第 14 回全国高専プログラミングコンテスト結果報告

第 14 回全国高専プログラミングコンテスト結果報告
情報工学科
三上
剛
今年度のプログラミングコンテスト全国大会は,東京都八王子市で行われた.本校は,昨年に
引き続き「自由部門」に参加した.1 次予選(書類選考)を突破し,全国大会へと出場した.作成し
たシステムは,屋外で撮影した花の写真を検索キーとする電子図鑑システムである.また,このよ
うなシステムをカメラ付携帯電話で動作する i アプリで実現した点が独創的であった.
一般に植物図鑑は,学術的な分類がなされているものが多く,その膨大なデータの中から目
的とする花の情報を検索するのは難しい.そこで,花の画像を用いて,“見た目”だけで検索でき
る図鑑があれば大変便利である.また,図鑑は重たいので,外出する際に持ち歩くことは不便で
あるが,携帯電話は可搬性に優れており,携帯型の図鑑としても利用できる可能性は高い.これ
は,学生と何度もディスカッションをした結果出てきたアイデアであり,もしこのシステムが完成す
れば,プロコンのみならず十分実用的なシステムになりうるであろう.
今回作成したシステムの技術的な問題点は,花画像の特性が撮影条件によって大きく異なる
点にある.たとえば,撮影角度,天候条件による色の変化など様々な要因によって,花の有する
普遍的な特徴量を画像から抽出することは技術的に大変難しい.しかし,学生は自分達で考案し
たアイデアを形にするということで大変意欲的に開発に取り組み,果敢に挑戦した.結果,技術的
に困難な点を解決するまでには至らなかったが,理想に近い撮影条件であれば,画像から花情
報を検索することは可能となった.
自由部門は,プレゼンテーション審査とデモンストレーション審査が行われる.プレゼンテーション
審査は,スライドを使った 15 分程度の学会形式の発表であった.前日の発表練習が功を奏し,発
表は大変良好であった.デモンストレーション審査は地下の会場で行われたため,携帯電話とサ
ーバとの通信が出来ず,エミュレータでデモを行う以外方法がなかった.審査員からは,未解決
の技術的課題を指摘され,苦しい場面もあったが,デモンストレーションはおおむね良好であった.
技術的な困難性と短い開発期間を考えると,学生にとって酷な要求ではあるが,見学者の期待に
応えるようなシステムを完成できなかったことが指導教官として悔やまれる.審査の結果,本校は
「敢闘賞」を受賞した.最優秀賞,優秀賞など上位の賞を受賞した多くの作品は,技術的に単純
であっても完成度の高いものが多かった.
私は今回の引率で三回目になるが,他の高専の作品を見ていると,予選を通過する作品に
は2つの傾向があることに気がついた.1つは,見学者が楽しめるような大掛かりなシステムで,ゲ
ームセンターの亜流といえるようなシステムである.このようなシステムは,手間はかかるが技術的
な難しさはそれほどでもなく完成度も高い.もう1つは主に PC 上で構築されているシステムで,派
手さはないが,技術的に難しいものに挑戦したものが多く,卒業研究のテーマとしてもふさわしい
ものである.今年は,特に前者のシステムが多く見られ,デモ会場はさながらゲームセンターのよ
うであった.デモ審査の時にどれだけ「楽しませる」ことが出来るかという点が,審査結果に反映さ
れたような気がしてならない. 苫小牧に戻ってから 5 年前のプロコンのビデオを見て研究したが,
当時は,むしろ後者のシステムが多く見受けられ,難しい技術的課題に対して学生が果敢に挑戦
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し,苦労している様子が目に浮かぶようであった.ここ数年で,プロコンの審査基準は明らかに変
わってきている.プロコンの趣旨という点で,どちらのシステムが相応しいのか判断が難しいところ
ではあるが,今後,上位受賞を目指すには,この辺りも考慮して指導していきたい.
最後に,今回のプログラミングコンテスト参加に際してご協力頂いた方々に,心よりお礼申し
上げます.
第 13 回プログラミング・コンテスト
参加校
予選参加チ-ム(書類選考)
全国大会出場チーム
1 次予選の結果
56 校
138(自由 45,課題 38,競技 55)
95(自由 20,課題 20,競技 55)
第 13 回プログラミング・コンテスト
全国大会の結果
自由部門
最優秀賞:
優秀賞:
特別賞:
松江高専
鈴鹿高専
木更津高専、津山高専、詫間電波高専、弓削商船高専
課題部門
最優秀賞:
優秀賞:
特別賞:
弓削商船高専
金沢高専
東京高専、舞鶴高専、米子高専、八戸高専
競技部門
優勝:
準優勝:
第3位:
特別賞:
大阪府立高専
新居浜高専
久留米高専
岐阜高専、鶴岡高専、宇部高専
デモンストレーション審査の様子
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携帯電話花情報検索システム ―はなあはせ―
1 はじめに
今日では,コンピュータを用いた検索システムが広く利用されてきている.こうした検索システ
ムで,最も検索キーとして用いられることが多いのは文字列である.しかし,文字列のみに頼った
検索システムでは,検索対象によっては直感的に検索することが困難な場合もある.本システム
では,近年急速に普及した携帯電話のカメラを利用し,画像データを検索キーとした検索システ
ムの構築を目指した.
2 システムの概要
本システムは、携帯電話のカメラ機能を使用して撮影した花画像からその花の情報を
検索するシステムである.ユーザは対応する携帯電話と i アプリによるクライアントアプ
リケーションさえあれば,いつでも簡単に目的の花の情報を引き出すことが出来る.
図1.システムの概念図
3 はなあはせの機能
「はなあはせ」の機能には以下のものがある.
(1) 花画像による図鑑検索
-
フレームを用いた認識範囲指定
-
特徴地による花の認識
(2)検索結果の絞込み
3-1
花画像による図鑑検索
撮影した花画像を元に,データベースより検索を行う.
3-1-1.フレームを用いた認識範囲の指定
花画像の撮影後,花の形のフレームに被写体を合わせることで,画像の認識範囲を指定できる.
フレームは,多角形の形状を指定し,画像と合わせて使用する.フレームに拡大,縮小,回転など
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の機能を持たせることで,更なる範囲指定が可能となる.
3-1-2.特徴値による花の認識
画像認識の際に,燕軽度,花弁形状,モーメント,色情報の計 4 個の特徴地を花画像から抽出し,
これらを元に花の認識を行う.
3-2.検索結果の絞込み
絞込条件を与えることで,検索結果を絞り込むことが出来る.絞込条件として,花の外見,生態,
環境に関する項目を用意した.
図2. 実行例
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4
あとがき
「はなあはせ」は,携帯電話が高機能に鳴るにつれて多角化したその用途の一例である.携帯
電話が外界の情報を取り込むデバイスとしてさらに発展すれば,今後のパターン認識研究の進歩
しだいで,さらに便利な検索端末となりえる.
参考文献
[1]. “Java ネットワークプログラミング”, E.R.Harold 著,戸松豊和監訳,2001
[2]. 齊藤他,“花と葉による野草の自動認識”,電子情報通信学会論文誌 Vol.J84-D2 No.7,
pp.1419-1429, 2001
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