女の区別なく、すべての従業
めのコンセプトの組み立てをする業務をいく
を包み込んでくれる家族的な会社で、居ごこ
員にダイバーシティ(人材多様性)教育の推進
つかしてきました。乳がん検診サポートビジ
ちは抜群かも。
が必要だと感じています。
◆
鈴木 洋子
総合企画室 事業企画部 年再入社
◆
せんが、
「女性を包み込んでくれる家族的な会
《従業員とともに》
《従業員とともに》 1
私たち女性の発言とアクションが大切
店や制作会社の人たちと一緒につくり上げて
たなと幸せを感じます。
いきますが、何の問題もなくスムーズに進む
私自身は、好きな仕事に就かせてもらって
ことはめったにありません。でも、問題の山
いますが、女性のみんながみんな、現在の処
が高いほど、登りきった後の爽快感も大きい。
遇・待遇に満足しているわけではないと思いま
頭を悩ませながら、限られた条件で最善を尽
す。どんな会社にも、従業員に不満はあるし、
くした結果、好評価が得られるとやはりうれ
あって当然です。大切なのは、それを議論の
私は広告・宣伝の仕事が長く、テレビCFや
しい。社内ですれ違った人から「あれ、良か
テーブルに載せ、改善へ向けて実践すること。
雑誌広告の制作を担当してきました。これら
ったね」なんて声を掛けられたり、売上に貢献
私たち女性の発言とアクションが今後ますま
は、ディレクションを出しながら、広告代理
できたりすると、この仕事に携われて良かっ
す大切になっていくと考えています。
春名 のぞみ
総合企画室 広報・宣伝部 広告・PR課
1995年入社
ワコールホールディングス CSR 2010
53
《従業員とともに》
私たち若手が
ワコールを変革する
《従業員とともに》 2
2009年度、ワコールは「企業ブランド価値向
上プロジェクト」をスタートさせた。PT
(プロジ
ェクトチーム)は中堅・若手を中心に編成され、
企業価値のさらなる向上に向けた次なる課題と
戦略について議論をたたかわせた。PTのなかに
は「女性共感企業」の深化に向けた課題を検討す
るグループも編成されたが、ここではPTに参加
した4人に、若手らしい、変革に向けた熱い思
いを語ってもらった。
ワコールホールディングス CSR 2010
54
摩擦をおそれず、もっともっと議論を!
ワコールブランド事業本部 インナーウェア商品営業部
キャリア営業課 塚本 昇
今回のプロジェクトでは最初に、ワコール
いるでしょうか。もしそれができていないと
が社会に存在している意義とは何か…、私た
すれば、まずはそこからだと思うのです。
ちがワコールで働いている意味とは何か…と
ところで、これはまったく私個人の意見で
いった、やや哲学的というか、根源的、理念
すが、ワコールを本気で「変革」するために今
的なことから話し合いました。結果的には
回プロジェクトでしたような活発な議論を、
「社是」
「経営の基本方針」
に行きつき、それを
日常的に行うべきではないでしょうか。「会
再確認することになったのですが、普段、こ
社を変えよう!」
「変えていかなければならな
んなことを話し合う機会はめったにありませ
い」と昔から言っているのに、なかなか変わ
ん。異なる部署の中堅・若手社員が集まり、
れないでいる。
いったん立ち止まって議論できたことに大き
それは、摩擦を恐れて、みんなが真剣に議
な意味があったと思っています。
論していないからではないでしょうか。なか
そこで出てきたのが、商品ブランドとし
には「サラリーマンだから仕方ない」と言う人
てのワコールの認知度はとても高いのに、
がいますが、そういう言い方って、私は好き
商品に込められている「世の女性に美しくな
ではありません。ビジョンは会社から与えら
って貰う事によって広く社会に寄与する」と
れるもので、自分たちが創っていくものでは
いうワコールの「理想」や「哲学」は、まだま
ない、と最初から諦めているようで。
だ伝え切れていないのではないか、という
議論のないところに納得はないし、チーム
ことでした。
ワークも生まれない。
「女性共感企業」をさら
また、ピンクリボン活動などに象徴される
に深化させていくためにも、侃々諤々の議論
社会貢献活動も、もっと積極的に社内・外に
が私たちに求められているのではないかと思
伝えていかなければならないと思っていま
っています。女性に働きたいと思ってもらえ
す。たとえば、男性社員たちは家族の女性に
る会社、みんなが誇らしく思えるワコールに
