2.お客様の視点に立った空港づくり

第
3章
成田空港の管理・運営
2 お客様の視点に立った空港づくり
❶ CSへの取り組み
「お客様満足」
(CS=Customer Satisfaction)の向
上は、空港経営にとって重要な要素である。お客様の
満足を得られなければ、拠点空港としての評価は低下
し、国際空港間競争にも後れをとることとなる。NAAは、
“CS推進”を経営上の重要な柱と位置づけ、経営ビジョ
ンに「お客様の満足を追求し、期待を超えるサービス
の提供を目指します」と掲げ、全社横断的に「おもてな
しの心を大切にした」
CS推進活動に取り組んでいる。
▲「お客様の声」用紙
(1)NAAの取り組み
1)
CS推進の中核組織「CS推進委員会」
3)お客様満足度調査
て以来、CS推進活動に積極的に取り組んでいる。
から毎年、
「お客様満足度調査」を実施している。ご
の中核的な組織と位置づけ、全役員を委員とし、そこ
前回調査からの満足度の推移、他空港の満足度との
スタートを切っている。当委員会は、
「お客様の視点に
り重点課題を抽出し、CS推進活動に活用している。
ピーディーで質の高いCS推進活動を行っている。
るお客様満足度調査(ASQ調査)に参加している。
2)原点はお客様の声
サービス監査も実施している。
NAAは、2001年に「旅客サービス委員会」を設置し
NAAは、CS推進活動の基礎資料とするため2000年
2003年12月からは、同委員会を社内のCS推進活動
利用のお客様の満足度を定量的にとらえるとともに、
に関係室部長も加えた「CS推進委員会」として新たな
比較、さらに、お客様が重視する要素などの把握によ
立って何ができるか、何をすべきか」を念頭におき、ス
2008年10月からはACI(国際空港評議会)実施によ
また、今 年度は新たにSKYTRAX社による空港内
お客様の満足を追求するためには、
「すべての原点
はお客様の声にある」と認識し、NAAではさまざまな
(2)NAAグループの取り組み
の声は受付媒体ごとに3つのデータベースに直ちに入
NAAグループが一体となって積極的なCS推進活動
方法でお客様の声を収集している。寄せられたお客様
1)空港全体のけん引役として
力され、全役員・社員で共有されている。
を展開するため、2005年4月に「NAAグループCS推進
案内カウンター(計20カ所)やNAA成田国際空港イン
NAAを含むNAAグループ15社2団体で構成し、定期
旅客ターミナルビル内に設置されている「お客様の声
田空港CS協議会の取り組みを浸透・定着させ、全グ
成田空港ホームページに寄せられるご意見となってい
り組むこととしている。
その内容は、お叱りやご指摘など「マイナス評価」
各社と共同の取り組みを実施するとともに、積極的な
データベースの1つ目は、旅客ターミナルビル内のご
連絡会」を設置した。
フォメーションなどに直接寄せられるご意見、2つ目は
的に連絡会を開催している。NAAグループ全体で、成
ボックス」
(計21カ所)に投函されるご意見、3つ目は
ループ社員が空港全体のけん引役としてCS推進に取
る。
また各社のCS推進活動を充実させるため、グループ
がある一方で、
「お褒め」
「お礼」といった
「プラス評価」
情報交換を行っている。
として全社員が共有し、各担当セクションでスピード感
(3)空港全体での取り組み
お客様からのご意見をもとに行った数々のサービス
成田空港のCS推進で重要な役割を果たしているの
もある。寄せられたお客様の声はすべて貴重なデータ
を持って改善策に反映させている。
112
1)成田空港CS協議会
改善については、NAAのホームページの『お客様の声
が、
「成田空港CS協議会」
(事務局: NAA CS推進部)
知らせして い る。
(http://www.naa.jp/jp/action/cs/
客様に接する空港内関連企業が一丸となる必要があ
をかたちに』というページに順次掲載し、お客様にお
である。
「空港全体のCS向上を図るためには、直接お
cs_koe.html)
る」として、2002年5月に発足した。
2. お客様の視点に立った空港づくり
図3-3 成田空港のCS推進ネットワーク
また、
「CS Award 2005 年間グランプリ」より特別
賞を新設するなど、さらなる拡充を図ってきた。選考
CIQ
にあたっては、成田空港を利用するお客様や空港ス
航空会社
警察
店舗・サービス
警備会社
交通機関
公益事業法人
会を実施している。
受賞者および受賞会社の数は、
「CS Award 2015
Summer」まで約480名・80社に上り、空港スタッフの
モチベーションを向上させるうえで大きな効果を見せ
ている。また、賞そのものに対する評価も年々高まり、
受賞したスタッフの社内でも大きな反響があることか
第3章
NAA
清掃会社
タッフからの推薦をもとに、CS協議会委員による選考
ら、他社においても同様の表彰制度を導入する動きが
見られている。
現在、CIQ(税関、入国管理局、検疫所)
、警察、航
空会社、警備会社、店舗・サービス、交通機関、清掃
・CSセミナー
空港内企業などの代表28機関がメンバーとなっている。
協議会主催によるCSセミナーを実施している。
会社、公益事業法人、NAAなど、直接お客様に接する
(図3-3参照)
2)スタッフ全体でCS意識を高め合う取り組み
空港スタッフのサービスレベル向上を目的とし、CS
外部から講師を招き、
「挨拶」
「表情」
「言葉遣い」
「態度」などをテーマにした接客マナーセミナーや、ご
高齢者やお身体の不自由なお客様への適切なお手伝
CS協議会発足以来、特に力を入れているのが空港
いを学ぶ体験型ユニバーサルサービスセミナーや手話
ざまな取り組みを実施している。
このほかにも、外国語や海外文化をテーマとするセ
・CS Award
フ育成に努めている。
スタッフのCS意識向上策である。CS協議会では、さま
「CS Award」は2003年1月 に 導 入し た 表 彰 制 度
セミナーを開催している。
ミナーを開催し、国際空港の舞台にふさわしいスタッ
である。表彰の対 象は、空港内に勤務するスタッフ
・CSフレンズ
う「Seasonal CS Award」と、年に1回表彰を行う「CS
レンズ』を創刊した。それまで、成田空港に寄せられ
および空港内企 業・団体であり、年に4回表彰を行
