題名 なぜ、学生はお金を使わず貯金するのか

2008 年度学生懸賞論文
題名
なぜ、学生はお金を使わず貯金するのか
論文要旨
景気回復に対して、若者の消費が停滞している事に注目し、和歌和歌若者学生の主な消費
景気回復に対して、若者の消費が停滞している事に注目し、若者の主な消費について先行
について先行研究、学生アンケートを基に考察した。その結果、停滞の原因が、若者では
研究、学生アンケートを基に考察した。その結果、停滞の原因が、若者ではなく市場にあ
なく市場にある事が明らかになった。
る事が明らかになった。
流
通
科
学
大
学籍番号 31063951
学
氏名
・
商
やまかわ
やすひろ
はらだ
ゆうこ
たかや
ゆう き
山川 泰弘
31063071
原田 裕子
37050991
高谷 勇輝
学
部
<目次>
1
はじめに
2
先行研究
2-1 向上する若者の貯蓄意識
2-2 モノ消費の意欲低下
2-3 20 代の「飲まない派」3 分の 1 強に
3
アンケート調査
4
分析
4-1 学生が貯金する理由
4-2 流科大の酒消費
4-3 女子大生うけする車
4-4 潜在消費の可能性
5
変化する購入チャネル
6
おわりに
1.はじめに
サブプライム・ローン問題、金融不安問題等の影響を受けるまで、我が国の景気は緩や
かながら回復していた。しかし、下図のとおり近年消費は全年齢層において停滞傾向にあ
る。特に 20 代若者の消費が著しく低下しているのが目立つ。
消費支出の変化
40∼49歳
30∼39歳
30歳未満
万円
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
92年
95年
05年
注
20 代で消費が停滞している大きな要因に、①貯蓄率の増加 ②若者の車・酒離れ ③休日
を家で過ごす時間の増加、などが挙げられる。しかし、全体から見れば消費は停滞してい
るかもしれないが、細かく見ていくと消費が向上している部門もある。そこで若者にとっ
てもっとも関係が深いと思われる「車」
「酒」
「貯蓄」「ネットショッピング」について考察
したい。また現役大学生へのアンケートを基に先行研究との相違点等を分析し、今後の消
費動向を探る。
2‐1 向上する若者の貯蓄意識
高度成長期を経て「豊かさ」をほぼ実現した 80 年代・90 年代の若者は、現状を楽しみ、
欲望のままに消費し、先のことなど考えない「キリギリスタイプ」であった。しかしフリ
ーターなど非正規雇用者の激増が注目されはじめた 2000 年代、若者の意識に変化が起こり
はじめた。将来に備えようという意思を持つ「アリタイプ」の若者が増えてきたのである。
そのため、最近では定期的な貯蓄を心がけている人も増えてきている。注1
20 代の貯蓄率の推移
%
35
30
25
20
1980∼1989 年
1996∼2005 年
15
10
5
0
1980
1996
81
97
82
98
83
99
84
2000
85
01
86
02
87
03
88
04
89
05
図は 1980~89 年と 1996~2005 年の若者(20 代)の貯蓄率について比較したグラフであ
る。注2このグラフから分かるように、貯蓄率は過去に比べ上昇しており、近年上昇傾向に
ある。では、なぜこのような意識変化が起こったのか。 貯蓄志向には「使う動機に乏し
い」ことに加え、就職氷河期を経験した二十代後半を中心に将来への不安を感じているこ
とも反映している。毎日の生活を送る上で「将来に備える」ことを重視している人は 39.5%
おり、2000 年調査(21.8%)に比べ倍増している。ニートの増加・年金・サブプライムな
どの経済面の問題から、将来に対する不安が高まり保守的になっているからと考えられる。
注3
20 代が「1カ月間に自由に使えるお金」の平均は 64,400 円で、2000 年調査の 60,300
円より約 4000 円増えている。しかし「自由に使えるお金の使い道」(複数回答)について
は、20 代で「貯蓄」を挙げた人が 36.0%となり、2000 年より 8.2 ポイント高まった。背景
にはお金を使わないという理由に加え、やはり将来への不安が強いことがありそうだ。注4
2‐2 モノ消費の意欲低下
1)急速に進む「車離れ」
若者の「車離れ」が急速に進んでいる。日経産業地域研究所が 2007 年 6 月下旬から 7 月
上旬にかけて実施した調査によれば、首都圏の 20 代の若者の乗用車保有率は 2000 年比で
10 ポイント以上低下している。