ワコールの
「思い」
や
「哲学」
をどれだけ伝えて
していくためにも。
《従業員とともに》
《従業員とともに》 2
かんかんがくがく
ワコールホールディングス CSR 2010
55
《従業員とともに》
《従業員とともに》 2
世の女性たちが働く場としての
ワコールに共感してくださる、
そんな会社にしていきたい
人材開発部 人材開発一課 八巻 仁美
女性がイキイキと意欲的に活動できている
衝担当など、いままでは配属されなかった部
企業であるか…を検証することは、
「女性共感
署にも女性が配属されるようになってきまし
企業」を目指すうえで欠かせないポイントだ
た。取引先企業様の意識変化を含めて、社会
と思っています。女性の商品を扱っている企
全体に「女性が活躍できる環境を整えること
業として、女性の活躍は不可欠です。そして
が企業の総合力を高める」との考えが定着し
ません。
能力のある女性を採用し、育成し、登用して
てきたと言えるでしょう。
女性社員がさらに活躍するためには3つの
いくことは、長い目でみるとワコールの利益
ワコールの場合、正社員の約8割が女性で
ポイントがあると思います。①家庭と仕事を
につながると考えています。
す。平均年齢や勤続年数に男女間で大きな差
両立するための配慮と支援を提供すること、
いま人材開発部で新卒採用と3年目までの
異はありません。
②男女に関わらず公平・公正な育成と処遇を
研修を担当していますが、ワコールでは女性
しかし、課題がないわけではありません。
実施すること、③女性が将来イメージを描き
社員にも権限が委ねられ、大きな仕事が任さ
女性は結婚、出産、介護といったライフイベ
やすくし、期待される活躍や働き方を実現す
れています。総合職の採用も、2011年度入
ントによる生活の変化に直面します。そのと
ること。この「3つのポイント」をバランスよ
社は男性11名に対して女性は8名。数字的
きにやりがいを持って働き続けていくことが
く実現していくことが必要なのではないでし
には年々、バランスのとれたものになってき
できる環境整備が必要です。女性が頑張り続
ょうか。推進体制を含めて、具体策を検討し
ているし、近年では、商品部や百貨店との折
けるための土台づくりと言っていいかもしれ
ているところです。
ワコールホールディングス CSR 2010
56
互いのコミュニケーション力を、
もっと高めたい
ワコールブランド事業本部 インナーウェア商品企画部 商品企画一課 デザイナー 澤崎 恵里子
インナーウェアの企画・デザインを担当し
が、ときにはそれが、新しいことにチャレン
ていますが、いろいろな部署の人と仕事をす
ジする際の壁になってしまう場合があると思
る中で、どうも社内に、コミュニケーション
うんです。たとえば斬新な企画に対して「こ
ギャップがあるのではないかと思うことがあ
の種のモノは過去に売れたためしがない」と
ります。
か「お客様が敬遠される」といった、
「いままで
デザイナーの私たちは、いろんな意味(コ
がそうだったから、これからもそうだろう」
ンセプト)を込めて新しい商品を企画するわ
みたいな考え方。それではいままでと同じよ
けですが、それが社内の各部署に的確には伝
うな商品が店頭に並び、新しい顧客の開拓と
わっていないもどかしさを感じることが少な
創造もあり得ないのではないでしょうか。
くありません。
そう思う一方、私たち企画する側の情報発
この商品は、どんな年代の女性に、どんな
信力をもっともっと高めていかなければと、
風に使っていただきたいのか…を考えてデザ
日々、反省もしています。ですから、努めて
イナーは企画をします。しかし、それが製造
店頭に足を運んで、デザイナーが商品に込め
現場や、販売の現場、あるいは広告の現場で
た想いを伝えたり、逆にどのように販売され
どう理解されているかを見たとき、微妙に方
ているのか、お客様の反応などを実際に見た
向性がずれていると思うことがあります。
り、ビューティーアドバイザーの皆さんの意
私たち企画する側の伝達力不足もあるとは
見を聞かせていただくようにしていますが、
思いますが、大きな会社にありがちな部署間
そこから得られるものは少なくありません。
のコミュニケーションギャップの解決は重要
売場に寄せられるお客様の声をまとめたス
な課題だと思っています。
カッシュの制度や、BA検討会などがありま
「経験則」
という言葉がありますよね。経験