2004年6月には、空港スタッフ向けの情報誌『CSフ
Award 年間グランプリ」の2種類を設けている。
たお客様の声を空港スタッフに伝える媒体がなく、多
▼「CS Award 2014 年間グランプリ」の授賞式風景
(2015年3月、第1旅客ターミナルビル パノラマビジョン前 にて)
しい」という要望が寄せられていたため、空港スタッフ
くの空港スタッフから「お客様の生の声を聞かせてほ
向け情報媒体として創刊し、以降、定期的に発行して
いる。
CSフレンズは、お客様の声をはじめ、CS協議会の活
動など、さまざまな情報を紹介するものであり、CS協
議会参加企業のほか、約260社に配布されている。
▼空港スタッフ向け情報誌『CSフレンズ』
▼第1・第2・第3旅客ターミナルビル内計6カ所に設置されている
CS Award受賞者紹介パネル
2. お客様の視点に立った空港づくり
113
第
3章
成田空港の管理・運営
・CS魂(スピリット)
空港で働くすべてのスタッ
フが常に同じ気持ちを持って
お客様と接する環境をつくり
上げるため、2012年から「CS
魂(スピリット)
」と冠した年
間を通じたスタッフ間の合言
葉を策定し、スタッフエリアの
各所や協力企業の事務所内
にポスターを掲示して、スタッ
フ一人ひとりのCS意識向上
▲スタッフ向けCS意識向上ポスター
に取り組んでいる。
❷ 楽しい成田空港をつくるオアシスプロジェクト
ソフト面における成田空港の魅力をより高め、
「楽し
い成田空港をつくろう!」というテーマのもと、NAAは
「成田空港オアシスプロジェクト」を2008年7月に立ち
上げた。
▲成恋神社が設置された
出発ロビー
に投函していただくイベン
トを開催した。海外からの
お客 様にもお楽しみいた
だいた。
▲多くの願い事が記された
『成恋(なりこい)カード』
プロジェクトのネーミングは、砂漠を行く旅人が水
・Tanabata Day
楽しさと夢を求める多くの人々が集まるような空港、そ
ビーに笹飾りを設置して、お客様に短冊を書いていた
と木陰を求めてオアシスに集まるように、海外旅行の
れをつくり上げていくためのアイデアがオアシスの泉の
ごとくわき出るようにとの趣旨から付けられており、旅
行をされるお客様はもちろんのこと、空港周辺の地域
の方々など旅行目的以外の方にも積極的に来ていただ
けるような楽しい空間にすること、さらには空港スタッ
フが誇りを持てる空港にすることが狙いである。
・初日の出フライト
ご旅行のお客様以外の方々にも空港発のイベントを
お楽しみいただこうと企画したイベントである。2009
年以降7年連読で元旦に実施し、募集定員を大幅に上
回る応募をいただき大変好評な企画となっている。
▼初日の出フライトにて
七夕の季節に第1・第2旅客ターミナルビルの出発ロ
だき、その場で笹に取り付けていただくイベントを実
施した。七夕当
日には浴衣姿の
空 港スタッフが、
出発ロビーにて
お客様へ空港オ
リジナル団扇を
配 布し、大 変 好
評をいただいた。
▲短冊を笹に取り付ける様子
・ターミナルコンサート
空港でのひとときを、楽しく過ごしていただくことを
目的とし、出発ロビーで世界で活躍するアーティストに
よるピアノを中心とした演奏会を開催し、お客様に憩
▼Oasis Music Weekイベントの様子
・バレンタインデー企画
出発ロビーに祈願成就を祈念した“成恋神社”を設置
し、ハート型のカードに願い事を記して賽銭箱風BOX
114
2. お客様の視点に立った空港づくり
いの時間を提供している。
ケットの拡大を図るため、2000年から最新のITを導
も開催している。
構想」として、インターネット環境の整備を行う「エア
また、日本の伝統楽器である琴の演奏会や体験会
入し政府やその他企業と一体となって、
「e-エアポート
ポートネット」、リアルタイムのフライト情報と空港への
・WAKAGI
若手の育成を目的にNAA入社2年目の社員で構成さ
れたプロジェクト“WAKAGI”による夏イベントを実施し
た。イベントの企画から運営までWAKAGIメンバーが
アクセス情報を連携させた乗換案内サービス「e-イン
フォメーション」、主に訪日外国人旅行者向けにモバイ
ル端末を活用した総合的な旅行支援を行う「e-ナビ」
、
世界的な取り組みであるSPT(Simplifying Passenger
携わり、第1旅客ターミナルビル屋外展望デッキでは盆
Travel)の考え方をベースにセキュリティを確保した上
階南ウイングでは巨大なスクリーンを使用し、オリジナ
RFID(無線識別方式)のタグを利用した航空手荷物
ル飛行機をスクリーンに映し出す体験型のイベントを
行った。ご旅行のお客様以外の方々にもお越しいただ
き、好評であった。
での空港手続きの簡素化を実現する「e-チェックイン」
、
第3章
踊り体験や和太鼓のパフォーマンスを、また、館内4
管理システムの検証を行った「e-タグ」、空港内店舗に
おいて「電子マネー」の整備に取り組んできた。
これら「e-エアポート」は、
『国主導』による『実験
的要素が強い』ものだったが、これまでの「e-エアポー
ト」で実施した各種実証実験の成果を継承し、お客様
の利便性向上に重点を置いたうえでさらなる空港サー
ビス全体の向上を目指していく新たなフェーズとして、
『NAAがイニシアチブ』をとり『実用化させていく』も
のである「i-Airport」構想を2010年に立ち上げた。こ
の「i-Airportプロジェクト」を通して、日本の空の表玄
関として、
「わかりやすい」
「速い」
「優しい」のコンセ
プトのもと、最先端ICTを活用した「いつでも、どこで
も、誰でもネットワークにつながる」ユビキタスなサイ
バー空間を利用し、お客様や航空会社の利便性向上、
▲WAKAGIの盆踊りイベント
空港手続き全体の最適化など、常に世界をリードして
いく空港づくりを実現させていく。
(図3-4参照)
❸ 「i-Airport」の推進
(1)
「i-Airport」とは
(2)i-Airportの主なサービス
的な向上、空港の運用効率の最大化および旅行マー
「NRT_Airport Navi」はiPhoneとAndroidの両端
NAAは、お客様の利便性・セキュリティ確保の飛躍
1)館内ナビゲーションアプリ「NRT_Airport Navi」
図3-4 i-Airport 概念図
■総合情報検索デジタル
