風力発電(再改訂版)

ま え が き
いわゆる「新エネルギー」は,環境へ与える負荷が小さく,偏在による資源制約が少な
い国産エネルギーであるため,エネルギー安定供給の確保,地球環境問題への対応,およ
び新規産業・雇用の創出に資する等の意義もあることから,さらなる開発・利用が大いに
期待されている。
その開発は石油危機を契機とし活発になったが,石油危機が去り石油価格が低水準で安
定するようになると,「新エネルギー」に対する社会の関心は低下し,経済性などの点に
弱点のある「新エネルギー」が本格的に利用される時期は一時遠のいたように見えた。
しかし,最近になり,地球温暖化等の環境問題に対する社会の関心の世界的な高まりと
その取組の強化が叫ばれるようになり,エネルギーの供給および利用に際しても,環境面
で有利な特性を持つ「新エネルギー」は従来にも増して,積極的な開発・利用が期待され
てきている。
さて,この「風力発電」は「新エネルギー」の中でも,クリーンで資源枯渇の心配のな
い風力エネルギーを発電に利用したものであり,近年,世界中で地球温暖化防止上の有効
手段の一つとして大規模な開発・利用が行われてきている。
ただし,風力エネルギーは文字どおり「風任せ」であり,本来凪や暴風など不安定な風
で安定して発電するためには困難な部分が多く残されている。また,日本にはいくつかの
風力発電有望地があるものの,山国であるため乱流を生みやすく,台風の襲来,落雷など
の克服すべき固有の課題もある。さらに,発電規模拡大上からも候補として考えられるオ
フショア(洋上)の場合は,遠浅が少ないわが国沿岸への適用上の困難もある。
このように,風力エネルギーは,まだ解決すべき課題があるが,資源が広範に賦存し,
再生可能な純国産のエネルギーであるという利点は大きい。そこで今回「風力発電」編の
再改訂を行うこととし,今後のさらなる開発・利用の参考となることを目指し,その概要
を紹介する。
なお,本編作成にあたっては,当研究所の下岡
術情報センター(センター長
小川
浩主管研究員が執筆し,エネルギー技
紀一郎)において編集した。
終わりに,このシリーズの刊行は,電力中央研究所からの受託業務「エネルギー技術デ
ータベースの体系化法の開発」の一環をなすものであり,同研究所に対して深く謝意を表
する。
2004年3月
財団法人
エネルギー総合工学研究所
理事長
秋
山
守
新 エ ネ ル ギ ー の 展 望
風力発電(再改訂版)
目
はじめに
次
................................................................
1
風のエネルギー
2
風車の歴史
3
風力発電機の仕組み
4
1
......................................................
4
..........................................................
6
...................................................
7
風力発電の課題
......................................................
10
5
国内の風力発電
......................................................
12
6
海外の風力発電
......................................................
16
7
風力発電の環境影響
8
風力発電の経済性
まとめ
...................................................
17
.....................................................
18
..................................................................
19
は じ め に(1)(2)(3)(4)
(2) 経済性の面での制約から普及が進展してお
らず,かつ,
風力エネルギーは,いわゆる「新エネルギ
(3) 石油代替エネルギーの促進に特に寄与する
ー」あるいは「再生可能エネルギー」の一つで
もの
あるが,石油危機を契機として,風力発電に対
として,我が国が積極的に導入促進を図るべき
する関心が世界的に高まったことがある。その
政策的支援対象と位置づけられている。なお,
時期に作られたもののなかでも,米国カリフォ
具体的な「新エネルギー」としては,「供給サ
ルニアにおける,一つの地点に何百台という風
イドの新エネルギー」と「需要サイドの新エネ
車を並べるウィンドファーム(あるいはウィン
ルギー」に分類され,風力発電は前者の柱の一
ドパーク)と呼ばれる風力発電の利用は有名で
つとして期待されている。
ある。
2001年7月策定の「長期エネルギー需給見通
しかし,石油危機の終息によって,一時「新
し」によれば,風力発電の実績と目標は表1の
エネルギー」に対する社会の関心は低下し,経
とおりである。これによると,2010年度の目標
済性などの点に弱点のある「新エネルギー」の
設備規模は300万kWとなっており,1999年度の
開発は世界的に勢いを失い,その開発利用の速
8.3万kWに比べ,非常に大きな目標となってい
度は低下した。
る。
その後,1992年の地球環境サミット等に見ら
れるように,近年の地球温暖化問題に対する国
表1
際的関心の高まりもあり,1997年12月に京都で
1999年度
開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議
(実績)
(COP3)において世界規模における将来の
原油換算
枠組み案が取り決められた(京都議定書)。日
(万kl)
本は温室効果ガスの排出量を2008年から12年ま
設備規模
(万kW)
での期間中に,1990年の排出量より6%削減す
ることを約束し,2002年には同議定書が国会で
風力発電の導入実績と目標
2010年度
現行対策
維持ケース
2010年度
目標ケース
3.5
32
134
8.3
78
300
(出典:総合資源エネルギー調査会総合部会,需給部
批准された。
会報告書~今後のエネルギー政策について~
この温室効果ガスの排出量削減の一手段とし
(平成13年7月)/http://www.meti.go.jp/
て,二酸化炭素を運転中にほとんど排出しない
report/downloadfiles/g10713bj.pdf)
「新エネルギー」や「原子力エネルギー」の利
用が考えられる。これらのエネルギーは,化石
また,国の政策として「エネルギー政策基本
燃料に比べ,環境へ与える負荷が小さく,資源
法」が,エネルギー政策の大きな方向性を示す
制限が少なく,石油依存度を低下させる石油代
ことを目的として,2002年6月に公布・施行さ
替エネルギーとしてエネルギー安定供給にも資
れた。その基本方針は「安定供給の確保」「環
し,さらには新規産業・雇用の創出等にも貢献
境への適合」「市場原理の活用」としたもので
するなど様々な意義を有している。
あるが,その具体的展開をはかるための「エネ
特に,「新エネルギー」は,1997年に施行さ
ルギー基本計画」が2003年10月に閣議決定され
れた「新エネルギー利用等の促進に関する特別
た。この中で,風力発電もエネルギー自給率の
措置法」において,
向上や地球温暖化対策に資するほか,分散型エ
(1) 石油代替エネルギーを製造,発生,利用す
ネルギーシステムとしてのメリットも期待でき
ること等のうち,
る貴重な「新エネルギー」の一つとして開発,
- 1 -
導入及び利用を着実に推進することがうたわれ
風力発電は,バイオマス発電(現在迄の実質
ている。
は廃棄物発電主体)に次いで同法適用量が多く,
さらに,2003年4月からは新エネルギー等か
特に最近民間ビジネスの人気および期待の大き
ら発電される電気を一定量以上利用することを
さが報告されている。
義務づける「電気事業者による新エネルギー等
世界的にもわが国においても風力発電の利用
の利用に関する特別措置法(RPS
は急速に拡大しており(図1,2,3),世界の
(Renewables Portfolio Standard)法)」が
風力発電の総設備容量は2002年度末で3,000万
施行された。
kWを超えている。
7,500
35,000
7,000
6,500
年間設備容量
累積設備容量
30,000
6,000
25,000
5,000
4,500
20,000
4,000
3,500
15,000
3,000
2,500
累積設備容量[MW]
年間設備容量[MW]
5,500
10,000
2,000
1,500
5,000
1,000
500
図1
2002
2001
2000
99
98
97
96
95
94
93
92
91
90
89
88
0
87
0
年
世界の風力発電導入の推移
312 .3
245
200 4
200 3
200 2
200 1
200 0
199 3
31.6
9 .5 13.5 17.2
70.6
199 9
199 2
図2
5.9
199 8
5
199 7
2.9
199 6
1
199 5
0.9
199 4
0.4
199 1
121.1
199 0
800
750
700
650
600
550
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
198 9
Cumulative amount[MW]
(出典:牛山 泉,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
