2012/10 1826号 - 山口県医師会

2012
平成 24 年
10 月号
No.1826
初秋の海
Topics
新郡市医師会長インタビュー
Medical Topics
郡市医師会めぐり
尼崎辰彦
撮
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
Contents
●新郡市医師会長インタビュー「熊毛郡医師会長」………………… 津永長門
843
●郡市医師会めぐり「第 2 回
彰
846
忠雄
848
弘人
850
●第 25 回全国有床診療所連絡協議会総会 ( 後編 ) ………………… 河村康明
854
●山口県医師会警察医会第 11 回研修会 ……………………………… 松井
健
858
●第 4 回臨床研修医交流会 …………………………………………… 中村
洋
881
●第 4 回臨床研修医交流会を終えて ( 印象記 ) ……………………… 藤田
陽
883
●平成 24 年度第 2 回郡市医師会地域医療担当理事協議会 ………… 弘山直滋
885
下関市医師会」……………………… 安藤
● Medical Topics「平成 24 年集団指導」 …………………………… 萬
●今月の視点「医療者のためのコミュニケーションスキル
〜メディカル・サポート・コーチングを中心に〜」……… 林
●第 54 回山口大学医師会・山口大学医学部主催
医師教育講座 ( 体験学習 )「山口県医師会 ICLS コース」……… 鶴田良介
888
●都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会………………… 弘山直滋
890
●都道府県医師会電力確保対策担当理事連絡協議会………………… 今村孝子
894
●第 18 回中国四国医師会共同利用施設等連絡協議会 ……………… 今村孝子
895
●平成 24 年度中国四国学校保健担当理事連絡会議 ………………… 山縣三紀
900
●平成 24 年度中国地区学校保健・学校医大会 ……………………… 沖中芳彦
903
●平成 24 年度郡市医師会妊産婦・乳幼児保健担当理事協議会
山
口
県
医
師
会
報
842
・関係者合同会議………………………………………………… 山縣三紀
913
●第 43 回中四九地区医師会看護学校協議会運営委員会 …………… 田中豊秋
917
●県医師会の動き………………………………………………………… 濱本史明
920
●理事会報告 ( 第 11 回、第 12 回 ) ………………………………………………
922
●女性医師リレーエッセイ 「 湘南の風 ??・・・・( 山奥より )」 …… 諸冨夏子
926
●いしの声 「 切手収集 50 年 」 ………………………………………… 安藤
彰
927
●会員の声「TPP 環太平洋戦略的経済連携協定―締結反対の立場から」… 渡木邦彦
928
●飄々 「 秋の夜長に…」 ………………………………………………… 堀
935
哲二
●お知らせ・ご案内…………………………………………………………………
936
●生涯教育コーナー…………………………………………………………………
942
●編集後記………………………………………………………………… 藤本俊文
944
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
新 郡 市 医 師 会 長
イ ン タ ビ ュ ー
第4回
と
き
ところ
熊毛郡医師会長
曽田
貴子
先生
平成 24 年 9 月 13 日 ( 木 )
弘和クリニック
[聞き手:津 永 長 門 広報委員]
津永委員
本日は今年 4 月から新しく熊毛郡医
医、産業医、介護保険、休日夜間の応急診療など
師会長に就任されました曽田貴子先生にお話しを
で、行政と連携を図りながら行っております。また、
伺わせていただこうと思います。最初に熊毛郡医
今年は熊毛郡医師会としては初めて、小児救急に
師会の簡単なご紹介をお願いいたします。
関する市民講座を行うことにしております。
会員数が少なく、小さな医師会ですので、こ
曽田会長
熊毛郡医師会は田布施町、平生町、上
れらの事業は、理事の先生だけでなく、ほとんど
関町の三町で成り立っており、会員数は 25 名で、
すべての会員にご協力いただき、それも掛け持ち
内訳は病院、診療所の開設者もしくは共同経営者
で運営しております。そういった意味では、こじ
(A 会員 ) が 16 名、勤務医 (B 会員 ) が 8 名、そ
んまりとした医師会ですが、まとまりがあります。
れ以外 (C 会員 ) に 1 名となっております。医療
機関別では、診療所が 16 機関で、うち 2 機関が
津永委員
有床診療所です。私立の病院が 1 機関、介護老
市医師会長について調べてみましたところ、すで
人保健施設が 1 機関の合計 18 機関です。
にお亡くなりになられていますが、平成 2 年から
医師会活動としては研修会と連絡会を兼ねて月
ありがとうございます。女性医師で郡
6 年間、諸井堯子先生が萩市医師会長をされてい
に 1 回集まっております。その会には、ご高齢で
ます。県内で最初の女性医師の郡市医師会長です。
体調のすぐれない会員を除いては、A 会員はほぼ
今年 4 月に、吉南医師会の田村正枝会長も就任さ
全員出席されています。平成 22 年度から生涯教育
れました。最近は女性医師の活躍も話題になって
の単位取得制度が変わりましたので、熊毛郡医師
います。ここだけは私のカラーとしてやってみた
会の研修会に出席されていれば、3 年間で必要単
いということはございますでしょうか。
位が取得できるようにさまざまな分野の講師をお
呼びして予定を組んでおります。またその研修会
曽田会長
の中には診療所で義務付けられている感染対策や
昭和 45 年に先輩方が決められ、今なお、その方
安全対策の研修も取り入れ、コ・メディカルの方々
法を継承しております。そのため、今期は私に会
にも参加していただけるようにしています。医師
長職が回ってきました。それと同時に熊毛郡医師
会の公的な事業としては、健診や予防接種、学校
会は固定の事務局を設けておりませんので、会長
熊毛郡医師会は会長輪番制で、これは
843
山口県医師会報
第 1826 号
兼事務局になります。まず、事務局の抱負として
津永委員
そのころかなり小児救急が問題になっ
は、県医師会からの情報をできるだけ早く、抜け
ていましたが、最近はいかがでしょうか。
平成 24 年 10 月
のないように会員の先生方にお知らせできるよう
にしたいと思っております。また紛らわしい事務
曽田会長
的なことで、事務局が代行できるものであれば、
おられなくなるという話がありましたが、結局、
代行させていただこうと、気持ち的には思ってお
不在の期間なく、現在小児科の常勤の先生がおら
ります。このような物事を仕分けしたりコピーを
れます。小児救急のバックアップをしていただい
したり事務的にまとめたりするのは、男性よりも
ておりますので、安心して応急診療所で仕事がで
女性の方が得意な分野ではないかと思っておりま
きている状況です。
以前、周東総合病院の小児科の先生が
す。
次に会長としての抱負は、力不足なのは十分承
津永委員
熊毛郡医師会は三町で交代されている
知の上で、多くの会員の先生方に相談し、助けて
ということですが、ここ最近の新規開業など、会
いただきながら、務めてまいりたいと思っており
員の異動などについてはどうでしょうか。
ます。会員の先生方が安心して日常診療に打ち込
めることが、一番の地域医療だと思っております
曽田会長 あまり異動がないのが一つの特徴でも
ので、会員の先生方や地域住民の方々のお役に立
あります。熊毛郡医師会には公的な病院がありま
てるように努めてまいりたいと思っております。
せんので、会員の異動は少ないですが、平成 22
年に 2 名の A 会員が入られたのが、最近の大き
津永委員
先生は、副会長の時代から生涯教育な
な異動になります。
ど研修会に積極的に取り組まれたと伺っておりま
すが、その辺の苦労話などございますか。
津永委員
ある程度新陳代謝もされているのです
ね。そのほか、熊毛郡医師会が抱えられている問
曽田会長 できるだけ幅広い分野の先生方に来て
題はありますか。
いただくことを念頭に置きながら、講演会の予定
を組むようにしております。
曽田会長
会員数が少ないために、一人ひとり
の先生にかかる負担が大きいことが一番の問題で
津永委員
小回りが利くのでその分、集まりや
す。また、来年 4 月から一般社団法人に移行す
すいのですね。6 年前に田尻元会長の時にインタ
る予定ですので、事務局の仕事が煩雑になること
ビューをさせていただきましたが、当時、救急医
が予想されます。固定した事務局がないというの
療については熊毛郡医師会の中で輪番制でされて
が今後の問題になろうかと思います。
いたとのことでしたが、現在はどうなっているの
でしょうか
新法人移行に関しては、長門市医師会の天野
会長をはじめ、事務局の方々に大変お世話にな
りました。資料を参考にさせていただき、今年 4
曽田会長
平成 19 年から柳井医師会と熊毛郡医
月から定款変更にとりかかり、現在申請中です。
師会の合同で、休日夜間応急診療所を立ち上げま
した。この診療所は柳井市にあり、そこへ出向す
津永委員
るという形で、柳井医師会と熊毛郡医師会の先生
隣医師会と合併という話もありましたが、今はそ
方が輪番で診療にあたっております。平日夜間は
ういう話は落ち着いているのでしょうか。
以前は市町村合併で、柳井医師会や近
午後 7 時から 10 時まで、休日は午前 9 時から午
後 5 時まで勤務しております。開設されて 5 年
曽田会長
になりますが、運営はスムーズに進んでいると思
は医師会の合併の話はあまり出ていません。
市町村合併が落ち着いたせいか、最近
います。
津永委員
844
地域的なことですが、過疎化とか街の
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
曽田会長
状況はどうでしょうか。
第 1826 号
大学時代にバドミントンをしていまし
たが、今はスポーツはしていません。先日、携帯に
曽田会長
転入もあるようで、ほぼ同じ数で推移
万歩計がついているのですが、午前の診療後に見て
していると聞いています。極端に過疎化している
みると、100 歩だったのですね、愕然としました。
印象はありませんね。
津永委員
診療所で開業していると、歩きません
津永委員 それでは曽田会長ご自身について伺い
よね。よく「1 万歩は歩け」と言いますが、相当
たいと思います。ご出身はどちらでしょうか。
努力しないといけません。私も大学時代にバドミ
ントン部でして、今年のロンドン・オリンピック
曽田会長
田布施町出身です。田布施町の岡本医
院で生まれました。現在、岡本
詢先生と同じ熊
毛郡医師会に所属していることはとても光栄であ
では女子ダブルスが銀メダルを取り、応援に盛り
上がりました。
座右の銘はございますでしょうか。
り、また不思議な感じです。高校は柳井高校で、
大学は東京慈恵会医科大学です。慈恵では「病気
曽田会長 座右の銘というか目標にしている言葉
を診ずして病人を診よ」の精神を教えられ、今で
があります。あるお寺のご法話で出てきた教えで
もそうあれるように心がけています。学生時代は
すが、「水のような人間になりなさい、その水も
本当に良き友人や先輩、後輩に恵まれ、楽しい時
できれば、温かい水でありなさい」という言葉が
を過ごしました。卒業後、
山口大学眼科に入局し、
胸に残っています。本当の意味は理解できている
その後山口赤十字病院眼科で勤務しました。山口
か自信がないですが、水は形を変えて、そこにお
赤十字病院では中山富蔵先生と山内一彦先生に大
さまることができるわけで、人と人とが付き合う
変お世話になり(少しだけ)厳しく、
(たくさん)
時でも、気持ちと心を柔軟にして触れ合っていけ
温かく指導をしていただきました。平成 11 年に
るような人間になりなさいという意味だろうと理
父が他界し、
それを機に父のクリニックを継承し、
解しています。できれば温かい水でありなさいと
現在に至っております。
いうのは、もし相手が氷のような心の人であれば、
それを解かしてあげられるような温かい人間にな
津永委員 地元に帰られてご活躍ということです
りなさい、という意味なのではないかと思ってい
ね。なにかご趣味はございますか。
ます。今はまだまだ及びませんが、将来、そんな
女性になれればいいなと思っています。
曽田会長
趣味は映画と読書とお寺巡りです。
津永委員
津永委員
お寺巡りですか。かなり遠くまで。
温かい水ですか、いいお言葉ですね。
本日はお忙しい中、どうもありがとうございまし
た。曽田会長の今後のご活躍に期待しております。
曽田会長
遠くも行きますし、最近では周南の漢
陽寺や宇部の宗隣寺、
下関の功山寺も行きました。
津永委員 今はお寺にある仏像をみるのが流行っ
ているようですね。
曽田会長 彫刻という意味での仏像としては興味は
なく、歴史をずっとみている仏像に思いを感じます。
津永委員
スポーツはされていますか。
845
平成 24 年 10 月
郡市医師会めぐり
山口県医師会報
第 1826 号
第2回
下関市医師会
当医師会は、本州の最西端に位置する下関市
に、明治 20 年、赤間関医会として発足、紆余曲
折を経て明治 40 年に山口県から許可を得て下関
が経過、経年劣化が著しいため、早急なリニュー
アルが、現在、検討されています。
看護専門学校は、ルーツを辿ると、昭和 8 年
市医師会となり、昭和 22 年には、
「社団法人
に誕生、以降の法改正により幾多の変遷を経て、
下関市医師会」を設立、現在に至ります。平成
昭和 27 年に現在の下関看護専門学校を設立、55
17 年 2 月、下関市、菊川町、豊浦町、豊田町、
年以上の歴史をもつ伝統ある学校であり、「人間
豊北町の 1 市 4 町が合併し、中核市として下関
性豊かで明日の医療を支える優秀な資質を持つ看
市が誕生、それに伴い、豊浦郡医師会と下関市医
護師の育成」を教育理念とし、数多くの生徒が
師会が平成 19 年 4 月合併、
会員総数が 508 名(平
医療現場の第一線で活躍しています。課程は、高
成 24 年 8 月 31 日現在)となり、県下最多の会
等課程(2 年)・専門課程(定時制 3 年)があり、
員をもつ郡市医師会であります。
高等課程 1 学年 100 名、専門課程 1 学年 50 名
当医師会の事業は、医師会本会、下関市医師
の定員となります。特色は、働きながら学べると
会病院、下関看護専門学校、臨床検査センター、
いうことがあげられ、特に、専門課程は数少ない
訪問看護ステーションの他、下関市から委託を受
夜間の看護学校です。
けている下関市夜間急病診療所と地域包括支援セ
当医師会の直近事業としては、医療情報シス
ンター、また、組合員の出資により設立された下
テム事業において、国の交付金を受け、山口県が
関医師協同組合があります。
実施する山口県地域医療再生計画事業の一部であ
会員共同利用施設の下関市医師会病院は、標
る「地域医療連携情報システム導入事業」を行っ
榜科目が内科・放射線科、常勤医師 3 名、病床
ております。この事業は、国の補助事業であり、
数 64 床の急性期一般病院であり、昭和 37 年、
事業年度は平成 23 年度から平成 25 年度までと
臨床検査センターとして細江町の旧医師会館に設
なっており、目的は、診療所と基幹病院との地域
立後、昭和 42 年 12 月、現在の医師会館内に入
医療連携をはかるためのネットワークを構築し、
院施設を有する下関市医師会病院が、看護専門学
診療に用いる全画像情報をオンライン化して、診
校・臨床検査センター・医師会本会と併設して建
療所から基幹病院内の画像情報にアクセスするこ
設されました。しかしながら、建設後 40 年以上
とができる IT 環境を整えることであります。進
846
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
捗状況は、平成 23 年度に地域協議会の PR 、域
表彰及び下関市医師会報に作品を掲載しておりま
内医療機関の調整、
先進事例等の情報収集を行い、
す。そして、さらなる会員間の交流を促進するた
今年度は、地域協議会の設置、医療機関への参加
め、平成 16 年度からは病診連携親睦ゴルフ大会
呼びかけ、全体会議との連絡調整、導入システム
等を行っております。
を取り扱う関連業者の決定、
システム設計を行い、
少しだけ県外に話を向けますと、下関市は九
平成 25 年度には、システム構築を行う予定であ
州に隣接していることからも、九州地区との連携
ります。このシステムを地域医療の連携情報にお
を深め、九州首市医師会連絡協議会・九州地区医
いて、有効活用するために、実際の医療現場に役
師会立共同利用施設連絡協議会にメンバーの一員
立つようなシステムの構築を目指します。
として参画し、さまざまな会議等を通じ、情報交
また、当医師会は、会員間の交流と親睦をは
換を行っております。
かるため、野球部・ゴルフ部など、運動部・文化
当医師会は、公益法人制度改革に対応し、来
部の各種同好会があり、野球部は、会員間の交流
年 4 月に一般社団法人への移行認定を得るため
以外にも、三師会及び行政の親睦を深めることを
申請中であります。これからも当地をはじめ、地
目的に大会を開催する等、活発な活動を行ってお
域医療を支えていく医師会として、将来を見据え、
ります。さらに、例年、秋季には文化の日の行事
医師会活動を行う所存であります。
として、会員のみならず、会員家族・職員等から
[ 下関市医師会
広報担当理事
安藤
彰]
も出展を認めている文化祭を開催、
優秀な作品は、
自動車保険・火災保険・積立保険・交通事故傷害
保険・医師賠償責任保険・所得補償保険・傷害保険ほか
株式会社損害保険ジャパン 代理店
共栄火災海上保険株式会社 代理店
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
平成 24 年集団指導
常任理事
本年の集団指導も例年どおり、山口県医師会、
萬
忠雄
レス、立会をした県及び市医師会の役員の労力、
中国四国厚生局、山口県の3者の共同により合同
徒力は並大抵ではない。会員におかれては、複雑
開催された。県医師会からの集団指導の対象者に
な保険診療ルールの中身についても、日頃からあ
ついては、郡市医師会保険担当理事協議会で協議
る程度、職員に理解してもらうことも必要であり、
した結果、今年から全会員を対象とするものでは
また、職員の退職にあたっては可能な限り摩擦の
なく、隔年参加方式とすることにした(以前も実
ないよう対応する必要がある。
施されたことあり)
。
8 月 23 日の集団指導では、指導医療官から保
中国四国厚生局の集団指導の対象者は、高点
険診療について、具体的かつ丁寧な指導、説明を
数による集団的個別指導の集団部分が含まれ、そ
いただき、「これで個別指導は怖くない」と感じ
の実施は今年で 2 回目となり、病院 8 施設、診
られたことと思う。これからの保険診療、カルテ
療所 56 施設の計 64 施設へも案内が届いている。
記載、レセプト請求のバイブルとして活用いただ
昨年、この中国四国厚生局の集団指導への出席
くことを望むところである。
を拒否された医療機関が1施設あったが、その施
本年 4 月、医療保険と介護保険の同時改定が
設は規定により今年度個別指導の対象となってい
行われたが、この内容は、団塊の世代が後期高
る。集団指導への出席は、年に 2 日間開催する
齢者となる 2025 年には、年間死亡者数が現在の
うちの都合のよい日に出席すればよいので、今年
110 万人から 160 万人になることの対応の第一
は1施設も出席拒否がないことを願っている。県
歩ということである。われわれ団塊の世代にとっ
個別指導は全保険医療機関の概ね 4%を指導対象
ては、一抹の寂しさを感じるところである。
として選定される。選考過程はブラックボックス
今改定では、入院中の患者の他医療機関への
であるが、選定の基本は「情報と再指導」を優先
受診について緩和されたとのことであるが、療養
とし、これで 4%に達しないとき、残りを高点数
病床入院基本料を算定している場合はほとんど緩
順に選定することとなっている。今年度は病院 8
和されておらず、受診抑制が引き続き起きる可能
施設、診療所 41 施設、計 49 施設の予定である。
性がある。今後も日医を通じて、平成 22 年改定
選定理由で注意が必要なものは「情報」である。
前に戻すよう努力していく。また、入院基本料の
審査機関からの情報もあるが、近年、内部告発が
栄養管理実施加算 12 点が廃止され、これが入院
非常に重い存在となっている。つまり、退職させ
基本料、特定入院基本料に包括され、11 点引き
られた職員の内部告発により、1医療機関が監査
上げとなったが、結局は 1 点の引き下げである。
の対象となり、10 か月(延べ 19 日間)に及ぶ
有床診では管理栄養士の手配ができない場合は、
調査が行われた。行政処分はまだ決定されていな
平成 26 年 4 月には入院基本料そのものの算定が
いが、監査を受けた医療機関関係者の精神的スト
できなくなる。日医は元の加算方式に戻すと言っ
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
ているが、地方からもしっかり意見を言い、日医
意書を安易に交付しない」ことである。このこと
を支え、中医協及び厚労省との交渉が有利になる
は「柔道整復・鍼灸等の施術への同意書交付につ
よう努力したいと思っている。
いて」(4 月 26 日)の事務連絡により、会員へ
柔道整復、鍼灸及びマッサージに支払われて
周知しているが、患者さんへも「保険が使用でき
いる療養費は、平成 22 年度には 4,900 億円余り
る条件」を理解していただくため、近くポスター
に上っている。これらの施術が保険医療費の対象
を作成し配付する予定である。また、中国四国医
となることは不思議であるが、政治的な関係もあ
師会連合総会へも議題として提案し、日医を通じ
るよう聞いている。しかし、これ以上野放しには
て厚労省に善処するよう働きかけていく。会員に
できない。審査の適正化、不正、不当請求に対し
おかれても、医師の同意書がない状況で保険を使
ては厳罰化が望まれるが、鍼灸及びマッサージの
用している等、不正、不当請求が疑われる事例が
療養費請求に対しては、驚くことに保険者の事務
あれば、県医師会に連絡願いたい。大切な保険財
点検だけで支払いが行われており、第三者による
源を不正に使われないため、会員の皆様の協力を
審査はなく、不正請求の存在が噂されても指導、
よろしくお願いする。
監査の規定もない。唯一できることは、
医師が「同
2012 年(平成 24 年)9 月 28 日 2191 号
■ 有床診の入院基本料の検討を要請
■ 医療基本法制定へ 12 月 22 日にシンポ
■ 日本医師会赤ひげ大賞の概要を説明
■ 「55 年通知」による適応外使用で通知
■ 転棟時の褥瘡などで Q&A
■ 医療事故報告件数が頭打ちか
2012 年(平成 24 年)9 月 25 日 2190 号
■ 日医と四病協、原則課税で 横浜宣言
■ 地域ニーズへの対応、各医師会が重要
■ 回復期リハ新入院料 1 、届出は 140 施設
■ 医師数の適合率は 91.8%
■ 有老ホームの多剤併用、原因調査へ
■ 調剤ポイント原則禁止で通知
■ 今年の医師国試、受験生の満足度高く
2012 年(平成 24 年)9 月 21 日 2189 号
■ 一体改革関連「総選挙後に再検討を」
■ 「赤ひげ大賞」創設
■ 医療分野個別法の報告書公表
■ 大震災の特例、来年 3 月末まで再延長
■ 中 1・高 3 の麻しん定期接種、終了へ
■ 光源コードによる熱傷で注意喚起
■ マイコプラズマが例年以上に流行
2012 年(平成 24 年)9 月 14 日 2188 号
■ 「入学定員増で対応」を高く評価
■ 医療分野個別法へ、報告書案を大筋了承
■ 時間外対応加算、届け出は3割
■ 成り済まし医師問題、免許確認の徹底を
■ 防災功労者表彰、日医など 5 団体が受賞
2012 年(平成 24 年)9 月 11 日 2187 号
■ 国民会議の設置、政局に翻弄
■ 2025 年度、在宅医療の提供目標 29 万人
■ 肺炎が 3 位に、53 年ぶり三大死因変化
■ 最終報告へ後半戦の議論を開始
■ 特別重点要求で医療イノベに 210 億円
■ 震災復興、ICT 推進を柱に
2012 年(平成 24 年)9 月 7 日 2186 号
■ 地方交付税の遅れ、地域医療へ影響懸念
■ 厚労白書の意識調査、結果に疑問
■ 窓口負担に関する調査結果を公表
■ 新専門医「日医生涯教育の活用を」
■ 消費税問題の解決を要望、三師会で一致
■ 「医師法第 20 条ただし書き」で通知発出
2012 年(平成 24 年)9 月 4 日 2185 号
■ 「高額投資」
、手当ては税金で
■ 中期財政フレームを閣議決定
■ 予算執行抑制「社会保障は対象外」
■ 新専門医制度に関する中間まとめ公表
■ 将来の不安「医療や介護」45.0%
■ 「経過措置 7 対 1」算定は約 3 万床
849
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
今
今月
月の
の視
視点
点
医療者のためのコミュニケーションスキル
〜メディカル・サポート・コーチングを中心に〜
常任理事
林
はじめに
Development of Executives
いま医療界に最も求められている能力とは何
であるとお考えですか?
We can not have communication because we
are busy.
弘 人
But, we have to have communication
because we are busy.
−臨床や研修・教育の現
場でよく耳にする言葉です。日常診療における患
という著書の中で、
「マネジメントの中心は人間であり、人間中心の
マネジメントの中でコーチングは重要なスキルで
ある」と記しています。1990 年代に入り、アメ
リカを中心にコーチの養成機関が相次いで設立さ
れ、多くのコーチがビジネスシーンに活躍の場を
広げていきました。
者さんとの関係、コ・メディカルや研修医との関
コーチングとは、その人の中に眠っている答
係において、コミュニケーション能力がとりわけ
えを引き出し、自発的行動を促していくコミュニ
重要であると考えられます。
ケーション法であると言われています。コーチン
8 月 25 日・26 日に山口市で第 4 回臨床研修
グの基本理念として、
「人は、無限の壁をこえら
医交流会が開催されました。グループワークの
れる可能性を持っている」、
「人は、必要とするリ
発表の中で、臨床の現場において最も重要なこと
ソース(答え)を自分の中に持っている」という
として、 誠意 、 傾聴 、 コミュニケーション
ものがあり、相手の能力を最大限に引き出し、自
などが挙げられていました。
発的な行動を促進するためのコミュニケーション
今回は、医療現場向けコミュニケーション法
スキルとして確立されていきました。
多くの場合、
として注目されているメディカル・サポート・コー
目標を達成したり、障害を打開するための答えや
チングをご紹介したいと思います。
能力・やる気はその人自身が持っていると考えら
れています。それを引き出し、相手の自発的な行
コーチングとは
動を促進するのがコーチングの基本です。ですか
「コーチ(Coach)」という言葉が登場したのは
ら、分析、アドバイスや指導を目的としたコンサ
1500 年代と言われています。もとは「馬車」と
ルティングや、精神的ケア、身の上相談を目的と
いう意味で、そこから「大切な人をその人が望
したカウンセリングとも異なります。心理学、接
むところまで送り届ける」という意味が派生し、
遇学、成功哲学、行動科学、行動心理学などがミッ
ing
を付けた造語として誕生しました。マネジ
クスされた総合的なソーシャルスキルとして確立
メントの分野でこの言葉が使われるようになっ
されており、それは 100 以上のスキルとして簡
たのは 1950 年代で、当時ハーバード大学助教
潔に纏められており、ビジネス・医療・福祉・教
授だったマイルズ・メイスは、 The Growth and
育ほか日常の対人関係など幅広く現場で実践され
850
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
ています。
コーチングは取り組むテーマ、コーチやクラ
第 1826 号
ポジション」のスキルといいます。①まず心
を「真っ白なキャンパス」にする。②聴きな
イアントの個性などによって多様なやり方で行わ
がら考えない、評価しない。③話し終わるまで、
れますが、いずれの場合も共通するのは、「イン
言葉を挟まない。④否定的接続詞を使わない。
タラクティブ(双方向性)
」
「オンゴーイング(現
⑤沈黙も利用する。ここで心を「真っ白なキャ
在進行形)」「テーラーメイド(個別対応)」とい
ンパス」にするというのは、相手のこと、会
う 3 原則に則って行われることです。
話の内容について、できるだけ事前に先入観
をもたないというものです。この他にも「相
メディカル・サポート・コーチングとは
メディカル・サポート・コーチングとは、一般
づちと頷き」、「オウム返し」のスキルなどが
あります。
にはビジネス向けであるコーチング理論に心理学
等の手法を加え、現場の医療者としての経験を活
かして、精神科医であり執筆家としてもご活躍中
2) 質問する
質問は「オープン型」、「肯定型」、「未来型」
の奥田弘美先生が医療者向けにアレンジし、体系
でというスキルがあります。クローズ型質問
付けし直したものです。
ご高著、
医療者向けコミュ
は、「はい」「いいえ」で答えが終了してしま
ニケーション法「メディカル・サポート・コーチ
うもので、オープン型は、「はい」「いいえ」
ング入門」の中で、
医療現場ですぐに役立つコミュ
で答えられない質問です。未来型&肯定型質
ニケーションスキルをわかりやすく、実践的に解
問というのは、未来に焦点を向け、ポジティ
説されています。
ブなイメージを促すものです。
メディカル・サポート・コーチングのコア・スキル
メディカル・サポート・コーチングにおいて、
3) 伝える
同じことでも、伝え方によって受け止めら
コミュニケーションの際もっとも中心となるコ
れ方が違ってくるのは当然で、コーチングで
ア・スキルは、
「聴く」
、
「質問する」
、
「伝える」
は伝えるためにも有効なスキルが確立されて
の 3 つであると提唱されています。
います。その中の代表的スキルが、「メッセー
ジは I で伝える」というものです。メッセージ
1) 聴く
には、YOU メッセージと I メッセージがあり
メディカル・サポート・コーチングでは、「聞
ます。YOU メッセージでは、「あなたは」が主
く」と「聴く」を明確に区別しています。「傾
語になり、I メッセージでは、「私は」が主語
聴」という文字の「聴く」は、相手にベクト
になります。たとえば、YOU メッセージでは、
ルを向けた聴き方で、
「ゼロポジション」とい
「あなたは仕事が早いね」という言い方をしま
うスキルを用います。普段の会話を振り返っ
すが、I メッセージでは、「あなたの仕事が早
てみましょう。①話に臨む前から「こういう
いので助かっています」という言い方になり
流れにもっていこう」と決めている。②話を
ます。日常の会話では YOU メッセージを使う
聞く前に、相手のことや会話内容をイメージ
ことが多いと思いますが、時と場合によって
してしまう。③会話中に相手が間違っている
は評価されている、決めつけられているといっ
と思うと、説得してしまう。④相手の話で何
た印象を与えてしまう可能性があり、100%の
が言いたいのかわかってしまい、話の途中で
気持ちが伝わらないことがあると言われてい
話し出す。⑤沈黙が続くと気まずくなって、
ます。一方、I メッセージでは、あなたによっ
口を出す。これらは、通常私たちが会話の際、
て、「私がどう感じたか、どのような影響を受
自然にしている聞き方です。コーチングで「聴
けたか」を伝える言い方で、私が感じたこと
く」というのは、これと全く逆の心掛けで会
なので相手は否定のしようがありません。こ
話に臨むというものです。その状態を「ゼロ
の他にも「承認する」、「枕詞を使う」、「要望
851
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
今
今月
月の
の視
視点
点
する」、
「一時停止」といったスキルがあります。
外来などの患者支援、医療スタッフとのコミュニ
ここでいう「承認する」というのは、相手を
ケーションなど、あらゆる医療現場で応用が利く
認める気持ちを積極的に伝えるということで、
ことでしょう。日々の診療のみならず、ご家庭で
一言でいうと「褒める」ということです。山
も奥様や旦那様、お子様との会話においても、絶
本五十六の言葉に「やってみせ、言って聞か
大なる威力を発揮することでしょう。
せて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。
今回は紙面の関係で、コア・スキルのみのご紹
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、
介となりました。さらに実践編として、第1段階「マ
人は育たず。やっている、
姿を感謝で見守って、
イゴールの設定」、第2段階「アクションプランを
信頼せねば、人は実らず。
」という名言があり
作る」、第3段階「行動をサポートする」といった
ますが、まさにこの「褒める」
、
「承認」とい
ものがあります。メディカル・サポート・コーチ
うものでしょう。
ングについて興味のある方、もっとお知りになり
たいと思わる方は、是非、医療者向けコミュニケー
以上、簡単にメディカル・サポート・コーチ
ングのコア・スキルを纏めてみました。メディカ
ル・サポート・コーチングとは少し離れますが、
ション法「メディカル・サポート・コーチング入門」
をご一読くださいますようお願いいたします。
最後に、診察室での一言、 DOOR
KNOB
視線の合わせ方や座り方(正面、90 度、横に座
QUESTION
る、また相手との距離)なども重要な因子となり
れは、診療の終わり、あるいは患者さんが診察室
ます。とくに最近は電子カルテの普及で、患者さ
から出ていかれる直前に、「何か言い忘れたこと、
んの方に目を向けないで画面だけを見て会話をす
お聞きになりたいことはありませんか?」と問い
るといったクレームをよく耳にします。どんなに
かけるものです。患者満足度向上に効果的なアク
良い医療を提供していても、これでは患者さんの
ションといわれております。
満足度も低下してしまうのではないでしょうか。
をご紹介しておきます(図 1)
。こ
良好なコミュニケーションにより、少しでも
医事紛争防止に繋がれば幸いです。
おわりに
臨床の現場で、すぐにでも役に立つコミュニ
参考文献:
ケーションスキルとして、メディカル・サポート・
奥田弘美+本山雅英、医療者向けコミュニケーショ
コーチングをご紹介いたしました。いかがでしょ
ン法「メディカル・サポート・コーチング入門」
うか。これは、糖尿病や生活習慣病あるいは禁煙
図 1.
DOOR
KNOB
(株)日本医療情報センター
QUESTION
DOOR
KNOB
QUESTION
「ほかにありませんか?」
「あのぅ・・・、
実は・・・」
患者満足度の向上に
最も効果的なアクション
852
2003
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
冬季特集号「炉辺談話」
原稿募集
山口県医師会報平成 24 年度冬季特集号「炉辺談話」の原稿を募集します。
下記により、ふるってご投稿くださいますようお願い申し上げます。
原稿の種類
①随筆、紀行、俳句、詩、漢詩など
②写真(カラー印刷)
※写真等ありましたら1〜2枚添付してくださるようお願いします。
③絵(カラー印刷)
④書(条幅、色紙、短冊など)
字
数
提出・締切
1 ページ 1,500 字 (1 〜 2 ページ ) を目安に、特に長文にならないようお願いします。
可能であれば、できるかぎり作成方法①②でご協力願います。
作成方法により、締切日が異なりますのでご注意ください。
作成方法
提出方法
①パソコンで
電子メール 又は フロッピー /CD-R の郵送
作成の場合
②ワープロ専用機で
フロッピーの郵送
作成の場合
③手書き原稿で
郵送
作成の場合
原稿送付先
〒 753-0814
締切
12 月 3 日
11 月 27 日
山口市吉敷下東 3 丁目 1 番 1 号 山口県総合保健会館 5 階
山口県医師会事務局
広報情報部
E-mail:[email protected]
備
考
①未発表の原稿に限ります。
②投稿された方には炉辺談話3部程度を謹呈します。
③写真や画像の使用については、著作権や版権にご注意ください。
④医師会報は県医ホームページにも PDF 版として掲載いたします。
853
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
第 25 回全国有床診療所連絡協議会総会
メインテーマ
新しい有床診のあり方〜無床化した診療所からの提言〜
と
き
ところ
平成 24 年 7 月 28 日(土)・29 日 ( 日 )
シーガイア・コンベンションセンター
[ 報告:専務理事
総会初日については、平成 24 年 9 月号医師会報
812 頁〜 816 頁に掲載。
河村
康明 ]
いし、非常勤でもかなり難しく、今まで通りの加
算の方式が望ましい。他医療機関への紹介により
入院基本料 30%減算は論外である。回復期リハ
総会 (2 日目 )
ビリに関しては加算が必要と考える。また、認知
シンポジウム「新しい有床診のあり方〜無床化
症加算は必要と考えている。
した診療所からの提言」
総合司会
准看護師は即戦力である。准看→正看の人が
宮崎県有床診療所協議会専務理事
宮崎県医師会常任理事
座長
立元祐保
全国有床診療所連絡協議会専務理事
鹿子生健一
宮崎県有床診療所協議会副会長
50%いるので養成は大事である。
医療法人は継続性が大切で、持分有りの相続可
能に対しての税負担の軽減などで検討が必要とな
るが、ハードルが高い。今後の対応としては、位
置付けとしての有床診療所が必要であろう。
川野啓一郎
シンポジスト
基調講演 「有床診療所を巡る問題点と今後の
対応について」
(1)「有床診療所の存続を考える」
日本医師会総合政策研究機構主席研究員 江口成美
日本医師会常任理事
藤川謙二
48 時間ルールの撤廃、基準病床化、ショート
本年度より主担当となり、葉梨会長が副担当
ステイ機能化など、徐々に有床診に関して変更が
で支えてくださることになった。労災自賠責を
なされている。さらに、後方支援病床としての評
20 年間やってきたが、整形外科も有床診が多く、
価・在宅医療・看取り・終末期・緩和ケアなどに
48 時間条項は外されたが、ベッド規制がかかっ
改定が行われた。
ているので厳しい環境にある。有床診療所を営む
このように医療にかかわるサービスが多岐多
先生方が安心して地域医療で働ける場を築き上げ
様になってきているので、病床の使い勝手もよく
ていきたい。
なってきた。また、地域包括ケアシステムの中で
急激な医療技術の発展で急性期の有床診が成り
立たなくなり、
大病院志向となっている。しかも、
外来黒字・入院赤字の傾向が強く、夜勤看護師の
不足がベッドの無床化となっている。
今年の診療報酬改定では、有床診に緩和ケア加
算、看取り加算がついただけで、ほとんど他はつ
の有用性は、国の審議会での理解も高まっている
ように思われる。
①継承について;有床診の院長の高齢化が進ん
でいる。
②国民の認知度が低い;有床診の意味を知って
いる人が国民の 2 割しかいない。
かなかった。今一番課題となっている入院基本料
有床診のうちの 3 割は入院をせずに、他の分
の栄養加算は管理栄養士を常時雇用するのは難し
野に活用しているところが収益が一番良いという
854
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
現状がある。無床化を有床化に戻す方策として、
器外科を専門にしているが、全麻の手術例は減少
病床過剰地域においても有床化を復活することが
している。大病院志向と完全看護を希望されるた
できれば 3 万床に戻ることも夢ではないが、設
め手術症例の減少がおこった。また、腹腔鏡の発
立条件のハードルが高く、一考が必要であろう。
達をその要因としてあげられる。今後、在宅医療
一般的に緩和ケア・終末ケアを行えば、経営は悪
を進めていくにはバックアップの確保としての有
化する。診療所での死亡は全国の 2.4%にしかす
床診が重要であり、在宅支援診療所の機能も有す
ぎず、さらなる努力が必要であろう。今後につい
ることができて、その存在は必要と思われる。
て述べると、休床施設を除けば、病床利用は医療
療養病床では 70 〜 80%に及んでいる。看護職
(4)「国民に必要な有床診療所」
宮崎県議会議員 ( 医師 )
員の確保は地域差もあるが、准看護師の養成も一
清山知憲
つの方法である。さらに医師の確保の面では女性
入院基本料や看護職員の確保など、制度上の問
医師の有効的な働きも参考となる。外来に関して
題の他に国民の間に有床診を理解してもらうこと
言えば、在宅医療や訪問看護の複合型サービスへ
が大切であると認識している。有床診ということ
の展開が考えられるが、入院部門ではさまざまな
ばは地方議員の人々でもほとんど知らないので、
加算とともに入院基本料の検討が必要であろう。
情報提供・密接なコミュニケーションが必要であ
る。昨年の有床診の大会で有床診の名称を変えよ
座長 入院をしない有床診が利益率が一番高いと
うと提言されておられたが、国民の分かりやすい
いうのは考えさせられることであった。
名称への変更には同意する部分がある。日医総研
の調査では国民の希望は、①夜間休日の診療体制、
(2)「絶滅危惧種としての有床診療所の再興を
願って〜無床化への道程〜」
(医)ケーンズ会山村内科院長
②高齢者の医療などであり、政治家もまた、そう
いう部分に目がいくのである。在宅療養支援診療
山村善教
所として 35.8%の有床診が活躍されており、有
宮崎県では無床診は頭打ち、有床診は確実に
効性を示しているので、国民の視点に立った有床
減っている。自院無床化に至った理由は入院患者
診のあり方を地方議員も含めて、情報提供をお願
数の減少や看護師の不足が主因であり、医療の進
いしたいとされた。
歩なども関連している。外総診や医療療養病床な
どにも取り組んだが、入院部門が黒字になったこ
(5)追加発言
宮崎市健康管理部部長
とはなく、外来で補填してきた。
伊東芳郎
自身は神経内科であり、パーキンソン病患者が
国の施策として 48 時間規定は大きな制約で
入院すると薬剤費が問題になる。特に抗てんかん
あったと思う。48 時間規定の撤廃と同時に病床
剤を使用するとパーキンソン病では高薬価となり、
規制の対象となったり、種々の縦割りの委員会が
薬価の決定上、問題があると思う。種々の問題は
必要となった。宮崎市の有床診は 75 施設で、稼
あるであろうが、専門化することも一つの要件だ
働しているのが 65 施設である。まだ頑張ってい
と思うし、また、複数で行うことも重要である。
ただいているという思いがあるが、産・整形・眼
科で 50%を超えており、専門性が重要なポイン
(3)「無床化した診療所からの提言(消化器外
科として)」
いるが、1 億円の赤字を出している。補助も病院
ひだか胃腸科医院 院長
一般病床(19)→
トになっている。宮崎市は小児の有床診を有して
日髙健太郎
療養(6)一般(9)→
一般病床(15)と時代の変わり目で病床数の変
向けがほとんどで、診療所に対してはない。医師
の高齢化も問題であり、特に産科は宮崎では緊急
の課題である。
更を行政の指導で余儀なくされ、7 対 1 看護の開
開業医の役割は地域保健全般にかかわっている
始以来、看護師の補充が困難になっている。入院
のに、国は勤務医側に偏っているかもしれない。
は平均 9.4 人で、入院収入は赤字であった。消化
地域密着型として有床診などが中小病院とともに
855
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
その有用性をパッケージとして考えても良いと思
座長
う。診療報酬の話の前に整理しておく必要がある
かせていただいたが、建物は立派だし、条件が整
のは、以下のことである。
えば有床診として再開されるでしょうか。
・病床規制(日本が参考にしたフランスでさえ
演者
20 年間で病床規制が無くなった)
感がある。2 名以上の方が良いと思うが、自分の
→宮崎県の場合は産婦人科のみ増床を認めてい
今回、2 名の先生方に無床化の生の声を聴
気力は衰えているし、行政に対しての不信
ところの再有床化はない。
る。(国では特例病床として穴を開けてあるの
に、地方に下りると禁止になってしまう)
・(何故、19 床なのか?)
