荒川区 新型インフルエンザ 対応マニュアル 平成 20 年7月 目 次 Ⅰ 新型インフルエンザとは・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ 荒川区新型インフルエンザ対応マニュアル作成に当たって・・2 Ⅲ 荒川区新型インフルエンザ行動計画におけるステージ・・・・3 Ⅳ 危機管理体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1 健康危機対策本部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2 情報提供体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3 相談体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 4 医療体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 5 防疫体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 Ⅴ 庁内体制の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 Ⅵ 発生前に必要な対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 Ⅰ 新型インフルエンザとは 新型インフルエンザとは、これまで地球上に存在したことがない、まったく新しい タイプのウイルスによる感染症である。人類が経験したことがなく、免疫を持つ人が いないため、感染すると多くの人が発症し、重症化すると考えられている。 新型インフルエンザは数十年の周期で発生し、20 世紀にも 3 回の流行があり、日本 ではこの時の新型インフルエンザを「スペインかぜ」「アジアかぜ」「香港かぜ」など 「かぜ」と呼んでいるが、これらは「かぜ」ではなく、全て当時の新型インフル エンザであった。いずれの新型インフルエンザの時にも多くの人が死亡し、 「スペインかぜ」の時には国内で約 45 万人もの人が死亡したと言われている。 2003 年以降、東南アジアから世界へ感染が広がっている鳥インフルエンザ(H5N1) は、まず鳥類の間で感染が広がり、その後トリからヒトへの感染が報告されている。 2008 年 6 月 19 日現在、385 人が感染し、243 人が死亡するなど、その報告数は増加 している。この「鳥インフルエンザ(H5N1)」が今後、ヒトからヒトへ容易に感染する ウイルスへと変異し、急速に世界的大流行(パンデミック)を起こし大きな健康被害 を引き起こす新型インフルエンザになることが危惧されている。 新型インフルエンザが発生すると、飛行機などの交通網が発達した現代では、世界 のどこで発生しても、わずか 1 週間で世界中に広がり、多くのヒトが感染し発症する と考えられている。国や東京都の推計を荒川区の人口に当てはめると、約 8 週間と 考えられている第 1 期の流行期だけで、区民の約 30%に当たる 57,000 人が感染し、 1,100 人もの人が死亡すると想定される。 新型インフルエンザは通常のインフルエンザと違い、働き盛りの世代、特に若くて 健康な人ほど重症化し、呼吸困難や脳炎を併発し死亡する可能性が高いと想定される。 多くの人が病に倒れる結果、会社を休む人が増え、物流が止まるなど、社会的に 大きな混乱が起こる可能性が高い。 1 Ⅱ 荒川区新型インフルエンザ対応マニュアル作成に当たって 新型インフルエンザがひとたび区内で発生すれば、小・中学校をはじめ、区役所本庁 舎や区民施設など、日常的に多くの区民が集まる場所では新型インフルエンザの感染 リスクが高まるため、その危険性を少しでも低くするためには、どのような対応を すべきか迅速な判断が必要となる。 これまで本区では、平成 18 年 12 月に新型インフルエンザ患者発生時を想定した 基本的な対応方針を「荒川区新型インフルエンザ行動計画」として取りまとめ、 これまで数回にわたる机上訓練の実施を通じて実践的な体制の整備に努めてきた。 このたび作成した「荒川区新型インフルエンザ対応マニュアル」は、「荒川区新型 インフルエンザ行動計画」に基づき実際に患者が区内で発生した直後において、区民 を感染から守るため、直接的な感染予防対策を所管している部のみならず、区役所 各部が具体的にどのような動きをするべきか、全庁的な対応の在り方を事前に確認 しておき、発生直後の迅速かつ円滑な対応に資するものである。 