日本の風力発電導入の推移
(出典:牛山 泉,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
- 2 -
1 40 0 0
END 2001
1 20 0 0
風力導入量[MW]
START 2003
1 00 0 0
80 0 0
60 0 0
40 0 0
20 0 0
図3
その他諸国
ポルトガル
カナダ
ギ リシ ャ
スウェーデン
イギ リス
日本
中国
オランダ
イタ リア
インド
デンマ ーク
ア メリカ
スペイン
ドイツ
0
国別導入状況
(出典:牛山 泉,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
わが国においても,大規模風力発電施設(ウ
また,出力の不安定な風力発電が大規模導入
ィンドファーム)等において技術革新や大規模
されれば,それが電力系統に影響を及ぼす可能
化による設置コストの低減が見られ,導入補助
性が指摘されており,今後一層の導入を図るた
等の効果により,風況の良い北海道,東北地方
め,風力発電の出力安定化や電力系統への影響
を中心に民間企業や地方公共団体による導入が
に関する検討が必要とされ,すでにその調査も
進んでいる。
開始されている。
さらに,わが国には3万kmを超える長い海岸
そこで本書では,新エネルギーの中でも導入
線があるので,海を利用したオフショア(洋
実績が増大しており,更に将来的にも導入・普
上)風力発電も有望であり,風力発電の導入促
及の拡大が期待されている風力発電について,
進が大いに期待されてる。
その技術的動向,特に最近の話題を中心として
なお,上述目標に対する見通しであるが,現
解説を行った。
状からするとその目標の達成には多くの課題の
なお,当所は先に当シリーズにおいて1992年
解決が必要になる。例えば,平地の多いヨーロ
に「風力発電(改訂版)」を作成しているが,
ッパなどとは異なり,山などが多く,そのため
今回同書内容を全面的に見直し,作成したもの
風の乱れの多い風況など,わが国の気象条件に
である。
適した風力発電の開発や,電力網の設備などの
解決が必要になる。
- 3 -
1
風のエネルギー(1)(2)(3)
ここでいう風速とは,気象庁の約束として,
地表から10mの高さにおける10分間の平均風速
わが国では,風は「花鳥風月」という言葉も
を指しており,瞬間にはさらに強い風が吹くこ
あるように,自然現象の中でも特に風情(ふぜ
とになり,それは瞬間風速と呼ばれて区別され
い)のあるものとしてとらえられ,昔から多く
ている。
の歌にも詠まれてきた。ただし,そのように親
また,地表に沿って流れる風は地面との摩擦
しまれる風というものは,微妙に変化するたぐ
によって減速されるので,地表から上にいくほ
いの弱い風であって決して強風ではない。強風
ど風は強くなる。風速と高度の関係を示す経験
はむしろ嫌われる存在であったといえるが,風
則によれば,ふつう,例えば地上50mでの風速
力発電はこの強風を役立てるものである。
は地上10mの風速に比べて約6割も大きい。
風というものは太陽が地球を不均一に暖め,
ところで,空気は「軽い」ものの代名詞の様
空気が低温の地域から高温の地域に流れ込むこ
に用いられているが,その密度は通常の大気
とから生じるものである。大規模なものからい
(平地)においておおよそ1.225kg/m 3前後で
えば,赤道~極間の温度差で発生する大循環,
あり,一般的な感覚以上に重いといえ,その空
大陸と海洋の温度の違いで生ずる季節風,海と
気の流れである「風」には相当量の運動エネル
陸(山と谷)の温度差で発生する海陸風(山谷
ギーがある。水や空気の流れの中に物体がある
風)などに分類される。つまり,元を辿れば太
と,その物体には力が働くことは日常生活の中
陽エネルギーに由来するものである。
でだれしも経験していることであり,昔から人
この風の強さを表すにはビューフォートの風
力階級表がよく知られている。そこでは風は風
類はこの「空気の流れ」つまり風の力で,自分
たちの役に立つ仕事をさせようとしてきた。
ここで,この風のエネルギー量について考え
速によって12のクラスに分けられている(表1
てみる。まず,風のエネルギー量は風速の3乗
-1)。
に比例する。その理由を以下に述べる。風に向
表1-1
ビューフォートの風力階級表
階級と風速
かって立てられた面積1平方メートルの(素通
しの)仮想の的を考える。風速をV(m/秒)
風による現象
とすれば,的からVメートル手前にある空気は
階級0 (O.3m/秒未満)
煙がまっすぐに昇る。
階級1 (O.3~1.6m/秒未満)
煙がなびくので風向きがわかる。
階級2 (1.6~3.4m/秒未満)
顔に風を感じ木の葉が動く。
階級3 (3.4~5.5m/秒未満)
木の葉や細い小枝がたえず動く。
メートルの風がこの的を通過する。空気の密度
階級4 (5.5~8.0m/秒未満)
砂ほこりが立ち,紙片が舞い上がる。
をρ(平地ではおおよそρ=1.225kg/m3)で表
階級5 (8.0~10.8m/秒未満)
葉のあるかん木がゆれ始める。
すと,質量M=ρVkgの空気の塊が的を通過す
1秒後に的に達するから,1秒間に容積V立方
階級6 (10.8~13.9m/秒未満) 大枝が動き,電線が鳴り,傘がさしにくい。
階級7 (13.9~17.2m/秒未満) 樹木全体がゆれ,風に向かって歩きにくい。
ることになる。質量Mのものが遠さVで走ると
階級8 (17.2~20.8m/秒未満) 小枝が折れ,風に向かって歩けない。
きの運動エネルギーは(1/2)MV 2 であるか
階級9 (20.8~24.5m/秒未満) 瓦がはがれ,煙突が倒れる。
ら,いま述べた空気の塊がもつ運動エネルギー
階級10(24.5~28.5m/秒未満) 樹木が根こそぎになり,家が壊れる。
は(1/2)(ρV)V 2すなわち(1/2)ρV 3で
階級11(28.5~32.7m/秒未満) 広い範囲で破壊される。
階級12(32.7m/秒以上)
ある。
海面は完全に白くなる。
つまり,風車の受ける風のエネルギーは,下
台風の場合は,気象庁では風速25m/秒以上
式のようになり,空気密度と受風面積と風速の
の区域を台風圏と定めている。当然,階級の低
3乗に比例するのである(図1-1)。
すぎる風や高すぎる風は風力発電には適さず,
風車の受ける風のエネルギー
=1/2×受風面積×空気密度×風速3
利用できない。
- 4 -
出典:遠隔講義『風力発電最前線』八戸工業大学松坂知行教授
図1-1
風の運動エネルギーと風車の出力
(出典:谷垣三之介,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
そこで具体的に風のエネルギーを計算してみる
力風車の受ける風のエネルギーの全てが電気出
と,例えば
力に変換されるのではなく,その一部しか利用
風速4m/秒のとき
39W/m
2
8m/秒のとき
313W/m2
16m/秒のとき
2
2,510W/m
できない。
風速4m/秒のとき
約
となり,風速が倍増するにつれて風のエネルギ
110kW(=
39W/m2×2,826m2)
8m/秒のとき
ーは8倍づつ増えていくことがわかる(1W=
約
1ジュール/sec=1kg・m2/sec3)。
880kW(=
313W/m2×2,826m2)
16m/秒のとき
約7,100kW(=2,510W/m2×2,826m2)
この風のエネルギーは,数千年前から最近ま
また,上記の様に風速により,風のエネルギ
で揚水や灌漑,帆船,製粉等に利用されてきた。
現代に入って,風車や風力発電システムに関す
ーが大きく変化するため,例えば年間の平均風
る多くのアイデアや理論が体系化され,空気力
速が8m/秒の地点で経済的に発電に成功した
学に基づく風車の翼型等,多くの新技術が盛り
としても,平均風速が4m/秒の地点では風の
込まれた新しい風車が出てきており,風力を発
エネルギーがその8分の1しかないために採算
電に利用する風力発電としての利用が普及し始
がとれる見込みはないことになる。風の強さは
めている。
場所によってかなり違うので,風力発電を計画
ここで,風力発電のポテンシャルを考えてみ
する場合には地点の選定が特に重要である。ち
る。例えば直径60mの風車の回転部分の面積は
なみに,カリフォルニアのウィンドファームの
約2,826m 2(=30m×30m×π)であるから,
ある地域は,年問平均で7m/秒であり,場所
その部分を通過する風のエネルギーは下記のよ
によっては8m/秒といった強い風に恵まれた
うになる。ただし,当然のことではあるが,入
地域である。
- 5 -
2
風車の歴史(1)(2)(3)(6)
型風車を改良して回転数を上げ,また一定回転
が必要な発電機のために回転調整器を工夫し,
(1) 風車の由来
蓄電池の充放電のための自動リレーを考案する
風車は風の持つ運動エネルギーを回転運動に
などして風力発電の実用化をはかった。その後,
変え,その運動を動力として利用するものであ
デンマークなどにおいて商業風車が成功を収め,
る。人間は古くから風車を使ってきており,紀
現在の主流風車となっている。
元前3600年頃にはエジプトにおいて揚水や灌漑
20世紀に入ると,いくつかの国で風力発電の
に風車が使用されていたという記録が残ってい
研究開発が行われたが,なかでもデンマークは
る。中世の初期(10世紀頃)には,イスラム圏
熱心であった。その研究開発で生まれたゲスル
でも風車が利用されていた。十字軍の遠征によ
風車と呼ばれる風力発電機は,今日の風力発電
り,その技術がヨーロッパに伝えられ,14世紀
機の基礎をなすものである。電力会社技師のJ.
