2.お客様の視点に立った空港づくり

第
3章
成田空港の管理・運営
キュリティゲートの運用を継続しながら、顔を識別でき
るカメラや通過するだけで危険物を探知できる装置の
有効性、設置方法を含めた有効な活用方法について
の検証を行った。
その結果を踏まえ、2013年度末に駅ゲートや旅客
ターミナルの入口等に顔を識別できるカメラを約150
台設置した。また、2014年12月までに、車両ゲートや
構内道路等に車両の入場管理や記録を行うためのカ
メラシステム
(約130台)
を整備する。さらに、実証実験
で使用した危険物探知装置の導入は見送ることとなっ
たが、危険物持ち込み対策の一つとして、爆発物探知
犬を導入することとし、東成田駅舎内に爆発物探知犬
の犬舎の整備を進めている。
「お客様から選ばれる空港」
を目指し、NAAは機械
警備等による新たな警備体制により空港全体の警備
レベルを維持、向上させ、2015年3月を当面の目途と
しつつ、可能な限り早期にノンストップゲート化が実現
できるよう取り組んでいる。
2 お客様の視点に立った空港づくり
❶ CS への取り組み
「お客様満足」
(CS=Customer Satisfaction)
の
向上は、空港経営にとって重要な要素である。お客
様の満足を得られなければ、拠点空港としての評価
は低下し、国際空港間競争にも後れをとることとなる。
NAAは、“CS推進”を経営上の重要な柱と位置づけ、
経営ビジョンに
「お客様の満足を追求し、期待を超え
るサービスの提供を目指します」
と掲げ、全社横断的に
「おもてなしの心を大切にした」CS推進活動に取り組
んでいる。
(1)NAAの取り組み
1)
CS推進の中核組織「CS推進委員会」
NAAは、2001年に
「旅客サービス委員会」
を設置
して以来、CS推進活動に積極的に取り組んでいる。
2003年12月からは、
同委員会を社内のCS推進活動
の中核的な組織と位置づけ、全役員を委員とし、そこに
関係室部長も加えた
「CS推進委員会」
として新たなス
タートを切っている。当委員会は、
「お客様の視点に
立って何ができるか、何をすべきか」
を念頭におき、ス
ピーディで質の高いCS推進活動を行っている。
2)
原点はお客様の声
お客様の満足を追求するためには、
「すべての原点
はお客様の声にある」
と認識し、NAAではさまざまな
方法でお客様の声を収集している。寄せられたお客
様の声は受付媒体ごとに3つのデータベースに直ちに
入力され、
全役員・社員で共有されている。
データベースの1つ目は、旅客ターミナルビル内のご
案内カウンター(計19ヶ所)
やNAA成田国際空港イン
フォメーション等に直接寄せられるご意見、2つ目は旅
客ターミナルビル内に設置されている
「お客様の声ボッ
クス」
(計18ヶ所)
に投函されるご意見、3つ目は成田
空港ホームページに寄せられるご意見となっている。
その内容は、お叱りやご指摘など
「マイナス評価」
が
110
1. 成田空港の危機管理体制 2.お客様の視点に立った空港づくり
▲「お客様の声」用紙
ある一方で、
「お褒め」
「お礼」
といった
「プラス評価」
も
ある。寄せられたお客様の声はすべて貴重なデータと
して全社員が共有し、各担当セクションでスピード感を
持って改善策に反映させている。
お客様からのご意見をもとに行った数々のサービス
改善については、NAAのホームページの
『お客様の声
をかたちに』
というページに順次掲載し、お客様にお知
らせしている。
(http://www.naa.jp/jp/action/cs/
cs_koe.html)
3)
お客様満足度調査
NAAは、CS推進活動の基礎資料とするため2000
年から毎年、
「お客様満足度調査」
を実施している。ご
利用のお客様の満足度を定量的にとらえるとともに、前
回調査からの満足度の推移、他空港の満足度との比
較、さらに、お客様が重視する要素などの把握により重
点課題を抽出し、CS推進活動に活用している。
2008年10月からはACI(国際空港評議会)
実施に
よるお客様満足度調査
(ASQ調査)
に参加している。
(2)NAAグループの取り組み
1)
空港全体のけん引役として
NAAグループが一体となって積極的なCS推進活
動を展開するため、2005年4月に
「NAAグループCS
推進連絡会」
を設置した。
NA
4
01
NAAを含むNAAグループ18社2団体で構成し、定
期的に連絡会を開催している。NAAグループ全体で、
成田空港CS協議会の取り組みを浸透・定着させ、全
グループ社員が空港全体のけん引役としてCS推進に
取り組むこととしている。
また各社のCS推進活動を充実させるため、
グループ
各社と共同の取り組みを実施するとともに、積極的な
情報交換を行っている。
A A IR PORT
IT
2
R
受賞者および受賞会社の数は、
「CS Award 2014
まで約430名・70社に上り、空港スタッフの
Summer」
モチベーションを向上させるうえで大きな効果を見せ
ている。また、賞そのものに対する評価も年々高まり、
受賞したスタッフの社内でも大きな反響があることか
ら、他社においても同様の表彰制度を導入する動きが
見られている。
▼「CS Award 2013 年間グランプリ」
の授賞式風景
(2014年3月、
第2旅客ターミナル ビルSKYRIUM にて)
第3章
(3)空港全体での取り組み
1)
成田空港CS協議会
成田空港のCS推進で重要な役割を果たしているの
が、
「成田空港CS協議会」
(事務局:NAA CS推進部)
である。
「空港全体のCS向上を図るためには、直接お
客様に接する空港内関連企業が一丸となる必要があ
る」
として、2002年5月に発足した。
現在、CIQ(税関、入国管理局、検疫所)
、警察、航
空会社、警備会社、店舗・サービス、交通機関、清掃
会社、公益事業法人、NAAなど、直接お客様に接す
る空港内企業等の代表28機関がメンバーとなってい
る。
(図3-3参照)
図3-3 成田空港のCS推進ネットワーク