(1 名の医師が何人持
座長
無理して有床診をするのではなく、余裕を
もった有床診を作るべく活動していきたい。
てるか?)病床数の検討・検証は必要である。
・地域に密着した病床(宮崎では産婦人科は別枠
木村 ( 岡山 )
で考えないと待っている時間はない)の意味を考
ればカタカナの付いた名称、例えば「入院クリニッ
える。
ク」など提言したい。
ディスカッション
佐藤 ( 長崎 )
宮崎県医師会
るが、何とかしてほしい。
産科医療において、宮崎県では一
次(有床診など)→二次周産期
有床診を分かりやすい名称、でき
診療報酬の改定の度にしばりを作
→三次周産期(大
学・県立病院)の救急搬送システムを作り、分散
伊東
型のネットワークを形成した。30 分以内で上位
てくることがあるが、現場に即したものが重要で
施設に移ることができるし、一次から二次は全員
あろう。
検証や日医の要望にのらなかったものに出
受け入れることになっており、周産期死亡率も低
特別講演「日本医師会が考える有床診療所の今後」
い。
日本医師会長
継承できなければ無床化になるし、この 12 、
3 年、宮崎市内で新規開業は無い。新しい継承の
座長
横倉義武
第 25 回全国有床診療所連絡協議会総会
方法が必要である。女性医師が増加しているので
会長 / 宮崎県医師会長・日本医師会理事
ワーキングシェアは必要であり、医師数の増加に
稲倉正孝
関してはもう少し時間が必要である。
日本医師会は「継続と改革」「地域から国へ」
の 2 点をテーマにしている。即ち、国民皆保険
質問
管理栄養士問題が解決されなければ、どう
対応されるのか。
制度が昨年 50 年をむかえたが、これを堅持して
いくことである。そして、医療現場からの声を集
約していくことであり、国民の生命を守る専門集
藤川
この 2 年間で確実に解決して、以前の加
団ということを訴えていくことが大切であろう。
算の形に戻すことで、一次医療が破綻しなくなる
さまざまな医療の形態として有床診療所が必然で
ようにしたい。
あり、維持されていることを主張していく。現在
はさまざまな医療団体をまとめて、医師会として
座長
救急搬送受入加算として、有床診が規定さ
れていないのはいかがか。
主張していくための団結が必要とされている。ま
た、その意識をもっていく。地域での看護師の養
成は定着率もよく、是非協力願いたい。
藤川
在宅の搬送が救命センターに入る時は、有
日本医師会の問題として、TPP の問題に関し
床診がフォローしてほしいし、加算が受けられる
ては国民皆保険の体制を崩される恐れがあること
ように中医協で対処していきたい。
で反対している。さらに地域医療の再建であるが、
地域医師会が主体であり、常に世代交代の準備が
856
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
必要であり、ボトムアップ構造が重要である。医
第 1826 号
質問
療に関しては、質・コスト・アクセスを整備する
島根(出雲市)から保険外の適応(変形性股関
ことが必要である。年間あたり 1,300 人の医師
節にヒアルロン酸注入)についての質問があった。
数の増加に対して、地域偏在があり、また、診療
広島より、2025 年問題の中での有床診の位置
科別にも偏在がある。日本の医療評価はかなりの
づけについての質問に対し、地域包括ケアの中で
部分が良好であるのに自己評価のみ悪く、健康診
支援センターの中に中核となるよう働きかけてほ
断率の低下に反映されている。一方で、診療所の
しいと回答があった。
医師自体もプライマリーケアの系統的な学習形態
を希望されている。
総括
地域医療の重要点は行政への具申とともに、さ
全国有床診療所連絡協議会会長
まざまな業種との連携が必要となろうが、医師会
日本医師会常任理事
が中心になっていく必要がある。さらに、かかり
葉梨之紀
本日は具体的な講演をいただいた。国(財務省)
つけ医機能の充実が叫ばれる。25 年度の 5 疾病
の要求は低コストであるが、医療を提供するとこ
5 事業保健計画では、診療所の機能が重要である
ろが振り回される。しかし、社会的要求に沿わな
と主張していただきたい。
ければ成立しない。各称を含めて、国民にも有床
地域の有床診療所については、高齢者が一番増
診のことを説明する必要があり、また、連携をとっ
加する 2025 〜 2030 年の対応として、有床診の
て、医師会が間に入って話し合いをしたい。今は
位置づけが大切になるので、各地域特性でその機
規制が強すぎるのかとも思う。アメリカが大恐慌
能を重視していきたい。特に終末期医療には取り
のあと、国民医療費が多くなった時代があり、日
組んでいかなければならない。また、複数で取り
本ではある程度自由さをもった規制が必要かと感
組んでいく有床診のあり方を追求していくことも
じている。
重要であろう。
今後に向けて、有床診の病床の運用が地域住民
に大切となっているので、在宅医療の面でも有床
診の役割は重要であると主張したい。さまざまな
意見を集約していくことが入院基本料につながっ
ていくので、頑張っていきたい。
857
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
山口県医師会警察医会第 11 回研修会
と
き
ところ
平成 24 年 7 月 21 日(土)15:20 〜
山口県医師会 6 階大会議室
講演・本文監修:山口大学大学院医学系研究科
法医・生態侵襲解析医学分野(法医学教室)
教授 藤宮龍也先生
報告:萩市医師会
山口県医師会警察医会副会長
松井
健
平成 24 年 7 月 21 日(土)
、山口県医師会 6
階大会議室において、山口県医師会警察医会第
11 回研修会が開催された。本報告はこの研修会
の報告である。
進行は専務理事の河村康明先生が務められた。
座長は山口県医師会警察医会会長天野秀雄先
生が務められた。
今回の研修会から、海上保安庁の方々にも研
修会に参加してもらうことになった。
藤宮教授の経歴が紹介された。
法医学とは公正な科学的鑑定を目指す応用社
会医学であり、死因究明と再発予防が二大目的で
本日は「死体検案特論―事例を中心に―「損傷
論1」」を講演する予定であったが、
「死因究明二
ある。再発予防のウェイトが軽んじられていると
思われてならない。
法」が平成 24 年 6 月 15 日に国会で成立した。
この内容は非常に重要なものが含まれているの
スライド提示
で、本日は予定を変更して「死因究明二法」につ
死因究明の方では、死体検案書を作成する。
いての講演を行う。
死体検案書のまん中あたりに、死亡の種類を
自分が 10 年近く主張してきたことが、この法
案が成立したことにより現実のものとなり、これ
からは第二段階というか、この法律成立以降の活
動をしないといけないと思う。
警察活動協力医の先生方に法律の内容を理解
していただきたい。また、警察の方、海上保安庁
の方にも今までの経過がどのようなものであった
のかを理解していただきたいと思う。
858
書く場所があり、ここを巡って法医学がいろいろ
な活動をする端緒になる。
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
死亡原因は、原死因と直接死因に分けられて
第 1826 号
外因死は細かく分類されている。
いて、直接死因は、( ア ) 直接死因、
(イ)
(ア)の原
外 国 で は、「 病 死 及 び 自 然 死 」、「Unnatural
因、(ウ)(イ)の原因、
(エ)
(ウ)の原因と死因が並
Death」、「不詳の死」の 3 つを診断するのが臨床
べられて、死因の因果関係を判断していくのが法
医の仕事である。ところが日本では、臨床医に外
医学の重要な仕事である。
因死の詳細を決めさせる制度になっている。その
ためには警察に異状死体の届出をして、警察とと
もに、2 から 12 までをみていく必要があるのが
現状である。
このことは別に制度として決まっているわけ
ではないが、医師法、刑事訴訟法、検視規則、死
体取り扱い規則等の個別の法律や規則を総合的に
解釈するとこのようなことになるのである。
自分が外国にいって驚いたのは、日本と違っ
てこれらのことが一つの法律で規定されているこ
とである。日本の場合はそれぞれがバラバラに規
定されていて、まとめ上げると一つの形になると
いうことである。それはそれである意味合理的な
原死因が「病死及び自然死」以外のケースが「異
状死体」として取り扱われることになる。「異状
のかも知れないが、そのような形で現在も行われ
ているわけである。
死体」の定義は、
「確実に診断された内因性疾患
で死亡したことが明らかである死体以外のすべて
の死体」である。
その他に、
日本では明治以来、
「犯罪死体」と「変
死体」が定義されている。
一方、外国では「Unnatural Death」で異状死体・
変死体がまとめてある。
「Natural Death」以外は
いろいろな機関で死因を調べようということがス
タートとなる。
日本では、警察が外表所見から、
「犯罪死体」
なのか「変死体」なのかを当然のごとく見分けて
きているのが実情である。この点が、外国と日本
では大きく異なるのである。
日本法医学会が平成 6 年 5 月に、「異状死ガイド
ライン」を作成した。死因の種類を詳細に記載した。
859
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
「異状死ガイドライン」の中で、
「
【4】の診療
行為に関連した予期しない死亡、およびその疑い
があるもの」
、が日本医師会や日本中の臨床系の
第 1826 号
本日は海上保安庁の方々も参加されているの
で詳しく説明する。
死因の中で「異状死体」の占める割合は 16%で、
学会からけしからんとお叱りを受ける話になった
全体の 6 分の 1 程度である。多いと取るか少な
のである。つまり、診療中や診療直後における予
いと取るかは別として、それなりに存在するとい
期しない死亡は異状死体ではない、そのため医療
うことである。その内訳は、内因死、災害死、自
関連死で警察に届け出る必要はない。そもそもこ
殺、他殺、不詳である。他殺は 0.1%であり、ほ
の定義は日本法医学会が勝手に決めた定義であっ
んの少数である。
て、臨床サイドからはこのようなものは認めるわ
死因を調べるのは他殺のためではなくて、そ
けにはいかない、このガイドラインを廃止せよと
れ以外のよく分からない死因を調べることによ
いう話になったのである。現在でもこのガイドラ
り、後々のトラブルを防ぐ目的で解剖を行い、死
インの見直しを迫られている。
因を究明しようというのが外国の普通の考え方で
しかし、ここに大きな誤解がある。自分の留
ある。
学先では、患者が死亡して家族がその死因に不審
死因究明法が成立し、日本では第一義的には
な点を感じれば、直ちに検視官に連絡して解剖を
犯罪死を見逃さないために行うのだという考え方
してもらっていた。検視官は、
「医師がしっかり
であり、日本人は皆当たり前だと思っているであ
した治療を行っていたならば解剖して得をするの
ろうが、外国人にとっては不思議なことである。
は医師である。
」という。何故医師が検視官に届
外国では死因が分からないから解剖をするという
け出るかというと、検視官だと承諾がなくても解
非常にシンプルな考え方であり、犯罪死を疑って
剖を行うことが可能であるし、また、怖いのは弁
いるから解剖をするのだという考え方ではない。
護士である。医療サイドは、刑事事件が怖いので
自分も死因が分からないから解剖をするのだとい
はなくて、民事事件の方が怖いのである。民事訴
う考え方で良いと思う。
訟を想定して考えると、死因に不審な点があれば
解剖をしておいた方が医師にとって有利になるの
である。
このような考え方が英米では主流である。こ
の英米の考え方を日本法医学会が取り入れて作成
したのが、この日本法医学会のガイドラインなの
である。
山口県の状況である。山口県の死体取扱数を
年度別にグラフで示してある。自分が山口大学に
赴任してきたのは平成 12 年であるが、この頃は
死体取扱数年間 1,000 体、解剖数は年間 70 体〜
80 体であった。その後急激に増加し死体取扱数
2,000 体になった。現在も死体取扱数 2,000 体
以上を維持している。ただし、犯罪死や災害死が
増えたのではなくて、病死が増えているのが現状
860
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
である。典型的なのは孤独死である。
第 1826 号
戦後一貫して「監察医制度を全国へ」と言い
続けてきて、国民もそうなのだと思っているが、
スライド提示
現実は京都、福岡が廃止され、縮小の危険にさら
法医解剖数と死体取扱数である。法医解剖数は
されてきた。山口県では戦前の司法解剖を土台と
最高年間 180 体であったが、最近は 130 体位で
して、戦後の行政承諾解剖が小規模に行われてき
推移している。自分が赴任した頃よりは大分違っ
たのである。
た状況になってきている。
山口県と大阪市・大阪府の地域格差をみてみ
死因に関して日本法医学会がずっと言い続け
ると、大阪市は監察医制度があるので、解剖率は
てきたのは、監察医制度を全国に設置せよという
4.80%であるのに対し、山口県、大阪府はそれ
ことである。自分が法医学を始めた頃はこのこと
ぞれ 0.97%、1.21%である。大阪府は大阪市の
は当然であると思っていたが、カナダに留学して
高い行政解剖数を含むので当然高い値になるもの
から、これはおかしいことだと考えるようになっ
と考えられるが、全体でみると約 1%といったと
た。
ころである。
法医学者もこんな酷い状況は、監察医制度が全
国に普及していないせいだと言い続けてきたが、
そもそも監察医制度を全国に設置することは不可
スライド提示
平成 23 年の全国都道府県の死体取扱状況である。
能なことである。不可能なことを言い続けても意
警 視 庁: 20,943 体、臨 場 率 27.1 %、 解 剖 率
味がないことである。
18.9%である。
自分は大阪監察医務院に出務しているが、非
大 阪 府: 12,956 体、臨 場 率 28.3 %、 解 剖 率
常勤の法医学者で成り立っている。大阪の法医学
15.5%である。
者だけではなく、西日本のあちらこちらの法医学
山口県: 2,226 体、臨場率 52.1%、解剖率 4.9%
者が出務しているのが現状である。東京監察医務
である。
院も状況は同じである。東京監察医務院の常勤の
全 国:173,735 体、臨 場 率 36.6 %、 解 剖 率
法医学者だけでは足りないため、関東のあちらこ
11.0%である。
ちらの法医学者が出務して業務を行えている状況
である。
これを全国に広げていったらどうなるのかと
東京や大阪は監察医制度があるので解剖率は
高い。一方、山口県は、臨場率は高いが解剖率は
4.9%である。全国の解剖率は 11.0%であるが、
考えると、やはり不可能である。例えば山口県に
監察医制度のある解剖率の高い地域を含んでいる
監察医務院を設立するとなると、自分一人しかい
のでこのような値になるのである。監察医制度が
ないので一人で全部に対応することは不可能であ
ない県で解剖率が最小な県は、広島県の 1.8%で
る。
ある。
861
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
来年からは、
「犯罪死体」
「変死体(及びその疑い)
」
については、従来どおり「刑事訴訟法」で対応し、
「非犯罪死体」については「死因調査法」で対応
することになる。
3 分割方式である。警察が異状死体の届出を受
けてから、警察はまず、ご遺体を外表所見から視
て、「非犯罪死体」か、
「変死体(及びその疑い)」
か、「犯罪死体」かに 3 分類する。
自分が外国に留学して日本の監察医制度を含
「犯罪死体」の定義というのは、素人が見ても
む検死体制がおかしいということに気がつき、以
ご遺体にそれなりの所見があるものをいう。例え
来、機会があるたびに論文に書いてきた。日本に
ば、刃物が刺さったままである、血がたくさん出
は体系的な検死制度はない。ないのにもかかわら
ている、弾丸による傷が認められるようなもので
ずあたかもあるかのような考えを続けていること
ある。
自体がおかしいのではないか、というのが主旨で
ある程度犯罪死体が疑われるが、よく調べて
ある。
みないとはっきりしないようなご遺体が
「変死体」
である。
犯罪の疑いがなさそうなのが「非犯罪死体」で
あると、大体分けていく。
その後の対応がそれぞれ異なる。
「犯罪死体」の場合は、
「刑事訴訟法」で検証・
実況見分、いわゆる犯罪捜査が開始される。
「変死体(及びその疑い)
」の場合は、
やはり「刑
事訴訟法」で検察・警察による検視(司法検視)
が行われる。
「非犯罪死体」の場合は、歴史的にみると、戦後、
公安委員会が「死体取扱規則」を作成した。ご遺
体の取り扱いは警察が適しているであろう、将来
世界の解剖率である。解剖数/総死亡数でみ
的には法律を作らなければいけないのであるが、
ると、フィンランド 36 、イングランド+ウェー
とりあえず警察が行政検視として検視を行いま
ルズ 24 、日本は 4 である。ただし、異状死体数
しょうということになったのである。いつかは国
/総死亡数でみると、日本は約 16%である。
会でこの法律を作りましょうとなっていたものが、
日本の感覚からすると、犯罪死体が疑われる
50 年間放置され続け現在に至っているのである。
から解剖しましょうということになり、それでは
今回の「死因調査法」は「死体取扱規則」の法
フィンランド、イングランド+ウェールズは犯罪
律化と関連問題の条文化からなっている。つまり、
が多いから解剖も多くなるのだなと考えるが、そ
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
うではなくて、死因究明をしてその結果を社会に
察医制度があり、コロナー制度は田舎で行われる
還元しましょうという体制があるので解剖率が高
古い制度である。」と言われ続けた。
くなるのであって、したがって国民からも支持さ
れているのである。
本来はコロナー制度が制度的には優れていると
思われるが、犯罪が多過ぎるとコロナー制度では
対応が困難である。アメリカは犯罪が多いので監
察医制度の体制を取らざるを得ないというのが自
分の率直な感想である。
アメリカの体制を調べてみると、監察医制度
を採用している州、コロナー制度を採用している
州、その混合型を採用している州と 3 つに分け
られる。監察医制度を採用している州は、人口も
多く、犯罪も多い州であることがこれで分かって
もらえると思う。
自分はカナダに留学して、コロナー制度を勉
スライド提示
強した。コロナー制度は、もともとはイギリスで
カナダでも全部の州でコロナー制度を採
始まった制度であるが、コロナーという検視官が
用 し て い る わ け で は な く、 監 察 医(Medical
いて、基本的には彼らは法律家である。
Examiner)制度を採用している州もある。カナ
カナダでは、例えば、警察官とか法律家以外
ダでコロナー制度を採用しているのは、British
の他の職種の人がコロナーをやっている。どうし
Columbia 、Saskatchewan 、Ontario 、Quebec 、
て法律家がコロナーでないのかと尋ねたら、法律
New Brunswick 、Prince Edward Island 、Yukon
家は経済的な理由でコロナーになりたがらない。
Territory 、Northwest Territory で あ る。 一 方、
つまり、コロナーの給料よりは弁護士をやって得
監察医制度を採用しているのは、Nova Scotia 、
られる所得の方が多いため、基本的に弁護士等の
Manitoba 、Alberta である。これで分かるように、
法律家がコロナーを引き受けることはないのであ
カナダで監察医制度を採用しているのは、田舎
る。
で経済的に恵まれていない州である。都会で経済
この仕事の内容に一番慣れているのが警察官
なので、カナダでは警察官がコロナーになること
が多いのである。
コロナーの選出は州法で決まっており、裁判
的に余裕のある州ではコロナー制度を採用してい
る。
これは日本とまるっきり逆の状況で、自分は、
最初は理解できなかった。
官の選出と同じ様に、○×で選出されるのであ
る。イギリスと違って、カナダでは工夫をしてい
る。また、法律家が対応するものだと思っていた
が、国によっては行政機関の人がコロナーを勤め
ることがあり得るのである。実際に元警察官のコ
ロナーに会ってみると、さすがにご遺体の取り扱
いに慣れていて詳細もよく理解していた。
これは是非とも日本で紹介しようと思い、現
在紹介しているわけである。
スライド提示
自分がカナダでコロナー制度を勉強して帰国
してから皆さんに紹介すると、
「アメリカでは監
863
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
カナダの British Columbia 州におけるコロナー
第 1826 号
日本はアメリカのシステムがいろいろな所に入
の使命は法律で定めてあり、
り込んでいるので、犯罪被害者対策部門、虐待、
①公的記録のために行う、すべての突然死及び不
DV とかの専門分野へデータが送られ、そちらで
自然死に関する事実の究明。
処理するような形になっている。
②突然死ないし不自然死に至った場合と同一の状
況下で起こりえる死亡の再発予防。
が 2 大目標である。そのために、
①事実究明を行うものであり、犯罪性そのものの
究明を中心に行うものではない。
②地域住民のために中立の立場で業務を行い、そ
の様に見られるようにしなければならない。
③第一に死亡者並びに親戚・友人のため、第二に
地域社会のため、第三に行政機関等のために業
務を行う。
とある。
コロナー法で決められた報告すべき死亡例が
記載されている。
スライド提示
Recommendation である。Case 、Description 、
Recommendation の 順 で 一 例 ず つ こ の よ う な
フォーマットでレポートにまとめられる。
スライド提示
解剖の様子である。検死台の上のご遺体を解
剖しているのが女医で、刑事、鑑識の 3 名で対
応している。
調査部門、司法部門、予防部門、管理部門に
分かれている。調査部門は日本の警察と同じで法
科学検査、検案、剖検、継続調査を行う。
その結果が司法部門に回されて死因審査会、検
死陪審が行われるのである。
検死陪審というのは、
スライド提示
法医学者が現場に出動する。法医学者の鞄で
ある。検死に必要な道具がまとめてある。
イギリス系では法医学者がご遺体を動かしてよ
日本の現在の裁判員制度のように一般市民が選ば
いと許可を与えないと、警察官はご遺体を動かせ
れて、ある事件に関して死因を議論していく制度
ないのである。
である。
そ の 結 果 が 予 防 部 門 に 送 ら れ、 勧 告
日本はアメリカ式であるので、鑑識や警察官
がご遺体を動かす権限をもっている。
(Recommendation)が出されるわけである。こ
のような事故が二度と起こらないようにするわけ
である。この制度が重要である。
Medical Examiner(ME) では、司法部門、予防
部門を行う余裕がない。これらの部門は個別の委
員会を作ってそちらの方に回されるわけである。
864
スライド提示
症例である。頭部に 7 か所、腹部に 6 か所の
刺し傷を認める。解剖は 2 時間位で終わった。
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
ある。
日本の検死システムは、まず 3 分割法を行う。
その中で、司法検視、行政検視と分けていき、死
英米型が世界の中でも歴史が古く、一番しっ
因の決定は警察独自で行う。医師は死体検案書を
かりとしたシステムである。コロナー制度は西暦
作成し、統計のために死因を記載する。地方と監
1000 年頃から行われている。日本でいうと鎌倉
察医制度施行地区では全く異なるシステムが作動
時代である。コロナーの語源は、
「クラウナー」
(王
していて、日本の中ではいろいろなことが混在し
様の使い)が来て死体を視て死因を決定したとい
ているのが現状である。
うことであるが、この「クラウナー」が訛って「コ
ロナー」になったそうである。
日本が手本としたドイツは、犯罪死体のみを対
象とした検死制度であったが、第二次世界大戦後
はドイツもなるべく解剖する形を取るようになっ
た。日本の場合は戦前のシステムを維持しながら
監察医制度を導入したが、この制度は縮小傾向に
ある。
医療関連死のモデル事業が 5 〜 6 年前から開始
されたが、現在この事業は事実上のストップ状態
にある。そして来年度から新法医解剖が開始され、
今後大きく変わっていくのが日本の現状である。
一方、外国では「Unnatural Death」というこ
とで一本化が図られており、とにかく死因がわか
らなかったら検死の対象になる。検死の対象とな
る事例が列挙されており、それに則って検死が始
まるのである。日本の場合は法医学者が診る前に
警察が 3 分割法で進めていくのが現状である。
医療過誤の疑いは、
「変死体」なのか、
「犯罪死
体」なのか、
「非犯罪死体」なのか警察が悩みな
がら行っていくのであるが、外国では「Unnatural
Death」で検視官に届け出るのが要件になってい
る。世界の常識が日本では通用しないのが現実で
国によってコロナー制度も異なっている。オー
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
ストラリア、ニュージーランドは基本的に法律家
第 1826 号
察署長が決定することになる。
がコロナーを務める。弁護士や裁判官や法曹関係
者が就職先としてコロナーを選択している。そこ
で検死陪審として検死審問(Inquest)が行われ
ているのである。カナダでは医師がコロナーにな
ることもあり(トロント型)
、推薦選挙で警察出
身者がコロナーになることもある(BC 型)。アメ
リカは基本的に Medical Examiner で犯罪捜査が
中心になっている。
スライド提示
ニュージーランドに行った時の写真である。青
死因を判断することは実は非常に難しいことで
色の法衣を着ているのがコロナーである。裁判官
ある。ここに多くの誤解が生ずるのである。死因
は黒の法衣である。
の因果関係を考えると、刑事と民事と安全の基準
の因果関係は大きく異なるのである。刑事の場合
スライド提示
コロナー法廷である。コロナーがここに座り、
は、90%の疑いがあるならば疑わしいと考える。
民事の場合は、50%でも 51%でも、事例によれ
いろいろな事例を検討している。こちらの人は検
ば 10%でも弁護士が訴えてくることもあるが、
察庁関係のコーディネーターで、こちらが被害者
一応 51%の可能性があれば民事は十分に成り立
側の弁護士のコーディネーターで、いろいろな立
つ。それに対して医療安全は 10%でも疑わしかっ
場から検討しているのである。
たら検討されるわけである。ところが世の中では
この 90%、51%、10%の話がごちゃ混ぜで議論
されている。因果関係がどうかとなった時に、そ
れが刑事の基準なのか、民事の基準なのか、安全
の基準なのかで大きく異なるわけである。
最近の例でいじめの問題がある。「いじめによ
る自殺」で、現在、民事で訴えられている。「い
じめによる自殺」と言っているわけである。
「自殺」
と言っている以上、刑事的には「自殺」である。「い
じめによる他殺」というのなら、「他殺」かもし
れないが、基本的には「自殺」は「自殺」であろう。
これを実証するために、恐喝があったとか窃盗が
死因決定者はだれなのかと考えると、検案医な
のか、解剖医なのか、監察医なのか、それとも警
あったとか、いわゆる何がしかの罪状を調べてい
るわけである。刑事ではそのような話になる。
察や検察が決めていくのかという問題がある。自
一方、民事や医療安全、安全の基準で話をする
分は、イギリスのように検死委員会や検死陪審を
ならば、10%でも疑わしかったら何とかしましょ
行わないと決められないのではないかと思ってい
うという話になる。
る。
このようにある事例に対して、立場が異なれば
解剖処分については、司法解剖は裁判官の権限
結果が大きく異なってくる。これを社会的に結論
で行われ、監察医地区は監察医が決めるが、これ
付けるにはどうしたらよいかという話になる。こ
は知事の権限の下で行われるのである。それ以外
れに対する一つの回答が検死陪審である。日本は
の地区は遺族の同意が必要である。死因調査法が
まだこの辺りが未熟で、どのように処理したらよ
導入されると、遺族の同意の必要がなくなり、警
いのかわからないので、マスコミが大きく取り上
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
げると急に世論がなびいていくのである。
それからもう一つ、日本で問題なのは、業務上
過失致死が横行しているという事実である。業務
上過失致死が横行している国は、過去に日本が統
治した国だけだそうである。
その他の国、
ヨーロッ
パ・アメリカでは、弁護士が民事で賠償を請求す
るようになっている。日本では刑事判断になる。
日本では警察が介入し過ぎているが、国民はこれ
が当たり前と思って疑問を挿まない。
イギリス系では因果関係は検死陪審で対応して
いて、ここでは市民感覚で判断がなされている。
また、重要なのは再発予防であり、再発予防のた
めの勧告が重要な位置を占めるのである。
いじめに関していうと、誰がいじめたから自殺
に繫がったということが問題になるものではなく
自分が考えているシステムである。検死審査会
を創設したり、情報を開示したり、警察の中に検
死局を創設したりといろいろな提案である。
て、今後どのようにしたら同じ事案が防げるかと
検死係を警察刑事部捜査一課から独立させ、中
いうことが重要なのである。なかなか難しい話で
立の検死局を創設したらどうであろうかと思う。
あるが。
例えば、医療事故が起こった場合、検死局の職員
が医療現場に赴き死因の調査をする。医療サイド
も情報提供を行い、英米系のようにしっかりとし
た死因究明ができたら理想的である。現状では、
捜査一課の中に検死係が所属するので、医療現場
に赴くと本領を発揮して医師を送検しようとする
から、日本医師会と警察の間で対立が起こるので
ある。死因を確定するのが第一であり、これを直
ちに業務上過失致死に結びつけないようにするよ
うな方法はないのかと考えている中で考え出した
システムである。
情報が中立に使用されて、再発予防に活かされ
るように「事例データベース化」をすることも必
検死制度に必要な機関としては、調査機関、判
要であろう。
定機関、勧告機関であるが、日本ではこれらの機
関がうまく機能しておらず、勧告機関に至っては
ほとんど機能していない。
厚生労働省は死因の統計を取るために一所懸命
であるが、再発予防の対策は十分でない。事故調
査委員会と行政と死因決定機関との交流もほとん
どないのが現状である。
ガス器具事故、エレベーター事故、回転ドア事
故、踏切事故、プールでの事故、ジェットコース
ターでの事故等いろいろあるが、業務上過失致死
罪で送検するかどうかが問題になり、再発予防を
講ずる社会的なシステムが欠如している。
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山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
グリーフワークのプロセスは、ショック期、喪
失期、閉じこもり期、癒し・再生期で経過する。
死別者の 10 〜 15%が「病的な悲嘆」に陥り、
クレーマー化することもある。
2009 年 1 月 25 日に厚生労働省のシンポジウ
ムが広島国際会議場で開催された。自分はこのシ
ンポジウムに招かれてモデル事業を開始するに当
英米系の検死概念は、いろいろな形で情報が使
たっての意見を問われたが、「自分は反対である、
用されて、最終的には再発予防に主眼が置かれて
モデル事業を開始するよりは検死制度を改革する
いる。
べきである。」と意見を述べた。
新法は、現時点ではここまで考えていない。
日本法医学会はモデル事業推進の立場であった
ため、自分は学会の方針に反対する形となった。
スライド提示
VANCOUVER POLICE の CENTENNIAL MUSEUM
である。
スライド提示
MUSEUM の中では、有名な事件をマネキン人
形や模型を使って現場の再現がしてある。
スライド提示
2006 年 4 月 6 日、
朝日新聞「私の視点」で、
「検
死制度は民主的で体系的な改革が必要である」と
訴えた。
この時はモデル事業が始まった頃で、日本独自の
2004 年 4 月に、四学会(内科・外科・病理・
新しい検死制度を作ろうという風潮であった。その
法医)共同声明がでた。2005 年 9 月には厚生労
中で自分は、日本法医学会や医療界と全く正反対の
働省が医療関連死のモデル事業を開始することに
主張をしていた。つまり、モデル事業云々より検死
なった。このような時期に、自分は先程お話した
制度を変えるべきだと主張していたわけである。
ように、2006 年 4 月に朝日新聞の「私の視点」
2007 年には読売新聞が自分の主張を取り上げ
で自分の考えを述べたのである。
てくれて、検死制度を変えていこうという方向に
その後政権交代があって、民主党は「非自然死
変わっていった。2007 年 5 月 17 日、読売新聞
体の死因等の究明の適正な実施に関する法律案」
で「変死
を 2007 年に出した。
解剖わずか 9%
死因究明なおざり」、
2007 年 6 月 21 日、
読売新聞で検死見直し 2 法案、
の新聞記事が出ている。
868
2008 年「医学のあゆみ」の中で自分は論文を
発表した。この中で、モデル事業よりは、検死制
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
度を変えなければいけないのだと言い続けてきた
法律には記載はないが、将来的にはこれが議論さ
のである。
れる日がくるであろう。)
最終的には診療関連死モデル事業が中止される
⑤身元不明死体のデータベース構築。
こととなり、死因究明関連二法が成立し、ついに
⑥検視対象死体として、焼死体、腐乱死体、白骨
検死制度が変わるのだということで自分は非常に
死体、身元不明死体、溺死・窒息死疑、外傷のあ
嬉しく思っている。
る死体、中毒死疑、若年者の病死疑が挙げられて
本日資料を配付したが、
「警察等が取り扱う死
いる。
体の死因又は身元の調査等に関する法律案」、「死
因究明等の推進に関する法律案」が新しい法案で
ある。
「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査
等に関する法律案」は死体取扱規則の内容が大き
スライド提示
「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の
在り方について(最終取りまとめ)の骨子」のポ
ンチ絵である。後で細かいことを説明する。
く改善され法律として出てきたもので、議員立法
で提出されたという点が重要である。以前は公安
委員会規則であったのだが、
この度は法律である。
その他、「犯罪死の見逃し防止に資する死因究
明制度の在り方について(最終取りまとめ)の骨
子」(2011 年 4 月)もよく読んでおいてほしい。
スライド提示
「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の
在り方に関する研究会」の目次を示してある。
2012 年 6 月 15 日に、死因究明関連二法が成
立したが、これらは「死因・身元調査法」と「死
因究明推進法」から成り立っている。
「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の
在り方に関する研究会」の提言である。
①新たな法医解剖制度を導入すべきである。
②薬毒物検査をしっかりと行うべきである。
③諸検査に関して遺族の承諾なしに行えるように
まず、「死因・身元調査法」についてである。
すべきである。
警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に
④専門検案医制度を作る。
(これは検案医指定制
関する法律である。背景として、平成 19 年の「時
度を創設するかもしれないということで、現在の
津風部屋力士傷害致死事件」が発生した。このよ
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
うなことが今後起こらないように一つの警鐘とし
てスタートした。
第 1826 号
警察等が取り扱う死体は、「犯罪死体」と「変
死体」に分けられる。「犯罪死体」は従来どおり
現 状 と し て、 平 成 14 年 の 死 体 取 扱 数 が
捜査を行う。「変死体」は検視を行う。これは従
125,403 体に対し、平成 23 年は 173,735 体に
来と同じであるが、新法では死体発見時の調査を
増加していることや、解剖率が諸外国に比べて低
行い、必要に応じて体液又は尿を採取して薬毒物
調であるということである。
検査を行い、さらに解剖が必要と判断した時は、
犯 罪 死 体 の 解 剖 率 は、 平 成 23 年、 日 本 で
11 % で あ る。 参 考 ま で に 諸 外 国 で は、 英 国 が
遺族に説明した上で遺族の承諾を得ることなく解
剖が可能である。
約 46%、ドイツが約 19%、スウェーデンが約
解剖は大学や他の機関等に委託することにな
89%である。この法律で死体取扱規則の改善を
る。解剖は今までは承諾解剖であったので、同
図るものである。
意が得られなくて解剖することができない症例も
自分としてはこの法律が契機となり、体系的制
度の確立をすることが望ましいと考えている。
多々あったが、これからは議論することなくこの
法律一本で解剖が可能となるのである。
本法律においては、犯罪死かどうか不明な死体
身元を明らかにするための措置として、血液・
について、警察署長が遺族に説明した上で解剖実
歯牙・骨等の組織の一部の採取が可能となった。
施を決定できることが明記してある。
また、体内に埋め込まれた医療機器の摘出も可能
となった。これは警察ではできないが、警察が警
察活動協力医に頼んで摘出をすることになる。
最終的には遺族にご遺体の引渡しを行い、関係
行政機関へ通報することになる。
「死因・身元調査法」第一条である。自分とし
ては良い文章だと思っている。再発予防にも力を
入れる必要性が唱ってあるのである。
「死因・身元調査法」は来年 4 月 1 日から施行
される。
解剖は、厚生労働大臣と国家公安委員会が定め
た基準に該当すると都道府県公安委員会が認定す
る機関に機関委託されるとあるが、この点はまだ
決まっていない。大学法医学教室や監察医務院等
に委託されるらしい。大学法医学教室が委託され
るとなると大学の許可等が必要になるので現在模
索している状況である。
死因を明らかにすることを目的とし、警察が医
師に穿刺検査(後頭下穿刺、膀胱穿刺)を実施さ
870
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
せることを可能とする。これは従来、監察医は可
第 1826 号
「死因究明推進法」である。立法の背景には、
能であったが、地方のいわゆる警察活動協力医は
警察における死体取扱数が増加したためと、
「犯
法的な裏づけがなかったわけであるが、この法律
罪・事故の見逃し」の危惧があるために、死因究
により法的な裏づけがなされたわけである。現在
明機関を全国に整備することになっている。
でも警察活動協力医が穿刺検査を行っているのが
現状であるが、これはこれで問題ないことである
と理解していただいて良いと思う。
身元を明らかにすることを目的に、必要な検査
をすることが可能となる。
そのためにいろいろな体制の整備を行うこと
が、ここ数年で変革されていくであろう。
生命の尊重と個人の尊厳の保持、人の死亡が犯
罪行為に起因するものであるか否かの判別の適正
の確保、公衆衛生の向上を図る。
そのために全国的に死因究明を行う専門的な機
関を整備する、薬毒物検査や死亡時画像検査、Ai
等が行われるように、法律公布後 3 ヶ月以内に
この法律ができたとはいえ、相変わらず刑事訴
訟法の代行検視が維持されている。自分が民主党
内閣府に死因究明推進会議を設置する、等である。
ただし、診療関連死を除くとなっている。
の議員に説明した時は、
「刑事訴訟法の代行検視
この法律自体は 2 年後に失効するが、その際
は廃止すべきである、代行検視が認められている
には「死因究明基本法」を制定する予定となって
ために、実際は警察が中心に検視を行っているに
いる。
もかかわらず、検視の中心は検察である」。検察
これからの 2 年の実績が良い法律の制定につ
が実際に検視を行うのは皆無と言ってよい。「代
ながるため、良い「死因究明基本法」のためにこ
行検視」の「代行」という文言を抜くように主張
れからいろいろと頑張らなければならないと考え
したが実現は困難であるとのことであった。総理
ている。
経験者クラスの大物政治家が検察を説得しないと
不可能であるらしい。
スライド提示
先ほどのポンチ絵の一部について。現行の解剖
率 11%をまず 20%に上げる、最終的には 50%に
もっていく。都道府県ごとに法医学研究所を設立
する。ここで法医解剖と公衆衛生目的解剖を行う。
そのために解剖医体制の強化として、現行全国
170 名の解剖医を 340 名体制にし、最終的には
850 名にもっていく。この 850 名は夢のまた夢
であろうが、現行の倍増の 340 名体制を目標に
頑張っていきたいと思う。340 名が法医学研究
所に常勤で就職する形で吸収できれば良いが、国
871
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
の政策のためどのようになるか今から見守ってい
非常勤で出務している。個人的な解剖率は 20 〜
きたい。予算がついても、実際に法医学者がいな
30%程度である。これを 50%に上げろと言われ
いため、まずは人づくりから始めなければならな
ても、自分では体力的に無理であろう。解剖率
い状況である。
50%を目指すならば、検死委員会などの再発防
止機関や公衆衛生機関との連携がしっかりいかな
スライド提示
検査機関の拡充であるが、ドイツ方式で大学法
いと無理であろう。
解剖されたい人がそれ程いるだろうか。自分は
医学研究所を中心に行うか、英米方式で科学捜査
個人的には必要がなければ解剖されたくはない。
研究所や中毒センターを設立して対応していくか
解剖率はあくまでも、結果であって目標ではない
今から決めなければならない。
と思っている。
法医学検査の導入であるが、法医学的検査、簡
易薬毒物検査、CT 検査を公費で行い、これらは
遺族の承諾なしに施行可能である。
検案の高度化であるが、専門医指定制度を創設
することになっているが、これは中身が未定であ
る。実際にどのようにやっていくのかが分からな
