婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) JGOG (Japanese Gynecologic Oncology and chemotherapy study Group) 旧 婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構 2002年3月にNPO法人化 日本最大の婦人科臨床試験グループ(会員制) 現在の加入施設数は約250にのぼる 生物統計家、データセンター、各種委員会を備え、Openな 臨床試験グループへ変わりつつある 現在の悩みは施設からのデータのQuality(ころころ変わる担 当医、CRCの不在) 臨床試験入門 基礎講座③ 婦人科がんの 標準治療と特殊性 久留米大学医学部産科婦人科学講座 喜多川 亮 [email protected] 本日のお話 本日のお話 • 骨盤内の解剖と婦人科がんの疫学 • 骨盤内の解剖と婦人科がんの疫学 • 卵巣がん:疫学、治療体系 • 卵巣がん:疫学、治療体系 • 子宮体がん:疫学、疾患の特徴、標準治 • 子宮体がん:疫学、疾患の特徴、標準治 療と予後、今後の治療開発 療と予後、今後の治療開発 • 子宮頸がん:疾患の特徴、検診の意義、 • 子宮頸がん:疾患の特徴、検診の意義、 疫学、標準治療と予後、今後の治療開発 疫学、標準治療と予後、今後の治療開発 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 1 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 内性器の解剖 日本人女性の悪性新生物罹患数(1998年)・ 死亡数(2001年)と難治指数(死亡数/罹患数) 側面像 腹壁腹膜 正面像 罹患数 死亡数 33,676 9,654 33,518 17,691 53% 24,726 12,014 48.5% 肺 子宮 17,723 15,130 85% 17,686 5,200 29% 直腸 肝臓 11,693 4,794 41% 11,307 10,715 95% 胆のう・胆管 膵臓 9,177 8,473 92% 8,217 8,926 96% 卵巣 6,742 4,154 61.5% 子宮頸部 膀胱臓側腹膜 膀胱 恥骨 女性のがんの部位別・年次別 28.5% がんの統計 2003 より 直腸 腟管 死亡数/罹患数 部位 乳房 胃 結腸 子宮体部 年齢調整死亡率 本日のお話 • 骨盤内の解剖と婦人科がんの疫学 • 卵巣がん:疫学、治療体系 • 子宮体がん:疫学、疾患の特徴、標準治 療と予後、今後の治療開発 • 子宮頸がん:疾患の特徴、検診の意義、 疫学、標準治療と予後、今後の治療開発 少しずつ増加 最近横ばい 卵巣 子 宮 早期卵巣がん 20歳以上での罹患率増加 ほとんどが胚細胞性腫瘍 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 2 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) Silent Cancer 初回診断時の約70%が進行例 1.腹腔内播種性転移:直接周囲へ 2.リンパ行性転移 進行卵巣癌の治療と予後 III/IV期の上皮性卵巣癌 Debulking surgery 初回手術療法 TAH+BSO, Omentectomy Cytologic washings, Lymph nodes dissection 術後化学療法 Clinical CR 75% 腫瘍残存 25% pCR 40% 腫瘍 大網・腸間膜 Follow-up No Relapse 施設によって薬剤・投与量・ コース数などバラバラでした Relapse < 6mos Relapse > 6mos Refractory/ 20% Resistant Disease Cure 20% Sensitive Disease 60% 2nd line Chemotherapy Salvage Chemotherapy 3rd line Chemotherapy 卵巣癌術後化学療法のRCTと変遷 CA vs. CAP CAP vs. CP CP vs. TP TP vs. TC TC vs. DC PFS (Mo) OS (Mo) 文献 7.7 vs. 13.1※ 15.7 vs. 19.7※ Cancer 1986 13.3 vs. 12.7 26.7 vs. 