「乗用車が欲しい」は半減した。家電製品などの他の耐久財
や高額ブランド品、スポーツ用品でも「持っている」、
「欲しい」の回答は半減し、
「モノ消
費」全般からの離脱が鮮明化している。背景にはモノがあふれる一方、国内景気が低迷す
る中で育ってきた「成長を知らない子供たち」の価値観の変化もあるようだ。
2)「車が欲しい」7 年で半減
日経産業地域研究所が首都圏 30 キロ圏に住む 20 代・30 代を対象に実施した「若者意識
調査」によれば、20 代で自分専用の乗用車を「持っている」人の比率は 13.0%で 2000 年
に実施した同趣旨の調査と比べ 10 ポイント以上低下した。
経済的な制約などで車を持ちにくくなっている面もあるかもしれない。ただ背景はそれ
ばかりではないようだ。
「乗用車を持っていないが、ぜひ欲しい」の比率をみると、2000 年には 48.2%と約半数
を占めていた「乗用車が欲しい」人が、07 年には 25.3%と 7 年でほぼ半減したことがわか
る。若者は「車を買いたい・持ちたい」という意欲自体を失いつつある可能性が高いよう
だ。
3)金はあっても「無駄、もったいない」
今の 20 代がなぜ車を持とうとしないのかについて、もう少し詳しく見ていきたい。今回
の若者意識調査で「自分専用の車」を持たない 20 代に、その理由を聞いた結果(2 つまで
回答)では、
「駐車場代・ガソリン代がかかるから」
、が 42.0%で首位となった。以下、
「自
分が買うには価格が高すぎるから」が 34.6%、次いで「日常生活に必要ないから」
(32.1%)、
「車全般に興味がないから」
(16.6%)の順となった。まずはランニングコスト、次いで車
自体の価格が「高い」ことが上位を占め、「不要」、
「興味なし」はその次の理由になってい
る。 ただ、実際にこれらの「お金がかかるから車を買わない」と答えた 20 代の回答者に
会ってデプスインタビューを重ねた結果では、必ずしも「お金がない」ことが理由とは言
えないこともわかった。彼らは車を買う、あるいは維持するお金がないのではなく、お金
があっても「車に使うのはもったいない」と考えているようだ。
友人などでも持っていない人が多いから
ドライブや野外レジャーにあまり興味がないから
車に関心はあるが、ほしい車がないから
車を運転して出かけること自体が面倒だから
免許を取るのが面倒だから
免許を取るお金がないから
その他
車全般に興味がないから
日常生活に必要ないから
自分が買うには価格が高すぎるから
持つと駐車場代、ガソリン代などがかかるから
0
2‐3
5
10
15
20
25
30
35
40
20 代の「飲まない派」3 分の 1 強に
1)飲酒文化からの離脱
消費者の酒離れが目立ち始めた。健康を気にする中高年層の節酒・禁酒もさることなが
ら、さらに市場への影響が大きいと思われるのが、従来型の「飲酒文化」になじまないま
ま大人になる若年層の増加だ。特に 20 代男性でその傾向が目立ち、酒の代わりに甘いもの
に向かう動きもみられる。嗜好品の好みに関する性差の縮小は、酒・食品メーカーにも新
たな対応を迫る。
45
ほとんど毎日飲む
2日に1回以上
月に2,3回くらい
ほとんど飲まない(月に1回以
下)
まったく飲まない
20代
30代
0%
20%
40%
60%
100%
無回答
」
無回答
「
そ の他
酔 う と 人 と ト ラ ブ ル にな
る こと が あ る から
飲 ん で本 音 を 語 り 合
う 様 な こと が 嫌 い
車 を よ く 運 転 す る から
職 場 の 人 と 仕 事 の跡 で飲
食 す る のが 嫌 い
健 康 や 美 容 に よ く な いか
ら
お いし いと 思 う お 酒 が な
いか ら
お 金 が も った いな いか ら
お 酒 に弱 いか ら
60
50
40
30
20
10
0
80%
2)「金もったいない」も「おいしくない」も男性
「若者意識調査」で 20 代の「全く、またはほとんど飲まない」層に聞いた「飲まない理
由」は男女で違う。「お酒に弱いから」は男女とも 50%強でほぼ変わらない。一方、
「お金
がもったいないから」は男性 43.7%、女性 18.5%と男性が高い比率となっている。
「おいし
いと思う酒がない」、
「健康や美容によくない」
、
「飲んで本音を語り合うようなことが嫌い」
も、男性の方が高い。飲むことの価値や魅力に否定的な見方は、むしろ男性のほうが多い
ようだ。注5
20代
30代
3.