すが、それと同時に、私たちが積極的に「店
のなかで身につく知識や判断力のことです
頭を訪問する」ことも必要だと思っています。
ワコールホールディングス CSR 2010
《従業員とともに》
《従業員とともに》 2
57
《従業員とともに》
《従業員とともに》 2
ウェブの強みを活かして、
お客様ともっとつながっていきたい
通信販売事業部 ウェブストア課 渡邉 麻衣子
ブランドコンセプトや世界観を店頭で伝え
ブ限定で「小さく見せるブラ」を販売。当初は
るには、いろいろと制約があります。しかし
そこまで反響があるとは思っていなかったの
ウェブなら自由に表現できるし、新しい取り
ですが、ミクシィやツイッターでも話題にな
組みへのチャレンジもできます。各ブランド
り、数日で完売。お客様全体から見れば少数
や商品の特長をていねいに表現することもで
派かもしれませんが、こうした声を集めた
きるので、
「ワコールウェブストア」で商品を
り、また、そんな方々の思いにお応えするこ
じっくり比較検討してから、店頭で商品をお
とができるのも、ウェブのメリット。ウェブ
買い求めになるお客様も少なくありません。
ストアを単なる「販売の場」として考えるので
2006年からウェブによる通販事業を担当
また、商品を店頭で見て、パソコンや携帯か
はなく、それが持つメディア機能や情報受発
していますが、百貨店やチェーンストア、下
らお買い求めになるお客様も。そんな相乗効
信機能を活かしていけば、もっとお客様とつ
着専門店などでの対面販売が主流のワコール
果とともに、多彩な情報の受発信で、店頭と
ながることができると思います。
の中では、ウェブ通販は、認知度も売上もま
違うかたちでお客様と密度の濃いコミュニケ
こんなふうに、常に新しいことに挑戦する
だまだ。でも、ウェブ通販には大きな可能性
ーションが図れるのがウェブの強みです。
意気込みとスピード感をもって仕事に取り組
があります。ウェブをよく利用する若い層を
以前に、20~30代の女性600人にアン
んでいきたいと思っていますが、まだまだ至
中心にウェブを通じてもっとワコールのファ
ケートを実施したところ、「バストをコンパ
らない点も。社内の各部門ともっと連携しな
ンになっていただけるよう、さまざまな情報
クトに見せたい」
「無理に盛り上げたくない」
がらスピーディーに取り組んで、お客様に愛
発信や仕掛けをしていきたいと思っています。
という回答が10 .7%あったことから、ウェ
される会社にしていきたいと思っています。
ワコールホールディングス CSR 2010
58
◆検証と今後の課題
●2009年度の育児休業、介護休業などの取得状況
制 度
期 間
●次世代育成支援対策推進法に基づき、
「㈱ワコール行動計画」
を策定
取得者数
育児休業
最長満2歳に達した月の月末まで
139人
仕事と育児の両立支援をさらに推進していくために、2010年
育児短時間勤務
最長満3歳に達した月の月末まで
65人
4月、次世代育成支援対策推進法に基づいて「㈱ワコール行動計
介護休業
介護短時間勤務
通算で要介護者1人につき365日まで
《従業員とともに》
従業員とともに
3人
画」
を策定しました。
1人
行動計画では、
㈱ワコール
2009年度の育児休業、介護休業などの取得状況は上表の通り
です。両立支援に対する理解の浸透、有期雇用契約社員への制度
の適用等、制度を利用しやすい環境の整備に取り組んできました。
その結果、育児休業制度の利用者数は5年前の2倍、出産・育児
を理由とした退職者の割合が25%と5年前のおよそ半分となるな
ど、制度を利用して仕事を続ける女性従業員の比率は年々高まっ
ており、一定の成果が現れてきています。
一方、職場環境によって制度利用のしやすさにバラつきがある
①育児を行う従業員に関する超過勤務免除制度について法定を
上回る内容に改善する。
②男性従業員の育児休業の利用を推進し、取得率10%以上を
達成する。
③育児を行う従業員の「働きかた」及び「休みかた」の選択肢を増
やす。
④実労働時間を削減することによりワークライフバランスを推
進する。
の4つの目標を掲げています。
など、課題があるのも事実です。このような課題の解決に向け
ては、男性従業員の意識の変化や理解も必要であり、そのために
は、男性の育児休業取得を促進する取り組みも必要であると認識
しています。
ワコールホールディングス CSR 2010
59