CIQ
航空会社
警察
店舗・サービス
警備会社
交通機関
NAA
清掃会社
公益事業法人
2)
スタッフ全体でCS意識を高め合う取り組み
CS協議会発足以来、特に力を入れているのが空港
スタッフのCS意識向上策である。CS協議会では、さま
ざまな取り組みを実施している。
・CS Award
「CS Award」は2003年1月に導入した表彰制度
である。表彰の対象は、空港内に勤務するスタッフ
および空港内企業・団体であり、年に4回表彰を行う
と、年に1回表彰を行う
「CS
「Seasonal CS Award」
の2種類を設けている。
Award 年間グランプリ」
また、
「CS Award 2005 年間グランプリ」
より特別
賞を新設するなど、
さらなる拡充を図ってきた。選考に
あたっては、成田空港を利用するお客様や空港スタッ
フからの推薦をもとに、CS協議会委員による選考会を
実施している。
▲第1・第2旅客ターミナルビル内計4ヶ所に設置されている
CS Award受賞者紹介パネル
・CSセミナー
空港スタッフのサービスレベル向上を目的とし、CS
協議会主催によるCSセミナーを実施している。
外部から講師を招き、
「挨拶」
「表情」
「言葉遣い」
「態
度」
などをテーマにした接客マナーセミナーや、ご高齢
者やお身体の不自由なお客様への適切なお手伝いを
学ぶ体験型ユニバーサルサービスセミナーや手話セミ
ナーを開催している。
このほかにも、外国語や海外文化をテーマとするセ
ミナーを開催し、国際空港の舞台にふさわしいスタッフ
育成に努めている。
・CSフレンズ
2004年6月には、空港スタッフ向けの情報誌
『CSフ
レンズ』
を創刊した。それまで、成田空港に寄せられた
お客様の声を空港スタッフに伝える媒体がなく、多くの
空港スタッフから
「お客様の生の声を聞かせてほしい」
という要望が寄せられていたため、空港スタッフ向け情
報媒体として創刊し、
以降、
定期的に発行している。
CSフレンズは、お客様の声をはじめ、CS協議会の
活動など、さまざまな情報を紹介するものであり、CS
協議会参加企業のほか、
約260社に配布されている。
2.お客様の視点に立った空港づくり
111
第
3章
成田空港の管理・運営
・初日の出フライト
ご旅行のお客様以外の方々にも空港発のイベントを
お楽しみいただこうと企画したイベントである。2009
年以降5年連読で元旦に実施し、募集定員を大幅に上
回る応募をいただき大変好評な企画となっている。
▼空港スタッフ向け情報誌
『CSフレンズ』
・バレンタインデー企画
出発ロビーに大形のハート型モニュメントを設置し、
『成恋
(なりこい)
カード』
にお客様のお願い事を記し
て飾っていただくイベントを開催した。女性を中心に
多くのお客様にご参加いただいた。
・CS魂
(スピリット)
空港で働くすべてのスタッ
フが常に同じ気持ちを持っ
てお客様と接する環境をつ
くり上げるため、2012年か
ら
「CS魂
(スピリット)
」
と冠し
た年間を通じたスタッフ間の
合言葉を策定し、スタッフエ
リアの各所や協力企業の事
務所内にポスターを掲示し
て、スタッフ一人ひとりのCS
意識向上に取り組んでいる。
▲ハート型モニュメントが設置された
出発ロビー
▲スタッフ向けCS意識向上ポスター
❷ 楽しい成田空港をつくるオアシスプロジェクト
ソフト面における成田空港の魅力をより高め、
「楽し
い成田空港をつくろう!」
というテーマのもと、NAAは
「成田空港オアシスプロジェクト」
を2008年7月に立ち
上げた。
プロジェクトのネーミングは、砂漠を行く旅人が水と
木陰を求めてオアシスに集まるように、海外旅行の楽し
さと夢を求める多くの人々が集まるような空港、それを
つくり上げていくためのアイデアがオアシスの泉のごと
く湧き出るようにとの趣旨から付けられており、旅行を
されるお客様はもちろんのこと、空港周辺の地域の方々
など旅行目的以外の方にも積極的に来ていただけるよ
うな楽しい空間にすること、
さらには空港スタッフが誇り
を持てる空港にすることが狙いである。
▼初日の出フライトにて
112
2.お客様の視点に立った空港づくり
▲多くの願い事が記された
『成恋
(なりこい)
カード』
・Tanabata Day
七夕の季節に両旅客ターミナルビルの出発ロビーに
笹飾りを設置して、お客様に短冊を書いていただき、そ
の場で笹に取り付け
ていただくイベント
を実施した。七夕当
日には浴 衣 姿の空
港スタッフが、
出発ロ
ビーにてお客 様 へ
空港オリジナル団扇
を配布し、大変好評
▲短冊を笹に取り付ける様子
をいただいた。
・ターミナルコンサート
空港を音楽であふれた楽しい空間にすることを目的
とし、出発ロビーで朝と夕方の繫忙時間帯に、世界で
活躍するアーティストによるピアノを中心とした演奏会
を開催し、
お客様に憩いの時間を提供している。
また、
公募形式で空港勤務者、
音大生や小学生等に
も発表の場を設けるなどの取り組みも行っている。
▼Oasis Music Weekイベントの様子 NA
❸ ユニバーサルデザインへの取り組み
成田空港の旅客ターミナルビルでは、
「高齢者、
障害
者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」
や各種
ガイドラインに則した施設づくりに努めている。空港を
利用してくださるすべてのお客様が、駅、駐車場、カー
ブサイド乗降場から航空機までを不安なく円滑に移動
できるよう施設改善を実施している。
▲大型シースルーエレベーター
(右側部分)
▲オストメイト対応・収納式多目的シートを
持つ広い多機能トイレ
▲航空会社別クラス別の案内表示
(CIDS)
▲色彩で直感的に施設用途が
分かるカラーバーサイン
◀お客様の移動をスムーズにする
幅広の動く歩道
2006年6月2日にグランドオープンした第1旅客ター
ミナルビル南ウイングでは、一歩進んだユニバーサル
デザインを各所で実践している。
お客様の移動をスムーズにする幅広の動く歩道、大
