女子大学生の身体不満足感と完全主義との関係について −同性・異性

女子大学生の身体不満足感と完全主義との関係について
−同性・異性からの評価懸念の視点を加えて−
key words:身体不満足感,完全主義,他者からの評価,女子大学生
人間共生システム専攻
田中 勝則
【問題と目的】
け,肯定的評価を得ようとする欲求を持っている
近年,若い女性の間で痩せることを目的としたダイエ
(Martin,1984) とされる。Fredrickson&Roberts(1997)
ットへの興味・関心が高まっている。Garner ら(1980)は
や木内(1995,1996)は文化心理学的観点から女性の自己
女性の理想とする体型が年々徐々に痩身化していったこ
評価は他者から評価に依存するということを指摘してい
とから,女性としての美しさの基準が痩せていることに
る。故に,高い自己評価を維持するためには他者から肯
あることを指摘している。この傾向は我が国でも見られ
定的な評価を得ねばならないであろう。そのための一つ
る現象とされ(田中,1999,2000),特に若い世代の女性に
の手段として,青年期にある女性が社会の中で魅力的と
おいて当てはまるとされる。そうした文化的背景のもと
される身体像に自身を近づけることを目指すことが推察
では,太っていることは女性にとって望ましい事態では
される。しかし,そこで達成目標とされる身体像の水準
ないであろう。そうした際に生じるであろう自身の体型
が高いものであるために,ダイエットなどを行っても容
や体重に関する不満足感を本研究では身体不満足感とし
易に満足感は得られないであろうことが考えられる。し
て扱う。このような不満足感は一般の青年期女性にも見
たがって,このように他者からの評価にとらわれている
られる(Powell&Hendricks,1999)が,摂食障害の危険因
者は身体不満足感が低いのではないかと予想される。
子(Cooley&Toray,2001)と考えられており,不満足感を
そこで研究 2 では研究 1 で明らかにされた完全主義の
もたらす要因について検討することはそうした問題の予
各要素と他者からの評価へのとらわれの程度の組合せに
防という観点から有意義であると考えられる。本研究で
より,身体不満足感がどのような様相を見せるかを検討
は身体不満足感に関連する個人のパーソナリティ特性と
する。なお,「他者」というくくりでは調査協力者にイメ
して,物事について極端に高い水準を求める完全主義
ージされる人があまりにも漠然としたものになることが
(Frost et al,1990.etc)を,また,対人関係様式として他
考えられたため,本研究では他者として同性と異性を設
者からの評価へのとらわれやすさをとりあげてその関連
定した。
を検討する。
TV や雑誌などのメディアを通して理想とされる身体
像は我々の身近に存在するわけだが,そうした基準は個
人内に内在化されていくことが明らかにされている
(Heinberg et al,1995.etc)。そのような身体像がダイエッ
トの際の目標になると考えられるが,その基準は非常に
【研究 1】自己志向的完全主義の多次元構造について
<目的>
完全主義の多次元構造について明らかにする。
<方法>
2002 年 12 月上旬に女子大学生 325 名を対象に質問紙
高く,達成することが容易ではない(田中,2000)とされる。
調 査 を 行 っ た 。 調 査 協 力 者 の 平 均 年 齢 は 19.70 歳
こうした高すぎる目標に固執してしまう場合には,身体
(SD=1.21;R=18‐28)であった。
不満足感が高まることが推察される。故に完全主義的な
完全主義の測定には桜井ら(1997)による多次元自己志
パーソナリティ特性を有する者は強い身体不満足感を感
向的完全主義尺度(MSPS)を用いた。本尺度は全 20 項目
じていることが推察される。だが,完全主義については
からなり,6 段階評定で得点が高いほど完全主義傾向が
こうしたネガティヴな側面だけではなく,精神的健康に
高いことを意味する。
作用する側面もあることが指摘されている。
したがって,
<結果>
まず研究 1 では完全主義についてその構造を明らかにす
ることを目的とする。
因子負荷量,共通性が.30 以上を項目の採用基準とし,
