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公開資料
社会技術研究システム・公募型プログラム 研究領域「社会システム/社会技術論」 研究課題 「地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ」 研究実施終了報告書 研究期間
平成14年1月~平成16年12月
竹内 啓 (明治学院大学・教授) 【160401】
1.研究テーマ
(1)研究領域
:
社会システム/社会技術論
(2)研究総括
:
村上
陽一郎
(3)研究代表者
:
竹内
啓
(4)研究課題名
:
地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ
Socio-Technological Approach to Global Warming
(5)研究期間
:
平成14年1月~平成16年12月
2.研究実施の概要
2.1 研究の目的
社会技術とは、特定の技術の集合を表す概念ではなく、社会が直面する課題を解決するための技術、
およびそれを総合的、体系的に利用するメタ技術を意味すると考える。重要な社会的課題は、ほとんど
常に複雑な因果関係、自然的要因と社会的要因の相互関係、多様な利害関係や理念の対立などによって
規定され、またそこにはいろいろな形での不確定要素が含まれる。従ってそれに対応するには、多目的
で多様なアプローチが必要であり、同時にそれらを総合するビジョンが求められる。社会技術はこのよ
うな前提に立ち、単一の理念に基づいて、社会を合理的に動かそうとする「社会計画」や、現在の社会
秩序を前提として改善を目指す「社会工学」とは異なるアプローチを取ろうとするものである。
地球温暖化問題は、このような社会技術的アプローチを必要とする典型的な課題である。この問題に
おいては、次のことが考えられる。
1. CO2排出 ―→ 大気中のCO2濃度上昇 ―→ 気温上昇 ―→ 自然的影響 ―→ 社会的影響、
の因果連鎖のそれぞれの段階が、また複雑な関係と多くの不確実性を含んでいる。
2. 人々に対する影響も、地域間、世代間で異なり、一部温暖化によって利益を受ける人々もある。
3. CO2排出の行為とその昀終結果としての温暖化によって起こる社会的影響の間には、個々の対応関
係は全く存在しない。
他方自然現象は多岐にわたり、これが地球温暖化の原因であると明白に言及することは困難である。
そこには複雑な因果関係、自然的要因と社会的要因の相互関係、多様な利害関係や理念の対立などによ
って規定され、またいろいろな形での不確定要素が含まれる。
CO2 ガス排出のもたらす温暖化問題については、主に次の論理的段階が考えられる。
化石燃料による CO2 ガス排出―→大気中の CO2 ガス濃度上昇―→大気温度の上昇―→気
候、気象の変化―→生態系への影響、海面上昇―→人間生活、社会活動への影響
であるが、それぞれの段階にはまたいろいろな段階や筋道が考えられる。
ここから次の考慮すべき問題点が見えてくる。
① CO2 抑止によるいわば温暖化「予防策」
② 温暖化を「防止する対策」
③ 温暖化が起こった場合に、それに「対応する方策」
④ 温暖化に「適応する方策」
これらを総合的に考察することがこの研究の主要な課題である。
2.2 研究の方針
この研究の趣旨は「地球温暖化問題」に対して社会技術として、どのように対処すべきかを考えるこ
とであった。
化石燃料消費による CO2 ガスの放出によって、大気中の CO2 濃度の上昇、そして地表気温の上昇がも
たらされることについては、原理的には 19 世紀中までに明らかにされていたことであるが、それが現
実の脅威として論ぜられるようになったのは 20 世紀 1980 年代以後である。この問題を議論するための
国際的組織が作られ、また温暖化防止のための CO2 排出抑制を目的とする国際会議も開かれるようにな
った。しかし化石燃料の消費から、温暖化によって被害が生ずるまでの間に、多数の段階が含まれてお
り、その中には極めて多くの、そうしてそこには多くの未解明な部分、不確実な要素を含む、自然的・
社会的因果関係が含まれている。また気候変動の結果についても、それがすべての人、すべての場所に
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災厄をもたらすとは限らず、利益をもたらす場合も考えられるし、また災害が起こるとしても、その被
害は一様でない。このような状況の下で、CO2 排出と温暖化による被害との間に、あたかも直線的な因
果関係が存在するかのように想定して、CO2 排出抑制のみを目的とし、そのための方策のみを論ずるこ
とは、社会技術の観点から見て基本的に誤りであるといわざるを得ない。
特に問題を化石燃料消費削減のため経済成長の抑制と、温暖化による被害との間の「トレードオフ」
として捉え、そうして化石燃料消費削減の負担をどのように配分すべきかという形で論ずることは重大
な誤りである。
第一に一般的に地球上の自然(資源、環境)の有限性による制約と、経済発展の要請との「ジレンマ」
は、常に人間社会につきまとうものであるが、それを打破することこそが技術発展の道であったのであ
り、温暖化の問題についても、主要な努力は上記のような「トレードオフ」を解消する方向に向けられ
なければならないのである。従って目標は経済成長の抑制による CO2 排出量の削減ではなく広い意味の
エネルギー技術の向上によるエネルギー消費、化石燃料利用の効率化でなければならない。
第二に現実に温暖化に彫る善悪両面の影響が極めて不均一に生ずる一方、化石燃料消費は現在では殆
どすべての国、地方、産業の活動と結びついていることは明らかである以上、温暖化防止のために「経
済成長を犠牲にする」負担をどのように配分するかについての合意を得ることは極めて困難であり、参
加者が「合理的エゴイスト」であることを前提とする、国際的パワーポリティクスや、グローバルな市
場競争のゲームの論理では、全く解決不可能であることは、殆ど自明である。
第三に、そもそも「気候変動」はたとえ人為的な介入がなくても、絶えず起こっているものであり、
その中には人間にとって好都合なものも大きな災厄をもたらすものもある。人為的な影響にしても好ま
しいものも、そうでないものもある。他方人間はまた気候変動に対して高度の適応力を持っているので
あり、そのことは現在極めて幅の広い範囲に渡る気候の中に人間社会が成立していることから明らかで
ある。従ってたとえ温暖化が生じても 30℃も気温が上がるような極端なものでない限り、それに対して
適応することは可能なはずである。しかし適応には時間とコストがかかり、またそのための組織も必要
であるから、
「温暖化への適応」を社会的な課題として取り上げなければならない。
このような基本的な観点から私達は、まず温暖化問題にかかわる諸分野、諸レベルでの問題とそれに
関する現在得られている知見とを凝視すると共に、研究分担者の専門領域に属するいくつかの問題につ
いては、ここの具体的なテーマについて研究を進めることとした。現在の研究の達成成果を凝視するた
めには、それぞれの分野の専門家を招き、全員で論議を開くとともに討論を行った。またそれぞれの具
体的な研究の結果についても、全員参加の研究会での報告、討論会を開催した。
われわれの基本的な考え方は次のようなものである。
1. 温暖化をなるべく小さくするような方策を考えると同時に、温暖化、或いは少なくとも気候変動
は必ず起こることを前提として、それに対する対応を考えること。
2. 起こりえるべき気候変動については、その正確な予測は不可能であることを前提として、起こる
いろいろな可能性を考え、それに対する対応を考えること。その場合気候変動について首尾一貫
した「シナリオ」を考えるように、互いに矛盾した、しかしそれの十分な可能性(確率)のある
事象を考慮すること。
3. 温暖化の影響については、それぞれの地域について具体的に考察すること。特に気温、降水量等
の変化について、地球全体のトレンドと乖離する場合、或いはそれが増幅される可能性について
考慮すること。
4. 気候変動の具体的な様相とその影響については、コンピュータモデルによるシミュレーションに
のみ頼らず、むしろ過去の観測データの詳細な検討を行うこと。特に日本を中心に考察すること。
5. 対策を考慮する場合の前提として、技術の発展と、社会の変化が、気候変動以上に大きな不確実
性を含み、予測困難であることを考慮すること。20 世紀の 100 年間の科学技術の進歩発展と、世
界全体に及ぶ社会変化の歴史を顧みれば、21 世紀末までに 100 年間を予測するような試みが、全
く無謀であることは明らかである。このことは 100 年にわたる温暖化防止のための、「超長期的
シナリオ」そのものが殆ど無意味であることを表している。
6. このことは科学技術の進歩が、いわば「機械仕掛けの神」として、ある将来の時期に温暖化問題
を一挙に解決するであろうなどと位置することができるという意味ではない。しかし例えば核融
合エネルギーの全面的な利用が可能になったとすれば、化石燃料消費抑制の問題は完全に解決す
るはずである。勿論その場合にも熱汚染の問題などが新たに重大になるかもしれないが、問題の
様相が全面的に変化することは確実である。科学技術の進歩が問題を自動的に解決すると考える
の誤りであるが、それが全く現在の水準にとどまっているとして、問題を考えることは逆に非現
実的である。科学技術発展の方向とその可能性について、できる限り探ることが必要である。同
時にそれはまた政府の政策や、企業などの行動によっても大きく左右されることに注目しなけれ
ばならない。
【160401】
7. CO2 排出に対する温暖化の影響が、100 年或いはそれ以上にも及ぶ超長期的な現象であることは
確定であるが、それゆえ問題に対応する 100 年、200 年に及ぶ「超長期的シナリオ」を考えなけ
ればならないとするのは誤りである。それはたとえ自然科学的予測は正確であったとしても、社
会的に全く空想的なものとなってしまうからである。対策の現実的な「シナリオ」は、50 年を越
えるタイムスパンを持つことは不可能であり、従って完結しない open ended なものとならざるを
得ない。
8. そこで昀も重要な目標はエネルギー消費効率の向上でなければならない。そのために多方面にわ
たる技術開発と共に、エネルギーの無駄な消費を伴わないように社会システムを構築することが
必要である。エネルギー消費の効率化は、温暖化の予測がどのようなものとなっても、資源・環
境保全のすべての面で望ましいことは明らかである。またこの国のオイル・ショックの例が示す
ように、省エネルギー技術の開発・普及にはエネルギー価格の上昇という経済インセンティブが
大きな効果を持つことに注意すべきである。このことは「エネルギー税」や「炭素税」が有効で
あることを示唆している。しかしそれが効果を持つためには一定以上の高さを持たなければなら
ないと同時に、短期的に経済成長抑制の「デフレーション効果」を持つことは避けなければなら
ない。従ってそれは税体系全体の中で考えることが必要である。
9. われわれの考える対策は、エネルギー消費効率の向上、新エネルギー技術の開発による CO2 排出
の抑制から、大気中の CO2 回収技術の開発、地球の「冷却」のための方策(火山の噴火の影響や
「核の冬」の可能性を考えれば、それは必ずしも荒唐無稽ではない)。更に温暖化に適応するた
めの効率よい冷房システム、保健及び農業等の産業上の対策、海面上昇に対応する土木工事的対
策、或いは予想外の急激な海面上昇、強烈な異常気象に対する緊急対策など、色々な局面でそれ
ぞれ具体的な形で考えられねばならない。それは決して全体として整合的な「シナリオ」を前提
として構想されるものではないが、しかしまた相互に矛盾しないという意味では整合的で、総合
的にバランスの取れたものとなっていなければならない。
2.3 研究の結論
我々の研究の結果の主要な結論は次のような点である。
1. CO2 排出の累積による大気中の CO2 濃度の上昇、その結果としての温暖化についてのコンピュー
タモデルによる予測は、コンピュータの大型化、モデルの精密化によって、精度は上がったとい
えるが、モデルを大型化し、精度化すれば、それだけ不確実なパラメータを増加するので、結果
の不確実性は必ずしも減少しない。従ってそのような予測の信頼性は、いつどこで気温がどれだ
け上昇するかとあてるという意味では必ずしも向上してはいない。しかしそれはある一定の幅を
持った将来において、どのようなことが起こる可能性があるかを示すものとしては、十分有効で
ありそれは十分行動の指針を与え得るものである。簡単にいえば、もし CO2 の排出量が著しく減
ることがないならば、地球上の平均気温が 5℃上昇する可能性は十分高いといえる。
2. しかしそれによって人間社会はどれだけの影響が生ずるかについての予測は、正確性は決めて乏
しい。それは長期的な変化だけでなく短期的な変動、或いは「異常気象」を含めて、各地に具体
的にどのような気候や気象が生ずるかを予測することは極めて困難であり、更にそれに対する人
間社会の反応を予測することは更に一層困難だからである。
3. 従ってエネルギー消費の効率化、CO2 排出量の削減に努力することは望ましいことであるが、それ
は地球環境に対する人為的圧力をできる限り小さくするという一般的象徴的意味においてであっ
て、温暖化を防止する一定の効果を持つものとしてではないと考えるべきである。
4. CO2 排出量を削減するための新エネルギー技術の開発はより一層推進されるべきであるが、化石燃
料をそれによって完全に置き換えることはできないであろう。核融合技術が実用化されない限り、
原子力についても同じである。従って近い将来において大気中の CO2 濃度の上昇を止めるところ
まで CO2 排出量を減らすことは不可能である。
5. 大気中の CO2 ガスの回収については、炉や機関の排気口から直接回収することは、可能性がある
と思われる。
6. 現実的には少なくとも今後 50 年間は温暖化が進むことは避けられないものとしなければならない。
その場合太陽光の一部を遮断することによって「地球を冷やす」こと、特に微粒子を成層圏に打
ち上げ撒布することによって地上に達する太陽光エネルギーを十分減少させることは技術的に不
可能ではないと思われる。
7. 過去の気象データは、日本において過去 100 年間に平均気温が全体としてほぼ 1℃上昇したことを
示している。特に東京では気温が絶えず上昇を続けて 3℃も上昇しているが、これはヒートアイラ
ンド現象によるところが大きい。大都市のヒートアイランド現象を防ぐ方策は今後真剣に考慮さ
れなければならない。
【160401】
8. 全般的な温暖化と共に、「異常気象」すなわち「猛暑」「暴風」或いは「渇水」逆に「豪雨」など
の頻度と強度が増しているという観測もある。その統計的優位性はまだ明確でないが、今後「異
常気象」の発生を予想しそれに対する対策を立てる必要がある。特に効率的な冷房システムの開
発と普及が重要である。
9. 温度上昇と共に懸念される海面上昇については、海水温度の上昇による緩慢な海水膨張によるも
のに対しては、十分な対策、すなわち堤防の建設、或いは浸水地域からの撤退を実施することは
可能である。南極やグリーンランドの氷床の融解によって生ずる急速な海面上昇ははるかに危険
であり、その水位を早期に察知しなければならない。
10. 農業或いは食糧生産に対する温暖化の影響は、それがあまり急速でなく、また「異常気象」を伴
うならば、必ずしも悪いとはいえないであろう。勿論気候変動に対応するためには、栽培作物や
品種の転換が必要であるが、ある程度の時間があればそれは可能である。
11. 観光などを含むその他の産業については、気候変動に対して市場経済の論理によって対応するこ
とが可能であろう。
12. 人々の健康に及ぼす温暖化の影響については、熱帯では悪影響が懸念されるが、その他熱帯病(マ
ラリアなど)の蔓延が問題となろう。この点での対策は十分考慮されなければならないが、現在
すでに健康に悪影響を及ぼす高温、或いは高温多湿の条件のもとで、熱帯病の危険の高い地域に
多数の開発途上国の人々が住んでいること、そうしてそれに対する対策が不十分であることを考
えるとその緊急性は明らかである。
13. 気候変動に対処する対策を総合的に企画するため、環境省にとどまらずすべての省庁を含めた政
府内の高いレベルでの気候変動対策本部のような機構を作る必要がある。また国際的にも CO2 排
出量の削減にとどまらない気候変動対策のための協力組織を作るべきである。
3.研究構想
3.1 研究に当たって
この問題に関心を持つ自然科学、社会科学の研究者で、比較的少数の研究チームを作り、密接な意見
交換により、基本的観点を統一した上で、それぞれの分野については各自研究を進めるとともに、チー
ムのメンバーではカバーできない領域については、それぞれの専門化を招いて講義を開き、討論を行っ
て理解を深めることとした。
この問題に関連する分野は極めて多方面にわたり、文献も膨大であるから、それらをすべて概観する
ことは不可能である。従って目的は「社会技術」の観点から、問題をどのように捉えどのようにアプロ
ーチすべきであるか明らかにするとともに、その具体的な例示としてメンバーの専門に属する研究を提
示することと考えた。
全般的な研究結果については別途記述するが社会技術の観点からはわれわれ自身の研究成果に限ら
ず現在この問題に関して得られている情報、知識、さらにそれに関する基本的な考え方について、一般
の人々および政府や民間の意思決定に関わる人々の理解を得ることが重要である。
3.2 研究へのアプローチ
1) 本研究チームは、地球科学、農学、医学、工学、経済学、環境科学など地球温暖化に関わりある諸
分野の研究者から構成され、それぞれが自らの分野における知見を報告して全員で討論し、考えを
深める。
2) それぞれはまた自ら特定の課題について研究を進めるとともに、必要に応じて専門研究者の協力を
得て、自らの分野にかかわる現在の研究の状況を調査し、サーベイを行い、報告する。
3) 昀後に研究成果を総括し、具体的な政策提言を行うとともに、成果を公刊する。
4) 研究の過程で随時、研究会、国際コンファレンス、公開シンポジウム等を開催する。
3.3 方法
地球温暖化に対する対応を社会技術の観点から考察する際の重要な要素は、1)因果関係の複雑性、2)
影響の長期性および多様性、3)それによって生ずる利害関係の多面性,複雑性、である。これに対応す
る対策も、いくつかのレベルにわたり、かつ多面的なものでなければならない。温暖化ガスの排出抑制
はもちろん必要であるが、それとともに、或いはそれ以上に温暖化や気候変動を前提にした対応策を考
え,そのための技術を開発する必要がある。温暖化の影響は、場所によって異なり、また短期的な影響
と長期的な効果とは区別して考えなければならないから、対策は多面的にいろいろな形のものを、それ
ぞれの状況に即して具体的に考えねばならない。
われわれは、温暖化の具体的な影響、それによって生ずる問題、それに対応するための技術的課題に
【160401】
ついて農場実験、モデリング、コンピュータシュミレーション、現地調査、等々の方法を用いて検討し
てきた。またこれらの研究をレビューし、正確な事実認識を確立する。
温暖化については、その因果関係は複雑であり、不確定性が大きい。また CO2 排出とその結果として
の気温上昇、そして気候変動による人間生活への影響の間には、時間的にも空間的にも極めて大きな距
離がある。また温暖化の影響は極めて多様であり、その中には
1.不可避的に災厄をもたらすもの
2.適切な対策を取れば災厄を避けられるもの
3.対応次第で利益を得ることができるもの
がある。したがって CO2 排出と温暖化の関係を同一の尺度で費用と効果の関係を分析するようなコスト
ベネフィット・リスクアナリシスに載せることは極めて困難である。
温暖化は一方では、すでに現実化しつつあり、他方今後の CO2 排出の影響は 100 年後になって顕在
化する面もある。これに対して超長期的な CO2 排出抑制による温暖化防止計画を考えることは非現実的
である。長期的に温暖化をできるだけ防ぐことは望ましいが、しかしいろいろな形の気候変動が起こる
ことは避けられない。したがって温暖化あるいは気候変動が起こることを前提として、その対策も考え
なければならない。
この問題に対しては、1.温暖化防止、2.温暖化対策、さらに 3.気候変動を積極的に利用する温暖
化適応、を考えなければならない。それらを総合的に考えることを「温暖化対応」と呼ぶことにする。
具体的には次の 3 つの方策を検討してきた。
1. 温暖化防止策
a) CO2 排出抑制
直接抑制としての経済活動抑制――実際には非現実的である
b) エネルギー消費効率の向上、すなわち単位 GDP 当たりのエネルギー消費量の切下げ
――これはすべての観点から望ましいが、それがどの程度まで可能であるかを数量的
に予測することは難しい。
c) 単位エネルギー消費当たりの CO2 排出量の引下げ
――この観点から原子力を推進することは問題がある。いわゆるクリーンエネルギー
についても、無条件に望ましいとは限らない。
d) 大気中の CO2 排出回収
物理化学的方法――特殊な場以外では困難である
有機的生物的方法――植物の炭素同化作用を促進する方法
e) 地球大気の冷却
――これは必ずしも非現実的とはいえない。火山の大噴火が世界的な寒暖化をもたらし
たと同様に適当な物質を打ち上げて太陽光の一部をさえぎることによって気温を
下げることは不可能ではない。ただしその結果を十分成業することはこんなである。
したがって危険が伴う。
2. 温暖化対策
a) 傾向的な温暖化への対応
とくに都市のヒートアイランド現象がこれに加重されることを考えて、その対策が重要になる。
また農業、あるいは観光業も対応が必要になる。さらに熱帯病の温帯への伝播については注意す
る必要がある。
b) 一時的な「異常高温」に対する対策
効率的な冷房システムを準備しておかねばならない。また暴風豪雨などが激しくなる可能性に備
える必要がある。
c) 海面上昇対策
海水温上昇による膨張だけであれば、影響は一部にとどまり、日本では十分対応可能である。南
極の氷床融解による急激な海面上昇の可能性は不明であるが、それが現実化した場合の緊急対応
を考える必要がある。
3. 温暖化適応
a) 産業、とくに農業については長期的に適応を考えるべきであり、また都市計画、とくに新首都
構想については気候変動の可能性を考慮すべきである。
b) 健康問題
気候と健康の関係については現在まで十分な注意が払われているとはいえない。開発途上国や
都市のスラムなどを中心として多くの人々の健康を損なうような、温度や湿度にさらされてい
る。温暖化は一部の人々の条件を悪化させる(一部の人々にとっては改善されるかもしれない)
可能性を考慮して、今度何をなすべきかを考えねばならない。
【160401】
これらの諸政策を総合的に検討して、あるべき「温暖化対策」を構想して、まとめるとともに、公開
シンポジウムを開催し、また一般向けの書物を公刊する。
3.4 研究の分担
サブテーマ<社会技術に基づく社会制度の構想>
・ 日本における気候の変化の統計的解析
・ 社会技術の概念と方法を地球温暖化問題に即して考察
・ 因果関係の複雑性、影響の長期性および多様性、それによって生ずる利害関係の多面性,
複雑性、に対応する対策と提言
サブテーマ<国際協調システムの形成の調査>
・ 温暖化問題への対策推進のための国際協調システムのあるべき制度
・ 先進国から途上国への技術移転と資金移転が伴うクリーン開発メカニズムの制度設計について提
言
サブテーマ<温暖化の工学的対策>
・ 人工的アルベド増加による地球温暖化防止対策
・ 太陽可視光線の一部遮断・反射のための工学的方法
サブテーマ<温暖化問題と情報化および環境会計分析>
・ 地球温暖化の総合理解支援のためのコンピュータによる機能体系図作成
・ 地球温暖化問題に関る環境教育コンピュータ・教育ゲームと開発援用ツールの開発
サブテーマ<温暖化対策の農学的技術対応>
・ 圃場実験での不良土壌における施肥法の開発
・ 石灰質アルカリ土壌(世界の土壌の20%)における緑化促進と炭酸ガス固定
・ 資源・エネルギー使用量の逓減と社会技術
サブテーマ<温暖化の健康に及ぼす影響の解析>
・ デング熱やマラリアなどの熱帯性および亜熱帯性伝染病の日本列島への侵入対策
・ 夏期の異常な気温上昇の直接的な健康への影響
サブテーマ<温暖化対策のマクロ経済的影響の分析>
・ 太陽光発電によるCO2発生抑制技術の評価
・ SPSシステム(太陽宇宙発電衛星Solar Power Satellite;SPS)のCO2負荷を環境産業連関表をもち
いて数量的に解析
・ 実験植林によるCO2吸収の分析と評価
サブテーマ<温暖化と地球環境>
・ 地球温暖化現象の検証とその理由の考察
・ 既存データの解析とその意味付けおよび具体的な試料の検討
【160401】
4.研究成果
4.1
社会技術に基づく社会制度の構想(竹内啓サブグループ)
4.1.1 社会技術の概念と地球温暖化
1. 社会技術の概念
社会技術の概念をどのように捉えるかが基本的な問題である。広く解釈すれば、それは社会に対して
一定の目的を持って働きかける方法すべてをふくむと考えられる。そうすればそれは法律、政治、経済
活動、社会運動などもすべてそこにふくまれることになる。狭く解釈すれば社会的な影響を持つ、ある
いは目的が社会的性格を持つ技術を指すと考えられる。しかしどちらも抽象的一般的に考えるとすれば
あまり有効でないと思われる。前者によればそれはこれまでのほとんどすべての社会科学の分野を包括
してしまうことになり、それを改めて社会技術と呼ぶことの意義が疑わしい。また後者においては実は
有効な技術はほとんどすべて社会的影響を持つはずであり、非社会技術なるものが存在するとは考えら
れないから、とりたてて社会技術ということばを唱える意味があるとは思われない。
社会技術の概念を提出することの意味は、むしろ二つの方向性から考えられる。一つはこれまで「社
会科学」の名の下に考えられてきた諸分野の「技術的性格」を強調すること、つまり操作可能な目的概
念を設定し、目的と手段との整合性を追求できることを重視することである。もう一つは、これまでの
「技術学」において追求されてきた「技術的目標」の社会的意味を明らかにし、その本来の目標である
べき「社会的目的」を明確にして、技術的手段を改めてその関連で評価することである。
このように考えれば「社会技術」ということばは、新しい分野を設定しようとするものではなく、既
存の科学、および技術の諸分野を改めて再構成するための枠組みを与えようとするものであると解釈さ
れる。
実は更に上記の二つの見方を統一して、一定の具体的な社会的目的を実現するために、社会的方法(政
策)と科学的知見、技術的手段を総合的にかつ整合的に追求することを「社会技術」と解釈したい。こ
の場合社会的目的とは観念的理念的な目標ではなく、現実の社会の直面する具体的な課題であって、そ
してそれについての理念論ではなく、具体的な行動計画を構想することが社会技術の任務であると考え
られる。
したがって社会技術の研究については、抽象論、一般論ではなく、具体的な課題についてその枠組み
を研究することが、有意義な研究方法である。
2. 地球温暖化問題の意義
ここでは「地球温暖化問題」に関連して、上記の意味での社会技術的研究がまさに必要であることを
主張したい。
地球温暖化問題は 1980 年代末頃から、世界の関心を惹くようになり、そのための国際会議もたびた
び開かれるようになった。しかしこの問題に対するアプローチについては国際的にも国内的にも意見の
不一致は大きく、現実にどれだけ有効な対策が取られることになるか疑問である。このような対立は必
ずしも科学的事実に対する見解の相異や、各国やそれぞれの社会層の利害の対立だけによるものではな
く、むしろ問題提起のされ方に多くの問題があるように思われる。
普通には「CO2 排出量の増加は温暖化をもたらし、それは社会的災厄をもたらす。したがって CO2 排出
量を抑制しなければならない。」という形で問題が提起され、「誰がどれだけ CO2 排出を抑制する義務を
負うべきか」が論ぜられることになる。しかしこれは問題の複雑性を無視したあまりにも直線的な考え
方であるといわざるを得ない。
第一に、しばしば指摘されているように「CO2 排出量の増大が温暖化をもたらす」ことについて、科
学的な原理としては疑いないものの、実際に重要な意味を持つ具体的な量的関係についてはまだ科学的
に不確実な要素が多いのである。1980 年代末以降、世界各地で実際に観測されている気温上昇の傾向に
ついても、その中でどれだけが産業革命以来累積された CO2 濃度の上昇によるものなのか、またいろい
ろな理由による「自然変動」によるものなのかはっきりしない。時に引用される「0.5℃の上昇」など
という表現は、複雑な動きをするデータに対する極めてラフな「当てはめ」でしかない。
第二に、したがって「CO2 排出を続けた場合の将来の温度上昇」の予測についても、まだ疑問点は多
い。それらはほとんどコンピュータシミュレーションによっているが、そこに用いられているモデルに
しても、またモデルの中のパラメータの数値にしても、十分現実的というにはまだ疑問の多いものだか
らである。したがって、予測結果については専門家の間で大きな違いがあるのみならず、一部には「温
暖化」そのものを否定する学者もなお残っているのである。
【160401】
しかしこのことは「だから温暖化はまだ問題ではない」とか「CO2 抑制を論ずるのは早すぎる」とか
いうことを意味するものではない。現実に温暖化が進行していることを示す徴候は十分に存在するし、
また将来ある程度以上の温暖化が起こる可能性は十分高いのみならず、高度の非線形性をふくむ地球シ
ステムにおいては、ある限界点を越えたとき、急激な予測されない大変化が起こる可能性もあるのであ
る。
けれどもそのことはまた、「安全を考えれば、直ちに CO2 排出をできる限り削減しなければならない」
という結論に導くものでもない。なぜならば現代においては経済生活とエネルギー消費は不可分であり、
そして少なくとも当面はエネルギー消費の大部分は化石燃料に頼らざるを得ないからであり、正面から
の直接的な CO2 削減は「経済活動の抑制」を意味することになるからである。それがまた貧困に苦しむ
開発途上国はもちろん、先進国にも受け入れ難いことはいうまでもない。
指摘されなければならないのは、「温暖化の社会生活への影響」が明確でないことである。しばしば
「海面上昇」が問題とされるが、例えば「1m程度の海面上昇」といわれても、オランダやバングラデ
シュなどは重大な危機と感ずるかもしれないが、世界の多くの国々ではほとんど切実に感ぜられないで
あろう。また影響を受ける国々でも、十分な時間があれば、それに対応する方策を講ずることは可能で
ある。太平洋の小さい島々の中には、海没してしまうものもあり得るが、そのような所に住む人々には
十分な避難、定住先を提供することは可能なはずである。
けれども実際には例えば 5℃も平均気温が上昇するとすれば、その影響は海面上昇よりも、気候、気
象の変動、それに対応する生態系の変化に昀も大きく現われるであろう。しかもその影響は世界各地で
それぞれに異なり、ある地域では農業を中心とする産業や、人々の生活に大きな損害を与えると同時に、
他の地域には利益をもたらすかもしれない。このような影響についてはまだほとんど追跡されていない
ように思われる。
3.
