テーマ「音楽の与える心理的効果」 CM 第 1 章 初めに 第 1 節 テーマ

テーマ「音楽の与える心理的効果」
CM
第1章
初めに
第1節
テーマ設定の理由
私は幼いころから音楽に親しんでおり、楽器を演奏することで気分が良く
なったり、やる気が出るという経験をしたことがあった。
今回は以前から興味のあった音楽の与える心理的効果を音楽療法の観点か
ら考察してみようと思う。
第2節
研究のねらい
ストレスの多い現代人(自分も含めて)にとって音楽は「心の薬」と言わ
れる。
実際にどのような効果があるのか、また手軽にできる音楽療法(歌う等)
を調べ今後に活かしていきたい。
第3節
研究の内容と方法
文献やインターネットから得た情報をもとに弟を被験者とし、一定の感情
を定義し、二種類の音楽を聴かせた時の反応を考察する。また、自身がカラ
オケに行ってみてどのような曲を歌うことでストレスを発散、楽しんでいる
のかを客観的に検証する。
第2章
研究の展開
第1節
音楽療法とは
・音楽療法の定義
「身体ばかりでなく心理的にも、社会的にもより良い状態(well-being)の
回復、維持、改善などの目的のために、治療者が音楽を意図的に用いて行
われる活動」
・音楽療法の目的
音楽療法の目的は大きく分けて 2 つあると考えられる。1 つはいかにその
人らしく生きられるか、もう 1 つはその人の持っている最大限の可能性を
見つけ出し、積極的に自己表現できるよう援助することである。
・音楽療法の種類
音楽療法の種類も大きく分けて 2 つあり、「遊ぶように楽器を弾く」とい
う行為に心理的なアプローチを取り入れた療法を「能動的な心理療法的音
楽療法」、音楽を聴くことにに重きを置く療法を「受動的な心理療法的音
楽療法」という。
・2 つの療法の差
音楽療法というと聴くこと主体の音楽療法がメジャーであると思う人が多
いと思うが、楽器を演奏するという能動的な療法の方が実際の療法では使
われることが多いようである。
これにはいくつか理由がある。
1.音楽の好みが人それぞれである。
2.同じ音楽を聴いても人によって感じ方が違う。
3.能動的音楽療法と違い即効性の効果が現れにくい。
今回は手軽な音楽療法を検証するので、どちらも考察してみようと思う。
第2節
受動的音楽療法の検証
上述したように受動的音楽療法には個人差があるため、今回の被験者である
弟の音楽的素養について述べておきたい。我が家では朝はクラシック、夜は
ジャズが常にかかっており、幼少期から音楽に親しんでいるため、これらの
音楽に対する感受性が高いと考えられる。また、日頃の様子は比較的行動的
な性格である。
今回は気分が高まっている時、落ち込んでいる(悲しんでいる)時に対して
電子音楽で音程の跳躍が多く激しい曲(ボカロ曲)として、じん(自然の敵
p)作曲「チルドレンレコード」、世界的な名曲・名演、音程の跳躍が少なく穏
やかな曲、グスタフ・マーラー作曲「交響曲第五番」第4楽章アダージェッ
トをそれぞれ聴かせてみる。また、両曲とも被験者は好んでいる。
○パターン1
興奮状態(2 日間に分けて行った)
部活から帰ってきた弟はやや興奮気味である。
1日目はチルドレンレコードを聴かせてみた。やはり気分が高まっている
時に元気な曲を聴くと行動は更に活発になるようである。好きな曲である
というのも関係しているようだ。
2日目はマーラーの交響曲第五番を聴かせてみた。1 日目とは対照的に穏
やかな状態に変わっていくようであった。こちらもやはりゆったりとした
曲の中では穏やかになるようだ。
弟の状態で特筆しておきたいことは 1 日目のチルドレンレコードの音程の
跳躍が激しくなる部分である。激しい跳躍部分に曲が突入すると弟の行動
も活発になっていた。2 日目の交響曲第五番の曲中ではそういった場面は
見られなかったため、音楽が与える心理的効果には音程の跳躍の影響が強
いと考えられる。
○パターン2
落ち込み状態
今回の弟は課題や成績のことで母親に小言を言われ、落ち込み(若干いら
だち)気味である。
今回も 1 日目にチルドレンレコードを聴かせてみた。私は落ち込んでいる
のであれば元気な曲を聴けば元気になるのでは?と考えたが、予想に反し
て弟はチルドレンレコードを聴くことを拒絶した。また、当初の予定とは
ズレて弟が自身の iPod を使い曲を聴き始めた。後ほど何を聴いていたの
か尋ねたところ悲しい曲という答えをもらった。悲しい曲を聴いたら余計
に気分が滅入るのではないか?と考えていたのでこの答えは意外であった。
2 日目も前回と同様に交響曲第五番を聴かせてみた。1 日目のチルドレン
レコードのような拒絶はなく、音楽を受け入れているようで様子も落ち着
いてきていた。興奮状態の時にも穏やかなクラッシックは気分を落ち着か
せるような効果をあげており、一見全く同様に効果をあげたように見える
