局所とシステムの競合:運動時筋血流調節の特殊性 (増木静江、能勢 博)

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局所とシステムの競合:運動時筋血流調節の特殊性
信州大学大学院医学研究科 スポーツ医科学分野
増木
要
静江,能勢
博
旨
運動時の筋血流は,安静時の最大 20 〜 30 倍に上昇する.この筋血流の増加は,
心拍出量の増加と,筋血管の拡張によって達成される.しかし,全身運動をした
際の筋血流量の最大値は,理論値を下まわる.なぜなら,血圧維持のため,筋血
管の拡張は圧反射性に常に抑制されているからである.一方,筋血管拡張は,収
縮筋,血管内皮から分泌される代謝物質など,局所性血管拡張物質が交感神経性
血管収縮を減弱させることに起因する.このメカニズムによって運動時の活動筋
への血流の再分布が起きるとされてきた.ところが,最近,我々は安静時であっ
てもα-アドレナリン性血管収縮反応の感受性は一定ではなく,末梢性に常に変化
していることを示唆する結果を得た.また遺伝的にα-アドレナリン性血管収縮が
半減,または,ほぼ消滅しているマウスについても研究を進め,これらのマウス
ではα-アドレナリン性血管収縮の抑制の程度に比例して圧反射ゲインが上昇し,
一定の血圧変化に対する心拍数の応答が著しく増加していた.これらの結果は,
「まず,何らかの原因でα-アドレナリン性血管収縮反応に変化が起きると,それを
補償するために圧反射ゲインが変化する」という新しいフィードバック機構の存
在を強く示唆する.
キーワード:筋血流,交感神経活動,動脈圧反射
I.はじめに
わが国は人類が未だ経験したことのない超高齢
化に直面し,次の 10 年で全国平均の高齢化率は
の筋血流調節について説明し,後半では著者らが
直接関わっている遺伝的要因が筋血流調節をいか
に変化させるかについて述べたい.
30 %を突破する.その際,現在の医療体制では,
ほとんどの地方都市の経営は破綻し,高齢者医療
II.運動と筋血流上昇
費は国家経営を脅かすことが危惧されている.し
筋肉が収縮する際,筋肉は著しい増加速度でエ
たがって,筋力を含めた体力の向上は寝たきりを
ネルギーを消費する.例えば,歩行,ランニング,
予防し長寿健康社会を構築するために不可欠であ
自転車,水泳,肉体労働といったような日常運動
る.この社会的背景をもとに,近年,運動時の筋
時には,筋収縮が持続的,かつ周期的に起こる.
血流調節に関する研究が目覚しい発展を遂げてき
この際,筋肉に十分な酸素と他の栄養分を供給し,
た.さらに,ポストゲノム時代を迎え遺伝的属性
二酸化炭素を除去するために,活動筋血流は上昇
に基づく運動処方の体系化が脚光を浴びつつあ
しなくてはならない.したがって,運動時の筋収
る.そこで,本講座では前半に,一般的な運動時
縮は顕著な筋血流の上昇を伴い,その量は,驚く
LECTURES ● 119
図 2.活動筋へ血流を供給できる心臓の最大能力の限
界例.広範囲の筋を動員し高強度運動をしている時
に(leg exercise),さらに別の筋群が動員されると
(leg + arm exercise)活動筋当たりの血流量が低下
する.これは,腕と足の複合運動の血流需要が最大
心拍出量を超えるので,心臓は需要に見合う血流量
を供給することができないためである.一方,血圧
は活動筋の血管収縮によって維持される.(文献[1]
より)
すなわち,僧帽弁狭窄患者ではその割合が 60 ―
70 %であるのに対して,持久性アスリートでは
90 %にも達する[1]
.
図 1.最大心拍出量が低い僧帽弁狭窄患者(MS),通
常の非運動鍛練者(NA),極めて高い運動鍛練者
(ATH)の 3 群における,安静時と運動時の心拍出量
とその血流量の分布.すべての群で運動時に筋血流
量が著しく上昇するが,その上昇度は最大心拍出量
の程度に依存する.一方,運動時の筋肉以外の血流
量は心臓を除き,3 群でほぼ等しい.