温暖化問題への対応
このように複雑な様相を持つ地球温暖化問題に対する対応策は、また多様かつ柔軟なものでなければ
ならない。それは単純な公害物質による大気汚染問題などとは本質的に異なるものであって、単純にそ
のもたらす損害と汚染物質の使用禁止にともなうマイナスとを比較計算して、昀適な政策を決定するこ
とはできない。
一般に複雑で不確実性が高く、かつその影響が大きく多方面に渡る災厄が生ずるような問題について
はなすべきことはいろいろある。第一は危険を生ずるような原因を除くことである。これは直接的で明
白な方法であるが、しかしそれは不可能であったり、著しく困難な場合がある。例えば自動車を廃止す
れば自動車事故をなくすことができるが、しかし事故対策として自動車を禁止することは非現実的であ
る。第二はできる限り不確実性を除くような研究を集めることである。どこでいつどういう形で危険が
生じ、災厄が起こるか予測できれば対策は容易になる。しかしそれにも限界がある場合がある。地震学
の進歩によって地震の危険についていろいろなことが明らかになったが、しかしいつどこで大きな地震
が起こるかを正確に予知することは当面不可能と思わねばならない。したがって第三に危険な事態が生
じたとき生ずる損害をなるべく小さくするような対策を考えねばならない。いろいろな安全装置や非常
用施設が考えられ、実際に設置されねばならない。昀後にそれでも災害が生じてしまった時、被害を昀
小限にするような救援対策もあらかじめ考えておかねばならない。
このような 3 つの方向への努力は、その問題に応じて具体的に考え、適切に配分されなければならな
い。なおそれに加えてこのような異なる方向への努力について社会的合意を達成することも重要である。
このような問題を総合的体系的に考えることが社会技術の重要な課題である。
地球温暖化問題については、まだこのような総合的アプローチが欠けているといわざるを得ない。議
論はもっぱら第一の点、すなわち温暖化の原因となる CO2 排出をどれだけ抑えるべきかという議論に集
中しているが、それはたとえていえば交通事故対策として、自動車のもたらす利便性と事故の危険性と
を比較して、自動車をどれだけ減らすべきかを議論することに等しく、それだけでは不十分であること
はいうまでもない。
抽象的一般的に考えれば、人類にとって地球の平均気温がどれくらいであることが昀も望ましいかは
簡単には決められない。もちろん極端な低温や高温の下では人類が生存できないことは自明であるが、
そのような両極端の間にはかなり大きな幅があるはずである。その中で現在の 15.5℃とされる平均気温
が昀適であるとする根拠はないといわねばならない。もちろん人類は、現在の気温に(といっても世界
各地で毎年数度の気温変化があることは稀ではないが)生理的にも文化的にも社会的にも適応してきた
ことは確かであるから、ある程度以上の気温の変化が起こるとすれば、大規模な人口移動をふくめた対
応が必要になるかもしれない。もしそのことまでをふくめれば、ある程度の気候変動は長期的には災厄
となるとは限らない。このような社会的適応の方策を、それに内在する危険やコストをふくめて考察す
ることも社会技術の課題である。
【160401】
このような社会技術的考察において重要なことは、その価値的前提を明確にすることである。地球温
暖化問題においては「人間中心主義」を否定するような「深い環境主義」は拒否されねばならない。問
題なのは人間にとって望ましい気温や気候であって、「生命系」やいわんや「地球そのもの」にとって
望ましい気温ではない(「生命系」の維持というより、生命系を昀大限に繁栄させるような気温は、例
えば「石灰紀」のような恐らく現在より遥かに高いもので、人間にとっては著しく望ましくないもので
あろう)気候変化をもたらすこと自体を悪とするような考え方は根拠がない。もう一つは、世代を越え
た全人類的視点である。地球温暖化の影響を大きく受けるのは大部分までこの世に存在していない後の
世代の人々である。したがって純粋に現在の人々の利己的な判断によるとすれば、現在 CO2 を排出する
ことによって 100 年後に温暖化が起こっても、関知するところではないということになってしまう。ま
た上にのべたようにかえって利益を受ける国もあり得る。したがって民族的エゴイズムの観点から温暖
化問題に関して国際的協力を達成することは困難である。一方、温暖化対策についてはどのような方向
についても世界的な協力が不可欠であって、国家、民族のエゴイズムを越えた観点が確立されねばなら
ない。
3. 政策的枠組み
政策的な観点からすれば、国際的にも各国の国々においても「CO2 抑制対策」と、その他の政策一般
との整合性が、ほとんどはかられていないことが、昀も重大な問題である。
たとえば CO 排出抑制のための「炭素税」或いは「エネルギー税」については、いろいろな国で提案
され、また一部の国々では実施されているが、しかしそれを経済、或いは財政政策全般の中でどのよう
に位置づけられるかは、ほとんど考慮されていない。「環境問題」に熱心な人々や、それにかかわる省
庁では「炭素税」についての熱心な議論が行われている一方、産業対策や財政対策、或いは租税制度に
かかわる人々は、このような提案に反論する場合以外は、温暖化問題を考慮に入れることはほとんどな
い。その結果一方で「炭素税」の導入が唱えられる中で、他方では、原油価格引き下げの方策や、景気
対策のため減税措置が提案されたりすることになる。昀近でも、わが国の環境
委員会は CO2 排出量
抑制のために、何らかの炭素税の導入を主張したが、しかしそれが、石油税の形を取るとし、また提案
されているようにそれが CO2 排出抑制のための技術開発その他に使えるとしたら、そのことと現在道路
建設のために(間接的には CO2 排出量増大のためにも使われている)ガソリン税との間の論理的融合性
はどうなるのだろうか。またたいして大きい額ではない定率減税の停止に対しても、強い反対の声があ
る中で、新たに税と課すことの現実性について検討がなされたのであろうか。
国際的にも京都議定書の発効と同時に、原油価格引き下げのために産油国に対して原油増産の調整が
行われるということは、矛盾ではなかろうか。
もう一つの問題は、温暖化防止のための国際的枠組は存在しても、温暖化、ひいて気候変動に対応す
るための国際協調組織は存在していないことである。そもそも今回の津波や、或いは毎年世界各地で起
こって大きな被害を出している、暴風、洪水、あるいは猛暑、冷害、旱魃等の「異常気象」や「異常機
構」にたいする対策についても、国際的な協力体制は極めて不十分であるといわざるを得ない。それは、
個々の国々にとっての「不慮の災厄」とみなされ、国際的な救援のための援助が行われるだけである。
しかし将来の「気候変動」に対して議論する前に、現在起こっている「異常気候」(それは世界全体で
見れば、ほとんど毎年世界のどこかで何しかの国で起こっているのであって、そのようなことが全くな
い年の方が「異常な年」というべきである)に対する対策と考えるべきだろう。
温暖化問題、或いは一般に地球環境問題を「環境問題」の一つとして捉え、それを担当する省庁のみ
が担当する問題として捉えることは不適当である。それはすべての政策と考える場合の前提条件として、
総合的に対応すべき問題と理解しなければならない。従って政府においてはすべての省庁にまたがり高
いレベルで「気候変動対策会議」のような形の組織を作って、その問題に関して科学的研究や調査、技
術開発、適応対策、を総合的に推進するとともに、またすべての省庁における長期的な施策、計画にお
いて「気候変動」が適切に考慮されるよう調整することが必要であろうと考える。
4.1.2 気候の変化の統計的解析
日本における気候の記録については、この研究の出発時には十分なデータファイルがなく、気象庁に
赴いてデータの収集に努めたが、その後気象庁から気象台発足以来のデータがまとまった形で入手可能
になったので、それを利用して観察および若干の統計的分析を行なった。
その中の主要な結論は次のようなものである。
1. 日本各地の平均気温は 1900‐2000 年の 100 年間に 1℃上昇している。
2. その上昇の傾向は一様でなく、明確な上昇が見られるのは 1990 年代である。
3. 場所により気温上昇のパターンは違っているが、東京(および大阪等の大都市)を除き地理的区分
【160401】
に対応して明確に異なる類型は見られない。
4. 東京は過去 100 年間に持続的に温度上昇が続き、3℃ほど上昇した。これは明確に他の地域と異なっ
ているので、その大きな部分は全般的な温暖化以外の原因によると考えられる。
5. 温度上昇のパターンに季節による差も見られた。
6. 降水量については、年毎の変動が大きくトレンド的変化は明確でないが、20 世紀後半には若干の減
少傾向が見られる。
7. 降水量のばらつきは増大している傾向が見られるが、統計的有意性は明確でない。
8. (予想に反して)降雪地帯において、冬季の降水量、降雪の減少傾向は顕著な例外(高田)を除い
てほとんど見られなかった。
9. 昀近 20 年間については、異常高温の年(猛暑、暖冬)が多くなっているように見える。
4.1.3 その他の成果および今後の期待される効果
「2.研究実施の概要」および「3.研究構想」に所述した。
【160401】
4.2
国際協調システムの形成の調査(明日香壽川サブグループ)
――地球温暖化問題に関する国際協調システムの形成の調査:
カーボン・クレジットの国際調達に関する先行事例が日本での制度設計に対して持つ含意――
(1)研究内容及び成果
オランダ政府の京都メカニズム活用戦略、ERUPT、CERUP、世銀 PCF の共通点および相違点を中心に分
析することによって日本における制度設計への含意を検討したところ、次のような結果を得た。
1. ERUPT/CERUPT の経験の要約
1)クレジット獲得という面から考えれば、AIJ 型の政府支援は非コスト効果的である。
2)JI からの ERU の大量獲得は困難である。
3)クレジットの“質”が悪いと NGO から批判を受ける。
4)国際競争入札による政府の買い上げは、自由度や透明度が高い。しかし、国際調達ルールや様々な
批判に耐えうるガイドラインや TOR を作り、それをメインテナンスするのには、かなりのリソースと責
任が必要となる。
5)MOU(国家間の覚え書き)はリスク回避のために重要である。しかし、JI/CDM に対する取り組みはホ
スト国によってかなりばらつきがあり、MOU の締結可能性も国によって大いに異なる。
6)ODA のベースラインを設定しさえすれば、投資国政府の公的資金によるソフト・ローンで CDM プロジ
ェクトをファイナンス(under-lying finance)することは問題にはならない。
2. 日本政府の政策オプション
1)各オプションの長所と短所
先行事例などから、現在、公的資金使用に関して日本政府および政府系金融機関が持つ制度設計オプ
ションとしては、単純な二国間交渉の他に以下の 5 つがあり、原資としては、ODA と OOF(Other Official
Flow: 他の公的資金で、エネルギー関連特別会計などを含む)が考えられる。
オプション 1:投資コストの一部に対する有償あるいは無償補助(例:京都議定書以前のクレジット発
生が伴わない共同実施活動)
オプション 2:クレジット部分のみの買い上げ(例:ERUPT/CERUPT)
オプション 3:自らによる世銀 PCF 型カーボン・ファンド創設(例:欧州復興開発銀行)
オプション 4:他機関への外部調達委託(例:オランダ環境省)
オプション 5:制度設計に関わるキャパシティ・ビルディング(F/S 補助を含む)の実施
オランダの経験などを考慮すると、上記の各オプションの長所と短所は以下の表のように整理できる。
なお、ここでは各オプションの比較を行うことが目的であるため、炭素税や排出量取引などに関するポ
リシー・ミックスの具体的な内容や京都メカニズムを用いる際の根本的な問題である国内生産、雇用、
研究開発などに対するマイナス影響などに関してはあえて議論しない。
表
日本政府の政策オプション
オプション 1
オプション 2
オプション 3
オプション 4
AIJ 型支援(投資コスト (C)ERUPT 型支 世銀 PCF のよ 外部委託(世銀
内 全体あるいは一部補助) 援(クレジット う な カ ー ボ な ど の 他 の 機
ン・ファンドの 関へ調達委託)
のみ買上げ)
容
創設
・実質的な輸出補助金と
なるので、一部の企業に
対しては輸出振興効果
長 あり
所 ・既存の環境エネルギー
分野の経済協力政策の
延長で可能である
・市場価格で調
達できれば、国
全体の遵守コス
トは昀小となり
うる
・日本独自のプ
ロジェクト選定
基準の設定が可
能であり、
“日本
の顔”が見える
・市場価格で調
達できれば、国
全体の遵守コ
ストは昀小と
なりうる
・日本独自のプ
ロジェクト選
定基準の設定
が、ある程度は
可能である
・市場価格で調
達できれば、国
全体の遵守コ
ストは昀小と
なりうる
オプション 5
キ ャパシテ
ィ・ビルディン
グ(F/S 補助含
む)
・既存の環境エ
ネルギー分野
の経済協力政
策の延長で可
能である
・クレジット供
給体制整備に、
ある程度は必
要である
【160401】
・クレジット必要量獲得
のためには非常に多額
の公的資金が必要(非コ
スト効果的)
・国内対策(税など)が
伴わない場合は効率性
が損なわれる(死加重発
生)(注)
短 ・企業としては、たとえ
所 額は大きいとしても、政
府支援が得られる確率
が小さいので、経営計画
の中に織り込むことが
難しい
・政府の裁量が大きくな
り、政策全体の不透明度
が高い
・企業と政府との間のク
レジット分配問題が発
生する
・排出量割当てなどの国
内制度がなければ企業
の参加インセンティブ
は小さい
・日本側のキャ
パシティ・ビル
ディングと取引
コストが大幅に
必要
・日本技術の輸
出振興効果なし
・国内対策(税
など)が伴わな
い場合は効率性
が損なわれる
(死加重発生)
・WTO や OECD の
国際調達ルール
に縛られる
・日本技術の輸
出振興効果な
し
・国内対策(税
など)が伴わな
い場合は効率
性が損なわれ
る(死加重発
生)
・日本側のキャ
パシティ・ビル
ディングと取
引コストが必
要
・必要量が確保
できる確証が
小さい
・排出量割当て
などの国内制
度がなければ
企業の参加イ
ンセンティブ
は小さい
・国内対策(税
など)が伴わな
い場合は効率
性が損なわれ
る(死加重発
生)
・日本独自のプ
ロジェクト選
定基準の設定
が難しい(ある
程度は可能)
・日本技術の輸
出振興効果な
し
・委託先に対し
て手数料を支
払う必要あり
・日本の「顔」
が見せること
が難しい(委託
先とホスト国
との交渉に多
くが委ねられ
る)
・クレジット獲
得に直接的に
はつながらな
い
・他の先進国が
すでに行った
キ ャパシテ
ィ・ビルディン
グとダブって
しまう可能性
がある
2)日本政府が ERUPT/CERUPT タイプの制度設計を行う意義
ERUPT/CERUPT タイプの制度設計は、日本政府のキャパシティを考えると、そう容易でもない可能性が
ある。そうはいっても、オランダ政府は、JI に関しては入札によるクレジット買い上げ制度を使い続け
ており、その理由の一つとしては JI の対象国が自分の裏庭でもある中東欧諸国であり、まさに「顔の
見える制度」を使い続けるメリットが大きいという判断があると思われる。そうであれば、オランダ政
府、フィンランド政府、デンマーク政府などの先行事例に学びながら、アジアで CERUPT タイプの制度
設計を日本政府が検討する意義もあるかと思われる。
3)グリーン投資スキームの重要性
JI および CDM からのカーボン・クレジットの調達はそれほど容易ではないことが明らかになった。し
たがって、ロシア、ウクライナ、中東欧諸国からの余剰排出割当量(ホット・エアー)をどのように購
入するかが重要なポイントとなり、その際には、何らかの温室効果ガス排出削減プロジェクトに裏付け
されたホット・エアーの購入方法として提案されているグリーン投資スキーム(GIS)を早急に検討す
る必要がある。
(2)研究成果の今後期待される効果
京都メカニズム、特に共同実施(Joint Implementation: JI)およびクリーン開発メカニズム(Clean
Development Mechanism: CDM)からのカーボン・クレジット売買に関する国際制度としては、世界銀行
による Proto-type Carbon Fund(世銀 PCF)およびオランダ政府による Emission Reduction Units
Purchase Tender (ERUPT)/Certified Emission Reduction Units Purchase Tender (CERUPT)が代表的
なものとしてある。
現在、各国政府および各企業がこの二つの先行事例を参考にしながら具体的な制度設計を進めている。
例えば、フィンランド政府およびデンマーク政府は、ERUPT/CERUPT に似た国際競争入札によるカーボ
ン・クレジットの買い上げ制度の構築をすでに行っている。日本においても、経済産業省、環境省、日
本政策投資銀行、日本国際協力銀行などが、独自に、あるいは協力して、世銀 PCF に似たカーボン・フ
ァンドの設立や JI/CDM 実施コストの一部補助を検討しており、中身はともかく、様々な動きが国内外
【160401】
で活発化している。
しかし、ERUPT、CERUPT、世銀 PCF はそれぞれ異なった複雑かつ未完成な運用ルールを持つ制度であ
り、数年の運用期間を経て、様々な課題が明らかになりつつある。実際に、オランダ政府は CERUPT の
打ち切りをほぼ決める一方で、世銀グループのような国際開発銀行および民間銀行とのカーボン・クレ
ジットの売買契約を進めている。すなわち自らが国際競争入札を実施するよりも、少なくとも CDM に関
しては、国際機関や民間銀行にクレジットの調達を任せる方針に転換しつつある。
したがって、このような先行事例を詳細に分析し、国際社会におけるカーボン・クレジットの需給な
どに対するインパクトを明らかにしながら、日本での制度設計に対する政策的含意を検討することは、
京都議定書の目標順守という意味で非常に意義があると思われる。
【160401】
4.3
温暖化の工学的対策(阿部寛治サブグループ)
(1)研究内容及び成果
温暖化を緩和する方法として、現在焦点になっているのは温室ガス排出抑制である。当サブグループ
は全く別の観点から温暖化緩和の方法を研究した。大気温度は地球アルベドで決定される。地球アルべ
ドを増加させれば大気平均温度は低下する。自然科学の原理から考えると、地球アルべドを増加させる
工学的方法は次の 3 方法に絞られる。
(A)地球・太陽間のラグランジュ点に反射鏡を置いて、太陽光の一部を反射させて、地球に入射させ
ない。
(B)地球表面上に反射鏡を置いて、太陽光の一部を宇宙に反射させる。
(C)地球大気に透明な微粒子を浮遊させて、太陽光の一部を宇宙に反射させる。
この 3 方法を詳しく調べたところ(C)が技術的、経済的に観点から可能であることがわかった。詳し
くは社会技術研究「地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ」報告書-平成 17 年-(印刷中)を
参照されたい。 事務局注
当サブグループの研究は自然科学的に行われるが、もし成功すれば社会的なインパクトは大きい。例
えば、温室ガス排出抑制は経済に与える影響が大きく、まさしく社会技術そのものといえる。しかしな
がら、温室ガス排出を抑制したとき、どの程度温暖化が抑制されるかという量的な問題はあいまいなま
ま残されている。これに対して当研究は量的な因果関係をあいまいさを残すことなく明らかにした。地
球大気平均温度を 1 度下げるためには何を行えばよいかを明らかにしている。その場合温室ガス排出抑
制は不必要になるので、純粋な自然科学的行為が社会技術そのものになるのである。
(2)研究成果の今後期待される効果
類似研究を国内外について調べたが、実は見当たらない。調査中にわかったことであるが、特に国内
では自然に人間が積極的・大規模に働きかけることは研究したくないとの風潮がある。原子力発電の問
題を研究者が避けて通ることと共通している。しかしながら地球温暖化がもたらす巨大な社会的影響を
軽減するのは、対策も大掛かりにならざるをえない。
今後の展開であるが、当研究では粗筋を調べただけで、実行に移す前に多くのディテイルについて確認
する必要がある。これらが確認されると、人類は温暖化を軽減できる確実な方法を手にしたことになる。
事務局注
参照資料をご参照下さい。
"Decreasing the average atmospheric
temperature by geoengineering"
【160401】
4.4
温暖化問題と情報化および環境会計分析(佐久間章之・松本俊之サブグループ)