「階層別支援」では、主に課長職未満の従業員を対象としたリー
②では、短期休業者の一部有給化、対象者に対する働きかけの
ダーシップ研修、課題解決研修、さらに論理志向(クリティカル
実施等、
シンキング)を身につける研修プログラムなどを用意し、管理職
③では、30分単位の選択を可能にする等、
または高度な専門性を有する専門職として必要なスキルアップ支
④では、「早く帰れる」
「休める」ような労働環境の改善、ノー残
援を行っています。
業デーの全社的推進等、
《従業員とともに》
①では、子どもが小学校に入学するまで延長する等、
同じく課長職未満の従業員を対象とした「キャリア開発支援」で
を取り組み事項とし、従業員の仕事と家庭の両立を支援すること
は、異動の希望を申し出ることができるジョブチャレンジ制度、
を通じて、従業員の持つ能力を最大限に発揮できるようにしてい
さまざまなプロジェクトに参加できる社内公募制度があり、
「自己
きます。
啓発支援」としては、自己啓発に対する資金援助制度、100近い
メニューの通信教育受講支援などがあります。
「自己啓発支援」はもちろん、「階層別支援」
「キャリア開発支援」
●
「ワコール寺子屋」
~多彩な人材育成のための制度とプログラム~
を含めて“公募型”とすることで、従業員の自発性を重視したサポ
ート体制を整え、自律型人材の育成に努めています。今後、ます
ますこうした制度やプログラムが活用されるよう、プログラムの
男女を問わず、ただ指示を待つのではなく、ポジティブ思考
見直しとともに、自主的なキャリア形成に対する従業員の意識、
で、自らのキャリア形成に積極的な人材をワコールでは「自律型
意欲を醸成するための取り組みを継続的に実施していきます。
人材」と呼び、その育成を目的とした人材育成制度とプログラム
を整えています。OJTに加えて「階層別支援」
「キャリア開発支援」
「自己啓発支援」などを用意し、
「ワコール寺子屋」の名称で実施し
ています。
ワコールホールディングス CSR 2010
60
社外監査役インタビュー
社会の変化に対応できる、
「品の良い」会社であり続けてほしい
企業における監査役会は経営に対する監視・監
督機能を果たす機関。ワコールには5人の監査役
がおり、そのうち3人が社外監査役。その中のひ
とり、弁護士の竹村葉子氏に「社外の視点」から
ワコールを語っていただいた。
㈱ワコールホールディングス 社外監査役 竹村 葉子 氏
ワコールホールディングス CSR 2010
61
ばかり、ビジネスライクな、ドライな行動に
—— 顧問弁護士として15年間、その後は
はないんですね。ヘンな駆け引きもしない。
社外監査役として5年間、大所高所からワ
当初は、なぜこんなに品の良い会社なのか疑
コールを見てこられたわけですが、社外の
問に思っていたのですが、経営の基本に「商
立場であるが故に、私たち社内の人間では
売の正道を踏む」ということが据えられてい
気づかない、見えていない、ワコールの良
るのです。正道を
「歩む」
ではなく
「踏む」
。歩
さ、また逆の「改善していくべき点」などを
むというのは意識せずとも足を出せば歩める
感じておられると思います。そのあたりを
けれど、踏むというのは意識しないといけま
お話しいただけますか。
せん。
「商売の正道」に対する、そんな強い意
㈱ワコールホールディングス
コーポレート・ガバナンス体制
走ることには常に慎重でした。
つまりは、けっして利益至上主義の会社で
識が会社の品格につながっているんですね。
これが
「相互信頼」
という社是に表れていると
い会社」ですね。ギスギスしたところがない、
いうことも、お付き合いをしているうちに理
と言うか、大らか、と言うか…。
解できるようになりました。
ワコールさんとのお付き合いは約20年に
株主総会
監査役会
取締役会
社 長
副社長
グループ
経営会議
企業倫理委員会
情報開示委員会
リスク管理委員会
四半期
業績確認会
・コンプライアンス委員会
・品質保証審議会
・事故・災害対策委員会
・情報セキュリティ対策委員会
監査室
・環境委員会
いに誇っていいと思います。
法務・コンプライアンス部
竹村 ひとことで言うと、とにかく「品の良
社外監査役インタビュー
やみくもに
「利に走らない」
会社ですね
経営企画部
IR・広報室
社長室
人事企画部
経理部
総務・資産管理部
私の所属する事務所の代表パートナーの弁
