(株)ビー・エイチ・エス 本社総務部 「FAX業務の効率化」 発表者:東郁子 パソコン操作:信坂修一 1.はじめに 株式会社ビー・エイチ・エスは、三菱東京U FJ銀行の緊密会社です。場所は、都の西北早 稲田にあり、従業員は約 450 名の会社です。 この職場で、毎日無駄口をきく暇もなく、必 死に働く業務班の仲間たちです。私たちは、お 客様や協力会社との契約、見積もり、作業予定 などの管理を担当しています。 2.テーマの選定 これから説明するFAXに関する作業は、全体の業務のうちの作業予定管理に当たりま す。作業日程の調整をするに当たり、大きく分けて協力会社宛てと、お客様宛ての 2 種類 の作業予定表を使います。 まず、協力会社宛てにブランクの予定表を送 ります。協力会社からは日時を記載したものが 送り返されてきます。 全て出そろったところで、 物件ごとの予定表を、 今度はお客様へ送ります。 そのほかにも、必要に応じて社内の担当者や各 現場などにも送ります。このように、作業日程 の連絡については、ほとんどの連絡をFAXで 行います。1 カ月に使う予定表は、それぞれが 100 枚以上になることもあります。 ここで問題が勃発しました。短縮ダイヤルの 登録可能数は 500 件までですが、 相手先が増え、 その数が不足したのです。 私たちは、お客様ごとに伝えたいメッセージ があり、そのため一度紙に出してから、メッセ ージを予定表に追加し送ります。それゆえ、こ のIT時代にもかかわらず、どうしてもFAX という手段をとらざるを得ません。 そこで、テーマ「作業予定管理のFAX業務における短縮ダイヤル登録数の不足問題の 1 解決」=「FAX業務の効率化」に取り組むことにしました。 決定の理由は、業務効率化によるコスト削減 は会社の重要課題であり、高性能の新しいFA Xを購入しても、いつかまた同じことが起きま す。FAX送信の作業は短縮ダイヤルを使用し ても、一枚一枚の作業で時間がかかり、多忙時 はストレスにもなります。この機会に、FAX 業務そのものを見直そうという観点から、新し い解決の糸口を見つけるための取り組みを始め ました。 3.現状の把握 まず、今までのFAX送信にかかる時間の確認をしました。 ①予定表を準備し、FAX機に 1 枚置く。 ②あらかじめ、予定表に宛先と一緒に記載さ れていた短縮登録番号を見ながら、小さな モニター画面のFAX機の短縮ボタンを 押す。 ③会社名とFAX番号が表示されるので、 確認しながら送信ボタンを押す。 この一連の動作でFAX1 枚に対し約 35 秒か かりました。短縮登録をしていない先は、FA X番号を一つ一つ入力していくので、更に時間 がかかります。 短縮ダイヤルの登録数は毎年増えています。 送信枚数も年 10%の勢いで増え、 4 月と 10 月が 特に業務量が多く、 月平均で 4 時間 20 分も送信 作業に費やしていました。また、ミスもわずか ですが起きていました。 4.要因の分析 そこで、ありたい姿に向け、メンバーでいろいろなアイデアを出し合いました。 ①パソコンメールを使って届けるというアイデアについては、1 つの表を大勢に送るの には向いていますが、100 枚の表を 100 人に送るのはかえって面倒 ②パソコンの中から直接FAXを送るPCFAXについては、どうしても一度紙に出し 2 たいので不採用 ③バーコードを使ってFAXする仕組みについ ては、既に 10 年前に廃盤となっていて不可能 ④OCRという予定表の数字を読み取って自動 的に送信する仕組みについては、読み取り位置 を固定するのが難しいそうということで保留 どうしようと話し合いが暗礁に乗り上げたと き、不意に「QRコード」というアイデアが出 ました。 「QRコード」とは、クイックレスポンスの略で、高速で読み取れるように開発された 図柄です。通常 2cm ぐらいの大きさで、現在、色々な場所で使用されています。これは文 字よりもQRコードを読み取るほうが確実であるということ、また、この「QRコード」 が無料ソフトにより簡単につくれるということがわかりました。 コストも抑えられ、管理ソフトのFAXデータをそのまま使えたらシンプルにできそう、 ということで目標を決めました。 5.目標の設定・活動計画 「現在使用している作業予定表に、QRコー ドをつけ、その印刷されたQRコードを活用し て、自動でFAXする新しい仕組みをつくる」 活動計画は表のとおりです。 6.方策の立案、方策の実施 目標を実現するために考えられる限り、いろいろなアイデアを出し合いました。 ①QRコードのつけ方はどうする? ②QRコードに盛り込む内容は何にしよう? ③QRコードの読ませ方は? ④FAX機能はどんなものがある? その中で、残ったものが黄色の部分です。 ③と④に関しては、送信ソフトがあれば、今 使っている複合機をそのまま使えるので費用 が抑えられます。 話し合いの後、夢のようなFAX送信のシ ステムの構想ができ上がりました。 管理ソフトを使い、予定表を出力、同時に QRコードも印刷します。印刷した予定表を 複合機のスキャンで読み取り、PDFファイ 3 ルとしてパソコンに取り込む。その取り込んだデータをQRコードで指定した番号へ自動 的に送信するというものです。 この構想が出来上がるまでの流れです。かか った費用は、QRコードの作成印刷ソフトの開 発に 18 万 5,000 円。 QRコードによる自動送信 システムの開発に 19 万 8,000 円。FAXキット 代が 7 万円。合計 45 万 3,000 円です。これは 1,000 件を短縮登録できるFAX機を購入する のと同じ程度です。 それでは、予定表を複合機に読み取らせ、予 定表をFAXするところをご説明(※発表会当 日は画像再生で説明)します。 まずフィーダー部分に予定表をセットし、パ ネルの中に自動FAX送信ボタンをつくってあ りますので、それを押し、スタートボタンを押 す。 そうすると自動的に読み取りが始まります。 この間、私たちは、紙詰まりしないかぐらいを 見守るだけとなります。 今まで 1 時間以上FAX機の前に立っていた作業が、あっという間となりました。 7.効果の確認 効果として、毎月平均 4 時間 20 分かかってい たFAX送信作業が、わずか 12 分で済むように なり、95%の削減です。この違いを新幹線に例 えると、東京駅を出発して、名古屋、京都、新 大阪を過ぎ、広島も過ぎて、新山口あたりまで 行ける時間です。一方、12 分というのはまだ新 横浜にも着いていません。それだけの時間を私 たちは有効活用できることになりました。 効果金額としては年間 12 万 3,000 円相当となりますが、実感としてはそれ以上のもの があります。品質においても、誤送信“0”を達成しています。 しかし、実は数日前、送信履歴が消えるというトラブルが発生しました。送信自体には 問題がなかったのですが、消えた原因は現在究明中です。本日ここで完璧な状態でご報告 できず残念なのですが、間もなく解決できると思います。 4 また今回、うれしい副産物がありました。 送信エラーとなった場合、確認画面で該当ロ ゴをクリックするだけで送信内容のPDFを 見ることができ、今までのように紙の束の中 から 1 枚を探し出すという手間が無くなりま した。 もう一つは、送受信した予定表は 3 カ月間 の保存が必要でしたが、今回のシステムでは 全てPDF化しており、かつ漏れがないことを確認していますので、紙ベースでの保存の 必要が無くなりました。 9.反省と標準化、今後の取り組み 導入の際の苦労として、ある日、お客様より「見づらい」と書かれたFAXが届きまし た。検証後、読み取り解像度を上げることで対応したところ、今度は社内で読み込んだス キャンが巨大化するという騒ぎが起き、直感的に犯人は私たちだとわかりました。最終的 に自動FAXの時に解像度を上げる設定にし直して一件落着しました。 このような中での今回の自動FAX作業マニ ュアル作成により、業務範囲では誰でもこの自 動FAXを使えるようになりました。 振り返ると、こんなことなら、もっと早く取 りかかればよかったという後悔にも似た反省が あります。いえ、一番の反省は、きっと無理だ ろうと考える前から諦めていたことです。 今後への課題としては、今は予定表のみに対 応していますが、このQRコード機能を応用す れば通常のFAXにも活用できるはずと思って います。ぜひ取り組んでみたいです。 今回、多くのいろいろな立場の方たちの協力 があって実現にこぎつけることができました。 メンバー全員で右往左往したり、可能性を話し 合ったり、その過程はとても楽しかったです。 この経験はきっとこれからも役に立つだろうと 思います。 (了) 5 質問 Q:通常まずは、どうしてもペーパーレス化を考え、パソコンで行えばペーパーレスになる かと思いましたが、どうしても紙に出す必要があるとのことで、そこら辺の改善は考え ませんでしたか。 A:真っ先に考えましたが、今のところ、100 件、200 件、300 件に一枚ずつメール等で送 るのは難しいことと、受け手もまだメール受信の環境がそろっていないということもあ りました。 また、FAX送信の際に、どうしても他の書類と紛れてしまうということがあるので、 目立つようにメッセージを加え、再印刷を加えて送るということも今はやっており、ど うしても現在は紙ベースにこだわりました。 6
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