きなターミナル空間内での階層移動でも自分の位置を
把握しやすく、視認性を向上させた圧迫感のない大型
シースルーエレベーターの設置、また航空会社のアラ
イアンスによるクラス別チェックインに対応した案内表
示
(CIDS)
を各チェックインアイランドごとに設け、合理
的できめ細かな案内サインを実現している。
また、オストメイト対応・収納式多目的シートを持つ
広い多機能トイレ、色彩で直感的に施設用途が分かる
カラーバーサインなど改善を行った。
ソフト面では、バリアフリー情報を簡単に入手してい
ただけるようホームページ上に
「バリアフリーインフォ
メーション」
サイトを設けるほか、駅や駐車場から出
発ロビーへ向かうお客様に車椅子の貸し出しや介助
サービスなどを行っている。
多国籍かつ多文化のお客様が集まる国際空港にお
いて、今後もお子様からご高齢の方までさまざまなお
客様にご満足いただけるように、ユニバーサルデザイン
の考え方に配慮した施設整備・サービスに取り組んで
いく。
第3章
▲WAKAGIのイベントでゆるキャラと記念撮影
4
01
・WAKAGI
若手の育成を目的にNAA入社2年目の社員で構成
されたプロジェクト“WAKAGI”による夏イベントを実
施した。イベントの企画から運営までWAKAGIメン
バーが携わり、第1旅客ターミナルビルでは浴衣の着
用体験や扇子の装飾体験を、第2旅客ターミナルビル
ではゆるキャラとの記念撮影のイベントを行った。ご
旅行のお客様以外の方々にもお越しいただき、好評で
あった。
A A IR PORT
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2
R
❹「i-Airport」の推進
(1)
「e-エアポート」から「i-Airport」へ
NAAは、お客様の利便性・セキュリティ確保の飛躍
的な向上、空港の運用効率の最大化および旅行マー
ケットの拡大を図るため、2000年から最新のITを導入
し政府やその他企業と一体となって、
「e-エアポート構
想」
として、
「エアポートネット」
「e-インフォメーション」
「eナビ」
「e-チェックイン」
「e-タグ」
「電子マネー」
に取り
組んできた。
エアポートネットは、充実したインターネット接続環
境を整備するもので、インターネット接続のためのキオ
スク端末や、お客様がお持ちのパソコンでインターネッ
ト接続を可能にする有線LAN接続用ケーブル、無線
LANアクセスポイントをターミナルビル各所に整備して
きた。特に無線LANについては、無料で利用できる無
線LANサービスを2010年6月から順次提供し、
現状で
は第1・第2旅客ターミナ
▼無料無線LANご案内マーク
ルビルの出国後のエリア
を含む、お客様が待ち時
間を過ごすほぼ全域で利
用できるようになっている。
また、一 部 の 無 線LAN
サービス提供エリア内に
は、電源コンセントおよび
照明ライトを備えたパソコ
2.お客様の視点に立った空港づくり
113
第
3章
成田空港の管理・運営
ンデスクも用意している。
e-インフォメーションは、NAAホームページの
「成
田空港アクセスガイド」
において、リアルタイムのフライ
ト情報と空港へのアクセス情報を連携させ、利用者の
目的に合わせた成田空港への最適なアクセス情報を
提供するものである。内容は、
「成田空港アクセスガイ
ド」
から、行き先または利用航空便名、乗車駅を入力す
ると、利用する旅客ターミナルビル、搭乗ゲート、出発
予定時刻のほか、
同便に適した空港までの交通機関の
経路、乗り換え回数、料金、所要時間などが検索できる
ようになっている。目的に合わせて
「出発便から」
「到
着便から」
「お出迎え/お見送り」
「時間から」
の4つ
の方法で検索でき、結果を選択する際にも
「時間順」
「料金順」
「乗り換え回数順」
から選択できる。鉄道
だけでなくバスアクセスとも連携したほか、ホテルを起
点・終点とする検索、お出迎え・お見送りのための検
索、重い荷物を持っての鉄道駅での乗り換えを反映さ
せた検索など、成田空港においでになるお客様への検
索機能が充実している。
e-ナビは、訪日する外国人旅行者に携帯情報端末
(PDA: Personal Digital Assistant)
を貸し出し、総
合的な旅行支援を行うものである。国土交通省と共
同で2度の実証実験
(2004年1~ 3月、2005年2~ 3
月)
を実施し、音声認識技術を利用した日英言語翻訳
サービスのほか、成田空港の施設および空港周辺の観
光情報等の案内サービスを行った。
e-チェックインは、世界的な取り組みであるSPT
(Simplifying Passenger Travel)
の考え方をベース
としたもので、セキュリティを確保したうえで空港手続
きを簡素化するものである。手続きの簡素化・セキュ
リティ確保を実現するにあたっては、個人の身体的特
徴から本人識別を可能にするバイオメトリクス
(生体認
証技術)
を活用するのが大きな特徴で、この技術を搭
載した機器により本人確認を行うとともに、航空会社
へのチェックイン手続き、保安検査、出国審査といった
各種手続き個所を統合・集約するものである。NAA
は、SPTの効果的な導入および普及促進を図るため、
国土交通省、法務省、航空会社、ITベンダーと協力し
て、2002年度から4度の実証実験を行った。当初は、
航空会社へのチェックイン手続きと保安検査を対象と
していたが、のちに出国審査へも対象を広げ、バイオメ
トリクスの技術的な評価や運用上の問題点の洗い出
し等を行った。
e-タグは、RFID(無線識別方式)
のタグを利用し
た、航空手荷物管理システムの実現を目指すものであ
る。現在、受託手荷物は紙に印刷したバーコードタグ
を荷物に貼って管理、仕分け処理をしているが、バー
コードはタグの汚れや折れ曲がり、手荷物への取り付
け状態、位置が一定でないこと等に起因し読み取りの
低下を招くこともしばしばあるため、荷物が行方不明に
なってしまう