サイネージ(電子看板)
■デジタルコンシェルジュ
の導入検討
◦人 工知能などによる音
声デジタルコンシェル
ジュの研究
わかりやすい
■スマートフォンなどへのサービス強化
■多言語対応の促進
◦文字認識翻訳技術の導入検討
◦対象言語拡充検討
■館内位置情報提供サービスの高精度化
■待ち時間表示の検討
i-Airport
優しい
速い
2. お客様の視点に立った空港づくり
115
第
3章
成田空港の管理・運営
舗などの館内目的地までのナビゲーションも実装して
いる。
AR(Augmented Reality=拡張現実。スマートフォ
ンなどの端末のカメラを通して見える現実の環境に電
子的な情報を付加して見せる技術)機能も有しており、
お客様は、カメラ越しのルートガイドにより、スムーズ
に目的地に到達できる。位置測位には、Wi-Fiのアクセ
スポイントからの電波によって位置を特定する技術を
利用し、GPSの届かない館内でも精度の高い位置情報
を提供している。
館内ナビゲーションシステムの導入に先立ち、AR技
術を使用したコンテンツの提供を2011年4月に、第2旅
「NRT_Airport Navi」トップ画面▲
とアイコン▼
▲マイフライト登録画面
末に対応した、国内空港で初
めての公式アプリケーション
で、2012年7月にリリースした。
このアプリケーションは、
フライト情 報の検 索、空港
内のマップや各種施設表示、
空港内の店舗情報など、お
客様の知りたい情報を提供
するとともに、お客様が搭乗予定のフライトを登録す
ることで、搭乗当日のゲートや時間の変更などを自動
で通知する機能を備えている。また、搭乗ゲートや店
マイフライト登録
フライト検 索
からご自身 が
搭 乗 さ れるフ
ライトを 選 択
すると、フライ
トまでをカウン
トダウン する 。
また、当日、出
発 時 刻・ゲ ー
トの 変 更時は
客ターミナルビルのナリタ5番街において「ARスタンプ
ラリー」として実施した。ARアプリをお客様がダウン
ロードし、ナリタ5番街の複数の店舗に設置されたAR
マーカー(ARアプリで読み込むためのコード)を読み
込み、画面上でスタンプを集めると、最後にプレゼン
トが受け取れるというもの。出発までの待ち時間を楽
しく過ごすためのツールとなり、また複数の店舗を回っ
てスタンプを集めることから、店舗にとってもお客様
の周回につながり、売り上げ向上の機会が増えると好
評だった。
今後は屋内位置情報の精度を高め、位置情報とAR
機能の連携や、ARでの店舗紹介などの機能追加を検
討している。
館内マップの表示
ターミナル 館
内 の マップ 表
示 や 、ご 案 内
カウンター、化
粧 室 などの 各
種 施 設の 位置
をご 確 認 いた
だくこと が 可
館内施設の表示
ターミナル 内
のレストラン、
ショップ、ATM、
授 乳 室 、A E D
など各 種 施 設
情 報の閲覧が
可能。
能。
案 内が自動 的
に届く。
現在地情報提供およびナビゲーション
Wi-Fiにより屋内で
ナビゲ ー ショ
位置 情 報を提 供 す
ン に よる切り
の お おまかな 現 在
る。現在地から館内
目的 地まで 地 図 上
でナビゲーションす
るとともに、最寄り
のインフォメーショ
ン など各 種 施 設 の
表示も可能。
116
◀▲「NRT_Airport Navi」の主な機能
AR機能
2. お客様の視点に立った空港づくり
ン 中 は 、ボタ
替えにより、カ
メラ越しにAR
(拡張現 実)
で 進む方向を
示す。
◀「NariTra」の画面ガイドとアイコン▼
日本を訪れる外国人にとって、日本で快適に旅行を
楽しむうえでネックとなる問題の1つに言葉の壁がある。
訪日外国人旅行者への良質な案内サービスの促進の
定の効果をもたらすことが確認され、2011年12月の
「NariTra」のリリースへとつながった。
※産学官連携功労者表彰:大学、企業などにおける産学官連携活動において大
きな成果を収めた成功事例を表彰し、産学官連携活動のさらなる推進に寄与
することを目的に制定されている。
ため、成田空港では2011年12月に、iPhone、Android
3)音声エージェントアプリ「成田コンシェル NariCo」
トラ)
」を英語・中国語・韓国語・日本語の4ヵ国語対
田コンシェル NariCo powered by しゃべってコンシェ
向け多言語音声翻訳アプリケーション「NariTra(ナリ
応でリリースした。
利用者は、まず翻訳したい言語を選択し、翻訳した
い文章を音声またはテキストで入力する。アプリケー
ションが認識した内容およびその翻訳結果は、音声お
よび画面上に表示される。
また、このアプリケーションの利便性が高い機能と
して「逆翻訳機能」があり、これにより翻訳結果が正
しいかどうかを確認できるようになっている。アプリ
ケーションのリリース後は、音声認識の精度、翻訳精
度の高さからユーザーに非常に好評を得ており、2013
年8月には、第11回産学官連携功労者表彰※における
総務大臣賞を受賞した。2014年3月から従来の言語に
インドネシア語・タイ語・フランス語・スペイン語を
追加し、合計8言語の対応に拡充した。今後も対象言
語の拡充や翻訳精度のベースとなる辞書機能の増強
など、さらなる機能アップを進めていく。
このアプリケーション公開にあたっては、2010年10
月から、店舗やご案内カウンターに多言語音声翻訳シ
ステムを導入する実証実験を実施した。実証実験では、
成田空港で旅行者がよく使用すると想定される単語
(ターミナル内の店舗名、航空会社名、日本の主要観
光地など)をアプリケーションにあらかじめ登録し、本
アプリケーションをインストールしたスマートフォンを
第3章
2)多言語の音声翻訳システムアプリ「NariTra」
世界の空港で初となる音声エージェントアプリ「成
ル」
を2013年11月にリリースした。
「NariCo」
は音声エー
ジェントサービスにおいて高い品質を誇る㈱NTTドコ
モと共同で開発した、成田空港に特化したコンシェル
ジュアプリで、案内カウンタースタッフをモデルにした
オリジナルキャラクター「NariCo(ナリコ)
」に話しかけ
ると、フライト情報やショップ・レストラン情報、駐車
場情報、保安情報など、成田空港で必要な情報を音声
にて回答する。また、空港情報のみならず渡航先の現