MSPS の因子分析(重み付けのない最小 2 乗法,直接オ
また,人は多かれ少なかれ他者からの承認を求めてい
ブリミン回転)を行った。その結果,オリジナルの 3 項目
る(植田・吉森,1991)とされ,他者からの否定的評価を避
がこの基準に抵触し本調査からは除外された。最終的に
固有値の落ち込みと因子の解釈可能性から 4 因子解を採
の差異について,Shafran ら(2001)が両概念を別個のも
用した(Table1)。各因子は先行研究と項目内容を参考に
のとして捉える考え方を提起していることから,本因子
Table1. 多次元自己志向的完全主義尺度(MSPS)の項目と因子構造
下位尺度/項目
第1因子第2因子第3因子第4因子共通性
<完全でありたいという欲求>
13.中途半端な出来では我慢できない
.767 .041 .023 -.014 .562
16.できる限り,完璧であろうと努力する
.714 -.015 .126 .085 .643
5.どんなことでも完璧にやり遂げることが私のモットーである
.687 -.132 -.096 .115 .626
15.念には念を入れる方である
.581 .006 .298 -.021 .477
4.何事においても最高の水準を目指している
.495 -.384 -.179 .060 .569
<自分に高い目標を課する傾向>
7.高い目標を持つ方が自分のためになると思う*
-.179 -.816 .201 -.037 .603
1.いつも,周りの人より高い目標をもとうと思う*
.141 -.631 -.123 .003 .497
14.自分の能力を最大限に引き出すような理想を持つべきである*
.172 -.548 -.019 .063 .425
<強迫的な確認傾向>
2.注意深くやった仕事でも,欠点があるような気がして心配になる -.009 -.020 .695 .032 .499
8.何かをやり残しているようで,不安になることがある
.077 -.085 .664 -.066 .445
18.戸締りや火のしまつなどは,何回か確かめないと不安である
.096 .002 .528 .052 .336
6.ささいな失敗でも,周りの人からの評価は下がるだろう
-.078 .007 .436 .348 .395
<失敗への過度の関心>
19.完璧にできなければ,成功とはいわない
-.055 -.037 -.106 .973 .842
17.少しでもミスがあれば,完全に失敗したのも同然である
.120 .044 .189 .523 .461
20.やるべきことは完璧にやらなければならない
.337 -.110 -.103 .453 .475
9.物事は常にうまくできていないと気がすまない
.258 -.063 .226 .388 .474
10.人前で失敗することなど,とんでもないことだ
.035 .111 .313 .376 .349
寄与率 29.59 11.79 5.81 3.86
累積寄与率 51.05%
*は逆転項目
因子間相関
因子
第1因子 第2因子 第3因子 第4因子
第1因子
1.000
- .403
.198
.463
第2因子
−
1.000
- .002
- .096
第3因子
−
−
1.000
.386
第4因子
−
−
−
1.000
は完全主義的な側面を反映しているものとは考えにくい
と思われる。
第 4 因子は従来の研究では心理的不適応に関わるとさ
れる項目から構成された。したがって,こうした傾向を
強く持つ者は高い身体不満足感を有しているのではない
かと推察される。
以上のような完全主義の多次元的な側面が本調査か
ら導き出されたわけだが,第 3 因子のような要素が尺度
内に含まれていたことから,今後は完全主義という心理
的特性について概念を整理していく必要性のあることが
示唆される。
【研究 2】
完全主義の程度の違いと他者からの評価へのとらわれの
程度の違いとの組合せによる身体不満足感の様相の検討
<目的>
研究 1 で得られた完全主義の諸要素の程度と同性から
第1因子から順に「完全でありたい欲求」,
「自分に高い目
の評価へのとらわれ,異性からの評価へのとらわれの程
標を課する傾向」,「強迫的な確認傾向」,
「失敗への過度
度が身体不満足感をどのように左右するかを探索的に明
の関心」と命名された。なお,Cronbach のα係数を因