(ロストバゲージ)
こともある。成田空港で
はバーコードの読取率は90%を超えているが、世界的
には70%程度といわれており、RFIDタグはこの問題
を解決することが可能となるものである。
RFIDタグは、電波によって情報を読み取るため、タ
グの曲がりや汚れに対しても強く、取り付け状態に関
わらずICチップが破損されない限り100%近く認識で
きる利点があり、バーコードと比較しても多量の情報を
素早く簡単に扱うことができるという画期的なタグであ
る。NAAは、国土交通省とともに、このRFIDタグ技術
を応用した受託手荷物ハンドリングの高度化と陸空一
貫した国際航空輸送システムの早期実現を図ることを
目指して、航空会社、宅配会社、印刷会社、
その他ITベ
ンダー等をメンバーとする
「次世代空港システム技術
図3- 4 i-Airport 概念図
■総合情報検索デジタル
サイネージ(電子看板)
■デジタルコンシェル
ジュの導入検討
◦人工知能等による音声
デジタルコンシェル
ジュの研究
わかりやすい
■スマートフォン等へのサービス強化
■多言語対応の促進
◦文字認識翻訳技術の導入検討
◦対象言語拡充検討
■館内位置情報提供サービスの高精度化
■待ち時間表示の検討
i-Airport
優しい
114
2.お客様の視点に立った空港づくり
速い
NA
第3章
(2)i-Airportの主なサービス
1)
館内ナビゲーションアプリ
「NRT_Airport Navi」
「NRT_Airport Navi」
はiPhoneとAndroidの両
端末に対応した、国内空港で初めての公式アプリケー
ションで、2012年7月にリリースした。
このアプリケーションは、フライト情報の検索、空港
内のマップや各種施設表示、空港内の店舗情報など、
お客様の知りたい情報を提供するとともに、お客様が
搭乗予定のフライトを登録することで、搭乗当日のゲー
トや時間の変更などを自動で通知する機能を備えてい
る。また、搭乗ゲートや店舗などの館内目的地までの
ナビゲーションも実装している。
AR
(Augmented Reality=拡張現実。スマートフォ
ンなどの端末のカメラを通して見える現実の環境に電
4
01
研究組合
(ASTREC)
」
を設立し、RFIDの評価・技術
的検証や、手ぶら旅行モデルの検討等さまざまな研究
や実証実験を行った。その後は、実用化に向けての成
果が得られ、当初の設立の目的を達成したとして2008
年5月に解散している。
電子マネーは、決済手段を増やすことによる利便性
向上や、財布からお金を出し入れする煩わしさがなくワ
ンタッチで手軽にお買い物をしていただけるといった利
用者側のメリット、小銭や日本円がないことによる買い
控え等のチャンスロス低減による売り上げ向上や、会
計処理時間のスピードアップといった店舗側の負担軽
減等、利用者側と店舗側双方の満足度を向上させる
効果を狙い導入した。成田空港を利用されるお客様
は、マイレージカードとして全日本空輸のAMCカード
やJAL JMBカードを所有している場合が多く、従業員
においては交通カードとしてSuicaやPASMOを利用し
ている場合が多いため、NAAではEdyとSuicaの導入
を決定し、成田空港では、2006年から両ターミナルビ
ルで順次サービスを開始した。さらに2012年からは、
利用できる電子マネーが拡大し、WAON、nanacoも
導入されている。
これらe-エアポートは、
『国主導』
による
『実験的要
素が強い』
ものだったが、これまでのe-エアポートで
実施した各種実証実験の成果を継承し、お客様の
利便性向上に重点を置いたうえでさらなる空港サー
ビス全体の向上を目指していく新たなフェーズとして、
『NAAがイニシアチブ』
をとり
『実用化させていく』
もの
である
「i-Airport」
構想を2010年に立ち上げた。この
i-Airportプロジェクトを通して、日本の空の表玄関とし
て、
「わかりやすい」
「速い」
「優しい」
のコンセプトのもと、
最先端ITによる
「いつでも、
どこでも、誰でもネットワー
クにつながる」
ユビキタスなサイバー空間を利用し、お
客様や航空会社の利便性向上、空港手続き全体の最
適化等、常に世界をリードしていく空港づくりを実現さ
せていく。
(図3-4参照)
A A IR PORT
IT
2
R
▲NRT_Airport Naviトップ画面
▲マイフライ
ト登録画面
子的な情報を付加し
て見 せる技 術 )機 能
も有しており、お客様
は、カメラ越しのルー
トガイドにより、スムー
ズに目的地に到達で
きる。位置測位には、
Wi-Fiのアクセスポイ
▲NRT_Airport Naviのアイコン
ントからの電波によっ
て位置を特定する技術を利用し、GPSの届かない館
内でも精度の高い位置情報を提供している。
館内ナビゲーションシステムの導入に先立ち、AR
技術を使用したコンテンツの提供を2011年4月に、第2
旅客ターミナルビルのナリタ5番街において
「ARスタン
プラリー」
として実施した。ARアプリをお客様がダウン
ロードし、ナリタ5番街の複数の店舗に設置されたAR
マーカー(ARアプリで読み込むためのコード)
を読み
込み、
画面上でスタンプを集めると、
最後にプレゼントが
受け取れるというもの。出発までの待ち時間を楽しく過
ごすためのツールとなり、また複数の店舗を回ってスタ
ンプを集めることから、店舗にとってもお客様の周回に
つながり、
売り上げ向上の機会が増えると好評だった。
今後は屋内位置情報の精度を高め、位置情報とAR
機能の連携や、ARでの店舗紹介などの機能追加を
検討している。
2)
多言語の音声翻訳システムアプリ
「NariTra」
日本を訪れる外国人にとって、日本で快適に旅行
を楽しむうえでネックとなる問題の1つに言葉の壁が
ある。訪日外国人旅行者への良質な案内サービスの
促進のため、成田空港では2011年12月に、iPhone、
Android向け多 言 語 音 声 翻 訳アプリケーション