なりますが、その間、法的な決断をしなけれ
—— 「相互信頼」はすべての原点であり、
護士から聞いた話で、とても感心したことが
ばいけないようなトラブルがなかったわけで
CSRの目標としても「社会との相互信頼」を
あるんです。40年ほど前のことですが、ワ
はありません。しかしそんなときでも、
「まず
うたっています。
コールが東京で社員寮を建設するための工事
は相手の立場に立つ」という姿勢を貫かれて
をしていたら、埋蔵文化財が出てきたそうで
きました。取引相手に損害賠償を求めてしか
竹村 やみくもに
「利に走る」
ことなく、
「社会
す。当然、工事は中断され、普通なら「早く
るべき場合であっても、相手の立場をおもん
との相互信頼」を大切にするという姿勢は大
工事を再開してほしい」と思いますよね。と
ワコールホールディングス CSR 2010
62
らを改めていくように助言するのが私の仕事
ったそうです。そんなことからも「商売より
—— ありがとうございます。さて逆に、会
はないようですが、そんな時代変化にもっと
も社会への責任を優先させる」という姿勢が
社として変革が求められている点について
敏感になっていただきたい気もしますね。
表われています。
もご指摘いただきたいのですが。
企業統治(コーポレート・ガバナンス)や法
ために存在するのだから、ゆっくり、いつま
でも発掘してくださって結構だ」とおっしゃ
ピンクリボンをはじめとした多彩な社会貢
でもありますが、時代はどんどん変わってい
ます。長年の慣行は一朝一夕に改まるもので
社外監査役インタビュー
急速な社会の変化に
智恵者として対応
ころが創業社長は「当社は日本の文化を守る
令遵守(コンプライアンス)は今に始まったこ
献活動も、
「商売よりも社会への責任を優先さ
竹村 会社としての
「品の良さ」
は評価に値し
とではありませんが、それらが声高に言われ
せる」という姿勢の表われだと思います。ま
ますが、相互信頼の相手方が信頼に値しない
る前からきちんとやってきた会社だから、長
た、
「ワコール人間科学研究所」が蓄積してき
場合があるし、当方だけが品良くしているわ
く続いてきたとも言えます。
た日本人女性のからだに関するデータは膨大
けにもいかない場合もあると思うのです。当
ワコールでは、
「相互信頼」や「女性共感企業」
です。45年間の縦断データは社会的資産と
方にしてみれば、
「商道徳も地に落ちた」と言
といったスローガンが「アンフェアなことは絶
言ってもよく、これを今なお続けているとこ
わざるを得ない場面に出くわすのです。今後
対にしない」ということにつながっているのだ
ろがすごい。これは企業としての体力がある
は日本もどんどんアメリカ型の契約社会にな
と思います。ただし、トラブルはこれからも
から続けてこられたのだと思いますが、こう
ってくるわけですから、ビジネスライクに割
起こるでしょうから、企業統治や法令遵守と
した社会貢献の姿勢があったからこそ、会社
り切って取引先と交渉していくことが必要な
いった言葉がなぜ盛んに言われるのか、そう
もここまで大きくなったと言えるのではない
場合も出てくるはずです。
した企業社会を取り巻く状況の変化に敏感に
でしょうか。その意味でも、これからも体力
「長年にわたり取引いただいているから…」
対応していくことも必要だと思います。
のある会社であり続けてほしいですね。「社
とか、
「昔からの慣行なので…」と契約書が交
その上で、品の良さを大切にしつつも、蓄
会的存在としての企業」を意識した活動が、
わされていない取引が今もなくはありませ
えた経験を智恵に変えて、社会に対して自社
社会からの信頼と共感につながっているとも
ん。また、契約を詰めるときに法的問題意識
の立場を堂々と主張する、そんな「智恵者」に
思います。
が欠如している場合が見受けられます。これ
なることが必要ではないでしょうか。 ワコールホールディングス CSR 2010
63
が拡大したことで、創業時や成長期にあった
ればいいというものでもないと思います。産
バイタリティやハングリー精神が少なくなっ
休や育休など、制度面を見ればワコールは十
て、おとなしくなってしまったのかなと感じ
分整っていると思いますが、大切なのは、女
——さて、今回のコミュニケーション・レポ
ています。成熟した会社、熟成した会社、そ
性の役員や管理職の数よりも、
「気持ちよく働
ートは「女性共感企業ワコールの検証」をテ
