統計情報から見る図書館活動 中林 雅士∗ 1 本稿の主題と構成 本稿は,図書館内の主な業務単位にその活動を反映する統計情報を作成 し,集計の基礎となる情報と作成意図について解説を加えたものである. その主目的は,図書館が持つ能力を正確に把握し,今後の図書館政策決定 の基礎となりえる有効な情報を提供することであり,集計結果に対する個 人的評価は極力避けている.なぜなら,統計情報は多角的に評価されてこ そ,その効果を最大限に発揮するものであり,そのためには,先入観を排 し,評価を加える側が同一の認識と意図を持つことが不可欠だと考えたか らである. 統計結果は,まず図書館の主な業務単位である蔵書・発注・書誌・サー ビスの 4 つに分割し,なおかつ本学図書館の実情に合わせて各図書館ごと の集計を基本とした.初めに集計意図と解説を加え,その後統計結果を配 することによって,各分野毎の統計を相互リンク的に把握していただける ことを期待するものである. 2 統計情報の作成について 統計は図書館システムに保存された情報を収集・加工することで作成. しかし本来的に図書館システムは結果情報を保存・運用するシステムであ り,設計当初から統計作成を意識してない情報は,加工・集計を行うため ∗ なかばやし・まさし/図書館事務部図書館庶務課システム担当 の手間が必要となる.図書館システムに蓄えられた情報は当然一定のルー ルに沿って保存されているが,そのルールは利用者がアプリケーションを 通して触れるデータのイメージとはかけ離れており,情報の二次的利用を 手がけるためには図書館システムの開発とメンテナンスを実務として携 わった経験が不可欠である.図書館システム内のデータは前述した通り細 分化されており,一意的に情報を集計するには適してない.そこで今回の 大きな枠組みである蔵書・発注・書誌・サービスに分割した統計用データ ベースを作成し,必要情報だけを図書館システムから移植した.当然,そ の過程では加工や編集作業が加わっているが,それはあくまでもデータの 連結や不要データの削除であり,データの件数や質に手を加えてはいない. 統計用データベースにはフリーソフトとして実績のある MYSQL1 を採 用し,ハードウェアは Windows982 マシンを利用した.データベースから の情報収集はデータベース言語の SQL3 を中心に行ったが,一部は解析用 のプログラムを作成している. 3 蔵書構成 蔵書構成は図書館の特性とサービスにおいて最も重要となる要素の一つ であり,その評価は多角的に行われるべきである.総冊数は図書館の規模 や歴史,そして予算規模に依存するものであり,比較対象の基準としては 相応しくない.何より利用者が求めるのは自らが必要とする情報を効率的 に収集できる環境であり,それは一面的に蔵書数に依存するとは言い切れ ないからである.利用者が求める情報は多種多様であり,そのニーズに対 応する為には,確率を高める為の“ 量 ”と共に,蔵書の質やバランスが求 められている.蔵書の質を統計情報を元に評価可能かどうかについては意 見の分かれる点であるが,蔵書バランスという視点では一つの指針となり えるだろう.そこで蔵書評価の為の情報として,総冊数を資料別,10 区 1 非常に汎用性の高いデータベースソフト.あらゆる OS で稼動し,互換性も高い.多く は全文検索データベースに用いられ,大量データの高速検索に力を発揮する 2 CPU は PentiumII,メモリ 128 メガ,ハードディスク 4 ギガのノートパソコン 3 Structured Query Language,データベース言語一種.多くのデータベースに採用され,高 い汎用性と柔軟性を提供する. 分分類別に集計し,付随情報として過去 4 年間の増加冊数についても同一 の区分で集計した.現在の蔵書バランスと増加情報を比較・検討すること によって,図書館の収書政策がどの程度忠実に蔵書バランスに影響を与え ているかを認識することは,蔵書の質を評価する為の第一段階であると考 える. 全体の増加数だけではなく学習用資料4 に焦点を当てて集計したのは,年 間増加数の約 70%が学習用資料であり,図書館の蔵書バランスに対する 政策がもっとも反映される部門だからである.