(文献[1]より)
ところで,大腿四頭筋の筋血流は最大運動時に
1kg 当たり 2.5l/min にまで上昇することが報告さ
れている.また,骨格筋の全身臓器に占める割合
は非常に高く,体全体で骨格筋での血管拡張がお
これば,心拍出量の増加によってそれに見合う血
流量を補償できず,体血圧は低下する.図 2 は,
高強度の脚運動をしている被験者にさらに腕運動
をさせた際の血流量変化を示す.腕運動を加える
べきことに,最大,安静時の 20 〜 30 倍に達する.
と,脚の血管拡張が抑制されることに注目して欲
これは心拍出量の増加と,筋血管の拡張によって
しい.これは,脚と腕の複合運動の血流需要に見
達成される.図 1 は最大心拍出量が低い僧帽弁狭
合うだけ心拍出量が増加できないため,活動筋血
窄患者,通常の非運動鍛練者,極めて高い運動鍛
流量は抑制されることを意味する[1]
.また,ク
練者の 3 群における,安静時と運動時の心拍出量
ロスカントリースキー選手においても,全身でス
とその血流量の分布を示す.この図からわかるよ
キーをした際の腕または脚への筋血流量は,それ
うに筋肉以外へ分配される血流量は 3 群でほぼ同
ぞれ別々に運動した時より 20 ― 40 %低いことが
じであるのに対して,心拍出量で筋血流の占める
報告されている[2].このように,運動時の筋血
割合は最大心拍出量の程度に比例して増加する.
流量は著しく増加するが,血圧維持のため,その
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増加には常にブレーキがかけられていることがわ
拡張が亢進する一方,図 4 に示すように,自発運
かる.では,それはどのようにして行われるのだ
動を開始した直後,筋電図(EMG)のバースト
ろうか?
に動機して血圧が 20 ― 40mmHg 低下する.これ
によって運動の継続が破綻し,マウスは短時間の
III.圧反射系は活動筋の過度の血管拡張を抑制す
運動を数多くするようになる[4].このように,
る
血圧反射は運動時の過度の血管拡張を抑制し血圧
運動時の過度の血管拡張をフィードバック的に
を維持し,運動を継続させるために不可欠である.
抑制し,血圧を維持するために最も重要な役割を
担っているものとして血圧反射がある.図 3 に示
すように,血圧は刻一刻,変化しており,これは
圧受容器で常にモニターされ,その情報は延髄の
循環中枢に伝えられる.そして,循環中枢では,
この情報に基づいて,交感神経,副交感神経を介
して心臓に働き,また交感神経を介して,末梢血
管に働き(特に運動時には筋血管の過度の拡張を
抑制し),血圧を維持している[3].事実,マウ
スにおいて,圧受容器を外科的に除神経して圧受
容器からの求心路を切断したり,交感神経遮断薬
を投与して遠心路を遮断すると,運動時の筋血管
図 3.圧反射性血圧調節系.NE,ノルエピネフリ
ン; Ach,アセチルコリン; SA,洞房結節; AV,
房室結節.血圧の変化は頸動脈洞および大動脈弓の
圧受容器で常にモニターされ,その情報は延髄の循
環中枢に伝えられる.そして,循環中枢では,この
情報に基づいて,交感神経,副交感神経を介して心
臓に働き,また交感神経を介して,末梢血管に働き,
血圧を維持している.(文献[3]より)
図 4.自由行動下 60 分間の対照マウス(A)と圧受容
器除神経マウス(B)における,平均動脈圧(MAP)
と筋電図(EMG)の典型例.それぞれの図の右肩に,
下部の図にある矢印部分の動脈圧(AP)と筋電図の
拡大図を示す.除神経マウスでは,自発運動を開始
した直後,筋電図のバーストに動機して血圧が 20 ―
40mmHg 低下する.これによって運動の継続が破綻
し,マウスは短時間の運動を数多くしていることに
注目.(文献[4]より)
LECTURES ● 121
IV.筋血流が上昇する要因
運動時には筋血流量の増加が著しいことは,こ
れまで述べてきたが,どのような要因で筋血管拡
張が起こるのかは,実のところよくわかっていな
い.100 年以上にわたり,この現象を説明するた
めに,様々な要因,物質,メカニズムが挙げられ
てきたが,その中でも活動筋血流増加に寄与する
ものとして局所性血管拡張物質がある.今まで述
べてきたように,交感神経による血管収縮作用は,
運動時の血圧維持のために重要であるが,この収
縮作用は,活動筋において一部抑制される.これ
は,収縮筋,血管内皮から分泌される局所性血管
拡張物質が交感神経終末からノルアドレナリンの
分泌を抑制することや,α-アドレナリン受容体の
感受性を減弱させることに起因するとされる.こ
の現象は
functional sympatholysis
として知
られている[5].この交感神経性血管収縮の減弱
は,酸素需要と供給の不釣合いを相殺し,血流分
布と酸素輸送を最適化すると考えられている[6,
7].このように,運動時の筋血流は骨格筋の局所
性血管拡張と圧反射性血管収縮のバランスの上に
成立し,これらのメカニズムによって運動時の活
動筋への血流の再分布が起きるとされている.