んな印象がなくもない。もしそんな状況があ
ける職場環境が整えられているか」だと思い
ーマにワコールのありかたを考えてきまし
るとすれば、元気な女性たちに突破していっ
ます。それは「上昇志向のある女性の意欲を
た。この点についてはいかがでしょうか。
てほしいものです。
十分に受け止める」ということも含めてです
日本社会は、まだまだ
「女性が働く」
ことに
が、仮にそれが不十分であるとすれば、もっ
竹村 私自身ワコールのユーザーでもありま
ついての環境整備が十分に整っているわけで
たいないことです。
すから、商品の品質は評価しています。さら
はありません。私自身、仕事と家庭生活の両
男女雇用機会均等法が成立して20年余り
に「ワコール人間科学研究所」の調査・研究、
立など考えられませんでした。いま以上に女
もたちますが、社会はそう簡単には変わりま
ピンクリボン活動なども含めて「世の女性に
性が働きにくい社会であったわけですから。
せん。だからこそ、ワコールの女性たちの元
貢献し、共感されたい」という会社の姿勢を
でも、女性活用や女性登用をカタチだけ整え
気さに大いに期待したいですね。
社外監査役インタビュー
女性たちの元気さに
期待しています
理解し、納得もしています。
それと、ワコールは女性の多い会社です
が、この女性従業員たちが、とにかく元気で
すね。そして、今どきこんな言葉は流行らな
いようですが、愛社精神がすこぶる旺盛。皆
さんが会社を愛されています。
これはこれで会社の大きな財産なのです
が、しいて言えば、そのことに安住している
印象がなきにしもあらず。ここまで企業規模
竹村 葉子 氏 プロフィール
弁護士、㈱ワコールホールディングス社外監査役。
会社再建、M&A、企業法務を中心に活動。
三宅・今井・池田法律事務所パートナー。
ワコールホールディングス CSR 2010
64
トップインタビュー
「女性共感企業」宣言から
10年をふり返って
㈱ワコールホールディングス 代表取締役社長 塚本 能交
ワコールホールディングス CSR 2010
65
『女性に共感し、共鳴される』
…とあるよう
ているワコールですが、ここで私が強調した
に、これは、世の女性たちへのワコールから
いのは、ビューティーアドバイザー(BA)と
の共感を意思表示するとともに、ワコールが
呼ばれる販売員たちの高い接客品質です。
2001年1月、ワコールは「女性共感企業」
すべての女性から共鳴していただける企業に
本レポートの冒頭でも述べているように、
を宣言しました。
なること…すなわち
「双方向の共感と共鳴」の
ワコールでは販売員をビューティーアドバイ
宣言文の中で、私はこう書いています。
実現を目指す宣言でもありました。
ザーと呼んでいます。彼女たちは厳しいトレ
◆
ーニングを受け、社内のボディフィット審査
五感全体を使うこと、豊かな創造力、柔
それを、この10年間でどれだけ実現して
や㈳日本ボディファッション協会(NBF)の
軟な発想、共感する力。これらは女性の優
きたのか……。
認定試験に合格し、採寸技術はもちろん、商
れた才能であり、21世紀の社会は、その特
今回のCSRコミュニケーションレポート
品の素材特性についての知識なども身につけ
性がいかされて、女性の活躍する場はます
は、
「お客様である女性からの共感」
「社会の女
て店頭業務に就いています。
ます広がってきます。
性からの共感」
「従業員の女性からの共感」の
そんな彼女たちは「魔法の手を持っている」
ワコールは、半世紀にわたって女性と共
3つに分けて『女性共感企業ワコール』を検証
と言われるほど、お客様の体型(胸のかたち)
に歩んできました。私たちは、今まで以上
するものとして制作しました。
をととのえる技術を有していますが、強調し
たいのは、BAならではの「個客専心」の姿勢
に、女性の気持ちや感性を大切にして、女
性に活躍してもらい、ワコールにとっての
女性美、デザイン思想そして企業文化を探
トップインタビュー
『女性と共にある』
ことが、
ワコールの存在価値そのもの
ビューティーアドバイザーと
「個客専心」
です。
「顧客志向」と、よく一般的に用いられます。
しかしそれは、単に「お客様のニーズを捉えて
求していきます。
『女性と共にある』ことが、ワコールの存
「お客様である女性からの共感」
を実現する
商品企画に反映させればよい」といった仕組み
在価値そのものであり、
『女性に共感し、共