が興奮状態の時はいわば強い+の状態を抑制し落ち着かせたと考えられる。
対して今回の落ち込み状態では−の状態を+の状態に変換したと考えられ、
全く異なる効果をあげていることが分かる。
表1
第 1 節のまとめ
チルドレンレコード
交響曲第五番
興奮状態
更に元気に
若干落ち着く
落ち込み状態
嫌がる
感情が安定
表1から分かるようにまず穏やかな曲には人を落ち着かせる効果がある。
これは受動的な音楽療法で使われる「癒やし」の音楽である。静かで跳躍
の変化の少ない曲には「人を落ち着かせる=気持ちをリセットさせる」と
いう効果がある。気持ちをリセットさせる効果により今回の対照的な状態
への心理的効果がほぼ同じものになったと考えられる。
また、興奮している時に激しい曲を、落ち込んでいる時に悲しい曲を聴き
たがるのは「同質の原理」に基づいている。感情に反するよりも同質の音
楽を聴く方が心を解放させリラックスしやすい状態にすることが出来る。
これは同質の音楽を聴くことで自分の気持ちを代弁してもらうことが出来
るからである。同質の原理に反して正反対の曲を聴くことはかえってスト
レスになることがある。
弟の検証結果は音楽療法の観点から説明することが出来るという結論に至
った。
第2節
能動的音楽療法の検証
こちらの検証では私が友人とカラオケに行った時に歌った曲の種類やその順
番について検証したいと思う。
○前半
前半、私は自分の得意とする、特に好きな曲を主に歌った。その時はもち
ろん好きな曲なので気分は良くなり感情も高ぶっていった。友人たちも同
様であった。また、中盤にかけてシャウト等が入る絶叫系の曲の選曲も増
えていった。感情の高ぶりの応じて激しい曲が増える傾向には同質の原理
が働いていると考えられる。
自分の好きな曲はなにかしら自分に呼応するものがありこれにも同質の原
理は働いていると考える。
○中盤
中盤からはしっとりとした曲の選曲が多くなっていった。これには聴くこ
とと同様に心を落ち着かせる「癒やし」効果があると考えた。
カラオケの中盤で疲れてきたため「癒やし」を求める傾向にある、また前
半でストレスを吐ききった心の仕上げをしているとも考えられる。
○後半
後半はデュオや、みんなで一緒に歌う曲の選曲が増えた。また少し元気で
リズミカルさが目立つ曲も増えてきていた。客観的な視点から見て初めて
気がついたことだが後半の選曲にはまた明日へ気持ちを向上させる、みん
なで頑張るといった感情が関係していると考えることが出来た。
・第 2 節のまとめ
日頃は気づかないことであるがカラオケで歌って遊ぶという行為も音楽療
法の観点から考えると音楽を通じて無意識のうちにストレスを発散し、活
力をつけるという流れによっていることが分かった。
能動的音楽療法では同質の原理によって心の内側に秘めていたものを外に
出しつぎは気持ちを落ち着かせる音楽、そして気持ちを向上させる音楽へ
と段階を進めていくことが勧められている。
第3章
まとめ
・2 つの検証結果から考えられる音楽の与える心理的効果と手軽な音楽療法
音楽による心理的効果は一定的なものではなく、またその時の感情条件に
よっても与える効果は様々であることが分かった。音楽は感情をリセット、
落ち着かせる、増幅させる、とまさに人の感情の変化をコントロールする
魔力のようなものである。今後の音楽療法の発展には大いに期待である。
2 つの検証結果から手軽に出来る音楽療法を三段階に分けて考察した。
(音楽を演奏するのも聴くのも共に対応する)
【第1段階】“自分の気持ちと同じような曲を選ぶ”(同質の原理)
その時のストレスや気分の状態の音楽を選ぶ。始めは余計に感情が増幅さ
れる可能性があるがやがて気持ちが楽になることが期待できる。
【第 2 段階】“心を落ち着かせる曲を選ぶ”
ストレスで傷ついた心を癒やしリセットするため、リズムやビート音程の
変化が緩やかな穏やかな曲を選ぶ。聴く際は楽な姿勢で瞑想、腹式呼吸な
どをするとより効果が得られる。
【第3段階】“少しアップテンポな、前向きになる曲を選ぶ”
ここでは明るくアップテンポな音楽を用いると良い。気持ちが明るい音楽
に呼応して本来のポジティブな力を発揮する。
・総括
今回のテーマに決め音楽療法の観点から日常への音楽の効果を検証、考察
することで私たちの精神と音楽がとても密接な関係にあることが改めて分
かった。
また、本当に簡単ではあるが手軽な音楽療法をまとめられたことはこれか
らに活かせていけそうである。
次回このような機会があったら今回検証しきれなかった音楽構造やメロデ
ィラインのフレージングによる心理的効果などもっと深いところまで研究
してみたい。
また、実際に音楽療法の現場も見てみたいと思う。
・参考文献
新井靖児
「音楽療法の基礎」
内田博美
「音楽療法の本ーもう 1 人の自分と出会う」