アンケート調査
以下、流通科学大学学生を対象とした、消費に関する意識調査の結果である。
A) 1 ヶ月に自由に使える金額はいくらですか
35
30
25
20
男性
女性
15
10
5
0
以
円
0
00
10
下
ー
00
0
10
0
00
20
−
00
0
20
0
00
30
00
30
0
00
50
0−
以
00
0
50
上
B) そのお金の主な使い道を次の選択肢から上位5つを選んでください
90
80
70
60
50
男性
女性
40
30
20
10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
衣料品
2
3
日用品、小物
5
ジュースやスナックなどの飲み物や食べ物
7
漫画・雑誌
9
CD・MD・DVD など
10 パソコンソフト・パソコン関連機器
11
外での飲食
12 交際費
13
電話代・通信費
14 オートバイ・自動車などの車関連
15
ゲームセンター・カラオケなど
16 スポーツ用品やスポーツをする費用
17
競馬やパチンコなどのギャンブル
18
映画・コンサート・観劇・スポーツ観戦など
19
英会話スクールなどの習い事に月
20 旅行
21
貯金
22 借金返済・ローン返済
23
本・専門書
24 その他
4
靴・バック・アクセサリーなど身の回り品
化粧品、整髪量
6
文具
8 ゲーム用品・ゲームソフト・おもちゃなど
C) 貯金は月々いくらしていますか
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
50
00
0以
上
50
00
0円
30
00
0-
30
00
0円
20
00
0-
10
00
0−
20
00
0円
10
00
0以
下
男性
女性
D) なぜ貯金していますか
60
50
40
30
20
10
0
その他の理由として次のようなものがあった
・将来のため
・専門学校に通うため
・車検のため
・貯めたい
・結婚資金
の
他
そ
に
備
就
職
活
動
な
ど
今
す
ぐ
買
欲
い
た
い
物
し
い
物
が
な
を
買
う
い
か
え
て
ら
た
め
男性
女性
E) お酒は月にどのくらい飲みますか
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
F)
ま
っ
た
く飲
ま
な
い
ほ
と
ん
ど
毎
日
よ
飲
く飲
む
む
(2
日
に
と
1回
き
ど
以
き
上
飲
)
む
(週
に
1
.2回
た
く
ら
ま
い
に
)
飲
む
(月
に
2.
ほ
3回
と
ん
く
ど
ら
い
飲
)
ま
な
い
(月
に
1回
以
下
)
男性
女性
自分用の車を持っていますか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
はい
いいえ
男性
女性
G) 自分用の車がほしいですか
80
70
60
50
欲しい
欲しくない
40
30
20
10
0
男性
H)
女性
インターネットオークションを利用したことがありますか
80
70
60
50
男性
女性
40
30
20
10
0
はい
いいえ
ク
トカ
ー
ドや
貯
て
り
て
っ
を
借
ら
ロ
あ
き
ー
ン
ら
買
う
め
る
で
つ
買
う
買
う
ま
る
ま
で
待
お
金
金
を
も
が
か
ら
お
お
金
や
友
達
レ
ジ
ッ
家
族
家
族
か
ら
下
上
50
00
0円
30
00
0円
20
00
0円
50
00
0円
以
30
00
0-
20
00
0-
10
00
0-
10
00
0円
以
I) 10 月はいくらぐらいインターネットで買い物をしましたか
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
男性
女性
J) 欲しいものがあった場合、あなたならどうしますか
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
男性
女性
K) あなたは消費に対して、今後どのように考えていますか
60
50
40
男性
女性
30
20
10
そ
の
他
い
な
り
あ
ま
が
し
い
物
欲
関
係
に
情
勢
経
済
経
済
情
勢
が
厳
な
し
い
く、
欲
の
し
い
で
倹
約
す
物
を
買
る
う
0
その他の理由として以下のものがあった
欲しいと思っても、高いので手がでない
欲しいがお金がない