4.4.1 地球温暖化問題を総合的に理解するための機能体系図
(1) 研究内容及び成果
1.研究内容の概要
地球温暖化問題とそれを包含する地球環境問題を総合的に理解することは、経済社会の持続な発展を目
指して適切な環境施策を行うための基本である。
しかしながら地球温暖化問題に関連する経済活動分野、学問分野は極めて多岐であり複雑である。また
地球温暖化問題を構成する要因は、相互に密接な関連を有しているものが多い。また近年、地球温暖化
問題に関連する研究と施策の実施が進展したため、関連する知識・情報の総量が急速に増大している。
したがって地球温暖化問題を総体的に把握するためには、広範囲かつ膨大な知識・情報の処理が必要と
なる。
本研究はこのような観点から、コンピューター技術を適用して、地球温暖化問題を中心とする地球環境
問題の各要因の相互の関連を、一覧性を有する相互関係の体系図として作成したものである。またコン
ピューターの機能を活用して、環境問題の原因の検索と影響の検索、検索結果の表示、基本事項の解説
などの機能を付加している。
機能体系図の構成要素は、約200の主要環境問題項目と約500の各環境問題の相互の因果関係であ
る。これらの地球環境問題項目と因果関係の情報は、現時点において入手可能な主要な論文、著書、報
告書、白書、ウエブサイトより抽出されている。使用コンピューター言語としては、入手の容易性を配
慮してマイクロソフト社の“VISIO”が選択されている。したがって通常のパーソナルコンピュー
ターによって利用が可能である。
また、このような機能体系図を作成するには、環境要因やその相互関係の情報を体系的に整理するため
の道具を予め作成しておく必要があり、そのため地球環境相互関係体系化システムを構築しているので、
システムの維持管理と必要事項の追加を組織的に行うことが可能である。
この機能体系図の適用面は、きわめて多様である。たとえば、①地球温暖化問題の全般的な把握と地球
環境問題の総合的な認識、②対象とする地球環境問題の原因、波及効果、相互関係、位置づけなどの把
握と確認、③行政、自治体、企業などにおける環境施策の検討および重要関連事項の欠落の防止、④教
育機関、企業、社会、家庭における環境教育と教材の作成などの広範囲の分野における活用を期待でき
る。
2.環境機能体系図の構成
機能体系図は、環境問題の分野別に16枚に分割されているが、各シートは相互の関係が認識し易いよ
うに表示が工夫されている。また16枚を結合させた全体整理図を併せて作成し、地球環境問題の全体
像把握の容易化を図っている。本シートは次の16枚より構成されている。番号は分類番号であり、0
番台は、
「シート関連図、全体整理図」であり、10番台は「人間活動や自然現象」、20番台は「直接
排出原因」、30番台から70番台は「直接環境影響」、80番台は「間接環境影響」、90番台は「現
代社会文明崩壊」に割り振ってある。
01:シート関連図
09:全体整理図
11:人口の増加
12:自然現象
13:工業生産の増大
(以上、人間活動や自然現象)
21:大気環境排出原因
22:水・土壌環境排出原因
25:化石エネルギー資源・鉱物資源
(以上、直接排出原因)
31:大気環境排出原因
33:地球温暖化問題
36:水・土壌環境
37:淡水資源不足問題
41:森林資源・砂漠化
【160401】
71:異常気象・自然災害
(以上、直接環境影響)
81:人類への健康被害
82:生物多様性の減少
83:食料資源不足問題
(以上、間接環境影響)
99:現代社会文明崩壊
機能体系図の例として、図2に図番01:シート関係図、図3に図番33:地球温暖化問題、図4に図
番31大気環境、図5に図番09:全体整理図を示す。
3.機能体系図の作成手順
体系図の作成手順は、以下の5段階である。
手順1:項目の列挙
(環境問題項目の一覧表の作成)
手順2:各項目の因果関係を整理
(各項目に関する因果関係図の作成)
手順3:新たな項目の発見
手順4:各項目に関する因果関係図の連結
手順5:全体整理図を個別シートに分割
(地球環境問題相互関係・機能体系図の作成)
図1に、地球環境問題相互関係・機能体系図を作成するためのフローチャートを示す。
【160401】
S T A R T
1 . 項
環
境
目
問
一
の
題
覧
列
項
表
挙
目
の
Y e s
2 . 各
項
各
目
の 因
整 理
果
関
項 目 に 関 す
因 果 関 係 図
3 . 新
た
な
項
目
の
係
を
る
発
見
N o
4 . 各 項 目 に 関 す る
因 果 関 係 図 の 連 結
全
体
整
理
図
5 . 全 体 整 理
個 別 シ ー ト に
地
球
環
境
機
問
能
題
体
図
分
相
系
を
割
互
関
係
図
E N D
図1
地球環境問題相互関係・機能体系図を作成するためのフローチャート
4.地球環境問題と相互関係の抽出
個別の地球環境問題とその相互関係を文献調査などによって網羅的に抽出している。各活動主体(政
府・地方自治体・企業などの組織・個人など)の環境保全活動に対する意識の向上や、意思決定の判断
基準として広く使用されることを意図して選択基準を設定した。
【160401】
図2
図番01のシート関係図
【160401】
図3
図番33の地球温暖化問題
【160401】
図4
図番31の大気環境
【160401】
図5
図番09の全体整理図
4.検索システム
機能体系図は、地球環境問題の統合化を図ることを目的としているため、網羅性を重視して作成されて
いる。しかし、機能体系図からユーザーが必要としている情報のみを抽出するのは、手間と時間がかか
る。よって、円滑な利用を実現するためには、ユーザーのニーズに合った検索システムを開発している。
【160401】
図6は、検索条件選択画面と詳細情報選択画面を示したものである。検索パターンは①原因検索の段
階指定無し、②原因検索の段階指定、③影響検索の段階指定無し、④影響検索の段階指定の 4 通りであ
る。
図6
検索条件選択画面(左)と詳細情報選択画面(右)
(2) 研究成果の今後期待される効果
1.機能体系図の効果
機能体系図の適用面、次のような効果が得られる。
(a)環境体系図から現代の環境問題の全体像を図的に認識することにより、環境問題全体に対する理解
を深めることができる。
(b)検討の対象となる地球環境問題を特定し、その環境問題が生起する原因とその環境問題が他に影響
を与える因果関係を把握することができる。
すなわち環境体系図において任意の地球環境問題を指定するならば、その直接原因、間接原因、直接影
響、間接影響を任意の段階だけトレースすることが可能だからである。なお環境問題における複雑な相
互関係を抽出する場合において、重要な相互関係の欠落を回避するためには一般に多くの労力と時間と
知識が要求されるであろう。
表1
地球環境機能体系図の適用面と適用段階の過程における有効性
適 用 段 階 の 過 程
適
用
面
国・地方
法的規制の強化
公共団体
環境税制などの経済的規制の導入
戦略/指針
の
企画/立案
基本
計画
施策
案の
探索
施策
案の
選定
経営
資源
の
配分
実施
と
運用
評価
と
修正
○
△
△
△
△
△
○
○
△
△
△
△
△
○
【160401】
企業
環境保全のための法的・経済的支援
◎
△
△
△
△
△
○
環境教育・環境意識の向上
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
研究開発・技術開発
◎
○
○
○
○
○
○
社会制度の変革
◎
○
○
○
○
○
○
企業戦略・目標の策定
◎
○
○
○
○
○
◎
企業内での具体的な環境保全活動
の実践
◎
△
△
△
△
△
○
環境保全を考慮した商品・サービス
の提供
◎
△
△
△
△
△
○
研究開発・技術開発
◎
○
○
○
○
○
○
環境教育・環境意識の向上
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
環境教育・環境意識の向上
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
教育者の育成・教材の作成
◎
○
○
○
○
○
◎
◎
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
教育機関
研究機関 研究開発・技術開発
家庭・個人
環境教育・環境意識の向上
具体的な環境保全活動の実践
◎
○
○
○
○
○
○
Table の◎、○、△は利用に適している度合いを示しており、◎は高、○は中、△は低を示している。
重み付けをまったく考慮しない機能体系図からは、今後起こるかもしれない現象と因果関係とがすべ
て分かるので、環境意識の向上や環境教育に有効に利用できると考えられる。
2.機能体系図の適用面
環境体系図は、次のような分野において活用が可能である。
a.国・地方公共団体
法的規制の強化、環境税制などの経済規制の導入、環境保全のための法的・経済的支援、研究開発・技術
開発、社会制度の改革などのための一般的な認識の向上、環境教育・環境意識の向上
b.企業
企業戦略・目標の策定、企業内での具体的な環境保全活動の実践、環境保全を考慮した商品・サービスの
提供、研究開発・技術開発などのための一般的な認識の向上、環境教育・環境意識の向上
c.教育機関
環境教育・環境意識の向上、教育者の育成・教材の作成
d.研究機関
研究開発・技術開発などのための一般的な認識の向上
e.家庭・個人
具体的な環境保全活動の実践などのための一般的な認識の向上、環境教育・環境意識の向上、
機能体系図は、地球環境問題とそれらの問題の原因となる人間の活動及び問題が与える影響を総合的に
表現したものであるため、各々の問題が地球環境問題全体のどこに位置付けられているかがわかる。ま
た、専門分野の枠に捉われずに幅広い観点で地球環境問題を考えることができる。
表1は、具体的な利用法を「適用面」(使用する分野と使用目的)と「使用段階の過程」をマトリック
スで示したものである。機能体系図の利用者としては国・地方公共団体、企業、教育機関、研究機関、
家庭・個人の 5 つが考えられる。また、体系図を何の目的で利用するかについては、各々適用面に示し
【160401】
ている。「適用段階の過程」は目的を実施するために考えられる過程である。例えば、企業において環
境保全を考慮した商品・サービスの提供を考えた際に、まず、体系図より今後深刻さが増す可能性があ
る環境問題項目を抽出することにより、どのような戦略/指針を立てたらよいのかの参考にする。
3.今後の展開
温暖化を中心とした地球環境の各要因の相互関係を示す機能体系図の基本形の構造と作成のための
方法論は構築されたので、今後は、情報を追加することにより機能図の精緻化を進めることが可能であ
る。多くの専門分野の研究者の情報提供と参加が望ましい。
また、実証実験の結果、環境教育の道具として有効であることが判明したので、教育機関において積
極的に活用されることを願うものである。
4.4.2 地球環境教育のためのコンピューターゲームの作成
(1)研究内容及び成果
1.研究内容の概要
環境教育の重要性については言を俟たないが、初等教育・中高等教育においては生徒・学生が興味を
もつ教育方法の開発が重要と思われる。そこで若者が興味を持つコンピューターゲームとボードゲーム
に着目し、ゲームを楽しむ間に自然に環境教育を促進することができる環境教育システムを作成した。
すなわち、地球温暖化に関連のあるテーマを選定し、①家庭ゴミ分別コンピューターゲーム、②排出権
取引ボードゲーム、③地球環境の機能体系図を応用した地球温暖化クイズによる環境教育システムなど
ゲームによる複数の環境教育システムを開発した。
製作した教育システムは、小学校および高校において3回の実施テストを行った。テストの結果をア
ンケート調査によって確認したところ、3回とも予想以上の成果を得ることができた。教育効果ととも
に、児童・生徒の感想も極めて良好であった。
2.製作した環境教育ゲームの種類
ゲーム形式を組み入れた複数の環境教育システムを開発しているが、実施テストを行った次の3種類の
環境ゲームを紹介する。
ⅰ.家庭ゴミ分別コンピューターゲーム
家庭ゴミの分別は身近な環境活動であり、また環境保全活動の基本であるので、教材のテーマとして
採用した。児童・生徒の環境教育の入門的な役割とともに、地域によってゴミの分別基準が相違するた
め社会人にも有用な内容となっている。
製作したゲームの方式としては、若者に昀も人気のあるゲームの種類を調査し、いわゆる「落ちもの
ゲーム」の方式を採用している。「落ちものゲーム」の代表的なソフトは「テトリス」であり、児童・
生徒・若者はこのゲーム形式に精通している。
図1は、大田区の小学校で実施テストを行った具体的なゲームの説明用の画面の一部である。左側の
上に40種類の具体的な「ゴミの図形」が次々に表示され、画面の下に落下してくる。ゲームプレーヤ
ーは、コンピューターのキーボードのキーを操作して、落ちて来るゴミを左右に移動し画面の下部に配
置された適当な分別内容のゴミ箱に導くゲームである。この例ではゴミ箱は6分類あり、左から「可燃」、
「不燃」、
「資源」、
「ペット」、
「紙パック」、
「粗大」となっている。ゲームを円滑に進めるために、右側
の上部に次のゴミを事前の提示するように改善されている。
また、教育的な見地より、右下にゴミの分別に関するメッセージを表示する枠が設定されている。この
例では、「鏡は不燃ゴミです!丈夫な紙等に包み、「鏡」と表示して捨ててね。」と表示されているが、
各ゴミについて、このようなメッセージが用意されている。
ゲームの構成は、各種の設定が可能であるように設計されている。たとえば、導入部の解説、ゴミの種
類、分類内容、ゴミの提示時間、ゲームの困難度(落下速度)の範囲は、ゲーム対象者、対象地域など
により個別の設定が可能である。
【160401】
図1 東京都の大田区の小学校で実施テストを行ったコンピューターゲーム
「家庭ゴミ分別」の説明用の画面の一例
ⅱ.排出権取引ボードゲーム
排出権取引を理解させ、環境と経済の両立が重要であるとの認識を高めるためのゲームを、ボードゲ
ームとして作成した。排出権取引のような内容のゲームには、導入教育としてはボードタイプのゲーム
の方が適しているとの結論を得たことによる。なおコンピュータバージョンも作成しているが、コンピ
ュータバージョンでは対戦相手を多様に設定できる機能を付加するならば、さらに発展の可能性がある。
図2は排出権取引のボードゲームのボード盤を示したものであり、全体の構成はルールを理解しやす
いように、モノポリータイプとしている。設定された各枠は国家単位になっていて、ゲーム参加者は、
その国に到達したときに、植林をするか、工場を建設するかなどの意思決定を行う。ゲームは、昀終的
に「環境保全」と「経済性」を昀も良くバランスさせたプレーヤーが勝利を得るように設定されている。
図3は、排出権取引のボードゲームのルールの表示の例である。ゲームのルールは出来るだけ現実に
近いものに設定することが望ましいと考え、目標排出量と排出権取引に関しては京都議定書で定めた削
減目標をベースにしている。
ボードゲームは高等学校で実施実験を行い、予測以上の成果を得ている。この環境教育システム全体
に関する評価は、参加者生徒27名の回答中、
「良い」が16名(59%)、
「やや良い」が8名(30%)、
「やや悪い」が2名(7%)、
「悪い」が0名であった。
「やや悪い」の回答は、
「ゲームの時間が不足し
た」とテーマの内容が「暗い」であった。 また、教材としては22名(81%)が「良い」と回答し、
14名(52%)が「面白かった」と回答している。
【160401】
図2
排出権取引のボードゲームのゲーム盤
ホットエアと削減目標の関係
地域
削減率
国名
前
E
U
ー
ヨ
ッ
ロ
パ 現
E
U
北米
アジア
オセア
ニア
ドイツ
イギリス
フランス
イタリア
オランダ
オーストリア
デンマーク
スペイン
ギリシャ
ルクセンブルグ
ポルトガル
スウェーデン
アイルランド
フィンランド
ベルギー
チェコ
エストニア
ブルガリア
スロバキア
スロベニア
ラトビア
リトアニア
ハンガリー
ポーランド
スイス
ルーマニア
ロシア
ウクライナ
アイスランド
リヒテンシュタイン
モナコ
クロアチア
ノルウェー
(アメリカ)
カナダ
日本
オーストラリア
ニュージーランド
全体
-21%
-12.50%
0%
-6.50%
-6%
-13%
-21%
15%
25%
-28%
27%
4%
13%
0%
-7.50%
‐8%
-8%
-6%
-8%
0%
10%
-8%
-5%
1%
-7%
-6%
8%
0%
京都議定書の削減目標をベースにしている
図3
排出権取引のボードゲームのルールの表示の例、
【160401】
京都議定書の削減目標をベースにしている。
実施校: xx学院高等部 実施日: 平成16年10月22日(月)
15時50分~17時50分
授業目標
ボードゲームを用いた地球環境問題へのアプローチ
エコと経済のバランスを考えさせる
温暖化・その他の環境問題の知識の向上
授業計画
タイムテーブル
授
業
内
容
【地球環境問題の説明】 (パソコン:PowerPoint)
00 ~ 5
内容:環境問題・地球温暖化について
(5 分) ↓ 【温暖化対策の説明】 (パソコン:PowerPoint)
5 ~ 15
内容:京都議定書・排出権取引について
(10 分) ↓ 15 ~ 30 【ボードゲームの説明】 (パソコン:PowerPoint・ボードゲーム)
内容:ボードゲームの趣旨と構造・ルールの説明
(15 分)
↓ 30 ~ 105 【ボードゲームの実施】 (ボードゲーム) 内容:4チーム(2人1組で1チーム)を1つのグループとし、そ
(75 分) れを3グループ作る。1グループに1つのボードゲームを用意し、実
際に実施してもらう
↓ 105 ~ 110 【解説】 (パソコン:PowerPoint)
内容:ボードゲームの内容の追加説明と解説 (5 分) ↓ 110 ~ 120 【アンケートの実施】
内容:授業内容・教材・ボードゲームに関するアンケート
(10 分) 図4
排出権取引ボードゲームによる環境教育の授業計画書の例
図4は、排出権取引ボードゲームを使用して環境教育を実施するための授業計画書の例である。ゲーム
のための時間が短いとの感想があった。さらに十分な時間があれば理想的である。この排出権取引のゲ
ームは、企業内教育にも十分に対応できる内容であると判断している。
ⅳ.地球温暖化クイズによる環境教育システム
本研究グループで作成した地球環境機能体系図を活用した地球温暖化クイズ環境教育システムを作
成し、都内の高校で実施テストを行い良好な結果を得ることが出来た。
図5は、地球環境相互関係機能体系図を地球温暖化クイズに適用した環境教育システムの講義内容の説
明画面であり、参加した生徒に提示したものである。スクリーンを使用して、まず「身近な環境問題」
を解説して、「人間の活動と環境問題」を理解させる。次に「いろいろな環境問題」があることを、環
【160401】
境機能体系図の骨組みを利用して概要を理解させる。演習問題(クイズ)としては、機能体系図の地球
温暖化に関する部分を使用し、いくつかの項目をブランクにして、その内容を考えさせ回答させる。次
に正解を示し、さらに、いま回答した地球温暖化問題が他の多くの環境問題と複雑で、しかも密接な関
係にあることを地球環境問題機能体系図を使用して理解させる。図6は、生徒に提示した地球温暖化と
他の環境問題との関連を簡略化した図であり、このように順序を踏んで、解説を進めている。図7は、
生徒に問題(クイズ)として提示したブランク枠を含む地球温暖化相互関連図であり、生徒が自分の知
識と判断でブランクボックスの内容を考えられるような構成を重視している。
本日の講義内容
身近な環境問題
人間の活動と環境問題
身近な環境問題
人間の活動と環境問題
人間の活動
つま
つまり
り
いろいろな環境問題
人間の活動と環境問題の関係
人間の活動
消費・汚染
大
気
汚
染
私たちの
私た
ちの行動〔生
ちの
行動〔生活〕
行動〔生
活〕
生産
生産
保全していく
していく行動
いく行動
していく
いく行動
いく
行動
破壊して
消費
消費
廃棄
廃棄
水
質
汚
染
環境問題
オ
ゾ
ン
層
破
壊
土
壌
汚
染
工業
温
暖
化
農業
化
石
燃
料
消
費
林業
地球環境
水産業
酸
性
雨
森
林
資
源
破
壊
人間の活動全体が地球環境の全体に影響している!
演習問題
まとめ
アンケート
例題:森林資源減少問題
まとめ
講義アンケート
気候変動
(気温上昇
(気温上昇)
)
水循環や熱バランスへの影響
水循環や熱バラ
ンスへの影響
生息
生息・生育環境の改変
・生育環境の改変
森林火災
森林火災
生物多様性の減少
生物多様性の減少
(野生生物
(野生生物の減少)
の減少)
農地の開拓
農地の開拓
不適切な森林管理
この教材について率直な意見をお願いします。出来るだけ具体的に答えてください!