図 5.正常マウス(WT)と calponin 遺伝子欠損マウ
ス(calponin −/− )における,安静時の平均動脈圧
(MAP)と心拍数(HR)の典型例.両群において,
血圧の上昇は心拍数を低下させ,また血圧の低下は
心拍数を上昇させ,その心拍応答には 0.6 秒の遅れが
ある.calponin 遺伝子欠損マウスでは正常マウスと
比較して,血圧変動に対する心拍応答の振幅が大き
いことに注目.(文献[13]より)
V.遺伝的にα-アドレナリン性血管収縮不全のマ
calponin −/−マウスを用いて個体レベルで,血圧
ウスにおける圧反射ゲイン
と心拍数を連続測定し正常マウスと比較した.そ
ところが,最近,我々は「安静時」であっても
の結果,calponin −/−マウスでは,α-アドレナリ
交感神経性血管収縮の感受性は一定ではなく,
ン性血管収縮が正常マウスの半分に減弱してい
α-アドレナリン性血管収縮反応を介して末梢性
た.さらに,「安静時」には血圧の変化に対する
に常に変化しており,それを補償するために圧反
心拍応答が亢進し(図 5),血圧反射ゲインは,
射性血圧調節の感度も絶えず変化していることを
正常マウスの 2 倍に上昇していた[13](図 6).
示唆する結果を得た.そこで,まずこのメカニズ
以上の結果は,calponin −/−マウスでは,末梢血
ムについて遺伝的にα-アドレナリン性血管収縮不
管のα-アドレナリン性収縮反応が減弱するが,代
全のマウスを例にあげ,それから正常マウス,ヒ
償性に圧反射ゲインが亢進し,血圧は正常範囲に
トへの展開について述べたい.
維持されることを示唆する.
α-アドレナリン性血管収縮不全マウスとして,
calponin 遺伝子欠損マウス(calponin
−/−
マウス)
α- ア ド レ ナ リ ン 性 血 管 収 縮 が 減 弱 し て い る
calponin −/−マウスの血圧は「安静時」には,血
が挙げられる.calponin はアクチン結合タンパク
圧反射ゲインの上昇によって補償されていた.し
で,血管平滑筋のα-アドレナリン性収縮調節に関
かし,「運動時」には動脈圧が大きく変動し(図
与する細胞内情報伝達物質であることが in vitro
7),この血圧変動の亢進が運動能力を低下させる
レ ベ ル で 報 告 さ れ て い た [ 8 ― 1 2 ]. そ こ で ,
ことを示唆する結果を得た.また運動時には,
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図 6.正常マウス(WT)と calponin 遺伝子欠損マウス(calponin −/−)における,安静時の
平均動脈圧の変化(Δ MAP)に対する心拍数の変化(Δ HR)の関係.Δ HR/Δ MAP が
calponin 遺伝子欠損マウスでは亢進していることに注目.
(文献[13]より)
図 7.トレッドミルスピード 10m/min で走行中の正常マウス(WT)
と calponin 遺伝子欠損マウス(calponin −/−)における,動脈圧(AP)
と心拍数(HR)30 秒間の原波形.calponin 遺伝子欠損マウスでは動
脈圧が大きく変動していることに注目.