一方,研究用資料5 は,ど の分野にどれだけの研究者がいるかに大きく依存しており,図書館の収書 方針に包括して管理することは現実的でないだけではなく,時には研究活 動の制約となる可能性もある.研究用として収集した資料に継続的かつ的 確な評価をいかに与えていくかについては依然として残る課題であるが, またそれは同時に図書館員の専門性にも大きく関わるものでもある. 簿外資料は図書館の正式な蔵書と見なされない為,利用者ニーズと利用 形態に特化した資料群である.本来,簿外資料はその用途に合わせて一時 的に収集したものであり,その多くは辞書等のように多数の複本が必要と なる場合であった.しかしここ数年は,文庫本や実用書などの購入にも充 てられている.これは利用者の要望に応えるための処置であることから, 現時点での利用者動向を推察可能とする側面があるはずである. 年々増加する資料に対しどの程度の蔵書数を適正と判断するかについて は,常に検討を迫られる課題であるが,収容能力に限界が迫った今こそ, 明確な判断を下す必要がある.資料保存が使命である図書館にとっては, 除籍作業自体がその役割に相反するものであり,出来ることなら一度収蔵 した資料を保存し続けられることが最善ではあるが,同時に無限に蔵書を 増やすことが不可能であることも充分に理解している.ならば残された課 題は,如何に効果的に新規資料の為のスペースを確保し,かつ蔵書バラン スを適切に保っていくかであろう.現在の蔵書バランスと除籍資料のバラ ンスを常に意識することによって,むやみな廃棄によって現状の蔵書特性 を損なうことなく,増加資料分の収容領域を確保することは充分に可能と 考えられる. 4 学生向けに主に図書館員が選書を行い収集する資料 5 研究者が自らの研究テーマに沿って選書を行う資料 蔵書バランスと同等に,収集された資料の配置は図書館の特性を方向付 ける要因の一つである.資料の配置は施設的な制約やメンテナンスコスト の観点から容易に変更可能ではないが,資料の利用状況と配置バランスを 長期的な視点で捉え,一定のサイクルで最適な状況を保つことが求められ ている.だが実際の運用では,資料収容スペースの確保が最優先されるた め,適正バランスは単なる収容スペース確保と同質となることは避けら れない.そこでこのような配置的制約を軽減する為,本学図書館では入庫 サービスを全ての館で実施している.入庫する為には一定の手続きが必要 であるが,書庫に配置された大量の資料に直接触れることができるのは, 利用者サービスとしても大きな前進だろう. シラバス本は,教員がシラバスに掲載した教科書・参考資料等を中心に 収集している資料群であるが,従来は通常資料と同じく分野別に配架され ていたものを一箇所に集中配置し,利用者の利便性向上を図っている.実 際の利用動向は貸出サービスを行っていないために把握できないが,近年 の収集傾向を量的に把握するだけでも,教育活動へのサポートを示す有効 な指針となるはずである. 4 発注関連統計 発注業務に対する最大の評価点はその結果となる蔵書構成であるが,業 務的側面からの考察には別種の情報が必要となる.担当者は選書だけに留 まらず,迅速かつ適正な価格で資料調達が可能となるよう,発注業者や予 算執行状況を管理し,収書方針が確実に蔵書に反映するよう常に検証しな ければならない.今回の統計では,これらの選書以外の活動に焦点を当て て集計を行っている. まず基本となるのは,発注形態別の発注件数である.これは発注業務の 基幹となるものであるが,これに付随して,利用者からの購入依頼件数, 未着資料件数を集計した.利用者からの購入依頼は発注担当者の手によっ て選書工程に廻され,必要と判断されると購入されるが,その殆どが学習 用資料である.今回は実際に蔵書となった冊数を集計しているが,これは あくまでも選書後の結果であり,利用者と蔵書の緊密度を高める図書館政 策の評価基準としては不十分であろう. 未着資料の集計は発注形態別に行っているが,実際には継続系発注の未 着情報は完全に把握することが不可能であり,評価の対象となり得るのは 和洋の各単行書発注だけであろう. 