22.7 JCO 1986 NS. NS. Lancet 1987 24.6 vs. 22.7 38.9 vs. 31.2 JCO 1989 13 vs. 18※ 24 vs. 38※ 進行卵巣癌の治療と予後 III/IV期の上皮性卵巣癌 Debulking surgery 初回手術療法 術後化学療法 Clinical CR 75% 施設によって薬剤・投与量・ Platinum/Paclitaxel x 6 cycles コース数などバラバラでした 腫瘍残存 25% pCR 40% NEJM 1996 TAH+BSO, Omentectomy Cytologic washings, Lymph nodes dissection Follow-up 11.5 vs. 15.5※ 25.8 vs. 35.6※ JNCI 2000 16 vs. 16 30 vs. 32 JCO 2000 19.4 vs. 20.7 48.7 vs. 57.4 JCO 2003 19.1 vs. 17.2 44.1 vs. 43.3 JNCI 2003 2nd line Chemotherapy 14.8 vs. 15.0 NS. JNCI 2004 3rd line Chemotherapy Key drugはプラチナ製剤 Death No Relapse Relapse < 6mos Relapse > 6mos Cure 20% Sensitive Disease 60% ※ p < 0.05 Refractory/ 20% Resistant Disease Salvage Chemotherapy Death 進行卵巣癌の予後改善に向けて III/IV期の上皮性卵巣癌 組織型などで個別化 Neoadjuvant Debulking surgery TAH+BSO, Omentectomy chemotherapy 初回手術療法 Cytologic washings, Lymph nodes dissection Platinum/Paclitaxel x 6 cycles 術後化学療法 Clinical CR 75% Maintenance pCR 40% therapy Follow-up No Relapse 3剤、sequential、dose-dense 腹腔内投与、分子標的療法 Relapse > 6mos Cure 20% Sensitive Disease 60% 2nd line Chemotherapy 1980年以降、死亡率増加は食い止めたが、 減少にまでは結びつかず 3rd line Chemotherapy Relapse < 6mos Refractory/ 20% Resistant Disease Salvage Chemotherapy Death 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 3 婦人科がんの標準治療と特殊性 卵巣がんのまとめ 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 子宮にできるがん • 子宮頸がん • 子宮体がん(内膜がん) • 術後補助化学療法にプラチナ製剤が導入され予後改善 • 子宮頸部の上皮より発生 • 日本では子宮がんの70% • 40歳台に好発 • 上皮性卵巣がんの罹患率は増加し続けている • 欧米よりアジア、南米に多 い。 • 子宮体部内膜の腺組織より 発生 • 日本では子宮がんの30% (増加傾向にある) • 50歳台に好発 • 標準治療は最大減量手術+術後補助化学療法 • 早期発見は困難であり70%以上が進行例として見つかる • 日本より欧米に多い。 • 初発進行卵巣癌の新治療開発が必要 ー術後補助化学療法の工夫、術前化学療法、維持化学療法 本日のお話 • 骨盤内の解剖と婦人科がんの疫学 • 卵巣がん:疫学、治療体系 • 子宮体がん:疫学、疾患の特徴、標準治 療と予後、今後の治療開発 • 子宮頸がん:疾患の特徴、検診の意義、 疫学、標準治療と予後、今後の治療開発 子宮体がん endometrial cancer 前癌病変は子宮内膜異型増殖症 エストロゲンの過剰刺激がリスク因子 →肥満、高血圧、糖尿病、TAM内服など 初期症状の多くは不正性器出血 内膜細胞診の正診率は約60% 経腟超音波での内膜肥厚像も有用 確定診断は内膜組織診 筋層浸潤の術前評価にはMRI 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 