その時々に応じて状況が違うので、答えられない
4‐1 学生が貯金する理由
以上のアンケート調査結果を分析しよう。第 2 章でも述べたように、一般的な若者が一
ヶ月に使える金額は 64,400 円である。それに対し流通科学大学の学生は、5 万円以下の学
生が約 8 割もいる。しかし、貯蓄に対する意識は全体からみれば高い。男女別には、男性
の方が貯蓄に対する意識が強い。これはおそらく、質問 B から分かるように、女性には突
出した消費がなく全般的に消費しているので、貯蓄の割合が高くならないためとみられる。
また、月々の貯金額の割合が全体的に高いのに対して、質問 B の「貯金」の比率が高く
ないのは、お金を貯めるためではなく、消費目的の貯金をしているからだと考えられる。
貯めたお金で衣料品などを買うので 貯金=衣料品
などの方程式が成り立っているので
はないのだろうか。さらに、貯金をしている理由で、「将来のため・貯めたい」という意見
は少なく、大半の人が使うことを目的とした貯蓄をしていることが分かる。
つまり、遠い将来の不安からではなく、近い将来自分が満足するために貯蓄している若
者が増えていると考えられる。
4‐2 流科大の酒消費
一般的にはほとんど飲まない人(月に 1 回以下)の割合が高いのに対し、流通科学大学
の学生はたまに飲む人(月に 2.3 回)の割合が高かった。これはおそらく、サークルが関係
していると考えられる。流通科学大学のサークルは主に毎週水曜日・週 3,4 回行っている
ので、サークルのアフターでお酒を飲んでいるのだ。つまり、付き合いでの飲酒は減って
いない。また男性の酒離れといわれているが、流通科学大学生の男子学生において、よく
飲む人の割合は約 35%にもおよぶ。
これらのことから、流通科学大学の学生はお酒の消費について、消極的ではないことが
わかる。
4‐3 女子大生うけする車
やはり学生で自分用の車を持っている人は少ない。また、持ってない人に対して行った
質問 G の回答において、男性より女性の方が車を求めている人が多かった。確かに近年街
中でスポーツカーなどの「走り」に特化している車は減っていっている。代わりに「機能」
や「外見」を重視した軽自動車が増加傾向にある。そのかわいい外見や、充実した室内機
能が今の女子大生にうけているのかもしれない。男性の車離れの背景には、飲酒が関係し
ている可能性もある。近年飲酒運転が社会問題にもなっている。そんな中、飲酒をよくす
る男性は、車ではなく公共移動手段を使っているため車離れが進んでいるのかもしれない。
4‐4 潜在消費の可能性
質問 J において、男性、女性ともお金が貯まるまで待つという意見が圧倒的に多かった。
お金を借りてでもすぐに欲しいと思う学生が少ないということは、市場に魅力的商品が少
ないということである。ここでいう魅力的商品とは、質はもちろんのこと値段も若者のニ
ーズに応えている商品の事だ。つまり、今日の市場には、質はいいが値段が高い商品が出
回っている。潜在消費はあると考えられるが、それに見合った商品がないと考えられる。
5.変化する購入チャネル
インターネットショッピングを経験したことがある人の割合は 4%となっており、1997
年の 1%と比べ大幅に増加している。世帯におけるパソコン普及率が 43%であることから、
パソコン保有世帯の 1 割程度の世帯でインターネットショッピングをしたことがあるとい
える。性・年齢別に内訳をみてみると男性の 20∼30 代における利用率が高くなっている。
今後普及されると考えられる商品・サービスはなんなのだろうか。下図を参考に考えてい
きたい。
貴金属・宝飾品
住宅・土地
お酒
日常の食料品(生鮮食品)
自動車用品
AV機器(テレビ・コンポ等)
家具・インテリア
ゲーム機器
自動車(中古車)
株・株式・投資信託
自動車(新車)
ゲームソフト
音楽などのダウンロード
音楽CD・ビデオソフト
乗車券・航空券
ホテル・旅館の宿泊
0
5
10
15
20
25
ホテル・旅館の宿泊、コンサート・映画・スポーツなどのイベントチケット、乗車券・
航空券など、インターネットを利用して購入しても実際の商品の品質に差がないものが上
位になっている。これらの商品は、購入する際に直接は見ることができないもの(ホテル・
旅館)
、あるいは、直接みても意味がないもの(チケットなど)であり、これらの商品・サ
ービスがインターネットチャネルと親和性が高いといえる。一方、自動車や衣料品など、