どのように解決していかなければならないか。
貧困
洪水・渇水
洪水・渇水による影響
による影響
窒素酸化物排出増大
土壌の
土壌の劣化
劣化
アンケートに
ご協力
お願いします
全体に関する評価1
森林伐採
二酸化炭素吸収量減少
伝統的な燃料資源の不足(薪炭材など)
渇水による植生の変化
渇水による植生
の変化
(酸性雨による)植生の減少
(酸性雨によ
る)植生の減少
砂漠
砂漠化
化
耕地面積の減少
林業プロセスによる悪影響
林業プロセスによる
悪影響
2 3 4 5
意見・改善点・提案
授業
教材
個別に関する評価
導入編
展開編
都市の
スラム
スラム化
化
人体への健康被害
人口の
人口の増加
増加
氏名
この授業を受けた後の環境に対する意識(授業を通して学んだ)ことを教えてください。
普通
土壌の
土壌の流出
流出
土壌
土壌の塩類化
の塩類化
学科
この授業を受ける前の環境に対する意識を教えてください。
悪い
水土保全機能の低下
水土保全機能
の低下
薪炭材の過剰採取
過度の焼畑農業
授業アンケート:人間の活動と環境問題
学籍番号
複雑に絡み合う環境問題を
生存環環環境境境の悪化化化
産業資材確保の
ための農園開発
森林ののの減少
放牧地・農地への転用
放牧地・農地
への転用
環境問題と人間の活動が複雑に影響を及ぼしあっていることが分かります
良い
農業プププロロロセセセスススににによよよるるる悪悪悪影影影響響響
燃料消消消費費費の増加加加
森林
森林火災の
火災の
人為
人為的要因
的要因
林産物の採取
家畜ののの糞や
廃棄農農農作作作物物物などののの
家庭用用用燃燃燃料料料への転転転用用用
民生プププロロロセセセススス
によるるる悪影響響響
私たち
私た
ちの行動
の行動は常に環
は常に環境に影響
は常に環
境に影響を及ぼし
境に影響
を及ぼしている
を及ぼしている
砂
漠
化
演習編
まとめ編
私たちの生活と環境問題は
どのように向き合っていくべきなのか?
授業・教材の中で理解しにくい点がありましたら、記入してください。
その他、何かありましたら記入してください。
お疲れ様です。ご協力ありがとうございました!!
図5
地球温暖化クイズによる環境教育の講義内容の説明画面
【160401】
地球温暖化問題について
人間の活動
図6
消費・汚染
環境問題
生徒に提示した地球温暖化と他の環境問題との関連を簡略化した図
問題:地球温暖化問題
永久凍土の溶解
オゾン層の破壊
二酸化炭素
吸収量減少
生息種の変化
砂漠化
洪水・渇水
による影響
生態系への影響
地球温暖化
森林の減少
二酸化炭素
排出増大
永久凍土
の融解
人体への
健康被害
気候変動
陸地の消失
都市部に
人口集中
偏西風の変化
居住面積の減少
淡水資源の不足
沿岸災害の多発
地形の変化
干拓・埋め立て建設
生息・生育
環境の変化
成層圏の
対流変化
海流・潮流
循環の変化
食糧資源不足
廃棄物の増加
海面上昇
降水パターン変化
火山活動
森林の減少
生物多様性の減少
過度の焼畑農業
耕地面積の減少
生存環境の悪化
自動車の排気ガス
図7
農作物収穫量の減少
工業生産の増大
大気環境悪化物質の排出(大気汚染)
燃料の燃焼
民生プロセスによる
悪影響
農業・林業プロセスによる悪影響
人口の増加(人類の諸活動)
工業プロセスによる悪影響
メタン
排出増大
交通機関の発達
問題(クイズ)として提示したブランク枠を含む地球温暖化相互関連図
【160401】
森林資源・地球温暖化の問題:まとめ
森林資源砂漠化・地球温暖化問題の周辺にはこれだけ多くの項目がある!
農業プロセス
による悪影響
民生プロセス
による悪影響
林業プロセス
による悪影響
人口の増加
貧困
気候変動
(気温上昇)
(酸性雨による)
植生の減少
森林火災の
人為的要因
林産物の採取
森林火災
農地の開拓
不適切な森林管理
放牧地・農地への転用
産業資材確保の
ための農園開発
森林伐採
薪炭材の過剰採取
過度の焼畑農業
窒素酸化物排出増大
二酸化炭素吸収量減少
森林の減少
水循環や熱バランス
への影響
生息・生育環境の改変
生物多様性の減少
(野生生物の減少)
伝統的な燃料資源の不足
(薪炭材など)
水土保全機能の低下
土壌の流出
土壌の塩類化
洪水・渇水による影響
渇水による植生の変化
燃料消費の増加
家畜の糞や
廃棄農作物などの
家庭用燃料への転用
耕地面積の減少
砂漠化
土壌の劣化
都市の
スラム化
人体への健康被害
生存環境の悪化
人口の増加
(人類の諸活動)
工業生産の増大
農業・林業プロセス
農業・林業プロセス
による悪影響
交通機関の発達
自動車の排気ガス
工業プロセス
による悪影響
民生プロセス
による悪影響
廃棄物の増加
過度の焼畑農業
森林の減少
永久凍土の溶解
火山活動
オゾン層の破壊
成層圏の対流変化
大気環境悪化物質の
大気環境悪化物質の
排出(大気汚染)
メタン排出増大
二酸化炭素
排出増大
二酸化炭素
吸収量減少
地球温暖化
森林の減少
砂漠化
永久凍土
の融解
気候変動
海面上昇
干拓・埋め立て建設
干拓・埋め立て建設
海流・潮流
循環の変化
生息種の変化
生態系への影響
偏西風の変化
洪水・渇水
による影響
降水パターン
の変化
淡水資源
の不足
人体への
健康被害
陸地の消失
都市部に
人口集中
居住面積の減少
淡水資源の不足
沿岸災害の多発
地形の変化
生息・生育
環境の変化
生物多様性
の減少
食糧資源不足
耕地面積の減少
農作物収穫量の減少
生存環境の悪化
それらは原因・結果として複雑に絡み合い問題を深刻化させている!
図8
生徒にまとめとして提示した「森林砂漠化」と「地球温暖化」に関する項目
図8は、生徒にまとめとして提示した「森林砂漠化」と「地球温暖化」に関する項目であるが、このよ
うな関連キーワーズを回答中に提示するほうが良い場合もある。
【160401】
地球環境問題
地球に優しく
自然環境を大切に
自分なりの環境哲学を
持って行動しましょう。
図9
昀後にまとめとして提示したアピールの画面
図9は生徒にまとめとして提示したアピールの画面である。体系的な地球環境の相互関係を機能的に体
系化した機能体系図を講義の基礎としているので、講義の後半において機能体系図との関連を図示する
ことにより、生徒の環境問題に対する関心を高めることが可能であった。
(2)研究成果の今後期待される効果
地球環境問題は、昀終的には人間の意識・心理に帰着する。したがって環境に対する正確な誤りのない
知識を教育することは、社会の昀優先課題であるとも言える。そのためには効果のあるあらゆる方法論
を試みるべきである。今回の研究で、コンピューターとゲームの活用という方法で、予測以上の成果の
あることが確認された。今後、是非ともこの方式が環境教育に幅広く活用されることを望みたい。多く
の市民の正確な知識のみが誤りのない未来への対応を与えるものである。
【160401】
4.5 温暖化対策の農学的技術対応(森敏サブチーム)
4.5.1 不良土壌緑化のための肥料の開発
(1) 研究内容および成果
「温暖化対策の農学的技術対応」研究として「不良土壌緑化のための肥料の開発」を行ってきた。いう
までもなく温暖化の原因物質である炭酸ガスの吸収源として植物は多大な貢献をしている。劣化環境土
壌である地球の陸地の20%を占める石灰質アルカリ土壌での作物や樹木の生育にとって、昀大の制限
要因は鉄欠乏症である。これらの土壌では鉄は存在するが、植物が吸収できない形で存在するので、不
毛の地となっている。著者は 1995 年以来有効な鉄系肥料の開発が、食糧問題や、温暖化問題に重要な
課題であることを主張し続けてきた。そこで鉄系肥料が世界中で開発されてきたが、まだ成功した者は
いない。著者らは試行錯誤をつづけて、2004 年やっと有望な鉄系肥料の開発に成功した。実験は以下の
3 カ所で行った。
①東北大学川渡農場に貝化石土壌(炭酸カルシウム70%含有のpH9.3 のアルカリ土壌)を 200 トン
を持ち込み水田を造成し、水稲を栽培した。この石灰質アルカリ土壌ではN、P、Kのみの施肥で
はイネは全く生育せず枯死するが、(株)チッソが製造する微量要素入りNPK肥料である“Long
Total”で、水稲を昀終段階まで生育させ、約 2 ton/ha の収量を得ることができた(2003 年)。こ
の収量は水稲の全世界の平均収量に等しくはあるが、通常の日本の土壌での収量の半分以下であっ
た。そこで肥料を変え某社の鉄系資材を偶然(!)使用したところ、2004 年の実験では 5.9 t/ha
と同農場のクロボク土の 5.4 t/ha を上回る好成績が得られた。
②また、同様の研究を、石川県立農業短期大学で上記鉄系肥料“Long Total”を用いて陸稲で圃場試
験を行い、2000-2004 年の5年にわたって一定の施肥法を確立した。
③また、富山県の日本海鉱山(アルカリの貝化石鉱山)で 2002-2004 年の3回にわたって、水平に切
り込んだ鉱山跡地路面のアルカリ性のバージン・ソイルに4種の鉄系肥料の試験区を設けて、自然
植生の回復実験を行った。その結果、製品名 E002(内容はEDTA-Fe)のみが、2年目から効果
が現れ、無肥料区に比べて約2倍のバイオマスを得た。
(2) 研究成果の今後期待される効果
以上のように、著者が長年求め続けてきた、アルカリ土壌への鉄系資材の開発とその施肥法の開発に
確実に進展がみられた。特に①で発見された鉄系肥料は世界の石灰質アルカリ土壌に適応できる可能性
が非常に大きい。この肥料の普及は世界の不良土壌の生産力を画期的に高める可能性を秘めている。従
って世界の学会で発表し、世界の研究者と共同研究をし、この肥料を認知させる必要がある。そのため
に鋭意準備を進めている。
ただし、(1)の研究内容および成果は特許との関係もあるので詳細は別の機会に報告する予定であ
る。これまでの研究の一部は以下の別の竹内班の報告の中に掲載されている。
1. 森敏 温暖化対策の農学的技術対応-生物・化学的解決策 社会技術研究「地球温暖化問題に
対する社会技術的アプローチ」平成 14 年 10 月
2. 森敏 温暖化対策の農学的技術対応 -「鉄」を中心とした生物・化学的解決策の試み- 社
会技術研究「地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ」平成17年(印刷中)
4.5.2 北朝鮮はいつまで飢えるのだろうか?
-過去14年にわたる「油断下」の悲劇的な農業実験-
(註)
著者は鉄系肥料の開発研究を行う一方、日頃から北朝鮮の食糧危機の報道が気になっていた。何故北
朝鮮がいつまでたっても海外からの食料援助を乞い続けるのかが全く理解できなかった。そんななか、
偶然鮫島宗明民主党議員から、2年越しの懸案である北朝鮮訪問の許可が得られたので、参加してみな
いかという誘いがあった。彼は東大農学部の後輩であり、気心の知れた仲であったので、訪朝を共にす
ることになった。そもそも竹内啓プロジェクトは、「地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ」
というテーマで展開されており、資源・エネルギーの使用量の逓減を如何に社会技術的に導いていくか
は、構成班員の中での大きなテーマでもあった。著者は、北朝鮮に行って、一国が資源・エネルギーを
突然絶たれたときに、どのような経過をたどって農業が崩壊し、食糧が自給できなくなるかの典型的な
実験例を目の当たりに見ることになった。
そこで、本報告では、社会技術的な観点から、北朝鮮の農業視察の報告を以下に行う。
【160401】
<要約>
著者は、鮫島宗明民主党議員を団長とする農業使節団の一員として、2004年8月14日-20日
にわたって北朝鮮を訪問し、農業を視察してきた(4,5,9,11,12)。平壌から 120km以内の地域の比較的
気候が温暖で農業生産力の高いと思われる、主として水田地帯のごく表面的な視察であった。しかしそ
こで見聞したことは、訪朝前には予想しなかった事であった。
肥料が足りないということはうすうす予想していたが、現在の使用量が1980年代の3分の1まで
低下しているとは意外であった(2)。すべてをにぎるのは、石油であった。1989年にベルリンの壁
が崩壊し、それと連動して1990年代にはソビエトをはじめとする東欧社会主義国が次々と崩壊した。
中国も急速に経済は資本主義に変質しつづけている。社会主義圏内貿易を続けるかぎり北朝鮮はもとも
と外貨がそれほど必要でなかったので、外貨蓄積がなかった。ところが、ソビエトや中国からいきなり
現金決済の取引を要求されたわけである。従ってまずソビエト、中国からの石油の輸入がストップした。
多くの石油火力発電が稼働しなくなった。水力発電のみでは、電力不足で、国内での立派な肥料工場で
の生産が停止した。燐鉱石はある(と聞いた)がリン酸肥料を作るのに製錬の電力がない。ハーバー・ボ
ッシュ法で空気中チッソガス(N2)をアンモニアに変換するのに必要な高温高圧が得られない。従ってチ
ッソ肥料も作れない。現在わずかに友誼的に続けられている韓国と中国からの化学肥料の支援量では全
く足りず、その絶対的不足が10年以上続いている。現在の化学肥料の総使用量は昀盛時の3分の1で
ある(1)。したがって作物による土壌中の養分収奪から来る“地力”の低下が著しい。北朝鮮の水田土
壌の交換性カリ(K)含量、全チッソ含量、全炭素含量などはいずれも日本の3分の1に低下している。
耕耘、田植え、イネ刈り、農産物収穫物の運搬も人力に頼らざるをえない。肥料ばかりでなく農薬、ビ
ニールなどの農用資材が買えないことも農産物の低収量の原因である。2004年の北朝鮮は豊作と報
じられているが、「北朝鮮の国産米+40万トンの自力外貨による輸入米」でも、まだ人口の4分の1
に当たる640万人分(約50万トン)の米が不足している、と国連の世界食糧計画(WFP)が報じ
ている。食糧が足りないので、金正日総書記によって米、大豆、トウモロコシ、ポテトなどの2毛作が
奨励されている。このことが、見えないところで地力の収奪をますます加速させていると考えられる。
一方、北朝鮮農業の生産力低下の原因としては金日成が主導した「主体(チュチェ)農法」に問題があ
るという批判が諸外国からあるが、著者にはその主体農法なるものの実態がなんなのか短期間の訪問で
はさっぱり分からなかった。しかし農業科学院での研究者との交流では、「北朝鮮農業の抱えている問
題」に対する彼らの現状認識は非常に的確であった。彼らとの早期の学術交流、できれば人的交流を通
じて、彼我の農業技術・研究の内容が相互理解され、食糧問題の解決に向けた動きが急速に生まれてく
るのではないかという予感がしている。
以下は、訪問時に毎日作成した視察団のメモ(11)をもとに、北朝鮮の農業事情を社会技術の観点から
著者なりにまとめた物である。
はじめに
これからのべる内容を理解するためには、朝鮮戦争以降の北朝鮮の歴史の知識が必要である。著者も、
あまり詳しい知識がないままに訪朝したので、現地での理解が十分でなかったことに、帰国してから気
がつき、急遽種々の本を読みあさった次第である。大いに反省している。以下は、著者が自己流にまと
めた簡単な北朝鮮史である。昀小限これだけの歴史認識があれば、現在の北朝鮮の農業問題は理解でき
るはずである。
(表1)北朝鮮年表
1950年6月
1953年7月
1958年
1959年8月
1961年
1989年
朝鮮戦争勃発。国土は廃墟と化した。
板門店休戦協定。
金日成独裁体制確立。
在日朝鮮人帰還協定。 1984年までに
9万3000人帰還。
中国・ソ連との友好協力相互援助条約。
東欧・ソ連 社会主義体制の崩壊。
中国の改革開放路線、市場経済の導入。
「友好価格」
(バーター取引)で決済されて
いた石油・食糧の輸入が外貨決済方式に変
更されて途絶し、経済困難が深刻化(莫大
な対外債務が生じた)。
【160401】
1992年1月
1993年3月
1994年7月
9月
国際原子力機関(IAEA)核査察協定に調印。
核拡散防止条約(NPT)から脱退。
金日成死去。
雹害。
米朝非核合意(ジュネーブ合意)。
1995年
水害(百年来?の大洪水)
。
1996年7,8月 水害。
1997年7月
大干ばつ?
10月 金正日 総書記に就任。
1995年
国連人道援助局(DHA)による食料援助開始。
1997年8月
米朝基本合意に基づく朝鮮半島エネル
ギー開発機構(KEDO)が軽水炉の建設に着手。
運転再開までに代替燃料(重油)を毎年 50
万トン供給する約束であった。
2002年10月 IAEA(International Atomic Energy Agency)
の核査察官強制退去。金正日核兵器濃縮ウラ
ン開発を認める。
11月 米国からの重油供給停止。
1.北朝鮮の7つの農業地帯区分
北朝鮮の農業を理解するためには、農業の地域特性を知らなければならない。38 度線以北の中央部か
ら北部一帯は痩せ地である花崗岩の山岳地帯である。農業科学院の説明によれば、全国を7地区に区分
して、行政指導しているようである。
① 東部日本海側は山陰になるので、7,8月は日あたりが悪く気温較差が小さい平野地帯。
② 東部日本海側北部は雨が少なく照度が少ない冷害地帯。
③ 屋台骨である中部山岳地帯は雨が多い。
④ 西海岸南部の気温が高く温度格差が少ない地帯。
⑤ 西岸中部は気温が高く沖積地帯が多く稲作に向いている。
⑥ 北部の中国と接する西側地帯は寡照で温度格差が大きい。
⑦ 気温が低く雨が少ない北部高山地帯。
これらの地帯区分のうち西海岸側は稲作地帯であり昀も農産物の生産性が高い。この地域に住む約40
0万人が比較的豊かな(?)階層と思われる。それ以外の地帯は、トウモロコシかダイズかポテトを栽
培しており、農産物の生産性は低い。
我々視察団は、平壌からミニバスを用いた日帰りコースで1週間を総走行距離 1200 km にわたって主
として④と⑤の水田地帯を視察した。
2.穀物栽培面積と生産量の推移
FAO によると 1999-2000 年のデータは以下のようになっている。我々が訪朝中に、穀物収量データな
どを対外文化連絡協会(通称:対文協)に再三要求したが、それは国家統計局?の管轄だからわからな
い、ということで、農業統計を一切入手できなかった。我々が泊まった普通江(ポトンガン)ホテルに
は、国連(UN)の連中も宿泊していたので、彼らにはデータを提供しているのかも知れない。北朝鮮
の農業データに関しては、韓国のデータとFAOなどのデータが公表されているが(7,8)、それらがど
のようにして入手されたのかはわからない。両者のデータは、類似する場合もあるが、異なる場合もあ
る。とりわけ、1980年から1990年にわたるイネの収量データは、同じFAO発表と称するデー
タでも極端に異なる場合があり、ほとんど信用できない。この間に日本などは単位面積あたりのイネの
収量は冷害年などもあって増減を繰り返しているが北朝鮮では徐々に上がっており日本の平均を突破
するという、およそ信じ難いデータがFAOから提出されている(2)。FAOが北朝鮮当局のねつ造
データを丸飲みした可能性が大である。
(表2)1999-2000 年の穀物収量
作物
玄米
トウモロコシ
ジャガイモ
栽培面積(1000ha) 収量(t/ha)
580
4.04
496
2.49
180
10.07
総生産(1000t)
2343
1235
1813
【160401】
コムギ、オオムギ
雑穀
123
20
1.96
1
241
20
北朝鮮農業科学院の研究者によれば、1980 年代には食糧は十分配給されており、家庭で余ったお米は国
家が買い上げてくれていたとのことである。UNの推計データによれば 1995 年以降今日に至るまでは
北朝鮮は毎年 100-200 万トンの穀物輸入国に転じている。表 2 は昀近のデータで、比較的妥当な線では
ないかと思われる物である。
3.主要栽培作物の現状は?