4 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 子宮体がんを取り巻く状況 標準治療と予後 Stage 0 Ia 頻度 (%) 9.6 16.6 Ib 31.1 予後 (5年生存率) 100 % 88.9 % 90.0 % 標準的治療 手術 手術 手術±術後補助療法 Ic 10.5 II a II b 2.4 4.2 III 19.0 手術+術後補助療法 IV 4.9 (放射線療法) 80.7 % 79.9 % 72.3 % 51.8 % 19.5 % ライフスタイルの欧米化→子宮体癌の罹患数増加 罹患数:約2500人(1983年)→約5000人(2000年) 再発高危険群への術後療法開発が急務 しかし、 再発高危険群 のコンセンサスはない 本邦の多くの施設での術後補助療法は化学療法であり、放射線 より有用性も高い 放射線(9.4%)、化学療法(33.7%):婦人科腫瘍委員会報告(2004) GOG 122 trial (optimal stage III/IV), JGOG trial (intermediate risk) 現時点での子宮体癌標準化学療法(最もエビデンスレベルが高 い治療レジメン)はdoxorubicin / cisplatin併用療法 (AP療法) 05年2月 厚労省「抗がん剤併用療法に関する検討委員会」 AP療法の子宮体癌への保険適応拡大を承認 再発期 なし(放射線 or 化学療法) 婦人科腫瘍委員会報告. 日本産科婦人科学会雑誌. 2004 しかし、 AP療法のfeasibilityは悪いといわれる 子宮体癌術後治療に関する実態の調査研究 術後再発高危険群とは? 遠隔再発を有意に来しうる因子として、以下のものが抽出される いずれかを有する症例を術後再発高危険群とできるか? ・ 手術進行期IIb期以上 ・ 類内膜腺癌Grade2 で手術進行期Ic期 ・ 類内膜腺癌Grade3で進行期は問わず 10月よりJGOG のアンケート調査 ・ 高度の脈管侵襲を認める ・ 類内膜腺癌以外の組織型 臨床進行期I-II期895人の5年無再発生存率の後方視的検討 Morrow CP: Gynecol Oncol 1991 リンパ節転移の有無と、病理組織学的因子の関係 Boronow RC. Obstet Gynecol 1984 遠隔再発を来しやすい病理組織学的因子を検討 Mariani A, et al: Gynecol Oncol 2003 GOG 122 trial 子宮体がんの術後治療開発 Randoll ME, et al. ASCO 2003 高危険群 術後補助化学療法のPhase III 手術 子宮体癌 III・IV期 残存≤2cm WAI R 全腹部照射 AP療法 無増悪生存期間 WAI < AP (HR: 0.68) 全生存期間 WAI < AP (HR: 0.67) 多施設で 検証することに WAI R Taxane/Platinum AP 久留米 登録数 213 209 10 (6) 治療完遂例 84% 63% 83.3% 毒性中止例 3% 17% 0% 1.3 5.1 4.65 1.9% 4.1% 0% AP療法のfeasibility 治療期間 (月) の低さが問題となった 治療関連死 ADR/CDDP JGOG 2041 (randomized phase II ) 進行・再発子宮体がんに対するDP vs. DC vs. TCの勝者 手術範囲も問題:単純子宮全摘+両側付属器切除 が基本 リンパ節の廓清or生検、範囲はいつも学会で熱い議論 →筋層浸潤の術中判定、センチネルリンパ節などで個別化 今回の試験では、手術範囲(特に廓清範囲と個数)もCRFに記載 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 5 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 子宮体がんのまとめ • 罹患数はこの20年で倍増し、55歳以上の死亡数は特に増加 していて、予後不良例に対する新治療開発は急務 • 本邦の術後治療の実態把握のため調査研究を行う • 標準化学療法はAPだが、本邦でのfeasibilityを検証する必要 本日のお話 • 骨盤内の解剖と婦人科がんの疫学 • 卵巣がん:疫学、治療体系 • 子宮体がん:疫学、疾患の特徴、標準治 療と予後、今後の治療開発 • 来年夏の開始を目指し、術後高危険群に対するAP vs. Taxane/Platinumのランダム化比較試験を計画している • いずれは、リンパ節廓清の範囲や程度を決める研究も必要 • 子宮頸がん:疾患の特徴、検診の意義、 疫学、標準治療と予後、今後の治療開発 高齢かつ合併症があっても安全で有効な治療を 子宮頸がん cervical cancer 子宮頸がん検診:子宮頸部擦過細胞診 症状 初期の間は無症状 子宮頸部に腫瘤を形成するようになってから不正性器出血 性交時出血(接触出血 contact bleeding)で気づくことも 多く、高齢者はかなり進行するまで気づかないことがある。 