研究成果 2: ロレアルのタンパク質レベルの発見 ・若い皮膚と加齢した

研究成果 2: ロレアルのタンパク質レベルの発見
・若い皮膚と加齢した皮膚では、表皮のタンパク質の種類が異なる
遺伝子の情報をもとに作られるタンパク質の種類についても研究したところ、若い皮膚に多く存在するタンパク質
や、加齢した皮膚に多く存在するタンパク質が多数見つかりました。例えば、表皮の細胞同士の接着に必要な
タンパク質であるデスモグレイン1は、若い皮膚に多いことが明らかとなったのです。
オミクスを応用した製品開発と、効果に基づいた化粧品の完成
オミクスは有用成分の探索にも大きな力を発揮しました。塗布された成分によって皮膚が発現する遺伝子を調査
可能だからです。ロレアルは、オミクス技術を応用して 2 つの有用成分、「フィトスフィンゴシン」と「ビオリサット」を、
新たなエイジングケア成分として見出しました。
これらの有用成分を配合した美容液の効果をさまざまな側面から評価したところ、従来の機器測定による評価
だけでなく、タンパク質レベルでも効果を確認できたのです。つまり、美容液を使用することにより、前述した若い
皮膚に多いタンパク質、デスモグレイン1が増加すること、また不完全成熟な皮膚細胞の指標となるタンパク質、
GAPDH の減少が確認され、皮膚の細胞の成熟を促していることが認められました。
日本人女性のための独自処方を開発 - ロレアルによる日本人の美容習慣研究の成果 ロレアルは、25 年以上にわたり日本に研究開発センターをおき、毎年膨大な数の消費者調査(2008 年実績・延べ
26,000 人)を行っています。同社の調べによると、日本人女性は、世界一洗練された美容習慣を持っており、例えば、
スキンケア(素肌のお手入れ)では、数多くのアイテムを使いこなして、入念にお手入れを行っています。
こうした美容習慣に対応しつつ、新しい美容液の効果を最大限に発揮するために、洗顔後のまっさらな肌に使用
するという革新的な順序を提案しました。また、みずみずしく浸透しやすい使い心地で、肌によく馴染む、日本独自の
処方を設計しました。さらに、製品試用について、消費者調査を行なったところ、日本人女性に大変受け入れやすい
などの好結果を得ました。
図 3:日本人に特徴的なスキンケア手順(上)と、
上が従来行われてきた、フルコースのスキンケア
手順。下はランコムが提案する、ジェニフィックを
加えた新しいスキンケア手順。通常、段階が進む
につれて、さっぱりとした使用感の製品から順に
しっとり、こってりとした製品へと移行していく。
そのため、日本版ジェニフィックはローションよりも
さっぱりとしていながらも、次につけるスキンケア
製品の浸透を妨げない独自の処方を採用。
ランコムが提案するジェニフィックを加えた新しい手順
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ロレアルサイエンスセミナー 2009/08/19
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真に新しい美容液として ‒ ランコム ジェニフィック このような先進の遺伝子解析・タンパク質解析技術を駆使して得られた分子レベルの数々の知見と、科学的に
確かめられた効果、そして日本人女性の嗜好や美容習慣に関するロレアルの研究と日本独自の処方開発を融合
することにより、新世代の美容液としてランコム ジェニフィックが生まれました。エイジングケア美容液「ジェニフィック」
(30mL、税込価格¥10,500)は、8 月 21 日(金)より、全国 117 ヶ所の百貨店のランコム カウンターで発売されます。
ランコムについて
ランコムは、1935 年、アルマン・プティジャンに
よってフランス パリに創設された、メイクアップ・
スキンケア・フレグランスの総合ブランドです。
1982 年に日本進出、現在世界 165 カ国で展開し
ています。
フランスらしいエレガンスを大切にしながらも、
常に技術革新を使命とし、製品開発に取り組ん
でいます。
スキンケアでは特にエイジングケアラインに
注力しており、世界でエイジングケア製品 NO.1
の売上げを誇っています。日本でも、2008 年に
は+10 %の成長を遂げています。また、ランコム
を代表するアイテムであるマスカラから 2009 年
2 月に発売された日本初の電動マスカラ
「オシィラシオン」は、発売 6 ヵ月余で 4 万本
以上を売り上げる快挙を達成。
2009 年 8 月 21 日には、養毛料(化粧品)に
使用される成分を配合した電動マスカラ下地、
「オシィラシオン パワーブースター」も発売
いたします。
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ロレアルサイエンスセミナー 2009/08/19