以降には,ヨーロッパのほぼ全域で,揚水,灌
ユールは1947年に風力による交流発電を行って
概,製粉,製材など,いろいろな目的のために
既設の送電網に接続する方式を提案し,その実
広く利用された。その中でも,オランダの風車
証のための試験を行った。その成果に基づいて
が有名であり,18世紀の産業革命までは,この
官民からなる「デンマーク風力委員会」が建て
風車が重要な動力源なっていた。
た設備は1957年から10年間もの間,電力系統に
中国でも,宗の時代(10世紀~13世紀)には
接続されて実用運転された。この様に,風力発
かなりの数の風車が利用されたが,それはジン
電はデンマークを中心に発達してきたといえる。
ギスカンの西方遠征によってもたらされたとい
その後は,商用電力網の発達につれて他の発
われている。
電方式に押され,風力発電は衰退したが,1970
アメリカでは,19世紀の西部開拓時代に,農
年代の二度にわたる石油危機によって,風力発
業や牧畜に必要な水を得るため揚水用に風車を
電は世界的に復活した。その頃,アメリカでは
利用し,その数は20世紀の始めに600万台に達
風力発電に対しては税法上の優遇措置が講じら
したといわれている。
れた。とくにカリフォルニアでは州税に対して
この様に,重要な動力源として利用されてき
も優遇措置がとられたので,風況に恵まれた広
た風車であったが,18世紀の産業革命時に蒸気
大な未利用地を利用し,風力発電設備を多数設
機関が発明され,さらには内燃機関(エンジ
置したウィンドファームが急成長した。
ン)や電動機(モーター)が発達・利用される
その後,石油危機の終息によって,開発利用
につれて,動力源としての風車は急遠に姿を消
の速度は低下したが,最近になって地球環境問
していった。
題が重要な問題となり,環境負荷の少ない風力
発電は再び復活し,世界的な規模で積極的に導
(2) 風力発電の歴史
入される傾向にある。
風力発電は,風車による回転運動を発電機に
伝えて「電気」を起こすものである。風力を発
(3) わが国の歴史
電に用いることは,19世紀の終わりに欧米で実
すでに述べたように,世界の多くの国々が過
験が行われているが,現在の風力発電の基礎を
去に風車を利用した歴史を持つなかで,わが国
築いたのは,デンマークのP・ラクールである
は,あまり風車を利用することがなかった。例
といわれている。彼は1891年に最初の風力発電
えば,水車といえばほとんどの人が日本の田舎
装置を作り,1897年には直径22.8mの大型風力
の小川などにかかる水車をイメージできるのに
発電装置を設置している。彼は従来のオランダ
対し,風車と聞けば多くの人がオランダの風車
- 6 -
3
などをイメージするものと思われる。この様に,
風力発電機の仕組み(1)(2)(3)
われわれ日本人は風車には縁の遠い民族であっ
たといえる。台風などにより強風の多い我が国
風車にはさまざまな形のものがあるが,発電
では,簡単な作りの風車は壊れるというのも,
用風車としては,ほとんど二つの形に限られる。
あまり利用されなかった原因の一つと考えられ
その一つはプロペラ型であり,もう一つはダリ
る。
ウス型である。ダリウス型は主にカナダで開発
明治になって(1870年頃),横浜や神戸の外
利用されているが,風力エネルギーの利用効率
国人居留地やミッション・スクールなどに給水
が高いこと等の理由で,世界的にはプロペラ型
用動力として風車が輸入され,それから何台か
が圧倒的である。したがって,ここではプロペ
の風車が輸入された。わが国で風車がかなり大
ラ型の風力発電機を中心に解説を行う。
量に利用された唯一の例は,第2次大戦後のエ
風力エネルギーを電気エネルギーに変換する
ネルギー事情の悪かった時代に,主に北海道や
風力発電システムの主な構造は例えば図3-1に
東北地方の開拓農家の間で使われた山田式風力
示すとおりである。主に,風車,増速機,発電
発電機である。それは300~500Wというごく小
機,塔,制御系から構成されている。
型の風力発電機であったが,弱い風で起動し強
い風にも耐えるよう作られていて,昭和30年代
(1) 風
車
には数千台が利用されたといわれている。この
風車は,何枚かの羽根(ブレード)と回転軸
風車の開発に一生を捧げた山田基博氏はのちに
(シャフト),および羽根の付け根を回転軸に
黄綬褒章を受けている。
連結する部分(ハブ)からできている。羽根の
全部をまとめてロータと呼ばれている。
風速計・風向計
ギアボックス
翼
発電機
図3-1
ヨーイング・ギア
風力発電機の仕組み
(出典:谷垣三之介,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
- 7 -
風車は,回転軸が水平に位置するものと,垂
また,風速の変化に対応して,風車の回転数
直に位置するものとに大別される。プロペラ型
を制御するために,一般的に羽根の角度(ピッ
の場合は水平回転軸であり,ダリウス型の場合
チ)を変化させる可変ピッチ方式の羽根が大型
は垂直回転軸である。羽根の形には昔からいろ
風車では採用されている。また、比較的小型の
いろなものが考えられてきたが,有名なオラン
風車ではより簡単で低コストの制御システムで
ダ型風車をはじめ,昔は風の力で羽根を押しや
ある失速(ストール)制御(風速が増大すると
る方式のものが多かった。しかし,現代の主流
失速状態になって回転が抑制される)を用いる
は,飛行機の翼が空気を切って進むときに生じ
場合もある。
る揚力(浮き上がる力)と同じ原理を利用する
揚力型であり,プロペラ型はその代表例である。
(2) 増速機(増速歯車,ギアボックス)
ダリウス型も揚力型であり,垂直の回転軸の
プロペラ型風車の回転数は一般的に毎分数十
上下端に連結した弓なりの羽根をもっている。
回転であるが,発電機の方は毎分1,500~1,800
この風車は風向の変化を気にしなくてよいこと
回転であるから,風車の回転を発電機に伝える
や,発電機などの機械部分が地上に直接置かれ
前に,その回転数を高めるために歯車を組合わ
ているために点検や修理がしやすいなどの利点
せた増速機が利用される。
がある反面,大型になるほど回転軸が振動しや
すいことや,風のエネルギーの捕捉効率が,一
(3) 発電機
般にプロペラ型より劣るなどの欠点をもってい
る。
風車と発電機の特性が異なるため,風車と発
電機の整合性を図ることは重要である。発電機
プロペラ型の場合,羽根の数は1枚のものも
としては,直流発電機を用いることも可能では
あるが,一般的に2~3枚のものが用いられて
あるが,一般に経済的ではないため,交流発電
いる。3枚羽根の方が一般に振動が起きにくく,
機が用いられることが多い。交流発電機には同
風を捉える効率もやや高い。また,3枚羽根の
期型と誘導型があるが,前者は後者に比べ,効
ほうが周速比(ロータの円周速度を風速で割っ
率は2%程度低いが,風力発電単独運転ができ,
た値)が低いため,羽根に求められる強度も小
変動の少ない質の高い発電が可能であるため,
さいという利点を持つ。ただし,3枚羽根の方
小容量で,質の高い電力が必要な場合に用いら
が当然ながら重く,製造コストもその分高くな
れる。後者は軽量でありコスト面でも有利であ
るという欠点もある。したがって,ロータ直径
り,動力伝達系の変動をよく吸収する特性があ
が60mを超す大型風車では羽根のコストが高く
ることからウィンドファームなどに多数用いら