イネ:水田の風景は日本と少し異なっていた。日本のように斉一な株の並びが見られず、出穂している
穂も一定の方向になびいていなかった。おそらく、密植栽培や、直播のせいもあろう。あるいは、住民
の総動員での田植えのため、皆がバラバラに苗を移植するために株が斉一に並び難かったのかもしれな
い。このあたりは民族性もあるのかも知れない。また全般的に日本のイネよりも葉色が淡かった。葉緑
素計(ミノルタの SPAD メーター)を持っていかなかったのが悔やまれるが、日本のイネの葉の緑色度
が SPAD 値で 30-40 の値が北朝鮮では 20-30 ぐらいの値ではないかと思われた。チッソ成分やカリ成
分の欠乏が考えられた。一枚の田んぼの葉の色が不均一であることが多いのは肥料の播きムラか、田面
が水平に均一に造成されていないかのいずれかであろうと思われた。輸入農薬がないので、自家製のく
すり(内容は天然物由来というがよくわからなかった)以外はあまり使っていないという。そのわりには
病虫害が出ていないように見受けられた。あまり稲熱(いもち)病も見られなかった。今年は、比較的
生育期間に天候が高温で推移したのが良かったのかも知れない。穂先が不稔の白穂が観察されたがこれ
は肥料切れが原因のように思われた。
平壌の農業科学院での水田では籾収量 9t/ha(従って玄米重量で約 6t/ha)ということであった。但
しここでは化学肥料と農薬を使ったとのことである。1 平方メートルあたり、40 株を植えるという方法
が普通で、かなりの密植である。日本はその半分以下である。日本の場合はあまり密植すると、蒸れが
起こり、病害虫にやられやすくなるので、奨励されていない。現場で有効分けつを数えてみると一株に
3 本と極端に少なかった(日本では 12 本ぐらい)。つまりあまり分けつしないような品種を採用してい
るように見受けられた。それなりに、化学肥料と農薬があれば高収量を得られる稲作技術体系を有して
いることが確認された。チュチェ農法がイネの収量が低い原因である、という諸外国の非難は当たらな
いかも知れない。
一方、現地農家やホテルやレストランで出されたお米は、かめばかむほど味が出る、なかなか品質が
良いものであった。この味の問題は、著者の専門領域でもあるのだが、チッソ(N)肥料を少なく育て
たお米の品質は粘りがよくなるという日本の研究者のデータがあるということを、紹介しておいた。北
朝鮮では肥料が足りないのでやむなく低チッソでイネを栽培しているので、お米の収量が低いが、意外
に品質はいい物が出来ているようである。当面お米の「収穫量」を如何に確保するかということに頭が
いっぱいの北朝鮮の研究者や技術者には、お米の「品質」まで頭が回らないので、無理もないことであ
る。なお、イネの田植えと収穫時には地方の党の書記以下、軍人、学生などを総動員して援農体制に入
るとのことであった。そのことによって、食糧生産の大切さを国民全員が体得する訓練をする、という
のが金日成の方針であるとのことであった。我々が訪れたときにイネはまだ収穫期ではなかったので、
実態を観察したわけではないが、実情は石油不足が原因で農地に国家総動員態勢をしかざるを得ないの
だと思われる。しかしこの制度自体は日本でも採用したらよいのではないかと思ったものである。日本
では天皇陛下が必ず皇居の田んぼで「田植え」と「収穫」の儀式をするが、大部分の国民は田植えと稲
刈りの経験がない。これでは日本の若者はお米を作る尊さが実感できないであろう。
因みに、立派な農業博物館にも案内されたが、ここでは、北朝鮮が開発した作物(イネ、トウモロコ
シ、コムギ、ポテト)の多彩な品種が、よく工夫して現物展示されており、なかなかいい実物教育であ
ると一同感心した。少なくとも、イネの育種に関しては、日本よりも腕がいいかも知れない。
トウモロコシ:栽培されているトウモロコシはほとんどが飼料用品種ではないかと思われた。石油がな
いために収穫・運送を一斉に人力で行わざるを得ないので、トウモロコシは十分に熟すまで放置栽培さ
れており、一斉に収穫されるものと思われる。未熟な段階で生食用に刈り取ることはあまり行われてい
ないと思われた。訪問先の農家やホテルで供されたトウモロコシはいずれもかなり堅い過完熟の物であ
った。2002 年 7 月 1 日の「経済管理改善措置」によって国民への配給制度が廃止され、食料を自分で調
達することが奨励されている。言葉を替えていえば、「食糧が足りなくなったので、国民はこれから食
料を自分で調達しなさい」と、国民は闇の中に放り出されたのである。その代わりに 1 戸あたり30坪
【160401】
の土地を自由に使ってよく、収穫物は市場で売って良いということになっている。そのためかどうか、
農家の周りの空き地には比較的生育旺盛なトウモロコシがびっしりと植えられていた。化学肥料がない
といっても、そのわずかな化学肥料はむしろ優先的に私有地に流されているのではないかという疑問を
持った。トウモロコシはどこに行っても見渡す限り河川敷から山岳の中腹まで開墾されて栽培されてい
た。それより上は、リンゴやナシなどの果樹が栽培されていた。その上から山頂に至るまでは灌木であ
る。大木は一切無い。
ダイズ:イネが栽培できないところではトウモロコシが栽培されており、冷涼な北部山岳地帯は現在ポ
テト栽培が奨励されている。ダイズも重要な油糧作物として栽培されている。水田の畝間にはいわゆる
「畦ダイズ」が奨励され、空間的な有効利用が徹底的に図られている。河川敷などもほとんど隈無くト
ウモロコシかダイズが栽培されている。ダイズは重要なタンパク源として、学校給食として豆乳1合が
与えられているとのことであった。
ジャガイモ:我々が訪問した北朝鮮西部地域ではポテト栽培は見られなかったが、平壌の農業科学院で
は、バイオポテトの大型のハウス施設を見学し、ビデオで説明を受けた。現在ポテトは全耕地の 2%作
付けされているが、いずれ 5%には持っていきたいとのこと。全世界から 200 種類のポテト品種を集め、
無菌的に成長点培養して、カルス化、再生、水気耕栽培、そして ELIZA 法によって、ウイルスフリー株
を選抜し、地域の特性にあった品種を増殖して、各地に配布しているという説明であった。しかし、石
油が無くてトラックが動かないので配布事業に支障を来している。広大なビニールハウス内の水気耕栽
培システムや培養液の自動調整システムはオーストラリアからの指導を受けた。またポテトシステムを
主導している農業生物研究所全体の建設に当たっては、FAO,UNDP(国連開発計画)World Vision
などの、資金援助を受けた。ここのカン伸治所長は在日帰国者であった。なお、実際の圃場でのポテト
栽培の技術に関しては、北海道庁の出身者 2 名(佐藤久泰氏、沢辺外喜雄氏)が協力して、これまでの
北朝鮮の単位面積あたりの収量を3倍に引き上げたということが、後に東京新聞に掲載された(10)。
野菜:この時期どこを見ても大規模な野菜畑にはお目にかかれなかった。トウモロコシの生えている畑
の下に、後作として、大根の種がまかれており、それが芽を出しているところがあった。秋に、野菜は
供給されるのかも知れない。ホテルで出てくる野菜はほとんど生野菜が無く、キムチも貧困であった。
根菜も貯蔵食品で著者にとって得体が知れない物が出てきた。当面は耕地では野菜を育てるよりは、穀
物を育てることが優先されているのであろう。北朝鮮国民のミネラルやビタミンC不足が懸念された。
開城市近郊の朝鮮ニンジンの栽培現場に案内された。見せられたのは 1 年生のニンジンで花崗岩の山
が崩れて風化してできた砂礫の植えに栽培されており、珍しくも青いビニールシートで雨をよけており
とその上をわらで遮光していた。ここで農業資材としてのビニールシートを初めて見た。やはり朝鮮人
参が高級商品であるがゆえに、それだけ外貨を投資して購入しても採算がとれるのであろう。試みにニ
ンジンを 1 本抜いて、成長の具合をみせてもらった。引き抜いたニンジンをまたもとの畑に戻そうとす
ると、「もうそのニンジンは弱っているので病原菌が繁殖するので、戻してはだめだ!」と強くいわれ
た。そこで、全員で味見をさせてもらった。少し苦いが、かなり旨みがあった。アミノ酸含量が 20%も
あるという説明であった。この 1 年生のニンジンはつぎに他の場所に移植されて後 6 年間育てられるの
であるが、その場所には案内してもらえなかった。日本ではテレビの報道でも承知のように、北朝鮮と
中国との国境で朝鮮人参は日本人に向けて密売が流行している。2-3本で 14 万円と報道されていた。
従って、我々にその栽培地を案内することは出来なかったのであろう、と日本に帰ってそのテレビを見
ながら、妙に納得した。
4.貧困な家畜飼育・旺盛なナマズの養殖
乳牛(ホルスタイン)と豚は一匹も見かけなかった。道路脇や河川の傾斜地の荒れ地で雑草を食べさせ
ている赤毛和牛がたまに見受けられた。また、山羊が相当数見られた。数頭ずつ荒れ地に放牧されてい
る。山羊の飼育は国家的に奨励する方向にあるとのことである。現在頻繁にテレビで放映される脱北者
の渡る鴨緑江上流の北朝鮮側の河川敷にも山羊の放牧の姿が偶然撮影されていることからも、山羊を奨
励していることが察せられる。いずれの経済動物にも与える飼料穀物の余裕はあまりないものと思われ
た。普通江(ポトンガン)横にある国有ウンハ・ナマズ工場に案内された。以前はウナギを養殖してい
たが、いまはナマズで、それは飼育が比較的簡単で、生育が早いので、国民のタンパク源として奨励さ
れているのだということであった。翌日農家でナマズの蒲焼きを供されたが正直言ってあまりおいしい
とは感じなかった。ナマズの飼料は輸入物の固形ダイズ糟を粉砕し、トウモロコシをポップコーンに爆
破した後粉砕し、それらを混ぜて固形ペレットとして自分たちの工場で作っていた。それを毎日定時に
【160401】
ナマズ池に散布してやる。それを某女史が実演してくれた。この女性は工場の掲示板に“労働模範”と
して顔写真入りで表彰されていた。このような顕彰制度を用いて、やる気を起こさせているのだと実感
した。これも先の 2002 年 7 月 1 日の「経済改善管理措置」の延長線上にある労務管理なのかも知れな
い。ナマズは稚魚から工場内で養殖しているということで稚魚養殖場は清潔にしていた。食用のジャン
ボタニシにも挑戦するのだといって、50x40x30cmぐらいの四角いガラスの箱に野菜を入れて
ジャンボタニシの養殖実験を行っていた。工場の庭の空き地にはアヒルが100匹ほど飼われていた。
わずかな空き地にもトウモロコシが植えられており、工場の天井部分には食用ハトも飼育されていた。
20面(一面が約 30mx50m)あるナマズ池は年 2 交代で使用しているらしく半数が野菜(大根)栽培
されていた。ナマズの糞や飼料の残査で、栄養分が豊富なので、野菜がよく育ち、それを市場で売るの
だそうで、若い女性が 10 人ばかり大根畑の間引きを熱心に行っていた。このナマズ工場全体がまさに
多角経営で、少しでも食糧を生産しなければ経営が成り立たなくなるという危機感を感じさせられた。
この工場で 200 人が共同体として飯を食っているとのことであった。20 ha という大規模なナマズ工場
は全国に 5-6 カ所、ウンハ・ナマズ工場と同様のナマズ工場が全国に多数あるとのことであった。
5.治山治水に手がまわらない!
山頂に至るまできちんとした等高線の砂防堰堤が施されている山は、我々が滞在中見聞した範囲では
わずかに2つの小さな山だけであった。ほとんどの山は手が入らずにいると見受けられた。谷間の急斜
面を山頂から山裾に至るまで崖崩れが起こっているまま放置されている山が多い。農業科学院の研究者
によれば、「植林はほとんどなされていない、絶望的に資金がないためである」ということであった。
表 1 の年表に示したように、北朝鮮の山は 1950-1953 の朝鮮戦争で国土が廃墟と化したが、山も山火事
ではげ山になった。その後、金日成の命令で全山に松を植林した。松は痩せ地の花崗岩に向いている(肥
料がいらない)からという理由からである。1989 年にベルリンの壁が崩壊して東欧共産圏が雪崩を打っ
て崩壊した。しかしそこで社会主義を捨てない北朝鮮は世界貿易から取り残されてしまった。外貨を持
たない北朝鮮は石油が購入できないので、民政用電力が供給できなくなった。そのためにやむなく 40
年かかってやっと育った松の木が民衆による薪炭用に伐採され尽くしてしまった。数年間で全山はげ山
になったと想像される。現在密集した美しい松林が残されている山は、松茸の栽培地として、厳重に手
入れされて保全されているように見受けられた。松茸は現在日本が北朝鮮から輸入する費目のうち、ア
サリ、男性用スーツ・ジャケット、ズワイガニ、トランス・コンバータ、無煙炭、のつぎに位する(6
位)年間 9 億円の輸出商品である(3)。
はげ山のために、大雨が降れば、洪水になるのは理の当然である。1995,1996 年は 100 年来の大洪水
であった。逆に、干ばつ時には保水力を失った山は灌漑用水を供給できない。したがって干ばつが頻繁
に起こった。1997 年は大干ばつの年であった。そこで近年清川江ダムを設け自然勾配の流量で 40t/sec
の農業用水路を建設し 2002 年に完成した。これで大同江流域の水不足は解消した。
一説によると 1995-1997 の間に飢えで死亡したといわれている。北朝鮮の人たちはこの時代のことを
「苦難の行軍の時代」と呼んでいる。このときに比べれば、現在の国際的孤立や食糧危機は何とか耐え
られる、といいたいようである。
6.化学肥料投入量の激減が、農産物収量を激減させている
これまで述べてきたように、農村には電力が来ていない。わずかにトラクターが動いているが大部分は
重油がないのでほとんどの農業機械が開店休業である。使われているトラクターも時代物である。国全
体に化学肥料がないので、金生日はやむなく有機農業を奨励しようとしている。農業博物館と農業科学
院の展示物の中にあった肥料袋を見る限りでは、かって 7 つの肥料会社が稼働していたと考えられた。
成分は、ホウ素、亜鉛、マグネシウム、希土類微量元素、過リン酸石灰、石灰窒素、苦土石灰、珪酸、
硫安などである。現在肥料は火薬の原料になるということで、国連からの援助物資で厳しいチャックが
かかっており、日本ばかりでなく世界から北朝鮮への輸出は禁止されているようである。しかし貨車経
由の中国からの輸入はチェックを受けていないらしく、韓国と中国から友誼的に肥料や農薬が供給され
ている。しかしそれは必要量の 3 分の 1 にしかならない。食料援助よりも、肥料援助の方がはるかに北
朝鮮の食糧自給に役立つことは明らかである。肥料といっても、硫安や硝酸などの原体での提供は、確
かに軍事転用(爆薬であるニトログリセリンの原料となる)の危険性がある。しかし、いろいろの肥料
を混ぜ合わせた複合肥料(化成肥料や配合肥料のこと)ならば、これらの成分の中からわざわざ硝酸を
抽出するのは至難の業であり、電力もいるので、大規模にやるのは不可能に近い。従って世界が複合肥
料を北朝鮮に支援することは、食糧支援よりもはるかに長期的に有効な支援と見なすことが出来る。著
者は帰国して、知人から、昀近出版されたいくつかの北朝鮮関係の文献を紹介された。その中に、北朝
【160401】
鮮における肥料投入量と穀物収量の関係が載っていたので、転載する(図 1,図 2)。この図で明らかな
ように、化学肥料の投入量が逓減していくとともに、
(表3)北朝鮮の4つの農場の全7地点の土壌の化学性(天野ら(2)より転載)
北朝鮮の水田土壌
日本の水田土壌*
C.E.C.
T-N
m.e./100g
(%)
14.7±3.4 0.07±0.02
18.6
0.25
T-C
(%)
0.95±0.24
2.9
PH
Ex-K2O
(H2O)
mg/100g
6.36±0.52
8.0±3.8
5.7
23.8
*但し、日本の水田土壌は3000点以上の測定値の平均値
コメとトウモロコシの収量が減少している。昀盛時の 3 分の 1 付近にまで化学肥料の投入量が減少し、
それと平行して穀物収量も同じく 3 分の 1 近くに減少している。これと関連するデータとして、1999 年
に京都大学の天野高久氏らが現地調査をおこなったデータがある(2)。この時点ですでに、北朝鮮の水
田の、全窒素、全炭素、可溶性カリ含量は、日本の水田の平均値の 3 分の 1 に減少していることがわか
る。これらの成分はいずれも、水田の「地力」の指標であるので、北朝鮮の潜在地力は著しく低下して
いると考えられる。これを元の 1980 年代の状態に戻すには、ここまで低下してきたと同じだけの年月
(10 年以上)がかかると考えなければならない。
7.やむ終えず有機農業へ向かう?
【160401】
化学肥料が使えなくなったので、①少ない化学肥料でも多収穫の品種を開発することや、②有機農法で
有効な資源リサイクルをする研究をすべし、という金正日総書記の指導があたという。そこで我々は有
機農法の研究を行っている双雲(ウンサン)試験農場に案内された。ここでは在日帰国者である粛川農
業大学作物研究所長である李均秀教授が設計して圃場実験をしていた。イネの育苗の時期を 45 日、55
日、65 日と替えたり、化学肥料と有機物の投与量の比を変えたりして昀大収量が得られる技術の組み合
わせを模索していた。昀終的には今後 3 年間で共同農場全部の 800 ha の面積を有機農法に持っていき
たい、ということであった。山羊以外にほとんど家畜がいない状態で、山もはげ山ばかりなので、大規
模な面積に必要なチッソ含量の高い有機物資材をどのように確保するつもりなのかよく理解できなか
った。この農場でも、例の「経済改善管理措置」によって自助努力が奨励されているらしく、多角経営
が試行されていた。肥料工場、農薬工場、堆肥工場の建物が造られつつあったが、いずれも建設途中で、
頓挫していた。電力が供給されないので、工事が進捗していない。付近の山の山頂に、イギリスの Warwick
University の教授が、NGOとして 3 機の風力発電装置を来年設置してくれるはずである、と聞かされ
た。真偽のほどはわからない。朝鮮有機農業開発協会の朴昌男書記長との話の中では、有機農業に関し
て、日本の状況や世界の状況が正しく把握できていないように見受けられた。
8.まとめ
以上を総括すると、北朝鮮農業崩壊のプロセスは表4のようにまとめられる。
また、今後の北朝鮮の食糧支援策として表5のプロセスが考えられる。これらのうちエネルギー支援以
外は日本と北朝鮮の国交が正常化しなくても、現在の国連を経由した日本の支援レベルをより効率的に
行うために可能な方策である。
(表4)北朝鮮農業生産力崩壊のプロセス
1989ベルリンの壁崩壊(社会主義圏の相互扶助システム解体)
↓ロシア、中国とのバーター貿易の一方的中止宣告を受ける
↓石油輸入の減少
↓電気エネルギーの枯渇による工業活動の停止
↓燃料資材としての薪炭採取による山林の伐採
↓治山治水の崩壊
↓肥料・農薬生産停止
↓現代農法の崩壊
↓2毛作の奨励・ポテト生産の奨励
↓地力の低下
↓有機農法(?)の奨励
(表5)北朝鮮食糧問題の技術的支援策
現物としての食料援助
+
肥料、農薬、農業資材の支援
+
治山治水(土木事業)の支援 ↑ 根本的には エネルギー供給の支援を 9.参考文献
【160401】
1)Anthony Boys:「The Limit Energy-Based Agricultural Systems:Causes and Lessons of the ”North
Korean Food Crisis”」日本エネルギー学会誌 (2004)83,409-416
2)天野高久、稲村達也、井上博茂、高泰保、南正院:「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ならびに
ロシア沿海州における稲作低収要因の解析とその対策に関する研究」 平成 11 年度日本海交流促進
研究助成成果報告書(平成 12 年 8 月)
3)週間ダイアモンド: 金正日の経済 2004 年 9 月 4 日号 28 頁-47 頁
4)鮫島宗明:「農学博士の代議士が現地で観察した北朝鮮農業事情」 正論 140 頁-146 頁 平成 16
年 12 月号
5)石堂徹生:「日本の視察団が北朝鮮農業の現場を見た」 世界週報 34 頁-37 頁 2004. 11.16
6)化学工業日報:北朝鮮の農業事情、化学肥料の生産激減、深刻なエネルギー不足響く。森敏東大名
誉教授が講演 2004.11.1 号
7)金成勲、金致泳:「北朝鮮の農業」 農林統計協会 2000 年 9 月
8)朴貞東:「北朝鮮は経済危機を脱出できるか」 社会評論社
9)日本肥料新聞:人道支援は化学肥料で 森敏氏が肥アン協で講演 平成 16 年 10 月 15 日号
10)東京新聞:実績主義を入れやる気も倍増
北朝鮮変わる農業
2004.8.29 号
11)鮫島宗明、石井龍一、石川重雄、森敏、井上雄介:北朝鮮農業事情視察団備忘メモ
A4 14 頁もの
12)森敏:北朝鮮スライドショウ 全 8 巻の CD
13)Nature : Inside North Korea Science 2004,305(5691) 17 September
追記: 我々の訪朝後、アメリカの SCIENCE 誌が INSIDE NORTH KOREAN SCIENCE(北朝鮮科学の内幕)と
いう訪問特集を組んだ(13)。我々の訪朝とタイミングを一にした実に時宜を得た特集であった。この中
では「北朝鮮の研究者と海外の研究者との人的交流・情報交流を通じて、北朝鮮を世界の中に組み込む
道が開かれるかも知れない」という提案がこのジャーナルの記者によってなされている。全く同感であ
る。帰国後我々はすでに学術雑誌や辞典の類を大量に農業科学院の研究者に贈った。これらが無事届い
ていることを祈っている。
【160401】
4.6
温暖化の健康に及ぼす影響の解析(湯本昌サブグループ)
4.6.1 はじめに
気温上昇(温暖化)という気候変動は、私達の健康に重大な影響をもたらす。本研究では、気温の上
昇が人の健康に及ぼす影響に関して、我が国を中心に解析した。
主要な危険の一つは、熱帯性および亜熱帯性伝染病の日本への侵入である。地球温暖化による気温上
昇ともなって、1990年代から蚊によって媒介される伝染病であるデング熱やマラリア、西ナイル熱
等の感染地域が、世界的な規模で急速に拡大している。他の一つは、夏期の異常な気温上昇(熱波)の
直接的な健康への影響である。気温の上昇は熱中症の原因となる。また、気温上昇は、心血管障害(心
筋梗塞)および脳血管障害(脳卒中)による死亡者数を著しく増加させる。我が国をはじめ、先進国の
大都市での「ヒートアイランド現象」による気温上昇は、「地球温暖化」による気温上昇の2倍から3
倍という異常な上昇を示している。
近年、気温上昇による健康への影響は急激な展開を見せている。西ナイル熱(西ナイル脳炎)という
本来はアフリカの熱帯伝染病が、1999年ニューヨークに初めて上陸し、2002年夏アメリカ全土
で大流行した。さらに、2003年8月フランスを39℃から40℃という猛暑(熱波)が襲い、パリ
やリヨン等の大都市を中心に14,802人の犠牲者を出した。温暖化による健康被害の急速な展開は、
古典的な「地球温暖化現象」の対策のみを主眼とした「京都議定書」の理念をはるかに越えている。フ
ランスで見られた様な大都市の暑熱化による大量死は、都市の「ヒートアイランド現象」に対する緊急
の対策を迫っている。
今や、気温上昇という環境破壊から私達の生命と健康を守るためには、個別の既成科学(自然科学、
社会科学等)を超えた新たな綜合的思考と、得られた研究成果を社会に適用する「社会技術」が、何よ
りも必要と考えられる。
4.6.2 熱帯性および亜熱帯性伝染病
1.西ナイル熱(西ナイル脳炎)
西ナイル熱(西ナイル脳炎)は、日本脳炎とよく似た致死性の高い伝染病である。30年前の我が国
の内科学書には、『日本脳炎は、本邦における昀も恐るべき急性伝染病』と記載されていた。
西ナイル熱の病原体は、西ナイルウイルスであり、日本脳炎ウイルスとも近縁である。西ナイルウイ
ルスは蚊の体内で増殖し、通常は鳥類に、時として人や馬などに感染する。発病した人の約5%が脳炎
や髄膜炎を引き起こす。脳炎を発症した患者のおよそ50%が死亡する。脳炎による死亡を免れた人も、
意識障害、精神障害、運動失調などの重篤な後遺症を残す。多くの場合、脳の障害は一生涯続く。西ナ
イル熱は、アフリカ、中近東、地中海沿岸等を中心として流行する熱帯性の伝染病であった。
1999年夏に、突然ニューヨーク市で、アメリカ大陸では初めて西ナイル熱の発病が認められた。
62人が発病して7人が死亡した。当時ニューヨークでは、野鳥や動物園の鳥たちが大量に死亡した。
カラスの脳から西ナイルウイルスが検出された。どの様にして西ナイルウイルスが、米国に上陸したか
は不明である。航空機でウイルスを持つ蚊が運ばれた、輸入したペットの鳥がウイルスに感染していた、
渡り鳥(コウノトリ説が有力)がウイルスを運んだ、感染した人が入国した等という可能性が考えられ
ている。また、バイオテロリズムとの説もある。2002年8月には全米で感染者が急増した。199
9年から2004年までに米国全体で、16,498人が発病し、639人が死亡した。
日本脳炎ウイルスは、通常はブタと蚊の間で感染を繰り返している。第二次大戦後の一時期まで、我
が国では人々の居住環境とブタの飼育場所とが近接していた。しかし、戦災の復興とともに両者が相互
に隔離され、衛生的な条件でブタの飼育が行われる様になった。そのため、我が国における日本脳炎の
感染は激減した。日本脳炎は、養豚と関係するいわば「農村型の伝染病」であった。もしも、ウイルス
が日本に侵入したとしよう。蚊を完全に駆除することは困難である。ブタのような家畜と異なって、野
鳥(カラス、カケスなど)を人の住む地域から追放することは難しい。鳥類は、広い範囲を自由に移動
する。西ナイル脳炎は、日本脳炎よりもはるかに恐るべき強敵である。
西ナイルウイルスに対するワクチンも特効薬も開発されていない。現時点での唯一の予防策は、我が