(文献[14]より)
calponin −/−マウスの血圧反射のゲインは安静時
calponin −/−マウスでは,α-アドレナリン性筋血
の半分に低下し,さらに筋血管コンダクタンスの
管収縮が減弱し筋血管の増加速度が亢進するこ
上昇速度が正常マウスの 2 倍に亢進していた.
と,そして血圧反射ゲインの低下により,運動時
α-アドレナリン遮断薬を投与すると,正常マウ
に著しい血圧動揺を引き起こすことが示唆された
スでは,この上昇速度が calponin
−/−
マウスのレ
[14].以上の結果は,もし圧反射ゲインが末梢
−/−
α-アドレナリン性血管収縮不全を補償するため
ベルまで,短縮されるのに対して,calponin
マウスでは,変化がなかった.このように,
に十分に上昇できないと,血圧調節が破綻するこ
LECTURES ● 123
とを強く示唆する.
唆する.
B.Cry 遺伝子欠損マウス(Cry1 −/− Cry2 −/−マウ
VI.α-アドレナリン性血管収縮の日内リズムと圧
反射ゲイン
A.Calponin
ス)
Cry はサーカディアンリズムに不可欠な遺伝子
−/−
マウス
で あ る こ と が 広 く 知 ら れ て お り [ 16, 17],
これまでの話で,calponin −/−マウスのように,
Cry1 −/− Cry2 −/−マウスでは,活動量のサーカデ
運動時に血圧反射が末梢血管収縮不全を補償でき
ィアンリズムが消滅している.このマウスと正常
ない場合(図 7),また圧受容器の除神経マウス
マウスの血圧と圧反射ゲインを 24 時間連続測定
のように,筋血管の過度の拡張を抑制できない場
したところ,正常マウスでは,昼間に比べ夜間に
合(図 4),運動の継続は不可能になることを述
血圧が高く,圧反射ゲインも夜間に上昇していた.
べた.そこで,マウスが最も活動する,夜間活動
一方 Cry1 −/− Cry2 −/−マウスでは,これらの血圧
期に注目したところ,正常マウスでは,血圧と心
のサーカディアンリズムが消滅し,圧反射ゲイン
拍数が昼間と比較して夜間活動期に高値であるの
が著しく亢進していた(図 8).さらに,正常マ
に対して,これらの昼夜差は calponin −/−マウス
ウスではα-アドレナリン性血管収縮反応が昼間に
マウスで
高 く , 夜 に は 低 下 し た の に 対 し て , C r y 1 −/−
は夜間活動期の血圧調節が破綻し,活動量が抑制
Cry2 −/−マウスでは,α-アドレナリン性収縮反応
されていた[15].これらの結果は,末梢血管に
が昼夜を通してほぼ消滅していた[18].このよ
おいてα-アドレナリン性収縮反応が正常に機能す
うに,時計遺伝子によって作り出されるサーカデ
ることは,夜間の血圧維持に必須であることを示
ィアン信号は,まず,末梢性にα-アドレナリンに
で消滅していた.さらに,calponin
−/−
図 8.正常マウス(WT)と Cry 遺伝子欠損マウス(Cry1 −/− Cry2 −/−マウス)における,24 時間の
活動量(Activity),平均動脈圧(MAP),心拍数(HR),Δ MAP とΔ HR 間の相関関数 R(t),
その回帰係数(Δ HR/Δ MAP)の典型例.赤色部分は,有意な正の相関,青色部分は有意な負の
相関を示す.有意な相関のみ,Δ HR/Δ MAP の算出に用いた.(文献[18]より)
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対する血管収縮の感受性を調節し,それに続いて
著しい個体差があることを示唆する結果を得た.
中枢性に圧反射ゲインを変化させることで血圧の
そこで,α-アドレナリン性血管収縮反応との関係
サーカディアンリズムを形成していることが示唆
について調べたところ,α-アドレナリン性血管収
された.さらに,我々はα-アドレナリン性血管収
縮反応は若年被験者で著しく異なり,その個体差
縮反応の消滅は,圧反射ゲインを著しく亢進させ
は圧反射ゲインの個体差と有意な負の相関を示し
ることを Cry1 −/− Cry2 −/−マウスでも確認した.