なるので2枚羽根が採用されることがある。今
れている。
後,大型風力発電が採用されると予想されるオ
どちらの方式にしても,一定周波数の交流を
フショア(洋上)風力発電の開発が進むと,2
得るため,発電機は一定速度で回転させること
枚羽根が増えると思われる。
が求められている。そのため不安定な風の影響
羽根の材料については,以前は合板や鋼板や
下にある風車の特性との違いにより,大きなト
アルミなどが用いられたが,現在ではガニラス
ルク変動や電流変動を引き起こすことになり,
繊維や炭素繊維で補強した強化プラスチック
問題のひとつとなっている。そこで,最近はイ
(FRP=ファイバー・レインフォースド・プ
ンバータ(詳しくはコンバータ・インバータ)
ラスチック)が主流である。それは量産に適し
という装置を用い,得られた交流を一旦直流に
ているばかりでなく,耐久性にも優れており,
変え,さらに一定周波数の交流に変換するとい
電波障害の点でも有利と考えられている。
う方法を用い,可変速運転を許す方式のものも
- 8 -
表3-1
代表的な風力発電システムの組み合わせ
分類
特徴
固定翼(ストール制御)
+
増速ギア
+
誘導発電機
(ACリンク形式)
・シンプルな構成で丈夫,安価
・構造が簡単で信頼性が高い
・風速変動により出力変動が大きい
・系統並列時の突入電流が大きい
・増速ギアの騒音がある
・ブレードの風切り音がある
可動翼(ピッチ制御)
+
増速ギア
+
誘導発電機
(ACリンク形式)
・定速型と可変速型がある
・風速変動による出力変動がやや少ない
・系統並列時の突入電流が大きい
・増速ギアの騒音がある
・ブレードの風切り音はやや小
・価格,信頼性は中位
可動翼(ピッチ制御)
+
同期発電機
+
インバータ
(DCリンク形式)
・風速変動による出力変動が小さい
・可変速運転のため発電量が多い
・系統並列時の突入電流は発生しない
・増速ギアがないため静かで信頼性が高い
・ブレードの風切り音が低い
・電気部品の数が多く,高価になりがち
(出典:牛山
泉,風車工学入門
基礎理論から風力発電技術まで,森北出版株式会社(2002年8月))
出てきたが,コストは高くなる。代表的な風力
高くなる。
発電システムの組み合わせを表3-1に示す。
発電機や増速機などは,一般的に一つのユニッ
(5) 制御系
トの中に収められており,そのブロックはナセ
ル(機械室の意)と呼ばれている。
プロペラ型風車の場合,風車はつねに風に向
かって正対していなければならず,風車の向き
を絶えず変える必要がある。常に風向を観測し,
(4) 塔(タワー)
プロペラが風に向かうように制御することをヨ
プロペラ型などでは,風車とナセル(機械
室)は塔の上に据えられている。塔には主に鉄
ー制御というが,今日の技術ではこの制御は特
に難しいことではない。
骨や鉄パイプを組んだもの(トラス構造)と1
プロペラがナセルの風上に位置する方式をア
本柱(モノポール)のものが用いられており,
ップ・ウィンド式,風下に位置する方式をダウ
人が登り点検や調整ができるように階段や梯子,
ン・ウィンド式というが,ダウン・ウィンド式
あるいはエレベータがついている。
の場合はプロペラは風に押されて自動的に風下
前者は運搬が容易で低コスト,さらには比較
にくるため,上記の様な制御は不必要と思われ
的容易に腐食防止措置が可能であるという長所
るかもしれないが,実際には,風の吹き具合い
と,見た目が悪く美観を損ねる,人が上るのが
によっては首振り運動をすることがあり,これ
比較的危険であるという欠点がある。後者は逆
を防ぐためにブレーキを用意する必要があるな
に見た目が良く,タワー内部を上るのが比較的
ど,この方式でも制御が必要になってくる。ま
安全であるという長所と,高コストという欠点
た,ダウン・ウィンド式では,羽根が回転して
がある。
風下の位置に来たとき,そこは塔の風下になる
プロペラ型風車の場合,一般的に塔の高さは,
ため,塔の影響で空気の渦が発生し,羽根が渦
風車の回転直径(ロータ直径)に比べて,同程
を切るごとに騒音が出る。そのような理由から,
度か,やや高い程度である。塔が高いほど上空
今日ではアップ・ウインド式が次第に優勢にな
の強い風を捉えることができるが,高ければ塔
りつつある。
を頑丈に作らなければならず,その分コストが
- 9 -
4
風力発電の課題(1)(2)(3)
できなくなる。
この不規則で不自由な風力発電の欠陥を補う
風力発電は,自然再生エネルギーである風の
エネルギーを利用して電力を得る発電方式であ
には主に下記の三つの方法が考えられる。
1)発生した電気をためる
るため,無尽蔵で環境にクリーンであるという
風力発電機を単独で利用する場合には,一
利点を持つ。
般に蓄電池を設ける。しかし蓄電池は費用が
また,大規模化によるスケールメリットもあ
り,新エネルギーの中では事業化・商業化が最
かさむので経済的ではない。
2)利用の仕方を工夫して,不規則な電気でも
も進んでいるものの一つであり,分散型電源で
差し支えのない用途に使う
あるため,地域経済の活性化や雇用創出に寄与
例えば,得られた電気を熱に変えて蓄熱し,
する面もある。
熱源として利用するという方法も考えられる。
ただし,風の力を利用するため,その発電が
3)他の発電方式と組み合わせて利用する
不規則になるという問題や,どの程度の強さの
●例えばディーゼル発電と組み合わせ,風力
風を想定して発電機の容量を選定するかという
発電の変動分をディーゼル発電の発電量を
課題などは依然として残されている。
調整することによって調整し,安定した電
力供給源を構成するものである。この方法
(1) 発電が風任せで不規則(不随意)である
は,風力発電によりディーゼル発電用の燃
風力発電の原理は実に簡単なものである。風
料(重油,軽油)を節約することができる。
の力で風車が回転し,その回転力で発電機が回
ただし,この方式が経済的に意味を持つた
り,発電するというものである。しかし風は
めには,風力発電による発電原価(kWh当
「風任せ」という言葉があるように,吹いたり
たりのコスト)が,ディーゼル発電の発電
やんだりするし,吹いたとしてもその強さは絶
原価のうちの燃料費部分(1kWhを出すの
えず変動している(図4-1)。結局,風力発電
に必要な燃料の価格)よりも安くなければ
による発電量は不規則であり,利用する人の期
ならない。したがって石油の価格が下落す
待とは無関係に変化し,最悪の場合,風が弱す
ると経済的メリットが失われる。
ぎたり強すぎたりすると風車は回らず,発電も
図4-1
風速の変化の観測例
(出典:谷垣三之介,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
- 10 -
●他の発電方式と組み合わせる方法としては,
ト風速)と呼んでいる(図4-2)。
風力発電機からの電気を,その地域の送電
起動風速(カットイン風速)については,そ
系統につなぐことが考えられる。現在,わ
れがもっと低くなるよう設計すれば,風力発電
が国でもこの形の利用が行われている。
機が稼働する機会は増える。しかし第1章で述
しかし,出力の不安定な風力発電を大規
べたように,風が運ぶエネルギーは風速の3乗
模に導入すると,電圧変動や周波数変動の
に比例するので,あまり弱い風の利用に努力し
影響など電力品質が悪化し,電力消費者へ
過ぎても得るところは少ない。
悪影響を及ぼす可能性もある。
停止風速(カットアウト風速)については,