病巣に感染が起きると異常帯下(水様性、粘液性、血性)や 帯下の増量を訴える。 さらに進行すると、水腎症に伴う腰背部痛、膀胱浸潤に伴う 血尿、直腸浸潤に伴う血便、下腹部の疼痛、リンパ節転移に 伴う下肢の浮腫や神経因性疼痛が現れる。 発症しやすい部分の細胞をみながら擦り取るので、かなり正確 子宮頸部擦過細胞診 結果の判定 細胞診標本を細胞検査士、細胞診指導医が顕微鏡下に診 断する。 感度 約80% パパニコロウ分類 特異度 90%以上 クラス I,II 正常 陽性的中度 75〜95% 陰性的中度 99.8% クラス III 異形成を疑う クラス IV クラス V 上皮内癌を疑う 浸潤癌を疑う 精密検査へ コルポスコープ下での狙い組織診を行う コルポスコープ (拡大腟鏡診) 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 6 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 正常の子宮腟部 上皮内癌 中等度〜高度異形性を疑う 子宮頸がん登録の臨床進行期別割合の年次推移 子宮頸部円錐切除術(子宮機能温存術式) 登録患者数 7,274 7,117 6,554 7,170 7,203 7,031 120 134 141 169 182 226 施設数 100 % 上皮内癌(CIS)の占める割合が増えた! 80 IV期 III期 II期 60 Ib期 Ia期 CIS 40 20 0 子宮の先端だけを切除する。 その後の妊娠、出産も可能である。 子宮頸がんの死亡者数 罹患率の年次推移 1979 1983 1987 1991 (年次) 1995 1998 日本産科婦人科学会登録(1979〜1998年) 死亡率の年次推移 100 胃 死亡率︵人口 万人対︶ 1 0 子宮 結腸 胆嚢 10 乳房 白血病 直腸 少し上昇 卵巣 1 1955 ‘60 ‘65 Why ? ‘70 ‘75 ‘80 ‘85 ‘90 ‘95 ‘99 year 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 7 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 年齢階級別罹患率 女性のがんの年齢階級別罹患割合 がんの統計 2003 子宮がん (1999年) 乳がん 全年齢層で増え、 45〜49歳の罹患率が最多 20〜30歳代が増え、 罹患率曲線が大きく変化 子宮頸がんの疫学 25〜45歳では子宮と乳房で60%を占める 25〜35歳では子宮がんが最多で40%を占める 組織型による治療戦略 がん検診の普及により更年 期以降の罹患率は減少 罹患率 性成熟期の罹患率は確実に増加 •若年者の婦人科受診への抵抗 •近年の小子化・晩婚化による 発見の遅れ •性の氾濫に伴うHPVなどの 性感染症(STD)増加 若年女性の浸潤子宮頸がんの 比率はさらに増加が見込まれる 扁平上皮癌は非常に放射線感受性がよい 一般に非扁平上皮癌は予後不良 今まで、組織型による治療法の区別はない 1990年 90.7しかし・・・ % 6.4 % 腺扁平 上皮癌 2.4 % 2000年 78.6 % 4.9 % 扁平上皮癌 腺癌 14.3 % 非扁平上皮癌を無視できなくなりつつある がんの統計 2001年版より 標準治療と予後 Stage 頻度 (%) 0 Ia 20.2 (99年以前 ) 標準的治療 手術(円錐切除術) 手術 Ib 31.2 手術 (広汎子宮全摘) II a 7.0 or 放射線療法 II b III a 17.3 1.0 IIIb IVa IVb 再発期 15.5 3.4 4.2 放射線療法 なし (放射線 or 化学療法) 予後 (5年生存率) 100 % 89.9 % 79.4 % 63.0 % 59.8 % 42.2 % 36.0 % 19.4 % 0% NCI Clinical Announcement (1999/2/22) Strong consideration should be given to the incorporation of concurrent cisplatin based chemotherapy with radiation therapy in women who require radiation therapy for treatment of cervical cancer. 