らかにすることを目的とする。
子ごとに算出したところ,第 1 因子から順にα
<方法>
=.84,.71,.71,.79 という値を示したことから各下位因子
の内的一貫性は十分であると考えられる。
<考察>
調査対象者は研究 1 と同じである。質問紙調査を実施
した。
完全主義の測定には研究 1 と同様の手続きをとった。
先行研究(桜井ら,1997)にほぼ一致する結果が得られ
他者からの評価へのとらわれの測定には他者評価か
た。本研究の結果は調査対象を青年期の女性に限定して
らの自由尺度(宮下,1991 の一部)を施行した。本尺度は全
いることから,完全主義という特性について結果の一般
9 項目で 7 段階評定,高得点者は他者からの評価に強く
化については慎重にならねばならないが,以下のような
とらわれていることを意味する。元の尺度では他者がど
ことが考えられる。
のような対象であるかの明記は特になされていないため,
第 1 因子は第 2,4 因子と中程度の相関が見られたこ
とから,完全でありたいという完全主義の基本的側面を
反映する因子と考えられる。
教示に追加を行って同性からの評価へのとらわれ,異性
からの評価へのとらわれを測定した。
身体不満足感の測定には EDI-2(Garner,1991)の日本
第 2 因子には従来の研究では心理的適応に関わるとさ
語版(志村,1995)の下位尺度である体型への不満尺度を
れる項目が集まった。やるべきことをよりよくやろうと
用いた(全 9 項目)。本尺度は摂食障害患者の症状のスク
する側面は前向きでポジティヴな姿勢と考えられる。こ
リーニングを行うことを目的に開発されたものであり独
うした傾向を強く持つ者は不適応感を抱きにくいのでは
自の採点方法が存在するが,本研究ではスクリーニング
ないかと予想される。
を目的とはしていないために単純に 6 段階評定で採点を
第 3 因子「強迫的な確認傾向」は本研究において新たに
行った。また,これらの尺度については不快感を及ぼす
見出された因子である。本因子は他の各因子との相関が
可能性が否定できなかったため,回答したくない場合に
低く,その項目内容も強迫的な観念を意味するものが多
は拒否しても良い旨をフェイスシートに記すとともに,
いように見受けられ,他の因子とは幾分性質の異なるも
口頭でも実施の際に説明を行うことで調査協力者に配慮
のではないかと考えられる。強迫的な心性と完全主義と
を図った。
これらのデータをもとに完全主義の各下位因子,他者
(同性・異性)からの評価へのとらわれを独立変数,身体不
一方,同性からの評価へのとらわれの高低によって身
満足感を従属変数とし,8 通りの 2 要因分散分析(完全主
体不満足感に差は見られなかったものの,異性からの評
義の下位因子 High/Low×他者(同性・異性)からの評価へ
価に強くとらわれている場合には身体不満足感が高いと
のとらわれ High/Low)を行った。
いう結果が得られた。
<結果>
<考察>
他者評価からの自由尺度(同性・異性),体型への不満尺
完全主義の基本的側面を捉えていると考えられる完
度について Cronbach のα係数を算出したところ,それ
全でありたい欲求が高く,また,同性・異性に関わらず他
ぞれα=.79,.80,.88 という高い値が得られた。これらの
者からの評価に強くとらわれている場合に身体不満足感
尺度の内的一貫性については十分であると言えよう。な
が高いという結果が得られた。この結果から,本研究の
お,身体不満足感得点については得点分布に偏りが見ら
問題設定は妥当であったと考えられる。
れたため,変数変換を施してその後の処理を行った。
分散分析の結果をまとめたものが Table2 である。
Table2 完全主義の下位因子(H-L)×他者(同性・異性)からの評価へのとらわれ(H-L)
の2要因の分散分析の結果一覧
同性からの評価へのとらわれ
H‐
L
異性からの評価へのとらわれ
H‐
L
完全でありたい欲求H‐L
・交互作用(F=5.10)*
・異性からの評価へのとらわれ
の主効果(F=10.51)***
・交互作用(F=4.04)*
自分に高い目標を課する傾向H‐L
n.s.
・異性からの評価へのとらわれ
の主効果(F=10.43)***
強迫的な確認傾向H‐L
n.s.