のは、なによりも「商品の品質」と「接客の品
や手順のことではありません。BA自身が目の
鳴される』
シンボリックな企業を目指します。
質」
であるのは言うまでもありません。
前のお客様をどれだけ大切にできるかという、
商品の品質については高い評価をいただい
心の問題だと私は思っています。
◆
ワコールホールディングス CSR 2010
66
こそアドバイザーと言えるのであり、さらに
かつて1990年代に企業の社会貢献活動が
えていればよかったかもしれません。しかし
言えば、ワコールのBAはヘルスケアアドバ
議論されたとき、
「陰徳」として取り組まれる
今は、それぞれの好みに応じて、目の前のお
イザーと言ってもよいのかもしれません。そ
べきだ、という考え方がありました。私はそ
客様一人ひとりに最善を尽くすこと、誠心誠
んなBAたちはワコールの誇りであり、彼女
れにくみするものではありませんが、企業の
意応える「個客専心」
が大切であり、ワコール
たちの
「個客専心」
の姿勢が、
「お客様からの共
社会貢献活動を、必要以上に宣伝やPR、マ
のBAたちは、まさにこの姿勢でそれぞれの
感」
を得られるのだと確信しています。
ーケティングに利用すべきではないと考えて
売場に就いています。
そうしたマインドとともに、ワコール人間
トップインタビュー
以前は、お客様のニーズの最大公約数を捉
います。
「身の丈に応じた」
社会貢献活動
ア イ オ
たとえば、乳がんの移動検診車の「A IO」。
マスコミからも大きな注目を集めましたが、
科学研究所(人科研)
の研究成果にも支えられ
てBAたちは「個客満足」
を実現しています。
「ピンクリボン活動」や「ブラ・リサイクル」
ワコールは医療行為ができないため、
「診察し
人科研では45年間の研究から、女性の加
をはじめとして、ワコールはさまざまな社
て治療する」医療機関のご協力がなければ、
齢による体型変化をまとめた「からだのエイ
会貢献活動に取り組んでいます。2009年度
できることは限られます。台数も今のところ
ア イ オ
ジングと美の法則」
を導き出しました。
は、乳がんの移動検診車「A IO」を購入し、ひ
1台しかありません。
「乳腺」
「脂肪」
と、それらをまとめるように
とりでも多くの女性が乳がん検診を受けられ
それを「身の丈以上にPR」してしまうと、
して支える「結合組織」
「クーパー靭帯」
からで
るように支援しています。これらはまさに、
結果的にはご期待に添えないケースが生じ、
きているバストは、加齢により、かたちや、
『女性に共感し、共鳴される』
シンボリックな
やわらかさに変化が生じます。そこでサイズ
企業を目指す、ワコールならではの社会貢献
かねません。
だけではなく、かたちや、やわらかさも考慮
活動です。
小・中学生を対象とした下着教室「ツボミス
してブラジャーを選び、からだにいいものを
こうした
「社会の女性からの共感」
を得るた
クール」も同様で、PRが先行して、結果的に
薦めることが大切であることもわかってきま
めの活動は今後も積極的に取り組んでいきま
地域の学校や保護者の方々のご期待に応えら
した。ワコールのBAたちは、そうした知見
すが、心しておかなければならないのは、
「身
れなくなってしまうことは避けなければなり
も身につけてお客様に接しています。だから
の丈に応じて活動する」
ということです。
ません。
多くの女性にご迷惑をおかけすることになり
ワコールホールディングス CSR 2010
67
トップインタビュー
「社内の女性からの共感」
なくして、
「お客様や社会の女性からの共感」
はあり得ない
思い返せば「女性共感企業」を宣言した
2001年当時、ワコールは構造的にまだまだ
男性中心の会社でした。多くの女性販売員を
抱えており、彼女たちに支えられている会社
なのに、経営の中枢は男性が占めていまし
た。下着という商品は女性個人の好みに大き
共感企業を目指す」
と宣言しました。
の女性を総合職として採用し、販売社員の処
く左右されがちなデリケートなもので、それ
しかし当時は会社に、よい意味でも悪い意
遇改善や、子育て支援の充実など、女性の登
をビジネスとして客観的に捉えるのは、むし
味でも
「女性従業員への遠慮」
がまだまだあっ
用・活用についてのさまざまな人事施策を進
ろユーザーではない男性が適しているのでは
たように思います。男性と同じように処遇す
めています。