い。とりあえず、山口県医師会警察医会の会員が
専門医として指定されるのが一番分かりやすいで
あろう。試験を行ったりするとなかなか難しいの
ではないかと思っている。今後、山口県医師会警
察医会の中でも議論をいただきたい。最初にある
程度の人員を確保しないとやっていけなくなるこ
とが十分に予測されるわけである。
身元確認の高度化であるが、警察において身元不
明死体のデータベース化を行うことになっている。
「死因究明推進法」の弱点・積み残しである。
再発予防・公衆衛生とどうつなげるか。
検視・死体見分の高度化であるが、検視は焼死
検視困難事例をどのように取り扱うか。いじめ
体、腐乱死体、白骨死体、身元不明死体、溺死・
問題とかであるが、検視の現場では「いじめによ
窒息死疑、外傷のある死体、中毒死疑、若年者の
る自殺」は、自殺は自殺である。マスコミに叩か
病死疑を原則検視対象とし、年間 60,000 体を考
れる前に、検視困難事例は現実に存在するという
えている。
ことを認識することが重要で、社会が対応するシ
この法律は、戦後、
「死体取り扱い規則」がで
きて以来、約 50 年変わらなかったのに対して、
ステムを作っていかないと、いかんともしがたい
のである。
世界はどんどん変化していった。しかし、日本で
犯罪調査が中心になり過ぎると誤解を生ずるの
は法律で対応できなかった。それを今回思い切っ
で、あくまでもトラブル予防のために検視をする
て変えて世界基準にもっていこうという考え方で
姿勢が重要である。
作られたもので、実現のために公費を入れるとい
死因究明が目的である。犯罪が疑われたから解
うのが骨子になっている。この法律ができて当た
剖になったのではない。そうでないと、解剖され
り前といえば当たり前である。今回、警察庁が本
たら犯罪が疑われたのだなということになり、遺
気になってこのようになったが、厚生労働省は相
族がいやな思いをするだけである。情報開示と個
変わらずやる気がなかったようである。
人情報保護がしっかりとされるべきであろう。
縦割り行政が問題である。警察庁中心で動いて
スライド提示
解剖率の話である。自分は大阪監察医務院に
872
いるが、厚生労働省や文部科学省がこれからどの
ように動いていくのかが課題である。
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
つけて判断していかなければならないのである。
医療関連死は今回の法令では除外されている
が、これも含めて対応していかないといけない。
医療関連死は世界基準で日本医師会に考えていた
「誤認検視 10 則」を常に頭において対応しな
ければならないのである。
だきたい。世界基準で考えるならば、医療関連死
だけの検死制度を創設することは、ばかげたこと
である。
医療版事故調を創設して、医療関連死をいかに
予防するかというところを課題とすべきであり、
医療関連死だけ別のシステムで対応する議論を今
後も続けていくならば、近い将来に市民からそっ
ぽをむかれてしまうであろう。
いろいろな法則があるのでこれらも参考にする。
法医解剖というのは現場の状況、目撃証言を聞
きながら、破壊検査であるのでご遺体を破壊しな
がら、再構成をして一つの所見を導き出すのであ
る。
その中にはいろいろな危険性が存在しており、
判断を間違えたりして冤罪ができてしまうのであ
る。そのため、常にいろいろなことに十分に気を
「刑事眼
伝説の刑事の事件簿」という本の中
で、刑事の勘が述べられている。
873
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山口県医師会報
第 1826 号
と疑わしい症例はすべて解剖に回すようになるで
あろう。
刑事に限らず、医師も「ウソ」を見抜く必要が
ある。「五感で診るコツ」田村康二著の中にどの
この 2 年間で死体検案を取り巻く環境が大き
様にしたら診察の中で「ウソ」が見抜けるのかが
く変化する。結果的に解剖率が上がるのであろう
書いてある。
が、鑑定書をどうするか、事務処理をどうするか
交感神経系の反応として、瞳孔が開き、心拍数
検討課題である。
が増加し、血圧が上昇する、冷や汗をかく等、こ
法医学研究所が設立されるとして、死亡時画像
れを利用したのが「ウソ発見器」であるが、この
診断や、人材育成の問題、県・大学との交渉の問
ようなことも参考にする。
題等、まだまだ問題山積である。
専門検案医を公安委員会が指定するとなってい
るが、どのようにしていくのか、いろいろと対応
していかなければならない。
ただし、これは提言であるので、これらが全部
実行されるかどうかはわからない。
来年から体制が大きく変化するので、警察活動
協力医、山口県医師会、山口県警察本部、その他
関係者に理解していただきたくて、本日はテーマ
を変えて講演した。以上で終了する。
解剖の基準であるが、先ほど述べた基準と、自
質問1
分が解剖した方が良いと考えている症例を挙げて
現在は解剖するに当たって、裁判所の発行する
ある。若年者で、既往歴がなくて、自宅外で死亡
令状が必要であるが、新法では警察署長の判断で
している症例は基本的に解剖した方が良い。この
解剖が可能とある。裁判所の令状はどうなるのか。
ような症例を解剖すると、解剖率が 20%位に上
がってくるであろう。トラブル予防や、死亡状況
回答:司法解剖や検視規則は残ることになって
に異状がある場合も解剖した方が良い。
いるので、新法と並列して行われることになるで
現在、警察活動協力医はなるべく解剖を行わな
あろう。つまり、半分位は鑑定処分許可状に基づ
い方向で努力していると思われるが、新法になる
く司法解剖が行われ、残りの半分が新法による解
874
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
剖になるのではないか。現在はこのような解釈に
する方法があるが、現実問題、参加者が少なくて
なっている。
実際には無理であろう。
犯罪死見逃しを防止するために新法下で解剖が
法医学教室のスタッフは認定されるであろう
できる状況で、司法解剖の意義は何であろうかと
が、現在の警察活動協力医の先生方が認定されな
考えるとすっきりしないが、もう少し見守ると同
ければ、自分たちだけで検死を行うことになり、
時に、変な方向にいかないように気をつけなけれ
それはそれでマンパワー不足になり、不可能なこ
ばならないと考えている。
とである。
質問 2
質問 3
専門検案医のことであるが、現在、日本法医学
会の認定医制度があるが、この資格は一般の臨床
山口県警察本部では新法に対する準備はできて
いるのか。
医や開業医では取得するのがなかなか難しいのが
現状である。日本法医学会認定医制度と専門検案
回答:法律は成立した。現在、細目その他について
医の整合性はどのように考えたらよいか。
作られている最中である。本年、秋に警察庁で本件
に関する会議が開催予定である。山口県警察本部と
回答:日本警察医会でも検討する必要があるであ
しては、藤宮教授と連携しながら来年 4 月からの施
ろう。現状は、埼玉県で行われている数日間の研
行に対して模索して行っている最中である。
修に参加して認定医を取得する方法か、日本法医
学会の行う試験に合格して死体検案認定医を取得
以上で、講演は終了した。
警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案
(目的)
第一条
遺族等の心身の状況、その置かれている環境等
この法律は、警察等(警察及び海上保安
庁をいう。以下同じ。
)
が取り扱う死体について、
調査、検査、解剖その他死因又は身元を明らか
について適切な配慮をしなければならない。
(死体発見時の調査等)
第四条
警察官は、その職務に関して、死体を発
にするための措置に関し必要な事項を定めるこ
見し、又は発見した旨の通報を受けた場合には、
とにより、死因が災害、事故、犯罪その他市民
速やかに当該死体を取り扱うことが適当と認め
生活に危害を及ぼすものであることが明らかと
られる警察署の警察署長にその旨を報告しなけ
なった場合にその被害の拡大及び再発の防止そ
ればならない。
の他適切な措置の実施に寄与するとともに、遺
2
警察署長は、前項の規定による報告又は死体
族等の不安の緩和又は解消及び公衆衛生の向上
に関する法令に基づく届出に係る死体(犯罪行
に資し、もって市民生活の安全と平穏を確保す
為により死亡したと認められる死体又は変死体
ることを目的とする。
(礼意の保持)
第二条
警察官は、死体の取扱いに当たっては、
(変死者又は変死の疑いがある死体をいう。次
条第三項において同じ。)を除く。次項におい
て同じ。)について、その死因及び身元を明ら
礼意を失わないように注意しなければならな
かにするため、外表の調査、死体の発見された
い。
場所の調査、関係者に対する質問等の必要な調
(遺族等への配慮)
第三条
警察官は、死体の取扱いに当たっては、
査をしなければならない。
3
警察署長は、前項の規定による調査を実施す
875
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山口県医師会報
第 1826 号
るに当たっては、医師又は歯科医師に対し、立
法律第百十二号)第二条第一項に規定する国
会い、死体の歯牙の調査その他必要な協力を求
立大学法人、地方独立行政法人法(平成十五年
めることができる。
法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する
(検査)
第五条
公立大学法人、私立学校法(昭和二十四年法律
警察署長は、前条第一項の規定による報
第二百七十号)第三条に規定する学校法人その
告又は死体に関する法令に基づく届出に係る死
他の法人又は国若しくは地方公共団体の機関で
体(犯罪捜査の手続が行われる死体を除く。以
あって、国家公安委員会が厚生労働大臣と協議
下「取扱死体」という。
)について、その死因を
して定める基準に該当すると都道府県公安委員
明らかにするために体内の状況を調査する必要
会が認めたものに、第一項の規定による解剖の
があると認めるときは、その必要な限度におい
実施を委託することができる。
て、体内から体液を採取して行う出血状況の確
認、体液又は尿を採取して行う薬物又は毒物に
係る検査、死亡時画像診断(磁気共鳴画像診断
装置その他の画像による診断を行うための装置
4
前条第三項の規定は、第一項の規定により解
剖を実施する場合について準用する。
(守秘義務等)
第七条
前条第三項の規定により解剖の実施の委
を用いて、死体の内部を撮影して死亡の原因を
託を受けた法人又は機関の役員若しくは職員又
診断することをいう。第十三条において同じ。)
はこれらの職にあった者であって、当該解剖の
その他の政令で定める検査を実施することがで
実施に関する事務に従事したものは、当該事務
きる。
に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2
前項の規定による検査は、医師に行わせる
2
前項の規定は、同項に規定する者が、同項に
ものとする。ただし、専門的知識及び技能を要
規定する事務によって得られた医学的知見を公
しない検査であって政令で定めるものについて
衆衛生の向上又は医学の教育若しくは研究のた
は、警察官に行わせることができる。
めに活用することを妨げるものではない。
3
第一項の場合において、取扱死体が変死体で
あるときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第
(身元を明らかにするための措置)
第八条
警察署長は、取扱死体について、その身
百三十一号)第二百二十九条の規定による検視
元を明らかにするため必要があると認めるとき
があった後でなければ、同項の規定による検査
は、その必要な限度において、血液、歯牙、骨
を実施することができない。
等の当該取扱死体の組織の一部を採取し、又は
(解剖)
第六条
当該取扱死体から人の体内に植え込む方法で用
警察署長は、取扱死体について、第三項
に規定する法人又は機関に所属する医師その他
法医学に関する専門的な知識経験を有する者の
いられる医療機器を摘出するために当該取扱死
体を切開することができる。
2
前項の規定による身元を明らかにするための
意見を聴き、死因を明らかにするため特に必要
措置は、医師又は歯科医師に行わせるものとす
があると認めるときは、解剖を実施することが
る。ただし、血液の採取、爪の切除その他組織
できる。この場合において、当該解剖は、医師
の採取の程度が軽微な措置であって政令で定め
に行わせるものとする。
るものについては、警察官に行わせることがで
2
警察署長は、前項の規定により解剖を実施す
るに当たっては、あらかじめ、遺族に対して解
きる。
3
第五条第三項の規定は、第一項の規定による
剖が必要である旨を説明しなければならない。
身元を明らかにするための措置について準用す
ただし、遺族がないとき、遺族の所在が不明で
る。
あるとき又は遺族への説明を終えてから解剖す
るのではその目的がほとんど達せられないこと
が明らかであるときは、この限りでない。
3
警察署長は、国立大学法人法(平成十五年
876
(関係行政機関への通報)
第九条
警察署長は、第四条第二項、第五条第一
項又は第六条第一項の規定による措置の結果明
らかになった死因が、その後同種の被害を発生
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
させるおそれのあるものである場合において、
又は身元を明らかにするための措置が正確かつ
必要があると認めるときは、その旨を関係行政
適切に遂行されるよう、当該措置に係る業務に
機関に通報するものとする。
従事する警察官、海上保安官、海上保安官補、
(死体の引渡し)
第十条
医師、歯科医師等の人材の育成及び資質の向
警察署長は、死因を明らかにするために
上、大学における法医学に係る教育及び研究の
必要な措置がとられた取扱死体について、その
充実、死体の検案及び解剖並びに死体の科学調
身元が明らかになったときは、速やかに、遺族
査(死因又は身元を明らかにするため死体に対
その他当該取扱死体を引き渡すことが適当と認
して行う薬物及び毒物に係る検査、死亡時画像
められる者に対し、その死因その他参考となる
診断、遺伝子構造の検査、歯牙の調査その他の
べき事項の説明を行うとともに、着衣及び所持
科学的な調査をいう。)の実施体制の充実その
品と共に当該取扱死体を引き渡さなければなら
他必要な体制の整備を図るものとする。
ない。ただし、当該者に引き渡すことができな
いときは、死亡地の市町村長(特別区の区長を
(財政上の措置)
第十四条
政府は、警察等が取り扱う死体の死因
含む。次項において同じ。
)に引き渡すものと
又は身元を明らかにするための措置が円滑に実
する。
施されるようにするため、必要な財政上の措置
2
警察署長は、死因を明らかにするために必
要な措置がとられた取扱死体について、その身
元を明らかにすることができないと認めるとき
を講ずるよう努めるものとする。
(罰則)
第十五条
第七条第一項(第十二条において準用
は、遅滞なく、着衣及び所持品と共に当該取扱
する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年
死体をその所在地の市町村長に引き渡すものと
以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
する。
(国家公安委員会規則への委任)
第十一条
第二条から前条までに定めるもののほ
か、警察が取り扱う死体の死因又は身元を明ら
かにするための措置に関し必要な事項は、国家
公安委員会規則で定める。
(準用)
第十二条
附
則
(施行期日)
第一条
施行する。
(死体解剖保存法の一部改正)
第二条
第二条から前条までの規定は、海上保
この法律は、平成二十五年四月一日から
死体解剖保存法(昭和二十四年法律第
二百四号)の一部を次のように改正する。
安庁が死体を取り扱う場合について準用する。
第二条第一項第四号中「第二百二十二条第一項」
この場合において、これらの規定中「警察官」
を「同法第二百二十二条第一項」に改め、同項
とあるのは「海上保安官又は海上保安官補」と、
に次の一号を加える。
第四条第一項中「警察署の警察署長」とあるの
七
警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査
は「海上保安部長等(政令で定める管区海上保
等に関する法律(平成二十四年法律第
安本部の事務所の長をいう。以下同じ。)」と、
六条第一項(同法第十二条において準用する場
同条第二項及び第三項、第五条第一項、第六条
合を含む。)の規定により解剖する場合
第一項から第三項まで、第八条第一項、第九条
号)第
第七条第二号中「且つ」を「かつ」に改め、同条
並びに第十条中「警察署長」とあるのは「海上
第三号中「又は第四号」を「、第四号又は第七号」
保安部長等」と、
前条中「警察」とあるのは「海
に改める。
上保安庁」と、
「国家公安委員会規則」とある
のは「国土交通省令」と読み替えるほか、必要
な技術的読替えは、政令で定める。
(人材の育成等)
第十三条
政府は、警察等が取り扱う死体の死因
877
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
死因究明等の推進に関する法律案
目次
る制度の目的の適切な実現に資するよう、行わ
第一章
総則(第一条―第五条)
第二章
死因究明等の推進に関する基本方針(第
六条)
れるものとする。
3
身元確認の推進は、身元確認が、遺族等に死
亡の事実を知らせること等を通じて生命の尊重
第三章
死因究明等推進計画(第七条)
と個人の尊厳の保持につながるものであるとと
第四章
死因究明等推進会議
(第八条―第十五条)
もに、国民生活の安定及び公共の秩序の維持に
第五章
医療の提供に関連して死亡した者の死因
資するものであるとの基本的認識の下で行われ
究明のための制度についての検討(第十六条)
附則
るものとする。
(国の責務)
第三条
第一章
総則
(目的)
第一条
国は、前条に定める死因究明等の推進に
関する基本理念(次条において単に「基本理念」
という。)にのっとり、死因究明等の推進に関
この法律は、我が国において死因究明
(死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)
について、検案、検視、解剖その他の方法によ
りその死亡の原因、推定年月日時及び場所等を
する施策を総合的に策定し、及び実施する責務
を有する。
(地方公共団体の責務)
第四条
地方公共団体は、基本理念にのっとり、
明らかにすることをいう。以下同じ。
)及び身
死因究明等の推進に関し、国との適切な役割分
元確認(死体の身元を明らかにすることをいう。
担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況
以下同じ。
)
(以下「死因究明等」という。)の
に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有
実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題となっ
する。
ていることに鑑み、死因究明等の推進に関する
施策についてその在り方を横断的かつ包括的に
(連携協力)
第五条
国、地方公共団体、大学、医療機関、関
検討し及びその実施を推進するため、死因究明
係団体、医師、歯科医師その他の死因究明等に
等の推進について、基本理念、国及び地方公共
関係する者は、死因究明等の推進に関する施策
団体の責務並びに施策の基本となる事項を定め
が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りな
るとともに、必要な体制を整備することにより、
がら協力しなければならない。
死因究明等を総合的かつ計画的に推進すること
を目的とする。
(死因究明等の推進に関する基本理念)
第二条
死因究明の推進は、死因究明が死者の生
存していた最後の時点における状況を明らかに
するものであることに鑑み、死者及びその遺族
等の権利利益を踏まえてこれを適切に行うこと
第二章
死因究明等の推進に関する基本方針
第六条
死因究明等の推進に関して、重点的に検
討され、及び実施されるべき施策は、次に掲げ
るとおりとする。
一
法医学に関する知見を活用して死因究明を行
う専門的な機関の全国的な整備
が生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるも
二
法医学に係る教育及び研究の拠点の整備
のであるとの基本的認識の下で行われるものと
三
死因究明等に係る業務に従事する警察等(警
する。
2
察その他その職員が司法警察職員として死体の
死因究明の推進は、高齢化の進展等の社会
取扱いに関する業務を行う機関をいう。次号に
情勢の変化を踏まえつつ、人の死亡が犯罪行為
おいて同じ。)の職員、医師、歯科医師等の人
に起因するものであるか否かの判別の適正の確
材の育成及び資質の向上
保、公衆衛生の向上その他の死因究明に関連す
878
四 警察等における死因究明等の実施体制の充実
平成 24 年 10 月
五
山口県医師会報
死体の検案及び解剖の実施体制の充実
第 1826 号
て組織する。
六 薬物及び毒物に係る検査、死亡時画像診断
(磁
(会長)
気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を
第十条
行うための装置を用いて、死体の内部を撮影し
2
会長は、会務を総理する。
て死亡の原因を診断することをいう。
)その他
3
会長に事故があるときは、あらかじめその指
死因究明のための科学的な調査の活用
七
遺伝子構造の検査、歯牙の調査その他身元確
会長は、内閣官房長官をもって充てる。
名する委員がその職務を代理する。
(委員)
認のための科学的な調査の充実及び身元確認に
第十一条
係るデータベースの整備
一
八 死因究明により得られた情報の活用及び遺族
等に対する説明の促進
2
死因究明等の推進に関する施策は、死因究明
等に係る人材の育成、施設等の整備及び制度の
整備のそれぞれについて、前項の施策の総合性
を確保しつつ、段階的かつ速やかに講ぜられる
ものとする。
委員は、次に掲げる者をもって充てる。
内閣官房長官以外の国務大臣のうちから、内
閣総理大臣が指定する者
二
死因究明等に関し優れた識見を有する者のう
ちから、内閣総理大臣が任命する者
2
前項第二号の委員は、非常勤とする。
(資料提出の要求等)
第十二条
会議は、その所掌事務を遂行するため
に必要があると認めるときは、関係行政機関の
長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その
第三章
死因究明等推進計画
第七条
政府は、死因究明等の推進に関する施策
他必要な協力を求めることができる。
2
会議は、その所掌事務を遂行するために特に
の総合的かつ計画的な推進を図るため、前条に
必要があると認めるときは、前項に規定する者
定める死因究明等の推進に関する基本方針に即
以外の者に対しても、必要な協力を依頼するこ
し、講ずべき必要な法制上又は財政上の措置そ
とができる。
の他の措置を定めた死因究明等推進計画を定め
なければならない。
2
内閣総理大臣は、死因究明等推進計画につき
閣議の決定を求めなければならない。
3
政府は、死因究明等推進計画を作成したとき
は、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、
その要旨を公表しなければならない。
(会議の運営の在り方)
第十三条
会議の運営については、第十一条第一
項第二号の委員の有する知見が積極的に活用さ
れ、委員の間で充実した意見交換が集中的に行
われることとなるよう、配慮されなければなら
ない。
(事務局)
第十四条
第四章
死因究明等推進会議
(設置及び所掌事務)
第八条
内閣府に、特別の機関として、死因究明
等推進会議(以下「会議」という。
)を置く。
2
会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一
死因究明等推進計画の案を作成すること。
二
前号に掲げるもののほか、死因究明等の推進
に関する施策に関する重要事項について審議す
るとともに、死因究明等の推進に関する施策の
会議の事務を処理させるため、会議に
事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3
事務局長は、関係のある他の職を占める者を
もって充てられるものとする。
4
事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理
する。
(政令への委任)
第十五条
この章に定めるもののほか、会議の組
織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、
評価し、及び監視すること。
(組織)
第九条
第五章
医療の提供に関連して死亡した者の死因
究明のための制度についての検討
会議は、会長及び委員二十人以内をもっ
第十六条
医療の提供に関連して死亡した者の死
879
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
因究明のための制度については、その特殊性に
すること。
鑑み、政府において別途検討するものとする。
二
第 1826 号
死因究明等の推進に関する施策の実施の推進
に関すること。
附
則
附則第四条の二に次の一項を加える。
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して三月
を超えない範囲内において政令で定める日から
2
死因究明等の推進に関する法律がその効力を
有する間、同法の定めるところにより内閣府に
置かれる死因究明等推進会議は、本府に置く。
施行する。
(この法律の失効)
第二条
この法律は、施行の日から起算して二年
を経過した日に、その効力を失う。
(内閣府設置法の一部改正)
第三条
内閣府設置法(平成十一年法律第八十九
号)の一部を次のように改正する。
理
由
我が国において死因究明及び身元確認の実施に
係る体制の充実強化が喫緊の課題となっているこ
とに鑑み、死因究明等の推進に関する施策につい
てその在り方を横断的かつ包括的に検討し及びそ
の実施を推進するため、死因究明等の推進につい
附則第二条第三項の表に次のように加える。
て、基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに
死因究明等の推進に関する法律(平成二十四年法
施策の基本となる事項を定めるとともに、必要な
律第
体制を整備することにより、死因究明等を総合的
一
号)がその効力を有する間
死因究明等推進計画(同法第七条第一項に規
定する死因究明等推進計画をいう。
)の作成に関
880
かつ計画的に推進する必要がある。これが、この
法律案を提出する理由である。
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
第 4 回臨床研修医交流会
と
き
ところ
平成 24 年 8 月 25 日 ( 土 )
14:00 〜
8 月 26 日 ( 日 )
9:00 〜
ホテルかめ福
2F ロイヤルホール
[ 報告 : 理事
一日目
8 月 25 日(土)
中村
洋]
属病院先進救急医療センターの福田信也先生が研
今年で 4 回目となる臨床研修医交流会が、山
修の報告をされた。
口県医師会及び山口県医師臨床研修推進センター
の主催で開催された。総合司会は、徳山中央病院
研修医の藤田
陽先生が担当された。
開会挨拶で県医師会小田会長は、山口県の現
状について、医師数自体は全国平均より高いが、
グループワーク「研修医の本音をさらけ出そう !」
グループワークの司会は山口赤十字病院研修医
の中村圭李先生が務められた。
今回のグループワークは 10 グループで行われ
医師の高齢化だけでなく、地域や診療科別の偏在
た。各グループは与えられたテーマにそってスラ
が問題となっているので、医師会としても臨床
イドを作成、その発表と討論が行われた。ロール
研修医 ( 若い医師 ) の県内定着、女性医師の離職
プレイングを交えるなど、いろいろと工夫が凝ら
防止に力を入れていることなどについて述べられ
された発表があり、指導医からも厳しい質問が飛
た。続いて山口県健康福祉部の審議監兼地域医療
んでいた。
推進室の岡
紳爾室長より、山口県は暮らしの安
全、特に安心医療と医師確保に取り組んでいく。
今日は病院の枠を超えて交流し、絆を深め、研修
懇親会
グループワーク終了後、山口大学医学部附属病
後も一緒に山口県の医療を支えてもらいたいと挨
院研修医の佐々木
拶された。
催された。
その後、当会濱本副会長から山口県医師臨床
嶺先生の司会で、懇親会が開
最初に山口大学医学部附属病院の岡
正朗病院
研修推進センターの紹介があり、
「指導医・後期研
長より挨拶が行われ、その後今回世話人を引き受
修医等国内外研修助成事業」の助成を受けて、昨
けていただいた徳山中央病院副院長の小川
年度ユタ大学に短期留学された山口大学医学部附
生の乾杯で歓談にうつった。
宏先
福田信也先生の研修報告
881
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
グループワーク
懇親会
懇親会途中で、毎年恒例の豪華賞品が当たる
熱く語られた。
ビンゴ大会が行われた。各病院や行政関係などか
らフルーツジュースからデジタルカメラ、栄養ド
特別講演の後、前日に開催されたグループワー
リンクやお掃除ロボットなどが提供され、盛会で
クの発表に対するベストプレゼンテーション賞の
あった。県医師会吉本副会長の発声で会を終えた。
開票・発表が行われた。
今回のベストプレゼンテーション賞は D 班の
二日目 (8 月 26 日 )
下関市立市民病院研修医の古谷英章先生の司会
で交流会二日目が始まる。
「訴えられないために救急外来で気をつけている
こと」と G 班の「上手なコンサルテーションの
ふた
仕方」の二 班が同点数で受賞、小田会長から両
最初に山口大学医学部附属病院医療人育成セン
班の全員に best presentation 2012 という刻印の
ターの原田唯成先生に、当交流会を通じて今後の
入った高級ボールペンが贈呈された。受賞者代表
医師としての人生を楽しんでもらいたいとご挨拶
の挨拶ののち、田中常任理事の挨拶をもって、今
をいただいた。
年度の交流会のすべてのプログラムを終了した。
続いて特別講演にうつる。特別講演①は「が
ん診療における放射線治療の役割」と題して山口
大学大学院医学系研究科情報解析医療系学域放射
線治療学分野教授の澁谷景子先生が、
最新の放射線治療技術についてわか
りやすく解説され、がん治療の中で
の放射線治療の役割について話され
た。特別講演②は「見える喜びと眼
科医療の意義」と題して山口大学大
学院医学系研究科情報解析医学系学
域眼科学分野教授の園田康平先生が
ご自身の留学体験から、大学で学ぶ
こと、研究することの意義について
882
本年の参加者は、研修医 79 名 、 その他 44 名
の計 123 名であった。
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
第 4 回臨床研修医交流会を終えて
[ 報告 : 徳山中央病院研修医
藤田
陽]
昨年に引き続き、今年も 8 月 25 日、26 日に
療法についても、わかりやすいスライドで解説い
第 4 回臨床研修医交流会が山口市のホテルかめ福
ただきました。また、昨年から現在まで、震災の
で開催されました。今年は徳山中央病院が主幹病
影響で放射線という言葉に敏感な人が増えている
院で、私が代表幹事を務めさせていただきました。
ために、放射線治療をはじめる際には患者さんに
準備開始が 6 月 15 日と、時間的余裕がないこと
1 時間かけて、放射線治療についてのパンフレッ
もあり、多くの方々にご迷惑をおかけしたにもか
トを用いて丁寧に説明を心掛けているというお話
かわらず、協力していただき感謝しております。
しは印象的でした。
今年の特別講演は山口大学放射線治療学分野
園田先生は研究することの醍醐味について、
教授の澁谷景子先生と山口大学眼科学分野教授の
ボストン留学のご自身の体験について、眼科を専
園田康平先生に講演をいただきました。お二人の
攻した理由について講演をいただきました。研究
先生方は、私たちが卒業後に教授に就任されたた
は結果も出ない時期もあり、ゆっくりと気分転換
め、講義をいただく機会がありませんでした。打
することも必要で、気分転換の旅行中にアイデア
ち合わせの段階で、山口大学の先生方より、講義
が浮かんだこともあるとのことでした。逆に、詰
が上手く、面白いとの評判でしたので期待してお
め込む時期には、これだけは先輩にも負けないと
りました。実際、評判通りのわかりやすく、面白
いった気持ちで取り組むことが臨床、研修でも大
い講義に多くの研修医が聞き入っていました。
切であるとのことでした。
澁谷先生はがん治療における放射線治療の役
専門分野に加えて、患者さんとのかかわり方、
割、放射線治療でがん細胞だけ死滅させることが
科を決める動機についてのお二人の先生方の体
できるのか等の基本的な事項について、例を交え
験談は、臨床研修医の私たちにとって大変参考に
てわかりやすく講義していただきました。また、
なったと思います。また、つい詰め込もうとして
強度変調放射線療法 (IMRT) といった、新しい治
視野が狭くなりがちな私には、ゆっくりと構えて
883
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
頭を真っ白にしてみるといった姿勢はこれからの
ら参加した研修医同士でテーマについて意見を交
将来、忘れないようにしていきたいと思いました。
わす機会は有意義であったと思います。今年はベ
昨年度、山口県医師臨床研修推進センターの
ストプレゼンテーション賞を決めるという試みを
助成を受けてユタ大学で研修された、山口大学先
行ったためか、各班とも特徴のあるプレゼンテー
進救急医療センターの福田信也先生の研修報告で
ションであったと思います。内容は多くのテーマ
は、ユタ大学ではコメディカルの行える手技の範
が、正解がない重要なテーマであり、研修医同士
囲が広く、初療における判断のスピードが速いこ
のディスカッションも大変盛り上がったと感じて
とを紹介されました。ただし、スタッフの数が比
おります。懇親会では、各病院より提供していた
較的少ない日本の現在の状況では同じシステムを
だいた景品をかけてのビンゴ大会があり、こちら
導入することは難しく、ユタ大学のシステムそれ
も大変盛り上がったと思います。
自体が良いとは限らないと話されました。このよ
最後に、会全体を通して、進行も比較的スムー
うに、いたずらに欧米が優れていると思うのでは
ズに進み、例年に遜色ない盛り上がる研修医交流
なく、冷静に世界を見て、評価し、参考にする機
会となり、大変良かったと思っております。これは、
会は非常に大切だと感じました。山口県には国内
医師会や世話人の先生方、山口大学の先生方、各
外研修を支援する助成事業があることは恵まれた
臨床研修病院、幹事の先生方のご協力のお陰であ
環境であると思いました。
ると思っております。この場を借りて感謝を申し
研修医同士の交流としては、25 日に行われた
上げたいと思います。今後は、今回参加した研修
グループワークでは、1 班 1 テーマに対してグ
医の仲間たちとともに、山口県の医療を支える医
ループ内でディスカッションを行い、パワーポイ
師を目指して、切磋琢磨していければと思います。
ントで発表、
その後、
研修医全体でディスカッショ
ンを行うといった形で行いました。他の病院では
どのように対応しているかなど、他の研修病院か
884
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
平成 24 年度第 2 回
郡市医師会地域医療担当理事協議会
と
き
ところ
平成 24 年 8 月 30 日(木)
山口県医師会館
6F 会議室
[ 報告 : 常任理事
開会挨拶
河村専務理事
班長
本日はワーキンググループ ( 以
弘山
直滋 ]
現時点では難しい。カルテの共有などは地
域包括センターでは難しい。
下、WG) から精神疾患を代表して水津先生、在
宅医療を濵田先生にご出席いただいている。また
Q
次期保健医療計画に対する郡市医師会の意見・要
の病院では患者の情報がないので大変不安である。
望について、大いに議論をお願いする。
在宅主治医が急変時対応のために紹介状をあらかじ
施設入所者が救急車で病院に行く場合、受入れ
め用意しておくといい。在宅医療は自宅と施設を分
弘山常任理事
次期保健医療計画では、現行の 4
けて考えたほうがいい。自宅での看取りは、家族の
疾病に精神疾患と在宅医療が追加となったので、
負担が大きいので経済的支援が必要である。終末医
各医療機能案とイメージ図案作成のため、WG を
療の教育など、病院がパンクしないためにはどうす
立ち上げ、検討いただいている。本日は各班長に
ればいいか考える必要がある。
おいでいただき、ご説明をお願いしている。また、
郡市医師会の意見要望を聞くため、県の各部署か
県医
地域でのルールづくりが必要である。
ら多数出席いただいているので、ディスカッショ
ンをよく聞いて帰っていただきたい。
県
1. 在宅医療と精神疾患の医療機能、イメージ図
について
機会を捉えて国へ要望していきたい。
精神疾患では、WG 班長の水津信之先生から、
精神疾患は患者の流れが多種多様で、一括りにで
在宅医療では、WG 班長の濵田敬史先生から、厚
きないため、5 つの疾患(うつ病、統合失調症、
生労働省案では、「退院支援」、「日常の療養支援」、
アルコール依存症、児童・思春期の精神疾患、認
「急変時の対応」、「看取り」の 4 つのステージ(状
知症)に分けて作っている。そのうち、うつ病、
態)に分かれているが、WG で検討した結果、在宅
統合失調症、認知症は圏域内で一部を除いて大方
医療に入ってくる患者は、必ずしも退院してくる患
は処理できるが、他の児童・思春期の精神疾患や
者とは限らないという意見があり、それらを踏まえ
アルコール(薬物)依存症は全県レベルで考えな
て、「在宅医療の導入」、「日常の療養支援」、「状態
いと難しいため、必ずしも圏域内で完結しなくて
変化時の対応」の 3 つに分け、それぞれ機能、目標、
いいと思うとして、精神疾患の 5 つの医療体制
求められる事項を検討した。在宅医療の場合は、疾
ごとに説明があった。認知症については、まだ厚
患が多岐にわたるため、個別の疾患に対し細かな計
生労働省から指針がでていないため、素案として
画は難しいので、今回は包括的な医療体制にしてい
機能案、イメージ図案の説明があった。
ると、説明があった。
精神疾患の機能案、イメージ図案についての質問
在宅医療の機能案、イメージ図案についての質問
Q
Q 患者の情報共有はどこで行うのか。
てくれる(機関の)情報がほしい。
Q
小児科、精神科で児童・思春期(疾患)を診
小児科を標榜しているが、教育機関等との連
885
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
班長
携がほとんどない。
第 1826 号
自傷、他害の場合は、警察に保護を依頼し
た方がいい。保健所とタイアップすることになる。
県医
今後、リストの調査をしていく中で、手あ
県医
げ医療機関が出てくると思われる。
認知症については、現段階で、厚生労働省の
指針がでていないため、見切り発車で進めている。
Q 全県的にコンサルトできる機関はないか。
機能案、イメージ図を作成してもらっているが、も
し今後厚生労働省から指針が出たとしても、今まで
班長
県精神科救急システムを実施している。他
の情報から基本的には大きく変わらないと思われる。
に、「こころの救急電話相談」(県立こころの医療セ
ンター内)を 24 時間実施しており、精神科受診な
2. 次期(6 次)保健医療計画郡市の意見・要望
ど早急な対応に関する相談を受け付けている。
について
下関市 「下関市医療連携手帳」を作成し、がん
Q
精神科疾患をもっている患者の身体の救急は
の医療連携パスを進めている。在宅医療では、下
いかがか。
関医療介護ネットワーク研修会や症例検討会を実
施している。救急医療体制は、基幹病院や消防、
班長
身体的疾患の治療を優先するが、現状では
保健所と協力体制ができつつあり、4 つの病院と
精神科医のマンパワーがない。
の間でルールを決めている。連携パスが動いてい
るのは少数である。救急医療は、上手な救急車の
県医
今回、厚労省は精神科と身体的疾患の両方
利用が重要だ。交通事故など多数の重症患者が発
ができる医療機関を「並列モデル」とし、精神科
生した場合の医療体制も今後の課題であり、対策
疾患だけ、あるいは内科など身体的疾患だけに対
協議会で検討することになっている。地域連携パ
応できる医療機関の連携を「縦列モデル」として
スや在宅医療に対するモチベーションが高くなる
いる。今後は縦列モデルの連携を密にしていかな
ような保健医療計画をお願いしたい。
ければならないだろう。
宇部市
Q
精神科疾患の患者が多動行為で暴れる場合、救
救急医療が喫緊課題である。身体合併症
がある精神疾患の患者の急性期の受け手がない。
急隊が引き取ってくれないときの対応について。
急性期医療を担う医師の疲弊や高齢化が進んで
出席者
郡市担当理事
大 島 郡 安本
忠道
美 祢 郡 時澤
史郎
徳
山
岡本冨士昭
光
市
兼清
照久
玖 珂 郡 藤政
篤志
下 関 市 大畑
一郎
防
府
原
伸一
柳
井
内海
敏雄
熊 毛 郡 西川
益利
宇 部 市 森谷浩四郎
下
松
河村
裕子
長 門 市
城山雄二郎
吉
南 西田
一也
山 口 市 近藤
修
岩 国 市
大島
眞理
山口大学
三浦
俊郎
厚 狭 郡 民谷
正彰
萩
丘
小野田市
山本
智久
市 中村
地域医療推進室
健康増進課
長寿社会課
室次長
郡
宜則
主
幹
藤井紀美代
主
査
西村
明弘
専務理事
河村
康明
主
幹
窪川耕太郎
主
査
坂井
主任技師
坂田
浩明
常任理事
弘山
直滋
主
査
嶋田英一郎
理
事
武藤
正彦
主
任
松村
理
事
今村
孝子
理
事
清水
暢
聖恵
敬介
精神疾患ワーキンググループ ( 班長 )
水津
信之
在宅医療ワーキンググループ ( 班長 )
濵田
敬史
886
県医師会
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
いる。小児科医療や周産期医療が破綻寸前で、二
ンターが平成 24 年 10 月から 24 時間体制で腹部救
次救急の輪番が動いておらず、県救急医療ネット
急を診てくれることになっている。在宅医療患者数
ワークが機能していない。地域の救急が効率よく
は訪問診療 283 人、往診 266 人であり、在宅医療
動いていないため、仕組みの改善と、地域の集約
を進めている。9 月末に訪問看護ステーションが一
化(場所、出務医師等)が必要になる。