予算管理の視点からは,単行書・継続書の比率は非常に重要である.各 年度の予算を効率よく消化する為には,極力不確定要素を回避する必要が あるが,継続系の発注は,冊数・価格・納品時期という点で予測不可能な 側面があり,適正領域を越えた場合は予算的に資料調達の障害となる可能 性がある.特に予算年度をまたがって刊行されるシリーズなどを発注した 場合には,予算年度開始当初から一定の金額をプールする必要があり,同 様の発注が増加するに比例し,選書の自由度が低下することは否めない. そのため,発注担当者は年度予算単位だけではなく,複数年度での予算管 理を行なうことが求められている. 資料の迅速提供は常に図書館に求められるものであるが,資料調達期間 の短縮は最も効果的な対策の一つであろう.だが実際には,図書館だけで 安定した資料調達環境を維持できるものではない.そこで本学図書館は, 資料調達と関連データの両面で書店と相互協力する書店連携システムを 2000 年秋から導入した.これは発注データ作成から整理・装備までの業 務を書店に一括委託することによって各工程での必要日数を減らし,一層 の迅速提供とコスト削減を狙ったものである.この効果を発注業務内で評 価する為の情報として,過去 4 年間の資料調達期間 (登録日と発注日の差) を全体と書店連携システムとに区別して集計した.従来から行われていた 見計らい選書6 が書店連携システムに組みこまれることにより,選書後に 発注担当者が発注データを作成する手間が省け,かつ資料は見計らいから 直接納品となる.これで従来方式を大幅に簡素化することが可能となった が,書店連携システム導入前の基準と直接的に比較する為には,まず双方 の違いを充分に理解する必要がある.なお,この書店連携システムを適用 しているのは和資料だけであるが,今回は洋書も同様の統計を作成した. 洋書の調達は従来の書店発注方式であるが,当然和書同様に,資料調達期 間の短縮は課題として取り組んでいる. 雑誌の発注は図書資料とは異なり,年間を通して均一的に行われるもの ではなく,タイトルの選定や発注業者についても担当者が判断を加える余 地は少ない.そこで雑誌発注の統計としては,3 地区での各タイトルの重 複率を算出した.各館での重複発注は,利用者の利便性や雑誌特有の速報 性を重視したものであるが,特に外国雑誌は単価が高く,財政圧迫の一因 となっている.雑誌も図書資料同様,新たなタイトルの必要性は潜在的に あり,限られた予算内で利用者のニーズに応える為には,重複タイトルの 利用頻度と必要性を検討することは,常に雑誌担当者に求められる業務で ある. 6 書店が資料を一時的に図書館に持ち込み,図書館員が選書する方式 5 書誌関連統計 優れた書誌に求められる要素は多様である.豊富で的確なアクセスポイ ント,適切な主題分類,研究者レベルの付加情報.どれも能力とコストが 必要となるものばかりであるが,これに加え,図書館としては個々の書誌 の集合体である書誌データベースとしての質も維持しなければならない. 書誌データベースの質は,多くの点でその統一性に依存していると考えら れる.それは書誌の個々の精度だけではなく,記述や書誌および関連リン クの構成も含まれるが,この統一性を基準として,本学図書館の書誌デー タベースは NII7 の書誌データベース準拠をその方針としている.しかし, 遡及作業等の一括登録処理された書誌はそのオリジナルに依存して精度に 問題があり,書誌データベースの統一性を含め,解決すべき課題だと考え られている.通常業務では,NII 準拠の書誌データの新規登録と過去の書 誌データの修正を同時平行的に行っているが,整備状況についてはシステ ム的に把握できない.ローカル書誌が NII 書誌 ID を保持している場合, そ れは NII と同一の書誌であると認められる為,統一性を検証する為の一つ の指針となるのが NII 書誌 ID の保有件数であるが,これはあくまでも量 的な評価に過ぎない.なぜなら,NII 書誌に登録された書誌であることが 本学の求める書誌の精度を直接的に保証するものではないからである. 