実際に見ることができて、それに基づいて判断する必要性が高いものについては、まだま
だインターネットチャネルは普及しないと考えられる。
これらの商品でもインターネットチャネルが利用されるようになるためには、商品の質
を正確に消費者に伝えることがポイントとなる。例えば、絶対的なブランド力がある商品
であれば、生活者はそのブランド名を聞いただけで安心することができ、直接商品を見て
確認する必要がないため、インターネットチャネルを利用して購入することに抵抗がない。
あるいは、インターネット以外で、商品を直接確認できる場を設けることで、商品の質を
生活者に伝える方法もある。
最近、インターネットを利用したネットオークションが話題になることが多い。いらな
くなったものを販売できたり、自分で必要なものを安価で手に入れることができたり、オ
ークションは消費者にとって魅力が多い。従来は限られた場所、専門家の間でした行われ
ていなかったオークションが、インターネットの普及により、一般の人でもおこなえるよ
うになってきた。
ネットオークションの魅力は、消費者が自分で価格の意思決定者になれることである。
従来は、価格は供給者側(メーカー、流通など)から与えられるものであったが、消費者
が、自分の購買意欲に応じて、自由な価格をつけることができるのがポイントである。
「生活者一万人アンケート調査」によると、ネットオークションは今後も普及する傾向
にある。現在、ネットオークションを行った経験がある割合は 1.2%であるのに対し、今後
行ってみたいと考えている人の割合は 4.9%である。このネットオークションに対する希望
を性・年齢別にみると、女性よりも男性、高齢層よりも若齢層で強いという特徴がある。
確かに、質問 I において、ネットオークションを利用したことがある人は男性の方が多く、
約 50%の人が利用していることになる。
以上より今後は 20 代男性を中心にネットオークションが普及していくものと考えられる。
これらの年齢層は、自分で価格を決められることや、商品売買(取引)の醍醐味を味わえ
ることになるなどに魅力を感じており、ゲーム感覚でのネットオークションを行っている
ものと考えられる。したがって、今後も、ゲーム感覚でオークションを楽しむ人たちから
ネットオークションは普及していくものと考えられる。注6
6.
おわりに
景気が回復しているのに、消費が停滞していることに注目し、ターゲットを若者に絞り、
調査研究した。
当初、我々は消費の停滞の理由は若者の将来に対する不安から、貯蓄に向かっている結
果、消費が停滞しているという仮説を持っていた。しかし、今回の調査・研究でそうでは
なく、消費停滞の原因は市場にあることが明らかになった。
若者が求めている商品は自分の理想としている値段より高い。これが若者の消費が停滞
している原因の一つであるといえる。若者が貯金している主な理由は欲しいものを買うた
めであり、当初予想していた将来に対する不安からだけではなかった。つまり、若者が求
めている商品は、貯金をしなければならないほど高い、ということになる。
自由に使える金額が少ない若者にとって、理想としている値段を下げることはできない。
そうなると、市場が若者の理想としている値段まで、商品の質を落とさずに下げるしかな
い。しかし、若者の消費が停滞しているところをみると、市場があまり積極的に若者のニ
ーズに応えようとしてないと考えられる。または、日々変化する若者のニーズに追随でき
ていないのかも知れない。
もう一つの理由は、ネットショッピングの利用者が少ないことである。ネットショッピ
ングは、ネット限定値引きや商品の豊富さ、手軽さなどで、若者のニーズに応えている。
しかし、個人情報の流出が怖かったり、詐欺に対する不安などから利用者が未だ大きく増
加していない。
このように、市場において若者のニーズに、質だけでなく値段でも応え、貯蓄をしなく
ても商品・サービスが購入できるようにすること、さらにインターネットの安全性を確保
し、誰もが安心して手軽に使える販売チャネルにすることにより、消費はさらなる拡大が
見込まれる。
以上が若者の消費停滞を解決させる最低条件であり、これが本研究の結論である。
<引用・参考文献>
注
M1F1 総研分析レポート Vol.8
注1
20 代の若者の消費異変 p22
注2
家計調査年報
注3
日経流通新聞
07/08/22 日分より
注4
日本経済新聞
07/08/22 日分より
注5
20 代若者の消費異変
注6
続・変わりゆく日本人 p190~