「NariTra(ナリトラ)
」
を英語・中国語・韓国語・日
本語の4ヵ国語対応でリリースした。
利用者は、まず翻訳したい言語を選択し、翻訳した
い文章を音声またはテキストで入力する。アプリケー
2.お客様の視点に立った空港づくり
115
第
3章
成田空港の管理・運営
マイフライト登録
館内マップの表示
館内施設の表示
フライト検索か
ターミナル館内
らご自身 が 搭
の マップ 表 示
のレストラン、
乗されるフライ
や、ご案内カウ
ショップ、ATM、
トを選択すると、
ンター、化粧室
授乳室、AEDな
フライトまでを
などの 各 種 施
ど各 種 施 設 情
カウントダウン
設 の 位 置をご
報 の閲 覧 が可
する。また、当
確認いただくこ
能。
日、出発時刻・
とが可能。
タ ーミナ ル 内
ゲ ートの 変 更
時 は 案 内が自
動的に届く。
▲NRT_Airport Naviの主な機能
現在地情報提供およびナビゲーション
AR機能
Wi-Fiにより屋内での
ナビゲーション
おおまかな現在位置
中は、ボタンに
情報を提供する。現
よる切り替えに
在 地 から館 内目的
より、カメラ越
地まで地図上でナビ
しにA R( 拡 張
ゲーションするととも
現 実 )で 進 む
に、最寄りのインフォ
方向を示す。
メーション等各種施
設の表示も可能。
◀NRT_Airport Naviの試験的機能
ションが認識した内容およびその翻訳結果は、音声お
よび画面上に表示される。
また、
このアプリケーションの利便性が高い機能とし
て
「逆翻訳機能」
があり、
これにより翻訳結果が正しい
かどうかを確認できるようになっている。
アプリケーショ
ンのリリース後は、
音声認識の精度、
翻訳精度の高さか
らユーザーに非常に好評を得ており、
2013年8月には、
第11回産学官連携功労者表彰 ※における総務大臣賞
を受賞した。
2014年3月から従来の言語にインドネシア
語・タイ語・フランス語・スペイン語を追加し、
合計8言語
の対応に拡充した。
今後も対象言語の拡充や翻訳精度
のベースとなる辞書機能の増強等、
さらなる機能アップ
を進めていく。
このアプリケーション公開にあたっては、2010年10
月から、店舗やご案内カウンターに多言語音声翻訳シ
ステムを導入する実証実験を実施した。実証実験で
は、
成田空港で旅行者がよく使用すると想定される単語
(ターミナル内の店舗名、航空会社名、
日本の主要観光
地など)
をアプリケーションにあらかじめ登録し、本アプ
リケーションをインストールしたスマートフォンを配布。
実験中に集められた会話のログは検証し、精度の改善
を行い、
アプリのバージョンアップによりフィードバック
を実施した。
また、実際に使用したスタッフに対してアンケート調
査を行い、
翻訳精度や翻訳にかかるスピード、
使いやす
さ等について意見の収集、
整理を行った。
この実証実験
によって、本システムが言葉の壁の解消に一定の効果
をもたらすことが確認され、
2011年12月の
「NariTra」
の
リリースへとつながった。
※産学官連携功労者表彰:大学、
企業等における産学官連携活動において大きな成果を収めた
成功事例を表彰し、
産学官連携活動のさらなる推進に寄与することを目的に制定されている。
◀▼NariTraの画面ガイドとアイコン
116
2.お客様の視点に立った空港づくり
NA
4
01
フォンを持ち込んで使用するケースがほとんどである
が、
日本は無料Wi-Fiの環境整備が十分に整っていな
いエリアもあり、
観光地等でいつでもほしい情報を取得
することができない。
そこで、
「TABIMORI」
は多くの便利
な機能をオフラインで利用可能とし、気象情報等最新
の情報を更新する必要のあるコンテンツについてはク
リップ機能を利用し、
アプリからオンラインでアクセスし
た情報は自動でアプリ内にデータが保管され、
2度目以
降はインターネットに接続せずに閲覧できるようになっ
ている。
また、世界N o.1の訪日外国人向け日本情報ポータ
ルサイトといわれる japan-guide.comと相互連携をす
第3章
3)
音声エージェントアプリ
「成田コンシェル NariCo」
世界の空港で初となる音声エージェントアプリ
「成田
コンシェル NariCo powered by しゃべってコンシェル」
を2013年11月にリリースした。
「NariCo」は音声エー
ジェントサービスにおいて高い品質を誇る㈱NT Tドコ
モと共同で開発した、成田空港に特化したコンシェル
ジュアプリで、案内カウンタースタッフをモデルにした
オリジナルキャラクター
「NariCo
(ナリコ)
」
に話しかける
と、
フライト情報やショップ・レストラン情報、駐車場情
報、保安情報など、成田空港で必要な情報を音声にて
回答する。
また、空港情報のみならず渡航先の現地時
間や天気、
通貨の両替レート、
観光情報などの検索も可
能で、お客様へ幅広いご案内を行う。
また、現在、対象
端末はAndroidのみ、
対象言語は日本語のみの対応だ
が、2014年度中にiOS版および英語版のリリースも予
定している。
2 0 1 4 年 7 月からは、第 2 旅 客ターミナルビルで
NariCoの機能等を、
双方向コミュニケーション型のデジ
タルサイネージで提供する実証実験を開始した。使い
方は簡単で、設置されたデジタルサイネージの大きな
画面にタッチして話しかけることで空港内の案内をす
る。
スマートフォンやアプリを持っていないお客様にも、
NariCoの便利さを体験しi-Airportの
世界を実感していただき、今後のター
ミナルビル内でのサービス向上に努め
ていく。
A A IR PORT
IT
2
R
ることで、
最新の観光情報はTABIMORI内のjapanguide.comコーナーから同サイトにアクセスし、
クリッ
プ機能でオフラインでも情報を提供することができる。
「TABIMORI」
を通して、
訪日外国人のお客様に日
本の旅を便利かつ快適に楽しんでいただくことにより、