か所閉鎖になる。柳井地域からは安定的な勤務医確
保が今後の課題である。
山口市
心カテ検査において、済生会山口総合病
院が二次救急の当番でない場合の流れがスムーズ
Q 医療体制の救急隊の位置づけについて。
にできていない。また、精神疾患や在宅医療の医
療連携ができていないので今後検討が必要である。
県医
脳卒中、急性心筋梗塞は疾病による特殊性
にある。
下松
県東部の精神科救急の対応が課題である。
班長
班長
県内精神科救急は東部、中部、西部の 3 ブロッ
精神疾患に関しては、厚労省案に入ってい
ないので、その場の状況で判断してもらえばいい。
クに分かれている。東部では泉原病院が多く受け入
れているので、コネクションをもってほしい。
山口大学
脳卒中と急性心筋梗塞は発症した時点
で三次救急である。その場合、心カテができる病
岩国市
24 時間対応するためには医師問題以外
にもコメディカルの協力体制も不可欠で、その充
院に送るべきであり、地域でホットラインをつく
り対応するよう大学からも指導したい。
足が問題である。小児医療も医師不足である。開
業医も交代で休日出務体制をとっている。岩国医
Q
療センターが精神科ベッドを閉じたため、精神科
るか。
消防等では救急の情報の共有は把握できてい
患者は 100%民間病院を頼っているので、これ
以上病床削減をしてほしくない。山口県保健医療
県
計画を立てるに当たっては、偏在のない医師配分
とは情報を取りあっている。
地区 MC 協議会で対応している。関係機関等
を考慮してほしい。がん拠点病院で連携パスを策
定し、稼働している。糖尿病は一般開業医が多く
県医 事前に郡市医師会から提出のあった要望等
担っているが、急性期病院に糖尿病専門医がいな
について、ディスカッションを行ったが、他の郡
い。岩国医療センターが平成 23 年 4 月から選定
市医師会で意見・要望があれば、事務局まで連絡
療養費を導入し、軽症救急患者の受診が減少して
いただきたい。
いる。救急医療対策会議を開催し各地域で自治体、
小学校単位で救急の啓発活動を行っているので、
《県からのお知らせ》
その効果も出ている。地域としての特性は、広島
県
市内の高度専門機関に行く患者が多い。地元住民
提供制度の定期報告(平成 24 年度分)を、県医
のアクセスや利便性を考慮して県の枠を越えた医
師会及び各郡市医師会長宛に本日 (8 月 30 日 ) 付
療供給体制も視野にいれ、考えていただきたい。
けで依頼しているので協力をお願いする。
柳井
閉会挨拶
人口 9 万 2,000 人、患者の高齢化率 35.3%。
平成 19 年度から実施している医療機能情報
二次救急病院は周東総合病院だけでやっと医療供給
弘山常任理事
体制が整っている状況である。平成 19 年 12 月よ
もう 1 回開催、地域医療計画委員会、理事会と
り休日夜間応急診療所を立ち上げ、主に軽症患者の
いう流れで検討していき、県に提出することにな
負担軽減に努めているが、土曜日が休診である。柳
る。今年度、精神疾患と在宅医療の医療連携体制
井、熊毛郡の開業医が輪番で行っているが、高齢化
について、新たにリストの調査を実施するので、
と人数不足でこれ以上の出務は難しい。柳井医療セ
ご協力をお願いする。
今後の予定は、精神疾患 WG を
887
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
第 54 回山口大学医師会・山口大学医学部主催
医師教育講座(体験学習)
「山口県医師会 ICLS コース」
と
き
ところ
平成 24 年 3 月 11 日(日) 8:30 〜 16:30
山口大学医学部霜仁会館
指導印象記
センター長の山下
山口大学大学院医学系研究科
救急・生体侵襲制御医学分野教授
進先生と当院集中治療部副部
長の若松弘也先生をアドバイザーとして招き、シ
鶴田良介
平成 15 年以来 9 年ぶりに山口大学医師会・山
ミュレーターのオペレーターとして徳山中央病院
から 4 人の看護師、山口消防から 4 人の救急隊員、
口大学医学部主催医師教育講座(体験学習)を救
その他大勢の医学部学生(コードオレンジ)の協
急医学講座が担当させていただきました。お話し
力を得て 6 人ずつの受講生、4 ブースのコース編
をいただいたのが 6 か月前、教育部門長(助教)
成で臨むことにしました(表 1)。2 人の外部講
の河村宜克と相談しながら構想を練って参りまし
た。まず、9 年前と同様に心肺蘇生法実習をテー
マに、場所は学内霜仁会館とすることを決めまし
た。日本蘇生協議会(JRC)から JRC(日本版)
ガイドライン 2010 が発表されて間もないことよ
り変更点を強調しながら成人教育、シミュレー
ション教育として汗をかきながら楽しく学べるよ
う工夫しました。そのため徳山中央病院救命救急
図1
888
挨拶
表1
カリキュラム
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
師もそれぞれブースを担当してもらうとともに当
ICLS の 名 称 は immediate cardiac life support
講座から小田泰崇と河村宜克もブース長(インス
の略称で、日本救急医学会が認定するコース名称
トラクター)となり、私と准教授の笠岡俊志が 2
です。したがいまして受講者とインストラクター
ブース(1・2 と 3・4)の監督役をすることにな
には日本救急医学会から実績証が与えられます。
りました。ほとんどの事務作業は河村宜克が熱心
今回の参加者には当日、お配りできず申し訳あり
に行ってくれました。また、前日の会議まで山下
ませんでした。後日、郵送されてお手元に届いて
進先生と若松弘也先生から熱い、気配りのある意
いると思います(図3)。
見をいただきました。
私の挨拶では、
「兎に角、受講された先生方に
楽しかったと言っていただけなかったら成功した
ことにはならない」ことを強調しました(図1)。
また、14 時 46 分の黙祷のお願いもしました。
河村宜克は事務連絡とともに予め配付していたプ
レテストの回収を行いました。これについては昼
休憩を利用して解説しました。正解率の低かった
問題を提示します(図2)
。
1. 口対口で人工呼吸を行う際は、呼気をゆっくりと 2 秒
以上かけて吹き込む。(×
1 秒程度)
2. 気道確保の方法として、第一選択は項部後屈法である。
(×
頭部後屈あご先挙上法)
3.1 人で行う心肺蘇生では、小児でも大人でも胸骨圧迫(心
臓マッサージ)と人工呼吸は 30:2 で統一されている。
(○)
4.2 人で行う心肺蘇生では、小児の場合は 15:2 、大人の
場合は 30:2 の胸骨圧迫と人工呼吸を行う。(○)
図3
実績証明書
今回の山口県医師会 ICLS コースの特徴を挙げ
ます。①脈拍の触知は必ずしも必要なく、呼吸
が止まっていたらそれは心停止であるという判断
にする。②「良質な胸骨圧迫を絶え間なく」をガ
イドライン通り強調する。③除細動器については
5. 呼吸の確認には、5 秒以上かけてはならない。
(× 10 秒)
ブースにあるものを中心に単相性・2 相性につい
6. 心 停 止 の 心 電 図 は Flat 、VF 、pulseless VT 、PEA 、
て説明をする。④心電図モニタのリード、誘導、
asystole の 5 種類である。(×
Flat は俗称、4 種類)
7.PEA とは脈拍を触知できないが、モニター上波形が認め
られる状態であり、除細動が有効なことが多い。(×
VF 、pulseless VT のみ)
感度は、胸骨圧迫を止めてまで確認するのではな
いと指導する。⑤挿管実技は行わない、挿管には
こだわらないことを指導する(図4)。
8. 除細動をする際には、金属パドルと患者さんの体の間
の通電をよくするため、濡れたガーゼや専用のシート
をおいたり、通電用のジェルを用いたりする。(○)
9. バッグバルブマスク(BVM)で換気を行う場合には
30:2 の換気ではなく、1 分間に 10 回のペースで換気
を行い、胸骨圧迫は 1 分間に 75 回のペースで、それぞ
れ独立して行う。(×
30:2 の換気、胸骨圧迫は 1 分
間に 100 回)
10. 点滴のルート(静脈路)を確保する場合、肘など関節
にかかる部位はさけるべきである。(×
図 2 プレテスト
肘正中静脈)
図4
気道管理
889
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
午後の休憩時間を利用して急遽、笠岡俊志引
率のドクターヘリ見学を企画しました。風は強
かったですが、好天気に恵まれ、医師会の先生方
へのドクターヘリへのご理解が深まったことと
期待します。午後からはいよいよ 6 人のチーム
で力を合わせ、知恵を絞る実践の連続です。し
かもこのコースの最後に Mega code といってモ
ニタ心電図の波形が VF 、pulseless VT 、PEA 、
asystole のどれか事前にはわからず、リーダーと
・
4 ・
4 ・
4 ・
4
して指揮をとることが試されるお さらい があり
ます(図5)
。リーダー役が「ついつい心電図モ
図5
ニタが気になり、胸骨圧迫を止めさせる」シー
Mega code 風景
ンに遭遇しました。日常、心肺蘇生に不慣れな
is learning twice.)。また、外部講師の先生方、看
先生方の最も頻繁に行いがちなことです。その度
護師、救急隊員、医学部学生の多くのご協力を得
に、
「2 分間モニタを見たくてもじっと我慢、我慢」
たことを心から感謝申し上げます。
のインストラクターからの声が聞こえました。
「良
偶然、東日本大震災から 1 年という日に、人
質な胸骨圧迫を絶え間なく」をやはり最も強調す
命の尊さを痛感することにもなりました。山口県
べきことでした。
医師会の先生方には今後とも地域医療、救急医療
最後に、今回の体験学習を通じまして私たちも
の支援のためご協力をお願いいたします。
多くのことを学ばせていただきました(Teaching
都道府県医師会
救急災害医療担当理事連絡協議会
と
き
ところ
平成 24 年 7 月 26 日(木) 13:00 〜 16:00
日本医師会館
小講堂
[ 報告 : 常任理事
日医会館で標記協議会が開催され、独立行政法
人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の超高速イン
弘山
直滋 ]
として、特に岩手・宮城・福島の被災されていな
い先生方にご協力をいただいている。
ターネット衛星「きずな」を活用し、テレビ会議
また、発災後に被災地では医薬品が大変不足
や電子カルテの共有などのデモンストレーション
し、日本製薬工業協会の協力で薬をいただいたも
が行われ、災害医療に対する協議が行われた。
のの輸送手段がなかった時に、アメリカ在住の医
師から米軍の協力を取り付けていただき、米軍機
挨拶
横倉義武日本医師会会長
による輸送が実現した。このように今回の震災で
東日本大震災では、全
は多くの協力により支援が行われた。
国の先生方のご協力により、被災地での健康支援
本日は、JAXA の衛星通信を使用したデモンス
として JMAT を組織し、少しではあるが現地の
トレーションが予定されており、こうした機能が
方々の力になることができた。現在も JMAT Ⅱ
災害時に有効に働くためには日ごろのトレーニン
890
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
グが重要である。災害は起きない方が良いが、わ
2. 災害時の非常時通信デモンストレーション
が国は自然災害が起こる可能性が高いため、日頃
JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)衛
から備えておく必要がある。本日の会を糧に各地
星利用推進センター
域でも災害に備えていただきたい。
ションマネージャー
五味センター長、中尾ミッ
超高速インターネット衛星「きずな」は、衛
1. 報告
救急災害医療をめぐる諸問題について
日本医師会常任理事
星を活用した超高速通信ネットワークの構築を目
石井正三
指し、情報通信研究機構と JAXA が共同開発した
東日本大震災における派遣状況は、JMAT(平
研究開発衛星であり、平成 20 年 2 月に打ち上げ
成 23 年 7 月 15 日 を も っ て 活 動 終 了 ) と し て
に成功して以降、東日本大震災での通信、遠隔教
1,398 チーム派遣し、それ以降の JMAT Ⅱが平成
24 年 7 月 23 日現在、594 チーム派遣し、今後
も 10 チームの派遣を予定している。
災害医療に対する国の施策として挙げられる
ことは、「災害医療等のあり方に関する検討会」
報告書(平成 23 年 10 月)のとりまとめ、平成
24 年 3 月の「5 疾病 5 事業」
、災害拠点病院制
度の見直し等からみられるとおり、都道府県・市
町村の体制、災害拠点病院、EMIS(広域災害・
救急医療情報システム)
、DMAT の見直しにより
再構築を進めている。
こうした国の施策に対して、
◇小さいアンテナで高速通信を実現
◇可搬性に優れ、臨時の回線提供可能
日医としては、
「5 疾病 5 事業」における JMAT
の位置付け、平成 25 年度予算概算要求に向けた
通信実験使用する「きずな」地球局
要望書において、被災地医療の復興のための基金
の積み増しや、医療体制の整備等を要望していく
方針である。
またその対策として、災害医療に関する研修
会・シンポジウムの開催や救急災害医療対策委員
会をさらに発展させ、日医の災害対応能力の強化
を図り、日医は日本最大の NGO として支援して
いきたい。
各都道府県においては、行政とのさまざまな
協定の見直しが進む気運だと思うので、今回の教
可搬型地球局 (VSAT)
1.0m Φ級
送信 : <51Mbps
受信 : <155Mbps
IATA 規格のスーツケースに収納
各ケースの重量は 10kg 〜 28kg
可搬型地球局 (USAT)
0.45m Φ級
送信 : <6Mbps
受信 : <155Mbps
商用衛星サービスに比べ、小型アンテナでの高速通信を実現
JCSAT-1b(Ku-SAT):アンテナ径 0.75m
映像(準動画)64kbps 、音声(電話)16kbps の 2 回線
Ethernet/IP インタフェース
⇒地上機器と高親和性:様々な安価な機器が使用可能
⇒地上の機器を用いてネットワークの信頼性、秘匿性をアップ ( 地上と同じ暗号化が可能 )
小型アンテナでの高速通信を実現:常設ではなく持ち運び可能、臨時の回線敷設に適している
訓を取り入れていただくとともに、協定を毎年見
直す項目を入れ、協議する場をつくり、顔の見え
る関係を築いておいていただきたい。
その他、平成 23 年度 JMAT に関する災害医療
研修会記録集を作成したので、生涯教育等の研修
材料にしていただきたい。
(記録集は、日本医師会ホームページメンバー
ズルーム内に掲載。
http://www.med.or.jp/japanese/members/chii
ki/jmat/120310jmat/)
891
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
育などさまざまな実証実験が実施されている。
東日本大震災直後、約 3 日間は携帯電話がつ
第 1826 号
トワーク回線を用いて、電子カルテ共有、患者画
像の参照などが行われた。
ながらず、約 1 か月はインターネット接続が不
能な状態であった。
「きずな」を活用することに
○シナリオ 2
より、関係者による情報共有が同時に可能とな
中に、突如東京湾で大地震が発生し、日医会館も
るテレビ会議、無線 LAN によるインターネット
被災、機能を喪失した場合を想定。
は患者カルテや投薬に必要な情報の入手等におい
大型台風が東京を直撃している最
日医から衛星「きずな」に接続し、北海道医師会、
て、大変有用な手段の選択肢の一つとなり得る。
埼玉県医師会とテレビ会議で連絡をとり、三者間
最大の魅力は、小さいアンテナで高速通信を実現
の「情報・連絡業務委託契約」に基づき、日医の
し、臨時の回線が提供可能で、地上で災害が発生
情報連絡窓口機能を北海道医師会、埼玉県医師会
した場合でも影響を受けないことである。
に移管した。また、埼玉県医師会への現地対策本
部の設置を依頼する手順などが確認された。
( 医 ) 社団八女発心会理事長
姫野信吉
災害支
援医療と言っても、日常の医療活動の延長上であ
3. 災害医療に関する講義
る。発災直後の状況把握、初動時の医療支援に
(1) 災害医療支援者のメンタルヘルス
JAXA 衛星回線は極めて重要な役割を示す。その
東北大学大学院医学系研究科准教授予防精神医学
理由として、クラウド型電子カルテを活用するこ
寄附講座みやぎ心のケアセンター
松本和紀
とにより、仮にメンバーが交替しても、各避難所
惨事ストレスとは、災害や悲惨な事故現場で活
で行うべき診療や処置の予定リストや実施報告な
動した人が経験する特有のストレスと定義され、対
どが確実に引き継がれ、必要な薬品や機材の携行
象は警察官、消防隊員、自衛隊員、医療職、行政職員、
や実行もれがなくなる。応答過程の可視化で確認
ボランティアなどが含まれる。惨事ストレスの典型
作業も大幅に効率化が図れる。また医療職には普
的症状は、基本的に一般の人と変わらないが、過覚
段どおりの診療行動が最も効率的であり、すべて
醒、解離、再体験、回避、罪悪感、過去のトラウマ
の活動記録が残るため、事後検証や改善、不法行
体験の再燃などが挙げられる。支援者は、誰もが惨
為からの防衛も可能である。
事ストレスによる影響を受け、多くは「異常事態に
対する正常な反応」として、時間とともに回復する
デモンストレーション
が、一部は慢性化するものもある。
衛星「きずな」を使用した災害時の被災地と全
惨事ストレス対策として、ストレスに対する
国の情報共有をテーマに、二つのシナリオでデモ
知識を事前に得ておくことや自分のストレス反応
ンストレーションが行われた。日本医師会、北海
をモニターする、休息と休養など個人レベルの対
道・埼玉県医師会に、それぞれ通信用アンテナが
応と、管理職や組織全体での知識と理解といった
設置され、衛星「きずな」の回線を利用し、テレ
組織レベルの対応方法がある。具体的な対策案と
ビ会議の実施や筑波宇宙センターを経由してのイ
して、定期研修や日ごろからの一般的なメンタル
ンターネットを利用できる環境が整えられていた。
ヘルス対策、派遣前のマニュアルの整備などが挙
げられる。
○シナリオ 1
北海道に西札幌断層を震源とする
大型地震が発生し、情報通信、インターネットが
途絶した場合を想定。
北海道医師会から、衛星「きずな」を通じてテ
(2) 法的課題への対応
弁護士、日本医師会参与
畔柳達雄
被災地での人道支援活動に伴う法律の扱いは、
レビ会議に接続し、日医と埼玉県医師会へテレビ
医療法に限らず、そもそもいろいろな場面を想定
会議で連絡をとり、現地対策本部の設置や JMAT
して作られていない。ただ、一度作られたものは
の派遣を依頼する手順が確認された。さらに、現
廃止とならない限り、いかなる時にも生きている。
地の状況説明として、衛星「きずな」からのネッ
特殊災害時の医師には患者を救うという正当な目
892
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
的があるため、まずは患者のために全力を尽くす
災発生後のいわき市の被害状況や活動状況を振り
べきである。法律家として言えることは、被災現
返ると、今回の震災は原発事故による放射線被曝
場は相当混乱しているだろうが、急いで判断しな
の危惧があり、医療救護活動は難しかった。そう
くてはいけない事象や判断が難しい事象に遭遇し
した状況下でも駆けつけていただいた JMAT の
た場合は、一人ではなく、できるだけ複数人で協
方々には深謝するとともに、政府には情報開示な
議し、英知を絞りながら判断することが大切であ
ど速やかな対応を求めたい。また、被災地への医
り、法律から身を守ることにもつながる。
薬品供給体制の確立も重要である。JMAT の支援
を受けるに当たっては、JMAT カレンダーや毎日
4.JMAT 活動報告
のミーティング等がうまく機能した。避難所への
(1) 秋田県医師会
電子カルテの導入や継続治療が必要な避難者の医
秋田県医師会救急災害医療委員会委員 長谷川 傑
今回の東日本大震災では、秋田県からの要請
療情報をどのように把握し活用するかは、今後の
課題である。
により、「秋田 DMAT」撤収後、
「秋田県災害医
療救護チーム(兼 JMAT)
」として二枚看板を背
5. 全体協議
負うことになった。
長崎県 「災害時の医療協定」について、JMAT を登
災害医療はシームレスでさまざまなフェーズ
録する場合の登録医師は日医会員に限られるのか。
があり、慢性期の災害医療は長期にわたり、医療
チームにはニーズの変化に対応できる柔軟性が必
日医 JMAT に日医の会員非会員は問わないが、
要である。また派遣元が異なる医療チームを束ね
医師の資格(免許)について問題となった事例も
る組織、そして確実な通信手段をもち、現実に即
あり、日医の認証システムを活用することで、医
した訓練が必要である。反省、教訓を活かす平時
師の資格確認やスムーズな給油など、シームレス
からの準備を呼びかけ、牽引役、調整役となる人
に動けるシステムを構想し、政府と交渉している
の養成、配置が重要である。
ところである。
(2) 兵庫県医師会
熊本県
兵庫県医師会常任理事
妹尾栄治
県との協定に登録した JMAT は自県へ
の派遣をしても問題はないか。
救護医療活動にあたった石巻市での支援活動
を通して、兵庫県医師会災害医療システムの見直
日医
問題ない。県内の派遣も対象となる。
しを予定している。石巻赤十字病院が実践した指
揮統制の一元化(ライン制による救護所分担、石
岡山県
巻合同救護チームとして一体化、公衆衛生アセス
断群分類)評価対象になるのか。評価されないの
メントシートを活用した情報収集とフィードバッ
であれば厚労省などへ要望してほしい。
常設の JMAT を組織した病院は DPC(診
クなど)が将来の模範となる。JMAT 兵庫の編成
構想は、① JMAT 構成員の事前登録制、②二次
日医
医療圏ごとに一定数の JMAT 構成員を確保する、
めた支援を行政と連携しながら考えていきたい。
DPC 評価は難しいが実費弁償、保険を含
③二次医療圏ごとに統括するリーダーを選定す
る、④県看護協会や県薬剤師会と JMAT 参加に
埼玉県 「きずな」を使ったシステム、機材がパ
関する協定書を締結し、⑤ JMAT 研修を具体化
ソコンやコンパクトなサイズ(携帯電話くらい)
することが挙げられる。
で運用可能になるのはいつごろか。
(3) 福島県医師会
JAXA
福島県医師会副会長
木田光一
現在、政府に予算要望中であり、それが
通れば 5 年後には実現できそうである。
支援を受けた被災地医師会の立場から、大震
893
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
都道府県医師会
電力確保対策担当理事連絡協議会
と
き
ところ
平成 24 年 6 月 15 日 ( 金 )
14:30 〜 16:30
日本医師会館 3F 小講堂
[ 報告 : 理事
都道府県医師会電力確保対策担当理事連絡協
議会が 6 月 15 日に日医会館で開催された。
今村
孝子 ]
ままに公開され混乱を招いた。今夏は日医が都道
府県医師会から二次救急医療機関の情報収集を行
本協議会は、東日本大震災を契機に日本の電
い、厚労省に提出した。③一か所の医療機関に通
力供給体制が見直されている中、今夏の全国的な
電すると、同時に配電所単位で 1,000 戸の住宅
電力不足が見込まれることから急遽開催された。
に通電することになるので優先順位を決めざるを
昨年の計画停電の状況などを踏まえ、政府や電力
得ない状況であり、都道府県医師会と自治体、電
会社との折衝状況の報告があり、今後の医療施設
力会社と連携して、地域の実情を踏まえて検討す
における計画停電時の対応策などについて協議さ
るよう要請された。
れた。まず、横倉義武日医会長から、①昨年の東
議事(2)計画停電時における病院・診療所へ
北電力・東京電力が突然の計画停電を発表した
の影響については、日本医師会総合政策研究機
際には、政府に実施時間(6 時半からの予定)に
構の鮫島信仁研究員が説明された。病院・診療所
ついての配慮を求めるとともに、都道府県医師会
への緊急アンケート調査により、東京電力管内で
長への直接連絡や NHK にテロップ表示の要請に
の計画停電時に多くの問題が発生したことが判明
より、医療機関や在宅医療における準備を呼びか
し、「日医総研ワーキングペーパー№ 253(東日
けたこと、②昨年 10 月に、厚生労働大臣等に計
本大震災に伴う計画停電・電力需給対策における
画停電時の通電医療機関の拡大の要望を行ったこ
病院・診療所への影響と対応に関する研究)
」の
と、③本年 5 月 25 日には、四病院団体協議会と
概要を示された。事例としては自家発電の切り替
ともに全国の電力会社 9 社にすべての医療・介
わる時間の長さやナースコールの使用不可、医事
護施設や在宅患者等に電力が供給されるよう要請
コンピューターが作動しないことへの病院全体へ
したことが報告された。都道府県医師会としても
の影響などをあげられた。
電力問題で患者が被害を受けないよう対策を講じ
るよう要請された。
発動下における電力供給の方法については、東京
議事(1)日本医師会における今夏の電力確保
対策並びに節電推進等については、今村
議事(3)昨夏の計画停電及び電力使用制限令
聡副会
電力(株)法人営業部都市エネルギー部の西村英
樹都市第四グループマネージャーが説明された。
長より報告がされた。①昨年の対応として「電気
まず、福島第一原子力発電所の事故と計画停電の
事業法第二十七条による電力使用制限令」(ピー
実施への謝罪の上、この事故のため供給力の約 4
ク時の電力使用を前年同期比 15%減)の対象に
割を失い需給ギャップが生じたため、計画停電を
医療機関も含まれていたことから、対象から除外
やむを得ず行ったこと、また今夏は計画停電を実
するよう政府等に働きかけ、医療機関の削減率
施しないとの見通しであることなどが示された。
が 0%に緩和された。②昨年は計画停電時に通電
議事(4)関西電力との協議状況報告について
される医療機関について、公的病院を中心とした
は、岩井
三次救急医療施設のリストが日医との協議のない
計画停電時の通電対象の医療機関は、二次、三次
894
誠奈良県医師会理事より報告がされた。
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
救急医療機関の線引きだけでは重要性の判断は困
卓司日医総研研究部統括部長より報告あった。自
難であり、近畿医師会連合を窓口に府県医師会と
主行動計画での取組は温暖化対策のみならず、節
連携して再検討され、各府県で 2 、3 の医療施設
電対策にもなることを強調された。
の追加が可能との回答を得たことや計画停電実施
質疑応答では、計画停電については関西電力
時の広報のあり方の要請、ポータブル発電機の貸
管内の医師会からの詳細かつ具体的な質疑が行わ
し出し数などについて説明がされた。
れた。また節電対策に関してのガイドライン策定
議事(5)その他として①計画停電と医師賠償
責任保険について、高島
等多岐にわたり活発に議論が交わされた。
昇日本医師会医賠責
豪雨や台風災害の危険がある山口県の医療機
対策課長が説明され、計画停電時の事故において
関としては、各施設の防災計画における停電時対
一律の判断は極めて困難なので、日医医賠責保険
応の再確認とともに、地球温暖化対策に止まらず
での保険金支払いは個別に判断との見解が示され
有事の際への備えとしても常に節電対策を行う必
た。②「2011 年 病院における地球温暖化対策自
要性を強く感じた。
主行動計画フォローアップ報告」について、畑仲
第 18 回中国四国医師会
共同利用施設等連絡協議会
と
き
ところ
平成 24 年 8 月 25 日(土) 13:30 〜 17:10
渓泉閣(鳥取県東伯郡三朝町)
[ 報告 : 理事
本年の中国四国医師会共同利用施設等連絡協議
今村
孝子 ]
個々には老朽化、地域内の公的病院との連携のあ
会は鳥取県医師会の引き受けで、日本医師会から
り方、臨床検査センターの利用件数の減少傾向等。
葉梨之紀常任理事の出席を得て、鳥取県東伯郡三
④公益法人制度への対応:移行が総会で決議済
朝町で開催された。研究発表は「医師会共同利用
みは公益社団法人 1 、一般社団法人 15 。移行申
施設の公益性と地域医療」をテーマに行われ、そ
請の予定時期は、平成 24 年度中 17( 既に一般法
の後ディスカッションも同テーマで行われた。
人認可の答申を得ている 5) 。移行先を選択する
研究発表に先立って、藤井武親鳥取県中部医師
会理事が事前アンケートの結果報告をされた。
( 平成 23 年 12 月 19 日 調査:対象施設
31)
にあたり共同利用施設を考慮したか否かについて
は、公益法人へ移行予定の医師会では、特段問題
なし 2 、多少問題あると思う 1 であった。一般
①医師会立病院を拠点としたクリティカルパスの
法人へ移行 ( 予定も含む ) の医師会では、共同利
構築:有 3( 益田市医師会、徳山医師会、岩国市
用施設等を有することにかかわらず最初から決定
医師会 )
9 、共同施設を有するため選択 6 であった。
②医師会立介護施設と会員診療所の連携:個々の
実情に沿ってさまざまな連携あり。
③共同利用施設の問題点 ( 地域医療への影響等 ):
共通な問題として医師をはじめとした人材確保。
895
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
研究発表「医師会共同利用施設の公益性と地域医療」
できる一般外来は行わず、専門外来 ( 県内に少な
1) 公益法人移行認定の医師会
い神経内科 ) と入院に特化している。大腿骨頸部
益田市医師会会長
内藤宗紀
骨折と脳卒中については地域連携パスを活用して
益田市は、面積が県土の 20%で 8 割が森林の
いる。かかりつけ医が入院から退院まで一貫して
中山間地域、人口は 5 万人 ( 昭和 30 年の 11 万
診療に当たる完全オープンシステムで、かかりつ
人がピーク ) 、高齢化率は 31.1%で 1 市 2 町を
け医=登録医=入院主治医である。デメリットは、
有する医療圏に属する。益田市医師会員数は 97
登録医の診療方針への個別対応が困難等がある。
名、医療機関数は 45( 病院:3 、診療所:42) ある。
現在新病院を建設中で、来年には完工予定である。
益田地域医療センター医師会病院は、昭和 61 年
法人移行については、平成 22 年に理事会で、
5 月に開設し、内科、外科などの外来と 343 床
平成 25 年 4 月に移行登記を予定して検討をス
( 一般病床 163 床、療養型病床群 88 床、回復リ
タートした。平成 23 年 6 月に移行法人を決定し、
ハ病棟 44 床、特殊疾患病棟 48 床 ) の入院施設
その後半年かけて定款を作成した。本年 8 月ま
があり、関連施設として保健予防センター、臨床
でには申請書類を整える予定である。法人に関し
検査センター、地域産業保健センター、へき地診
ては公益も一般も可能であったが、①事業運営の
療所、老健施設、訪問看護ステーション等を有し、
安定性、②事業運営の自由度、③税務、④寄附・
平成 10 年には全国で 7 番目、中・四国では初の
補助金等、⑤認定取り消しリスク等について検討
地域医療支援病院となり、まさに名実ともに地域
して一般社団法人での申請を決定した。今後も地
の中核的な役割を担っている。公益法人への移行
域から期待される医師会として活躍するために、
経緯は、平成 20 年の県からの意向調査を受け検
当面は現状を維持し、その後必要に応じて公益法
討を開始、平成 23 年 2 月に公益社団法人を目指
人への移行も検討する。
すことを決定し、平成 23 年 3 月に益田市医師会
総会で決議された。同年 11 月に県に電子申請し、
3) 施設紹介及び移行認定の取り組みについて
平成 24 年 3 月に県審査会で認定され、4 月に移
鳥取県中部医師会立三朝温泉病院長
行登記完了届出書の申請を完了した。なお、施
鳥取県中部医師会理事
設と会員医療機関の連携としては、近年では平成
三朝温泉病院は、昭和 14 年に軍事保護院傷痍
13 年に検査データ閲覧システムの導入、平成 16
軍人三朝温泉療養所として開設され、戦後国立病
年に電子カルテ化に伴う受託検査データ配付、平
院となった。昭和 61 年国立病院の再編成計画に
成 24 年に専任看護師による会員への情報提供の
より移譲施設に指定され、平成 12 年に鳥取県中
強化を図った地域連携室を設置した。
部医師会に経営移譲され、社団法人鳥取県中部医
森尾泰夫
師会立三朝温泉病院として開院された。病院職員
2) 一般法人移行認可予定の医師会
徳山医師会会長
は 236 名、病床数は 178 床 ( 一般 83 、療養 95)
岡本冨士昭
周南市 ( 平成 15 年に 2 市 2 町が合併 ) の紹介
であり、診療科は整形外科、心療内科、循環器内
科が中心である。オープンベットは 5 床あるが、
があり、続いて日本初のコンビナートがある周南
利用率はあまり良くない。CT 、MRI は共同利用
保健医療圏 (3 市、人口約 26 万人等 ) についての
ができ、鳥取大学との協定による画像の遠隔診断
スライド説明があった ( 県内なので詳細は略 ) 。
や隣接した岡山大学三朝医療センターとの共同診
徳山医師会の主な 4 事業は、①医師会本体、②
療も行われている。紹介率は 45%で、逆紹介率
徳山医師会病院、③徳山看護専門学校、④在宅支
もほぼ同様であり、在院日数は 16 〜 17 日である。
援関連であり、
本年 7 月 1 日現在、
会員数 312 名、
約 3 年前から QC サークル活動を取り入れ、本年
診療所は 112 である。医師会病院は昭和 41 年
4 月から、DPC の開始や電子カルテの導入がされ
4 月に設立、平成 13 年に地域医療支援病院に認
ている。
定され、病床数は 385 床 ( 一般 285 、療養 100)
法人化に向けての動きとしては、平成 22 年 4
である。急性期疾患は基幹病院に委ね、開業医が
月当初、黒字経営であることからも公益法人に
896
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
関しては否定的な見解であったが、会長の公益へ
表の科目等の変更をはじめ公益目的か収益事業か
の思いも強く、平成 23 年には公益法人を選択す
の仕分けに苦労した。課題として、開放型につい
ることを決定した。本年に入り定款を変更し、秋
ての指導料の算定回数が改定され、診療の質の低
には認定申請を提出予定である。医師会事業の
下や新規利用の確保が困難等と、介護職員の実習
94%が病院事業であり、かつ公益目的の事業が
( 喀痰吸引等 ) 先に苦労している。
定義されていない中、医師会病院の公益性への判
断は困難な面はあるが、本病院が鳥取県中部や岡
2) 岩国市医師会病院センター長
正木康史
山県北部の広範囲にわたる不特定多数の患者の治
岩国市 ( 旧岩国市と玖珂郡が合併 ) の人口は
療をしていることから、地域の公衆衛生の向上に
145,000 人であるが、医師会員は 155 名、診療
寄与しており、公益性の高いものと考える。中部
所数は 75 である。人口に比して会員が少ない理
医師会では看護学校や休日診療などの公益性の高
由は、国立病院の医師 ( 約 100 名 ) が入会してい
い事業を行っているが、今後、収支相償に配慮し
ないことと、玖珂郡医師会 ( 約 50 名 ) が独立し
ながら、災害時対応等種々の公益性の高い活動を
ているからである。岩国市医師会病院は、平成 5
行い、地域から信頼される公益性を担保していき
年に開設し、本館 ( 入院、外来、手術、検査・健
たい。
診部門等 ) と東館 ( リハ部門 ) があり、病床数は
201 床 ( 開放型 197:一般 127 、救急 15 、集中
ディスカッション
治療 5 、回復リハ 50) である。平成 10 年には地
・安来市医師会
理事
村上
宏
・岩国市医師会
病院センター長
正木
康史
ある。本年 10 月から電子カルテ導入予定である。
・益田市医師会
会長
内藤
宗紀
平成 23 年の紹介率 89.2%、逆紹介率 100.3%で、
・徳山医師会
会長
岡本冨士昭
救急センターは、医師会病院常勤医師、開業医 ( 平
・中部医師会
三朝温泉病院長
森尾
泰夫
日 19 〜 23 時に 3 名出務 ) 、山口大学の若手医
葉梨
之紀
師 ( 土日、祝祭日 ) の三者で年間 1 万人の患者に
コメンテーター:日医常任理事
域医療支援病院に承認され、DMAT も 2 チーム
対応しており、赤字補填は市が行っている。東館
1) 安来市医師会理事
村上
宏
に本年 7 月から岩国市療育センター ( 指定管理 )
安来市医師会は、会員数 64 名、安来、広瀬、
を併設し、年間 8,000 人の障害児の療育が見込
伯太地域の 3 地域に診療所 17 、病院 5 がある。
まれる。本年、ポケットカルテの導入も予定して
共同利用施設として、医師会病院、デイケアセン
いる。
ター、介護老人保健施設、看護ステーション、介
問題点・課題としては、マンパワーの確保 ( 医
護計画センターがある。安来市医師会病院は、昭
師も看護師も ) が困難で、かつ会員の高齢化も拍
和 60 年に山陰初の完全オープンシステムとして
車をかけている。また、岩国地域は救急患者数が
開設、病床数は 52 床 ( 医療療養 36 床、介護療
年間 28,000 人 ( 医師会病院 10,000 、岩国医療
養 16 床 ) である。病院周辺に多種類の施設が隣
センター 12,000 、開業医 6,000) あり、救急医
接 ( 介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、保
療の維持が課題である。マンパワーの確保ととも
健センター、歯科医院など ) しており、医療・介
に所謂「コンビニ受診」を減じるため至るところ
護・福祉が一体になった「伯太地区いきいきゾー
に出かけて医師などによるミニ講座を開催して効
ン」が構築されている。医師会員は 「 かかりつけ
果を得ている。
医 」 としてさまざまな場面でかかわりができ、切
れ目のないサポートが可能となっている。
法人選択にはかなり苦慮したが、規模が小さい
こと等を考慮して一般法人を選択した。会計基準
追加発言
内藤 ( 益田 )
専門医師の不足 ( 山大、広大 、 島
大から遠いので援助が得難い ) 。
が旧来 ( 昭和 60 年基準 ) のままであったため新
基準に変更したが、一足跳びであったため財務諸
岡本 ( 徳山 )
オープンシステムの利点は同一医
897
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
師による一貫した治療が可能であり、在宅関連の
のではないか。都会地では、共同利用施設として
サポートもできるため、患者の信頼と安心を担え
は特徴あることしかしないが、医師不足で地域医
ることができる。問題点としては、一般外来がな
療の確保が困難な地域での医師会病院はなかば犠
いため収益が下がること、ベットコントロールが
牲的精神でされていて感心する。今後は地域連携
困難、在院患者数の伸び悩みなどがある。工夫と
を柱に公的補助も取りながら上手にかかわってい
しては基幹病院の勤務医も会員になってもらい、
くことが求められる。医師不足に関しては、女性
共同利用施設をしっかり使ってもらうことにして
医師、高齢医師の活用が大切 ( 外国人医師は移民
いる。今後の課題は、人材確保、認知症の増加へ
問題等で実現は困難 ) である。2050 年には人口
の対応、外科系強化のために麻酔科医の確保など
が 8,000 万人 ( 労働人口 4,000 万人 ) と推計され
がある。
ている中、現在、若い世代にフリーター医師が約
4,000 人いるといわれているが、これらを地域医
森尾 ( 三朝 )
温泉を利用したリハが特徴の病院
療に関与させることはかなり困難である。
だが、医療圏 ( 人口 10 万人 ) での立ち位置を模
索中である。高額医療機器の共同利用による会員
の負担軽減や、経営的には少し心配ではあるが、
特別講演
「医師会共同利用施設の課題と将来展望」
日本医師会常任理事
外来を減じて入院に特化して会員に寄与できる病
院にしたい。
葉梨之紀
まず、地元医師会での小児救急の体制づくり
の経験として、小児救急医療を公立病院がタッチ
質疑
しないため医師会が手がけ、人材を確保し運営す
医師会病院の利用会員の固定化についての質問
ることにより、一年目は行政から補助金をもらっ
については距離的制限等もあり、やや固定化の傾
たが二年目からは多額の収益金が出るようになっ
向はあるが、入院時のスキル習得はそれを超える
た。住民の望みに添って自治体と協力していけば
ものであるとの答えがあった。また、医師会が医
良い方向にいける。
師会病院に関与する意義についての質問では、岩
国市医師会から、医師会が市民の希望 ( 外科手術・
東日本大震災:日本医師会の主な活動
回復リハ・救急・緩和ケアの要望 ) に沿って、行
全国から約 1,500 チームの JMAT が派遣され
政を巻き込んで、市民のためになんとか頑張るこ
たことに感謝する。被災地域の医療機関が 2 割
とに医師会病院としての意義があるとの発言あっ
近く減少し、一番困っている福島県では、若い人
た。その他、施設基準の問題 ( 常勤医師数など ) 、
( コメディカルも ) は県外に移動、高齢者は生活
指導料の取り扱いについては県によって違いがあ
保護受給者が多い。地域再生が遅れている原因と
るのではという発言もあった。
しては国の援助の遅れがある。
「共同利用施設は公益事業であり、かつ医師会
が公益法人として認められることがすなわち社会
貢献・地域貢献できるということであろう」と座
長が締めくくられた。
今夏の電力確保対策並びに節電推進
今夏は計画停電が実施されず安堵した。昨年
の実情から政府等に二次救急病院への通電要請を
した ( できれば人命を預かるすべての医療機関に
葉梨日医常任理事 まず、
公益法人制度改革では、
通電を望みたいところだが ) 。今後のエネルギー
より公益が取りにくくなった ( 当初よりは徐々に
として注目は水素である。計画停電における医療
取り易くなっている ) が、全国的には持ち分なし
機関への影響等については日医総研 WP( 平成 24
の一般法人で多くがスタートしている。将来は公
年 2 月 ) の報告書に掲載されている。
益法人ということでも良いのではないか。救急医
療を医師会病院が全面的にするには無理があり、
一般財源が投入されている公的病院ですれば良い
898
消費税について
現状でも 4,000 億円を医療機関が負担をしてい
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
るが、このままの仕組み ( 社会保険診療報酬は非