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参考資料:オミクス(Omics) という技術
オーミクス、またはオミックスとも呼ばれ、ある特定の対象を総合的・網羅的に研究する手法のことを指します。
解析する対象に応じて、それぞれ異なる名が与えられています(表1、図 4)。これらの概念や手法は、20 世紀終盤
になって現れ始めた、比較的新しいもの(図 5)であると言えます。
ロレアルでは、これらのオミクス技術の有用性にいち早く注目し、過去 10 年にわたって皮膚の研究に応用してき
たのみならず、下記の既存のオミクスにとどまらない新たなオミクス、すなわち肌を総合解析する「スキンオミクス」
や、美を総合解析する「ビューティオミクス」を目指しています。
解析の対象
オーム(Ome)
オミクス (Omics)
その物質全て
その物質全てを解析する手法
遺伝子
全遺伝子
全遺伝子解析
Gene/ジーン
Genome/ゲノム
Genomics/ゲノミクス
転写産物(遺伝子からの指令)
全転写産物
全転写産物解析
Transcript/トランスクリプト
Transcriptome/トランスクリプトーム
Transcriptomics/トランスクリプトミクス
タンパク質
全タンパク質
全タンパク質解析
Proteome/プロテオーム
Proteomics/プロテオミクス
Protein/プロテイン
表1:各解析対象とそれぞれの用語の関係
図 4:細胞における遺伝子の発現の様子と
それぞれのオミクス技術の守備範囲
図 5:オミクス関連用語のトレンド
国際的生命科学系論文データベース、
PubMed より得た、タイトル語の抽出数
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ロレアルサイエンスセミナー 2009/08/19
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製品概要:ランコム
ジェニフィック
会社概要:ロレアルグループ
1909年、パリで化学者ウージェンヌ・シュエレールによって設立、世界130カ国・地域で事業を展開し、68,000名の
従業員を擁する世界最大の化粧品会社で、今年は創立100周年にあたります。「ランコム」「ヘレナ ルビンスタイン」
「シュウ ウエムラ」「キールズ」「イヴ・サンローラン」「ロレアル パリ」「ロレアル プロフェッショナル」「メイベリン
ニューヨーク」など、23の主要ブランドをグローバル規模で展開しています。2008年の連結売上高は175億ユーロ
(約2兆8000億円)にのぼります。 ウェブサイト: www.loreal.com
【研究開発】
♦ 毎年連結売上高の3%以上を研究開発に投資、2008年は5億8000万ユーロ(約928億円)を投入。
♦ 基礎、応用、開発の全研究段階を自社内に有する。
♦ フランス、日本、米国等、世界中に18の研究所、13の評価センターを有する。
♦ 世界中で約3,300名の研究者を抱え、うち女性研究者は55%を占める。
♦ 最先端の生命科学分野の研究に従事。代表的な研究に、紫外線防御、皮膚の色素沈着などがある。
♦ 毎年500件以上の特許を取得。(2008年は628件)
♦ 過去40年間に130以上の新成分を開発、特許を取得。
紫外線防御剤「メギゾリルSX®」「メギゾリルXL®」エイジングケア分子「プロキシレン®」など。
ラン会社概要:日本ロレアル株式会社
コムについて
1963年から事業を開始し、1996年に日本法人である日本ロレアル株式会社が設立されました。化粧品をはじめ、
香水、美容および頭髪化粧品の輸入、製造、販売、マーケティングを行っています。2,200名の従業員を擁し、上記
のブランドを含め17のブランドを取り扱っています。 ウェブサイト: www.nihon-loreal.co.jp
【日本における研究開発】
♦ 1983年最初の研究所を東京に開設以来、26年にわたり日本で研究開発活動を行う。
♦ フランス以外で唯一、基礎・応用・開発の全研究段階を集約した新研究開発体制を有する。
♦ フランス・米国とともに、ロレアルグループの3大創造拠点として機能。
♦ 2009年8月現在約150名の研究者が従事、また女性比率は62%となっている。
♦ 特にグループ全体の化粧水・乳液・パウダーファンデーションなどは、日本でほとんどが開発されており、
グローバルなネットワークの中でも戦略的に重要な位置を占める。
♦ 日本の研究開発センター25周年を契機にサイエンティフィック・コミュニケーション部を設立、
科学・技術情報の広報にも力を入れる。
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ロレアルサイエンスセミナー 2009/08/19
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