特に,日本の風力発電の適地は送電系統
その値が高ければ高いほど,発電機は強風下で
の弱い地域が多く,この問題が風力発電開
も働き,発電量は増すが,その分風車を丈夫に
発の問題の一つとなる。そのため,蓄電池
作らなければならず,建設費の増加を招くこと
を併設したシステムなどその克服に向けた
になる。
取組が行われている。
この様に,「風任せ」で発電が不規則である
ことと,利用できる風の強さに制限があり,稼
(2) 利用できる風の強さに制限がある
働率が悪いことが風力発電の課題である。
風力発電では,風の強弱によって出力が変化
するので,あらかじめどの程度の強さの風を想
定して発電機の容量を選定するべきか,という
問題がある。これを,極端な例で説明すると,
稀にしか吹かない強風の場合に合わせて(風車
の大きさの割に)大容量の発電機を付けたとす
ると,年間の稼働率(設備利用率)はきわめて
悪くなる。しかし逆に,発電機の容量が小さす
ぎると,比較的弱い風で高効率の出力が発生す
るが,強い風の持つ大きなエネルギーの大部分
を逃がすことになり,結局発生電力量は少なく
なり,どちらの場合も不経済な結果になる。
図4-2
風のエネルギーと風車出力の関係
( 出典:谷垣 三之助,風力発電システム導入のため
風車が回り,その力で発電機が回転し,電気
が外に送り出されるためにはある程度の風速が
必要である。この最低限の風速を起動風速(カ
ットイン風速)と呼ぶ。風速が増すにつれて発
電機の出力は増加し,やがて定格出力に達する。
このときの風速が定格風速と呼ばれている。風
速がこの定格風速を超えるようになると,風車
の羽根のピッチ(迎え角)を変えて,風をある
程度逃がすようにするなどして定格出力運転を
続ける。さらに風が強くなると,羽根が壊れる
恐れが出てくるので,あるところで運転をやめ
る(ピッチ制御では風を全て逃がす様にピッチ
を変える)。この風速を停止風速(カットアウ
- 11 -
の基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネ
ルギー財団(平成15年12月))
5
国内の風力発電(1)(2)(3)(5)(6)(7)(8)(10)
故障が発生している。したがって,わが国に適
した日本型風車を早急に開発することが必要で
(1) 技術開発の経緯
あるといえる。
発電用に限らず,わが国での風車の利用状況
最近では,風力発電技術は大型化,オフショ
の全般を知るには,例えば日本風力エネルギー
ア(洋上)発電などに展開しており,計算流体
協 会 ( http://ppd.jsf.or.jp/shinko/jwea/ )
力学(CFD)などの高度な手法を用いた技術
の出版物を見るのがよいと思われる。
の構築がみられている。
第2章で述べたように,わが国では風車はこ
れまであまり利用されてこなかった。とくに風
(2) 普及導入の検討
力発電に関しては,戦後の一時期に利用された
1988年度には気象庁のアメダスのデータなど
山田式風力発電機以外にはほとんど見るべきも
を利用して,わが国の風力エネルギー賦存量の
のがなかった。しかしながら石油危機の到来に
予備的調査も行われた。その調査によれば,
よってわが国でも関心が高まり,旧通産省工業
300kW級設備では全国で約630万kW,将来地上
技術院のサンシャイン計画(1974-),旧科学
100mの風を利用できる時代になれば1MW級設
技術庁のフートピア計画(1978-85),および
備を使用して約1,600万kW程度が可能と考えら
農林水産省のグリーンエナジー計画(1978-
れるが,その大部分は北海道に集中しており,
88)など国のプロジェクトとしていくつかの開
ついで東北地方である。
発事業が進められた。
わが国においても,風力発電は,二酸化炭素
経済産業省では,1976年以降2000年までサン
を排出しないクリーンな発電方法として導入量
シャイン計画(1993年度からはニューサンシャ
は急増している(図2)。政府・NEDO((独)
イン計画)において風力発電システムの技術開
新エネルギー・産業技術総合開発機構)による
発,1981~1986年度まで三宅島で100kW級風力
導入促進政策や電力事業者による風力電力の優
発電プラントの研究,1990~1998年度まで大型
遇買い上げ自主メニューの設定など,いくつか
発電システムの技術開発,1999年度から離島用
の施策がとられ,さらに1基当たりの発電容量
風力発電システム等の技術開発を実施している。
や事業規模当たりの設備容量の大規模化などに
サンシャイン計画では1983年から,風力発電
伴い発電コストも低減し,1990年代後半からは
にとって有望と思われる地点を毎年数ヶ所選ん
商業用発電機の設置も大幅に増えてきている。
では風況観測を行ってきた。アメリカの風力発
安定した風力(平均風速6m/秒以上)が得ら
電地域との比較調査も行われたが,わが国の場
れる北海道・青森・秋田などの海岸部や沖縄の
合には,強い風は主に低気圧や前線の通過の際
島々などでの採用実績と安定稼働が報告されて
に生じることや,ウィンドシァー(上下左右前
いる。
後によって風速が変化する割合)が大きいこと
日本の導入累計実績は,1990年度の3,000kW,
もわかってきた。このことは,海外で商品化さ
2000年度の14.4万kW,2001年度の31.2万kWと急
れた風車をそのままわが国に導入する場合の難
激に伸びている。風力発電システムの設置台数
しさを示している。
も443基に増大し,1,000kW以上の風力発電設備
従来,わが国に設置されている大規模風力発
電に関しては,デンマーク,ドイツなどからの
が97基稼動するなど大型化が進んでいる(表5
-1)。
輸入機が大半を占めているが,台風・落雷・乱
れの大きい山岳風というわが国固有の自然条件
ちなみに,2002年度末においては576基,46
万3,360kWとなっている。
などによりブレードの損傷を初めとする各種の
- 12 -
2003年4月からは,電力会社による新エネル
表5-1
総出力
〔 kW〕
大規模な風力発電施設〔2002年度末時点/規模上位施設〕
設 置 者
設置場所
1
33,000 エ コ ・ パ ワ ー ( 株 )
青森県
六ヶ所
村
2
32,500 ( 株 ) ユ ー ラ ス エ ナ ジ ー 岩 屋
青森県
東通村
3
30,600 ( 株 ) ド リ ー ム ア ッ プ 苫 前
北海道
苫前町
定格出力
台数
〔 kW〕
27,000 エ コ ・ パ ワ ー ( 株 )
用 途
1,500.0
22 NEG-Micon 売 電 事 業
1,300.0
25 BONUS
売電事業
1,650.0
14 Vestas
売電事業
稼働年月
2003年1月
2001年11月
2000年10月
1,500.0
4
メーカー
5 Enercon
売電事業
青森県
東通村
1,500.0
18 NEG-Micon 売 電 事 業
1,650.0
15 Vestas
売電事業
2001年12月
2003年2月
5
24,750 仁 賀 保 高 原 風 力 発 電 ( 株 )
秋田県
仁賀保
町
6
21,000 幌 延 風 力 発 電 ( 株 )
北海道
幌延町
750.0
28 Lagerwey
売電事業
2001年11月
6
21,000 江 差 ウ イ ン ド パ ワ ー ( 株 )
北海道
江差町
750.0
28 Lagerwey
売電事業
2001年11月
7