訪日旅客のリピーター拡大を図る。
今
後は、
対応言語の追加やコンテンツの
拡充等、
さらなるサービス向上に努め
ていく。
「旅守り:TABIMORI-Travel Amulet-」
の画面とアイコン▼▶
「成田コンシェル NariCo」
の画面とアイコン▼▶
4)
訪日外国人旅客向けおもてなしアプリ
「旅守り:TABIMORI-Travel Amulet-」
急増する訪日外国人向けのおもてなしアプリ
「旅守
り:TABIMORI-Travel Amulet-」
を2014年7月にリリー
スした。
訪日外国人旅客のニーズに合わせた、交通・乗
り換え案内、
日本独特のルールやマナーなど生活・文
化情報、
日本の代表的な料理の紹介、観光情報、気象
情報、
さまざまなシチュエーションに対応したフレーズ
ブック、通貨換算機能、万が一の災害時お役立ち情報
など多彩なコンテンツを揃えている。
これは、成田空港
が制作した既存のポータルサイト
「TABIMORI」
の内容
を大幅に拡充させ、
かつオフラインでも使用可能なアプ
リとして開発したものである。
訪日外国人のお客様は日本滞在中、
自身のスマート
5)
タブレット端末によるお客様への案内
2012年6月から、
旅客ターミナルビル内の巡回案内
スタッフが、
タブレット端末を用いたお客様案内を開始
した。
案内スタッフがiPadを持って巡回し、
サービスを
提供している。
通常のインフォメーションデスクで使用している案内
システムをタブレット端末からでも活用できるようにし
たことで、
その場で、
最新のフライト情報や遺失物の情
報等をお客様に迅速に伝えることが可能になっている。
▼巡回案内スタッフがiPadでお客様に直接情報を提供
2.お客様の視点に立った空港づくり
117
第
3章
成田空港の管理・運営
また、
空港内の店舗、
サービス施設等について、
お問い
合わせを受けたその場で写真や地図を用いて分かりや
すくご案内が可能となっていることから、
さらなるCS向
上に役立っている。
6)
テレビ電話による案内・多言語対応
前述の多言語音声翻訳サービスと同様に、
外国人
のお客様にとっての言語面での負担を軽減し、
より快
適な空港サービスを提供するため、
空港内の案内サー
ビスにテレビ電話機能を搭載したディスプレイ型端末
を導入し、
多言語対応が可能なオペレーターによる案
内を行う
「テレビ電話によるご案内サービス」
を2012年
4月から提供している。
このテレビ電話は、
第1・第2旅客ターミナルビルの全
ご案内カウンターに設置され、
日本語・英語・中国語・
韓国語に対応している。
テレビ電話機能を通して、
お客
様はオペレーターと会話ができるほか、
画面上で地図
データなどを表示したり、
文字を書くこともできるため、
対面式と同等の状況での案内が可能となっている。
▲案内カウンターに設置されているテレビ電話
❺ お客様に「あんしん・快適」を提供
(1)顧客満足度No.1のエアポートに
お客様の
「利便性」
の向上と並んで成田空港が進
化・発展を期しているのは、お客様への
「あんしん・快
適」
の提供。
「より速く、より優しく、より楽しく」
をテーマ
▼旅行者が無料で無線LANを利用できる
「Free Wi-Fi Desk」
に、CS(顧客満足度)
向上のための全社的な取り組
みを強めている。
1)
無料無線LANサービス
空港を利用するお客様が必要とするサービスの1つ
として、無線LANによるインターネット接続が挙げら
れる。PCやタブレット型PC、スマートフォンなど、無線
LANに接続可能な端末を携帯するお客様が多いこと
から、空港内の待ち時間などに自分の端末から無線
LANを利用してインターネットを使用する例が頻繁に
見られる。
成田空港では、ターミナル内のほぼ全域において
ローミング無線LANサービスが利用可能となるよう整
備されているが、お客様からは無料で利用できる無線
LANサービスの提供を希望する意見が多く寄せられ
ていた。
そこで成田空港では、
無料で無線LANが利用できる
スポットとして、2010年6月に第2旅客ターミナルビル
をオープンさせた
の制限エリアに
「Broadband CAFÉ」
(2014年3月31日閉鎖)
。同年7月には第1旅客ターミ
ナルビルの制限エリア内5ヵ所に
「Free Wi-Fi Desk」
を設置し、
お客様が無料で無線LANを利用できるサー
ビスを導入した。2013年4月以降は、サービスエリア
の大幅拡大により、第1・第2旅客ターミナルビルのほ
ぼ全域で無料Wi-Fiサービスが利用可能になった。
2)
店舗スタッフ用
「外国語話せますバッジ」
成田空港と成田国際空港テナント連絡協議会は
共同企画として、空港内の全店舗が共通で使用できる
「外国語話せますバッジ」
を作成し、2012年4月から
店舗スタッフが着用を始めた。
この企画は、店舗スタッフで外国語
(英語以外)
の接
客ができるスタッフが何人いるか、
その外国語を話せる
ことがお客様に一目で分かるようなバッジを着けてい
るか、などの調査を行った結果を受け、実施されること
になった。調査の結果、外国語が話せるスタッフは約
400人で、一方、バッジ着用者はその30%程度にとどま
ることが分かった。また、着用されているバッジは、各
▼14種類がそろう
「外国語話せますバッジ」
118
2.お客様の視点に立った空港づくり
NA
店舗が独自に用意したものであり、
デザインや形状も多
種多様であることが分かった。
そこで、国際空港として、外国のお客様に安心してよ
り多くの店をご利用いただき、成田空港でのひとときを
楽しく過ごしていただくために、空港内の店舗が店舗間
の垣根を越えて協力することにしたもの。統一規格の
バッジを着用することにより、接客サービスの向上につ
なげる。
「外国語話せますバッジ」
は全部で14種類。1ヵ国
語用が10種類
(中国語・韓国語・スペイン語・フィリ
ピン語・タイ語・フランス語・イタリア語・ポルトガル
語・ロシア語・マレーシア語)