地時間や天気、通貨の両替レート、観光情報などの検
索も可能で、お客様へ幅広いご案内を行う。2015年4
月からは、iOS版への対応および英語にも対応し、より
多くのお客様にご利用いただけるようになった。
また、第2旅客ターミナルビルでNariCoの機能など
を、双方向コミュニケーション型のデジタルサイネージ
で提供する実証実験を2014年7月から実施した。使い
方は簡単で、設置されたデジタルサイネージの大きな
画面にタッチして話しかけることで空港内の案内をす
る。スマートフォンやアプリを持ってい
ないお客様にも、NariCoの便利さを
体験しi-Airportの世界を実 感してい
ただいた。今後は、実証実験の検証
「成田コンシェル NariCo」の画面 ▼ とアイコン▶
配布。実験中に集められた会話のログは検証し、精度
の改善を行い、アプリのバージョンアップによりフィー
ドバックを実施した。
また、実際に使用したスタッフに対してアンケート
調査を行い、翻訳精度や翻訳にかかるスピード、使い
やすさなどについて意見の収集、整理を行った。この
実証実験によって、本システムが言葉の壁の解消に一
2. お客様の視点に立った空港づくり
117
第
3章
成田空港の管理・運営
結果をもとに音声を活用した総合情報提供サービス
の検討を進める。
4)訪日外国人旅客向けおもてなしアプリ
「旅守り:TABIMORI-Travel Amulet-」
急増する訪日外国人向けのおもてなしアプリ「旅守
り:TABIMORI-Travel Amulet-」を2014年7月にリリー
スした。訪日外国人旅客のニーズに合わせた、交通・
乗り換え案内、日本独特のルールやマナーなど生活・
文化情報、日本の代表的な料理の紹介、観光情報、気
象情報、さまざまなシチュエーションに対応したフレー
ズブック、通貨換算機能、万が一の災害時お役立ち情
報など多彩なコンテンツを揃えている。これは、成田
空港が制作した既存のポータルサイト「TABIMORI」
5)タブレット端末によるお客様への案内
2012年6月から、旅客ターミナルビル内の巡回案内
スタッフが、タブレット端末を用いたお客様案内を開
始した。案内スタッフがiPadを持って巡回し、サービス
を提供している。
通常のインフォメーションデスクで使用している案
内システムをタブレット端末からでも活用できるように
したことで、その場で、最新のフライト情報や遺失物の
情報などをお客様に迅速に伝えることが可能になって
いる。また、空港内の店舗、サービス施設などについ
て、お問い合わせを受けたその場で写真や地図を用い
て分かりやすくご案内が可能となっていることから、さ
らなるCS向上に役立っている。
▼巡回案内スタッフがiPadでお客様に直接情報を提供
の内容を大幅に拡充させ、かつオフラインでも使用可
能なアプリとして開発したものである。
訪日外国人のお客様は日本滞在中、自身のスマート
フォンを持ち込んで使用するケースがほとんどである
が、日本は無料Wi-Fiの環境整備が十分に整っていな
いエリアもあり、観光地などでいつでもほしい情報を
取得することができない。そこで、
「TABIMORI」は多
くの便利な機能をオフラインで利用可能とし、気象情
報など最新の情報を更新する必要のあるコンテンツに
ついてはクリップ機能を利用し、アプリからオンライン
6)テレビ電話による案内・多言語対応
され、2度目以降はインターネットに接続せずに閲覧で
お客様にとっての言語面での負担を軽減し、より快適
でアクセスした情報は自動でアプリ内にデータが保管
きるようになっている。
また、世界No.1の訪日外国人向け日本情報ポータ
ルサイトといわれる japan-guide.comと相互 連 携を
することで、最新の観光情報はTABIMORI内のjapanguide.comコーナーから同サイトにアクセスし、クリッ
プ機能でオフラインでも情報を提供することができる。
な空港サービスを提供するため、空港内の案内サービ
スにテレビ電話機能を搭載したディスプレイ型端末を
導入し、多言語対応が可能なオペレーターによる案内
を行う「テレビ電話によるご案内サービス」を2012年
4月から提供している。
このテレビ電話は、第1・第2旅客ターミナルビルの全
2015年10月には、NAAのグループ会社である㈱NAA
ご案内カウンターに設置され、日本語・英語・中国語・
英字新聞の実装など、機能向上のための改修を行った。
客様はオペレーターと会話ができるほか、画面上で地
リテイリングが運営する免税品予約サイトとの連携や
「TABIMORI」を通して、訪日外国人のお客様に日本の
旅を便利かつ快適に楽しんでいただくことにより、訪日
旅客のリピーター拡大を図る。今後は、
対応言語の追加やコンテンツの拡充な
ど、さらなるサービス向上に努めていく。
「旅守り:TABIMORI-Travel Amulet-」の画面▼とアイコン▶
118
前述の多言語音声翻訳サービスと同様に、外国人の
2. お客様の視点に立った空港づくり
韓国語に対応している。テレビ電話機能を通して、お
図データなどを表示したり、文字を書くこともできるた
め、対面式と同等の状況での案内が可能となっている。
▼案内カウンターに設置されているテレビ電話
7)交通アクセス情報総合ナビゲーション・デジタル
8)自動化ゲートの利用促進
2015年7月、航空機などで成田空港に到着されたお
雑緩和は大きな課題のひとつである。そこで出入国手
サイネージ
客様に対し、ニーズに合わせ目的地まで最適な地上交
通手段が選択できるデジタルサイネージを第1・第2・第
3旅客ターミナルビル到着エリアに計5台設置し、併せ
て、成田国際空港公式ウエブサイト上でも、本サイネー
ジと連携した経路検索サービス「成田空港アクセスナ
時刻表や各交通機関の運行情報などを一元的に表示
する大型ディスプレイ(パブリックディスプレイ)と、お
客様一人ひとりの目的地であるホテルやランドマーク、
駅などまでのバスを含めた最適なアクセス手段を検索
できる小型ディスプレイ(交通案内検索システム)で
構成され、それぞれ特徴ある機能を備えている。 また、
経路検索結果はスマートフォンなどのモバイル端末に
も転送可能だ。
成田空港では、成田スカイアクセス線の開業や、低
価格の空港アクセスバスの運行開始など、アクセスの
充実が図られた結果、多様な交通手段が用意されて