本学の書誌は,和図書書誌 (TW),洋図書書誌 (TY),混合書誌 (BB),雑 誌書誌 (SB) の4系列に識別される.TW,TY は旧システムで蓄積された書 誌であり,その一部は NII との整合性を維持し,かつ精度を均一化する為 のメンテナンスが必要であるが,一方で BB は新システムで作成された書 誌である為,ほぼ NII の書誌規則に準拠している. 各書誌レコード内の要素として図書館が持つ最大の特徴は,独自に付与 するローカル分類である.本学図書館は,長らく NDC68 での分類付与で あったが,1999 年 4 月より NDC9 に分類定本を変更した.これは新規に 登録する書誌だけに適用されるものではなく,書誌がメンテナンスの対象 となった場合には,可能な限り NDC9 での再付与を行っている.分類定本 の改訂は必然であるが,書誌データベースの統一性という観点からは影響 7 国立情報学研究所 8 Nippon Decimal Classification : 日本十進分類法 が非常に大きい.それは主題分類による検索が,図書館が利用者にその独 自性を提供するために最も力を注いでいる部分だからであり,これまでの 書誌作成の中で独自に維持し続けたルールこそが,統一性と共に書誌デー タベースの個性を定義する要因であるからに他ならない. 本学が運用している図書館システムには,実データを保持するだけでな く,各書誌のリンク関係を登録する機能があり,その情報をリンクの要素 ごとに集計して統計を作成した.旧図書館システムはデータ構造上,書誌 間のリンクおよび著者標目リンクを表現できないことが最大の課題であっ たが,現行システムに移行後は,日常業務を含め,リンク関係の構築に力 を注いでいる.これらのリンク情報はすべての書誌が保持するものでは ないため,全体書誌数に対する構成率を評価の対象とはできないが,旧シ ステムでは実装されていない機能であり,検索効率の向上という観点から は,数的統計だけでも充分に評価対象となりえるだろう. 書誌に付与されるローカル分類は,統計等に利用される区分として最 も利用頻度が高く,実際には,図書館全体の特性を決定づける最大の要素 だと言っても過言ではない.しかし人的作業によって作成される他のデー タと同様に,当然パンチミスや記述ミスは不可避である.今回の各種統計 で分野が不明となっているものの多くは,書誌に付与されたローカル分類 の問題である.データを調査した結果,殆どが単純な記述ミス等であった ため統計用データ作成時に修正することも可能であったが,敢えて補正措 置はとらなかった.図書館システムに保持されるデータは相互に強い依存 関係があり,一つの情報の不整合が他データの統一性を害し,最終的には データベース全体の信頼性を低下させる恐れがある.図書館業務ではすべ ての業務で同一のデータを共有利用することになるが,このような業務形 態の場合,現場担当者の一層のデータベースへの関心と理解が不可欠であ り,同時に詳細までデータ構成を理解し調整を図るシステム管理者には, データの信頼性を保持し,ヒューマンエラーを極力補正する為の対策が求 められている. 2000 年秋から導入を開始した書店連携システムは資料の調達だけでな く,書誌所蔵データ作成・装備まで一環して行うものであるが,発注作業 同様,外部委託を導入することによって一層の資料迅速提供と整理作業の 効率化を狙っている.そこで現場での効果を評価するための情報として, 整理に要した日数 (配架日―検収日) を集計した.厳しい財政環境と利用者 ニーズの多様化は,図書館に従来方式の抜本的見直しを迫っている.その 対策として導入したのがこの書店連携システムであるが,コストとスピー ドの共存は想像以上に困難である.外部の力に過多に依存すれば,図書館 の基礎能力の低下を招く恐れもあるが,すでに達成したレベルを低下させ ることは受け入れられるものではない.どのレベルが適正であるのか,そ の決定には一層の経験蓄積とコスト・質の両面から的確な評価を与えるた めの基準が必要であろう. 