20,000 ( 株 ) ユ ー ラ ス エ ナ ジ ー 苫 前
北海道
苫前町
1,000.0
20 BONUS
売電事業
1999年10月
福岡県
北九州
市
1,500.0
10
売電事業
2003年3月
稚内市
1,650.0
9 Vestas
売電事業
2001年10月
(株)エヌエスウインドパワーひび
き
8
15,000
9
14,850 さ ら き と ま な い 風 力 ( 株 )
北海道
10
14,400 東 北 自 然 エ ネ ル ギ ー 開 発 ( 株 )
秋田県
能代市
600.0
24 Enercon
売電事業
2001年11月
11
(株)青山高原ウインドファー
14,000
ム
三重県
久居市・
大山田村
700.0
20 Lagerwey
売電事業
2003年3月
13,000 南 九 州 ウ イ ン ド パ ワ ー ( 株 )
鹿児島
県
肝属郡
1,300.0
10 IHI-NORDEX
売電事業
2003年3月
12
GE Wind Energy
(出典:堀 史郎,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
表5-2
主要国のRPS制度等
固定価格
導入制度
RPS制度
米国テキサス州
オーストラリア
イギリス
イタリア
ドイツ
1999年9月電力再編法
制定2002年1月から制
度開始※ただし,
2001年7月から証書の
発行のみ開始(義務は
なし)
2000 年 12 月 再 生 可 2000年7月電力法の 1999年3月電力自由 2000年2月再生可能エ
能 エ ネ ル ギ ー 法 制 改正2002年4月より 化法制定2Q02年1月 ネ ル ギ ー 法 制 定 2000
定2001年4月から制 制度開始
より制度開始
年4月より制度開始
度開始
2009 年 1 月 ま で に 200
万 kW の 再 生 可 能 エ ネ
ルギー発電設備を増
設
2010 年 ま で に 95 億
kWhの再生可能エネ
ルギー電力を追加
導入
義
務
対
象
者
競合電力小売事業者
主
な
対
象
エ
ネ
ル
ギ
|
太陽光,風力,地
熱,水力,波力,潮
力,バイオマス,埋
立て地からのメタン
ガス等
導
入
状
況
目
標
2010 年 ま で に 総 販
売電力の10%の再生
可能エネルギー電
力を導入
2903 年 ~ 2012 年 の
目標期間に再生可
能エネルギー発電
設 備 を 2470 万 kW ま
で増設
2010 年 ま で に 総 エ ネ
ルギー消費における
再生可能エネルギー
源の割合を2倍以上
(5%→10~12.5%)
電 力 卸 売 ( 小 売 ) 事 電力供給事業者
業者
発電事業者
系統運用者(電力会
社)
太陽光,風力,地
熱,水力,波力,
エネルギー作物,
下水ガス,バイオ
系廃棄物,自治体
ごみ燃焼(非化石燃
料起源分のみ)等
太陽光,風力,地
熱,水力,波力,
バイオマス,廃棄
物等
太陽光,風力,地
熱,水力,パイオマ
ス,埋立てごみから
のメタンガス(※規模
による制限あり)
太陽光,勧涼力(規
模制限有),バイオ
マス,地熱,潮
力,波力,下水ガ
ス,廃棄物(非化石
燃料起源のみ)等
(出典:(財)新エネルギー財団ウェブサイト/http://www.nef.or.jp/)
- 13 -
ギーの導入基準制度であるRPS(Renewables
また,風力発電に適した地域が多い北陸・上
Portfolio Standard)法など,一層の導入拡大
越などの日本海沿岸地域では強い雷(冬季雷)
を目指した政策的支援が行われており,さらな
があり,風車を損傷させる事故が頻発している。
る導入が期待されている。
これもヨーロッパでの想定を超える問題である
RPS法とは,2002年に制定され,2003年4
(図5-1)。
月から実施された「電気事業者による新エネル
従って,日本の風況を調べ,それをデータベ
ギー等の利用に関する法律(新エネルギー等特
ース化し,日本の環境に適した風力発電設備を
別措置法,RPS法)」であり,これにより電
設計することが求められる。
力会社(電気事業者)が,新エネルギー等から
また,風力発電に適した場所はその多くが北
発電される電気を一定量以上利用することを義
海道と東北地方に偏在していることも問題の一
務づけられている。RPS制度は,2000年頃か
つである。そのため,国は1995年度から「風力
ら先進国で採用されてきており,新エネルギー
開発フィールドテスト事業(現行,風力発電フ
の利用率を高めるための工夫がされている(表
ィールドテスト事業)」を創設し,風力発電の
5-2)。
有望地域においてデータ収集等の調査研究事業
を実施している。
(3) 日本独自の課題
さらに,欧州では比較的浅い水域でのオフシ
日本の課題として主に下記に示す問題がある。
ョア(洋上)風力発電が主流になってきている。
1)落雷,強風,風の乱れなどの環境条件が
しかし,日本では風力発電施設を港内に2基設
悪い
置した例はあるものの,外洋に設置した例はな
2)風力適地において電力系統や道路などの
インフラが未整備である
い(2003年時点)。我が国は長い海岸線を持つ
ため,このオフショア(洋上)風力発電が有望
風力発電設備は需要の中心である比較的安定
視されている。そのため,今後の本格的な導入
した偏西風が吹くヨーロッパの風土に合わせて
に向けて洋上の風況データの観測,塩害対策,
開発・生産されているため,山岳地形による風
保守点検,漁業補償などの関連課題の摘出,法
の乱れや,台風などの環境条件の悪い日本にお
制上の制約など基礎データを事前に整備・構築
いては適さない部分がある。そのため,設備利
しておくことが求められる。わが国におけるオ
用率が相対的に低く,高い発電コストとなって
フショア(洋上)風力発電システムの研究例を
いることが,日本の風力発電の最大の課題であ
図5-2に示す。
る。
- 14 -
図5-1
落雷による被害例(秋田県)
(出典:久保 典男,風力発電システム導入のための基礎研修会(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団(平成15年12月))
図5-2
電力中央研所が考案した海上風力発電システム(WINDSWAN)の概念図
(出典:(財)エネルギー総合工学研究所,(財)電力中央研究所,
平成15年度
大型海上風力発電の成立性調査報告書(平成16年3月)
- 15 -
6
海外の風力発電(1)(2)(3)
れる法律が制定され,大手電力会社は再生可能
エネルギー電源を持つ小規模発電業者からの電
(1) アメリカ
力を購入することが義務づけられた(なお,同
アメリカは第1次石油危機を契機に連邦風力
法は現在は廃止され効力はない)。これらの諸
開発計画を策定し(1973),「2000年における
条件が整ったことによってカリフォルニアの大
アメリカの電力消費の20%を風力で賄う」とい
規模風力発電は実現したのである。
う壮大な構想を打ち出した。同国の風力発電の
動きは,大きく分けて二つある。一つは,いわ
(2) ヨーロッパ
ゆる中型の風力発電機を用いるウィンドファー
世界で最初に風力発電を試みたのはデンマー
ムであり,一地点に多数の風車を並べて発電を
ク人であった。第2次世界大戦の折には約百台
行った。もう一つは,大出力の風力発電機の技
の風力発電機を利用した実績があり,大戦後も
術開発であり,1MW級以上の大型機の実用化を