いる一方で、鉄道やバスなどに関して一元的な情報提
供手段がなかったことなど、改善の余地がみられた。
こうした課題に対して、2014年10月にNAA、行政機関、
交通事業者などの関係者により、
「成田空港のアクセ
ス利便性向上などに関する連絡協議会」が発足し、協
議会のもとで検討を重ねてきた。本サイネージは、検
討テーマの一つであ
続きの迅速化を図るため、法務省は観光立国実現に
向けた取り組みのひとつとして成田空港には2007年
11月に自動化ゲートを設置した。
自動化ゲートは、パスポートと指紋の照合だけで本
人確認を行い、出入国審査をスムーズに通過できるシ
ステム。事前に利用登録さえしておけば、出入国審査
場で並ぶこともなく、審査が終了する。なお、出国スタ
第3章
ビ」を同時公開した。本サイネージは、主要方面別の
訪日外国人旅客の増加に伴い、出入国審査場の混
ンプは希望すれば押印される。
これまで成田空港は自動化ゲートの利用促進をサ
ポートし、積極的な広報活動を行ってきた。その結果、
利用者数が拡大したことにより、2014年6月から一般
エリア(第1旅客ターミナルビル中央ビル2階、第2旅客
ターミナルビル3階)に「自動化ゲート利用登録カウン
ター」を設置し、より一層利用しやすい環境を整えた。
ここでは、出発直前のお客様はもちろん、パスポート
があればショッピングやお見送りで成田空港にお越し
のお客様や見学者でも登録ができるため、事前の登録
を勧めている。
自動化ゲートのさらなる周知を図るために成田空港
活用協議会とともに、2014年度成田空港の利用促進
に向けたプロモーション活動として、法務省東京入国
管理局、千葉県などの協力を得て、千葉市の中央旅券
事務所で自動化ゲート出張登録を2度実施した。日本
る案内改善に対する
具体的施策となるも
のだ。
今後は、NariCoの
技術を活用した音声
での総 合 情報 提 供
サービスの実装やバ
リアフリー対応など、
さらなるサービス向
上に努めていく。
▼第1旅客ターミナルビル端末
▲検索結果はスマートフォンに転送可能
▲自動化ゲート利用登録カウンター
▼指紋登録の様子
2. お客様の視点に立った空港づくり
119
第
3章
成田空港の管理・運営
国 旅 券 を所 持 す
1)SKY GATE VISIONの特色
400名 が 自 動 化
デジタルサイネージ(Digital Signage=電子看板)
●適所でタイムリーに情報発信
る県 内 居 住 者 約
ゲ ートに 登 録 し、
は、情報メディアさらには広告ツールとして注目されて
千 葉 県 民 の出 入
いる。最近は街頭、公共施設、交通機関の車内、ショッ
国 利 便 性 向 上に
ピングモールなどで目にする機会が多い。ネットワー
寄与した。
クや無線LANと接続することで、配信コンテンツを時
今 後も法 務 省
間・場所・視聴者に応じて簡単かつスピーディーに変
東 京 入国管 理 局
えられるのが特徴で、設置する場所などの特性に合っ
や 関 係 機 関と協
た、ターゲットを絞り込んだ効果的な情報発信ができ
力して利用促進に
向けた検討を行う。
る。また、配信コンテン
▲自動化ゲート
▼千葉中央旅券事務所での自動化ゲート出張登録キャンペーン
ツをエリアごとに変える
ことができ、その更新も
迅 速に行えることから、
最新情報を最適な場所
でタイムリーに発信する
だけでなく、緊急時にさ
まざまな言語で情報を
伝達することもできる。
▶店舗エリアの入り口に設置された
端末では販売促進情報を表示
▼店舗エリア内ではより具体的な情報を表示
❹ デジタルサイネージの導入
成田空港は従来から、スタッフによるご案内や各種
案内表示の充実を図ってきたが、それらに加え、情報
発信をタイムリーに行える新しいツールとして、国内最
大規模のデジタルサイネージ「SKY GATE VISION」を
導入した。
2012年3月から第1・第2旅客ターミナルビルの店舗
エリアに設置したのを皮切りに、6月には出発階に大型
ディスプレイを設置するなど本格的な運用が始まった。
第1・第2・第3旅客ターミナルビルで、現在合計107台、
343面が稼働し、多様なコンテンツでお客様の目を楽
2)SKY GATE VISION導入の狙い
▼出国審査場入り口に設置された大型ディスプレイ
成田空港では、こうしたデジタルサイネージの利点
しませている。
●旅の雰囲気づくりにも寄与
にいち早く着目し、導入を決めた。
特に空港という場所は、旅への高揚感と不安とが同
居する特別な空間であり、お客様に快適に楽しく成田
空港を利用していただくためには、施設を分かりやす
く案内すること、あらゆる情報を適所で伝えていくこと、
そして旅の雰囲気を醸成していくことを重要なテーマ
と考えた。
お客様の満足度を向上させることはもちろんのこと、
成田空港のブランド力向上、さらには広告による収入
増を目指し、配置展開および表示内容については、次
の5つの点を基本コンセプトとした。
120
2. お客様の視点に立った空港づくり
基本コンセプト
▶適所で分かりやすい情報提供
▶店舗販売促進情報の充実
▶待ち時間を楽しく過ごしていただくための娯楽
の充実
▶空間演出による雰囲気の向上
▶広告としての価値創出
コンテンツも導入。コンテンツは日本の最新デジタル
※
アート作品でもあり、デジタルサイネージアワード を
受賞するなど評価を得ており、成田空港を訪れた方に
楽しんでいただいている。
このように、成田空港では大型ディスプレイやパノラ
マビジョンならではのダイナミックな映像、マルチ画面
を活用した斬新で多彩な映像などコンテンツの充実に
より、広告メディアとしてのデジタルサイネージの可能
性をさらに広げていく。
●迫力の超大型ディスプレイ
※デジタルサイネージアワード:公募した国内の作品の中から優秀なものを選
出、表彰することでデジタルサイネージ市場のさらなる活性化を目指して制定
された。
主催:デジタルサイネージコンソーシアム
後援:経済産業省/総務省/デジタルコンテンツ協会/デジタルメディア協会
体的な展開計画は、デジタルサイネージ推進室を中心
<出発フロア>
ナル部に業務移管)
。
界初の有機EL方式パノラマビジョンは、液晶やプラズ
ディスプレイの大きさやデザイン、設置場所などの具
として入念に行った(2012年10月1日からは旅客ターミ
まずデザイン面では、ディスプレイのデザインイメー