援病院本来の趣旨 ( 医療施設機能の体系化の一環
課税なので患者から消費税は貰わず、診療のため
として、第一線で地域医療を担っているかかりつ
の設備や医薬品の仕入れには消費税が掛かる仕組
け医等の支援 ) に沿った元の承認条件に戻すよう
み ) で消費税が 10%になれば医療機関の廃業も
主張している。
有り得る。DPC の導入等でより複雑になり実態が
不明瞭となっているが、厚労省はきちんと検討を
4) 医師会検査・健診センター
していない ( 薬代の診療報酬での反映等 ) 。自・
検査・健診センターの抱える課題として、特定
公は低減税率、民主は減税・現金給付のようだが、
健診実施率の低下や健診項目の削減による影響、
25 年の税制改正に向け、高額なものへの対応に
検査料金の民間との競合、新規開業会員獲得の困
ついて早急な解決を要望することにしている。
難さ、行政による随意契約見直しの影響等があり、
今後検討が必要である。
「医師会共同利用施設の課題と将来展望」
1) 新公益法人制度について
医師会共同施設 (1,310 施設 ) のうち、医師会
5) 切れ目のない地域医療体制の構築
次期医療計画では 5 疾病 5 事業・在宅医療の
病院は 84 で、
中四国地域では 17( 病院の 2 割強 ) 、
医療連携体制を書き込むことになっており、特に
介護関連施設は 955( 全体の 7 割 ) であった。平
在宅医療拠点の一つとして地域医師会が位置づけ
成 23 年 6 月調査 (772 郡市区等医師会 ) では移
されているが、点ではなく面としての連携が重要
行形態は、公益 57 、一般 513 、一般後公益を
である。在院日数短縮や病床削減策ではない患者
目指す 45 であった。公益を決めた理由としては、
の QOL 向上や、医療・介護の機能分担のための
公益性を内外に明確に示すため、社会的評価の高
在宅医療であることが大切である。また介護施設
さが魅力、税制上の優遇等で、一般を決めた理由
の終末期患者の救急搬送のあり方の取り決めも必
としては、将来に亘り継続して公益認定基準を満
要となろう。特に地域の医療機能の役割分担と連
たせるか不安、公益認定取り消し時に財産を失う
携は、住民がわかりやすく、かかりつけ医が使い
リスク、認定基準内の収支相償を充足できない等
やすく、地域全体の医療機関が参加しやすいもの
である。最新のデータは日医ホームページで確認
でなければいけない。それぞれの地域で構築され
できる。
る「医療提供体制」と全国に適応される「医療保
険制度」の両方が安定しなければならないし、医
2) 医療法第 31 条における公的医療機関認定
「それぞれの地域医師会と医師会病院は固有の
療連携・機能分担は医師会共同利用施設の今後の
テーマになると考える。
事情を抱えており、すべての医師会病院が公的医
( 質疑:岡本徳山医師会長より新法人制度によ
療機関となるのを希望するかは不明瞭」とのスタ
り役員の責任が重くなったが、役員賠償責任が
ンスで調査 ( 平成 23 年 12 月 ) し、64%の回答
発生するのかの問いに対しては後日の回答となっ
率で 7 割が公的病院を希望していた ( 少数ではあ
た)
るが、行政からの独立性を担保しつつも、行政機
関へのアピールをすべきであり、違った方法のア
プローチが必要との意見あり ) 。
終わりに、次期開催県として高知県医師会の
岡林弘毅会長から、次回は 2014 年 8 月 30 日、
高知市での開催予定であることが報告された。
3) 地域医療支援病院のあり方
地域医療支援病院はかかりつけ医等を支援する
目的で 1998 年に創設されたが、2004 年の見直
しにより承認要件が緩和され、病院数は大幅に増
加し 330 に達している。現在では国公立病院が
多く承認されている。日医としては、地域医療支
899
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
平成 24 年度
中国四国学校保健担当理事連絡会議
と
き
平成 24 年 8 月 19 日(日)10:00 〜 12:50
ところ
ホテルグランヴィア岡山
担
岡山県医師会
当
担当の岡山県医師会・丹羽会長、
コメンテーター
3F「パール」
[ 報告 : 常任理事
山縣
三紀 ]
高知県では今年度から土佐市でモデル事業とし
の日本医師会・道永常任理事の挨拶ののち、協議
て、
「土佐っ子ヘルスアップ計画」が立ち上がった。
に入った。
対象者は小 5 から中 1 までの全児童で、血液検
査と身体検査を実施している。
議題 1
学校保健委員会の設置について【高知県】
学校あるいは地域によって温度差がある。回数
や児童・生徒の参加、専門医の先生方の出席はさ
まざまである。しかし、児童・生徒が積極的に参
問題点として検診を誰が行うかである。愛媛県
のように大学と連携して、大学と学校の養護の先
生又は地域のドクターが主導で、校医がされるこ
とが一番望ましいと思われる。
徳島県は二次検診をかかりつけ医で、三次検診
加しているところは、とても活発に議論があり、
で大学(内分泌)を利用している。二次検診につ
うまくいっている。
いては、地区を限ればできそうであるが、かかり
つけ医の力が大事である。また、養護の先生方の
日医
今後も活発なものにしていってほしい。
議題 2
各県における小児生活習慣病検診の取り組み
(特に介入)について【香川県】
愛媛県では松山市、今治市、宇和島市で積極的
熱心さも重要である。
日医 血液検査に関しては、話題になっているが、
予算の問題があり難しい。しかし、質問のあった
小児の正常値については、委員会で盛り込むこと
はできると思う。
に取り組んでいる。実際には、血液検査・血圧測
定・貧血等をチェックして、二次検診は、それぞ
議題 3
れの医療機関を受診するようにしている。松山市
任意、定期ワクチンの卸からの納入価格はどの
では、毎年 2 月から 3 月に対象の児童に「小児
ようになっているか、各県の実情を伺う。
【愛媛県】
生活病相談センター」を開設しフォローをしてい
山口県では標準価格(案)を示し市町と協議し
る。今治市では、養護の先生や栄養士の先生が中
心となって積極的に事後指導を行っている。また、
夏に親子ともに参加して料理教室を開催し、指導
決めていることを報告。
ワクチンに関しては、医師が儲けるという誤解
がないようにすることが大事である。
を行っている。しかし残念なことに、対象の子ど
9 月の中国四国医師会連合研究会の議題とし
もに比べて、参加する子どもが少しずつ減少して
て、委託料金の計算方法について照会する予定と
いるため、全体的な効果という意味では向上がみ
発言。
られないが、地道な努力をしている。
香川県では、今年から県の予算がつき、半額補
助がある。
900
さまざまなやり方もあるが、山口県が一つの方
式をだされている。統一価格にされたのは参考に
なる。ただ、メーカーの力が強くなり高止まりし
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
ているのは気になる。
第 1826 号
議題 5
中学 3 年生での「くすり教育」必修化の状況
日医
委託料金については、東京都の場合は、東
京都と東京都医師会で料金を出している。
不活化ポリオワクチンの納入価格については、市
について。【鳥取県】
熱心な養護のいる中学・高校でははじめられて
いるところはある。
町村会と一緒に厚労省に話をもっていった。価格を
また、全国にキャラバンカーがあり、元麻薬捜
低くしろとはいえないので、供給をきちんとしてほ
査官の方が加わり、実施されているようである。
しい、ワクチンの価格をもう少し下げ、副作用がな
中国地方では岡山が本部と聞いている。
いことを含めて要望を行った。
キャラバンカーでは、薬のこと、麻薬をからめ
たことを教育してもらえる。
関連要望 1
HPV 、Hib 、プレベナーワクチンは新しく定
日医
薬の授業に関しては、薬剤師の先生が講
期化されるようであるが、他の任意ワクチン、
師になっていることが多い。その中に学校医にも
HB 、水痘、おたふく、インフルエンザ(小児)
入ってほしい。
等の定期化へ向けての日医の対策があればお聞き
また、禁煙対策については、早い時期から「た
したい。また定期化を進めていく上で助成の地域
ばこは体によくない」ということを教え込むこと
格差を生じないような対策を、日医はどのように
が大事である。
考えているのかお聞きしたい。
【愛媛県】
議題 6
日医
接種主体が市町村なので、あまり強いこと
学校と幼稚園・保育所との連携体制について
【広島県】
が言えないというのは事実である。おたふくかぜ
と水痘をまず定期接種化してもらいたいと要望を
鳥取県の 5 歳児健康診断の紹介があった。
していたが、子宮頸がん予防ワクチン等がなって
松山市では未熟児で生まれた子どもの場合、保
しまった。今後、定期接種にするには、皆が受け
護者の希望・申し出があれば、入学を 1 年延期
やすい価格を設定しないといけないと思っている
するような体制をとっている。1 年遅らせること
ので、今後も、厚労省に要望していきたい。
によって、入学後、学校に適応しているという症
例も何件か報告を受けている。
議題 4
課外の球技活動
(スポーツ少年団)
の監督やコー
日医
母子手帳の情報が小学校になかなか反映
チングスタッフに対する医学的知識の教育はどの
されないということを聞いている。本来は就学時
ようにしておられるのか。
【山口県】
健診のときに手帳の情報が反映されるべきである
広島県から学校関係者でない方が指導者の場合
が、なかなかできていない。以前、出生から継続
が多く、研修会がとても大事である。また、捻挫
可能な「健康手帳」が考案されたことがあるが、
の応急措置として RICE というのがあるが、認知度
全国的な活用にはいたっていない。
が低い。監督、コーチのみではなく、生徒、保護
者にも啓発が必要である。広島県医師会スポーツ
医部会では、年 2 回研修会を開催し、1 回は市民
公開講座で行っているという追加発言があった。
議題 7
学校医認定制並びに校医研修会の開催状況につ
いて【徳島県】
本会の「学校医活動記録手帳」の紹介を行った。
日医
研修会はとても大事であると同時に、日医
学校医の定年制について、広島市では 80 歳を
認定スポーツ医の先生方の活動の場にできればよ
超える方に対して、その年度末に、引き続き学校
いのではと考えている。
医を続けられるかどうかを伺っているとのことで
あった。
901
平成 24 年 10 月
日医
山口県医師会報
学校保健検討委員会で検討を行っていく予定。
第 1826 号
関連要望
文科省から各都道府県・指定都市教育委員会、
関連要望
各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学長宛
学校医のあり方について【広島県】
に、武道必修化に伴う柔道の安全管理の徹底につ
学校医と他の専門医又は園医・嘱託医との連携
について要望したいと思う。園医・嘱託医との連
携に関しては、幼稚園・学校医との情報の共通化
いて(依頼)の文書が平成 24 年 3 月 9 日付けで
提出されている。その一部が下記であるが、
(4)事故が発生した場合の対応について
と、縦断的かつ継続的な指導が可能となるような
体制を考慮していただきたい。
厚生労働省、文部科学省の枠を越えた現実的な
体制づくりをお願いしたいと思う。また、日医の
事故が発生した場合の応急処置や緊急連絡体制
など、対処方法について関係者間で認識を共有し
ているか。
【留意点】
研修会に関しても、土曜日の学校保健講習会、日
十分でない場合は、早急に事故が発生した場合
曜日の母子保健講習会とは別に、お互いが関連す
に対応できる体制を整備すること。
るような研修会を考慮していただきたいと思う。
2
各学校の設置者においては、上記 1 の各項目
が満たされた上で柔道の授業が実施されるように
日医
今年度の学校保健講習会は平成 25 年 2 月
すること。なお、条件が満たされていない項目が
24 日、母子保健講習会は 2 月 17 日を予定して
発見された場合には、当面、柔道の授業の開始を
いる。
遅らせ早急に条件整備を進めるなど適切な措置が
講じられるようにすること。
議題 8
『運動器の 10 年』の他県での普及実施状況に
ついて【島根県】
山口県臨床整形外科医会では各郡市において養護
日医では学校保健の現場でこのような事故が発
生した場合等を考え、整形外科を今後学校医に設
置する又はそれに準ずる対応を考えておられるか
お聞きしたい。【山口県】
教諭と整形外科の先生で懇談会を開催している。
整形外科の校医への参加等、検討の有無はあるか。
日医
日医からは明確な回答はなかった。
運動器検診については、とても重要である
が、現状の学校健診の枠組みで、できるかどうか
が問題である。何らかの工夫が必要である。学校
医の先生方が無理なくできるような形にもってい
きたい。
議題 10
健康教育(特に総合学習への学校医の参画)に
対する学校側からの依頼の有無について。また、
学校保健に対する学校医の熱意・温度差について、
議題 9
他県の状況を伺う。【島根県】
中学校における武道、ダンスの必修化に伴う学
校現場での対策について【島根県】
日医
健康教育に関しては、がん教育が流行って
きたので、今年度、一つの柱として学校医の先生
日医
まずは、事故が発生しないようにどのよう
に気をつけるかが一つであるが、学校で指導する
先生方への啓発として事故が起こらないように働
方にお願いする予定である。
学校医の先生方、養護教諭の先生方とうまく連携
をとって、健康教育に積極的に参画いただきたい。
きかけている。しかし、もしも事故が起きた場合
は、学校医の先生や専門の整形外科の先生、脳外
科の先生の連絡先について、養護の先生にリスト
アップしていただき、そちらにまず連絡していた
くように話しをもっていく予定である。
902
関連要望
文部科学省の専門医派遣事業を大きくするよう
働きかけてほしい。【徳島県】
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
日医 子どもの健康を守る地域専門家総合連携事
他の職種の発表も可。医師以外の演者の割合につ
業については、事業仕分けの結果、平成 23 年度
いては、担当県にまかせる。
末に廃止となっている。その後、平成 24 年度か
中国地区学校保健・学校医大会の演題募集につ
ら文科省の新規事業として「学校保健課題解決支
いては、四国からも提出いただいてもかまわない。
援事業」が開始されている。なかなか活用がされ
その他要望
ていないのが現状である。学校側が教育委員会に
申し出をすれば、専門医の派遣をお願いできるよ
・学校での定期健康健診項目の見直し【鳥取県】
うにはなっているので活用をしてほしい。
・定期健康診断時の女子生徒(特に中、高)の上
半身脱衣について【島根県】
議題 11
学校現場でのエピペンの使用について
【岡山県】
日医
文科省にて今年 5 月に「今後の健康診断
の在り方等に関する検討会」が発足され、日医か
保険で複数本処方ができるようにしてほしいと
らは道永常任理事が委員とし参加。検討会では、
の要望に対して、保険担当理事と相談したいと、
学校健診の目的、健診項目、事後措置、その他の
日医から回答があった。
健診制度の問題についても話し合いを行っていく
予定。
議題 12
学校健診の実施主体は学校・自治体であるが、
中国地区学校保健・学校医大会における医師以
外の発表者の取り扱いについて【岡山県】
プライバシーが保護できるような環境を作るよう
提案していきたい。
学校医・医師が共同演者となっている場合は、
平成 24 年度中国地区学校保健・学校医大会
と
き
平成 24 年 8 月 19 日(日)13:00 〜 16:20
ところ
ホテルグランヴィア岡山
担
岡山県医師会
当
引き受けの丹羽国泰岡山県医師会長による開会
のご挨拶に続き、横倉義武日本医師会長、竹井千
庫岡山県教育委員会教育長の祝辞が述べられ、続
いて各県研究発表及び特別講演 2 題が行われた。
4F「フェニックス」
[ 報告 : 理事
沖中
芳彦 ]
共同発表者
あんどうこどもクリニック 院長
安藤幸典
益田地域医療センター医師会病院 院長 狩野稔久
島根県益田市の小中学校コレステロールスク
リーニングは平成元年に開始された。一次健診は
各県研究発表
各学校で行い、その検査結果を保健予防センター
1. 島根県益田市における小中学校コレステロー
で集計し、小中学校を通して高コレステロール血
ルスクリーニングの実施状況について― 22 年
症の児童、生徒は、二次検診にかかりつけ医に受
間のまとめ― ( 島根県 )
診している。かかりつけ医を受診した検査結果は
中島こどもクリニック
院長
島根県医師会学校医部会常任委員
保健予防センターで回収するシステムに、平成 6
中島匡博
年からしている。高コレステロール血症の児童、
生徒及び保護者の希望者はコレステロール教室
903
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
に参加している。かかりつけ医の二次検診では、
催し、多い年は 6 回、近年は 1 回開催している。
身長、体重、血圧、腹囲を測定し、空腹時採血
しかし残念ながら 23 年度から休止中である。コ
において、総コレステロール、中性脂肪、LDL 、
レステロール教室参加人数は複数開催のときは
HDL 、血糖値を測定する。なお、平成 19 年に小
70 人ぐらいだったが、近年は 20 人前後で、親
児のメタボリックシンドロームの診断基準が厚労
子で参加する例が多い。コレステロール教室から
省研究班より策定され、平成 21 年より診断基準
明らかになった家庭における食事についての問題
の腹囲、血糖値を二次検診以降に加えている。
点は、麺類を好む、大豆などの摂取が少ない、間
一次健診の実施率は、平成元年は 10 〜 20%
食が多い、夏休みに太るなどであった。
だったが、次第に増加し、近年では小中学生と
平成 20 年に日本小児科学会より「21 世紀の
もに 5 割の子どもたちが一次健診を受けている。
小児科問診票」が出された。子どもの夜更かし、
次に一次健診の学年別、年度別の変化をみると、
メディア漬けが問題となっており、睡眠、メディ
平成元年では 10 〜 40%前後であった。平成 5
ア接触、食事について項目が掲げられている。
年から益田市では検査希望者は公費負担となっ
小児の健康教育の重要性として、生活習慣病に
た。対象者は、小 1 、3 、5 、中 1 である。平成
ついては予防が重要で、小児の理解度が大切であ
5 年からは該当学年の 7 割〜 9 割は受けており、
る。集団を対象とした教室形式の実習を加えれば、
その他の、小 2 、4 、6 、中 2 、3 は 4 割前後が
より具体的な内容を習得することが可能となる。
受けている。
小児期の特性である発達発育とこころの健康づく
小 学 生 の 高 コ レ ス テ ロ ー ル 血 症 の 頻 度 は、
りが重要で、適切な栄養摂取を目的とした食生活
200mg/dl 以上は平成 10 年の 21%をピークに
のもとに、生活リズムの確立をはじめとする生活
減少している。コレステロールが 220 以上は 5
全般を土台とした健康教育の展開が必要である。
%前後である。中学生では、200 以上は 12 年の
17%がピークで減少傾向にある。220 以上も同
2. 新型インフルエンザ流行時における広島県内児
様に 3%前後である。子どもたちは検査結果票を
童・生徒の対応―アンケート調査から― ( 広島県 )
もって、二次検診のかかりつけ医を受診し、結
広島県地域保健対策協議会健康危機管理対策専門
果票を益田医師会地域医療センターで回収する
委員会委員
システムになっている。高コレステロールの判断
基準は、血清総コレステロール値が平成元年から
200 以上、平成 5 年からは 200 〜 219 は要再検、
220 以上は要精密となった。コレステロールの
広島県医師会学校医部会部会長
新田康郎
3 年前に新型インフルエンザが大流行し、全国
的に大きな話題となった。
広島県では広島県地域保健対策協議会として、
二次検診の受診率は平成 6 年から把握している
広島大学と県行政と県医師会がいろいろな県内の
が、10%台から 30%台に増えている。LDL 直接
問題について検討を行っている。流行した 1 年
測定は平成 13 年から導入となり、近年は 90%
後の一昨年 7 月から 10 月の間に一般県民を対象
前後で推移している。
にアンケート調査を実施した。
かかりつけ医を二次検診で受診した子どもた
解析したアンケートの年代でみると、4 〜 5 歳
ちの血清脂質をローレル指数 160 以上の肥満と
で 37,000 件、 小 学 校 低 学 年 で 25,000 件、 高 学
非肥満で比較検討を行った。対象は平成 6 年か
年 が 25,000 件、 中 学 生 が 19,000 件、 高 校 生 で
ら 20 年に二次検診を受診した小中学生 1,079 人
19,000 件の回答があった。「どの情報が一番役立
である。コレステロールが 200 以上、220 以上、
ちましたか」については、テレビとの回答が多く、
HDL が 40 未満は、肥満と非肥満間で有意差はな
次に新聞であった。また、新型インフルエンザに「罹
かった。中性脂肪が 140 以上、LDL が 140 以上、
ったと思ったことがありますか」については、「罹
動脈硬化指数が 3 以上では、肥満例は非肥満例
患したと思った」のは高校生以上で 25%であり、
に比し優位に高率に脂質異常を認めた。
小児〜中学校よりは明らかに少なく、年齢別罹患
コレステロールの教室は、平成元年から毎年開
904
率と同様な傾向であった。また、「罹患したと思っ
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
た」人の大部分が医療機関、特に 83%はかかりつ
第 1826 号
共同発表者
け医を受診し、小児ではこの傾向が強かった。パ
山口県医師会副会長
濱本史明
ンデミック時のかかりつけ医の重要性が明確であ
山口県医師会健康教育委員会委員長
安野秀敏
った。新型インフルエンザと確定診断されたのは、
山高健康の日とは、自立に向かう高校生が自ら
高校生以上は 20.8%で、小児〜中学生は 40.4%で
の心身の健康や命を考える会であり、生徒たちの
あり、「罹ったと思った」人の約 80%が確定診断
手づくりの会である。企画から発表までを生徒保
されていた。また、二次医療圏ごとの診断確定者
健委員会が運営している。実施時期は毎年 1 月で、
の頻度は地域により 2 〜 3 倍の格差があり、県西
参加者は全校生徒及び全教職員である。自らを見
部で高かった。
つめ、よりよい自分に向かおうとする力、自ら課
診断時期をみると西部、北部一部で 10 月には罹
題を見つけ、解決しようとする力、自ら考え表現
患率が 10%を超し、11 月頃から東部、北部でも
しようとする力、さまざまな人と伝え合い関わり
増加してきた。平成 21 年度の新型インフルエンザ
合う力などの力を育むことをねらいとしている。
は、県西部・県北部から県東部・県北部に拡大した。
保健委員会活動としては、まず今年度の流れの
また、年代別にみると中・高校生→小学生→幼児
確認、代表者によるランチ会議、ドラマの脚本づ
→成人→高齢者に拡大した傾向がうかがわれた。
くり、全校生徒を対象としたアンケートの集計等
「学校・仕事を休みましたか」については、園
児や児童・生徒の約半数は園・学校を休んでお
り、成人では仕事を休んだのは 20%以下であっ
を行い、11 月には山口市保健センターの施設訪
問を行っている。
講座の講師(平成 23 年度は 13 講座を開講)は、
た。また、家族内感染は、子どもへの拡大が主で
内科、眼科、耳鼻科、歯科医など、学校医はもち
あった。予防については、子ども、成人ともにう
ろんのこと、地域のドクター等にも協力を依頼し
がい、手洗い、マスクの着用、ワクチンが主なも
ている。
ので、咳エチケットは少なかった。高校生では「特
にしていない」という回答が約 17%と多かった。
予防接種については、幼児や高齢者は高率に受
けていたが、若者の接種率は低かった。受けた理
当日は、オープニング行事を体育館で行い、終
了後、各自希望の講座を受けている。
講座終了後は、各自ホームルームにもどり、自
己評価・感想文書きを行っている。
由は、「予防に有効だと思ったから」が多く、次
委員会活動で工夫したこと・大切にしたいこと
いで「家族に推奨されたから」
、
「優先順位に入っ
は、時間はつくるものであるということ、そして
ていたから」との回答だった。受けなかった理由
学校医・専門機関と連携し、普段から信頼関係を
としては、「ワクチン不足」
、
「すでに罹患してい
築いておくことである。また、認めるということ
た」がそれぞれ 3 割あった。また高校生では、
「時
が大切で、評価はステップアップの原動力になる。
間がない」という回答が多かった。罹患率とワク
今後の課題として、時間の確保、リーダー養成、
チン接種率との関係をみると、
接種率の高い地域、
保健委員一人ひとりの育ち、学校医・専門機関と
高い年代は罹患率が低く、ワクチン効果が明らか
の連携において、さらに工夫が必要ではないかと
であった。不安については、
「命・健康に関わる
考えている。
4
4
こと」が最多で、
「学校に行けなくなること」も
最後に、養護教諭として、丈夫な頭で賢い体を
多かった。また、
「情報が多すぎた」という意見
つくる、柔軟な心でプラス思考ができる、自己管
も約 20%あった。
理やコントロールができる生徒を育てたい、そう
今後の発生時には専門的な立場からの「地域での
いった願いをもって、日々生徒に接している。生
迅速な対応」、
「適切な情報提供」が大切と思われる。
徒や養護教諭にとって、校医は一番の応援団であ
る。校医の先生方は、是非とも学校に足を運んで
3. 生徒が創る「山高健康の日」 〜主体的な保
いただきたい。
健委員会活動を育む養護教諭の支援〜 ( 山口県 )
山口県立山口高等学校養護教諭
沖野芳江
905
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
4. 岡山県のトリコフィトントンズランス感染症
調査報告 ( 岡山県 )
三浦皮膚科医院院長
第 1826 号
さらに今年度から中学校で武道必修化になり、
昨年のアンケートによると岡山県では約 51%
三浦由宏
の公立中学校が柔道を選択している。全国では
トリコフィトントンズランス感染症とは、トリ
64.1%が柔道を選択するとなっている。今年の調
コフィトントンズランスという真菌(カビ)によ
査では、トンズランス感染症のためでなく、柔道
る感染症である。2001 年以降、柔道やレスリン
が危険とする指摘から変更するケースがあった。
グなどの格闘競技選手を中心に報告例が続いた。
武道必修化がもたらす結果として、これまでは
別名、格闘家白癬として、頭と体に白癬の症状が
格闘競技部員とその友人、家族などに限定してい
でてくる。頭に出た場合は、自覚症状がほとんど
た本症が、授業を介して一般の生徒や家族に感染
ないため、無症候性キャリアとして選手間や家族
が拡大する可能性が高くなった。
間感染の原因となっている。当初は高校生に一番
一般への感染防止対策として、柔道部員全員に
多かったが、最近では、中学生、小学生、学童と
ヘアブラシ法を施行し、陽性となった部員の授業
低年齢化が進んでいる。症状は顔面、胸、前腕、
への参加を禁止する。また、柔道部員を模範演技
すねなどの肌の擦れ合う場所に赤い斑点が出てく
者として使わないようにし、柔道着の貸し借り、
る。頭の白癬の場合は、症状が出にくいが、しば
共用を禁止する。岡山県医師会、岡山県医師会学
らくして毛髪が根元からちぎれて、ボロボロ抜け
校保健部会、岡山県医師会皮膚科部会の連名で、
てくる。診断は、病変部からの鱗屑を苛性カリで
感染の拡大を予防するように岡山県教育委員会、
溶かして、菌糸を確認する。また、ヘアブラシ法
岡山市教育委員会宛に要望書を提出した。
(100 円ショップで丸型ヘアブラシを購入し、頭
皮を 15 〜 20 回擦り、
ブラシを培地に押し付ける)
特別講演
で、2 週間後に菌の繁殖を確認する。
1.『学校検尿のすべて』改訂のポイント・『私の
治療方針としては、体部白癬は抗真菌剤を外用
カルテ』への期待
するが、多発する場合は内服する場合がある。頭
倉敷中央病院小児科部長
桑門克治
部白癬は、菌の量が少ない場合は、抗真菌剤を
「学校検尿のすべて」が、この春に改訂された
含んだシャンプーを 3 か月間使用していただく。
ため、それを中心に説明する。倉敷市連合医師
菌が多い場合は、
抗真菌剤内服を 1 〜 6 週間して、
会のホームページに、倉敷市学校検尿マニュアル
3 か月後にヘアブラシ法で菌の消失を確認し、治
2006 の PDF ファイルがある。現在、改訂作業を
癒を判定している。感染したままの状態での練習
行っている。
や試合を介して他の部員にうつしてしまい、集団
CKD(慢性腎臓病)対策は 2002 年から世界的
感染の原因となる。過去の集団検診で 10 〜 40
に始まっているが、日本でも 2006 年に日本透析
%が菌をもっていたとの報告があるため、集団検
医学会、日本腎臓学会、日本小児腎臓病学会の 3
診は必要である。岡山県では 2009 年に第一報を
つの学会が主になって啓発活動を始めた。昨年、
報告してから集団検診を開始した。
岡山大学に CKD・CVD・地域連携・心腎血管病
大学、高校のレスリング部員と中学の柔道部員
態解析学講座ができ、CKD 対策協議会の地域連
に対し、集団検診を 2010 年度は 312 人に行い、
携ガイドラインを作成した。行政の方でも 2009
高校レスリング部が 16.6%、高校柔道部が 9%、
年に特別対策事業実施要綱がつくられ、都道府県
大学柔道部員が 6.1%、中学柔道部員が 0%で、
が実施主体となり、昨年は政令指定都市、中核都
岡山県内では格闘競技者の 9.2% が保菌者であっ
市も実施主体に加わり、日本小児腎臓病学会小児
た。翌年は、2 〜 12 歳の学童柔道クラブの協力
CKD 対策委員会でも都道府県代表者会議を開催、
が得られ、岡山県内全体の保菌率は 6.3%であっ
岡山県でも CKD 対策協議会がスタートした。
た。本症は感染症であるので、治癒するまで練習
CKD とは、腎障害の存在が明らかになってい
や試合への参加は禁ずるべきであるが、さまざま
る、すなわち蛋白尿、GFR のいずれかが 3 か月
な問題のため実現していない。
以上問題となっている状態である。死亡リスクに
906
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
関して、蛋白尿と GFR がそれぞれ独立してリス
をしていたものを、今回は運動強度別に変更した
ク因子となること、心血管リスク因子に関しても
ことが画期的である。また、小児腎疾患患者に対
同様であることが、2000 年ころから問題となっ
する運動制限についてのアンケート調査では、浮
ている。透析の原因は、以前は慢性糸球体腎炎が
腫や高血圧の程度が重度でない限りはなるべく外
主体であったが、最近では糖尿病性腎症が最も主
来で治療を行うという回答が多かった。
な原因となっている。ちなみに、20 歳までに透
CKD 診療ガイド 2012 によると、小児 CKD の
析を始める症例数は、年間 60 〜 100 例程度で
生活指導・食事指導としては、CKD の各ステー
ある。子どもの腎臓を守るために、先天性腎尿路
ジを通して、基本的に運動制限を行わない。水分
奇形がある子を早くみつけ管理を行う、慢性腎炎
の過剰摂取や極端な制限は行わない。一部の進行
を早く見つけて治療をする、生活習慣病予防に取
症例を除き、低形成・異型性腎患者において、水
り組むなどの必要がある。
分及び塩分制限は避ける。小児では原則としてた
1970 年代は溶連菌感染後急性糸球体腎炎が多
んぱく質制限を行わない。浮腫がみられるときや
く、腎炎と言えば安静・食事療法と言われていた。
高血圧時には塩分を制限する。制限はこれだけで
IgA 腎症は、当初は比較的予後良好な疾患と言わ
ある。すでに腎機能が低下した小児に対してもこ
れていたが、数年間経過をみていると末期腎不全
のような指導内容であるため、たまたま学校検尿
に至る症例が散見された。また、ステロイド依存
で異常がみられただけで食事制限をすることには
性ネフローゼ症候群は長期入院することが多く、
問題がある。
クッシング様の合併症が起こる。また、乳幼児期
体位性蛋白尿の診断について、尿蛋白 / クレア
に末期腎不全に至ると 20 歳の誕生日を迎えられ
チニン比でみることを(控えめに)推奨している。
ないと言われていた。
体位性蛋白尿は基本的には、早朝尿は陰性、随時
当初は血尿・蛋白尿で多くは腎生検を行ってい
尿で陽性であれば診断してもかまわない。元気な
たが、ほとんど異常が認められなかった。子ども
小学生でも 1 〜 2 割が陽性となる。わざわざこ
では、体位性・起立性の蛋白尿が多かった。
の名前をつけたのは、治療不要の蛋白尿であるこ
IgA 腎症、糸球体腎炎では、かつては 10 年で
とを示すためである。尿蛋白 / クレアチニン比は
半数が慢性腎不全に移行していた。
これらに対し、
希釈尿・濃縮尿の条件の違いを避けるためである。
積極的にステロイド大量療法を行うことによって
酵素法による血性クレアチニンの中央値は、4
予後が良くなっていった。透析や腎移植に至った
歳で 0.30 mg/dl 、11 歳で 0.45 であるため、小
小児期の末期腎不全の原因として、1998 年以後
児で 0.6mg/dl であれば、腎機能の軽度異低下と
はそれ以前に比し慢性糸球体腎炎の割合が 10 分
考えられる。筋肉が十分に発達していない小児
(2
の 1 に減少している。先天性腎尿路奇形の割合
歳以上〜 12 歳未満)の血性クレアチニン値は、
は増えているが、これは実数が増えているわけで
身長(m)× 0.3 程度が正常値に相当する。
はなく、かつては透析に至る前に亡くなっていた
ものと思われる。
「学校検尿のすべて」の改訂ポイントを紹介する。
以前は尿沈渣検鏡による赤血球数が 20 個まで
は微少血尿として区別をしていたが、その区別は
意味がないと考えられ、5 個以上はすべて無症候
まず、それまで安静が重視されていたものからな
性血尿とされるようになった。小児で顕微鏡的血
るべく有酸素運動をさせるように変わってきた。
尿のみであれば、専門医への紹介は不要である。
その象徴的な点として、備考欄の追加が行われて
IgA 腎症であっても、血尿だけであればさしあた
いる。安静神話の解体という意味で、1970 年に対
りは大丈夫で、血尿+蛋白が続く場合は腎生検の
し現在では、外科手術後の早期離床、リハビリの
適応となる場合がある。Alport 症候群で、遺伝
早期開始を行っている。またステロイド大量療法
形式で最も多い X-linked では、男性は 20 代前半
中の合併症(血栓症、骨粗鬆症など)の発生率は
で約 50%が、女性は 50 歳頃に約 20%が末期腎
安静によって高くなることがわかってきた。平成
不全に移行するが、血尿単独で腎不全になること
14 年度の学習指導要領改訂では運動種目別に制限
はなく、蛋白が出てくる。
907
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
子どもを慢性の病気から守るには、バランスの
傾向にある。平成 13 年に行ったアンケート結果
取れた食事(塩分控えめ、脂っこいものを避ける)、
をみると、校医は内科系が 4 割、眼科系、耳鼻
十分な睡眠、運動を楽しむなど、各人の体にあっ
咽喉科系それぞれ 3 割弱ずつ、これら 3 科で 97
た生活習慣を大人になる前に見つけることが大切
%を占めている。これ以外には、外科系、産婦人
である。子どもだからといって、好きなことだけ
科系、整形外科系、精神科系、その他の診療科の
をして好きなものばかりを食べていてはいけない。
先生方が学校医になっている。この傾向は現在
20 歳の時に痩せていた女性は、標準の体型だ
でも同様である。数年来、専門医派遣事業のニ
った人に比べて、およそ 5 倍、妊娠中に糖尿病
ーズが全国的に非常に高いことは、今後の学校
になりやすいという調査結果を、筑波大学の研究
制度を検討する際に考慮しなければならないと
グループがまとめた。男性は戦後の食糧難から食
思う。体格について、子どもたちの平均身長は平
料が豊富になるにつれて、
BMI が増加しているが、
成 9 年〜 13 年度あたりにピークがあり、その後
女性はすべての年代で 1990 年代から BMI が下
は横ばい傾向にある。体重の平均値の推移は平成
がっている。20 代に至っては、戦後よりも今の
10 年〜 15 年度当たりをピークに、その後は減
ほうが平均 BMI が低いという状況である。平均
少傾向にある。都道府県別の肥満傾向児の出現率
出生体重も減少して、現在では 3.0kg を下回って
は、11 歳男子の肥満度が 20%以上のものの割合
おり、低出生体重児の割合も増えて、10%くら
は 9.46%となっている。都市部のほうが相対的
いになっている。早産・低出生体重児は腎の糸球
に肥満傾向児の出現率が低い。また、男子は女子
体数が少なく、一つの糸球体が大きいことがわか
にくらべ肥満傾向児の出現率が相体的に高い。肥
っている。その場合、過剰濾過が起こって、腎組
満傾向児の出現率の推移は全体的には減少傾向に
織に変化が生ずると考えられている。日本人は低
あるが、男子 17 歳については横ばい、ないし、
栄養の環境に合わせた遺伝子発現パターンに対し
やや増加傾向がみられる。主な疾病、異常等の推
て相対的に過剰な栄養摂取となり糖尿病になる。
移は、近年 5 年間で大きな変化はみられないが、
英国の場合はもともとたくさん食べるため低栄養
齲歯に関しては改善傾向がみられる。喘息につい
の経験があまりない。すなわち日本人は少し太っ
ては、子世代では喘息がある児童・生徒が、父母
ただけで糖尿病になりやすい。現代では、肥満だ
世代に比べ多くなって、アレルギー疾患が多くな
けでなく、「るい痩」も問題である。
っているのが認められる。平成 20 年にまとめら
倉敷市の学校検尿システムは昭和 48 年より開
れた学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイ
始し、平成 18 年から養護教諭・教育委員会が入
ドラインの利用により、アレルギー疾患のある児
力して電子データとしている。近年では、母子保
童・生徒が安心して学校生活が送れるようになれ
健情報、健診情報、予防接種管理システム、また、
ばいいと思っている。また、学校保健では、現在、
学校健診の身長・体重記録の電子化が始まってい
環境省においてエコチル調査を行っている。この
る。検診の事後措置やその後の支援のため、学校
調査は、胎児のときから 13 歳になるまで、健康
医・かかりつけ医と専門医(小児科、内科など)
状態を定期的に調べる出生コホート ( 追跡 ) 調査
との連携が重要である。
である。胎児期や幼児期の化学物質曝露がアレル
ギー疾患等の原因になっているのではないかとい
2. 学校保健の現状と課題
日本医師会常任理事
う仮説をもとに、2011 年〜 2027 年までの 16
道永麻里
年にわたって、全国 15 地域で 10 万人の子ども
学校保健の現状であるが、現在 1,800 万人の
たちと両親に参加してもらう調査である。将来的
子どもたちが学校という場で過ごしている。
過去 10 年間の児童・生徒の学生数の推移を
には、調査結果が学校保健にも役立つのではない
かと期待をしている。
みると、一貫して児童・生徒数は減少しており、
いじめの認知件数は、前年度と比べ 2,500 件あ
10 年間での減少数は 135 万人余りとなっている。
まり増加しており、合計で 75,000 件になってい
学校医の数も子どもたちの数の減少に伴い、漸減
る。児童・生徒数が減少傾向にある中で、このよ
908
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
うな結果になっていることは、非常に重く受け止
文科省が「平成 22 年度児童生徒の自殺予防に
めなくてはならない。いじめを認知した学校数は
関する調査研究協力者会議審議のまとめ」という
15,675 校で、前年度から 549 校増えている。全
報告を出している。その中で、学校、教育委員会
学校数に占める割合は 42.2%と半数近くの学校で
が、子どもの自殺する事実に対して、しっかりと
いじめ問題がある。前年度の 37.9%から 5 ポイン
向き合おうとする姿勢をもつという意識をしっか
ト近くアップしている。いじめの発見のきっかけ
りもった上で、たとえ学校にとって不都合なこと
は、学級担任が発見したのが 20%未満である。誰
であっても事実を明らかにしていく姿勢が重要と
が子どもを守るのかという課題がみえてくる。
考える。今後の自殺防止という観点からも、事実
過去 10 年間、児童・生徒数は減少し続け、体
格的には安定的に成長している。肥満度は 20%の
に対してしっかり向き合うことが、真の再発防止
の手がかりに繋がる。
割合が 10%近くなり、アレルギー疾患をはじめと
今回の大津市の中学校での一連の顛末を受け、7
した現代的な疾患が増加している。加えて、子ど
月 22 日には平野文部科学大臣が、全国の学校や
もたちの数が減っているなかでのいじめや暴力件
教育委員会に対し、いじめに関する専門的な指導・
数が増加している事実を勘案すると、学校現場に
助言を行う新しい組織を 8 月中にも文部科学省内
おいては、アレルギー対策、生活習慣病対策の必
に設置すると表明した。7 月 24 日には、文部科学
要性はもちろん、従来とは違ったケアや指導が求
省スポーツ・青少年局学校健康教育課に、いじめ
められている。なによりメンタル面で非常に厳し
防止対策に学校現場で学校医の先生を活用してく
い環境にさらされている子どもたちには、早急な
ださいと申し出た。7 月 31 日には平野文部科学大
対応が必要である。学校保健上の重要な課題につ
臣が、いじめ問題に対する総合的な取り組み方針
いて、子どもの心身の健康課題は、いじめ、自殺、
を 8 月中に策定することを明らかにしている。
不登校などのメンタルヘルスの問題、生活習慣病
8 月 1 日に子ども安全対策支援室を設置し(メ
の若年化、アレルギー疾患、感染症、性の問題行動、
ンバーは警察庁職員やいじめ対策研究所)、いじ
薬物乱用、運動器障害など多様化、深刻化している。
めによる自殺のほかにも自然災害などの重大事態
これらの問題は子ども、保護者、学校、学校医だ
が起きた場合に職員の派遣をしたり、その他の自
けで対応することは困難である。家庭や学校を中
殺の可能性がある場合にも対応する。8 月中には
心に地域保健の枠組みの中で医師会や医療機関な
いじめ問題への総合的な取り組み方針がまとめら
どとの連携を強化した組織体制で学校保健をとら
れる。新しい組織がきちんと機能するよう日医と
えることが不可欠である。その際、多様化する問
しても注目をしたい。
題に対処するためには、各科の診療科の専門医師