開発を全くやめてしまうことはなかった。第1
目指して積極的な開発を進めた。しかし石油危
次石油危機があって,1977年以降は,国の風力
機の終息により1988年度以降は大型機開発のた
開発計画のもとに開発利用が進められ,1979年
めの国の予算は打ち切られた。
からは実用規模の風力発電機の設置に対して国
アメリカにおける風力発電の大部分はカリフ
の助成が行われるようになった。同国では1990
ォルニアの丘陵地帯にあり,いわゆるウィンド
年に「エネルギー2000計画」が発表されたが,
ファームの形をとっている。カリフォルニアに
それは電力需要の10%を風力で賄うことを目標
おけるウィンドファームは1981年に始まり,そ
にした。
の後驚異的に成長した。そのようなことが実現
風力発電の増加につれて,立地上の工夫も必
できた主な理由の一つは風力発電に適した自然
要になり,1991年,ある電力会社は遠浅の沖合
条件であり,もう一つは社会的条件の整備であ
にウィンドファームを建設した。
る。
この様な積極的な開発により,現在では同国
カリフォルニアの丘陵地帯は,西に太平洋が
あり,東に砂漠地帯があるために温度差が大き
の電力需要の16%を風力発電で賄うまでになっ
ている。
く,つねに強い風に恵まれ,とくに3月末から
ドイツでも石油危機の折に科学技術省と航空
10月にかけて絶えず海風が吹き,丘陵地帯のう
宇宙研究所(DFVLR)が中心になって風力
ちの峠にあたる地域の年間平均風速は毎秒7~
発電の技術開発が進められた。最近では積極的
8メートルになる。その上,そこには広大な未
な導入政策がとられ,最も風力発電の導入量が
利用地が存在するために大規模なウィンドファ
多い国となっている(図3)。
ームを作ることができた。
また,2002年にEWEC(欧州風力エネル
さらに同国では,再生可能エネルギーの一つ
ギー協会)では,2020年までに世界の電力需
である風力エネルギーの利用を奨励する目的で,
要 の 12 % を 風 力 発 電 で ま か な う と い う ,
それに投資する者に対して税法上の優遇措置が
「WindForce12」という提言を行っている。
とられた。しかもカリフォルニアでは州税に関
これらの国においては,政府が風力による電
しても同様の措置がとられたため,大小のデベ
力の買い取り義務や価格を定めた法律を制定し
ロッパー(開発業者)が登場し,節税を狙う個
たり,各種の優遇措置や補助制度を講じており,
人から広く資金を集めて風力発電に乗り出すこ
その結果として,価格的にも既存電力との競争
とができた。
力を獲得しつつある。
1978年にはパーパ法(PURPA)と略称さ
- 16 -
7
風力発電の環境影響(1)(2)(3)
遠くまで届くので,計画段階から十分に注意す
る必要がある(図7-1)。
風力エネルギーはクリーンなエネルギーであ
次に,金属製の羽根を使ったり,金属質の塗
るといわれている。たしかに,二酸化炭素など
料で仕上げた羽根を使うと,電波がその表面で
を発生することがなく,放射性廃棄物の心配も
反射されることで電波障害を引き起こす。塔自
ないなど,極めてクリーンなエネルギーである。
体も電波障害の原因になることがあり,高い塔
しかし,環境への影響が全くないわけではない。
の上に据えられた大型風力発電機ほど障害を起
具体的には,騒音,電波障害,および景観や渡
こしやすい。そこで,この問題を解消するため
り鳥への影響などである。当然のことではある
現在の羽根の材質は金属を採用せず,強化プラ
が,その影響は大型の風車ほど大きくなり,ま
スチック(FRP)の採用がほとんどである。
た一カ所に集中して建てた場合にも大きくなる。
次に,景観の問題がある。ただし,景観への
風力発電機の騒音の発生源は羽根の回転と,
影響は個人差があってその判断が難しい。例え
歯車や発電機の回転にある。プロペラ型風車で
ば,町が観光用を兼ねて風力発電設備を建てる
は,高速で回転する羽根が空気を切ることによ
場合もある。いずれにしても,風車自体のデザ
って生じる騒音(風切り音)のほかに,ダウ
インが優れているばかりでなく,周囲の景色と
ン・ウィンド式の場合には塔の後ろにできる空
の調和が大切である。
気の渦を羽根が切ることによっても騒音が発生
最後に,安全性についていえば,突風や台風
する。それ以外にも稀に低周波騒音が発生する
による塔の倒壊,羽根の破損による破片の飛散
ことがある。低周波騒音というのは,人間の耳
などが考えられるので,その予防については設
には聞こえない数十ヘルツかそれ以下の空気振
計,製造,施工の段階で十分配慮するとともに,
動であって,それによって周囲の人家の窓ガラ
運転開始後の点検も必要である。なお冬期に羽
スや戸がガタガタと音をたてる。
根の表面が氷結すると,氷片が飛散する可能性
したがって,一般に風力発電機を建てる際に
は,なるべく人家から離れた場所を選ぶのが望
もある。また,落雷に対する対策も当然必要で
ある。
ましく,風車の騒音は,風下の方向にはさらに
図7-1
(出典:牛山
泉,風車工学入門
風車の騒音レベル
基礎理論から風力発電技術まで,森北出版株式会社(2002年8月))
- 17 -
8
風力発電の経済性(2)(3)(5)(6)
風力発電は,一般的に,規模が大きくなるほ
ど設置コストが有利になるので,近年,機器の
一般的に現時点では,新エネルギーは競合す
大型化,事業規模の拡大が進んでいる。大規模
るエネルギーと比較してコストが高い状況にあ
化に伴う設置コストの低減により,発電コスト
り,その導入に際しての課題となっており,風
は低減しているが,小・中規模設備については
力発電もその例外ではない。
引き続き割高である。
[総合資源エネルギー調査会新エネルギー部
今後は,エネルギー変換効率の向上などとい
会報告書「今後の新エネルギー対策のあり方に
ったハード面での技術開発を行うとともに,設
ついて」(H13.6)]では,風力発電のコストに
置費補助,電力会社の長期契約による電力買取
ついて表8-1のデータが示されている。これに
等の導入支援などのソフト面(制度面)での施
よると大規模風力発電の発電コストは10~14円
策の実施により,需要を創出し,市場自立化を
/kWhで火力発電の約1.4~2倍,中小規模風力
早期に実現させ,コストの低減を図ることが重
発電の発電コストは18~24円/kWhで火力発電
要である。
の約2.5~3倍となっている。
表8-1
風力発電の経済性試算例
発電コスト
風力発電/競合エネルギー
前提とした競合エネルギーコスト
大規模:
約 1.4~2倍
火力発電単価
:7.3円/kWh
10~14円/kWh
約 2.5~3.5倍
燃料費相当
:4.0円/kWh
中小規模:
約 2.5~3倍
火力発電単価
:7.3円/kWh
18~24円/kWh
約 4.5~6倍
燃料費相当
:4.0円/kWh
注)本試算は,主に1999年度に導入された事業における設備費の平均値等を用いて一定の前提をお
いて試算したもの。
(出典:総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書「今後の新エネルギー対策のあり方に
ついて」(H13.6) (http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g10705bj.pdf)
- 18 -
ま
と
め
済的には必ずしも好条件とはいえない場所が候
補地として選択されるケースが出てくるであろ
