2015/1/12 現代メキシコ社会を理解する視点 ~駐在経験者の観察報告~ イベリア&ラテンア メリカ・フォーラム FIAL月例会 2014年11月20日 河嶋正之 日本とメキシコの友好400年 2013-14 日墨交流年 2014.7安倍首相訪墨 2013.4ペニャニエト大統領 2010 日墨交流400年 2010.5カルデロン大統領 2005 日墨経済連携協定(EPA)発効 2004.9小泉首相訪墨 2001.6フォックス大統領 1897 榎本殖民 Imigrantes Enomoto 1910メキシコ革命 1888 修好通商航海条約 Tratado de Amistad, Comercio y Navegación 1810メキシコ独立 1613-20慶長遣欧使節団 (支倉常長) 1609 ガレオン船の御宿漂着 Naufragio de “San Francisco” 河嶋正之@FIAL20141120 2 1 2015/1/12 近江商人「三方良し」から視たメキシコ社会 『三方よし:売り手よし⇔買い手よし⇔世間よし=CSR』 ◇企業社会:安かろう 悪かろう ⇒現代経営へ脱皮必要 ↑経営者と社員の相互不信が「全社意識」の欠如に=顧客視点不在 ◇運転マナー:「日本の安全運転はメヒコの危険運転 」(逆も真) ↑メキシコ市で顕著な他車への配慮の欠如=信頼原則の欠如 ◇人間関係:建て前と本音の乖離 ⇒アミーゴ社会の安心 ↑相互不信社会での利益・便宜の相互供与が人間関係の基盤に? ◇家族関係:大家族主義+マザコン男 ⇒マッチョ社会形成 ↑父性不在の家庭(養育)環境が再生産する「理想の男性像マッチョ」? ◇学校教育:公教育への不信+基礎教育の不足⇒教育改革 ↑父母⇔教員⇔教育行政の間に根強い相互不信? ⇒私学重視傾向 ∴相互不信が人間関係の根底にある社会か? 河嶋正之@FIAL20141120 3 メキシコ民衆の心性とは? Q1.相互不信の人間関係(孤独)が根底に? <オクタビオ・パス『孤独の迷路』の答> メキシコ人は己を守るために・・・ 「嘘をつく」「仮面を被る」「殻に閉じ籠もる」 「主人に畏怖・同僚に猜疑」=奴隷の心理 Q2.何故にメキシコ人は「孤独」なのか? <オクタビオ・パス『孤独の迷路』の答> 奴隷や被征服民(=メキシコの歴史)は常に 微笑・追従(懐疑・諦め)の仮面を被り護身 河嶋正之@FIAL20141120 4 2 2015/1/12 メキシコの歴史500年が紡いだ「心性」 不変の心性:植民地時代300年+独立後200年 ◇植民地:スペイン人支配者⇔先住民・入植者 ◇独立後:クリオージョ支配者⇔メキシコ国民? すなわち、メキシコ国民(民衆)の「心性」に今も残る 「主人⇔使用人:命令⇔服従」 <植民地社会意識の名残を強く残す人間関係が基本> しかし、人間は「創意工夫の知恵」を共有する!! よって、相互信頼・相互扶助を基本に協働できる!! 5 河嶋正之@FIAL20141120 México Mágico:ふしぎなメヒコの歴史 (補説) 不思議な日常メヒコ語 ¿殖民地社会の意識の名残り? ¿ MANDE ? (主人⇒使用人:命令⇒服従) A la orden ¿Idiosincrasia de Dominio Colonial? (Mando : Orden⇒Obediencia) Su servidor ¡joven! ¡muchacho! 独立 Virrey 革命 Criollo Criollo Indígena + Mestizo 植民地社会:副王制(三層) Los Mexicanos Indígena + Mestizo 植民地社会構造(二層)維持 河嶋正之@FIAL20141120 ¡mande! メキシコ人の国民国家? 6 3 2015/1/12 「マチョmacho」「マチズモmachismo」 (補論) <オクタビオ・パス『孤独の迷路』の記述> 父性:マチョ:暴君:不条理な力の誇示>創造主(神) “俺はお前の父だぞ Yo soy tu padre.”(politicos) 征服者≒父なる神(→子なる神信仰)≒権力者 「怨念の内包」 ⇒ ¡激情・激発的行動! 母性:“グアダルーペ”の聖母信仰 ←マリア信仰 ←“トナンツィン”(豊饒の女神)信仰 「母胎への回帰」 ⇒ ¡マザコン社会! ¿中南米文化は男性主導下で女性が生きる文化か? 河嶋正之@FIAL20141120 7 “メキシコ万歳、チンガーダの子” (補論) ¡Viva México, Hijo de la Chingada! <オクタビオ・パス『孤独の迷路』の記述> チンガール(暴行)するもの=男(強者)は 能動的で、攻撃的で、閉鎖的である チンガール(暴行)されるもの=女(弱者)は 受動的で、無防備で、開放的である ☆“マリンチェの子” (暴行の所産)への相反感情☆ “娼婦の子”¡Hijo de Puta! (母は自由意志:任意=スペイン人の不名誉) 河嶋正之@FIAL20141120 8 4 2015/1/12 マリンチェとコルテス (補論) ↑モクテスマとコルテスの会見に同席 するマリンチェ(トラスカラ絵文書Códice) オロスコ画@サンイルデフォンソ博物館→ 河嶋正之@FIAL20141120 9 どのようにメキシコ人と働くか? メキシコ人労働者に対して日本人雇用主が持つ認識 ・納期を守らない [残業してまで頑張らない] ・「判らない」「出来ない」と言わない [責任回避] ・「心配ない(¡No te preocupes!)」