国への上陸を抑える水ぎわ作戦である。厚生労働省は、米国などから到着する航空機や空港近辺の蚊を
採取してウイルスの感染を調べている。今後の予防に関して、ウイルス研究者、医師、獣医師、鳥類研
究者、昆虫学者等の既成の学問領域を超えた人達による緊密な連携が重要である。
本来、西ナイル熱は、熱帯の湿地に蔓延する風土病であった。極めて長い期間、暑いナイルの川べり
に息をひそめていた。しかし、ごく少数の感染した鳥か、ウイルスを持った蚊が、大都会のニューヨー
クに迷い込む。僅かの時間の内に、多数の鳥を殺し、人間にまで感染を拡大する。寒く厳しい冬を乗り
【160401】
越えて、全米に大流行を引き起こした。ウイルスの性質や感染経路が大きく変化したのか。むしろ、近
代化された大都市の環境が熱帯化あるいは「ナイル川」化したためと思われる。地下鉄や地下商店街の
暖房、下水道などが、冬でも暖かい環境を作り、蚊や卵の越冬を可能にした。西ナイル熱は、大都会の
暑熱化が生んだ「新しい都市型の伝染病」と言えるだろう。
2.デング熱とデング出血熱
デング熱(デング出血熱)の流行は、台湾にまで拡大している。台北地方では、昀近二年間デング熱
の大流行が続いた。沖縄県は、台湾に近く人的交流も盛んである。また、台風の風に乗って、蚊が感染
地域から運ばれてくる可能性もある。現時点で、沖縄にデング熱のアウトブレイク(突発的な流行)の
危機が迫っている。病原体は、デングウイルスであり、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどの蚊によ
って媒介される。我国にもヒトスジシマカは広く棲息している。
デング熱は、東南アジアに多発する熱帯性伝染病である。一方、中南米ではデング熱の流行は認めら
れなかった。しかし、1990年代には中南米諸国から米国にまで、デング熱の流行範囲が短期間に拡
大した。また、アフリカ、オーストラリア、ハワイのマウイ島、台湾にも流行が広がった。デング熱は、
38℃から41℃の高熱で始まり、非常に激しい頭痛や関節痛、筋肉痛を起こす。デング出血熱は、デ
ング熱の重症型(死亡率50%)であり、解熱時に著明な出血傾向が認められる。年間約 1 億人がデン
グ熱を発病し、50万人以上がデング出血熱を発症する。
デング熱に対するワクチンや有効な治療薬などは開発されておらず、自然治癒にたよるのみである。
我国では、1942年に長崎、神戸、大阪、那覇などを中心にデング熱の流行があったが、戦後の発症
はない。台湾では、デング熱の大流行が認められる十年以上前から、デングウイルスに対する抗体(I
gM)陽性の個体数の上昇が認められていた。台湾では、かなりの長期にわたって、感染があったにも
かかわらずウイルスは沈黙し、ウイルスの変異や環境の変化等により、一挙に流行を生じたと報告され
ている。
我国へのデング熱侵入の防止に関しては、抗体(IgM)を用いた感染の早期発見システムの整備が
急務と考えられる。今後は、デングウイルスに対するワクチンや治療薬の実用化を急ぐ必要がある。ま
た、人体に有害な有機塩素系の殺虫剤にたよらない、蚊の駆除方法を開発することも重要である。
3.マラリア
現時点で人類にとって昀悪の伝染病がマラリアである。アフリカ大陸を中心に熱帯圏で、毎年3億人
から5億人がマラリアを発病し、150万人から300万人が死亡している。犠牲者の70%は5才以
下の小児である。
マラリアの病原体は、マラリア原虫である。雌のアノフェレス蚊がマラリア患者の血液を吸うと、マ
ラリア原虫は蚊の消化管内で増殖(有性生殖)し多数の胞子を作る。アノフェレス蚊が人を刺すと、マ
ラリア原虫は、人体内に侵入し赤血球の中で分裂する(無性生殖)。アノフェレス蚊は、現在でも我が
国に生息している。古代から1950年代まで、近畿地方、九州、中国、沖縄などで広くマラリアが流
行した。沖縄県で、マラリアが昀も猖獗を極めたのは、第二次世界大戦中の1945年夏であった。波
照間(はてるま)島住民1,590人の内、1,587人がマラリアを発病し(罹患率99%)、47
7人が死亡した(死亡率30%)。軍の命令による波照間島の全島民の西表島密林への強制疎開が原因
である。第二次大戦後、沖縄では徹底したマラリア撲滅の対策がとられた。全島民が毎週1回マラリア
病原体の血液検査を受け、保菌者は陰性となるまで抗マラリア薬を服用した。DDTが散布され、水た
まり、やぶ等が除去された。1961年以降は、沖縄を含めて国内でマラリアの自然感染は起きていな
い。
現在のマラリアの流行地域は、政治的に不安定で、経済的にも疲弊している。特にアフリカでは、マ
ラリアの流行が貧困を生み、さらに、内戦や経済的な混乱、農業の壊滅による栄養失調等が、マラリア
の治療や予防を妨げ、新たな流行を引き起こす悪循環を続けている。マラリアの撲滅には、社会的な安
定と予防や治療に対する人々の協力が、まず必要である。
マラリアの根絶が困難であった理由の一つが、長い間、効果的なワクチンが開発されなかったことで
ある。しかし、2004年10月15日のニューヨークタイムスは、有効なワクチンの生成に初めて成
功したと報じている。このワクチンは増強剤(ブースター)として、不活化したB型肝炎ウイルスを使
用している。新しいワクチンは、マラリアの感染を防げなかったが、症状の軽症化に成功した。ワクチ
ンを注射した小児のグループは、マラリアに感染したにもかかわらず、ほとんど死亡者を出さなかった
と、医学誌のランセット(Lancet)に報告されている。一方、ワクチンを注射しなかった対照グループ
では、マラリアにより多数の死者を出した。
待ちに待ったマラリアに対する有効なワクチン生成の端緒である。新しいワクチンを開発したスペイ
ンのアロンソ博士は、2010年までには、新ワクチンの実用化が可能と報告している。
【160401】
4.6.3 猛暑(熱波)の都市住民への影響
―――熱中症、心臓・脳血管障害―――
1.猛暑による都市住民の大量死
私自身、東京の夏が近年非常に暑くなってきたのは、
「地球温暖化現象」のためと思っていた・・・・・
少なくともこの研究を始めるまでは。
1900年から1999年の100年間で地球の平均気温は「地球温暖化現象」によって、約0.6℃
上昇し、日本の平均気温は1℃上がった。それに対して、東京都の年間の平均気温は、20世紀の10
0年間で3℃も上昇した。したがって、東京都は「地球温暖化現象」によって1℃だけ上昇し、「ヒー
トアイランド現象」によって2℃も上がったと推定される。すなわち、東京の気温上昇の主要な原因は、
「ヒートアイランド現象」であって、「地球温暖化」によるものではない。東京だけでなく、我が国を
はじめ世界中の大都市で、全く同じ傾向が認められる。昀も重要な問題は、夏の大都市の気温上昇が、
人間の生存をおびやかす程度にまで達していることである。1980年代から、先進国で猛暑による都
市住民の大量死が続いている。
1995年7月米国のシカゴ市では、昀高気温40℃という猛暑(熱波)のため、1週間で739名
が死亡した。同様の熱波による都市住民の被害は、セントルイス、カンザスシティー、ニューヨーク、
ロサンジェルスやギリシャのアテネで見られている。特に、2003年8月の猛暑では、パリやリヨン
などの大都市を中心に、14,802人もの犠牲者を出した。フランスの猛暑による死亡者数は、他の
災害による犠牲者の数(例えば、阪神・淡路大震災の6,433人、伊勢湾台風の5,098人)と比
較しても、はるかに多い。都市での猛暑は、地震や火山の爆発、台風、洪水等と同じか、それ以上の惨
害をもたらす。主な死亡の原因は、心臓・脳血管障害と熱中症であった。
2.熱中症
体内の熱産生が熱の放散を越えてしまい、体温の調節機能が破綻したために起こる障害を、熱中症と
呼んでいる。いわば、エンジンのオーバーヒートである。高齢者や幼児は、体温の調節機能が低く熱中
症を起こしやすい。
3.心臓・脳血管障害
我国では、心臓の血管障害(心筋梗塞)と脳の血管障害(脳卒中)が死亡原因として昀も重要である。
両者を加えると死亡者数の第1位を占め、ガンによる死亡数よりもずっと多い。
心臓血管障害も脳血管障害も1日の平均気温が25℃よりも低い場合には、気温が上昇すると死亡数は
減少する。逆に、1日の平均気温が25℃以上になると、死亡数が増加する。平均気温が30℃以上で
は、死亡者数の増加は極めて著しい(第1図)。高い気温は、強いストレスであり、交感神経を亢進さ
せ血圧を上昇させる。また、高温による脱水症状は血液の粘調度を高くする。これらの要因が、心筋梗
塞や脳卒中の危険因子(高血圧症、糖尿病、高脂血症、喫煙等)を持つ高齢者に作用し、死亡者数を急
激に増加させると考えられる。
【160401】
第1図 1950年代における米国の都市の脳血管障害(第1図a)と心臓血管障害(第1図b)によ
る1日当たりの死亡者数と1日の平均気温との関係を示している。1950年代では、米国においても、
一般の家庭ではエアコンの普及は進んでいなかった。
4. シカゴ市での大量死
1995年7月13日、シカゴ市を昀高気温40℃という猛暑が襲い、1週間で739名が死亡した。
病理解剖所見によれば、死因の45%は心臓血管障害であり、約20%が熱中症であった。熱中症と血
管障害がともに関与していた場合が、約35%存在した。犠牲者は、冷房装置のない集合住宅や家庭の
高齢者に集中した。1999年7月ニューヨーク市マンハッタンでも、20時間の停電に引き続いて猛
暑による多数の死亡者が報告されている。
5.フランスの猛暑による大量死
2003年8月、昀高気温39℃(パリ)から40℃(リヨン)という猛暑がフランスを襲い、14,
802人という未曾有の死者を出した。大きな犠牲が起きた主要な原因は、「花の都のパリ」の夏は涼
しく、冷房装置がほとんどなかったことである。一般家庭だけではない。病院の病室にも、高齢者の介
護施設にも冷房装置がなかった。第二には、救急医達の必死の説得にもかかわらず、保健省(日本の厚
生労働省)の官僚は事態を無視し、犠牲者の存在をもみ消そうとした。また、大臣や大統領は、バカン
スで外国にいた。被害への対策は余りにも拙劣であった。
6.日本の都市は安全か―――大規模停電(ブラックアウト)による危険
シカゴやパリでみられた猛暑(39~40℃)は、我が国でも既に経験している。2004年7月2
0日、東京都の大手町で39.5℃、足立区江北では42.7℃に達している。しかし、我が国では冷
房装置が普及しているため、欧米の様な大量死は起こっていない。
もしも、我が国の大都市を猛暑が襲い、同時に、大規模で長期の停電が起きたらどうなるか。198
7年7月23日、東京都の気温は39℃に達した。猛暑のため、エアコンによる電力使用が激増した。
過度の電力需要に耐えきれず、東京都を中心に1都6県280万世帯に広がる大停電が起こった。停電
は3時間であった。秦野市の病院では、停電のため21人の患者の人工透析機が停まり、医師や看護師
が総出で、手動で患者の血液ポンプを回し続けた。産院の新生児室で室温が30℃以上に上昇し、電車
は全て停まり、幼稚園児がエレベーターに閉じこめられ、水道は断水し、都市が完全に麻痺する混乱が
続いた。
2002年、東京電力が原子炉の損傷を報告しなかった「トラブル隠し」が発覚した。すべての原子
炉が停止を命じられた。東電は、2003年の夏が猛暑になれば電力不足のため、「首都圏で長期の停
電もあり得る」と公表した。しかし、2003年夏は記録的な冷夏であった。東電の幹部は『お天道様
【160401】
に助けられた。冷夏は好運以外の何物でない』と喜んだ。その一方で同じ時期、地球の反対側のフラン
スでは、猛暑で1万5千人もの死者を出していた。冷夏は、まさに「天佑神助」であった。
今後、東京をはじめとする大都市の夏の気温がさらに上昇するのは間違いない。気温が高くなればな
るほど、電力の需要過剰が起こり、大停電が起きるリスクを増加させる。猛暑時の都市住民の生命が、
電力の安定供給にかかっているとしたら、恐ろしいことである。
7.都市の気温上昇「ヒートアイランド現象」への緊急の対策を
先ずもって、都市の気温を下げる努力が緊急に必要である。都市の気温は「ヒートアイランド現象」
と「地球温暖化」によって上昇する。「地球温暖化」の解決を目指して、京都議定書が発効した。しか
し、米国(温室効果ガス排出量世界第一位)と中国(同二位)は、全く規制なしに温室効果ガスを排出
し放題である。排出を削減して都市の気温を下げることは、不可能である。
一方で、「ヒートアイランド現象」の予防は、我が国自身の自助努力で効果的に行うことが出来る。
しかも、ヒートアイランドによる気温上昇は、地球温暖化による気温上昇よりも約2倍も高くなってい
る。ヒートアイランド現象の解決を志向した都市改造計画が緊急に求められる。
4.6.4 結論
温暖化が健康に及ぼす危険として我が国では以下の二点があげられる。今後は、研究成果を実地に活か
すための「社会技術」が重要と考えられる。
(1)熱帯性・亜熱帯性伝染病の侵入
熱帯性・亜熱帯性の伝染病の感染域が拡大し、我が国に侵入する危険が増加している。特に問題となる
のは、西ナイル熱(西ナイル脳炎)である。西ナイル熱は、脳炎を発症した場合、死亡率が非常に高く
中枢神経系に重篤な後遺症を残す。米国では、西ナイル熱はヒートアイランド現象で気温が著しく上昇
した都市を中心として蔓延した。今後も西ナイル熱が、新しい「都市型の伝染病」として、我が国の都
市住民に大きな被害を与える可能性が予測される。
デング熱(デング出血熱)は、台湾の台北地方で流行している。デング熱が、台湾と近接する沖縄県に
伝播する可能性がある。マラリアは、アフリカ大陸を中心に、毎年150万人から300万人という犠
牲者を出している昀悪の伝染病である。我が国にもマラリアを媒介する蚊が常在する。
(2)都市の気温上昇による大量死とヒートアイランド現象
大都市における夏季の気温上昇は、すでに、住民の健康や生命をおびやかす温度にまで達している。2
003年には、猛暑によりフランスで約1万5千人の死者を出した。都市の気温上昇の主な原因は、ヒ
ートアイランド現象である。ヒートアイランド現象に対し緊急の対策を講ずる必要がある。
4.6.5 結び
(1)研究の達成度および得られた成果の自己評価、今後の展開
私は、中間報告書(社会技術研究「地球温暖化問題に対する社会技術的アプローチ」平成14年10
月発行)で、都市での猛暑による大量死の危険を予測した(92~98ページ)
。
実際に、翌年の2003年(平成15年)8月フランスを猛暑が襲い、パリやリヨン等の大都市を中
心に約1万5千人もの死者を出した。我が国における気温の上昇の程度から考えて、欧米と同様に、大
量死の危険は我が国の大都市においても存在する。猛暑による犠牲者の数は、大地震や大型台風による
死者の数に匹敵するかそれ以上である。予測の的中を自己評価したい。
今後は、都市での猛暑による大量死の問題が極めて重要で深刻な問題であることを再認識するととも
に、この課題について出版等を通じて社会に訴えて行きたい。
(2)研究チームのプロジェクト運営について
毎月1回研究会を開いたのは、主なテーマである温暖化について理解を深めるよい機会であった。
一方で、本研究の昀終的な発表の場であった2004年12月11日の公開シンポジウムでは、シン
ポジスト4名の内2名が外部の研究者であった。本研究班のグループ内で、独創的な研究や重要な問題
提起をしている研究者の中から発表者を選ぶべきであった。本研究班の成果を公表する惜しい機会を逃
したと思う。
(3)社会技術研究事業に対する意見と要望
科学技術振興機構と研究サブグループ構成員との連絡が極めて悪かった。そのため、たとえば、いつ
どの様な「研究成果報告書」を提出するのかということさえ昀後まで正確には知らされていなかった。
【160401】
研究が始まる時点で、科学技術振興機構と研究サブグループ構成員とがお互いに直接会う機会を作り事
前に説明をしてもらいたかった。単に「窓口」となっている人達の問題ではなく、当然果たすべき「シ
ステム」の問題として考えてもらいたいと思う。
【160401】
4.7
温暖化対策のマクロ経済的影響の分析(吉岡完治サブグループ)
4.7.1 マクロ経済への影響の不確実性
地球温暖化問題がマクロ経済にどのような影響を与えるのか、また影響を受けるのかはきわめて複雑
で単線的ではない。「要するに温暖化と温暖化対策によってマクロ経済は成長するのか、縮小の一途を
たどるのかどうなのか」とよく質問される。しかし「マクロ経済の浮沈は温暖化問題の質と程度の差に
よって、また対策の打ち方によって異なる」と、答えにならない答えを述べるにすぎなくなってしまう。
なぜそうなのか少し考えてみよう。
かかる課題においてマクロ経済のパフォーマンスは、社会的厚生関数の増減によって測るか、伝統的
に用いられた国内総生産(GDP)によって測るのかのいずれかである。前者の社会的厚生の概念に個人
のもろもろの消費活動のみならず、大気から水、アメニティーまでもろもろの環境負荷が含まれている。
ただ環境負荷をどのように集計するのか、また個々人のウェルフェアをどのように集計するのかによっ
て答えが千差万別になってしまい測定以前の問題として議論にならない。そこで後者の GDP で話をしよ
う。GDP は社会全体(ここでは国)の仕事の量を市場価格で評価合計したものといえる。技術を一定とし
ておけば GDP を増やすためにエネルギーや化学物質の投入が増えることになり地球環境が悪化すること
は明らかである。しかし地球環境が悪化すれば GDP が増えるか減るかは定かではない。環境が悪化すれ
ば GDP のサプライサイドに支障をきたすことは十分ある。しかしその対策のために仕事が増え GDP のデ
マンドサイドを喚起することも考えられる。この環境悪化による効果は悪化の質と量によってまちまち
であるといえるのである。暖冬でスキー場やリゾート地が疲弊したがそれ以上にゴルフ場が繁盛したと
か、猛暑のためにクーラーがよく売れ電力需要が急激に高まり、むしろ温暖化が GDP を拡大させること
をみんなは知っている。しかしたとえば大地震や大台風のようなカタスロフィックな被害は工場や各種
のライフラインを切断することから経済成長を妨げることになる。このことは人体と疾病にたとえると
わかりやすい。汚染因子が人体に入り込み疾病を誘発すると、人体の各部はそれに対抗して驚くべき仕
事をする。しかしその汚染因子がとんでもないものであるとその人体は死滅してしまう。それと同じよ
うに社会体においても質と程度によって GDP なる仕事の量が時系列的に増大するか否かはまったく単純
ではなく非線形であるといえる。われわれ経済学者やエネルギー系の工学者はマクロ経済と環境を分析
する際、この複雑系を処理できないため大胆な前提を昀初に立て分析をしがちである。たとえばダメー
ジ関数と称して環境汚染が高まればどんどんと GDP を下げてしまうような仕掛けを作るのもその例であ
る。そのような前提に基づいたマクロ経済に関する計量モデルは単なるシナリオを作りにすぎず、シナ
リオの含意を注意深く考える必要がある。
地球環境問題は人類全体の課題であり対策が急がれる。京都議定書がやっと批准されるところまでき
たことはまことに好ましいことである。しかしこの 10 年間に温暖化ガスをもっとも排出し続け、また
増やしてきた国々も存在しており、そのような国々に排出量のシーリングがないことは、その対策のフ
ィージビリティに効果の影を投げかけていることも注意しておくべきであろう。
このような状況下われわれが取れる道として、身近であるがアクションを取りやすい局所的分権的
アプローチが重要と思われる。すくなくともそのアクションがベターオフとなっていればまず取り組む
べき研究課題といえよう。NGO が植林する。工学系研究者がバイオマスエネルギーの有効利用の道を開
く。いわば分権体制の中で、それぞれが地球環境にベターオフに向かう。社会技術とはそのような分権
システムの香りがするものと思われる。ただ地球環境問題はそれぞれがベターオフといってもやはりト
ータルで考えなければならない。たとえば電力を使えばその近くの環境は悪化させることはない。しか
し発電の現状がどうかを同時に考えなければならない。それと同時に社会技術は社会全体の反応、つま
り、パブリック・アクセプタンスを常に念頭におくことが必要であろう。このように考え、われわれ研
究班は次の部で述べる2つの研究課題を行ってきた。1つは中国東北地方における植林の研究、もう1
つは太陽電池普及に関する研究であり、いずれも地球環境改善のベターオフにつながる身近な研究であ
る。
4.7.2 中国東北地方における植林の実験
われわれは、1997 年度に開始した未来開拓学術推進事業(代表:吉岡)[1]において、現場におりたボ
トムアップ的研究の事例を探索していた。その一環として、遼寧省康平県における防砂林計画を実施し
た。ここでの研究はそれをフォローアップして、CO2 の吸収がどの程度か、もし CDM に運よく採用され
れば、今後植林がどのように拡大できるかなどを検討した。ここで述べる康平県の防砂林計画が実施さ
れた理由は、次のようなものであった。
1. われわれ文系が行う植林計画は、農学部の研究者が行うそれと異なってしかるべきである。そこで
は、あくまで社会的実験を視野に入れるべきである。農学部のチャレンジングな研究なら砂漠のど
【160401】
真ん中で植林が可能かという研究がふさわしいが、文系の場合、そのような知識もないし、より緩
やかな環境で、むしろできるだけ安上がりに植林が広がるような可能性を追求するべきであろう。
その点当地は砂漠化の臨界地であり、一度植林が定着すれば人為的に水を補うなどの維持負担が少
ない。
2. 当地康平県は、中国東北地区の中心である瀋陽市都心部から 100km あまりと比較的近く、逆に砂漠
化の中心、貧困地であることはあまり知られていない。それにもかかわらず、カルチン砂漠(図 3)
から吹き寄せる砂が農業に打撃を与えているせいもあってか、中国有数の極貧県の 1 つとなってい
る。
3. 当地は瀋陽市直轄の極貧県であるが、瀋陽市と言えば旧満州国時代は奉天市と呼ばれる中心地であ
った。したがって、同地域の持続的発展に貢献できることは、未来の日中関係に悪いはずがない。
まず、防砂林の植林現場の紹介をしよう。
場所 中国遼寧省瀋陽市康平県
中国東北地区南部に位置し、西北部は内モンゴル自治区と隣接。
人口 200万人
面積 2173km2
農業、牧畜を行い、2000年には一人当たり所得1500元/年と中国有数
経済 の貧困県であった。現地の話によれば、現在は出稼ぎ収入によって、
3倍の所得に。
カルチン砂漠化地域の西南側に位置し、砂漠化が深刻な地区である。
年間平均気温7℃、夏の昀高気温37℃、冬の昀低気温-37℃。年間降雨
気候
量450~500mm。春季風が強く、4~5月の降雨量は40~50mm。全体の
70%は7~8月に集中。
表1:防砂林の植林地における自然・社会経済状況
図1:遼寧省康平県(上方の丸(下方の丸は瀋陽市の中心部))
【160401】
図2:カルチン草原
このような現場で植林を実施したわけだが、当初の植林現場は図3に示す状況であった。現地の警察官
から小学生に至るまでの人海戦術で、植林を行った。
図3:植林風景(1999 年)
3年間にわたる未来開拓プロジェクトの成果は、約 390ha、33 万本であった。
表2:未来開拓学術推進事業における植林本数と面積
第一年目 哲林楊4号
1999年
8km×100m
80.0ha
75,600本
第二年目 哲林楊4号
2000年
7km×100m
66.7ha
63,000本
第三年目 哲林楊4号
2002年
24km×100m
240.0ha
189,000本
合計
39km×100m 386.7ha 327,600本
注:第三年目は、瀋陽市日本総領事の支援分も含まれている。
【160401】
図 4:1999 年の植林風景( 2003 年撮影)
さらに、この植林実験は慶應大学の大型助成プロジェクトに引き継がれて拡大され、現在は、約 440ha、
37 万本の防砂林が完成している。
表3:慶應義塾大型研究助成プロジェクトにおける植林本数と面積
未来開拓プロジェクトでの植林
第四年目 オランダ産ポプラ
合計
2003年
39km×100m
386.7ha
327,600本
5km×100m
50.0ha
45,000本
44km×100m
436.7ha
372,600本
次に、このような植林が今後どのように発展していくかを見るため、サンプリング調査により植林の
吸収量の計算を行った[2]。
この植林プロジェクトが CDM プロジェクトとして認められた場合、この吸収曲線および CER が1t-CO2=
5ドルと想定してみよう。さらに、得られた CER を売却して、それを植林に投資した場合をシミュレー
トしたものが、次表である。この結果に基づくと、2004 年の CO2 吸収量はわずか 3700 トンにすぎない
が、これが 20 年くらい経過すると、毎年増え、だいたい 37000 トン、つまり 10 倍程度の CO2 を吸収す
ることがわかる。
【160401】
図5:植林したポプラの吸収曲線(+:推定値、それ以外は観測値)
注:グラフの縦軸はポプラの体積の対数、横軸は樹齢を表している。
表4:植林を CER の収益で継続した場合の CO2 吸収量: CER=5USD の場合
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
CO2吸収 純CO2吸収
(t-CO2)
(t-CO2)
250
239
751
751
1,736
1,703
2,148
2,140
3,717
3,709
5,768
5,761
6,770
6,765
8,902
8,896
11,010
11,002
13,027
13,017
14,984
14,973
16,767
16,754
18,393
18,379
19,950
19,934
21,530
21,513
23,211
23,193
25,056
25,036
27,108
27,087
29,394
29,371
