米国大統領選挙と金融市場

2016 年 5 月 20 日号
Global Market Outlook
く lo
米国大統領選挙と金融市場
2月に火蓋が切られた米国大統領予備選挙ですが、意外な展開の末、民主党、共和党ともようやく目処がつい
てきたようです。今後の予定、金融市場への影響等についてまとめてみました。
1.
両党とも意外な展開に
事前の予想では民主党はクリントン候補で早期に決定、共和党ではトランプ候補の人気は持続せず、早晩主
流派で落ち着くとされていました。ところが民主党では想定以上にサンダース候補が善戦、最終的にはクリントン
候補の勝利が確実視されているものの、現在も選挙戦に踏みとどまっています。一方、10名を越える候補者乱
立となった共和党では、予想に反しトランプ人気は衰えるどころか上昇を続け、他の候補は次々と戦線離脱に追
い込まれました。今月始めには最後まで残ったクルーズ候補も撤退を表明、トランプ候補の勝利がほぼ確定しま
した。
2.
新大統領誕生までのスケジュール
大統領選挙に関する今後の日程は以下の通りです。
・6月14日:両党とも予備選挙終了
・7月18~21日:共和党全国大会(クリーブランド)
~トランプ候補が大統領候補に指名され、副大統領候補が発表される予定です。
主流派幹部の動向が注目されます。党が分裂する懸念も残っています。
・7月25~28日:民主党全国大会(フィラデルフィア)
~クリントン候補が大統領候補に指名され、副大統領候補が発表される予定です。
最後まで善戦を続けたサンダース候補の対応に注目です。
・9月6日:上下両院は夏期休暇を終え再開、選挙戦が正式に開始されます
・9月26日:第1回大統領候補討論会(オハイオ州)
・10月4日:副大統領候補討論会(バージニア州)
・10月9日:第2回大統領候補討論会(ミズーリ州)
・10月19日:第3回大統領候補討論会(ネバダ州)
・11月8日:大統領、上下両院議員選挙
~接戦となり再集計とでもならない限り、同日深夜(日本時間9日午後)には結果が判明する見込みです。
大統領選挙とともに、上院の3分の1、下院は全議席の選挙が行われます。
・2017年1月20日:新大統領就任
-1-
3.
政策の座標軸と金融市場
米国内では同性婚を巡る問題や銃規
制等への関心が高いと思われます。ただ
表1:大統領候補の政策イメージ
他国への介入、国際協調主義
し金融市場としては、財政政策、外交政
共和党
ネオコン
策が注目点となりそうです。表1の横軸
ブッシュ候補
は財政、規制関連へのスタンスを示して
います。左が再配分重視、規制強化、右
クリントン候補
ルビオ候補
共和党
主流派
が小さな政府、規制緩和となります。縦
軸は外交政策です。上が他国、国際情勢
への積極関与、下が不介入、自国重視で
再配分重視
富裕層への増税
す。
規制強化
民主党
主流派
小さな政府、減税
規制緩和
金融(特に株式)市場としては、極端な
財政緊縮を嫌う一方、規制強化も困る、
グローバル化を好むものの、他国への過
トランプ候補
サンダース候補
民主党
左派
クルーズ候補
共和党
ティーパーティー
剰な関与により地政学リスクに巻き込ま
れることは避けたいというところで、中央
不介入、アメリカ・ファースト
やや上寄りが「スイートスポット」と思われ
資料:各種報道等から弊社作成
ます。
4.
民意は左下へ
① 格差拡大を背景に、既存政治家に対する不信感の高まり
オバマ政権誕生以降、共和党、民主党間での対立が先鋭化しています。共和党内では「ティーパーティー」系
が勢力を拡大、やや極端とも言える財政緊縮、減税を要求する声が高まっています。反対に民主党では富裕層
への増税や規制強化を支持する議論が高まっており、二極化が進むなか中道派が勢力を失いました。その結果
2010年以降、米国議会はほとんど機能不全の状態に陥り、2013年10月には16日間にわたって政府機能が
停止するといった事態にまで発展しました。議会や既存の政治家に対する国民の反感は強く、当初は本命とされ
たブッシュ候補は支持率が全く伸びず早々と離脱、主流派の支持を得たルビオ候補も撤退に追い込まれました。
民主党ではクリントン候補が想定外の苦戦を強いられています。
一方、政治経験のないトランプ候補と、自称「社会主義者」のサンダース候補という2人のアウトサイダーが支
持を拡大しました。トランプ候補は予備選での勝利をほぼ確実にし、サンダース候補も善戦を続けています。20
08年秋の「史上最悪の金融危機」後、金融当局による量的緩和等に後押しされ、経済は回復に向かいました。
しかし資産価格の上昇と賃金上昇の鈍さは格差を拡大させ、2人の「泡沫」候補が低所得者層を中心に支持を
集めたとも考えられます。
② アフガン戦争、イラク戦争の爪痕は大きく国民は内向きに
イラク戦争は言うまでもなく、米国史上、最も長期に及んだとされるアフガン戦争は大きな爪痕を残しました。格
差拡大と相俟って「アメリカファースト」という声は強まり、「壁を築く」等、過激な発言を繰り返したトランプ候補の
人気を押し上げました。国務長官の経験を持ち、本来中道寄り、企業寄りとされるクリントン候補までが、TPPに
対し否定的な発言を余儀なくされました。
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5.
今後の注目点
上記のように金融市場としては表1の中央やや上寄りを期待する一方で、米国民の民意は左下に流れている
ことから、市場参加者は下方リスクを意識せざるを得ません。当面は以下のポイントに注目したいと思います。
① 民主党クリントン候補の立ち居地
サンダース候補が善戦していますが、クリントン候補の勝利はほぼ確実と言えます。党大会で指名を勝ち取っ
た後、同候補がどのような立ち居地を取るかが金融市場にとっても重要でしょう。善戦したサンダース候補に擦り
寄る(表1で左下にシフト)のか、あるいは共和党主流派の切り崩しに動く(表1でやや右にシフト)のか、現在のと
ころ前者の可能性が高いようです。
② トランプ候補と共和党主流派の関係修復
トランプ候補は過激な発言が大きく取り上げられていますが、「高所得者層への増税」、「保護主義」等、共和党
と異なる政策(民主党寄り)を主張していることも、主流派にとって頭の痛いところです。「法人税減税」、「金融規
制法案廃止」等、共有できる政策主導でどこまで関係を改善できるかがテーマとなるでしょう。
③対日関係、特に為替レートについての発言
トランプ候補はもちろんのこと、クリントン候補も日本や中国の通貨政策を批判しています。今後、論戦が本格
化するなかで、円高圧力がかかることも否定できません。
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3月17日号
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2015年度の金融市場
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2015年度第4四半期の市場動向と今後の見通し
4月26日号
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