ないか、という考えがあったからだと思いま
ることへの、ある種の保護者意識的なためら
す。その結果、男性中心の重圧がかかり、職
い、と言ってよいかもしれません。
「宣言」から10年が経過しましたが、ワコ
場に閉塞感がよどんでいたら、すみやかに打
しかし、
「社内の女性からの共感」
なくして、
ールはこれからも「女性共感」をキーワード
破しなければなりません。
「お客様や社会の女性からの共感」
はあり得ま
に、地球規模で、全世界の多様な女性たち
そこで、男性の従業員たちがどこまで世の
せん。
と、さらに強い「きずな」を結びたいと願って
女性を理解しているのか、どれだけ女性に近
「宣言」から10年、不十分とは言え、ワコ
います。
づけているのか、そして社内の女性従業員が
ールも多くの部署、多くの職場で女性が権限
世界の女性に共感される“美”の創造。そし
どれだけ気持ちよく働いているか…が重要な
と責任を委ねられ、持てる力を存分に発揮す
て「女性と共にある」こと。それがワコールの
経営課題であると考え、2001年1月、
「女性
る会社になってきました。近年は男性と同数
理想だからです。
ワコールホールディングス CSR 2010
68
社
名
株式会社ワコールホールディングス
創
業
1946年6月15日
創
立
1949年11月1日
金
13 ,260百万円
資
本
代表取締役社長
塚本能交
従
連結17 ,094名
業
員
数
本 社 所 在 地
〒601 -8530 京都市南区吉祥院中島町29番地
TEL 075 -682-5111(代)
事
業
内
容
インナーウェア(主に女性用ファンデーション、ラン
ジェリー、ナイトウェア及びリトルインナー)、アウ
ターウェア、スポーツウェア、レッグニット、その
他の繊維製品及び関連製品の製造・卸売販売及び小売
販売を主な事業としており、さらにその他の事業と
して、飲食・文化・サービス及び店舗内装工事などの
事業を展開しています。
ホームページ
http://www.wacoalholdings.jp
〈ワコールホールディングス コミュニケーションレポート2010〉
対象期間 2009年4月〜2010年3月
(ただし、上の期間前後の情報も一部含んでいます)
編集後記
2001年に「女性共感企業」を宣言してから、まもなく10年を迎
えます。
「相互信頼」を経営理念に掲げるワコールですが、相互信頼とは、
会社概要/編集後記
会社概要 (2010年3月末)
そこに「共感しあえる関係」があってこそ初めて成立するコミュニ
ケーションレベルであると考えています。単なる“理解や納得”と
いった、いわば「信用していただく」
「安心していただく」
「満足してい
ただく」レベルを超えた、より高い次元での関係のあり方です。そし
て「共感しあえる関係」があれば、そこには「感動」が生まれます。
お客様をはじめとした、さまざまなステークホルダーと、そうし
たコミュニケーションを実現していくことがワコールの存在価値で
あり、この10年は、それに向けたアプローチであったということが
できるかもしれません。そう考えたとき、今回のレポートのテーマ
である“女性共感企業ワコール”の検証は、そのアプローチを自省的
に検証するという意味で、CSR的にも大きな意味を持つのではない
かと思うのです。
課題はまだまだたくさんありますが、たとえ小さな課題であって
もこれを真摯に受け止め、不断の前進を続けていくことがわれわれ
の使命です。ぜひ、皆様のご意見やご感想、ご批判をお聞かせくだ
さいますよう、よろしくお願い申しあげます。
IR・広報室室長 長谷川 貴彦
お問い合わせ先
〒 601-8530 京都市南区吉祥院中島町 29
対象範囲 ㈱ワコールホールディングスおよびグループ各社。
なお、このレポートでは㈱ワコールの活動を中心に報告を行っています。
データについてはそれぞれの対象範囲を明記しています。
*レポートに登場する従業員のうち、会社名の表記がない場合は、㈱ワコールの従業員です。
TEL:075-682-1161 FAX:075-682-1138
E-mail:[email protected]
I R・広報室 CSR担当 長谷川・後呂・西田・平瀬
2010年8月発行(次回発行は2011年7月を予定しています)
ワコールホールディングス CSR 2010
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