31,927
31,902
34,716
34,689
37,768
37,738
植林額 CER収入 新規植林
(USD)
(USD)
63,000
0
189,000
45,000
45,000
38,439
42,710
41,769
25,923
28,803
28,168
30,441
33,823
33,078
40,031
44,479
43,499
49,510
55,011
53,798
58,579
65,087
63,652
67,380
74,867
73,216
75,393
83,770
81,923
82,704
91,894
89,868
89,705
99,672
97,475
96,809
107,566
105,194
104,368
115,964
113,407
112,663
125,181
122,421
121,891
135,435
132,449
132,169
146,854
143,617
143,559
159,510
155,993
156,099
173,443
169,619
植林本数
138,600
138,600
327,600
372,600
417,600
459,369
487,537
520,614
564,113
617,911
681,564
754,780
836,703
926,571
1,024,045
1,129,240
1,242,647
1,365,068
1,497,517
1,641,134
1,797,127
1,966,746
4.7.3 身近な小学校からやろう太陽光発電のすすめ
この節では身近な CO2 負荷低減案として、小学校の屋上に太陽電池を設置すると、どの程度電力を減
【160401】
らし、CO2 負荷を削減できるかをシミュレートする.まず、全国公立小学校から平均的なモデル校のデ
ータを作成する。屋上の7割に太陽電池が設置できると想定すれば、太陽電池による年間発電量は
170MWh 程度となり、これにより6割の余剰電力が発生する。次に、この結果を全国規模に膨らまし、CO2
の削減効果を見てみよう。全国公立小学校で消費する電力を太陽電池でまかなえば、年あたり排出量は
約 10 万トンとなり、約9割弱の CO2 削減効果が見込まれる。それに6割の余剰電力を CO2 負荷の少ない
電力として他部門に供給可能となる。しかし、現在では太陽電池が高く普及への大きな障害となってい
る。
太陽電池のユーザーコストが高い一つの要因は、太陽電池の設備単価が高いだけではなく、それより
も大きいのは、太陽電池が年々安くなっていることに起因する。つまり、言葉で言えば、今年買うより
来年、来年買うより再来年と、設置時期を延ばせば伸ばすほど有利になることを反映したものである。
そのため、普及への大きな政策としては、早く導入することによって、投資減税などで補助される。後
で入れると、その補助率は逆に悪くなるのみならず、将来はその補助金を補填する形で税がかかるとい
うような政策目的の租税体系導入が、極めて有効な例である。以下、この研究の内容を簡単に説明しよ
う。
2002 年度において全国の公立小学校数は 23719 校である.1 校あたり平均で見ると、学級数 11、生徒
数 303、教員数 17、職員数4程度である。ここから平均レベルのモデル校を想定するわけだが、われわ
れが入手可能な電力費量に関しては、品川区の 41 校の資料のみであった。この品川区の資料を用いて、
全国のモデル校に修正を加えよう。ひとつの大きな違いは東京の小学校では全国平均と比べて、学級数
は 13、生徒数は 384 人、教員数は 24 人、職員数は 7.5 人とサイズが大きいことである。そこで、電力
消費量が生徒数に比例するとして修正を行った。その結果、モデル校の基本データが表5のように出来
上がった。
表5
モデル校のデータ
学級数
生徒数
教員数
職員数
電力消費量
電力料金
11
303 人
17 人
4人
107MWh/年
229 万円/年
建物屋上面
積
2、075 m2
この表5に基づけば、モデル校は 100Mwh 程度の電力消費を行っている。その結果、電力料金は年間
230 万円程度支払われると推定される。また、太陽電池が設置されると思われる建物屋上面積は 2000m2
程度となっている。この屋上の7割に太陽電池が設置されたとしよう。そうすれば、太陽電池の発電容
量は 170kWと想定される。この太陽電池が発電をするわけだが、気象条件によって発電量が異なる。そ
こで県別の年間日射量を全国地域別の学校数で加重平均して、モデル校における日射量としよう。その
結果、年間発電量はトータルで 170MWhとなる(表6参照)。この数字は電力消費量 100MWh と比べると
約6割の余剰を小学校から他の部門へ供給できることを示している。つまり、小学校に太陽電池を普及
させると、電力を自力でまかなえるだけでなく、1500GWh の太陽光発電所ができたことになる。
表6 モデル校に導入する太陽電池の規模及び年間発電量
太陽電池設置可能規模
1kW 規模太陽電池
年間発電量
(a)
年間発電量(b)
(a)×(b)
169kW
1021kWh/年
173MWh/年
公立小学校の電力はほぼすべて買電によってまかなわれている。そこで電力消費による CO2 誘発がど
の程度かを環境分析用産業連関表[3]に基づいて試算してみよう。地域別に電源構成は異なるが、この
モデル校は電源構成が事業用発電平均の電力を消費していると想定すると、モデル校の CO2 排出量は年
間 52 トン程度となる(表7参照)。太陽電池を屋根に設置して発電することによって、この排出を減ら
すことができるが、すべてがなくなるわけではない。それは、太陽電池を生産する際に回りまわって CO2
が排出されるからである。これも産業連関表によって推計してみると表7のように5トンと推計された
(耐用年数を 30 年と考慮)。したがって、小学校に太陽電池を導入することによって、1 校あたり 47 ト
ン CO2 (9割)削減されたことになる。
表7
モデル校における太陽電池導入の CO2 削減効果
既存発電による
誘発 CO2 排出量 (a)
太陽電池生産に
よる CO2 排出量 (b)
太陽電池導入による CO2
削減効果 (a)-(b)
【160401】
モデル校に設置する太陽電池の発
電量 173MWh/年
173MWh/年のうちモデル校の消費
分 107MWh/年
173MWh/年のうち他部門への供給
分 66MWh/年
85 t-CO2
9 t-CO2
77 t-CO2
52 t-CO2
5 t-CO2
47 t-CO2
33 t-CO2
3 t-CO2
30 t-CO2
このようなモデル校の結果が全国に広まったとしよう。前にも述べたように全国では公立小学校は
23719 校存在するので、かなり大きな効果になる。この試算によれば、小学校が自家発電をもつことに
よって削減される CO2 は 110 万トン、小学校が電力を売ることによって削減される CO2 は 70 万トン程度、
合計して 180 万トンとなる。この数字は日本全国の排出量約 13 億トンの 0.1 パーセント、研究・教育
機関の消費電力の誘発 CO2 排出量 800 万トンの 20 パーセント程度となっている。全国の教育・研究・医
療機関に太陽電池が普及した場合には 1500 万トンもの大きな CO2 削減効果を持っている。ただ、小学校
の場合と異なり、太陽電池を設置する屋上面積が足りるか否かは保障の限りではないことはことわって
おくべきである。
表8
全国小学校における太陽電池導入の CO2 削減効果
既存発電による
誘発 CO2 排出量 (a)
小学校に設置する太陽電池の発電
量 4102GWh/年
4102GWh/年のうち小学校の消費分
2529GWh/年
4102GWh/年のうち他部門への供給
分 1573GWh/年
太陽電池生産による CO2
排出量 (b)
太陽電池導入による CO2
削減効果 (a)-(b)
201 万 t-CO2
21 万 t-CO2
181 万 t-CO2
124 万 t-CO2
13 万 t-CO2
111 万 t-CO2
77 万 t-CO2
8 万 t-CO2
69 万 t-CO2
今までの試算で見てきたように、太陽電池の CO2 負荷は、他の電源に比べると極めて低いものである。
しかし、なぜ一般にさほど普及していないのであろう。ひとつ考えられることは、太陽電池を日本中に
配置しても全体の電力消費量をまかなえない。したがって、電力からの CO2 削減のブレークスルーとは
なりえないという考え方が定着している。このため、抜本的な補助政策、事業促進政策が行われていな
い点が考えられる。しかし、日本中を見る限り、屋上に相当の余剰が残っていることもしかりである。
また、太陽電池はまだまだ高いというのが一般の通念であり、普及を阻んでいることも考えられる。そ
こで、太陽電池の取得価格を用いて、年々のユーザーコストを試算し、実際の購入電力価格との比較を
試みよう。
t 期における資本のユーザーコストは、式 1 で表される([4]~[7])。ここで q(t)を 1kW 規模あたり
の太陽電池価格、c(t)を電力 1kWh あたりのユーザーコスト(式 1)を年間発電量で除す)であるとすると、
ユーザーコスト c(t)が 1kWh の電力を購入した場合の費用を下回れば、太陽電池を用いて発電を行う費
用の方が小さくなる。ユーザーコストは、太陽電池の価格下落率が大きければ大きい程大きくなる。直
感的に考えても、来年値段が下がると分かっていれば、今年買うよりも来年買おうとするのが普通であ
ろうし、値段が下がり続けるならば買い控えようと考えるであろう。
c(t )
: t期のユーザーコスト
(
c (t ) = q (t ) r + δ −
dq dt
q
)
(式 1)
q(t )
: t期の資本財価格
r
: 時間割引率
: 減価償却率
δ
dq dt
: 資本財価格変化率
q
これを用いて試算を行なうと、表9のような結果が得られる。出力 1kWの太陽電池は現在安いもので、
64 万円となっている。この太陽電池は耐用年数 30 年と見られ、ダブルデクライニング法で考えると減
価償却率は7パーセントになる。時間割引率は現在の金利情勢を考え、低めの1パーセントとしている。
また、過去の太陽電池価格の趨勢を見てみると、年率2割程度の低下が見られる。
この結果に基づけは、次のようなことが窺える。現在と同じように、毎年太陽電池の価格が2割下が
っていくとすれば、10 年間で 64 万円/kW から。10 分の1程度になる。その間、ユーザーコストも同じ
ように、現在の 140 円から 10 円台と相当安くなる。この数値は現在の購入電力 20 円程度と比べると、
じゅうぶん採算に合う。しかし、普及までに 10 年間待たねばならないのであろうか。これは、先ほど
述べたように、遅れて買えば得をするというような想定でユーザーコストを計算した結果である。値下
【160401】
がりを埋め合わせるような補助金と税制を採用し、値下がりが擬似的に定常状態になるような政策をと
ったとしよう。その場合、面白いことに 2007 年には 20 円に下がっており、2、3年後に補助金と税制
を含めた政策を導入することがあれば、じゅうぶん採算がとれ、爆発的な普及が見込まれる。
表9
年
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
太陽電池価格の変化とユーザーコスト
太陽電池価格(円)
640000
511608
408973
326928
261342
208913
167002
133500
106718
85309
68195
54514
43578
ユーザーコスト(円)
175.9
140.6
112.4
89.9
71.8
57.4
45.9
36.7
29.3
23.5
18.7
15.0
12.0
定常状態での
ユーザーコスト(円)
50.2
40.1
32.1
25.6
20.5
16.4
13.1
10.5
8.4
6.7
5.3
4.3
3.4
参考文献
[1]『アジア地域における経済および環境の相互依存と環境保全に関する学際的研究』(第 1~5 巻)、代
表:吉岡完治、日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業 複合領域「アジア地域の環境保全」、2001
年。
[2]早見 均、和気洋子、小島朋之、吉岡完治、王雪萍「植林活動による CO2 吸収の測定と予測-瀋陽市
康平県における CDM の可能性と実践-」、『地球温暖化と東アジアの国際協調-CDM 事業化に向けた実証研
究』(和気洋子・早見 均編)第 3 章、pp.37-57、慶應義塾大学出版会、2004 年。
[3]慶應義塾大学産業研究所環境問題分析グループ『環境分析用産業連関表』、慶應義塾大学出版会、2001
年。
[4]吉岡完治『日本の製造業・金融業の生産性分析』、東洋経済新報社、1989 年。
[5]吉川洋『マクロ経済学研究』、東京大学出版会、1984 年。
[6]HallR.E.JorgensonD.W. ”Tax Policy and Investment Behavior” The American Economic
Review,June,pp.391-414 1967.
[7]JorgensonD.W. “ Capital Theory and Investment Behavior” The American Economic
Review,Vol.LIII,May,pp.247-259 1963.
【160401】
4.8
温暖化と地球環境(綿抜邦彦サブグループ)
<研究目的>
地球温暖化が地球環境にどのような変化をもたらしているのかを把握し、現在の社会技術でどこまで
対応できるかを自然現象で見られる変化から検討する。
(1)気温の時系列変化
図 1A、図 1B に平成 13 年版環境白書で示された平均気温の変化を示す。
データは各年の値を棒グラフで示し、折れ線は各年の値の 5 年移動平均であり、直線は長期的な傾向
である。データは平年値との平均差を取ってあり、平年値とは 1971 年から 2000 年の 30 年間の平均値
である。通常、異常気象というのは過去 30 年の平年値より異常にずれたときに用いられる言葉であっ
たが、1980 年代以降、毎年のように今世紀昀大の温度上昇という現象が記録され、表現が難しくなって
しまった。
図 1A 地球全体(陸上のみ)の年平均地上気温の経年変化(1901~2000 年)
図 1B 日本の年平均地上気温の経年変化(1901~2000 年)
気象庁 20 世紀の日本の気候より
【160401】
このデータから読み取れることは次のようになる。世界の年平均気温と日本のそれは経年変化のトレ
ンドとしては同様である。偏差をとると、1985 年以降はプラスの偏差になっており長期的傾向は両方と
も気温上の傾向にある。しかし気温の上昇の程度は日本の方が大きい。これは一般的にいわれているこ
ととよく一致している。地球全体の平均気温が 2~3℃上昇すると、極地方の平均気温は 4~5℃上昇す
るといわれている。わが国が中緯度にあるため、地球の平均気温上昇より大きくなっているのである。
この気温変化を南極氷床に記録されたデータと比較する。これを見るところ数十万年気温では 10℃で
変化が、二酸化炭素では 100ppm の変化があることがわかる。そして温暖化は 2 万年で、寒冷化が 10 万
年で起こっている。
南極氷床に保存されていた古気候のデータ
ボストーク 3000m 級コアの記録
20 世紀の地球レベルでの変動は気温変化で 100 年で 1℃、二酸化炭素では 19 世紀末の 280ppm から現
在の 370ppm と 100 年で 90ppm の変化が生じている。上の図と比べるとこれは非常に早い変化であり、
これによる気象現象の変化に対応するインフラストラクチャーを構築する必要がある。
【160401】
(2)
降水量の時系列変化
mm
3500
3000
2500
2000
1500
1000
年降水量
5年移動平均
年降水量トレンド
500
19
西暦
0
19 0
0
19 5
1
19 0
1
19 5
2
19 0
2
19 5
3
19 0
3
19 5
4
19 0
4
19 5
5
19 0
5
19 5
6
19 0
6
19 5
7
19 0
7
19 5
8
19 0
8
19 5
9
19 0
9
20 5
00
0
那覇の年降水量の経年変化(1900~2003)
日本の年降水量の経年変化
新聞によると沖縄の那覇の降水量はここ 100 年で 120mm 減少しているという。日本の降水量変化を追
跡してみるとここ 100 年で 200mm 減少している。1960 年代までは年変動は著しくないが、1970 年は激
しくなり、1980 年代、1990 年代と次第に激しくなり、2000 年以後更に著しくなっており、異常気象が
日常化しているという状態である。このような傾向は、スリランカ、西サモアなどの地域にも認められ
気象現象が激しくなっている。東京の下水道は時間外降水量 30mm に対応して作られているというが、
昀近はこれを越えることが多い。都市、河川の構造を改良する社会技術の適応が迫られている。
(3)温暖化がもたらす寒冷化
昀近、南極地域における慣例化が報告されている。図に示したのはドライバレー地域の湖沼における
気温の低下の傾向と、湖沼内における生物の一次生産の能力の現象である。これ以外にも降雪量の増加、
氷の厚さの増加が報告されている。
【160401】
これ以外にも南極地域の温度変が報告されており、亜紀以外はすべて低温化の傾向が認められる。
温暖化による大気中の水蒸気量の増加、海氷、氷山の流出による海面のアルベドの変化、極致におけ
る海洋水の湧昇水の弱体化など地対科学的解釈が成り立つ。これは地球温暖化に伴う南極の寒冷化とし
て捉えることができる。
<まとめ>
異常気象が日常化し、今までのインフラでは都市や国土を守ることができなくなってきている。地球温暖化に
より海面の温度が上昇し、台風も大型化し、日本近海でも発達するようになっている。地球環境全体としては緩
衝地帯の減少が起きてきている。このことは南半球の海洋前線の移動で示すことができた。一方降水量変動を
追ってみると 1960 年代までは変動は著しくなく、1970 年代、1980 年代と激しくなり、1990 年代後半には次トレン
ドを見極めるのは困難になった。地球の平均気温はここ 100 年間で 0.6~1.0℃の上昇が認められるが、南極氷
床のコアーの解析では温暖化は約 2 万年で、寒冷化は約 10 万年で起こり、その変動幅は気温で 10℃、二酸化
炭素で 100ppm の程度である。最近南極地域で寒冷化が報告されており、これは温暖化が引き起こす寒冷化と
みることができる。これがローカルな問題なのか、グローバルな問題なのか検討する必要がある。地球の環境変
化に対してグローバルのインフラをどう整備したらよいのかが社会技術の対応すべき課題であり、地球経営を考
えるべき時代なのである。
【160401】
5.研究実施体制
(1)体制
竹内グループ
サブテーマ
竹内 啓
明治学院大学
国際学部
社会技術に基づく社会制度の構想
明日香 壽川
東北大学 東北アジア研究センター
国際協調システムの形成の調査
阿部 寛治
帝京平成大学
温暖化の工学的対策
情報学部
松本俊之・佐久間章行
青山学院大学 理工学部
温暖化問題と情報化および環境会計分析
森 敏
文部科学省
温暖化対策の農学的技術対応
湯本 昌
千葉工業大学
大学評価学位授与機構
工学部
温暖化の健康に及ぼす影響の解析
吉岡 完治
慶応義塾大学産業研究所
温暖化対策のマクロ経済的影響の分析
綿抜 邦彦
立正大学 経済学部
温暖化と地球環境
(2)メンバー表
竹内グループ(研究グループ代表の氏名)
氏名
竹内
啓
所属
役職
担当する研究項目
参加時期
明治学院大学
教授
東北大学
助教授
社会技術に基づく社会制度の H14.1.~H16.12
構想
国際協調システム
H14.1.~H16.12
帝京平成大学
教授
温暖化の工学的対策
松本 俊之
佐久間 章行
天坂 格郎
青山学院大学
青山学院大学
青山学院大学
助教授
名誉教授
教授
温暖化問題と情報化および環 H15.3~H16.12
境会計分析
H14.1.~H16.12
H14.4~H15.3
森
敏
湯本
昌
綿抜
邦彦
温暖化対策の農学的技術対応 H14.1.~H16.12
文部科学省大学評 教授
価学位授与機構
千葉工業大学
講師(非常勤) 温暖化の健康に及ぼす影響の H14.1.~H16.12
解析
講師(非常勤) 温暖化と地球環境
立正大学
H14.1.~H16.12
吉岡
完治
慶応義塾大学
明日香
阿部
壽川
寛治
教授
H14.1.~H16.12
温暖化対策のマクロ経済的影 H14.1.~H16.12
【160401】
響の分析
社会技術に基づく社会制度の H14.1.~H17.3
構想を担当
研究補助員
同上
H14.1.~H16.3
有森
代紀子
明治学院大学
今村
真紀
明治学院大学
永田 綾乃
堀 由企衣
明治学院大学
向井 伸幸
電 源 開 発 株 式 会 技術員
温暖化の工学的対策
社
青山学院大学
研究補助員 温暖化問題と情報化および環
境会計分析
青山学院大学
研究補助員
同上
青山学院大学
研究補助員
同上
東京大学
研究補助員 温暖化対策の農学的技術対応
温暖化と地球環境
立正大学
研究補助員
同上
立正大学
研究補助員
温暖化問題と情報化および環
青山学院大学
研究補助員 境会計分析
同上
青山学院大学
研究補助員
社会技術に基づく社会制度の
明治学院大学
研究補助員 構想
山下
史恵
森銅
中西
吉村
真一朗
裕子
将志
賈 軍
維田 隆一
岩崎
裕治
平本
雄基
宮本
由美子
技術員
研究補助員
研究補助員
同上
同上
H14.1.~H15.3
H15.6~H16.3
H14.10~H16.3
H14.1.~H15.5
H14.1.~H16.3
H14.1.~H16.3
H14.1.~H16.3
H14.4.~H15.3
H14.4.~H15.3
H15.7~H16.3
H15.7~H16.3
H16.11~H16.12
“研究に参加した研究者につき、期間の長短に関わらず学生も含め全員の名前、所属、役職、
研究項目、参加時期を記載する。JSTが雇用・派遣した研究者については、所属は「派遣先」、
役職は「JST研究員」と記載し、チーム事務担当などは「研究補助員」として記載する。”
6.研究期間中の主な活動
定例研究会・シンポジウム等
場所
日 時
第1回 2002 年
オ
1 月 28 日(月) フ
ィ
<名称>、および概要
<定例研究会>
地球温暖化に伴う水循環の諸現象
の変様
講
師
綿抜
邦彦
綿抜
邦彦
参加人数
11 名
ス
サ
ク
マ
第2回
2002 年
2 月 21 日(木)
オ
フ
ィ
ス
サ
<定例研究会>
1:地球温暖化に伴う水循環の諸現象
の変様
2:温暖化をめぐる国際交渉の現状と
課題(京都メカニズムを中心に)
10 名
明日香
壽川
ク
マ
【160401】
第3回
2002 年
3 月 18 日(月)
<定例研究会>
温暖化をめぐる国際交渉の現状と課
題(京都メカニズムを中心に)
明日香
<定例研究会>
地球温暖化シミュレーション
江守 正多
(地球フロンテ
ィア研究システ
ム・モデル統合化
領域)
11 名
<定例研究会>
地球の温暖化が人間の健康に及ぼ
す影響
湯本
昌
10 名
明
<定例研究会>
日本における地球温暖化の実体と日
学
本農業の技術的対応
陽 捷行
(農業環境技術
研究所所長)
12 名
治
吉岡
完治
12 名
フ
<定例研究会>
温暖化解決の未来技術
ィ
-太陽光発電の宇宙開発のケース―
朝倉
啓一郎
オ
フ
ィ
壽川
10 名
ス
サ
ク
マ
第4回
2002 年
4 月 25 日(木)
15 時~
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第5回
2002 年
5 月 17 日(金)
16 時 ~
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第6回
2002 年
6 月 11 日(火)
15 時 ~20 時
半
院
大
学
白
金
校
舎
第7回
2002 年
7 月 23 日(火)
15 時~
オ
ス
(一橋大学・経済
サ
研究所)
ク
マ
第8回
2002 年
10 月 22 日(火)
16 時半~
オ
<定例研究会>
木内
フ
経済大国の次に何を創るか
(米国の環境
NP0「フューチャ
ー500」会
長・三菱電機顧
問)
ィ
ス
サ
ク
孝
14 名
マ
【160401】
第9回
2002 年
1月 28 日(月)
オ
フ
<定例研究会>
生命的共存在について
清水 博
(場の研究所所
長)
10 名
<定例研究会>
温暖化問題アラカルト
・温暖化問題の捉え方の推移につい
て
・温暖化を表す様々なデータの見
方や問題点について
綿抜
邦彦
12 名
<定例研究会>
「屋上緑化の展開状況と今後の課
題」
野田 宗弘
(前川製作所技
術研究所植物工
学研究グルー
プ)
篠崎 聡
(前川製作所技
術研究所技術総
研機構)
阿部 寛治
10 名
ィ
ス
サ
ク
マ
第 10 回
2002 年
11 月 22 日(金)
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第 11 回
2002 年
12 月 20 日(金)
16 時~20 時
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第 13 回
2003 年
2 月 21 日(金)
16 時~20 時半
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第 14 回
2003 年
3 月 19 日(水)
16 時~20 時半
オ
フ
<定例研究会>
アルベドは工学的に増やせるか?
