第1章 立候補にあたっての心構えと 基本的な準備体制 1. 立候補にあたっての心構え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2. 国内受け入れ組織の準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 3. 誘致協力チームの編成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第 1 章 立候補にあたっての心構えと基本的な準備体制 1 立候補にあたっての�構え 国際会議の誘致・開催は、多方面に複合的な効果をもたらす。学術会議の場合、最先端 の研究成果の公開、国際的な研究者の交流によるネットワーク構築、若手研究者の育成と いったメリットは計り知れない。国内主催団体のプレゼンスの向上にもつながるだろう。開催 地においては、国際的な知名度向上や地域の活性化などの効果に加え、大きな経済波及 効果をもたらすことが知られている。 ただし、国際会議の誘致・開催を成功させるためには、国を挙げて誘致に取り組むシンガ ポールや韓国といった国々と戦い、厳しい競争に勝たなければならない。誘致プレゼンテー ションでの熱意あふれるメッセージにより、一票差で勝利をもぎとったケースや、3 度目の立 候補でかろうじて誘致に成功したケースまで、さまざまである。有力と言われながら敗退する ことも、もちろんあり得る。 しかし、敗退するかもしれないからという消極的な姿勢では、本当に敗退に向かってしまう だろう。立候補するからには、日本側関係者が一致団結し、最後まであきらめずに自信を持 ち、全力を尽くすことが重要である。 万一敗れた場合でも、適切な誘致活動の結果、敗れたのであれば、会議開催地決定権 側にも強い印象を残すことができるとともに、その経験が必ず次回の立候補の際に大いに 役立つことを忘れてはならない。 2 国内�け�れ組織の準備 国際会議の誘致を目指すと決めた場合、「誘致準備委員会」 のような組織をつくることか ら始まる。委員会は、機動的に動けるよう、少人数での構成が望ましい。この委員会のメンバ ーには、国際組織における存在感、影響力があり、コミュニケーションがうまくとれる委員や、 国内の組織全体を巻き込んで誘致を推進できる委員を含めることが理想的である。 誘致準備委員会は、国内主催組織と意見・意識の統一を図り、一丸となって誘致に取り 組む体制づくりを目指す。特に、医学等の学術会議の場合、誘致段階から国内学会と十分 に調整しておくことが重要である。国内学会を同時開催するのか、その場合の会長等の組 織はどうなるか、予算は分けるのか等を検討する。 そして、誘致へ向けての体制が整った後、国内組織の理事会、総会などでの誘致承認手 続きや、会報などによる会員への会議誘致に向けた広報活動などを行う。 ─ 2 ─ 第 1 章 立候補にあたっての心構えと基本的な準備体制 3 誘致�力チームの�� 大規模な国際会議の誘致活動は、先述のように国や地方自治体を挙げての総力戦とな っているのが世界の現状である。国内主催組織は、あらゆる関係者を巻き込んで、日本での 開催を熱望する姿勢を強く打ち出していかねばならない。すなわち、「学」「官」「民」が一体 となって、誘致活動を支援する体制を組むことが求められる。 実際に、誘致対象の国際会議が大きくなる程、支援業務は多岐にわたる。そのためにも、 主催者とともに、国、自治体、コンベンションビューロー、会議施設、PCO (Professional Congress Organizer:会議運営専門会社)、ホテル、旅行会社等の関係者がチームに加わり、 準備を進めていくことが多い。(図表1を参照) 【図表 1】 主催者を取り巻く相関図 観光庁 JNTO PCO 旅行 地方 自治体 主催者 会社 コンベン ション ビューロー ホテル 会議場 ※ PCO (Professional Congress Organizer) 会議運営専門会社。あらゆる種類の集会、会議開催に関わる業務、またはこれに関連して 派生する一切の行事に関わる業務を取り扱うための専門的能力を持った会社または個人。 (2015 年 12 月現在、日本コングレス・コンベンション・ビューローの会員として 15 社が登録 されている。問い合わせは、JNTO または関係の都市コンベンションビューローまで) ─ 3 ─ 第 1 章 立候補にあたっての心構えと基本的な準備体制 多数の団体や個人が誘致活動に携わるため、誰に何を頼むと効果的かわからない主催 者も少なくないだろう。主な団体と役割については、図表2を参照していただきたい。支援業 務には「官」「民」がそれぞれ得意とするものがあり、基本的に、「官」の業務は無料である。 たとえば、日本政府観光局(JNTO)では、以下のような支援が可能である。 ・ JNTOのネットワークを通じた海外情報の収集、国際本部へのアプローチ ・ 海外キーパーソンの招請 ・ 所管の大臣、もしくは観光庁長官および JNTO 理事長による招請状の発行 ・ 会議参加者への宣伝資料およびギブアウェイの提供 詳しくは、コンベンションビューローの支援業務とあわせ、第6章を参照されたい。 また、PCO や旅行会社などの「民」の関連事業者では、下記のような業務を分担できる。 ・ 情報収集、費用算出 ・ 企画内容提案(会場使用計画案、社交行事案、予算案など) ・ ビッドペーパーの取りまとめ 主催者側にも、日本への国際会議誘致や、国際本部の開催場所決定にかかわった経験 を持った方も少なくないと思われる。これまでに培われた国際的ネットワークやさまざまな情 報を、上記の関係者と共有して、効果的な誘致プランを作成していくことが必要である。 このように「学」「官」「民」が一体となって連携し、「チーム・ジャパン」「チーム・○○(都市 名)」として総合力を発揮する体制を作り上げたい。 ─ 4 ─ 第 1 章 立候補にあたっての心構えと基本的な準備体制 【図表 2】 主な誘致支援機関・団体とその役割 参考: 観光庁「国際会議誘致ガイドブック」 ─ 5 ─
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