・異性からの評価へのとらわれ
の主効果(F=10.43)***
失敗への過度の関心H‐L
・失敗への過度の関心の
主効果(F=4.86)*
・失敗への過度の関心の
主効果(F=3.79)+
・異性からの評価へのとらわれ
の主効果(F=8.57)**
+…p<.10 *…p <.05 **…p<.01 ***…p <.001
その他の完全主義の諸要素の程度と他者からの評価
にとらわれている程度の組合せによる分散分析では交互
作用は見られず,主効果のみが見られた。したがって,
以下ではそれらの点について考察を行っていく。
自分に高い目標を課する傾向の高低による身体不満
足感の差は見られなかった。したがって,ダイエットな
どの目標として社会文化的に理想とされている痩せた身
体像を目標にすること,そのこと自体は身体不満足感に
はつながらないであろうことが示唆される。だが,ダイ
エットなどの体型コントロール活動は,その目標が高す
ぎるために達成することが困難であるとされ,そこで費
やした労力や時間の割にはそれに見合った結果が容易に
完全でありたい欲求(H-L)×同性からの評価へのとら
は得られないとされている(田中,2000,2001)ことから,
わ れ (H-L) の 組 合 せ で は 交 互 作 用 が 見 ら れ た
高い目標を自分に課する者は身体不満足感を生じる可能
(F(1,321)=5.10,p<.05)ため,単純主効果の検定を行った。
性も持ち合わせているのではないかと考えられる。
その結果,完全でありたい欲求は同性からの評価へのと
強迫的な確認傾向の高低によって身体不満足感には
らわれの H 群において有意であり(F(1,321)=4.26,p<.05),
差が見られなかった。強迫的な確認傾向とほぼ同様の構
同性からの評価へのとらわれは完全でありたい欲求の H
造からなる桜井ら(1997)の“自分の行動に漠然とした疑
群において有意であった(F(1,321)=6.19, p<.05)。また,
いを持つ傾向”因子は心理的不適応と関連するという結
完全でありたい欲求(H-L)×異性からの評価へのとらわ
果が得られており,また,Frost ら(1990)でも同様の結
れ (H-L) の 組 合 せ で も 交 互 作 用 が 確 認 さ れ た
果が得られている。故に,本研究の結果は先行研究と一
(F(1,321)=4.04,p<.05)。単純主効果検定の結果,完全で
致しなかったことになる。強迫観念や強迫行為は不合理
ありたい欲求は異性からの評価へのとらわれの H 群に
なものとして感じられるとされる(DSM-Ⅳ,1994)が,痩
おいて有意であり(F(1,321)=3.44, p<.05),異性からの評
せようとする行為は他者から肯定的な評価を得ようとし
価へのとらわれは完全でありたい欲求の H 群において
たり否定的な評価を避けようとしたりするものである
有意であった(F(1,321)=14.12,p<.001)。これらの結果か
(Fredrickson&Roberts,1997)とされることから目的性
ら,完全でありたい欲求が高く他者からの評価に強くと
を有していると推察される。一般に目的を達成できなか
らわれている場合に身体不満足感が高まることが示され
った際には不満足感が高まることが予想されるが,強迫
た。
観念や強迫行為はその合理性のなさ,すなわち何かしら
また,自分に高い目標を課する傾向の高低によって身
の目標を持つものではないと考えられる。そのような理
体不満足感に差が見られないこと,失敗への過度の関心
由から強迫的な確認傾向の高低によって,身体不満足感
が高い場合には身体不満足感が高まることが確認された。
に差が生じなかったのではないかと思われる。
これは研究 1 の結果から予測された仮説を支持するもの
失敗への過度の関心が高い場合には身体不満足感が
と考えられる。強迫的な確認傾向の高低によって身体不
高まることが明らかになった。失敗を過度に気にする傾
満足感には差が見られないことも明らかになった。
向の強い者は物事を成功か失敗かという二分法的な視点
でとらえる(Burns,1980) ことが特徴とされており,些
かを見てきた。
細な失敗であろうともそれはその人にとっては大きな失
研究 1 では完全主義が 4 つの下位因子構造を持つこと
敗として受けとめられてしまうものと考えられている。
が明らかになった。だが,完全主義概念の再検討の必要
故にこのような特性を持つ者の場合,内在化された目標
性も示唆された。近年,完全主義については概念そのも
とする身体像と自分の身体を照らし合わせた結果,それ
のの見直しが進んでおり,これまでパーソナリティ特性
がほんの僅かなズレであってもその人にとってはそうし
として捉えられていた完全主義を認知スタイルとして新