た(図 10).すなわち,phenylephrine(α-アド
これまでの結果をまとめて,α-アドレナリン性
レナリン作動薬)に対する血管収縮反応が大きい
血管収縮反応と血圧反射ゲインの関係を理解する
被験者は,圧反射ゲインが小さく,また血管収縮
ために,正常マウス,Cry1 −/− Cry2 −/−マウス,
反応が小さい被験者は圧反射ゲインが亢進してい
−/−
マウスの昼と夜について,データを
た.一方,血圧の変動はすべての被験者で一定レ
プロットした.その結果やはり,これらのマウス
ベルに維持されていた.この所見はマウスで得ら
において圧反射ゲインの亢進は,α-アドレナリン
れた結果と一致し,ヒトにおいてもα-アドレナリ
性血管収縮反応の減弱と強く相関していた(図
ン性血管収縮反応の低下が代償性に圧反射ゲイン
9).このように,圧反射ゲインの亢進は,末梢血
を上昇させることが示唆された[19]
.
calponin
管のα-アドレナリン性収縮反応の減弱に対する補
償適応であり,その結果,血圧が維持されること
が示唆された[18].
VIII.将来への展望
我々は,マウス,ヒトにおいて,α-アドレナリ
ン性血管収縮反応の感受性は一定ではなく,遺伝
VII.ヒトにおける,α-アドレナリン性血管収縮
的,後天的に変化し,その血管収縮の抑制の程度
と圧反射ゲインの関係
に比例して圧反射ゲインが上昇することを示唆す
我々は,若年被験者において,圧反射ゲインに,
る結果を得た.また,序文でも述べたように,運
図 9.正常マウス(WT),calponin 遺伝子欠損マウス(calponin −/−),
Cry 遺伝子欠損マウス(Cry1 −/− Cry2 −/−)における,phenylephrine
10μg/kg 投与時の昇圧応答と自発性血圧反射ゲイン(Δ HR/Δ
MAP)の関係.両者の間に高い相関関係を認めた(P < 0.01).すな
わち,α-アドレナリン性収縮が減弱すると,血圧反射ゲインが亢進
することを示唆する.このように,圧反射ゲインの亢進はα-アドレ
ナリン性血管収縮反応の減弱に対する補償適応であり,その結果,
血圧が維持される.(文献[18]より)
LECTURES ● 125
図 10.0.031μg/100ml forearm volume/min の phenylephrine を投与した際の前腕血流(FBF),
前腕コンダクタンス(FVC)の個体差と圧反射ゲイン(Δ HR/Δ SAP)の関係.20 人に被験者
(男性 9 名,女性 11 名)についてプロットした.Phenylephrine に対する血管収縮反応は,圧反射
ゲインと有意な負の相関を示した(P < 0.0001)
.(文献[19]より)
動時には,活動筋において,α-アドレナリン性血
管収縮反応が減弱し,その結果,活動筋血流が運
動強度に応じて上昇し,筋収縮で消費される酸素
が過不足なく供給される.ところが,最近,高齢
者では運動時に,活動筋におけるα-アドレナリン
性血管収縮反応の減弱がほとんどおこらないこ
と,そのために筋血管拡張が抑制されることが報
告された[20].すなわち,若年者では,末梢活
動筋が必要とする血流量に応じて,α-アドレナリ
ン性血管収縮反応の感受性が変化するが,それが
できない高齢者では,活動筋に十分な血流量が供
給されずに,運動能力が低下する可能性がある.
さらに,このα-アドレナリン性血管収縮反応の感
受性が変化しないことが,圧反射性血管調節能を
退化させ高血圧症などを引き起こす可能性もあ
る.したがって,中高年において,まず運動トレ
ーニングなどによって骨格筋肥大に伴うα-アドレ
ナリン性血管収縮反応の機能を改善させ,それに
よって圧反射性血圧調節能を改善させる,という
概念は,今後,健康寿命延長のための運動処方を
実施する上で,新しい指針になるかもしれない.
126 ●日生誌 Vol. 68,No. 4 2006
文
献
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