に参画してもらう必要がある。
文部科学省の報告書では、子どもたちの自殺
予防教育の実施にあたって、地域の専門家と連携
平成 13 年に大阪府池田市でおきた小学校での
して支援体制の充実を図る必要があるとされてい
事件をきっかけに、
学校保健法が大幅に見直され、
る。野田首相も先日、いじめ問題でメッセージを
平成 21 年から学校保健安全法が施行されている。
発信された。文部科学省の報告書とあわせて考え
改正の趣旨は、児童・生徒等が被害者となるよう
ると、地域全体の中で子どもたち、保護者、教職
な事件、事故、災害等から子どもたちを守ること
員、教育委員会に対し、医師によるメンタルヘル
と同時に、メンタルヘルスに関する問題、アレル
スの教育が必要であると実感している。
ギー疾患等をかかえる児童・生徒の増加への対応、
アメリカでは、青少年の命を守り育てるという
学校における食育推進の観点からの学校給食の重
ことが社会的な合意になっていて、地域で大人た
要性の高まりなどがある。学校保健安全法が施行
ちがさまざまな取り組みをしていることが注目さ
されてからの 3 年間、法律の趣旨に則って学校
れている。それでもなお、アメリカでもいじめが
保健が機能してきたかどうか検証すると同時に、
深刻な社会問題になっている。8 月 7 日までにワ
実際に子どもたちを守る学校保健のあり方を対策
シントンでいじめ防止サミットが開催されたが、
すべきである。
いじめ問題を国家として取り組むべき問題ととら
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
えている。オバマ政権は、10 月から始まるいじ
果、人工妊娠中絶率低減に成功した。そして、岩
め防止キャンペーンを支援するとのことである。
手県においては、女子高校での心の検診にエコグ
子どものいじめ問題を考えるとき、それは子ど
ラムを導入し、生徒の生活態度を向上させたと伺
もたちだけの問題ではなく、大人が規範を示さな
っている。これらの地域の取り組みの積み重ねが、
いといけないと考えている。規範意識が薄れてい
地域の学校保健現場を動かし、ひいては政府を動
る現代であり、国民の健康と生命を守る役割を担
かす上での原動力になると考えている。
っているわれわれ医師が、学校保健に限らず、子
この 5 月から、文科省において、今後の健康
どもたちによい影響をあたえることは不可能では
診断の在り方等に関する検討会が開催されてい
ないと思う。
る。主管は文科省スポーツ・青少年局学校健康
いじめの問題を踏まえ、子どもたちのメンタル
教育課であるが、オブザーバとして、厚労省健康
ヘルス問題をみてみたい。学習指導要領では、生
局も参加している。この検討会の前段として平成
きる力、ライフスキルを育むことを理念に上げて
23 年 12 月 21 日から平成 24 年 3 月 30 日まで
いる。心の健康教育について、小学校から高校ま
の約 3 か月にわたって、文科省が日本学校保健
で指導内容が定められているが、非常に専門的で
会を通じて調査を行っている。学校に対しては、
かつ教えることが容易ではない内容を、教師や養
児童・生徒の健康診断について、予算や実施状況、
護教諭だけで教えられるのか考えてしまう。本当
事後措置の実態、検診項目の追加や削除、学校医
に学習指導要領の理念を現実的なものにしていこ
の役割を調査している。教育委員会に対しては、
うとするならば、やはり医師が心の健康教育を行
就学時健診に関する予算や受検率、健診項目の追
わなければならないと思う。
加や削除、そして健診内容に関する保護者からの
これまで、地域で医師会や学校医の先生方が学
クレームの有無等について調査をしている。教職
校や行政、病院団体、医会などと連携して、子ど
員の健康診断についても、予算や実施者、実施状
もたちのメンタルヘルスの向上に貢献いただいて
況、受検率等について調査をしている。これらの
いる事例がいくつもある。福岡県医師会では、県
調査結果をもとに、近年の学校における健康診断
立高校での性とこころの健康相談事業を昭和 60
の実施体制の実態を検証するとともに今後の健康
年代より開始している。行政と産婦人科医会、精
診断のあり方等について検討が始まっている。
神科病院協会との連携の中で、校長をはじめ保健
現在、学校保健安全法施行規則第 6 条 1 項によ
主事、養護教諭などの学校関係と連携しながら、
って、児童・生徒等の健康診断検査項目としてこ
混迷する時代に戸惑い、立ち止まり、つまづく高
れらが定められている。新聞報道等でさまざまな
校生や教師、保護者を対象に、講演とこころの健
憶測記事が載っているが、項目の追加や削除につ
康相談を行い支援する事業である。
いては、論点を整理した上で議論となる。この調
教育内容、相談内容を生徒、教師、保護者別に
査結果を踏まえての、これまでの 2 回の議論の状
整理すると、相談内容は多岐にわたりながらも重
況である。論点としては、学校における健康診断
なるものが多い。高校生はまさに子どもと大人の
の目的、健康情報の取り扱い、事後措置、検診精
境界にあり、メンタル面で戸惑っている時期であ
度の問題に分けられる。学校での定期健康診断の
るが、生涯保健上のメンタルヘルスを左右する大
目的として、東京都医師会が学校医の手引きを作
切な時期でもある。その時期の生徒のメンタル面
成している。その目的は、学校生活を送る上で支
での不安や悩みを教師や保護者が共有するという
障となる疾病、異常を早期に発見すること、及び
ことは非常に大切である。
ヘルスプロモーションの理念のもと、児童・生徒
そのほかの地域での取り組みを紹介する。宮城
の個々及び集団としての発育や健康状態を正しく
県では、小学校 4 年生の児童と PTA を対象に「い
把握することになる。検討会では、この考え方を
のちの大切さ」を伝える性教育 PTA 授業の推進
議論の基盤として、時代や環境変化に応じた学校
によって、児童や保護者、教職員の意識向上に効
での健康診断のあり方などを検討する予定である。
果をあげている。秋田県医師会では、県教育庁と
とくに学校での健康診断の結果をどのように活
連携し、全県の小中高で性教育講座を推進した結
かすか、PDCA(Plan-Do-Check-Act) サイクルのな
910
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
かで子どもたちの健康維持にどのように反映させ
検診に努めたいとコメントしている。全国で問題
るかについて問題提起されている。従来より学校
となっている女子の脱衣について、行政によって
保健安全法施行規則第 9 条に、事後措置につい
正しく指導されるべきであるということも含め、
ては詳細に設定されているが、学校や教育委員会
学校における健康診断の在り方等に関する検討会
によって事後措置への対応が異なっており、必ず
に提言し、協力していきたいと思う。
しも標準化されていなかった。
学校保健というのは生涯保健の大切な基盤にな
学校における健康教育は、感染症、メンタルヘル
ス、性教育、いのちの大切さ、生活習慣病(含禁煙)、
るもので、その後、労働安全衛生につながってい
がん、医薬品教育、薬物教育などそれぞれ重要性が
くことから、学校における健康診断の事後措置は
指摘されている。健康教育は子どもたちの成長の過
極めて重要である。これまで、学校での健康教育
程に応じ、体系的になされることが重要である。
はそれが目的化され、
実施される気概があったが、
平成 23 年度に、小中学校における結核対策を
たとえば健康診断の結果をもとに学校医や専門医
主な内容とする、学校における結核検診に関する
が子どもたちに健康教育を施すことができれば、
検討会が開催された。23 年 8 月に報告書を取り
子どもたちの当事者意識を喚起し、より効果的な
まとめ、今年の春には学校における結核対策マニ
事後措置になるのではないかと考える。健康診断
ュアルが学校現場、教育委員会、各医師会に届け
実施から診断結果に基づく事後措置実施までのシ
られた。とくに問診を実施するにあたっては、結
ステムを作り上げ、例えば労働安全衛生法におけ
核検診専用の問診票を用いることになっていたも
る健康診断結果に基づき、事業者が講ずべき措置
のを、日本医師会から法律制の点で課題があるこ
に関する指針などを作って実践することができれ
とを指摘した結果、問診票を健康調査票等に統合
ば、国民の生涯保健が一層の充実したものになる
してもよいとされた。まだ、従来の問診票を使っ
と思う。
ている地域が多いようであるが、先日、文科省に
学校保健安全法における健康診断は、次のよう
に整理される。まず健康診断を適切に実施できる
対し、現場で使い勝手の良い問診票を工夫するよ
うあらためて申し出を行った。
環境の整理、例えば女子生徒の脱衣の問題。次に
結核と同様、昨年度は、日医として、文科省ス
時間等の制約のなかでの必要な検査の効率的な実
ポーツ・青年局における学校において予防すべき
施。健診の目的にあった報告の設定(問診票の活
感染症の指導参考資料の作成協力者会議があり、
用がこの中に入る)。効果的な事後措置の実施。こ
それに協力をした。現在、指導参考資料を執筆中
れは、健康指導や保健教育さらには健康教育の充
であるが、感染症予防に関する啓発書となること
実にどのように健康診断を活かしていくかである。
を目的とするとともに、インフルエンザ等で学校
大阪府能勢町での側わん症の見落とし訴訟事件
を休む期間の明確化を図っている。インフルエン
では、学校医の先生が思春期の女子に裸の背中を
ザでの出席停止期間について、日医としては、発
出させることができず、脊柱検診をしていないと
症後 5 日かつ解熱後 2 日という提案をし、それが
述べている。おそらく女の子の恥ずかしい気持ち
本年 4 月の学校保健安全法施行規則の改正に反映
に対する善意の判断だったと思うが、そもそも学
されている。義務教育期間に、日常的な感染症を
校医が判断しなくてはならない問題だったのか。
もとに、ライフスキルとして、遷るということに
原告の生徒側は学校医が診断できなければ、町は
ついて正しい知識を身につけることは学校保健の
別の対策をとるべきだと主張している。学校医が
役割として重要と考えている。性教育については、
診断できるように町が対策をとるべきという考え
文科省、学校現場、教育委員会のそれぞれの意向
方が正しいと思う。結果、和解となったが、裁判
があり、非常にデリケートで難しいものである。
長は町が検診を徹底していなかったことを指摘。
今年度より中学校の学習指導要領に薬の正しい
原告の代理人弁護士は、脊柱検診の必要性が学校
使い方を学ぶ授業が盛り込まれ、6 月に港区の中
と保護者に周知されたと評価し、また町は子ども
学校で授業が行われた。薬剤師による薬授業とい
たちの病気を早期に発見するため、より充実した
うのは非常に効果があるが、まず学校医である医
911
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
師が薬の授業を行う必要性もあるのではないか。
第 1826 号
全管理がある。
この 8 月から日本医師会では学校保健委員会
文科省に設置された体育活動中の事故防止に関
が開催され、横倉会長から、これからの学校健診
する調査研究協力者会議が先日取りまとめた、学
と健康教育という諮問をいただいた。学校健診に
校における体育活動中の事故防止に関する報告書
ついて、文科省にある検討会に積極的に委員会の
からの抜粋である。この報告書に関しては、7 月
意見を提言する予定である。また、健康教育につ
10 日に都道府県医師会宛に送付しているが、そ
いては、健康診断の事後措置としての健康教育も
の検討会には、日本医師会からも参画している。
あわせ、より充実した健康教育の方策を探ってい
平成 10 年から 21 年度の間に、学校の体育活動
きたいと考えている。これまで学校保健安全法を
中に発生した事故のうち、傷病別の事故件数は突
中心に学校保健の課題をみてきたが、最近の厚労
然死等が全体の 61%を占めている。体育活動中
省の検討会や報告書とからめ学校保健を考えてみ
における年度別の推移であるが、突然死等、全体
ると、これまでに日医が訴えてきた学校保健の在
的に減少傾向にあるが、いずれの年度でも 50%
り様に近づいているのかなと思う。
以上の突然死がある。中 1 から高 3 までの部活動
厚労省は今年 3 月に地域保健対策検討会の報
の事故である。部活動中の事故は 318 件あった。
告書を出した。今後の地域保健対策のあり方の報
報告書では普通の授業では頭を打たない、打たせ
告の中に、学校保健の意義の大きさを指摘してい
ないことを生徒に認識させ、国の指導を徹底する
る。平成 20 年 1 月の中央教育審査審議会の答申
と述べている。今年度から中学校では、武道が必
において、中学校区ごとに設置させる地域学校保
修化され、多くの学校が柔道を選択することがわ
健委員会ほか、市町村レベルで教育委員会及び保
かった。国公・私立の中学校の 64%が柔道を選
健部門の行政機関や地域の学校医等が連携する場
択するとのこと。約 8 割の学校が柔道の授業の開
として、学校地域保健連携推進協議会(仮称)の
始を 9 月と夏休み明けからと予定している。
設置を通じた地域ぐるみの取り組みの必要性が指
学校の体育活動中における突然死のような悲劇
摘されている。保健所、市町村、保健センター等
を防ぐ手立てとして、健康教育、健康診断が重要
が学校を取り巻く関係者との協力の場に積極的に
だと思っている。そして、疾患のある子どもある
参加し、学校と十分連絡をとった健康づくりを進
いは疑いのある子どもに対しては、検査の受診、
めることが重要であると述べている。7 月 10 日
治療、生活管理、経過観察などの事後措置が重要
に厚労省から告示された国民の健康の増進の総合
になる。突然死の予防について、先日、日本臨床
的な推進を図るため、基本的な方針では、都道府
救急医学会と連名で、文部科学大臣に学校での心
県において市町村、地域医師会等が連携し、地域
肺蘇生教育の普及に向けての提言を行った。子ど
のキーマンに健康教育を図る必要があること、そ
もたちの命にかかわる心肺蘇生教育は学習指導要
して地域保健担当者と学校保健担当者等は国民の
領にも盛り込まれている。救命に関する教育を通
健康増進のために相互に理解を図るよう務めるこ
じて、互助の精神を養ったり、命の大切さを学ぶ
とが謳われている。これらはまさしく日医が訴え
ことができるのではないかと思う。
てきた地域による子どもたちの育みにほかならな
これまで、学校安全というと交通事故、外傷が
いので、厚労省の動きもみながら今後も学校保健
主な対象だったが、これからは大規模災害に対し
を推進していきたいと考えている。
ても取り組んでいく必要がある。釜石市では、早
学校安全について、学校保健安全法の第 3 章
くから津波防災訓練が実施されていた。行政の作
学校安全第 27 条に学校安全計画の策定が定めら
り上げた災害マップの想定にとらわれないこと、
れている。第 30 条では、子どもたちの安全を確
最善を尽くすこと、率先して避難することの三大
保するために保護者や関係機関との連携が謳われ
原則が徹底して子どもたちに教育された結果、昨
ている。学校医の職務執行の準則第 22 条は、学
年の東日本大震災では無事に避難することができ
校保健計画及び学校安全計画の立案に参与するこ
た。専門家や有識者が学校安全に関与することが
とと定められている。学校の安全管理としては、
重要である。
心身の安全管理、生活の安全管理、学校環境の安
912
これからの学校保健のあり方について提言する
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
と、地域保健の推進において、地域学校保健委員
キルを磨くために医師による健康教育を推進して
会や学校地域保健推進協議会が重要であるという
いくことが大切であるということを政府にも提言
厚労省の指摘はまさに正鵠を射るものであり、地
していきたいと思っている。学習指導要領では生
域での生涯保障・保健という考えのもとで、学校
きる力を理念に掲げている。子どもたちの生きる
保健、学校安全を推進する環境が整備されてきて
力、ライフスキルの向上に学校医をはじめとする
いる。生涯保健という時間軸と地域保健という空
医師の存在が重要であると考える。
間軸の枠組みの中で、子どもたちが心の健康や命
の大切さを理解し実践することも含め、ライフス
平成 24 年度
郡市医師会妊産婦・乳幼児保健担当理事協議会
・関係者合同会議
と
き
ところ
平成 24 年 9 月 6 日(木)15:00 〜
山口県医師会館
6F 会議室
[ 報告 : 常任理事
開会挨拶
小田会長
山縣
三紀 ]
ましては、定期接種化される予防接種については、
本日は、岡審議監をはじめ健康増進課
財政措置を含め、国の責任において、しっかりと
の方々、市町の担当の方々並びに郡市医師会担当
した制度設計されるよう要望しているところでご
理事の方々に、お忙しい中、お集まりくださいま
ざいます。また、引き続きこれからも要望を続け
して、ありがとうございます。9 月より不活化ポ
ていきたいと思っております。
リオワクチンが導入され、
それに伴う規則の改正、
そうした中で、ポリオの予防接種につきまし
個別接種標準料金(案)
、乳幼児健診の参考単価
て、この 9 月 1 日から不活化ワクチンが導入さ
(案)等々、いろいろ議題をご用意させてもらっ
れました。これまでの生ワクチンから不活化ワク
ています。なにとぞご慎重、ご審議のほどよろし
チンへの切り替えにあたりまして、県、郡市医師
くお願いいたします。
会と県内の市町の皆様方のご尽力によりまして、
広域契約が締結され、県内の全市町で円滑な導入
岡健康増進課長(兼審議監) 平素から皆様方に
が図られましたことに対しまして、敬意を表しま
は感染症対策あるいは母子保健対策につきまして、
す。
格別のご協力をいただきましてどうもありがとう
この 11 月からは、4 種混合ワクチンの導入等
ございます。厚くお礼を申し上げたいと思います。
も予定されておりますので、引き続きよろしくお
ところで今日の議題になっております予防接種
願い申し上げます。
におきまして、国の予防接種部会から子宮頸がん
次に麻しんにつきましては、平成 24 年度末を
予防ワクチン等の 3 ワクチンを含めた、新たに 7
もちまして、麻しん排除のための対策期間が終了
つのワクチンを定期接種化すべきとの提言もまと
いたします。来年度以降につきましても、現在、
められておりますことから、国において現在、抜
国の審議会等で検討中ですが、今年度が現計画の
本的な見直しが進められております。県といたし
最終年度であり、高い接種率を維持する必要がご
913
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
ざいます。これまで、医師会、市町、学校等が連
不活化ポリオワクチンでの接種を完了できない場
携し、学生が接種しやすい、春休みや夏休み期間
合等は、単独の不活化ポリオワクチンと 4 種混合
中をとらえての接種キャンペーンに取り組んでき
ワクチンを併用しても差し支えないこととなって
たところですが、
引き続き接種率の向上に向けて、
いる。だたし、接種スケジュール上、支障がない
積極的な取り組みがなされるようご協力をお願い
場合に限られているのでご留意願いたい。
したいと思います。
麻しんの予防接種については、昨年度に引き続
最後に妊婦健診につきましては、現在、14 回
き、今年度も各市町において、春休み、夏休み接
分について公費助成が行われております。この公
種キャンペーン実施していただいた。春休みキャ
費助成につきましては、今年度末までとなってお
ンペーンでは、昨年同時期より接種者数が増加し
りますので、県としては今後とも必要な回数の健
た報告をいただいた市町が多く、キャンペーンが
康診査が受けられるよう市町に対する財政支援を
効果的に行われたと考える。また、夏休みキャン
恒久的なものにするなど、国に要望したいと考え
ペーンの結果については、これから集計して後日
ているところでございます。皆様方のご理解、ご
結果をお返しする予定である。平成 23 年度の接
協力いただきますようお願いを申し上げまして、
種率は、第 1 期は 96.3%、第 2 期は 93.4%、第
挨拶とさせていただきます。
3 期 90.1%、第 4 期 86.5%であった。いずれの
期も全国の接種率の平均より上回っている。接種
協議事項
率 95%以上の達成に向けて、引き続き接種の促
1. 不活化ポリオワクチン、4 種混合ワクチン等
進をよろしくお願いしたい。
について
最初に、県健康増進課の大塚主任より以下のと
おり説明があった。
不活化ポリオワクチンについては、予防接種実
本会より不活化ポリオワクチンの接種料金、市
町の連絡先、予診票について確認を行った。また、
11 月予定の 4 種混合ワクチンの個別接種標準料
金(案)をお示しした。
施規則一部改正があり、併せて定期(一類疾病)
の予防接種実施要領の一部改正もされている。な
2. 平成 24 年度広域予防接種における高齢者イ
お、単独の不活化ポリオワクチンについては、サ
ンフルエンザ予防接種について
ノフィパスツール株式会社のイモバックスポリオ
今年度広域における高齢者インフルエンザ予防
皮下注が承認されており、9 月 1 日より実施して
接種について、各市町における料金や接種期間等
いただいている。なお、4 回目の追加接種につい
について事前に調査を行い、本会議で確認を行っ
ては、有効性及び安全性が現時点では確立してい
た。これによると、標準料金はすべての市町で
ないため、データが整い次第、追加接種として定
4,200 円であった。自己負担額については、多く
期接種に導入される予定となっている。
の市町で 1,260 円であったが、山口市では 1,200
4 種混合ワクチンについては、11 月 1 日から
円、和木町では 1,050 円、上関町では 0 円であっ
予防接種法上の定期接種に導入できるよう、国の
た。接種期間については、ほとんどの市町が平成
ほうでも法令改正等準備を進めているところであ
24 年 10 月 1 日〜平成 25 年 2 月 28 日であった
る。化学及血清療法研究所製のものと阪大微生物
が、周防大島町では平成 24 年 10 月 1 日〜平成
病研究会製のものと 2 種類が導入予定となってい
25 年 3 月 30 日であった。
る。留意事項として、原則として最初に使用した
不活化ポリオワクチン(単独又は 4 種混合)を最
3. 平成 25 年度広域予防接種における個別接種
後まで使用することとなっている。なお、国内の
標準料金 ( 案 ) について
臨床研究によって単独の不活化ポリオワクチンと
平成 25 年度の広域予防接種における個別接種
4 種混合ワクチンを併せて使用した場合でも同等
標準料金(案)を県医師会で作成し、事前に郡市
の効果が得られることが明らかとなっていること
医師会及び市町に提示した。検討の結果、本案に
から、ワクチンの入荷状況により最初に使用した
ついて了承された。
914
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
4. 平成 25 年度乳幼児健康診査における参考単
第 1826 号
5. 妊婦健康診査について
価 ( 案 ) について
山口県産婦人科医会会長の藤野先生より下記の
平成 25 年度の乳幼児健康診査における参考単
とおり説明があった。
価(案)を県医師会で作成し、小児科医会にご検
公費の妊婦健康診査については、この制度が始
討いただいた上で、事前に郡市医師会及び市町に
まったときから、山口県では下関市を除いて、ほ
提示した。検討の結果、
本案について了承された。
ぼ 100%の補助をしていただいている。山口県
出席者
郡市担当理事
大 島 郡 嶋元
徹 ( 代理 )
宇 部 市 冨田
茂
小野田市 白澤
宏幸
修
光
市 廣田
修
玖 珂 郡 松井
晶子
山 口 市 近藤
熊 毛 郡 片山
和信
萩
市 綿貫
篤志
柳
井 近藤
穂積
吉
南 藤井
郁英
徳
山 大城
研二
長 門 市 須田
博喜
厚 狭 郡 藤原
敏典
防
府 村田
敦
美 祢 市 横山
幸代
下 関 市 岡田
理
下
松 井上
保
下 関 市 口羽
政徳
岩 国 市 藤本
誠
市町
下関市
保健師
白石つかさ
柳井市
主査
池永
玲子
主任助産師
金子
紀枝
美祢市
主事
増田
圭介
宇部市
地域保健 2 係長
藤井
晃子
課長補佐
杉原
博子
山口市
主査
村上
航
課長補佐
仲西
徹
主査
中谷
智子
係長
玉野
政枝
係長 ( 保健師)
渡辺佳野代
健康企画係長
岡村
敦子
主任
釼物佳代子
課長補佐
河野
静恵
予防係長
松永
仁志
主査
吉冨
和成
保健係長
山﨑
貴子
主任保健師
松本千恵子
主幹
笠谷由美子
所長
中村
充子
係長
柳井真由子
保健師
中尾
沙織
管理班長
山本
隆
保健衛生係長
小濱智恵美
総括班長
佐上
和子
保健師
村谷
香織
健康増進係長
田中
満喜
田布施町
保健師
森岡
有子
健康企画係主任
坂倉
幸三
平生町
中尾
玲子
健康推進係主任
吉田佳代子
阿武町
萩
市
防府市
下松市
岩国市
光
市
長門市
山口県健康福祉部健康増進課
健康福祉部審議監
兼健康増進課長
周南市
山陽小野田市
周防大島町
和木町
上関町
山口県産婦人科医会
会長
岡
紳爾
主幹
弘田
隆彦
主任
大塚
佳子
主任
伊藤
朱美
保健師
藤野
俊夫
山口県小児科医会
副会長
内田
正志
斉藤三智子
県医師会
会
長
小田
悦郎
副 会 長
濱本
史明
常任理事
山縣
三紀
理
事
今村
孝子
理
事
藤本
俊文
915
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
は「一番妊婦さんが安心して出産を迎える準備が
ルー、児童の虐待等、そういうことにも積極的に
できる県」だということでたいへん評価されてい
取り組んでいきたいと思っている。そして、でき
る。その後、HTLV-1 とクラミジアが追加され、
れば 1 か月健診のマニュアルを作りあげていき
これについてもみなさんにご理解いただき、全部
たいと考えている。
公費健診としていただいた。妊婦さんから山口県
また、ビタミン K2 シロップの投与の件につい
はすごくありがたいという声は聞く。産婦人科医
て、今までは、出生後、退院時、1 か月健診時の
としても、外来はやりやすい。この制度は、少子
3 回だったが、それでも、頭蓋内出血等起こすこ
化対策の中で始まった事業で、少子化対策が続く
とがあるということで、今、生後 3 か月までの
かぎりは、この制度は続くものと思っているが、
12 回投与がされている。1 か月健診では、もう
妊婦公費健診が今よりもっと有用な位置付けにな
一度ビタミン K2 シロップの投与についてチェッ
る。それは、児童虐待防止という利点が入ってき
クすることも重要ではないかと思っている。今
た。厚生労働省も児童虐待防止について、今まで
後とも乳幼児健診の充実に努力をしていきたいと
地域の子どもを守る地域ネットワークに産科医会
思っているので、よろしくお願いする。
が委員に入ってなかったことが問題で、十分な児
つづいて、ビタミン K2 シロップの投与につい
童虐待防止がされていない。大事な視点は、出産
て、山口県産婦人科医会会長の藤野先生より、産
した当日に虐待死する人が 20 数人あったという
婦人科医会では今からの協議事項となっているの
点で、ぜひこれを少なくしたいということで厚生
で、よろしくお願いしたいとの報告があった。
労働省と日本産科医会が今、対策をとって取り組
みをしようとしている。
お金がないことが原因で、
7. その他
妊婦健診を受けず、それが不安な出産にいたり、
①子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業につい
虐待死、児童虐待になるとたいへん大きな問題な
て
ので、少なくともそれを防止していこうという視
点が入ってきた。これから少子化対策とは別に、
定期化接種になった場合の県医師会(案)を示
し、算定基準についての各郡市の意見を聞いた。
さらに児童虐待防止の観点から妊婦公費健診の補
助について一層のご理解をいただければと思って
②平成 24 年度中国・四国ブロック合同研修会 in
いる。来年度までということに今のところなって
山口
いるが、国は来年度以降もするはずで、やらない
ことは絶対ないと思う。各自治体におかれては、
今後ともどうぞよろしくお願いする。
6. 乳幼児健康診査について
最初に山口県小児科医会副会長の内田先生より
下記のとおり説明があった。
山口県小児科医会は乳幼児健診が非常に重要と
考え、とくに 1 か月健診を充実していきたいと
思っている。
現在、開業の先生のところと勤務医の先生のと
ころで、1 か月健診に対する姿勢等について、統
一性がなかったのではとの意見があり、県小児科
医会の乳幼児保健検討委員会では、今年の目標と
して 1 か月健診を充実させるということで、身
体的な診察はもちろんのこと、
その後の予防接種、
それから、お母さんに目を向けて、マタニティブ
916
12 月 16 日 ( 日 ) 、海峡メッセ下関において開
催される研修会の案内を行った。
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
第 43 回中四九地区医師会看護学校協議会
運営委員会
と
き
ところ
平成 24 年 8 月 19 日(日)8:20 〜 9:40
城山観光ホテル ( 鹿児島市 )
[ 報告 : 常任理事
第 43 回中四九地区医師会看護学校協議会が 8
田中豊秋 ]
導入は難しい。
月 18 日・19 日(土・日)に川内看護専門学校・
実習指導者講習会は多くの県で実施していただ
阿久根市民病院附属看護学校の担当で開催され
いている。毎年実施することが難しい都道府県も
た。最初に事前に実施されたアンケート調査など
あると思う。受講のニーズの把握も重要である。
に対する回答が、厚労省より報告された。
補助金については、税収の伸びがない中で、予
算を確保することは難しい。例年どおりの運営費
厚生労働省 他府県に行って長期にわたる看護教
補助金を確保するために努力している。その中で
員養成講習会の受講は負担が大きいので、講習会
も人件費をどのように考えるかは一つの課題であ
を通信制で行ってほしいという要望については報
る。
告書のなかに載っている。そのような状況を受け
学校の定員については、留年などを考慮して対
て、通信機器も進歩したので、eラーニングの導
応しているので、担当部局にご確認いただきたい。
入について決定している。本年度はそのためのコ
運営委員会
具体的な意見、要望等があるか。
ただいている。教員養成なので、実習・演習を e
各県医師会
実習施設の確保が難しく、定員を
ラーニングで行うことは難しい。それはスクーリ
減らした。看護学校の実習に消極的な施設もある
ングで行うことを考えている。まだ、eラーニン
ので、看護師教育に協力した大きな施設は、診療
グのコンテンツができていないので、来年度から
報酬において評価することや指導も必要ではない
eラーニングを採用するかは各都道府県の考えで
か。看護学校の卒業生は、実習に消極的な施設へ
ある。コンテンツは今年度中にできるので、来年
も就職しているので、そのあたりもご理解いただ
度から活用されることを願っている。
きたい。
ンテンツをこれから作成する。どのような科目が
eラーニングになじむのかなどは検討会で提言い
母性看護学実習、小児看護学実習の実習先確保
が難しくなっていることは日医を通してよくうか
各県医師会 公的医療機関が実習を引き受けない
がっている。母性看護学実習については産科、分
ことは良くない。7 対 1 の看護体制をとっている
娩を取り扱う医療機関で行われるが、その数が減
ところは実習に協力すべきである。また、男子学
少していること、また小児の入院医療機関も少な
生の母性に関する学習においてビデオを導入する
くなっていることや大学の新設もあり、その実習
件については、是非お願いしたい。男子学生を受
が優先されている現状もあり、実習が難しくなっ
け入れている産科施設への影響も考慮すべきであ
ている。臨地で実習することになっているが、そ
る。
れをより効果的にする必要もある。臨地実習に含
めて良い時間については、6 月に通知している。
各県医師会 看護師の養成にどのくらいコストが
ビデオ実習についても検討しているが、すべてに
かかっているか調べたことがある。大学と専門学
917
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
校を比べるなと言われるが、ある県では大学にお
用できるように準備している。完成は 3 月にな
いては運営交付金として 1 人あたり 100 万円程
るが、シラバス等はその前に周知するようにする。
度かかっているが、医師会立の学校は 1 人あた
専任教員の同等要件であるが、専任教員養成講習
り 8 万円くらい。あとは医師会の持ち出しである。
会を受講する、大学、大学院で看護教員養成にか
大学病院の実習に要する費用については実習病院
かる単位を取得すること、もう一つはそれと同等
へ医師会立看護学校の 5 倍程度の額を提示し依
と思われる方として通知に書いてある。これは個
頼するところもある。大きな病院については看護
別にご経験を考慮しての判断になる。都道府県が
教育に協力するような縛りも必要ではないか。
実施する養成講習会の他、これと同等であると
認めている講習会は 3 つある。日本赤十字看護
厚生労働省
実習の協力に対して、診療報酬上、
大学と、新たに岡山と埼玉にある大学である。岡
評価することは難しい。患者への啓発にも取り組
山と埼玉については大学編入という形である。ど
んでいる。比較的大きな病院の看護部長と連絡を
ちらも通信制であり、スクーリングも県が実施し
とることがあり、実習の引き受けについても機会
ている講習会よりも少ないと思う。養成所勤務前
があるごとにお願いしていく。地域における問題
の受講については、各県が募集する際に決めるこ
点については、各県行政へ要請するようにしてい
とである。来年がeラーニングを導入する初年度
きたい。
になるが、複数年度にわたる受講などの課題を解
決していきたい。定員についてはプラス 10%ま
防府看護専門学校 看護教員養成講習会について
では認めるということは言えない。留年、退学が
は、通信制の導入を従来からお願いしてきたが、
あり、卒業生が減ってしまう現状は理解している
今日の話を聞く限りでは、通信制の導入は程遠い
が、許可を出す視点では定員を増やしていただき
道だと感じた。早急にeラーニングの導入を含め
たい。定員を増やすと実習計画などで教員を増や
て全面的に通信制を実施すべきである。また現行
す必要性も生まれてくることもあるが、ご理解い
の看護教員の認定方法以外に違った方法もあるの
ただきたい。
ではないかということも指摘してきた。看護六法
の解釈によっては看護教員養成講習会を受講しな
日医
くても看護教員として認定される場合があるので
に認めたことはないが、会議の中で話が出たこと
はないか。また、現状では看護学校に就職して看
はある。
厚生労働省が 10%の定員オーバーを公式
護教員養成講習会を受講する形になっているが、
8 か月間の講習を受ける負担は多大である。そこ
運営委員会 定員の問題については個別に対応し
で、看護学校に勤務する以前に看護師として働い
ていただきたい。
ている段階で養成講習を受講するように働きかけ
ていただきたい。
各県医師会
看護学校は医学部とは逆の状況で、
さらに定員については、先ほど留年者を入学生
男子学生が増えている。男子の看護師が活躍する
の数から差し引かなくて良いとのことだったが、
場を考慮するべきである。助産師になることは考
これは当たり前のことである。学校が心配してい
えられないのでないか。母性看護実習にはビデオ
ることは、例えば看護科の定員が 40 名の場合、
実習で行い、他の科目に割り振るべきである。
そのまま 40 名を入れると、ある程度の人数が脱
落すると、30 名しか残らない状況も実際にはあ
厚生労働省 現状では男女とも同様に母性看護実
る。定員より多くの学生を入学させてほしいとい
習を行うことになっている。助産師については女
うことを前から強くお願いしている。10%の定
子のみになっている。次のカリキュラムを検討す
員オーバーは認めていただいているのか。
る時には大きな課題となる。
厚生労働省 eラーニングについては来年から活
918
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
日医への要望
運営委員会への要望
日医
地域医療を守るためにも准看護師・看護師
各看護学校 開催校について協議したことについ
養成については堅持していく。ほとんどの地域で
て報告する。まず、規模が大きくなり、引き受け
は准看護師を養成した場合は地元に残るが、看護
ることが難しくなっている現状がある。会を簡素
師を養成すると、都市部に行かれる場合が多い。
化することも必要である。また、この協議会では
これからは大都市で高齢者が増える。また、定員
本部がない。脱退や加入についても相談するとこ
の問題についても大学と看護学校では基準が違う
ろがないので、当番校ということではなく、まず、
ことも問題である。実習病院の確保についても、
固定した本部を作ってほしい。再来年の開催校に
7 対 1 看護の影響もあり、准看護師養成が影響を
ついては、グループで協力していくことを確認し、
受けている。准看護師養成は止めない。しかし、
広島県で行うことになった。留年した方について
准看護師の養成は最終的には国会で決めることに
の対応については、実習病院の確保の大変さにつ
なるので、地元のご理解も必要である。
いても理解していただきたい。
各県医師会
運営委員会
准看護師の養成校は減っている。准
規模の縮小について要望があった。
看護学校の受験生は増えているが、准看護師課程
いろいろな形を検討したい。固定した本部につい
を卒業すると、2 年課程に進学するかというとそ
ては規約などを改正する必要がある。当面は脱退、
のような状況にもない。准看護師養成について、
入会については当該当番校が受け付ける。次年度
厚生労働省はどのように考えているか。
については、4 月以降はその年度の当番校が受け
付ける。
厚生労働省
2 年課程は准看護師の資格をもった
方が行かれる。2 年課程を存続させるために准看
八幡医師会看護専門学院
護師養成所が必要であるということではない。
を当番校として開催させていただく。今回は 2
来年、44 回の協議会
回目の開催になる。協議会の原点に立ち返り、少
日医 准看護師を残すための方策についてこれま
しスリム化したい。8 月 24 日(土)、25 日(日)
でも検討してきた。卒後研修も重要である。准看
の 2 日間、リーガロイヤルホテル小倉で開催する。
護師が実際に現場で貢献している。また、准看護
奮ってご参加ください。
師試験と看護師の国家試験の日を同一にする動き
があるので、注視していく必要がある。准看護師
養成の道を狭める動きがある。准看護師を経由し
て看護師になる道は守るべきである。看護協会と
も話し合いをし、協力していきたい。
919
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
9 月も 20 日を過ぎると朝夕はかなり涼しくな
県
医
師
会
の
動
き
副会長
本
史
明
行うので活用をお願いしました。
り、彼岸花の咲く頃は朝の犬の散歩が楽になりま
8 月 30 日は第 2 回郡市医師会地域医療担当理
す。今までは、近くの水田には稲が実っていて、
事協議会が開催されました。今回新たに加わった、
畦には一斉に彼岸花が咲いていましたが、そこは
精神疾患及び在宅医療の医療機能(案)、イメー
埋め立てられて立派なアパートが建ちました。庭
ジ図(案)について、それぞれのワーキンググルー
には、母がどこからか持ち帰って植えた、白い彼
プ長の水津信之先生、濵田敬史先生からの説明が
岸花(よく見るとうっすらとピンク色の部分も有
ありました。特に厚労省案の精神疾患は、一つに
ります)が咲き出しました。最近は郊外にも行っ
纏められていますが、山口県の案は、統合失調症、
ていないので、何時から彼岸花が咲き出したのか
うつ病、アルコール依存症、認知症、児童・思春
わかりませんでした。そういえば、庭の白い彼岸
期の精神疾患と 5 疾患に分かれました。
花が咲いたのを見て、もう 9 月が終わりに近づい
たのを感じます。
8 月 30 日夜は、山口大学医師会と県医師会との
懇談会が開催され、山口大学からは、岡 正朗病院
暑かった 8 月 25 日〜 26 日、臨床研修医交流
長以下 14 名と県医師会小田会長以下 9 名で活発な
会が湯田温泉で、多くの研修医と県内 15 の臨床
意見交換がありました。特に、医療機関が抱える消
研修病院の先生がたや山口大学の先生がたの参加
費税負担問題や、医師会の組織力強化、医師不足・
で盛大に開催されました。25 日は山口大学医学
偏在の解消について活発な議論となりました。
部附属病院先進救急医療センター・福田信也先生
9 月 5 日は日本医師会の「地域医療対策委員会」
から、ユタ大学病院の研修報告がありました。そ
が開催され、山口県より弘山常任理事が出席され
の後、グループワーク「研修医の本音をさらけ出
ました。日本医師会会長諮問は「地域医師会を中
そう !」という題で、15 のテーマを出し合い熱心
心とした在宅医療の推進について〜特に、病診連
な協議が行われました。夜には、懇親会が開催さ
携の観点から」です。弘山常任理事は 2 年間 8 回、
れ、湯田の街は遅くまで賑わったことでしょう。
日本医師会の会議に出席し、答申を提出すること
26 日には、山口大学放射線治療学分野教授・澁
になります。
谷景子先生の「がん診療における放射線治療の役
ちなみに平成 24 年から 2 年間、日本医師会の
割」と、山口大学眼科学分野教授・園田康平先生
委員会に山口県医師会から 6 人が決まり、日本医
の「見える喜びと眼科医療の意義」の 2 題の特別
師会の会長諮問に対して協議、答申の作成に携わ
講演がありました。
ることになります。
澁谷景子先生は、講演の最後に、
『ロンドンオ
医療関係者検討委員会
防府医師会
内平信子先生
山口市医師会
田村博子先生
リンピックは日本の「チーム力」が勝利を収め絶
大な賞賛を浴びました。しかし、残念ながら「が
濱
第 1826 号
ん治療」における「チーム力」は、欧米に比べ大
きく遅れをとっています。山口県における「Team
Oncology」に是非とも参加し、若い力を発揮して
ください』と、結ばれていました。園田康平先生
男女共同参画委員会
医療法関係検討委員会
山口県医師会常任理事
山口県医師会常任理事
進路が決まっている先生は迷わずそれに突き進ん
生殖補助医療法制化検討委員会
でほしい。まだ、悩んでいる先生は、私がアドバ
山口県医師会監事
イスするなら「自分らしくあれる診療科、朝、仕
周産期・乳幼児保健検討委員会
だら良いと思います』と話されていました。
弘人先生
地域医療対策委員会
は、
『皆さん初期研修後の進路は決まりましたか?