婦人科腫瘍委員会報告. 日本産科婦人科学会雑誌. 2004 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 8 婦人科がんの標準治療と特殊性 標準治療と予後 Stage 頻度 (%) 0 Ia 20.2 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) SWOG 8797 (GOG #109) (Adjuvant setting) (99年以前 以降 ) 標準的治療 手術(円錐切除術) 手術 Ib 31.2 手術 (広汎子宮全摘) II a 7.0 or 化学放射線療法 放射線療法 II b III a 17.3 1.0 IIIb IVa IVb 再発期 15.5 3.4 4.2 SCC vs. Non-SCC by RT only 予後 (5年生存率) 100 % 89.9 % 79.4 % 63.0 % 59.8 % 42.2 % 放射線療法 化学放射線療法(cCRT) 36.0 % 19.4 % 0% なし (放射線 or 化学療法) Peters et al. J Clin Oncol 2000; 18: 1606-1613. 婦人科腫瘍委員会報告. 日本産科婦人科学会雑誌. 2004 SWOG 8797 (GOG #109) (Adjuvant setting) 化学放射線療法における 化学療法の役割 SCC vs. Non-SCC by CHRT シスプラチンを含む全身化学療法 •放射線の局所制御能向上 •遠隔の微小転移巣の制御 OS・PFSの延長 Peters et al. J Clin Oncol 2000; 18: 1606-1613. 日本でも行えるか? • 統一されたレジメン・投与量はない • 放射線治療のやり方が施設でバラバラ 治療手順(NCCH) CDDP 40mg/m2/day 腔内照射の線源と線量分布 合計6サイクルを目標とする day1 8 15 22 29 36 タンデム 外照射 50Gy/25Fr + 腔内照射 1-2回/週 6Gy/回 Z100治験 2cm A点= 病巣線量の 基準点 A点 2cm 約40日 腫瘍の大きさ・形態により腔内照射が開始可能であれば 中央遮蔽を開始。(取り扱い規約上はstage別に規定) 中央遮蔽開始時期により腔内照射総線量を決定 外子宮口 オボイド 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 9 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) 肉眼的に明らかに 腫瘍に置換された子宮腟部 A子さんの場合 33歳、女性、1児あり(3年前に出産) 3年前の妊娠時に初めて子宮がん検診を受けた。結果はク ラス IIIといわれ、総合病院で精密検査を勧められた。その 結果、今は治療は必要ないが3ヶ月ごとに受診するように 言われた。分娩後は子育てが忙しく特に自覚症状がないた め放置していた。 最近、2人目が欲しくなり2ヶ月前より性交後の褐色のお りものに気付いていた。先日からは断続的に生理以外の性 器出血があるため、04年11月に来院した。 A子さんの検査結果 A子さんの治療経過 子宮頸部組織診:浸潤扁平上皮癌 標準治療:広汎子宮全摘術、術後放射線療法 内診:子宮頸部は腫大、可動性は良好 JCOG 0102 trialの適格規準を満たした 全身の理学所見:異常なし、リンパ節腫大もない 同意を得て登録、試験治療群(術前化学療法)に割付け 胸部単純X線、腎盂尿管造影:異常なし シスプラチンを含むBOMP療法2コースでPR 膀胱鏡、直腸鏡:直接浸潤を認めず さらに2コース追加し縮小を続けたが残存 腹部CT検査:右外腸骨リンパ節に転移と思われる腫大 05年4月 骨盤MRI検査:子宮頸部は長径5cmに腫大(bulky) 診断:子宮頸癌Ib2期、骨盤リンパ節転移疑い 広汎子宮全摘術施行(両側卵巣温存・移動) 骨盤リンパ節へ転移を認め、術後に放射線の全骨盤外照 射を追加して、05年6月退院となった。 