ジを統一することで、空港のシンボルとして印象づける
こととした。そして、シンプルな中に伝統と先進性を調
和させた「和モダン」のテイストを取り入れ、日本の表
玄関にふさわしいイメージを演出した。ユニバーサル
デザインや人間工学に基づき、色覚障がい者にも配慮
している。
設置は2012年3月に店舗エリアからスタート。6月に
は第1旅客ターミナルビル出発ロビーに世界初の有機
ELパノラマビジョン(表示面の大きさ:幅9600㎜、高
第3章
3)SKY GATE VISIONの展開
の動きを感知し、画面が変化していくお客様参加型の
第1旅客ターミナルビル南ウイングに設けられた、世
マディスプレイに比べて高輝度で高コントラストな映
像を表示でき、目地のない滑らかな曲線が特徴。
第2旅客ターミナルビルの保安検査場前に設置され
た27面マルチビジョンは、46インチモニターを横9台
×縦3台並べた大迫力の画面。
「送る門」と位置づけられた出発フロアの大画面で、
これから世界へ旅立つ人々、日本から母国へ帰る人々
をお送りする。また、待ち時間を過ごす人たちを飽きさ
せない魅力あるコンテンツを配信している。
さ1920㎜)
、第2旅客ターミナルビル出発ロビーには国
内最大級の27面マルチディスプレイ
(表示面の大きさ:
幅9249㎜、高さ1743㎜)を設置した。
デジタルサイネージの設置に関しては、場所ごとに大
きさや形態を変えて、それぞれの用途に見合う特色を
持たせた。例えば、出発フロア、保安検査場前に大型
端末を設置する一方で、ターミナルのエントランス付近
にはお客様の目に必ずとまるよう多数の縦型端末を設
置した。
4)設置場所ごとに創意と工夫
▲曲面を描く有機ELパノラマビジョン。画面はデジタルサイネージアワードを受
賞した「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」
●表示コンテンツの充実
<ターミナルエントランス>
とともに表示するコンテンツに力を入れている。空港
各エントランス付近に網羅的に縦型端末を設置。保安
デジタルサイネージの導入にあたっては、展開計画
からの告知や空港内でのイベントのお知らせなど、タ
イムリーな情報を分かりやすく提供している。
また、旅の雰囲気を醸成するため、空間を演出する
鉄道やバス、駐車場から出発ロビーに続く動線上の
情報や最新情報などお客様に確実に伝えたい情報を
配信している。
魅力あるコンテンツも多数用意している。美しい日本
<到着フロア>
か見ることのできないオリジナルコンテンツで日本の
フロアは、四季折々の日本の美しさでお客様をおもて
の四季や風景、文化、芸術を題材にした成田空港でし
美しさや素晴らしさを発信している。
2013年4月には、画面上部に設置したセンサーで人
日本の玄関として海外からのお客様を出迎える到着
なしする。最新の国内ニュースや天気予報なども分か
りやすく伝えている。
2. お客様の視点に立った空港づくり
121
第
3章
成田空港の管理・運営
<店舗エリア>
店舗エリアは、多彩なレストラン、ショップが集まる
「門前市」に見立て、店舗一覧の表示を見やすく設置す
るとともに、検索型端末を利用して各店舗の情報が容
易に入手できるようになっている。
成田空港は今後も、デジタルサイネージを用いて、エ
リアに合わせた最新の空港ニュースや娯楽コンテンツ
などをタイムリーに発信し、お客様サービスの向上、さ
う、また到着の外国人のお客様がスムーズに日本各地
に向かうことができるよう、“人によるサービス”の充実
を目的としたものである。
2011年 秋 以 降 は、夏 期・年 末年 始・ゴール デン
ウィークなどの繁忙期に加え、これらの期間以外の金・
土・日曜日に活動を行っている。
❻ 増加する訪日外国人旅客への施策
らには空港全体のブランド力向上に努める方針。また、
東南アジア諸国からの訪日外国人旅客数の増加や、
広告事業の拡大も図っていく。
控えるなか、成田空港は訪日外国人旅客に向けたさま
サイネージを企業広告の場として活用いただくことで、
❺ お客様への分かりやすいご案内
1)空港内でのスムーズな移動のために
広い空港内では、目的の場所までスムーズに移動で
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催も
ざまな施策を行っている。具体的な取り組みは、
「多
言語対応」
「Wi-Fiの環境整備」
「ムスリム対応」
「おも
てなしプログラム」の4つに大きく分けられ、訪日外国
人旅客の受け入れ体制の整備・強化を進めてきた。
きることが大切だ。成田空港では2010年7月から、第1・
1)多言語対応への取り組み
案内表示を追加。出発ロビーまでの移動ルートをより
画として、空港内の全店舗が共通で使用できる「外国
第2旅客ターミナルビル鉄道駅階の床や壁面に新たに
分かりやすくし、お客様が案内表示に従って歩くことに
より、迷うことなくスムーズに移動できるようになった。
NAAと成田国際空港テナント連絡協議会は共同企
語話せますバッジ」を作成し、2012年4月から店舗ス
タッフが着用を始めた。この企画は、店舗スタッフで外
国語(英語以外)の接客ができるスタッフが何人いるか、
その外国語を話せることがお客様に一目で分かるよう
なバッジを着けているか、などの調査を行った結果を
受け、実施されることになった。調査の結果、外国語
が話せるスタッフは約400人で、一方、バッジ着用者は
その30%程度にとどまることが分かった。また、着用
されているバッジは、各店舗が独自に用意したもので
あり、デザインや形状も多種多様であることが分かっ
▲分かりやすい案内表示で、空港内の移動もよりスムーズに
2)
「空港案内ボランティア」の活躍
2010年7月17日から、第1・第2旅客ターミナルビル
の各所でボランティアによる案内サービスが始まり、ま
た、2015年4月の第3旅客ターミナルビルオープンに伴
い、同ビルでの案内も開始した。学生や一般の方の中
から募って「成田空港案内ボランティア」を組織し、お
客様がよりスムーズにターミナルビル内を移動できるよ
▼学生や一般の方により組織された「成田空港案内ボランティア」メンバー
た。そこで、国際空港として、外国のお客様に安心して
より多くの店をご利用いただき、成田空港でのひととき
を楽しく過ごしていただくために、空港内の店舗が店