・太陽と地球の間に衝立を置く
公転するベルト状の衝立、
ラグランジュ点の利用
・地球表面に反射鏡を敷設する
敷設する反射鏡の広さ
・小気球、微粒子を高層大気に浮遊さ
せる
・微粒子、小バルーンを航空機から散
布
・空剛体殻、小バルーンを地上から放
出
<定例研究会>
エコロジー・エコノミー促進計画
佐久間
章行
11 名
9名
ィ
ス
サ
ク
マ
第 15 回
2003 年
5 月 9 日(金)
16 時~20 時半
オ
フ
ィ
ス
<定例研究会>
市民の生活とC O 2負荷(環境家計
簿排出点数表に基づいて)
吉岡 完治
中野 諭
(大学院生・博
士課程)
12 名
サ
ク
マ
【160401】
第 16 回
2003 年
6 月 14 日(土)
14 時~18 時
オ
フ
ィ
<定例研究会>
北太平洋における鉄濃度調整実験概
要
津田 敦
(東京大学海洋
研究所)
武田 重信
(東京大学大学
院農学生命科学
研究科)
14 名
<定例研究会>
宇宙を探る。「すばる」大望遠鏡建設
および天文学について
宇宙と地球温暖化の関係を検証し、
天文学を通して社会技術的アプロー
チを探る。また、ハワイ島マウナケア
大望遠鏡「スバル」建設について社会
技術的見地から講演
<チーム内合宿>
19 日午後、夜、および 20 日午前中に
かけて、集中的に以下の討論を行う。
1.はじめに 9 月 19 日 14:00
2.研究発表および質疑応答
14:20-17:30
2.1 温暖化対策のマクロ経済的影
響の分析
2.2 温暖化と地球環境
2.3 温暖化の健康に及ぼす影響の
解析
2.4 温暖化の工学的対策
3.来 年 度 シ ン ポ ジ ウ ム の 検 討
20:00-21:00
時期、場所、招聘者
4.研究発表および質疑応答
9 月 20 日
9:00-11:00
4.1 温暖化対策の農学的
技術対応
4.2 温暖化問題と情報化および環
境会計分析
4.3 社会技術に基づく社会制度の
構想
5.研究取りまとめの検討
11:00-12:30
小平 桂一
(総合研究大学
院大学学長・教
授)
12 名
ス
サ
ク
マ
第 17 回
2003 年
7 月18 日(金)
16 時~20 時
オ
フ
ィ
ス
サ
ク
マ
第 18 回
2003 年
9 月 19 日(金)
14 時 ~ 20 日
(土)12 時半
東
急
ハ
|
ベ
ス
ト
ク
ラ
ブ
旧
軽
井
沢
第 19 回
2003 年
11 月 14 日(金)
16 時半~20 時
半
明
治
学
社会技術研究「地球温暖化問題に対す
る社会技術的アプローチ」の 3 年間の
取りまとめの方向付け
<定例研究会>
IEからみた地球温暖化問題
-リサイクル工程の改善事例
10 名
松本
俊之
9名
大
学
白
金
校
舎
【160401】
第 20 回
2003 年
12 月 25 日(木)
15 時~20 時
明
<定例研究会>
治
以下の2点に重点をおいた講演をし
学
ていただく。
院
大
1.長期的な観点よりエネルギー価格と
学
エネルギー選択のこと(歴史と展望それ
白
に経済学的な解釈)
金
2.地域温暖化対策としての排出権取引
校
の役割(欧州の取り組みと国内制度とし
舎
ての排出権取引の実験から学ぶ点-時
大河原 透
(電力中央研究
所研究コーディ
ネーター)
12 名
古市
11 名
間軸としては 2008 年ぐらいまでの制度
設計の問題-)
第 21 回
2004 年
2 月 10 日(火)
15 時半~20 時
半
明
治
学
院
大
学
白
金
校
舎
<定例研究会>
「人類進化とジェノサイト-地球環
境変化と人類進化の足跡を考察す
る」というテーマで、以下にポイン
トをおいて講演していただく。
剛史
(明治学院大学
国際学部)
1. 動物行動学を通して人類を考察す
る
2.霊長類と人類の社会
を対比
3.地球環境と霊長類など
第 22 回
2004 年
3 月 19 日(金)
16 時半~20 時
半
明
<定例研究会>
治
・竹内チームの研究テーマ「地球温暖
学
化問題に対する社会技術的アプロー
院
大
9名
チ」の平成 15 年度まとめと今後の展
学
開について
白
・版用原稿についての検討
金
校
舎
第 23 回
2004 年
5 月 7 日(金 )
15 時半~20 時
明
治
学
院
大
学
白
金
校
舎
第 24 回
2004 年
6 月 15 日(火)
16 時 ~20 時
明
学
<定例研究会>
「食糧自給と環境問題」
秋吉先生は、環境法、環境教育に
関心を持たれており、その中でも
食糧問題と環境について実際に田
畑を用いて実行実験をされてい
る。そういったご自身の体験も交
えながら、「食糧自給と環境問題」
についてお話いただいた。
<定例研究会>
出版およびとりまとめについて
秋吉 祐子
(聖学院大学政
治経済学部・法学
博士)
10 名
8名
【160401】
第 25 回
2004 年
8 月 19 日(木)
15 時 ~20 時
明
治
学
国立環境研究所から社会環境シ
院
ステム研究領域上席研究員、原沢英
大
学
第 26 回
2004 年
10 月 5 日(火)
17時~
<定例研究会>
地球変動による影響と適応
る影響と適応」というテーマで、地
金
球温暖化問題に対する社会技術的
校
アプローチの観点から講演してい
舎
ただいた。
治
学
英夫
11 名
(国立環境研究
所)
夫氏をお招きして、「気候変動によ
白
明
原沢
講演テーマは下記の通り。
1.気候変動の影響の現状
2.気候シナリオ
3.気候変動の影響予測
4.影響の閾値とは?
5.緩和策(Mitigation)と適応策
(Adaptation)
<定例研究会>
エネルギー制約下での北朝鮮農業事
情、ほか
森
敏
7名
院
大
学
白
金
北朝鮮農業視察から戻られた森先
生がお話してくださるとともに、
シンポジウムや出版についての話
し合い
校
舎
第 27 回
2004 年
11 月 2 日(火)
明
<定例研究会>
治
都市における温室効果ガス削減対策
16 時半~20 時半
学
の統合的解析
院
大
学
講師として、東京大学大学院工学系研
白
究科都市工学専攻教授の花木啓祐先
金
生をお招きして「都市における温室効
校
果ガス削減対策の統合的解析」という
舎
テーマでお話しいただいた。
都市におけるさまざまな温室効果
ガス削減対策は互いに関係を持
ち、その効果はまた都市の密度な
どに依存している。工学分野の研
究者チームによって東京に対して
解析を行った THP(Tokyo Half
Project)についての紹介等。
花木 啓祐
(東京大学大学
院工学系研究科
都市工学専攻教
授)
12 名
【160401】
第 28 回
2004 年
11 月 30 日(火)
時~
明
治
<定例研究会>
とりまとめについて
学
陽
捷行
8名
(農業環境技術
研究所所長)
院
大
学
白
金
校
舎
第 29 回
2004 年
12 月 11 日(土)
11 時~12 時
慶
應
義
塾
大
学
<定例研究会>
社会技術研究「地球温暖化問題に対す
る社会技術的アプローチ」の取りまと
め等についての話し合い
三
田
校
舎
第 30 回
2004 年
12 月 11 日(土)
12 時~13 時
慶
應
義
塾
大
学
<定例研究会>
研究チームメンバーと講演者によ
るシンポジウム事前打ち合わせ
竹内 啓
綿抜 邦彦
今川 俊明
(農業環境技術
研究所地球環境
部長)
花木 啓祐
(東京大学工学
系研究科都市工
学専攻教授)
同上
64 名
同上
64 名
64 名
三
田
校
舎
第 31 回
2004 年
12 月 11 日(土)
13 時半~18 時半
慶
應
義
塾
大
学
社会技術研究公開シンポジウム
「地球温暖化問題に対する社会技
術的アプローチ」
三
田
校
舎
第 32 回
2004 年
12 月 24 日(金)
15 時~19 時
慶
應
義
塾
大
学
<定例研究会>
社会技術研究「地球温暖化問題に
対する社会技術的アプローチ」の
取りまとめ等についての話し合い
9名
三
田
校
舎
【160401】
7.主な研究成果物、発表等
(1)論文発表
・
Morikawa CK, Saigusa M, Nakanishi H, Nishizawa NK, Hasegawa K, Mori S: Co-situs Application
of Controlled-Release Fertilizers to Alleviate Iron Chlorosis of Paddy Rice Grown in Calcareous Soil.
Soil Science and Plant Nutrition 50,1013-1021, 2004
・
Yumoto S., Nagai H., Kobayashi K., Tamate A., Kakimi S. and Matsuzaki H., 26Al Incorporation into
the brain of suckling rats through maternal milk. Journal of Inorganic Biochemistry,vol.97, 155-160
(2003).
・
Yumoto S., Nagai H., Kobayashi K., Tada W., Horikawa T. and Matsuzaki H., 26Al Incorporation into
the tissues of suckling rats through maternal milk. Nuclear Instruments and Methods in Physics
Research B vol. 223-224, 754-758 (2004)
・ 明日香壽川,「京都メカニズムに対する公的資金の活用について-追加性問題と具体的な制度設
計を中心に-」. http://www2s.biglobe.ne.jp/~stars/ , 2002
・
Asuka Jusen, “Strategic Options for the Parties”, Joint Implementation Quarterly, Vol.8, No.4, Joint
Implementation Network, Holland. 2002
・ 明日香壽川・大塚健司・相川泰「中国の環境問題」
,
日本環境会議「アジア環境白書 2003/2004」
編集委員会編『アジア環境白書』 , p.248-256, 東洋経済新報社 . 2003.
・ 明日香壽川,「オランダ ERUPT (Emission Reduction Unit Purchase Tender)/CERUPT (Certified
Emission Reduction Unit Purchase Tender) の経験と日本での制度設計に対する含意(後編)」,
Natsource Japan Letter, 2003 年 5 月号, p.27-34, Natsource Japan.2003.
・ 明日香壽川,「オランダ ERUPT (Emission Reduction Unit Purchase Tender)/CERUPT (Certified
Emission Reduction Unit Purchase Tender) の経験と日本での制度設計に対する含意(中編)」,
Natsource Japan Letter, 2003 年 4 月号, p.26-34, Natsource Japan.2003.
・ 明日香壽川,「オランダ ERUPT (Emission Reduction Unit Purchase Tender)/CERUPT (Certified
Emission Reduction Unit Purchase Tender) の経験と日本での制度設計に対する含意(前編)」,
Natsource Japan Letter, 2003 年 3 月号, p.18-25, Natsource Japan.2003.
・ 明日香壽川, 「北東アジア地域における開発と環境」 『NIRA 政策研究』 2002.Vol.15, No.11,
p.58-63.
・ 綿抜 邦彦、『南極で知る地球環境の姿』、極地 74 2-5 (2002)
・ 維田 隆一、綿抜 邦彦、 『需要価格弾性値から導出された炭素税による産業別波及効果に
ついて』、MACRO REVIEW 15 19-29 (2002)
・ 綿抜 邦彦、『人類と水資源』、立正大学経済学学報 51 No.3,4 1-6 (2002)
・ 綿抜 邦彦、『環境と社会』、立正大学経済学学報 53 No.3,4 1-15 (2004)
・ 綿抜 邦彦、『人類と地球』、MACRO REVIEW 17 3-9 (2004)
・ 綿抜 邦彦、「地球温暖化を理解するために」 『省エネルギーを考える』 (省エネルギーセンターテ
キスト) P7-8 2003年
・ 綿抜 邦彦、継田隆一、「需要価格弾4値から善入された炭素説による産業別価格波及効果に
ついて」『MACRO REVIEW 15』 No.1 P14―29,2002年
・ Inoue H, Higuchi K, Takahashi M, Nakanishi H, Mori S, Nishizawa NK(2003), Three rice
nicotianamine synthase genes, OsNAS1, OsNAS2 and OsNAS3 are expressed in cells involved in
long-distance transport of iron and differentially regulatedby iron. Plant Journal 36(3): 366-381
・ Mizuno D, Higuchi K, Sakamoto T, Nakanishi H, Mori S, Nishizawa NK (2003), Three nicotianamine
synthase genes isolated from Zea mays are differentially regulated by iron nutritional status. Plant
Physiology 132: 1989-1997.
・ Takahashi M, Terada Y, Nakai I, Nakanishi H, Yoshimura H, Mori S, Nishizawa N. K. (2003)
The Role of Nicotianamine in the Intracellular Delivery of Metals and Plant Reproductive Development.
The Plant Cell 15(6): 1263-1280.
・ Yumoto S., Nagai H., Kobayashi K., Tamate A., Kakimi S. and Matsuzaki H., 26Al incorporation into the
brain of suckling rats through maternal milk, J. Inorganic Biochemistry, 97, 155 – 160 (2003).
・ 阿部寛治、向井伸幸、人工的アルべド増加による地球温暖化防止-太陽可視光線の一部遮断・
反射のための工学的方法、帝京平成大学紀要、第15巻、第1号、pp1-12,2003年6月
・ 吉岡完治 他,環境の産業連関分析,日本評論社,2003.6
・ 吉岡完治 他,北東アジアにおける環境配慮型エネルギー利用と環境協力(誌上シンポジウム),
NIRA政策研究2003 16-6,2003.06
・ 吉岡完治 他,瀋陽市康平県におけるCDM(クリーン・デベロップメント・メカニズム)の可能性
と実践;ヒューマンセキュリティに向けた日中政策協調の試み,21世紀COEプログラム「日本・
【160401】
アジアにおける総合政策学先導拠点」総合政策学ワーキングペーパーNo7,2003・12
・ 吉岡完治 他,日本と中国:今、そしてこれから--エネルギー・環境・ライフスタイルの視点から
--,エネルギー・資源1月号 143号,エネルギー・資源学会、2004・1
・ 吉岡完治、小島朋之、中野 諭、早見 均、桜本 光、和気洋子「瀋陽市康平県における植林
活動の実践」
、『地球温暖化と東アジアの国際協調-CDM事業化に向けた実証研究』(和気洋子・
早見 均編)第2章、pp.23-36、慶應義塾大学出版会、2004年
・ 竹内 啓,地球温暖化と社会技術,研究所年報No6, pp123-129, 明治学院大学国際学部付属研究
所,2003
(2)口頭発表
・ Morikawa C. K., Saigusa M., Nakanishi H., Nishizawa N. K. and Mori S. Root growth and root
morphology of paddy rice grown in a calcareous soil as affected by the co-situs application of some iron
containing materials. In Abstracts of World Rice Research Conference 2004, Tsukuba International
Congress Center, Tsukuba Japan, 5-7 November 2004, p 689
・ 森川クラウジオ健治、三枝正彦、中西啓仁、西澤直子、森敏 2003 様々な鉄含有資材の接触
施用によるアルカリ水田における水稲鉄欠乏症の改善-ポット試験を中心に-。 講演要旨集第50
集、日本土壌肥料学九州大会、2004年9月14日~9月16日, 頁146
・ Morikawa C. K., Saigusa M., Nakanishi H., Nishizawa N. K., Hasegawa K and Mori S. Co-situs
application of Controlled release Fertilizers as a New Method to Alleviate Iron
Deficiency of
Paddy Rice Grown on Calcareous Soil. In: Abstract of 12th International Symposium on Iron Nutrition
and Interactions in Plants. Tokyo, Apr. 11-15, 2004 Japan, p14
・ Hasegawa K, Tsuboi M, Suzaki M, Nishizawa NK, Mori S Induction of Anthocyan Synthesis in the
Wild Plants in Calcareous Soil. –An Observation in the Field Experiments of Iron Fertilizers- Abstract
of 12th International Symposium on Iron Nutrition and Interactions in Plants. Tokyo, Apr. 11-15, 2004
Japan, poster number 133,
・ Nakanishi H, Tsukamoto T, Kiyomiya K, Uchida H, Ishioka NS, Fujimaki S, Sakamoto K, Matsuhashi S,
Sekine T, Kume T, Arakawa K, Nishizawa NK, Mori S. Visualization of 52Fe localization in Barley
and Mayze Plants Monitored by PETIS. Abstract of 12th International Symposium on Iron Nutrition and
Interactions in Plants. Tokyo, Apr. 11-15, 2004 Japan, p 232
・ Morikawa C. K., Saigusa M., Nakanishi H., Nishizawa N. K., Hasegawa K and Mori S. Effectiveness of
co-situs Application of Different Forms of Iron Containing Materials to Alleviate Iron Deficiency of
Paddy Rice Grown on a Calcareous Soil. In 12th International Symposium on Iron Nutrition and
Interactions in Plants. Tokyo, Apr. 11-15, 2004 Japan, p123
・ Morikawa C. K., Saigusa M., Nakanishi H., Nishizawa N. K., Hasegawa K and Mori S. Co-situs
application of controlled-release fertilizers to alleviate iron chlorosis of paddy rice grown in calcareous
soil. In: Abstracts of the 6th ESAFS International Conference Soil Management Technology on
Low-productivity and Degraded Soils (ESAFS). Taipei-Taiwan, Nov. 24-29, National Taiwan
University, 2003, p 95
・ 森川クラウジオ健治、三枝正彦、中西啓仁、西澤直子、森敏 微量要素入り被覆肥料の接触施
用によるアルカリ水田における水稲鉄欠乏症の改善。 講演要旨集 第49集、日本土壌肥料
学会神奈川大会、2003年8月20日~8月22日, 頁152
・ 鈴木基史、森川クラウジオ健二、三枝正彦、長谷川和久、西澤直子、森敏 被覆肥料を用いた
アルカリ土壌畑における陸稲の鉄欠乏症の改善 講演要旨集 第50集 日本土壌肥料学会
関東支部会 2003年11月29日 於 東京農工大学農学部 頁280
・ 奥村まゆみ、森敏、中西啓仁、長谷川和久 被覆鉄系肥料の開発(3) 日本土壌肥料 学
会中部支部講演会 2002年10月10日 KKR金沢 要旨集 頁287
・ Yumoto S. (Chiba Institute of Technology) 26Al Incorporation into the tissues of suckling rats through
maternal milk. The Ninth International Conference on Accelerator Mass Spectrometry Nagoya, Japan.
9-13 September 2002.
・ Yumoto S. (Chiba Institute of Technology) 26Al Incorporation into the brain of suckling rats through
maternal milk. Fifth Keele Meeting on Aluminium: From Acid Rain to Alzheimer’s Disease
Stoke-on-Trent, England. 23-25 February 2003.
・ Yumoto S., Nagai H., Kobayashi K., Tamate A., Kakimi S. and Matsuzaki H., 26Al incorporation into the
brain of suckling rats through maternal milk, Fifth Keele Meeting on Aluminium (From Acid Rain to
Alzheimer’s Disease), February 22-25, 2003, Keele, U.K
・ Sakae Yumoto (Chiba Institute of Technology), "26Al Uptake into the Tissues of Suckling Rats through
Maternal Milk", Ninth International Conference on Accelerator Mass Spectrometry, Nagoya, Japan,
September 9-13, 2002
【160401】
・ Sakae Yumoto (Chiba Institute of Technology), "26Al Uptake into the Brains of Suckling Rats through
Maternal Milk and Subsequent Metabolism after Weaning", Stoke-on-Trent, U.K. February 22-25, 2003
・ Satoshi Mori (2003) Application of iron acquisition related strategy-II genes to field practice and
human health. Scandinavian Society of Plant Physiology. Bornholm, Denmark (招待講演)
・ 松本俊之 : “ゲームを用いた環境教育の事例”, 大田区公立小学校事務職員会研究会, 大田区池
上会館, 2004/2/17.
・ 吉岡 完治,アジア地域における経済及び環境の相互依存と環境保全に関する学際的研究,日
本学術振興会未来開拓学術研究推進事業公開シンポジウム「アジア地域の環境保全における研
究成果の位置づけと今後の展望」,2004/1/12,(於)弘済会館
・ Kunihiko Watanuki, Chemical Features of Kusatsu Hot Spring and Preservation of Hot Spring Area, The
1st FEMTEC Asia Hot Spring Conference, 13-15 Dec. 2003, Taiwan (同論文集pp80-86, 2003)
(3)特許出願(国内
件、海外
件)
“発明者、発明の名称、出願番号、出願日等。但し、出願予定の特許は含めない。”
①国内
②海外
(4)新聞報道等
“主な受賞や新聞報道、招待講演などについて、具体的に記載する。”
①新聞報道
②受賞
③その他
(5)その他特記事項
“委託開発や実施許諾実施等、技術移転や実用化に展開した例などを記載する。”
8.結び
われわれの研究は、その性質上昀初から具体的な達成目標を定めたものではなかった。従って何が達
成され、何が達成できなかったということは難しいが、メンバー自身のこの問題に対する理解が深めら
れたことは確実である。またそれに基づいて、一般の人々や政府や企業の政策決定に携わる人々を目標
とした出版物を刊行する計画である。
この研究を通して強く感じたことは、「社会技術」について重要なことは、技術そのものよりも、特
定の社会的課題に対してどのような観点からアプローチするかであり、多面的多角的な方法が必要だと
いうことである。またその際、多くの異なる部門の研究者の相互理解が必要である。その点われわれの
研究グループの専門分野は極めて広い範囲に拡がっていたが、十年ほど前実施された重点領域研究「高
度技術社会のパースペクティブ」のコアメンバーであったこともあり、高いレベルでの相互理解とコミ
ュニケーションが成立し得たと思う。
社会技術的課題の研究に当たっては、関連する諸分野をそれぞれ専攻する、あまり多数でない親密な
グループを作り、相互に密接なコミュニケーションを持つことが昀も重要である。そこには「社会技術
の専門家」は不要であると感じた。ただしその中にたとえ課題が純自然科学的ないし工学的なものであ
っても社会科学の研究者が加わることは不可欠である。社会技術の適用に当たっては、その社会的イン
パクトが昀も重要な要素であるからである。その点でもわれわれの研究グループはほぼ適切に構成され
ていたと思う。
研究代表者としては、参加して下さったメンバー、外部から講義に来て下さったりあるいは討論に加
わって下さった方々、研究を支援、協力して下さった方々が、皆協力的であって、極めて好ましい雰囲
気の中で率直に討論を重ね、研究会やシンポジウムを有意義に進めることができたことに感謝したい。
【160401】
<12 月 11 日シンポジウム風景>
【160401】
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