た事態は失敗であり,許されることではないために身体
たに捉えなおし(Ferrari,1995;Flett et al,1998),心理的
不満足感が高まってしまうのではないかと考えられる。
不適応に繋がるような完全主義的認知スタイルを変容さ
実際にはそこまで太っていないにも関わらず,自身の身
せることを目的とした研究(Slade&Owens,1998;小堀・
体を太ったものとして認知してしまうといった現象の背
丹野,2002)なども見られるようになってきている。今後
景にはこのような機制があると推察される。
はこうした研究を参考に,臨床的介入を目標とした実践
また,同性からの評価にとらわれている程度の差によ
って身体不満足感には差がないこと,異性からの評価に
強くとらわれている場合には身体不満足感が高まること
に生かせるような形での完全主義研究が必要であろうと
考えられる。
研究 2 では完全でありたい欲求,失敗を過度に気にす
が確認された。
この結果から女子大学生の場合には異性,
る傾向が強い場合,異性からの評価に強くとらわれてい
すなわち男性からの評価に自分の体型についての評価が
る場合に身体不満足感が高まることが示唆された。本研
左右されていることが示唆される。一般に青年期は異性
究では他者の存在を同性と異性という大きなくくりで設
への興味・関心が高まる時期とされ,
異性を求める気持ち
定したが,他者の存在をより詳細に設定した場合の結果
が強まると考えられることから,異性の前ではよりよく
については興味深い点である。例えば,好意を寄せてい
振舞いたい,自分のよい側面を見せたいという欲求が高
る異性とそうでない異性の場合では,おそらくそうした
まる(Leary,1983)ことが推察される。容姿などの身体的
相手からの評価にとらわれる度合いは異なってくるであ
魅力は異性間の対人魅力に大きな影響を持つ(明
ろうことが予想される。そのような他者条件の違いによ
田,1994)ことが指摘されていることから,異性によい印
る検討が深めていくことは今後の課題の一つとしてあげ
象を与えて気に入られるような身体的魅力を備えること,
られよう。
すなわち文化的に理想とされている痩身体型を青年期に
最後に方法上の課題において提起しておきたい。今回
あたる女子大学生は目指すことが予想される。しかし,
の研究で身体不満足感を測定するために EDI-91 の日本
そこで目標とされる理想の体型が達成困難なものである
語版を用いたが,得点分布に偏りが生じたことや尺度項
ことから,身体不満足度が生じているのではないかとい
目の表現が調査協力者にとっては不快なものとして感じ
うことが考えられる。Fredrickson&Roberts(1997)はこ
られるおそれがあったことなどから,今後検討の余地が
うした痩身であることが美しいことであるという社会的
残されていると考えられる。身体不満足感を測定する方
風潮があまりに強すぎるために女性が受動的になってし
法は幾つか存在する(例えば,Fallon&Rozin,1985.etc)。
まった結果としてこうした現象が起こるとしているが,
しかし,それぞれについて一長一短があり,現在議論が
社会的風潮は容易には変わらないものであろう。こうし
錯綜している状態である。より精錬された,そしてかつ
た社会的風潮に左右されないような自己のあり方,例え
調査協力者の負担を低減させるような測定法について検
ば,田中(1999)は自分自身の身体をより主体的に,かつ,
討していくことが必要であることを今後の要検討課題と
能動的なものとして捉えることができるような自己のあ
してあげておく。
り方を身につけていくことをこうした問題の解決のため
の一つの手段として提唱している。身体不満足感を有し
【主要文献】
ている女性がこうした感覚を抱けるようになるような関
Fredrickson,B.L.,&Roberts,T.(1997)Objectification
わり方をしていくことが臨床場面においては有益なので
theory:Towards understanding women’s lived
はないかということが考えられる。
experiences and mental health risks. Psychology of
Women Quarterly,21,173-206.
【まとめと今後の課題】
本研究では完全主義と他者から評価へのとらわれの
程度が女子大学生の身体不満足感をどのように左右する
Frost,R.O.,Marten,P.,Lahart,C.M.,&Rosenblate,R.(19
90) The dimensions of perfectionism.
Cognitive Therapy and Research,14,449-468.