舗間の垣根を越えて協力することにしたもの。統一規
格のバッジを着用することにより、接客サービスの向
上につなげる。
「外国語話せますバッジ」は全部で14
種類。1カ国語用が10種類(中国語・韓国語・スペイ
ン語・フィリピン語・タイ語・フランス語・イタリア語・
ポルトガル語・ロシア語・マレーシア語)、2カ国語用
が1種類(中国語・韓国語)、3カ国語用が2種類(中国
語・韓国語・ロシア語とスペイン語・フランス語・ス
ウェーデン語)、言語の表示がないバッジ1種類(新し
い言語を話すスタッフが増えた場合に使用)となって
いる。
また、歓迎メッセージを表示したウエルカムボード
では、成田空港と結ばれる国の母語・公用語(25言語)
により、到着動線の壁面や電飾看板を活用し歓迎の意
を表現している。そして、デジタルサイネージでも25言
122
2. お客様の視点に立った空港づくり
▲無料無線LANご案内マーク
▼ウエルカムボード
第3章
▲14種類が揃う「外国語話せますバッジ」
◀旅行者が無料で無
線LANを利用できる
「Free Wi-Fi Desk」
ほぼ全域においてローミング無線LANサービスが利用
可能となるよう整備されているが、お客様からは無料
で利用できる無線LANサービスの提供を希望する意
見が多く寄せられていた。そこで、無料で無線LANが
利用できるスポットとして、2010年6月に第2旅客ター
ミナルビルの制限エリアに「Broadband CAFE」をオー
プンさせた(2014年3月31日閉鎖)。同年7月には第1
旅客ターミナルビルの制限エリア内5カ所に「Free Wi-
Fi Desk」を設置し、お客様が無料で無線LANを利用
できるサービスを導入した。2013年4月以降は、サー
ビスエリアの大幅拡大により、第1・第2・第3旅客ター
ミナルビルのほぼ全域で無料Wi-Fiサービスが利用可
能になった。一方、Wi-Fi利用環境については、接続画
面をリニューアルして操作性をよくすることに加え、接
続画面の対応言語として、日本語、英語、中国語、韓
国語の4言語に加え、利用頻度の高いタイ語、インド
ネシア語、フランス語、スペイン語を2015年4月から
追加するなど、利用者目線での改善を図っている。
3)急増するムスリムへの対応
▲デジタルサイネージ
「お客様から選ばれる空港」を目指す成田空港では、
語で、到着ロビーには「ようこそ」と歓迎の意を、出発
訪日外国人旅客の受け入れを強化するべく、東南アジ
ロビーには「またお会いしましょう」と再訪日喚起の文
字が書かれたボードを、日本各地の人々が手にしてい
る様子を映像で流している。これらは外国からのお客
様に対し、多言語対応という形を通じて、おもてなしの
気持ちを表現するメッセージである。
2)
Wi-Fiの環境整備
空港をご利用になる外国からのお客様が必要とする
サービスの1つとして、無線LANによるインターネット
接続が挙げられる。PCやタブレット型PC、スマートフォ
ンなど、無線LANに接続可能な端末を携帯するお客
様が多いことから、空港内の待ち時間などに自分の端
末から無線LANを利用してインターネットを使用する
例が頻繁に見られる。成田空港では、ターミナル内の
今後も増え続けることが予想される東南アジアからの
アに多いムスリムの方々に配慮した食事や礼拝スペー
スの拡充を行っている。
〈1〉Prayer Room(礼拝室)
ムスリムは1日5回(明け方から日の出、正午、昼過ぎ
から日没まで、日没直後、就寝前)の礼拝を行い、旅
行の際はPrayer Roomやホテルの部屋などで礼拝す
る。成田空港には、これまで第1・第2旅客ターミナルビ
ルの出国審査前エリアに、祈りや瞑想などを行うため
の施設「サイレンスルーム」があったが、より分かりや
すくするために2013年12月から「Prayer Room(礼拝
室)
」へ名称を変更。2014年1月には、Prayer Room内
に身体のお清め用の水場の整備を行った。
さらに、常時開放された施設とし、館内案内サイン
2. お客様の視点に立った空港づくり
123
第
3章
成田空港の管理・運営
の、キッチン外に区分して管理されており、全メニュー
がハラール専用キッチンで調理されたレストランで、お
客様に安心してお召し上がりいただける。
また、宗教上や信条的な理由のほかにも、食物アレ
ルギーなどで食材に制約があるお客様も多いことから、
安心して空港での食事を楽しんでいただくために、使
用している食材を絵で表現したピクトグラム表示を導
入した。ピクトグラムは、牛・豚・鶏・羊・魚・貝・アルコー
ル・かに・えび・卵・小麦・そば・乳・落花生の14種
類あり、全飲食店のメニューに2014年7月から順次導
◀▲Prayer Room(礼拝室)
も設 置することで利便性を高めた。2014年7月には、
入している。
▼食材ピクトグラム
第1・第2旅客ターミナルビルの出国審査後エリアにも
それぞれ「Prayer Room(礼拝室)
」を新設し、2015
年4月にオープンした第3旅客ターミナルビルにおいて
も出国審査前と後のエリアで各1カ所ずつ整備を行っ
た。出国審査後のお客様はもちろん、乗り継ぎのお
©INTERNASHOKUNAL+NDC Graphics
宗教に関わらず静謐な環境での精神活動のために、誰
「おもてなしプログラム」で乗り継ぎ時間の価値向上へ
4)
客様への便宜を図っている。ムスリムの方はもちろん、
でもご利用いただける施設となっている。
〈2〉ハラール認証のケータリング&レストラン
ムスリムには、豚肉やアルコール類およびこれらの
派生品など宗教上食べられない食材があり、また、そ
れ以外の食材もイスラム法に則って処理・調理されて
いる必要がある。イスラム法に則って食べることが許
可された食事をハラールフードといい、ハラールフード
に関しては、有料待合室をご利用のお客様向けに、ハ
ラール専用キッチンを備えた工場で調製されたハラー
ルミールのケータリングサービスを2013年12月から開
始した。
さらに2014年6月には、成田空港初のハラール認証
レストランとして、第1旅客ターミナルビル中央ビル5階
に「自家製麺 杵屋麦丸」、第2旅客ターミナルビル本
館4階に「あげたての味 天亭」がオープンした。その
後、2014年12月には、第2旅客ターミナルビル本館4
階の「ラ・トック」もオープンし、現在、3店舗がハラー