風車は,その原理は非常に簡単なものではあ
う。そのためにも,今後より一層本文中紹介し
るが,実際に長寿命,高信頼性,高効率,低コ
たような各種検討,課題解決が必要とされる。
ストといった要件を満たす実用レベルの風車を
しかしながら,風力発電は環境特性が良く,
作ることは容易ではない。また,風力発電設備
国産エネルギーであることからエネルギー自給
を設置するためには,安定的な風に恵まれてい
率の向上にも期待できる貴重な新エネルギーの
ることに加え,設置場所への搬入路や送電線の
一つであり,オフショア(洋上)風力発電を含
確保が必要であるが,山岳地域が多く,風の乱
めると大きな利用可能量も見込めるきわめて有
れの多いわが国の自然条件は,風車の寿命や電
望なエネルギー源である。風力発電に課せられ
力品質に悪影響を及ぼす可能性もあり,さらに
た2010年までに300万kWの目標達成のみでなく,
は雷による被害もある。したがって,わが国の
わが国エネルギー政策上掲げられた目標を実現
地形,風況,気象条件に適した風力発電システ
するためにも,技術開発とともに,電力系統の
ムの開発が今後の風力発電のさらなる利用に不
強化や,各種補助制度などの導入支援の取組が
可欠である。
望まれる。
また,風況データベースの構築,風力発電建
最後に,図表類で本文中での使用を承諾して
設基準マップの作成や規制緩和による立地点の
頂いた(財)新エネルギー財団および関係各位に
確保などを図り,適地の選択と設置がしやすい
心より感謝いたします。
環境作りも同時に必要になる。
そして,風力発電の利用をさらに進めようと
するならば,電力系統に与える影響を緩和する
ための出力安定化技術の開発や革新的な大型機
種の開発による発電コストの低減などが必要に
なってくる。
現行の「長期エネルギー需給見通し(2002年
改訂)」において,各種新エネルギーごとに普
及導入の目標が掲げられているが,風力発電は
上述課題の解決程度にもよるがその目標規模
(300万kW)達成が有望視される程最近の普及
導入には目ざましいものがある。さらに最近の
傾向として設置者(ユーザー)が初期の自治体
主体から民間の割合が増加してきていることが
指摘されている。これは,民間が取り組んでも
経済的に成立する条件が整ってきたからという
ことができる。RPSの制定もその点で大きな
支援効果となっていると判断される。
なお,これまでの設置は経済的に比較的好条
件の設置場所が多かったようであるが,今後の
利用拡大を考えると上述のように離島,山間部,
オフショア(洋上)など風況分布は良くても経
- 19 -
参 考 文 献
1
(財)エネルギー総合工学研究所,新エネル
ギーの展望
風力発電
改訂版(1992年3
月)
2
風力発電システム導入のための基礎研修会
(平成15年度)予稿集,新エネルギー財団
(平成15年12月)
3
牛山
泉,風車工学入門
基礎理論から風
力発電技術まで,森北出版株式会社(2002年
8月)
4
総合資源エネルギー調査会総合部会,需給
部会報告書~今後のエネルギー政策について
~(平成13年7月)/
http://www.meti.go.jp/report/
downloadfiles/g10713bj.pdf
5
総合資源エネルギー調査会新エネルギー部
会報告書「今後の新エネルギー対策のあり方
について」(平成13年6月)/
http://www.meti.go.jp/report/
downloadfiles/g10705bj.pdf
6
(財)新エネルギー財団,新エネルギー産業
会議,風力発電システムの導入促進に関する
提言(平成16年3月)
7
牛山
泉編集,日本自然エネルギー編著,
風車発電マニュアル2003,エネルギーフォー
ラム(2003年11月)
8
(財)エネルギー総合工学研究所,(財)電力
中央研究所,平成15年度
大型海上風力発電
の成立性調査報告書(平成16年3月)
9
資源エネルギー庁ウェブサイト/
http://www.enecho.meti.go.jp/
10
(財)新エネルギー財団ウェブサイト/
http://www.nef.or.jp/
11
日本風力エネルギー協会ウェブサイト/
http://ppd.jsf.or.jp/shinko/jwea/
12
ウェブサイト原子力百科事典ATOMICA>風
力発電/http://sta-atm.jst.go.jp/
atomica/keyword.html
- 20 -
新エネルギーの展望
既刊一覧
燃 料 メ タ ノ ー ル 編
1987年1 月発 行
水 素エネ ルギ ー(改 訂版 )
1995年3 月発 行
太
編
1987年2 月発 行
廃
電
1995年3 月発 行
陽
光
発
電
棄
物
発
燃
料
電
池
編
1987年3 月発 行
石 炭 灰 の 有 効 利 用
1996年3 月発 行
風
力
発
電
編
1988年1 月発 行
廃 棄 物 発 電 ( その2 )
1996年3 月発 行
編
1988年3 月発 行
低品位炭の改質技術
1997年3 月発 行
自動車用エネルギー編
1988年3 月発 行
メタノール発電技術
1997年3 月発 行
地
編
1989年2 月発 行
電 力 負 荷 平 準 化
1998年3 月発 行
編
1989年3 月発 行
非 在 来 型 天 然 ガ ス
1998年3 月発 行
編
1989年3 月発 行
(メ タ ン ハ イ ド レ ー ト 編 )
編
1990年2 月発 行
石 炭ガス 化複 合発電 技術
1999年3 月発 行
1990年3 月発 行
廃 棄 物 発 電 ( その3 )
1999年3 月発 行
燃 料用メ タノ ール( 改訂 版)
1990年3 月発 行
原 子 力 発 電 技 術
2000年3 月発 行
太 陽 光 発 電 ( 改訂版 )
1991年3 月発 行
原子燃料サイクル技術
2000年3 月発 行
地 球 温 暖 化 ( 改訂版 )
1991年3 月発 行
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2001年3 月発 行
エネルギー有効利用
1991年3 月発 行
マイクロガスタービン
2001年3 月発 行
水 素 エ ネ ル ギ ー
1992年3 月発 行
コージェネレーション技術
2002年3 月発 行
風
1992年3 月発 行
循 環 型 社 会 の 構 築
2002年3 月発 行
車
1992年3 月発 行
バ イ オ マ ス 発 電
2003年3 月発 行
非 在 来 型 天 然 ガ ス
1993年3 月発 行
廃 棄 物 発 電 ( その4 )
2003年3 月発 行
地 球 温 暖 化 対 応
1993年3 月発 行
地 球 温 暖 化( 再改訂 版)
2004年3 月発 行
石 炭 の 高 度 利 用
1993年3 月発 行
風
2004年3 月発 行
石
二
高
地
燃
電
炭
球
ガ
温
次
温
力
気
暖
電
超
熱
料
ス
電
化
池
電
発
化
導
電
池 ( 改訂版 )
発
電 ( 改訂版 )
自
動
力
発
電( 再改訂 版)
2004年3月発行
編集発行
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備考:上記の各編は,当所のホームページの「定期刊行物」の欄でも御覧
頂けます。
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