(独)海上技術安全研究所 国際会議報告

海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
(独)海上技術安全研究所 国際会議報告
会
議: 国際海事機関(IMO)第 1 回航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR 1)
開催場所: 国際海事機関(IMO)
、英国、ロンドン
会議期間: 2014 年 6 月 30 日~7 月 4 日
参 加 国: 国および地域:76、政府間機構:10、国際機関:24
海技研からの出席者:
福戸
淳司:運航・物流系上席研究員
三宅
里奈:運航・物流系運航解析技術研究グループ主任研究員
西崎ちひろ:運航・物流系運航解析技術研究グループ研究員
概要
国際海事機関(IMO)航行安全・無線通信・捜索救助小委員会(NCSR)では、海上人命安
全(SOLAS)条約附属書第 V 章「航行の安全」、第 IV 章「無線通信」、国際海上衝突予防
(COLREG)条約等について審議している。今回の第 1 回会合では、主に以下の審議を行っ
た。
e-navigation 戦略実施計画の策定については、通信会合(CG)で作成された報告案を戦略
実施計画として最終化し、承認のため本年 11 月に開催される MSC 94 に報告することと
した。また、日本が策定した e-navigation に関連するユーザビリティーテスト・評価(UTEA)ガイドライン案は、多数の参加国の要望に基づき、オーストラリアが策定した人間
中心設計(HCD)ガイドライン案および韓国が策定したソフトウェア品質保証(SQA)ガ
イドライン案と統合して 1 つのガイドラインとすることが合意され、次回 NCSR 2 まで
に、CG を設置して統合ガイドライン案を策定することとなった。
GMDSS の見直しについては、昨年 10 月に開催された IMO・ITU(国際電気通信連合)合
同専門家会合による検討結果および無線通信および遭難救助小委員会(COMSAR)の通
信会合(CG)の検討結果等を踏まえ、CG でさらに検討し、その結果を、本年 10 月に開
催予定の IMO・ITU 合同専門家会合で引き続き検討することとした。
主な貢献
福戸と三宅は、e-navigation 戦略実施計画の策定(議題 9)の審議に参加し、戦略実施計画
(Strategy Implementation Plan: SIP)最終化および、ユーザビリティーテスト・評価(Usability
Testing, Evaluation and Assessment: U-TEA)ガイドラインの策定に貢献した。また、韓国のテス
トベッドの現状やデンマークのマリタイムクラウド技術動向について情報収集を行った。
西崎は、GMDSS の近代化に向けての検討に係る審議(議題 13, 17)に参加した。この議題は
小委員会の技術作業部会(TWG: Technical Working Group)で審議される事となり、西崎はこの
TWG にも参加し、無線通信および遭難救助小委員会(COMSAR)の通信会合(CG)が報告し
た、今後の検討のベースとなる GMDSS の詳細事項の見直し(Detailed review)案に関する追記
修正等の審議に加わった。また、非公式に、新規衛星通信プロバイダー企業や各国の海域オプ
ションに対する意向について、情報収集に努めた。
海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
西崎
福戸
三宅
海技研からの出席者
主な審議結果
当所職員が参画した審議の主な結果は以下
の調和のためのガイドラインおよび計画実施
の通りである。今次会合ではこの他に、海上
上の検討事項等含め戦略実施計画として小委
無線通信システム等についても審議が行われ
員会で最終化された。本案は、11 月開催の第
たが、これらについては、他機関の報告を参
94 回海上安全委員会(MSC 94)で報告され、
照願いたい。
承認される予定である。
また、今次会合では、前回会合第 59 回航行
1
e-navigation 戦略実施計画の策定(議題
安全小委員会(NAV 59)の合意を基に、日本
9)
で策定したユーザビリティーテスト・評価
これまで、IMO では e-navigation 戦略で定
(Usability Testing, Evaluation and Assessment:
義された手順に従い、戦略実施計画(Strategy
U-TEA)ガイドライン案、オーストラリアが
Implementation Plan: SIP)の策定に向けた審議
策 定 し た 人 間 中 心 設 計 ( Human Centred
が行われて来た。
Design:HCD)ガイドライン案および、韓国
今次会合では、e-navigation 戦略実施計画案
が策定したソフトウェア品質保証(Software
がノルウェーを幹事とした通信会合(CG)の
Quality Assurance:SQA)ガイドライン案が
レポートとして報告され、最終化に向けての
CG レポートの一部として報告された。
審議が行われた。
審議の結果、三つのガイドライン案は、多
戦略実施計画案には、e-navigation 戦略の実
数の参加国の要望に沿って、これらを統合し
施に向けた優先度の高い 5 つの解決策および
て一つのガイドライン案とすることが合意さ
同解決策を実現する費用対効果の高い 7 つの
れた。このため、今次会合において設置され
リスク制御策(RCO)が示されている。また、
たガイドラインの統合 CG において当該統合
この RCO を実現するために必要な 22 の具体
作業を進めることになり、その結果は次回会
的なタスクが、その最終成果物(性能基準改
合にて報告される事となった。日本は、
正案およびガイドライン等)および作業完了
U-TEA ガイドラインの策定当事者として、統
年と共に示されている。同案は、この 22 のタ
合作業に参加する。
スクの実施計画と、テストベッドの結果報告
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GMDSS(議題 13、17)
GMDSS の 詳 細 事 項 の 見 直 し ( Detailed
今次会合では、25 年以上前の技術を前提に
review)に関し、海域オプションや導入が想
構築され、今まで大きな見直しが行われてい
定される 9 つの新技術を中心に検討が行われ
ない現行の GMDSS(Global Maritime Distress
た。しかし、今次会合では審議時間の関係か
and Safety System:全世界的な海上遭難・安全
ら、詳細事項の見直し(Detailed review)に含
システム)について、システム全体の維持、
まれる具体的な内容について結論を出すこと
また機能の向上を目的とした見直しに関する
はできなかった。そこで小委員会は、CG を
検討を行った。
設置し、昨年の IMO・ITU 合同専門家会合に
小 委 員 会 では 、 昨 年 10 月 に 開 催さ れ た
よる検討結果および TWG での検討事項を踏
IMO・ITU(国際電気通信連合)合同専門家会
まえ、さらに詳細事項の見直しについて議論
合による検討結果として、GMDSS 見直しの
を行うこと、また、本年 10 月に IMO・ITU 合
基本的な枠組み(High-Level Review)につい
同専門家会合を開催し、引き続き検討を進め
て合意がなされた。また、小委員会の再編成
ることとした。
(航行安全小委員会(NAV)と無線通信およ
び遭難救助小委員会(COMSAR)の合併)に
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次回会合
伴う審議時間の確保を目的として、GMDSS
次回の航行安全・無線通信・捜索救助小委
見直し目標を 2017 年から 2018 年へ 1 年延長
員会(NCSR 2)は、2015 年 3 月 9 日から 3 月
することについて、MSC 94 へ提案することに
13 日まで、IMO・ITU 専門家会合は 2014 年
合意した。
10 月 6 日から 10 日まで、それぞれ英国、ロ
GMDSS の 検 討 を 行 っ た TWG で は 、
ンドンの IMO 本部で開催される予定である。