良 より い 連載:コミュニケーション・スキル 3 コミュニケーション研究の紹介 〜がん領域での研究を中心に〜 白井由紀 内富庸介 あそかビハーラ病院研究主任・看護師 国立研究開発法人 国立がん研究センター支持療法開発センター長 友病領域においても,保護者への血友病の告知,頭蓋内 はじめに 出血,関節/ 筋肉内出血のリスク,関節症対策としての整形 外科手術等についての説明など悪い知らせを伝える面談で 医療においてコミュニケーションが重要であることに疑う は,病状や今後の治療,生活に関する説明,療養先の相 余地はない.たとえばがん医療においても,2007年 4月に 談など患者・家族にとって重要なことが話し合われる.し 施行されたがん対策基本法に基づき策定されたがん対策推 かしながら,がん領域での先行研究では悪い予後を伝えら 進基本計画 (2007年,2012 年策定 )のなかで, 「がん医療に れたときや予後に関する情報が多く提供されたときに患者 おける告知等の際には,がん患者に対する特段の配慮が必 の情報想起が有意に悪くなること1),悪い知らせについて 要であることから,医師のコミュニケーション技術の向上に 話し合うとき,医師は楽観的情報を強調しがちであり患者 努める」 , 「患者とその家族等の心情に対して十分に配慮した, も楽観的に話をとらえようとすることが報告されている 2). 診断結果や病状の適切な伝え方についても検討を行う」と, これらから,悪い知らせを伝える面談では情報が正しく伝 がん医療におけるコミュニケーションの重要性および医師の わらず,患者・家族と医師の認識の乖離が生まれやすいと コミュニケーション技術向上に向けた取り組みの必要性が 考えられる.そのため,悪い知らせを伝える際のコミュニ 言及されている. ケーションには細心の注意を払う必要がある. 本稿では,がん領域でのコミュニケーション研究,とくに, さらに,患者-医師間のコミュニケーションに関する先 わが国のがん患者を対象としたコミュニケーション研究を紹 行研究では,悪い知らせを伝える際の効果的なコミュニ 介する.本誌血友病領域におけるコミュニケーションの参 ケーション( 共感など基本的カウンセリング技術を使用して 考になれば幸いである. いること,情報提供や患者からの質問の回答に十分な時間 を取ること)は患者の面談に対する高い満足感,治療遵守, 医療における コミュニケーションの重要性 伝えられる情報の想起や理解の促進,心理的ストレスの軽 減に関係していること 3-7),その一方で,コミュニケーショ -がん領域での先行研究から- ンのトレーニングをきちんと受けていないと感じている医 医療者は,患者・家族に,病名の告知や思わしくない検 療者は仕事への満足感が低く,燃え尽き感や抑うつ・不安 査結果といった悪い知らせを伝えることが少なくない.血 感が高いことが示唆されている 8,9).そのため,コミュニ Frontiers in Haemophilia Vol.2 No.2(2015-8) SAMPLE 29 (79) Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.
© Copyright 2024 Paperzz