広汎子宮全摘術の切除範囲 05年7月 JCOG 0102の無効中止が決まる。 摘出された子宮 子宮頸癌(Ib、IIa IIb期)に行われる 根治的術式 骨盤リンパ節郭清 を併施する 術後合併症を伴う 排尿障害、排便障害 リンパ嚢胞、リンパ膿瘍 下肢・外陰のリンパ浮腫 腸閉塞、など・・・・ 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 10 婦人科がんの標準治療と特殊性 第11回CSPOR・CRCセミナー(2005/9/17〜9/18) A子さんの現況と気持ち・・・ 職場復帰は果たしたが、尿意が無いため時間ごとにトイ レで自己導尿。リンパ浮腫を防止する両下肢の厚手のス トッキングは夏場なので蒸れて仕方がない。 家に帰ると子供が「弟が欲しい」と言ってくる。先生の 熱意から臨床試験に登録したが、結局治療期間が長くな り子供に寂しい思いをさせてしまった・・・。芸能人み たいに米国で人工授精するお金もないし・・・。 症状がでてわずか2ヶ月後に受診したのに、結果的に生 活の質はガタ落ち。大きな手術をして、リンパ節もきれ いにとって、そのうえ放射線まで必要あったの? ここまで頑張って再発したらどうしよう・・・ 高度異形成の30%程度が浸潤癌に進行する 初診時のAさん 軽 度 異 形 成 正 常 上 皮 高 度 異 形 成 進行する間に自覚症状は無い。 平成17年度厚生労働省厚生科学研究費「子宮頸癌の予後向上を 目指した集学的治療における標準的化学療法の確立に関する研究」 浸潤癌の治療成績向上に向け、化学療法の重要性が認識され てきている(術前化学療法、化学放射線療法) 安全かつ全身制御能力に優れる化学療法regimen開発が必要 増加傾向にある子宮頸部非扁平上皮癌への治療開発も必要 根治的手術・放射線の適応外である、遠隔転移を有するIVb JCOG 0505 IVb 期・再発例が化学療法単独評価の対象となりうる global standardのTP (Paclitaxel + CDDP)療法は非扁平上皮癌 ¾ にも高い有効性を期待: Paclitaxel単剤の奏効率31%(13/42) Curtin JP, et al. J Clin Oncol 2001; 19:1275-8. 久留米大学医学部産婦人科学講座 嘉村 敏治 喜多川 亮 研究事務局(プロトコール作成) 子宮頸がん 期・再発 浸 潤 癌 治療前のAさん 研究代表者 上 皮 内 癌 軽度異形成の50~80% 程度は自然に消退する。 子宮頚がんの治療開発 中 等 度 異 形 成 ¾ A群:TP療法 ランダム割付 50歳未満 / 50歳以上 PS 0/1, 2 SCC / non-SCC 未照射標的病変の有無 Primary endpoint 全生存期間 PTX 135mg/m2, 24h, D1 CDDP 50 mg/m2, D2 Every 21 days B群:TJ療法 PTX 175mg/m2, 3h, D1 CBDCA AUC of 5, 1h, D1 Every 21 days Secondary endpoint 無増悪生存期間、腫瘍縮小効果、有害事象発現割合、非入院日数割合 まとめ 子宮頸がんのまとめ • 予後(妊孕性を含む)を左右するのは早期発見・早期治療 • 予後の悪い卵巣がん、罹患数の増加が著しい子宮体がん、 • 子宮頸部擦過細胞診は非常に有用なスクリーニング (05年4月からは20歳以上を対象とする市町村も多い) • 若年女性患者、非扁平上皮癌の増加が新たな問題 • 若年女性の与える社会的影響はどんどん大きくなっている • 浸潤子宮頸がんに対する新治療開発は必須 → 化学放射線療法、術前化学療法、有効かつ安全な化学療法 若年女性に増えている子宮頚がんの治療開発が必要 • 婦人科がんの治療開発はまだまだ未成熟 ーsequential、neoadjuvant、分子標的療法・・・・ • 欧米とは別のエビデンス確立が必要 ー体格・合併症に違い→手術適応・その後の治療を左右 • 産婦人科医として卵巣機能・妊孕性温存などを重視 ー子宮・卵巣温存手術、Ovarian protection 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁じる 11
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