事に行くのが楽しいと感じられる診療科」を選ん
林
弘山直滋先生
藤野俊夫先生
山口県医師会副会長
濱本史明
同じく 5 日には、郡市医師会妊産婦・乳幼児
その後、小田山口県医師会長より、ベストプレゼ
保健担当理事協議会・関係者合同会議が開催され
ンテーションの発表及び記念品贈呈がありました。
ました。この会議は、山口県内の市町の保健担当
また、指導医・後期研修医等国内外研修助成事
の方と、各郡市医師会の担当理事、山口県産婦人
業と、国内外からの指導医招聘事業も追加募集を
科医会、山口県小児科医会、山口県健康福祉部健
920
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
康増進課との合同会議です。
第 1826 号
働衛生行政の動向について」の特別講演があり、内
協議事項は、広域予防接種における個別接種標準
容は、今話題の「印刷業等の洗浄作業における有機
料金(定期ワクチンとそれに準ずる任意ワクチン)
塩素系洗浄剤のばく露低減化のための予防取組みの
の取り決めと、乳幼児健康診査における参考単価に
概要」でした。特別講演 2 は三井化学(株)岩国
ついて、妊婦健康診査についてが主なものでした。
大竹工場附属診療所 健康管理室長・井手
この合同会議は、予防接種の県内広域化に向けて、
の「健康情報保護について」でした。「健康情報は、
藤井康宏会長時代の平成 14 年度に発足されたもの
個人情報保護の中で特に配慮すべき情報と位置づけ
で、全国にも類をみないものです。各市町の保健
られているし、扱うのは医療職の産業保健スタッフ
担当の方と郡市医師会の保健担当、県医師会、山
が望ましい。そして、情報の第三者提供と二次利用
口県健康増進課の参加で始まりました。平成 15 年
については注意した方が良い。正しい知識の普及と
には、当時の藤井会長、木下常任理事(平成 20 年
ルール作りが必ず必要であり、安全衛生委員会など
〜 24 年、山口県医師会長)のご尽力もあり、ポリ
も活用するべきである」と、まとめられていました。
オを除く定期の予防接種の広域化が開始されまし
13 日は社保・国保審査委員合同協議会が開催
た。そして、平成 18 年度より全県下統一接種料金
され、社保・国保審査委員 70 人と、県役員、社保・
(標準料金)となり、定期の予防接種の広域化が開
宏先生
国保審査事務担当が一斉に集まりました。
始されました(詳細は 2011 年県医師会報 3 月号・
協議事項は 6 題提出され、県医師会・萬常任理
第 1807 号、今月の視点、「山口県における予防接
事と清水理事の司会で、協議されました。「関節リ
種広域化の経緯」に記載しています)。
ウマチ等への NSAIDS 投与時における佐薬として
料金の設定については、約 4 年間にわたり協議
の H2 ブロッカーの算定について」が国保連合会
を重ねた結果が現在の定期予防接種の標準料金で
から提出され、社保・国保の意見が異なり、かな
す。行政は今までの経緯を重くみているものの、
り長時間討議がされましたが、使用量によっては
定期の予防接種が増えることに対して、財政の不
佐薬として保険請求が認められました。他の協議
足により接種料金を下げることを望んでいます。
事項に関しては次号会報に掲載予定です。
県医師会、郡市担当理事は現在の算定根拠を変え
ることは望んでいません。
さて、8 月の兼題句は、『向日葵』『墓参』チャ
レンジ句は『踊り』でした。巻頭句はそれぞれ、
「廃
9 月からは、ポリオ不活化ワクチンの単独接種
校のひまはり一本首かしげ」あらじん、「幼子の何
が始まり、ポリオ生ワクチンの定期接種はなくな
やら呪文墓参り」つちのこ、「墓参り終はらぬまま
りました。11 月からは、今までの 3 種混合ワク
の反抗期」かずらを、の 2 作品が同点でした。自
チン(破傷風、百日咳、ジフテリア)にポリオを
由句(登季雑詠)は、
「襟足のほつれて一夜踊り抜く」
加えた 4 種混合ワクチンの接種が始まります。数
さゑ、「夕列車青田を影の走をり」あらじん、の 2
年先にはこれらにヒブワクチンを混合した、5種
作品が同点でした。
混合ワクチン接種が可能になる予定です。
山口県の麻しん風しんワクチン、第 3 期、第
4 期の 2011 年の最終報告は、第 3 期が 90.1% 、
巻頭を取られた方は、お礼のコメントが許され
ています。
あらじんさんは、山形県で訪れたことのある、
第 4 期が 86.5% でした。麻しん風しんの春休み
「廃校」と「向日葵」そして、「夏休み」のような
キャンペーンの実施報告では、第 3 期は防府市が
空気をコラージュして、貼り絵を作られたそうで
一番多くて 47.4% 、第 4 期は防府市と平生町がそ
す。つちのこさんは 2 歳のお孫さんの墓参り風景
れぞれ 30.9% と 30.4%でした。現在、関東や大
だそうです。かずらをさんの「終はらぬままの反
阪方面で風しんが流行しています(20 歳代の成
抗期」は、ご尊父との間での意味深い関係があっ
人男性に多い)
。今年が最後の年に当たりますの
たとのこと、「一番のライバルは父である」との
で多くの接種率を上げたいものです。
コメントでした。さゑさんは、着付け教室の帰り
8 日には山口県医師会産業医研修会が開催されま
した。山口労働局健康安全課長・山本益德先生「労
に高揚した気分で踊りたくなったそうです。
9 月の兼題は、
『爽やか』
『芒』自由句は『白桃』です。
921
県
医
師
会
の
動
き
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
理事会
9月6日
第 11 回
午後 5 時〜 6 時 50 分
小田会長、吉本・濱本副会長、河村専務理事、
弘山・萬・田中・山縣・林各常任理事、沖中・
加藤・藤本・香田・今村・中村・清水各理事、
山本・武内・藤野各監事
報告事項
1
社会保険医療担当者集団指導(8 月 23 日)
中国四国厚生局及び山口県の共同による各種集
団指導と併せて、山口県医師会が実施する全医療
機関を対象とした本年度 2 回目の集団指導を開
催した。( 萬 )
2
第 20 回核戦争防止国際医師会議 (IPPNW) 世
界大会(8 月 24 日)
協議事項
1
第 127 回日本医師会臨時代議員会における
質問について
各常任理事検討の上、次回理事会までに提出す
ることとなった。
第 1826 号
8 月 24 〜 26 日に「ヒロシマから未来の世代へ」
をテーマとして広島市内で開催され、開会式に出
席した。本会議は、人々の生命と健康を守る医師
の立場から、核戦争がもたらす医学的影響につい
て正しい知識・情報を発信し、核戦争防止を目指
すもので、3日間にわたり、基調講演、被爆医師
2
新公益法人制度移行後の日本医師会代議員会
開催日程について
の証言、全体会議、ワークショップ、シンポジウ
ムなどが行われた。(小田)
先般、日本医師会より新公益法人への移行に伴う
代議員会等開催スケジュール予定が示されたが、日
3
日医生殖補助医療法制化検討委員会(8 月 24 日)
本医師会代議員会の開催日程の基準は、議事運営委
生殖補助医療に関しては、先進諸国では発展と
員会決定事項によることとしてきたため、議事運営
普及に対応して、治療の許容性や実施条件、親子
委員会として検討することが必要となった。中国四
関係に関連する法整備が進んでいるが、わが国で
国ブロック担当の愛媛県医師会を通じて、提案され
は法制化の必要性が学会・医会、司法の現場等か
た 2 案に対する意見を求められ、協議した。
ら指摘されているものの、いまだ法規制がなく、
日本産科婦人科学会の見解に準拠し、医師の自主
3
平成 25 年度予算施策に関する要望項目について
規制のもとに実施されている。社会の関心が高い
10 月中旬に自民党県連環境福祉部会に要望の
代理懐胎や第三者からの提供配偶子 ( 精子・卵子・
予定、要望項目について協議した。
胚 ) の倫理的妥当性のみならず、配偶者間の体外
受精、胚移植、着床前診断等のあり方についても
4
第 2 回山口呼吸器フェローシップセミナー
研修会の後援について
名義後援することに決定。
議論し、法制化に対する日本医師会としての意見
を集約するため、プロジェクト委員会として今年
度設置されたもので、初回は、10 名の委員でフ
リートーキングが行われた。(藤野)
人事事項
1 山口県地域医療再生計画推進会議委員について
4
山口県は、地域医療再生計画に基づき医療連携
勤務医部会第 2 回企画委員会(8 月 25 日)
体制の構築に向けた取り組みを進めており、計画
座談会及びシンポジウム、市民公開講座等につ
いて協議した。(加藤)
事業の円滑かつ着実な推進を図り、三次医療連携
体制のあり方等について協議・検討をするため推
5
第 4 回臨床研修医交流会(8 月 25 日〜 26 日)
進会議を設置することとなった。県医師会より 2
1 日目は、山口県医師臨床研修推進センターの
名の委員の推薦依頼があり、弘山常任理事及び今
事業紹介、「研修医の本音をさらけ出そう!」を
村理事を推薦することに決定。
テーマにグループワーク、懇親会を開催した。2
日目は山口大学の澁谷景子教授の「がん診療にお
922
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
ける放射線治療の役割」
、園田康平教授の「見え
第 1826 号
画及び収支予算案が審議、承認された。(小田)
る喜びと眼科医療の意義」の特別講演のあと、グ
ループワークのベストプレゼンテーションの発表
13
が行われた。
(中村)
第 1 回地域医療対策委員会(9 月 5 日)
日医会長の諮問事項「地域医師会を中心とした
在宅医療の推進について〜特に、病診連携の観点
6
第 18 回中国四国医師会共同利用施設等連絡
から〜」について協議した。(弘山)
協議会(8 月 25 日)
鳥取県医師会等の担当で開催。事前アンケート
の結果報告や「医師会共同利用施設の公益性と地
14
討会第1回会合(9 月 5 日)
域医療」をテーマに徳山医師会他2医師会から研
究発表があった。最後に、日本医師会葉梨常任理
山口県動物由来感染症情報関連体制整備検
動物由来感染症予防体制整備事業の概要と今年
度事業計画案について協議した。(今村)
事による「医師会共同利用施設の課題と将来展望」
と題した特別講演があった。
(今村)
15
広報委員会(9 月 6 日)
会報主要記事掲載予定 ( 郡市医師会紹介、日本
7
中国地方社会保険医療協議会山口部会(8 月 29 日)
医科の新規はなかった。
(小田)
医師会各種委員会報告、山口大学新任教授紹介 ) 、
県民公開講座及びフォトコンテスト、tys「スパ特」
のテーマ、歳末放談会等について協議した。(林)
8
第 2 回郡市医師会地域医療担当理事協議会
(8 月 30 日)
16
会員の入退会異動
医療計画に新たに追加される精神疾患と在宅医
入会 17 件、退会 7 件、異動 13 件。(9 月 1 日
療について、ワーキンググループで検討の医療機
現 在 会 員 数:1 号 1,306 名、2 号 953 名、3 号
能案、イメージ図案について各班長から説明いた
441 名、合計 2,700 名)
だいた。郡市から次期保健医療計画に対する現状
医師国保理事会 第 10 回
報告と、意見・要望について協議した。
(弘山)
9 山口大学医師会役員等との懇談会(8 月 30 日)
最近の中央情勢報告、医師会の組織力強化、山
口県医師臨床研修推進センター、山口大学医学部
1
柔道整復施術費にかかわる受傷原因全例調査
(要請)について (8 月 30 日)
附属病院医療人育成センター等について情報交換
山口県臨床整形外科医会からの要請に対し、本組
及び協議が行われた。
(河村)
合の取り組みや今後の対応方針を説明した。(小田)
10 第 1 回健康やまぐち 21 推進協議会(8 月 30 日)
2
がん対策分科会の協議状況の報告、
「健康やま
全医連理事会について(9 月 5 日)
ぐち 21 計画」の改定について協議した。(濱本)
国保問題検討委員会の検討結果として報告され
た組合員資格に関する規約改正案及び判定基準、
柔道整復施術の患者調査等について協議した。
11
第 1 回山口県肝炎対策協議会(9 月 3 日)
平成 24 年度の事業、肝炎治療特別促進事業、
患者調査については、同一時期に一斉調査を実
施することとなった。(小田)
肝炎ウィルス検査事業、地域肝炎治療コーディ
ネーター養成事業、肝炎患者支援手帳事業等につ
3
第 11 回「学びながらのウォーキング大会」
いて協議した。
(小田)
について
11 月 23 日(金・祝)に常盤公園で開催する
12
山口県警察官友の会理事会・総会(9 月 4 日)
23 年度事業報告及び決算報告、24 年度事業計
大会の日程やウォーキングコース等について協
議、決定した。
923
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
7
理事会
9 月 20 日
第 12 回
午後 5 時〜 6 時 55 分
第 1826 号
日本医療マネジメント学会第 12 回九州・山
口連合大会の名義後援について
名義後援することに決定。
8
山口県報道懇話会との懇談会について
10 月 16 日 ( 火 ) に山口市において開催するこ
小田会長、吉本・濱本副会長、河村専務理事、
弘山・萬・田中・山縣・林各常任理事、武藤・
沖中・加藤・藤本・香田・今村・中村・清水
とに決定し、議題について協議した。
各理事、山本・藤野各監事
9
次期(第 6 次)山口県保健医療計画への意見・
要望について
協議事項
1
第 127 回日本医師会臨時代議員会における
質問について
個人質問 1 題、代表質問 1 題を中国四国ブロッ
来年度施行予定の第 6 次山口県保健医療計画への
県医役員の意見・要望を取りまとめ協議した。郡市
医師会、地域医療計画委員の意見・要望とともに山
口県に提出することについて協議、了承された。
ク当番県に提出することに決定。
報告事項
2
平成 25 年度予算施策に関する要望事項につ
1
精神疾患ワーキンググループ第 4 回会合
いて
(9 月 6 日)
要望事項の内容について協議した。
精神疾患の医療機能案、イメージ図案について
協議した。(弘山)
3
顧問会議について
11 月 29 日 ( 木 ) に山口市において開催するこ
とに決定。
2
郡市医師会妊産婦・乳幼児保健担当理事協議
会・関係者合同会議(9 月 6 日)
郡市医師会と各市町担当者等との合同会議を開
4
厚生労働省が行う
「看護師特定能力認証制度」
に関する意見募集について
標記制度の問題について、現在、厚生労働省の
「チーム医療推進会議」及び「チーム医療推進の
ための看護業務検討 WG」において検討中である
催。今冬の高齢者インフルエンザ予防接種の開始
時期、接種料金、また来年度の広域予防接種の個
別接種標準料金案等について協議した。妊婦健康
診査、乳幼児健康診査について、県産婦人科医会長、
県小児科医会副会長から説明いただいた。(山縣)
が、当該 WG から関係団体等へ意見を募集され
ており、協議の結果、郡市医師会へも意見を募る
3
第 9 回山口県後発医薬品使用促進連絡会議
(9 月 6 日)
こととした。
後発医薬品の現状について及び県民向け講習会
5 「山口県民の歯・口腔の健康づくり推進条例」
の開催等について協議が行われた。(林)
制定記念シンポジウムの講師の派遣について
小田会長に決定。
4
山口県医師会産業医研修会(9 月 8 日)
特別講演 2 題を行った。参加者 115 名。
(中村)
6「健康・省エネシンポジウム IN 山口」の名義
後援及びシンポジウムにおけるパネリストの派遣
5
について
健分科会(9 月 10 日)
名義後援することに決定。パネリストについて
は、引き続き役員内で検討。
924
平成 24 年度第 2 回健康やまぐち 21 歯科保
歯・口腔の健康づくり推進計画 ( 仮称 ) につい
て協議した。(山縣)
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
6
山口県社会福祉協議会 県域活動計画中間見
直しに向けた研修会(9 月 10 日)
第 1826 号
る「肝疾患治療の現状」、下関地方気象台の山口
俊一台長による「山口県における気象災害につい
県域活動計画の中間見直しに向けて、
基調説明、
分科会、総括講義が行われた。
(今村)
て」、福島県立医科大学の田勢長一郎教授による
「震災後の救急医療活動」の講演が行われた。医師、
薬剤師等 88 名出席。(河村)
7
社保・国保審査委員合同協議会(9 月 13 日)
協議題 6 題、会員からの意見要望 15 項目につ
11
第 2 回山口県糖尿病療養指導士講習会
(9 月 16 日)
いて協議を行った。協議結果は次号会報(ブルー
ページ)に掲載予定(萬)
8
第 2 回目を開催。受講者 177 名。(香田)
第 2 回山口県糖尿病対策推進委員会
12
(9 月 13 日)
今年度事業の進捗状況、医療連携研修会・合同
症例検討会の開催に向け協議した。
(弘山)
9
地域医療フォーラム 2012 (9 月 16 日)
テーマ「新時代の地域医療の扉を開く〜これか
らの地域医療を形作るための鍵〜」として、全体
会、分科会が行われ、参加した。(武藤)
日本医師会テレビ健康講座−ふれあい健康
医師国保理事会 第 11 回
ネットワーク−収録(9 月 15 日)
番組タイトル「山口県内、在宅医療の現場から
−顔の見える連携を目指して−」として、日本医
1
師会の石川広己常任理事と小田会長の鼎談等をテ
傷病手当金支給申請について
1 件について協議、承認。
レビ山口において収録した。在宅医療の現場とし
ては、県内 4 名の先生方にご協力いただき、ドキュ
山福株式会社取締役会
メンタリー部分として放送される。番組放送日は
9 月 30 日 ( 日 ) 午後 2 時から 2 時 30 分。(林)
出席者:取締役 8 名、監査役 3 名
10
第 125 回山口県医師会生涯研修セミナー
1
税務調査の報告について
(9 月 16 日)
(8 月 20・27 日、9 月 3 日)
山口大学の古川裕之教授による「安心で安全な
薬物治療に必要な視点−アナタの常識はワタシの
指摘事項について今後の対応を協議、承認され
た。
常識ではない−」
、山口大学の内田耕一講師によ
死体検案数掲載について
自殺
Aug-12
病死
34
山口県警察管内発生の死体検案数
他殺
他過失
自過失
災害
107
0
11
その他
合計
14
166
死体検案数と死亡種別(平成24年7月分)
0
0
0
11
14
34
107
自殺
病死
他殺
他過失
自過失
災害
その他
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
女性医師
リレーエッセイ
第 1826 号
湘南の風??・・・・
(山奥より)
下関市
先日、関東に行き、久しぶりに一人での 6 日
諸冨
夏子
知ることができました。医療にも密接にかかわっ
間を過ごしました。現在、2 歳と 5 歳の元気いっ
てくる福祉のお話しをたくさん聞くことができ、
ぱいの子どもを育てながら、仕事もさせていただ
私の中でも大変勉強となりました。
き、充実した日々を過ごしております。このよう
私自身、大きな病院勤務が続いていた 20 代か
に書くと、子育て中に一人の時間を過ごす機会が
ら、妊娠出産を契機に実家の診療所を手伝うよう
あり、ゆっくりできるチャンス!!とみなさんも思
になり、初めて、地域医療にかかわることになり
われたかもしれませんし、
私も同様に思いました。
ました。患者さんのご自宅に伺っての診療を含め、
そもそも、関東の湘南に行ったいきさつは、泊
病院・診療所に来ることができる状態の患者さん
まり込みの社会福祉関係の研修でした ( 社会福祉
もいれば、行くこともできない状態の患者さんも
法人施設長資格認定講習 ) 。かの地を訪れるのは、
いること。福祉と介護のかかわりなど、たくさん、
私にとって初めてであり、地理に精通していませ
知らないことがあり毎日患者さんや症状・症例か
んが、神奈川県内で湘南だから、きっと、夜は横
ら勉強の日々です。今後もかかわることになる介
浜に出て大学時代の友達に会い、ゆっくり語り合
護・福祉の分野も医療と同様、何らかの障害や介
えるかな。なんて思っておりました。
護を必要とする利用者さん・患者さんを対象とし
現実は、湘南でも結構な山奥で、ホテル前の
ています。知らないことは、自分でも勉強しなく
バスは 1 時間半に 1 本程度・・・・。駅までは
てはならず、また、周りの職員・先輩方に教えて
タクシーでも 25 〜 30 分はかかります。結構な
いただかないといけません。講習は、授業内容だ
値段にもなる・・・・。研修は朝からだいたい 6
けでなく、改めて、自分を見つめなおすきっかけ
時前ぐらいまで・・・・。
になりました。
たどり着いてすぐに、研修施設から夜出て羽
結局、湘南の風に吹かれることはありません
を伸ばす野望は打ち砕かれてしまいました ( 出て
でした。でも、山奥で過ごした 6 日間はとても
もホテルに帰れない ) 。
楽しく有意義に思えました。また、帰ってきた
しかし、幸運にも、研修に参加し初日の懇親
ときの娘二人は、母のいない初めての 6 日間を、
会から仲良くなった 50 代 60 代の大先輩方 7 人
多少は泣いたようですが頑張って過ごしていたよ
はとても楽しい方々でした。
人生の大先輩であり、
うで、元気に出迎えてくれ、とてもほっとしまし
さまざまな仕事上の悲喜こもごも、身の上に起き
た ( 下の娘は帰ってからのこの 10 日間程、赤ちゃ
た悲喜こもごも、話は尽きず。毎日研修時間が終
ん返りしていますが・・・・) 。
わるとともに、夕食の待ち合わせ時間を決めてい
今後も両親や夫、保育所の先生方、職場の皆
る状態でした。医療の分野だけでなく、福祉の分
に助けられながら、子育てしつつ仕事も続けてい
野でも、沢山頑張っている人々がいる、と改めて
きたいと考えております。
926
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
切手収集 50 年
下関市医師会 安 藤
下関市医師会広報担当理事の安藤と申します。
彰
発行日朝の行列は『禁止行為』となってしまいま
下関厚生病院に勤務する脳神経外科医です。山口
した。しかし、60 年代以降の記念切手はほとん
県内にはおそらく 5 名程度しかおられない弘前
どのケースで現在『額面割れ』即ち切手商に売っ
大学医学部の出身です。38 歳の頃、初代脳神経
た場合、売価より低い値段でしか引き取ってく
外科教授である岩淵
れません。『郵便に貼って使った方がいいですよ』
隆先生の許可を得て、生ま
れ故郷である下関に一家で帰って来ました。尤も
という次第です。小生は 80 年代以降、記念切手
正確には帰って来たのは小生だけで、家内や子ど
は気に入ったものだけ購入し、大部分は郵便に使
もたちは、native の津軽人でしたので、今風に言
うスタイルになりました。現在は、封書 10 円時
えばIターンでしょうか。来年還暦を迎える身
代の記念切手で当時使用したことがわかる消印の
で若い頃のポテンシャルは既になく、再来年には
きれいなものは、中小のオークションで売り物に
社会保険病院などの独立行政法人化が決まってお
なるレベルまで地位が上がっています。小生の現
り、自分としてどのように対応すべきか考える時
況ですが、カタログコレクションの他に、自分で
機ではあります。
掘り下げている収集として、東郷 4 銭切手の専
さて、自己紹介はこのくらいにさせていただき、
門収集と赤間関の初期郵便印収集などです。東郷
趣味について書かせていただきます。続いている
4 銭切手に関しては、その刷色が地味かつ消印が
期間の長いものといえば、切手収集でしょうか。
見づらいなどの理由から、本気で集めている方が
小学校 3 年生の時、担任の先生 ( 太田信行先生と
少ないので、集めてみるかという気持ちで始めま
おっしゃり、角島のご出身と記憶しています ) の
した。現存一点などという使用例があり、教祖サ
影響で切手を集めるようになりました。時はグリ
マにはなれそうにありません。赤間関の初期郵便
コの切手の『おまけ』ブームの真っただ中でした。
印については、昨年末に龍 2 銭縦ペア貼で明治
その数年前から新発行の記念切手の値上がりは望
5 年 9 月に大坂の廻船問屋に宛てた『馬関改済』
めない時代でしたが、
目新しい外国切手の図案は、
エンタイヤを入手しました。赤間関郵便取扱所は
小生を切手少年に仲間入りさせました。しかし、
旧暦明治 4 年 12 月に開設されましたから、龍文
すぐに収集対象は外国切手から日本切手に移って
切手の現役期間は赤間関では、龍銭切手が発行さ
いきました。理由は簡単で、当時世界切手カタロ
れる明治 5 年 2 月までの二か月間に限定される
グは子どもに手の届くような値段ではなく、切手
ので、この期間、できれば明治 4 年 12 月のエン
上の国名表記も読めず、調べようもない状況で
タイヤを入手したいと密かに画策しています。さ
は、国別収集ですらままならず、さらにその図案
らには記番印の使用終了時期の確定 ( ということ
の意味も分からずでは、楽しさ半減だったからで
は、二重丸印 KG 単独抹消の開始時期 ) 他に、二
す。あの頃発行日に祖母に郵便局に並んでもらっ
重丸印 KB2 の赤間関局における使用開始時期の
たり、近所のタバコ屋さんに取り置いてもらった
確定。文献的には明治 14 年 1 月となっています
りして入手した切手は、今も所持しています。郵
が、現在のところ明治 13 年 11 月まではエンタ
便局に並んで、学校に遅刻する生徒が出たため、
イヤ上で遡及できています。求ム情報 !
927
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
会員の声
TPP(=Trans-Pacific Strategic Economic partnership agreement)
環太平洋戦略的経済連携協定−締結反対の立場から
宇部市医師会
◆はじめに
渡木
邦彦
3. 交渉文書や各国の提案、関連資料を入手できる
民主党政権で野田佳彦内閣が発足して 1 年、そ
のは、政府当局者の他は、政府の国内協議に参加
れまで見え隠れしていた TPP 加盟問題が急浮上
する者、文書の情報を検討する必要のある者、ま
してきた。TPP の名称は環太平洋戦略的経済連
たは情報を知らされる必要のある者に限られる。
携協定と穏やかな仲良く取引しましょうという名
4. 文書を入手しても許可された者以外に見せる
称であるが、その内情は協定内容が貿易、金融、
ことはできない。
経済、医療、農業と多岐にわたり国益面からみて
も問題含で一筋縄では締結には至らないようであ
る。経済面に関しては、国の経済が貿易依存立国
協定文書が秘匿され、一般公開できない。これ
だけで怪しい協定と考えられるのではないか。
の場合は TPP 加盟は非常に有利になり、メリッ
協定国間で平等で公平な経済協定とは思えな
トが大きいとされているが、日本の場合のように
い。何のための秘匿で、秘匿の意図するところは
内需主要経済の国においては、メリットは非常に
何か。アメリカの傲慢さと狡猾さが見え隠れして
少なく、デメリットばかりが噴出するのではない
いるようであるが、いかがなものであろうか。
かと TPP 加盟に対し予測されている。特に金融
問題では、郵便貯金で集めているかっての財政投
◆交渉内容は 21 分野にわたっている。
融資資金が海外へ流出してしまうのではないかと
1. 物品市場アクセス
12. 金融サービス
か、公共事業の入札でその大半が外国企業に落札
2. 原産地規則
13. 電気通信サービス
され、その結果税金が海外に流出してしまうので
3. 貿易円滑化
14. 電子商取引
はないかといった事態が取り沙汰されている。さ
4.SPS( 衛生植物検疫 )
15. 投資
らには、脆弱な日本の農業は TPP 加盟で壊滅的
5.TBT( 貿易の技術的障害 )
16. 環境
打撃を受けるだろうとその加盟が恐れられてい
6. 貿易救済 ( セーフガード等 ) 17. 労働
る。先に締結された米韓 FTA が非常に不合理極
7. 政府調達
18. 制度的事項
まりない、不平等条約として誹られている。
8. 知的財産
19. 紛争解決
9. 競争政策
20. 協力
を整理して記述してみた。医師会員各位の情報に
10. 越境サービス貿易
21. 分野横断的事項
付加でき、TPP 参加への反対意見をより明確に
11. 商用関係者の移動
私の貧弱な知識と乏しい情報源からその問題点
自覚していただければ望外の喜びである。
私個人としては TPP 協定締結には反対で、反
対の立場から理由を記述するものである。
上記に挙げたように TPP には例外品目がなく、
100% の自由化が求められるのである。モノ、
サー
ビスのみでなく人の移動、知的財産権の保護・強
◆協定文書内容について
化もすべて含まれる。これは事実上、アメリカと
1. 交渉内容を公表しないという合意をする。な
の FTA と捉えて良いのではないだろうか。TPP
ぜ公開できないのか不思議である。
に参加すればアメリカの手法、すなわち訴訟や
2. 交渉文書は協定発効後 4 年間は秘匿される。
種々の取引法で強引に押し切られ、不当な不利益
928
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
を被ることが容易に予測される。
第 1826 号
8. 日本人は自分の食べたい品種の食べ物を選ぶ
という「食料主権」を失うことになる。
TPP は通商協定に名を借りた日本国内法改変の
9. 将来的に「自家採取の禁止」といった理不尽
手段に他ならない。「非関税障壁撤廃」の名目で、
な事態へ進展しかねないではないのか ( アフガニ
アメリカ企業にとって都合の悪い日本国内の法律
スタンでは既にアメリカの肝入りで自家採取が法
や規制はすべて変更を迫られるのである。その結
律で禁止されている ) 。
果、今まで法や規制で守られていた国民の健康や
ここまで食の安全と農業の不合理さを押しつけ
自然環境、地域経済、雇用環境などが建前の「グ
られて農業のために工業を犠牲にしていいのか、
ローバルスタンダード」と称えながら実際は本音
TPP に加盟すべきだというマスコミの論調には
の「アメリカスタンダード」で掻き回されて、日
ウソと無理がある。
本が犠牲になることが見え透いているようだ。
◆ TPP 参加で日本の農業は壊滅的打撃を受ける
◆食料主権と食の安全が奪われる
遺伝子組み換え食品の表示義務が非関税障壁と
して撤廃される可能性が高い。
のか?