の連発 [無責任] (“improvisación”:即興/出たとこ勝負→終わりよければ全てよし) ・失敗理由を「第三者のせい」にする [言い訳] (“Se rompió…” “ es que…” “lo que pasa es que…” “pero…”) ・「反省会」が存在せず[失敗の繰り返し←勤労観] ☆メキシコ人は常に学習意欲あり☆ 出所:メキシコ大使館商務部PROMEXICO商務参事官アーロン・ベラ氏の講演 河嶋正之@FIAL20141120 10 5 2015/1/12 どのようにメキシコ人と働くか? メキシコ人労働者と良い関係を築いたときの気づき ・クリエイティブ性(個人の意見・意志を貫く) ・家族思い(日常会話の主な話題) ・センシィティブ(人前での話しは好きではない) ・スキンシップ(挨拶としての握手や抱擁) ・強い愛国心 の発露 *国民的行事:サッカーNT試合/独立記念日(9月16日) *祝祭日行事:誕生会/母の日(5月10日)/死者の日(11月1~2日)/ポサーダス・クリスマス会 感謝祭巡礼(12月1~12日)/三賢人の日(1月6日)/聖週間 *国民の90%がカトリック教徒:「聖母グアダルーペ」の工場掲示(安全祈願) ☆言語の壁の克服が必須☆ 出所:メキシコ大使館商務部PROMEXICO商務参事官アーロン・ベラ氏の講演 河嶋正之@FIAL20141120 11 日墨双方の言い分と対応策(まとめ) 日本人駐在者の言い分 メキシコ人労働者の言い分 ・長続きせず言い訳が多い ・指示待ちで判断回避する ・仕事全体を理解しない ・出来ないとは言わない ・日本ではこうだ!!!! ・我が提案に耳を貸さない ・情報非共有で全体像不明 ・労いの言葉なく誤り糾弾!! 日本では: メキシコでは: 以心伝心の期待 ⇒ 木目細かな指示&進捗随時確認 約束遵守の期待 ⇒ 繰り返し確認 & 早めの期限設定 叱責・怒声・侮辱 ⇒ まず褒める &冷静な教育的指導 河嶋正之@FIAL20141120 12 6 2015/1/12 メキシコ人と協働するために(派遣員の要件) 相互信頼関係の構築が肝要 <ハイブリッド(異文化理解)企業文化の醸成努力> ・魅力的な人間力と豊かな教養 ・基礎スペイン語の習得(⇒生活を楽しむ) ・メキシコ万般の理解(=旺盛な好奇心を) ・人前で怒声・叱責・侮辱なし(=理性的判断) ・「義理と人情(浪花節)の世界にも生きる」 ・「日本人であることを忘れずに忘れる」 *「TQC」「QCサークル活動」「5S」もできる! 河嶋正之@FIAL20141120 13 メキシコ社会の国内対立:二つのメキシコ 地理:南北の対立 南=農業 ⇔ 北=工業 社会:貧富の対立 ペソ=貧困 ⇔ ドル=富裕 低学歴 ⇔ 高学歴 政治:左右の対立 左=貧困 ⇔ 右=富裕 国際派 ⇔ 国内派 社会:多様な集団 先住民言語社会 ⇔ メキシコ人(混血)社会 河嶋正之@FIAL20141120 14 7 2015/1/12 メキシコの課題:歴代政権も認識 ~ピニャニエト政権・三党協定・カルデロン政権の五本柱~ EPN政権 ①平和国家 ②包摂国家 ③教育国家 ④繁栄国家 ⑤地球国家 協 定 ①自由平等 ②経済成長 ③司法改革 ④公的倫理 ⑤政治改革 FCH政権 ①法治国家 ②雇用創出 ③機会均等 ④持続発展 ⑤責任外交 15 河嶋正之@FIAL20141120 現代メキシコ社会の『三位一体』構造 ~二つのメキシコの原因~ (第2のドル経済社会) ¿Un México Unido? メキシコはひとつか? ふつうのメキシコ 外国人観察者 家族送金社会 インフォーマル経済社会 (近代的輸出主導型成長構造) 庶(民智恵型生き残り構造) ドル経済社会 ? ペソ経済社会 (伝統的農村社会型停滞構造) 河嶋正之@FIAL20141120 ふしぎなメキシコ 16 8 2015/1/12 対米関係:不法移民&麻薬組織 ¡Pobre México, tan lejos del cielo y tan cerca de los EE.UU.! 「哀れメキシコ、天国から斯くも遠く、米国に斯くも近し」 -Porfirio Díaz大統領(在任1877~80年、1884~1911年)- 移民・不法移民 麻薬組織との戦い(麻薬戦争) 需要:米国での農業労働者 供給:墨農業州の低所得層 ・正規雇用創出50万~60万人/年 ・生産年齢人口増 100万人超/年 ⇒非正規雇用&不法移民 米国:移民法改正(合法化) 墨国:雇用創出by4~5%成長 米国の現状 (MPI:人口移動政策研) 移民数4,080万人/人口比13% (2012) (中南米系:Hispanic/Latino//Chicano) ・メキシコ:1,153万人/移民比28.3% ・インド:193万人/同4.8% ・フィリピン:187万人/同4.6% 需要:米国の巨大市場 供給:大麻・覚醒剤/コカイン(南米) 米墨協力:「メリダ指針」(2007) ・米国:需要減/武器販売統制 ・FCH政権:軍隊を全面投入 ・EPN政権:特殊警察隊創設 メキシコの現状 ・ボス逮捕・殺害→カルテル組織混乱 ・三つどもえの対立抗争が激化 *密輸組織X密輸組織 *密輸組織X政府軍警 *密輸組織X自警組織 河嶋正之@FIAL20141120 17 18 18 9
© Copyright 2024 Paperzz