6 サービス統計 貸出や延長,予約などのサービスは最も直接的な利用者サービスであ り,その動向を把握することは,利用者ニーズへの素早い対応と図書館の 政策決定に不可欠であることは言うまでもない. 図書館サービスの一つの目安として,年間貸出冊数が取り上げられるこ とが多々あるが,一律的に量的統計だけを評価基準とすることにはやや疑 問が残る.そこで今回のサービス統計では,貸出・延長サービスを中心に, 分野別・資料種別・財産別・配置場所別に集計を行った.分野別は当然で あるが,資料種別と財産別 (固定・簿外) の統計はその質を評価するとい う側面からは非常に重要であろう.和図書・洋図書は発注統計でも明らか なように,学習用資料と研究用資料の差を反映している.また簿外は本来 図書館の収書方針から外れる資料群であり,その利用は大学図書館が潜在 的に想定する利用動向との差異を示す一つの指針と考えられるだろう.ま た,開架・閉架資料の貸出比率の統計も注目すべきものである.なぜなら, 前述した通り全館で入庫サービスを 1998 年より開始しており,それに対 する利用者の反応が直接的に反映される情報だと考えられる為である. サービス統計にはもう一つ,現場での業務を量的に表現する側面もあ る.これは限られた人的資源を適正配置するためには欠かせない情報であ り,その動向には常に関心を払わなければならない.月別の貸出・延長処 理件数は,業務量をもっとも端的に表すものであるが,これ以外の要素と して,サービスの非対人率の推移を集計した.中央図書館は,2000 年に 3 台,2001 年に 1 台の自動貸出機を導入し,定型業務の非対人化と人的資 源の再配置を行っているが,自動貸出機は日曜開館などの通常開館以外の サービス時間帯にも貸出・延長を可能とする側面もある.なお,自動貸出 機は中央図書館だけの機能であるが,2001 年 10 月より開始されたポータ ルサービス9 は,そのサービス提供が場所に制約されないため,すべての 図書館における利用動向に影響を与える可能性がある. 利用者構成は貸出系サービスと対の関係にあり,利用者構成が変化すれ ば,蔵書バランスやサービス内容にも変化が求められるのは必然であり, 9 ホームページから個人認証を通じて,貸出更新・予約依頼・配送依頼が行えるサービス. 大学在籍者のみサービス中 図書館はその把握に努めることが常に望まれている.例えば,上記ポータ ルサービスは大学構成員のみへのサービスであるが,もし校友やコンソー シアムの利用者が増加傾向にあるのであれば,現場の業務量軽減と利用者 の利便性の向上を狙ってサービス拡大を検討しなければならないだろう. 大学図書館はその構成員に対してのサービスだけでなく,地域社会への貢 献も一層求められており,今後の利用者構成の変化には迅速に対応しなけ ればならない. 7 図書館と統計情報 今回集計した統計情報には,現場担当者の感覚的認識と大幅に異なった ものもあれば,近似値として表現されたものもあるであろう.200 万冊の 所蔵・40000 人を超える利用者を正確に把握することはほぼ不可能であり, どこかでシステムから生成された統計情報に依存しなければならない場面 に直面するが,その情報が常に感覚的な認識と合致するとは限らない.な おかつ,どちらがより図書館活動を反映しているかも一意的に判断するこ とはできないであろう.なぜなら,図書館の特性を定義する要素の殆どが 経験を積んだ図書館員の日々の業務の蓄積であり,それは多くの場合,統 計情報に直接的に依存しながら行われたものではないからである. 統計情報は図書館の現時点の一部を切り出すことには優れているが,図 書館の成熟は点でなく,線での評価を求めるものであり,総合的な評価は 図書館員の手に委ねられていることに変わりはない.図書館員が長期的政 策を統計情報を基に策定することによって,単なる数字の羅列である統計 情報が真の価値を持ち,図書館員に未来を指し示すことになるとすれば, 本稿はまだ地図上の現在地点を指し示したに過ぎず期待される効果を充分 に発揮してはいないが,これを期に一層の統計情報の活用を望むもので ある.
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