ル認証レストランとなっている。いずれも既存飲食店を
改装したもの。店内でのアルコールの販売はあるもの
▼ハラール認証レストラン「あげたての味 天亭」
124
2. お客様の視点に立った空港づくり
海外106都市(2015年10月現在)とのネットワーク
を誇る成田空港にとっては、国際線間の乗り継ぎでの
利用者も重要なお客様。2014年4月から乗り継ぎの待
ち時間をお楽しみいただくため「おもてなしプログラ
ム」を開始した。主に日本伝統文化を紹介し、書道、琴、
折り紙など、
「見て」
「聞いて」
「体験」できるプログラ
ムを揃えた。夏には七夕飾りや盆栽の展示のほか、浴
衣姿の女性がロビーを歩き、日本の着物の風情をお客
様に楽しんでいただいた。また、有料ラウンジ、シャワー
ルームの利用料金割引サービスも実施し、2015年4月
からは、すべての乗り継ぎのお客様がシャワールーム
において同様の割引サービスを受けることが可能とな
り、有料ラウンジにおいては無料でご利用いただける
ようになった。
お客様への充実した乗り継ぎ時間の提供について
は、航空会社からの要望も多い。乗り継ぎ時間の価値
を高めることが、日本のイメージ向上、訪日リピーター
へとつながり、最終的にはネットワークの充実に至る。
今後もこうした乗り継ぎのお客様向けのプログラムを
展開していく。
▼浴衣姿の女性と記念撮影
3 世界の空港の一員として
❶ ACI、EAAAなどの活動
1)ACI(国際空港評議会)
ACI(Airports Council International「 国際空港評
議会」
)は、世界の空港や空港ビルの管理者または所
ACIの使命は、会員相互の協力はもとより、各空港に
共通の利益について意見を取り交わし、統一的な見解
としてとりまとめ、ICAO(国際民間航空機関)やIATA
(国際航空運送協会)などの国際的な航空関係機関に
協力体制の構築を進めてきている。
2001年、日 中 韓 の 代 表 的 な6つ の 空 港 管 理 者
(NAA、日本空港ビルデング㈱、北京首都機場集団公
司、上海空港公団、韓国空港公社、仁川国際空港公社)
が集まり、同地域に共通する課題の解決やサービス向
上を図ることを目的として、
「北東アジア圏空港間協力
構想」が共同で提唱された。同年12月には基本合意
文書への調印が行われ、2002年5月、同構想に係る第
1回定期会議が成田において開催され、同会の名称を
表明および提唱をし、安全で環境に調和した航空輸
「東アジア空港同盟(EAAA)
」とすることが決議された。
モントリオール(2011年にスイス・ジュネーブより移転)
西国際空港㈱(加盟時は、関西国際空港㈱)、中部国
送体制を確立することである。ACIは、本部をカナダの
に置き、ICAOやIATAとともに世界の航空運送を支え
る3本柱の1つとなっている。
NAAは、空港間の情報交換の場として、またICAO
やIATAなどの機関にNAAの意見を反映させるための
機会としてACIを活用しており、世界役員会および地域
その後、香港空港公団、マカオ国際空港㈱、新関
際空港㈱、広東省機場管理集団有限公司、東京国際
表3-3 NAAがホストした国際会議
開催年
参加者総数
(概算)
会議名
1996年 第6回ACI太平洋地域部会総会
450人
港情報技術常設委員会、航空保安常設委員会、安全・
1999年 ACIコンピュータポート’99
300人
遣している。
2000年 ACI&IATA グリーンポート2000
300人
役員会のほか、経済常設委員会、環境常設委員会、空
技術常設委員会など個々の委員会に役員・社員を派
NAAは引き続き、アジア太平洋地域だけでなく、世
界のリーディングエアポートを目指してACI活動に取り
組んでいく。
2001年 第46会IIWG会議※
50人
2002年 ACI世界総会
第1回EAAA定期会議
【ACIの概要】
ACIは、
1991年にそれまで北米の空港を中心に組織さ
れていたAOCI(Airport Operators Council International)
と、欧州の空港を中心に組織されていた国際民間空港協会
(ICAA: International Civil Airports Association)が統合し
1,000人
40人
Pacific 第1回e-エアポート
2005年 ACI
タスクフォース
70人
2006年 ACI Pacific 第2回e-エアポート
タスクフォース
110人
2007年 第6回EAAA定期会議
60人
て設立された。NAAは、
1970年に前身のICAAに加盟、現在
2010年 ASQフォーラム2010
(アジア・中東・アフリカ地域)
ACIの会員数は590であり、会員の運営する空港は世界
2012年 ACIアジア太平洋地域
運用安全委員会
20人
ACIは世界を5つの地域(アジア太平洋、北米、欧州、
中南米、
2013年 第61回IIWG会議
40人
平洋地域には、環太平洋地域、ハワイなどの島々、オセアニ
2013年 ACI経済常設委員会
20人
47の国と地域、573空港(2015年9月現在)
で構成される。
ACIアジア太平洋地域
2015年 航空保安委員会
30人
2015年 ACIアジア太平洋地域HR委員会
20人
2015年 ACIアジア太平洋地域HRセミナー
70人
ACIのアジア太平洋地域部会に所属して活動を行っている。
173の国と地域1850空港(2015年1月現在)に達している。
アフリカ)に分けて活動しており、NAAが所属するアジア太
ア、東南アジア、西アジア、
中東地域が含まれ、会員数は99、
2)EAAA(East Asia Airports Alliance
「東アジア空港同盟」)
今後、東アジア地域内の交通量が飛躍的に増加す
ることに合わせて、NAAは域内主要空港で提供される
第3章
有者を会員とする国際機関である。
サービスの向上を実現させるため、主要空港間の相互
100人
※ IIWG:International Industry Working Group(国際産業部会)
。国際産業部
会は、航空機と空港施設の間の適合性に関する問題を世界的な規模で討議
するため、空港管理者、ACI、航空会社、IATA、航空機メーカーなど航空産業
界などが参加して発足し、技術的な検討を行う場である。
3. 世界の空港の一員として
125