、2ヵ国語用が1種類
(中
国語・韓国語)
、3ヵ国語用が2種類
(中国語・韓国語・
ロシア語とスペイン語・フランス語・スウェーデン語)
、
言語の表示がないバッジ1種類
(新しい言語を話すス
タッフが増えた場合に使用)
となっている。
階から出発ロビーまでノンストップで往来するエレベー
ターの運行を開始※。併せて、第2旅客ターミナルビル
の上りエスカレーターの高速化を図ったことで、電車で
の到着後、
出発ロビーまでの移動時間が短縮された。
3)
「バゲージラッピングサービス」
を開始
2012年5月31日から、
第1旅客ターミナルビル南ウイ
ング4階出発ロビーで、国内空港では初めてとなる
「バ
ゲージラッピングサービス」
を有料にて開始した。
これは、機内受託手荷物の破損や盗難防止のため
に、チェックイン前のスーツケースやゴルフバッグなど
の手荷物をラッピングするサービス。ヨーロッパやア
ジアの空港ではすでに導入され、大切な荷物や新品の
スーツケースに傷をつけたくないという、旅行者のニー
ズに応えている。
なお、
同年10月15日から第2旅客ターミナルビル3階
出発ロビーでも同サービスを開始している。
5)
「空港案内ボランティア」
の活躍
2010年7月17日から、第1・第2旅客ターミナルビル
の各所でボランティアによる案内サービスが開始され
た。学生や一般の方の中から募って
「成田空港案内
ボランティア」
を組織し、お客様がよりスムーズにターミ
ナルビル内を移動できるよう、また到着の外国人のお
客様がスムーズに日本各地に向かうことができるよう、
“人によるサービス”の充実を目的としたものである。
2011年秋以降は、夏期・年末年始・ゴールデン
ウィークの繁忙期に加え、
これらの期間以外の金・土・
日曜日に活動を行っている。
4
01
A A IR PORT
IT
2
R
※ 現在ノンストップエレベーターは第1旅客ターミナルビルのみ運行。
第3章
▲分かりやすい案内表示で、
空港内の移動もよりスムーズに
▲学生や一般の方により組織された
「成田空港案内ボランティア」
メンバー
▲お客様の大切な荷物を守る
「バゲージラッピングサービス」
4)
空港内でのスムーズな移動のために
広い空港内では、目的の場所までスムーズに移動で
きることが大切だ。成田空港では2010年7月から、第
1・第2旅客ターミナルビル鉄道駅階の床や壁面に新
たに案内表示を追加。出発ロビーまでの移動ルートを
より分かりやすくし、お客様が案内表示に従って歩くこ
とにより、迷うことなくスムーズに移動できるようになっ
た。
また、
同じく2010年7月から、空港内での移動時間の
短縮を図るため、第1・第2旅客ターミナルビル鉄道駅
❻ デジタルサイネージの導入
成田空港は従来から、スタッフによるご案内や各種
案内表示の充実を図ってきたが、それらに加え、情報
発信をタイムリーに行える新しいツールとして、国内最
大規模のデジタルサイネージ
「SKY GATE VISION」
を導入した。
2012年3月から第1・第2旅客ターミナルビルの店
舗エリアに設置したのを皮切りに、6月には出発階に大
型ディスプレイを設置するなど本格的な運用が始まっ
た。両ターミナルビルで合計100台、336面が稼働し、
多様なコンテンツでお客様の目を楽しませている。
2.お客様の視点に立った空港づくり
119
第
3章
成田空港の管理・運営
増を目指し、配置展開および表示内容については、次
の5つの点を基本コンセプトとした。
基本コンセプト
▶適所で分かりやすい情報提供
▶店舗販売促進情報の充実
▶待ち時間を楽しく過ごしていただくための娯楽
▲出国審査場入口に設置された大型ディスプレイ
1)
SKY GATE VISIONの特色
●適所でタイムリーに情報発信
デジタルサイネージ
(Digital Signage=電子看板)
は、情報メディアさらには広告ツールとして注目されて
いる。最近は街頭、公共施設、交通機関の車内、
ショッ
ピングモールなどで目にする機会が多い。ネットワーク
や無線LANと接続することで、配信コンテンツを時間・
場所・視聴者に応じて簡単かつスピーディに変えられ
るのが特徴で、
設置する場所などの特性に合った、
ター
ゲットを絞り込んだ効果的な情報発信ができる。また、
配信コンテンツをエリアごと
に変えることができ、その更新
も迅速に行えることから、最
新情報を最適な場所でタイム
リーに発信するだけでなく、緊
急時にさまざまな言語で情報
を伝達することもできる。
▶店舗エリアの入口に設置された
端末では販売促進情報を表示
▼店舗エリア内ではより具体的な情報を表示
2)
SKY GATE VISION導入の狙い
●旅の雰囲気づくりにも寄与
成田空港では、
こうしたデジタルサイネージの利点に
いち早く着目し、
導入を決めた。
特に空港という場所は、旅への高揚感と不安とが同
居する特別な空間であり、
お客様に快適に楽しく成田空
港を利用していただくためには、
施設を分かりやすく案内
すること、
あらゆる情報を適所で伝えていくこと、
そして旅
の雰囲気を醸成していくことを重要なテーマと考えた。
お客様の満足度を向上させることはもちろんのこと、
成田空港のブランド力向上、さらには広告による収入
120
2.お客様の視点に立った空港づくり
の充実
▶空間演出による雰囲気の向上
▶広告としての価値創出
3)
SKY GATE VISIONの展開
●迫力の超大型ディスプレイ
ディスプレイの大きさやデザイン、設置場所などの具
体的な展開計画は、デジタルサイネージ推進室を中心
として入念に行った
(2012年10月1日からは旅客ター
ミナル部に業務移管)
。
まずデザイン面では、
ディスプレイのデザインイメージ
を統一することで、空港のシンボルとして印象づけること
とした。そして、シンプルな中に伝統と先進性を調和さ
せた
「和モダン」
のテイストを取り入れ、日本の表玄関に
ふさわしいイメージを演出した。ユニバーサルデザイン
や人間工学に基づき、
色覚障害者にも配慮している。