コメ農家を除けば、日本の農業は決して弱くな
いようである。日本の農業生産額はじつは世界第
これまで食品には生産地、遺伝子組み換え食
五位、先進国ではアメリカに次ぐ農業大国なので
品の有無等の表示が義務づけられていて、消費者
ある。最大の弱点はコメ農家であり、平均年齢が
に安全と選択肢が与えられていたが、これらの表
65 歳を超えており、10 年後にはコメ生産の担い
示義務が取っ払われると食品に対する信頼が喪失
手がいなくなるといわれ、そのコメ農家を守るた
し、食の安全が奪われるのである。
めに歴代政権は補助金政策を採ってきたが休耕田
このことは、
や放棄田は増える一方で、補助金政策でもコメ作
1. 国民の知る権利、選ぶ権利が奪われる。消費
りは限界にきていて、コメ作農家は崩壊の一途を
者行政の後退である。
辿っている。しかし、コメ以外の日本の農業は力
2. 十分な安全性の保証がない食品を食べさせら
強い。月刊「農業経営者」副編集長浅川芳裕氏の
れ、健康に支障を来す恐れが出る。
data では 40 万戸の主業農家 ( 農業所得が全所得
3. 遺伝子組み換え農作物の売買ができるように
の 50% 以上:専業農家とは異なる ) が、日本人
なり、国内でそれら組み換え作物の商業栽培が開
の消費する国産食料の大半を作り出している。酪
始されることが予測される。
農 -95% 、養豚 -92% 、養牛 -92% 、花卉 -87% 、
4. 遺伝子組み換えの花粉が飛散し、日本在来の作
工芸作物 -85% 、イモ類 -83% 、野菜 -82% 、麦
物を遺伝子汚染する。除去は永遠に不可能になる。
-76% 、豆 -76% といった具合である。さらに、
5. 在来種の畑が遺伝子汚染された場合、特許を
売り上げ 1 千万円超の 14 万戸の農家が日本の生
もつモンサント社 ( 米国 ) は、
「特許侵害」だと
産の 6 割を占めている。安値攻勢をかける中国
して、その在来種の農家を訴え勝訴している事実
に対してでも、逆に対中国輸出を増やしてきた。
がある。日本でも同様な事例が発生しない保証は
日本の農産物の食の安全と信頼は確たるモノで、
どこにもない。
中国のセレブは日本の農産物を高価でも食して
6. 日本在来種の農家は自分が植えたこともない
いる。食の安全・信頼とはこのようなことである。
遺伝子組み換え作物の特許料を支払わされるハメ
同様なことが TPP 締結後に日本の拙い政治力で
になる。海外の国では既にこの紛争で敗訴し特許
もって参加国間に輸出を伸ばせるか否かである。
料を支払っている農家がある。
現在ではコメの政治力販売をはじめ価格維持もし
7. 日本の農家は米国モンサント社の隷属会社と
くは値上げはアメリカの商取引法でアメリカ流に
なり、栽培する品種を選ぶ自由を失うことになる。
強制改変される可能性はみえている。
現実に起こっている事例をみると、非常に不合理
である。
TPP 参加が日本の農業に成長と可能性をもたら
すという思考は正論であろうが、現時点での根強
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山口県医師会報
第 1826 号
い農業保護政策と多くの強い支持、
「農業は保護
年に渡り、アメリカからさまざまな要求が出され、
して初めて産業として生き残れる」との発想は生
日本は従わざるを得ない状況に陥っている。アメ
産事業として余りに稚拙で日本的幻想に過ぎない
リカはこれまでの交渉で、株式会社の医療参入や
のではないだろうか。
薬価の引き上げなど、日本の医療制度に事ある
日本農業に対するこれらの脆弱な論理を改め、
ごとに圧力を掛け続け、アメリカ的自由経済の考
政策論的に商農主義を強化徹底し、段階的に農業
え方や手法を医療に持ち込もうと躍起になってい
を産業としての自立を高めていけば、TPP 参加
る。厚生労働省も日本医師会も中央社会保険医療
でなくとも国益事業へと成長するであろうし、ま
協議会でも保険診療を必至に堅持してきた。この
た世界の自立農業と同様に、日本も農業を発展さ
アメリカ的自由経済が医療に入り込むと、日本の
せるべきである。それまでは参加は時期尚早であ
国民皆保険制度はあっという間に崩壊し、弱者を
り、日本農業の歴史的危機と言わざるを得ない。
救済できなくなるだろう。まさに医療のアメリカ
零細農家の救済改善は最重要課題である。一番
化である。映画「シッコ」が現実の現象となるのだ。
手っ取り早いのは法人化かもしれない。農地を供
最近、アメリカは日本の薬価を決定する審議会
出させ集約化し、集団経営による農作物増産を図
にアメリカの薬業団体の代表を参入させろと要求
り、お百姓さんをサラリーマン化してでも所得増
している。韓国は米韓 FTA( 自由貿易契約 ) を結
加する策を実現せねば、零細農家は生き延びてい
んだことで、薬価が一挙に 6 〜 7 倍にはねあがっ
けないのではないだろうか。
た。日本でも同様なことが起こるであろうことは
コメ農家やコメ価格の日本的問題は早急に改善
予測に難くない。国民皆保険制度で診療報酬の一
すべき事項であり、このコメの自由販売化システ
部である薬価が米国の都合次第で決められるよう
ム構築とコメ価格自由化なしには TPP の土俵に
になれば、健康保険制度自体の崩壊が加速すると
も、コメの自由貿易にも参加できまい。日本は農
考えざるを得ない。TPP に加盟しているニュー
作物貿易で外貨を稼ぐ貿易品目ではないかもしれ
ジーランドでは、健康保険組合のような組織団体
ないが、第一段階として主食のコメ価格の国内自
が、薬を一括購入して、医療機関に提供している。
由化を早急に改善する必要に迫られている。この
それで薬の価格が非常に抑えられている。ところ
改善がコメ輸入に際し法外というがアンビリーバ
がアメリカの製薬企業が、これは「独占禁止法違
ボーの 700% という超高関税の撤廃が可能という
反である」と訴訟を起こし、既存の制度を崩壊さ
状況で輸入できるという事態が開ければ、日本の
せるような事態が発生している。日本はこうした
コメ作と農業の自立化の証明になるのではないだ
訴訟や商取引の問題に政策や外交力できちっと歯
ろうか。不幸にも TPP 加盟にでも至れば、700%
止めを掛けて医療制度や組織を加護堅持できるか
のコメ関税は一捻りで潰されること請け合いであ
どうか。もし TPP 締結の暁には薬価審議会が今
る。さらに視点をより深くすれば、食糧自給率の
後どのように対応するのか、シミュレーションは
観点からも表向きには飽食時代とは言いながら食
絶対に避けられないであろう。診療報酬の中で薬
糧自給は十分ではないことも現実である。
価のみが高騰し、検査料も上昇、技術料・診療点
数のみは据え置き、この可能性が高い診療報酬上
◆日本での医療事情の悪化
昇 ( 患者のためではない値上げ ) に日医はどう対
現在、崩壊しかけているが国民皆保険制度を
応するのだろう。これらを日本の政治的折衝力で
堅持することに変化はない。そのために、さまざ
抑止することが医・歯・薬すべてで国民皆保険制度
まな制度や税金を含めて公的医療保険を遵守する
の存亡にかかっている。厚労省、中央社会保険医
必要がある。あくまでも公的医療保険を維持しな
療協議会、日医が強力な結束力と連携で、変形し
い限り日本の医療制度は崩壊するのである。その
ていく国民皆保険制度を防御することを大いに期
制度哲学では日本の医療へ商業主義は持ち込まな
待するものである。蛇足であるが、尖閣、竹島、
い、参入させないとしてこれまで頑に排除し続け
北方四島の領土問題での民主党政権の外交での対
てきた。しかし、1985 年の MOSS 協議以降、長
応をみるにつけ、TPP 締結切迫で日本政府とし
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平成 24 年 10 月
山口県医師会報
ての権益主張は覚束ない心許ない感じを強く抱く
のは、一人私のみだろうか。
第 1826 号
◆政府調達の自由化 ( 公共事業の入札自由化 )
公共事業入札の条件が緩和され、今までの 1/3
アメリカでは約 4 千万人は無保険である。よって
程度の額の入札にも外資が参入できるようにな
医療を受けられずに死亡する人が年間 4 万人以上に
る。これによって、公共事業に頼るところの大き
のぼる。TPP 加盟によって日本の医療も次第にアメ
い地方経済は壊滅が予想される。また、大震災復
リカ型利益至上主義医療へと向かわざるを得なくな
興のための土木事業は地方の経済活性化にも役立
るのが必定である。貧困層が医療を受けられないと
つはずであるが、それが外国企業に落札され、東
いう事態は、日本でも既に発生し始めているが、そ
北再生の絶好のチャンスが潰される恐れがないと
の傾向が加速度的に進むことは目にみえている。そ
は断言できない。
こまで見通せるのに国益として TPP に加盟する必
要性が現実問題としてあるのだろうか。
◆郵政資金の国内運用義務の廃止
日本が TPP 加盟となれば、日医は国民皆保険
現在は限度付きでしか認められていない郵政資
制度堅持のための理論武装で論陣を張って、米国
金 ( 旧:財政投融資資金 ) の海外運用が 100% 解
の理不尽な要求を強力に拒否しなければならな
禁になると、国内で廻っていた 267 兆円もの大
い。さらに加盟後には、皆保険が崩壊する仮定に
金が海外に流出し、国内経済の衰退を招くことに
対して日医独自の医療保険の腹案を作っておく必
なる。これは TPP の金融面でアメリカから狙わ
要がある。
れているようである。
◆デフレ不況がさらに進行
◆ TPP 交渉に参加したが最後、脱退できないこ
海外から安いモノやサービス、
労働力が流入し、
とが予測される
デフレがさらに進行し、賃金水準の低下でさらに
交渉に参加して日本に不利だということが解っ
モノが売れなくなるというデフレスパイラル経済
た時点で締結しなければよいとの論もあるが、米
の流れが予想される。
韓 FTA 交渉をみれば、抜けることがいかに困難で
関税を撤廃すればモノの物価は安くなりはしな
あることが解るようだ。日本に有利でなくともア
い、物価変動は関税撤廃より為替レートで決まるの
メリカの政治力の強さに負けて不平等な条件を呑
である。円高から円安への対応政策を採らないとデ
まざるを得なくなる可能性が高い。現状でも締結
フレは止まないのである。自動車、鉄鋼、船舶等の
加盟国間で起きている事態でも、アメリカの圧力
重工業製品をはじめ工業製品の貿易収支は関税では
に寄り切られている事例がたくさん認められてい
なく為替レートで大きく変化するのである。
る。不利だと解った時点で締結を解除すればよい
ということが許されるのであれば、歴史上に不平
◆失業者が増える
自由貿易は失業の輸出でもある。NAFTA( 北米
自由貿易協定 ) が締結されたことで発生した失業
等条約など存在しないはずである。TPP が理不尽、
不平等条約だと理解し納得できたら交渉のテーブ
ルにつかないという選択をこそすべきである。
者はメキシコで 2 千万人。米国で百万人。その
他の自由貿易協定の影響を合わせると 5 百万人
が失業したとみられている。TPP 締結後は日本
◆デメリットは無数にあるが、メリットはない
関税をなくしたからといって、輸出が増える見
でも大量の失業者が出ることは自明の理である。
込みは望めない。日本では既に十分に低い関税
低賃金で就業する外国人に日本人の現行の労働条
よりも為替の方がはるかに大きく輸出に影響を及
件では太刀打ちできないのである。
ぼしている。また、生産拠点がアメリカにある
大量の単純労働者の流入は治安の悪化を招き、
日本企業が多いため、関税はほとんど影響がない
種々の刑事事件が増加し、日本人が危険にさらされ
のが実情である。そもそも日本経済の輸出依存度
たことは、これまでの歴史が証明した通りである。
は 11.5%(2009 年 ) でしかなく、日本は貿易立国
ではなく内需の国である。企業経営者にとっては
931
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
有利な側面もあるようだが倫理的にも商道徳の面
第 1826 号
保護の面もある )
からも疑問符がつく部分もあり、また一般国民に
とってのメリットは何一つないと考えられる。逆
2. 日本の金融機関は儲かる
に大資本家や機関投資家、それに貿易立国として
金融自由化と円高を利用すると海外で日本の金
経済が成り立っている発展途上国では TPP 加盟
融機関は利益を容易にあげることになる。日本の
で多くのメリットが見込めるようである。それと
郵貯 (267 兆円 ) と農協共済 (45 兆円 ) の巨大な
大企業及びその資本家もメリットがあるようだ。
資産が国内外の資産運用規制緩和で利用できる。
逆にみると半公的巨大資産が海外に流出すること
◆ TPP はアメリカ企業に一方的に有利な不平等
でもある。
条約ではないのか
TPP の ISD 条項は、外国企業が不当な言いがか
3. 商社は表示の
自由
度が拡大する
りによって日本政府を訴える道を開くものであ
商社にとって有利な「原産地表示」ができるの
る。NAFTA 等の例をみる限り、
「国際投資紛争解
で、これによっては商品イメージが大いに上がり、
決センター」における裁判では、アメリカに有利
商品販売が増加するのである。
な判定が下されることがほとんどで、裁判に負け
原料費 (100%) の場合:日本産原料 45% 以上、
ると、日本政府は高額な賠償金を支払わされる。
中国産原料 55% 以下、加工場所は問われず、製
国民の血税が、外国企業の言いなりに巻き上げら
品は made in Japan と表示してよい。
れてしまうことになりはしないか。
また、TPP 同様に、ISD 条項を含むのが米韓
例:原料の 55%( 金額比 ) は中国産、加工は中国、
原産地表示は「日本製品」の表示が可能。
FTA であるが、アメリカ通商代表部のカトラー代
これは厳密には騙しであり、正確には表示義務
表補らは、TPP では米韓 FTA 以上の高いレベル
違反のようでもある。よそ(外国)がやって儲け
の自由化を求めると明言している (TPP を慎重に
ているからうち(日本)もやるか。商道徳的、倫
考える会会長:山田正彦元農水大臣の証言 ) 。そ
理的にどうであろうか。
の米韓 FTA の内容はと言えば、驚くべき不平等
条約である。
「自由貿易」と言いながら自由競争
を否定し、どんなに努力しても韓国企業は儲かる
◆反面教師としての米韓 FTA
近い過去に締結されたばかりの FTA の理不尽、
ことが許されず、何もしなくてもアメリカ企業は
不合理条約の内容をみてみよう。
儲かることが約束された、非常に理不尽な協定の
1. 後戻りできないラチェット条項
ようである。
このような不平等な米韓 FTA 以上にハイレベル、
一旦取り決めた種々の取引は、事故があっても
中止できない。
すなわちアメリカにとって都合の良い協定が TPP
であるのなら、そのような協定に加盟するなど言
語道断、検討の余地もないと考えるのであるが。
2. 自由競争を否定する非違反提訴
アメリカが韓国での貿易できちんと取引して収
支が赤字となったら、韓国を提訴して賠償しても
◆日本が TPP に加盟したがる理由とは ?
国内で TPP 加盟の交渉テーブルにつこうとして
いる人々もいる。加盟のメリットとは何か。
らえる。信じ難い取り決めであるが、韓国は、こ
の条項で非常に苦しめられているようである。何
もしなくともアメリカ企業は儲かり、どんなに努
力をしても韓国企業は儲けることが許されない。
1. 企業の海外進出が容易になる
加盟国間では「内国民待遇」といって国外から
「自由、自由」と声高に要求するアメリカなのに、
これは自由競争を完全に否定するものではないか。
進出してきた企業も国内企業も全く同等に扱わね
ばならない。が、進出企業は国内企業より高賃金
を労働者に支払わなければならない。( 自国企業
932
3. ISD 条項採用
アメリカの投資家が韓国で投資をして損害を
平成 24 年 10 月
山口県医師会報
第 1826 号
被った時、韓国政府を訴えてその損害を補填して
◆韓国から「毒素条項」と呼ばれる米韓 FTA の
もらえる。日本でも損失補填、インサイダー取引
条項例
など、投資商法が非常に不信感をもってみられた
1. ラチェット条項
時期が過去にあった。投資取引は国際間でも不安
定なマネーゲームに近い。
一旦自由化されたものは後戻りできない、アメ
リカで BSE が発生しても韓国はアメリカからの
牛肉輸入を止めることはできない。
4. 法治を否定する「サービス業の非設立権」
韓国内に事業所、事務所を置かなくても営業で
きる、というのがこの条項である。事業所がなけ
2. 非違反提訴
韓国企業が一切協定に違反していなくても、ア
れば、韓国内に企業は存在していないことになり、
メリカ企業が想定される売り上げを達成できな
課税からも逃れられ、韓国からの提訴も受けない
かった場合、その不足分を払えとして、韓国企業
とも考えられる。韓国による法治を否定するよう
を訴えることができる。
なものである。
5. 米韓二国間で食い違う協定と国内法の関係
国際間の協定と国内の法律では、国際間協定
表現は悪いが、暗黙のぼったくりはないのか。
3. サービス業の非設立権の認定
韓国国内に置いた事業所を登記しなくても営業
の方が上位にくる、協定の方が強い力をもつとい
できる。韓国国内に存在していないことになり、
うのが国際的常識である。だから、協定と国内法
利益を上げても課税を免れることができるとし、
が食い違うような場合には、国内法の方を変え
法律違反を犯しても提訴を免れることができる。
なければならない。アメリカの「米韓 FTA 履行
これはもう恥も外面もなく、アメリカのやりたい
法」101 条のことを念押しするものである。韓
放題である。
国の国内法が FTA に合わせてきちんと修正され
この毒素条項をみる限りでも、不平等条約と
ていることをオバマ大統領が確認した上で、FTA
いうより余りに理不尽で、出鱈目だということ
が発効すると定めている。ところが韓国にさまざ
が一般国民にも理解できる。さらに詳細に条項を
まな無理を強いておきながら、アメリカは自国の
チェックするとまだまだ無茶苦茶な条項がみつか
都合最優先、アメリカの法律に反する米韓 FTA
るのではないのか。韓国にとってまさに毒素条項
は無効にしてしまえるように「米韓 FTA 履行法」
であるが、「毒素」とはもの凄い表現ではないか。
102 条で定めているのだ。
韓国は協定を守れ、でもアメリカは都合が悪く
◆用語解説
なったら守らないよ。こんな身勝手な自国の利益
1. ISD 条項
のみ優先する協定を押し通そうするなど考えられ
ISD=investor-state Dispute( 投資家対国家間の紛争 )
ないことである。が、アメリカは他国と貿易協定
外資が損害を被ったと判断した時、相手国を提
を締結する場合、大体このような条約となってい
訴できるのがこの条項である。
るようだ。1994 年の NAFTA 以降、世界貿易機関
(WTO) 協定も含めてすべての貿易協定に関して「履
2. MOSS 協議
行法」を作成し、その中で合衆国法の優越を定め
当処は「MOSS 協議 ( 市場分野別個別協議 )」や
ているのである。こんなに呆れた不平等条約を締
「日米円ドル委員会」等の日米 2 国間での貿易交
結させられたら、国民にその情報が知らされてい
渉では個別品目や為替等に範囲を限定したもので
なかった韓国では混乱と大変な事態に陥ったこと
あったが、商習慣や流通機構などの国のあり方や
が推測できる。日本も同様な事態が生じることは
文化にまで範囲を広げることとなり日米構造協議
必定である。もう締結回避しかないように思うが。
として発展していっている。
933
山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
3.NAFTA = North American Free Trade agreement( 北
討を重ね、TPP への加盟が国益に反する条約だ
米自由貿易協定 )
と熟知することを念願するものです。
USA 、カナダ、メキシコの 3 か国で結ばれた自
由貿易協定で、1994 年 1 月 1 日から発効。
私は TPP 加盟に対し、上記の記述内容の理由
から強く反対するものです。しかし、TPP 賛成
◆おわりに
で締結を援護しておられる先生方もおありだと思
TPP は国際経済学的には発展途上国において
います。どうぞ反論なり、賛成情報をご投稿いた
貿易依存型の国にはメリットが多いが、日本みた
だけると幸甚に存じます。日本は TPP 加盟か非
いに内需型経済の国ではメリットよりデメリット
加盟か、興味深い紙上論争になりそうです。
となる要素が多いようである。さらには、最近国
時事用語や国際政治用語をほとんど知らずに
力が落ち彷徨える大国アメリカにとって経済の立
あちこち突き当たって辞書を引いて書き連ねると
て直しと軍事力強化は必須の改革事項で、強いア
いった稚拙さと生半可理解でその意を十分に表現
メリカの復帰のために大統領選挙で景気回復策の
し尽くせませんでした。このことを深くお詫び申
種々の国家戦略を試みている。TPP に日本を組み
し上げますとともに、ご精読を深謝いたします。
入れて日本の金融機関からお金を巻き上げる目論
合
掌
みもみてとれる。しかしこれだけ問題含みの TPP
加入をおいそれと締結加盟すれば、日本の景気回
参考文献
復や経済発展の進路を大きく損なうことが危惧さ
1. 中野剛志「TPP 亡国論」集英社新書 0584A 、
れる。ことに農業・食料問題、公的保険での医療
システム、経済、金融等の国家安全保障機構が崩
壊の危機に晒されることは国家存続の根幹にかか
わる大問題に及ぶことが考えられる。不平等条約
であれば中途脱退すればよいといった甘い施策は
許されないことは上記に挙げた通りである。国民
2011 年 11 月
2. 安田美絵「サルでもわかる TPP」合同出版、
2012 年 6 月
3. 櫻 井 よ し こ「 甦 れ 日 本 」ダ イ ア モ ン ド 社 、
2012 年 8 月 2 日
4. その他、①日医 FAX 、②インターネット TPP
一人ひとりが国益としての正しい情報を集め、検
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案
内
「会員の声」原稿募集
医療に限らず日々感じていること、随筆など、会員からの一般投稿を募集いたします。
字数:1,500 字程度
1)文章にはタイトルを付けてください。
2)送付方法:① E-mail
②フロッピーの郵送(プリントアウトした原稿も添えてください)
3)編集方針によって送り仮名、数字等に手を加えさせていただくことがあります。ある意
図をもって書かれ、手を加えてほしくない場合、その旨を添え書き願います。
4)他誌に未発表のものに限ります。
メール・送付先 : 山口県医師会事務局
〒 753-0814
広報情報部
山口市大字吉敷下東 3-1-1
TEL:083-922-2510
E-mail
934
総合保健会館 5 階
FAX:083-922-2527
[email protected]
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飄
秋の夜長に…
々
広 報 委 員
堀
酷暑の夏が過ぎ、スポーツ・食欲・読書の秋
哲 二
文部科学省国立教育政策研究所の資料によれ
が来た。スポーツ・食欲はメタボ対策として関心
ば
が高いが、読書はどうだろう、明らかに衰退傾向
低下している
を示しているように思う。
と読書の必要性を間接的に示唆したものだろう。
文部科学省の資料によれば、最近の生徒・学
根拠を示し、自分の考えを表現する理解力が
と結論付けている。ネットの影響
日本語の文章表現は多種・多様・多彩であり、
生はテレビ・パソコンの時間が増え、読書時間が
その中には日本文化が含蓄されている作品が多
減少している。出版業界の資料統計でも文学書と
い。世界中探してもこのような表現力豊かな言語
いわれる書籍の発行部数は徐々に減少し、本離れ
はないであろう。その文章の根底に宿るものを掘
が進行している。図書館でも娯楽や趣味のための
り起こし、自分なりに理解し、自己形成し、表現・
本は多くなったが、文学書は増えていない。
行動できることが読書の本来の目的である。
江戸時代までの写本や版本といった和本から、
秋の夜長、ゆったりとした気分で文学書や哲
明治以後洋本へと、さらに最近では電子書籍も現
学書のページをめくりながら読んでみてはいかが
れ、手軽に書物が購入できる時代になってきた。
でしょうか。
大きな本は重いし、
持ち運ぶのも不便である。ネッ
ト時代では、本を携帯し読むことは今風ではない
かもしれない。さらに、読書は私たちの時代では
習慣化された当たり前の教育がそこにあった。し
かし、今の日本はいつのまにかしなくてもいい時
代に変化している。
このように日常生活の多忙化、習慣・教育の
変化等、さまざまな要図がある。一つにはゲーム
をする親の背中を見て育った子どもたち、昔は本
を読む親の背中を見ていたような気がする。しか
し、最大の原因はネットの発達であろう。現代は
情報時代である。それは否定できない。必要な情
報だけを取り出せばいいのだが、ただ興味本位だ
けで画面を眺めている。ネットばかりに頼ってい
ると結局は膨大な情報の上を漂流するだけで、そ
の下にある本筋を見失う。
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山口県医師会報
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内
第 1826 号
第 25 回山口県国保地域医療学会
テーマ
と き
高齢化社会における包括医療―住民の安心と安全をめざして―
平成 24 年 11 月 11 日 ( 日 ) 9:00 〜
ところ
式次第
国保会館 4F 大会議室 ( 山口市朝田 1980-7)
特別講演「孤族社会での医療の役割」
山口県立大学学長
江里健輔
パネルディスカッション、研究発表
主
後
催
援
山口県国民健康保険診療施設協議会、山口県国民健康保険団体連合会
山口県、山口大学医学部、山口県医師会ほか
その他
日本医師会生涯教育制度の 4.5 単位、9 カリキュラムコード、1( 専門職としての使
命感 ) 、8( 医療の質と安全 ) 、10( チーム医療 ) 、11( 予防活動 ) 、12( 保健活動 ) 、
13( 地域医療 ) 、14( 医療と福祉の連携 ) 、80( 在宅医療 ) 、81( 終末期のケア ) が取得
できます。
第 41 回 日 本 東 洋 医 学 会 中・ 四 国 支 部 総 会 山 口 大 会
平 成 24 年 度
同上
山口県部会
と き 平成 24 年 11 月 17 日 ( 土 ) 〜 18 日 ( 日 )
ところ 下関グランドホテル 下関市南部町 31-2 TEL083-231-5000( 代 )
メインテーマ 『東西医学の真の融合に向けて』
日 程
11 月 17 日 ( 土 ) 山口県部会 14:55 〜 18:00
・特別講演Ⅰ「韓国における韓方医療の現状Ⅱ」
萩市・堀耳鼻咽喉科医院
・特別講演Ⅱ「東西医学、真の融合をめざして」
九州大学病院総合診療科教授
・一般演題 2 題
中・四国支部役員会 18:00 〜 19:00
懇親会 19:00 〜 会費 13,000 円、予約制 ( 同ホテル 4F 芙蓉の間 )
堀
哲二
林
純
11 月 18 日 ( 日 ) 中・四国支部総会 9:20 〜 17:00
・特別講演「経絡診断の未来一東西両医学を踏まえて一」
広島市・十河医院
とは ?」
下関市・原田東邦クリニック
・シンポジウム「東西医学の融合の取り組み―各科領域から―」
シンポジスト
永田 良隆 ( 下関市立市民病院小児科 )
井口 敬一 ( 福山市・いぐちクリニック )
上桝 次郎 ( 米子市・うえます内科小児科クリニック )
清水
寛 ( 徳島市・東洋病院 )
・一般演題 9 題
・ランチョンセミナー 12:00 〜 12:45
・会長講演「東西両医学の
参加費
単
主
共
後
936
位
催
催
援
真の融合
十河孝博
原田康平
11 月 17 日 3,000 円
11 月 18 日 7,000 円
8 単位 カリキュラムコード (5,11,12,19,20,21,22,24,30,31,39,61,63,79,83,84)
日本東洋医学会 中・四国支部並びに同山口県部会
下関市内科医会・萩市医師会
下関市医師会
山口県医師会報
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案
内
第 1826 号
第 23 回 山口県腰痛研究会
と き
ところ
平成 24 年 11 月 22 日(木)18:30 〜 20:40
山口グランドホテル 2F「 鳳凰の間 」
山口市小郡黄金町 1-1 TEL 083-972-7777
プログラム
【トピックス】18:40 〜 19:30
座長 岩国医師会病院整形外科 副院長 貴船雅夫先生
「リハビリテーションと腰痛」
山口労災病院 リハビリテーション科(理学療法士) 砥上 恵幸先生
「腰痛にやさしいイスの開発研究(仮)」
とよた整形外科クリニック院長 豊田耕一郎先生
【特別講演】19:30 〜 20:40
座長 山口労災病院 リハビリテーション科部長 富永俊克先生
「腰椎変性疾患の病態と治療」
山梨大学大学院医学工学総合研究部整形外科学講座教授 波呂 浩孝先生
取得できる単位カリキュラムコード
・日整会教育研修専門医認定資格継続単位・脊椎脊髄病医資格継続単位を取得できます。
(認定番号:12-2099-00 認定内容:N-07 SS)(脊椎・脊髄疾患)
※単位認定の必要な方は受講料 1,000 円が必要です。
・日本医師会生涯教育単位(2単位 CC:15 、19 、60 、62)を取得できます。
参加費 500 円 ( 医師のみ )
共 催 山口県腰痛研究会、吉南医師会
その他 研究会終了後、意見交換の場をご用意しております。
VPD Advocacy Network in 周南
と き 平成 24 年 10 月 20 日 ( 土 )18:00 〜
ところ ホテルサンルート徳山 別館 3 階 銀河
18:10 〜 19:30
「わかりやすい予防接種〜基礎から最新情報まで〜」
帝京大学医学部附属溝口病院小児科教授
単位・コード 日医生涯教育制度
1 単位
カリキュラムコード 11(予防活動)、12(保健活動)
受講料 不要
主 催 徳山医師会
渡辺
博
学術講演会
と き
ところ
平成 24 年 10 月 25 日 ( 木 )18:50 〜
ホテルサンルート徳山 別館 3 階 銀河
19:00 〜 19:50
「新 CKD ガイドライン 腎疾患治療と未来型先制医療とは?〜ゲノムが開く個別化医療〜」
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
地域医療支援部門統合遠隔腎臓内科学分野教授
清元
秀泰
森下
竜一
19:50 〜 20:40
「健康長寿に適した降圧療法とは?〜早期治療・合併症予防の観点から〜」
単位・コード
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
日医生涯教育制度
1.5 単位
カリキュラムコード
受講料
不要
主
徳山医師会
催
74(高血圧症)、82(生活習慣)
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山口県医師会報
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医療施設の物件紹介について
住
所
長門市油谷 新別名 1217
旧 ( 医 ) 社団宏心会 清水医院
建
物
鉄筋構造
(1 階
診療科目
自由
広い駐車場あり
2 階建
254m2 医院
2階
138m2 住居+ 100m2 ベランダ )
全敷地面積 2034m2
すぐ近くに調剤薬局あり
※平成 24 年 8 月より院長体調不良により廃業
売却希望
詳細は長門市医師会までお問い合わせください。
TEL0837-22-4017
N
↑至長門
コメリ
ホームセンター
191
サンマート
バ
ス
停
長門市役所支所
JA
人丸駅
山口銀行
調剤薬局
ローソン
物
件
バス停
↓至下関
平成 24 年度山口県消化器がん検診研究会総会及び
第 62 回山口県消化器がん検診講習会
と き 平成 24 年 11 月 17 日(土)14:30 〜 17:00
ところ 山口県医師会 6F 大会議室(山口市吉敷下東 3-1-1)
プログラム
14:30 〜 14:55 平成 24 年度山口県消化器がん検診研究会総会
15:00 〜 17:00
第 62 回山口県消化器がん検診講習会
特別講演Ⅰ 15:00 〜 16:00
「胃X線検査の撮り方と読み方(間接撮影を中心として )」(仮題)
山口大学医学部附属病院放射線科 清水建策 先生
特別講演Ⅱ 16:00 〜 17:00
「大腸がん検診について」( 仮題 )
( 財 ) 福井県健康管理協会 県民健康センター所長 松田一夫 先生
受講料
山口県消化器がん検診研究会員は無料
非会員は医師:2,000 円
医師以外:1,000 円
取得単位 日本医師会生涯教育制度 2 単位
カリキュラムコード 10(チーム医療)、11(予防活動)、12( 保健活動 ) 、82( 生活習慣 )
日本消化器がん検診学会認定医更新単位 3 点
問い合わせ先 山口県消化器がん検診研究会(山口県医師会内)TEL083-922-2510
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山口県医師会報
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内
第 1826 号
第 86 回山口県臨床整形外科医会教育研修会
と き
ところ
平成 24 年 10 月 20 日 ( 土 )18:15 〜 20:30
山口グランドホテル 2 階『孔雀の間』
山口市小郡黄金町 1-1 TELO83-972-7777
受講料 1 単位につき 1,000 円
事前参加申し込み 不要
《特別講演Ⅰ》(18:30 〜 19:30)
『骨粗鬆症治療が変わる―運動負荷、骨形成促進剤を中心に―』
( 医 ) 十字会野島病院整形外科
《特別講演Ⅱ》(19:30 〜 20:30)
『四肢・脊椎重度外傷治療の最前線』
川崎医科大学付属病院 脊椎・災害整形外科学教授
※日整会教育研修専門医認定資格継続単位 2 単位が取得できます。
岸本
長谷川
英彰先生
徹先生
特別講演Ⅰ
< 4 代謝性骨疾患又は 13 リハビリテーション>・Re 運動器リハビリテーション医
特別講演Ⅱ
< 2 外傷性疾患又は 10 手関節・手疾患>・SS 脊椎脊髄病医
※特別講演 1 とⅡで日本運動器学会セラピスト資格継続単位 2 単位が取得できます。
※日本医師会生涯教育制度の 2 単位が取得できます。
カリキュラムコード (9: 医療情報 )(77: 骨粗鬆症 )(57: 外傷 )(60: 腰痛 )
第 87 回山口県臨床整形外科医会教育研修会
と き
ところ
平成 24 年 11 月 29 日 ( 木 )19:00 〜 20:30
山口グランドホテル 2 階『孔雀の間』
山口市小郡黄金町 1-1 TELO83-972-7777
受講料 1 単位につき 1,000 円
事前参加申し込み 不要
《特別講演Ⅰ》(19:20 〜 20:20)
『運動器の慢性疼痛―疫学、病態、そして保存治療―』
福島県立医科大学医学部整形外科 附属病院リハビリセンター教授
※日整会教育研修専門医認定資格継続単位 1 単位が取得できます。
矢吹
省司先生
特別講演Ⅰ
< 7 脊椎・脊髄疾患、13 リハビリテーション又は Re リハビリテーション医>
※講演 1 で日本運動器学会セラピスト資格継続単位 1 単位が取得できます。
※日本医師会生涯教育制度の 1 単位が取得できます。
カリキュラムコード (9: 医療情報 )(73: 慢性疾患・複合疾患の管理 )
医療機能情報提供制度にかかる
平成 24 年度定期報告のお願い
医療機能情報提供制度は、県内の病院、診療所及び助産所に対し、その有する医療機能
情報を県へ報告を義務付けるとともに、その情報を住民や患者に対してわかりやすい形で提
供することで、住民や患者による医療機関等の適切な選択を支援する目的で創設され、平成
19 年度から実施されています。
各医療機関におかれましては毎年度 1 回、県へ定期報告を行うこととなっておりますので、
下記の通り、ご報告をお願いいたします。
実施内容
平成 24 年 10 月 1 日現在の状況を報告してください。診療実績等については、前年度の
状況を報告してください。期限は平成 24 年 11 月 30 日まで。
やまぐち医療情報ネット
http://www.qq.pref.yamaguchi.lg.jp
問い合わせ先
山口県健康福祉部地域医療推進室
担当:道川
TEL083-933-2924
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山口県医師会報
第 1826 号
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山口県医師会報
第 1826 号
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山口県医師会報
生涯教育コーナー
日医生涯教育協力講座 セミナー「心房細動と脳梗塞」のご案内
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第 1826 号
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山口県医師会報
第 1826 号
今回の日医セミナーは会場が異なりますのでご注意ください。
○日本医師会生涯教育制度申告について
・県医師会、郡市医師会主催の研修会等は郡市医師会にて単位とカリキュラムコードが管理されてお
りますので、その具体的な記叙は不要ですが、申告書提出自体は必要です。
・日本医師会雑誌や e- ラーニングを利用したものについての単位、カリキュラムコードは、申告書
提出後日本医師会でその分の追加がなされます。
・日本医師会や他県医師会主催の研修会、その他の研修会等につきましては、具体的記叙をしての申
告が必要です。
・日本医学会加盟学会については自己申告により単位数の 2 倍までカリキュラムコードが取得できま
す。申告に際しては各自コードを決定して申告してください。
・医師国試問題作成、臨床実習・臨床研修制度における指導、論文等執筆は上記申告書を用いて申告
してください。
○単位・カリキュラムコードの付与の対象
講習会・講演会・ワークショップ・学会・体験学習(臨床カンファレンス等)等
1 時間 1 単位、1 日の上限は 5 単位までとなります。カリキュラムコードは単位数の 2 倍まで付
与されます。単位、カリキュラムコードの年間の上限はありません。ただし、日本医学会総会及び日
本医学会分科会主催の場合、カリキュラムコードは単位数の 2 倍を上限に自己申告となります。
日本医師会雑誌を利用した回答・日本医師会 e −ラーニング
①日本医師会雑誌に毎号特集されているテーマに関する問題が掲載され、それをインターネットかは
がきにより解答し、1 カリキュラムコードにつき 60% 以上の正答率を得たものに 0.5 単位が付与さ
れます。日本医師会雑誌 1 号につき 1 単位、2 カリキュラムコードが取得可能で、年間の上限はあ
りません。
②日本医師会生涯教育 on-line
(http://www.med.or.jp/cme/)に掲載されている 1 コンテンツ(約 30 分)
につき 0.5 単位、1 カリキュラムコード。アセスメントにおいて 60% 以上の正答率を満たすと単位、
カリキュラムコードが取得でき、年間の上限はありません。このアセスメントは再解答可能です。
○その他
①医師国家試験の問題を作成すると、1 題 1 単位、カリキュラムコードは「84( その他 )」のみ取得
できます。年間の上限は 5 単位まで。
②臨床実習・臨床研修制度における指導においては、研修者 1 人を 1 日指導すると 1 単位、カリキ
ュラムコードは「2( 継続的な学習と臨床能力の保持 )」のみ取得できます。年間の上限は 5 単位まで。
③医学学術論文・医学著書の執筆は 1 回(又は 1 件)あたり 1 単位、年間の上限は 5 単位、10 カリ
キュラムコードまで。カリキュラムコードは自己申告です。
日本医師会生涯教育制度に関する詳しい内容は、日本医師会生涯教育 on-line に掲載されております。
http://www.med.or.jp/cme/about/index.html
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山口県医師会報
平成 24 年 10 月
第 1826 号
次の会員がご逝去なさいました。つつしんで哀悼の意を表します。
為 國
博 光 氏
宇 部 市 医 師 会
9
日
享
年 88
大 谷
新 一 氏
徳
9 月 16 日
享
年 86
山
医
師
会
月
4
山口県ドクターバンク
最新情報は当会 HP にて
問い合わせ先 : 山口県医師会医師等無料職業紹介所
〒 753-0814 山口市吉敷下東 3-1-1
山口県医師会内ドクターバンク事務局
TEL:083-922-2510 FAX:083-922-2527
E-mail:[email protected]
求人情報 3 件
求職情報 1 件
編集後記
県医師会理事に就任して早いもので半年が経過しました。広報も担当する理事の一人になって
いますが、兼務が多いため、同時刻にある他の委員会出席のため欠席が多く、申し訳なく思って
おります。さて、私の担当する分野の一つに医療情報システムがあります。山口県では平成 23 年
度より地域医療再生臨時特例交付金を活用した地域医療連携情報システムの構築が長門、萩で開
始され、今期計画では新たに下関、宇部・小野田・美祢地区、岩国の 3 地域も加わり合計 5 地域
となりました。先日、県庁で全体会議がありましたが、各地域が独自のプランを作成し、現時点
ではこれらを繋げようといった計画はありません。今後、これら地域の成果を検証し、どういっ
たシステムが将来的に実用的であるかの目処をつけ、山口県の方針を決定することが必要となる
でしょう。また、県医師会ではペーパーレス化の先陣を切って、来年度から理事会資料は一部を
除いてペーパーレスになる予定です。各地域の医師会でホームページを作成され、会員への情報
もネットで発信しているところが多くなり、将来的にはこの県医師会報も希望者にはネット配信
ということになるのかもしれません。本を並べておく方が良いという方もおられるでしょうが、
場所をとるので読んだら捨てるという方もおられるでしょう。デジタル化しておけば捨てる必要
はなく、いつでもどこでも読めるといった点ではメリットもあるのではないでしょうか。いろい
ろな雑誌もネットでの配信が増えており、検索機能をつけておけばあとで探すことも可能です。
時代の流れに従って、
広報も変わっていくのかもしれません。
( 理事:藤本俊文 )
F rom E ditor
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山口県医師会報
第 1826 号
945
発行:山口県医師会
(毎月 15 日発行)
〒 753-0814 山口市吉敷下東三丁目 1 番 1 号
総合保健会館5階
TEL:083-922-2510
FAX:083-922-2527
印刷 : 大村印刷株式会社
1,000 円(会員は会費に含む)
■ ホームページ
■ E-mail
http://www.yamaguchi.med.or.jp
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