設置は2012年3月に店舗エリアからスタート。6月
には第1旅客ターミナルビル出発ロビーに世界初の有
機ELパノラマビジョン
(表示面の大きさ:幅9600㎜、
高さ1920㎜)
、第2旅客ターミナルビル出発ロビーには
国内最大級の27面マルチディスプレイ
(表示面の大き
さ:幅9249㎜、
高さ1743㎜)
を設置した。
デジタルサイネージの設置に関しては、
場所ごとに大
きさや形態を変えて、それぞれの用途に見合う特色を
持たせた。例えば、出発フロア、保安検査場前に大型
端末を設置する一方で、ターミナルのエントランス付近
にはお客様の目に必ずとまるよう多数の縦型端末を設
置した。
4)
設置場所ごとに創意と工夫
●表示コンテンツの充実
デジタルサイネージの導入にあたっては、展開計画
とともに表示するコンテンツに力を入れている。空港か
らの告知や空港内でのイベントのお知らせなど、タイム
リーな情報を分かりやすく提供している。
また、旅の雰囲気を醸成するため、空間を演出する
魅力あるコンテンツも多数用意している。美しい日本
の四季や風景、文化、芸術を題材にした成田空港でし
か見ることのできないオリジナルコンテンツで日本の美
しさや素晴らしさを発信している。
2013年4月には、画面上部に設置したセンサーで人
NA
<出発フロア>
第1旅客ターミナルビル南ウイングに設けられた、世
界初の有機EL方式パノラマビジョンは、液晶やプラズ
マディスプレイに比べて高輝度で高コントラストな映像
を表示でき、
目地のない滑らかな曲線が特徴。
第2旅客ターミナルビルの保安検査場前に設置され
た27面マルチビジョンは、46インチモニターを横9台
×縦3台並べた大迫力の画面。
「送る門」
と位置づけられた出発フロアの大画面で、
これから世界へ旅立つ人々、日本から母国へ帰る人々
をお送りする。また、待ち時間を過ごす人たちを飽きさ
せない魅力あるコンテンツを配信している。
<ターミナルエントランス>
鉄道やバス、駐車場から出発ロビーに続く動線上の
各エントランス付近に網羅的に縦型端末を設置。保
安情報や最新情報などお客様に確実に伝えたい情報
を配信している。
第3章
▲曲面を描く有機ELパノラマビジョン。画面はデジタルサイネージアワードを受賞した
「世界はこんなにもやさしく、
うつくしい」
4
01
の動きを感知し、画面が変化していくお客様参加型の
コンテンツも導入。コンテンツは日本の最新デジタル
アート作品でもあり、デジタルサイネージアワード※を受
賞するなど評価を得ており、成田空港を訪れた方に楽
しんでいただいている。
このように、成田空港では大型ディスプレイやパノラ
マビジョンならではのダイナミックな映像、マルチ画面
を活用した斬新で多彩な映像などコンテンツの充実に
より、広告メディアとしてのデジタルサイネージの可能
性をさらに広げていく。
A A IR PORT
IT
2
R
<到着フロア>
日本の玄関として海外からのお客様を出迎える到着
フロアは、四季折々の日本の美しさでお客様をおもてな
しする。最新の国内ニュースや天気予報なども分かり
やすく伝えている。
<店舗エリア>
店舗エリアは、多彩なレストラン、ショップが集まる
「門前市」
に見立て、店舗一覧の表示を見やすく設置
するとともに、検索型端末を利用して各店舗の情報が
容易に入手できるようになっている。
成田空港は今後も、
デジタルサイネージを用いて、エ
リアに合わせた最新の空港ニュースや娯楽コンテンツ
などをタイムリーに発信し、お客様サービスの向上、さ
らには空港全体のブランド力向上に努める方針。また、
サイネージを企業広告の場として活用いただくことで、
広告事業の拡大も図っていく。
※公募した国内の作品の中から優秀なものを選出、表彰することでデジタルサイネージ
市場のさらなる活性化を目指して制定された。
主催:デジタルサイネージコンソーシアム
後援:経済産業省/総務省/デジタルコンテンツ協会/デジタルメディア協会
3 世界の空港の一員として
❶ ACI、EAAA 等の活動
1)
ACI
(国際空港評議会)
ACI(Airports Council International「国際空
港評議会」
)
は、世界の空港や空港ビルの管理者また
は所有者を会員とする国際機関である。
ACIの使命は、会員相互の協力はもとより、各空港に
共通の利益について意見を取り交わし、統一的な見解
としてとりまとめ、ICAO(国際民間航空機関)
やIATA
(国際航空運送協会)
等の国際的な航空関係機関に
表明および提唱をし、安全で環境に調和した航空輸送
体制を確立することである。ACIは、本部をカナダのモ
ントリオール
(2011年にスイス・ジュネーブより移転)
に置き、ICAOやIATAとともに世界の航空運送を支え
る3本柱の1つとなっている。
【ACIの概要】
ACIは、1991年にそれまで北米の空港を中心に組織されて
いたAOCI(Airport Operators Council International)
と、
欧
州の空港を中心に組織されていた国際民間空港協会
(ICAA:
International Civil Airports Association)
が統合して設立さ
れた。NAAは、1970年に前身のICAAに加盟、現在ACIの
アジア太平洋地域部会に所属して活動を行っている。
ACIの会員数は591であり、会員の運営する空港は世界
177の国と地域、1861空港
(2014年1月現在)
に達している。
ACIは世界を5つの地域
(アジア太平洋、北米、欧州、南米、ア
フリカ)
に分けて活動しており、NAAが所属するアジア太平洋
地域には、
環太平洋地域、
ハワイなどの島々、
オセアニア、
東南
アジア、
西アジア、
中東地域が含まれ、
会員数は99、48の国と
地域、590空港
(2014年8月現在)
で構成される。
2.お客様の視点に立った空港づくり 3.世界の空港の一員として
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