特に、新型インフルエンザ対策では、発生直後の封じ込め期の対策をしっかり行う ことにより、たとえ最悪パンデミックになるにしても、その時期をできるだけ遅らせ、 区民生活を確保するかが非常に重要であり、そのためには事前の準備が肝要である。 その内容は企業経営で災害や事故の発生に備え、重要な事業の中断を回避するため の経営戦略を集約した「事業継続計画」に相当するものであり、区民の幸福実現を 第一義とする区政運営の重要な戦略書に位置づけられる。 今後とも、この対応マニュアルで確認した方針に基づき、より具体的に準備内容を 検討していくとともに、国や都の体制の進展に応じ随時見直しを行うなど、新型 インフルエンザ対策の充実を図ることとする。 2 Ⅲ 荒川区新型インフルエンザ行動計画におけるステージ 荒川区新型インフルエンザ対策行動計画では、荒川区健康危機管理マニュアルの ステージに合わせて、ステージを1、2、3-①、3-②、3-③、3-④の6段階 に対応する行動計画を作成し、東京都や国のステージを相応する形で作成している。 このたびのマニュアルは、ステージ3-①、3-②を中心に作成した。 新型インフルエンザの発生状況 健康危機管理ステージ ステージ1(発生前期) 海外でヒトへの高病原性鳥インフルエンザの 感染事例は認められるが、ヒトーヒト感染は 健康危機対策連絡会 明らかではない。 (会長 健康部長) ステージ2(海外発生期) 海外でヒト―ヒト感染が認められ、新型 インフルエンザが発生したことが確認される。 健康危機対策会議設置 (会長 健康部長) 3-①(国内発生期) 国内で新型インフルエンザの発生が確認 される。 健康危機対策本部設置 しかし、まだ感染拡大は非常に限られている。 (本部長 区長) ス テ ー ジ 3 3-②(都内流行期) 前期:都内で複数のクラスター(感染した集団)が 見られ、更に拡大が予想される。 後期:都内で急速に感染が拡大し、流行している。 3-③(大規模流行期) 流行予測を超えて大流行し、全医療機関で確保 可能な病床数を超える規模の患者が発生し、 新たな対応が必要となる。 3-④(流行終息期) 新規外来患者数が、1医療機関当たり週 10 人 以下となる状況が2週間以上続く。 3 Ⅳ 危機管理体制 1 健康危機対策本部 海外で新型インフルエンザが発生すると荒川区新型インフルエンザ対策行動計 画に基づき、保健所に「健康危機対策連絡会」、「健康危機対策会議」を設置し、 新型インフルエンザ発生に備えた対応を開始する。 その後、国内での新型インフルエンザ発生に伴い、区長を本部長とする「健康 危機対策本部」を設置し全庁的な対応を開始する。 (1) 本部設置準備 ① 初動 保健所が区内の医療機関等から新型インフルエンザが疑われる患者(以下 「疑い患者」という。)の情報を受信すると、健康部長(保健所長)は 「健康危機対策連絡会」 (ステージ1)を招集し、調査体制を中心に健康危 機管理体制を整える。 通常業務体制から「健康危機管理マニュアル」に基づき保健所初動体制を 確立し、防護衣、サージカルマスク、体温計、消毒液及び入院勧告書などの 必要物品を準備する。 ○ 健康危機対策連絡会の構成 職 構 成 員 会長 健康部長(保健所長) 副会長 生活衛生課長、保健予防課長 構成員 生活衛生課及び保健予防課係長級職員、関係課職員 ② 疑い患者に対する調査実施 会長(保健所長)の指示を受け、疑い患者から検体採取と聞き取り調査を 行い、疑い患者と直接の接触者の名簿作成を実施する。 疑い患者から採取した検体は、東京都健康安全研究センターに搬入し、検 査を行う。疑い患者については、東京都と協議して、搬送先病院を確保し、 東京消防庁により搬送する。 ③ 接触者範囲の決定 健康部長(保健所長)は、 「健康危機対策会議」 (ステージ2)を招集し、 接触者の範囲の決定とともに、調査班による積極的疫学調査などの準備を開 始する。 ○ 健康危機対策会議の構成 職 構 成 員 会長 健康部長(保健所長) 副会長 生活衛生課長、保健予防課長 構成員 健康推進課長、関係課長及び職員、関係機関(警察、消防、医師会など) 4 ○ 班体制 班 名 構 成 員 生活衛生課及び保健予防課の職員 (生活衛生課管理係を中心とする) 生活衛生課、保健予防課及び健康推進課の職員(調査状況により 班 分野別の専門職員を中心とした構成とする) 連 絡 調 整 班 調 査 統計情報処理班 生活衛生課及び保健予防課の職員 検 査 班 保健予防課検査室の職員 (班長は原則として検査室長とする) 拡 大 防 止 班 健康推進課の職員 * 班体制には障害者福祉課、高齢者福祉課の保健所兼務職員を含む。 * 健康危機対策会議は健康危機対策本部設置後も下部組織として継続する。 (2) 本部設置 ① 健康危機対策本部(ステージ3)の設置 東京都健康安全研究センターへ搬入した検体の検査結果が陽性(新型 インフルエンザに感染していることを確認)であり、区内での患者発生を確 認した場合、区長は「健康危機対策本部」を招集し、新型インフルエンザ発 生に伴う対策に全庁的に取り組むため、各部に必要な対応を指示する。 ○ 健康危機対策本部の構成 職 構 成 員 本部長 区長 副本部長 副区長 構成員 部長級職員、その他本部長が必要と認める者 ② 健康危機対策本部の指示事項(封じ込め期) 主な指示事項(各部の役割について P.15 「Ⅴ.庁内体制の確立」参照) 区職員・医療従事者などの確保 区の事務事業の取扱い(区立小中学校、保育園などについても含む) 医療体制・発熱センターへの対応 東京都の備蓄する医薬品・防護用品の供給確保 ライフライン確保への調整 区民からの相談窓口の確保 広報・プレスなどの対応 高齢者・障害者への対応 区内企業への対応 その他、緊急を要する事項 対策本部で指示された事項について、各部は進捗状況について本部を統括 する総務企画部へ報告する。 5 (3) 区内発生宣言 区長は、 「健康危機対策本部」招集後、直ちにプレス発表等により「区内発生 宣言」を行う。その際、区の業務が新型インフルエンザ対応段階へ移行したこと を周知し、区民の冷静な対応及び感染のリスクを避けるための外出の自粛要請を 行う。 発生宣言は、プレス発表に加え、ケーブルテレビ、防災行政無線、区報、チラ シなど区のあらゆるメディアを活用して周知を図る。 区施設の入口には、新型インフルエンザの患者発生を説明するポスター等を掲 示する。 (4) 初動対応 区内発生宣言が出されるステージ3-①段階の対策目標は、「区内で発生した 際の抑え込みの徹底(封じ込め)と区民への適切な情報提供による混乱の防止」 及び「ステージ3-②(急速に感染が拡大し流行が始まる時期)以降への準備」 である。 ① 保健所の対応 既に編成されている班体制により、本格的な感染拡大防止活動を実施する。 連絡調整班は、国・都のサーベイランスシステムを活用し、新型インフル エンザの発生状況や患者情報などを把握する。 調査班は、接触者の把握と積極的疫学調査、健康状況確認、日常生活・消 毒指導を実施する。 拡大防止班は、保健所に「荒川区新型インフルエンザ専用電話相談」を設 置し、区民からの新型インフルエンザに関する相談受付を開始する。 ② 各部の対応(詳細は、 「Ⅴ.庁内体制の確立」参照) 区内発生宣言後、各部は、開催中又は開催予定の催し物・イベント・教室・ 講座などの事業を中止し、参加者にマスクを配布し着用して帰宅するよう案 内する。併せて、不要不急の外出自粛を要請し、やむを得ない場合は、マス クを着用の上、外出するよう説明する。 所管する施設については、区民が集まることによる感染の拡大を防止する 観点から、当面の間閉鎖し、利用を中止する。 保育園・幼稚園・小学校・中学校について、直ちに授業、行事などを中止 し、児童生徒などにマスクを着用させ帰宅させる。児童生徒などの感染防止 のため、当分の間休校(園)とする。 本庁舎の窓口業務は、感染の拡大を防止するため、原則停止し、必要最小 限の対応とする。 (5) 関係機関との連携 新型インフルエンザ発生時の迅速で確実な対応を確立するには、東京都をはじ めとする行政機関や医師会、警察、消防との連携が欠かせない。 6 ① 東京都との連携 <福祉保健局> 「東京感染症アラート」及び患者発生時における入院先の確保などの連絡 を図るため、保健予防課専用ファックスを活用し、情報連絡を行う。 <総務局> 東京都からの新型インフルエンザに関する情報は、東京都総務局総合防災 部から、荒川区区民生活部防災課に伝達される。防災課は、健康危機対策本 部及び保健所に、電話、ファックス、メールなどを使用して情報を伝達する。 ② 医師会との連携 新型インフルエンザ患者(疑い患者を含む。 )を診察した医師は、感染症 の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」とい う。 )により、直ちに、保健所に届け出ることとされている。 保健所は、収集した新型インフルエンザ情報及び対策の現況などを、医師 会を通じて区内医療機関に速やかに伝達し、医療機関における対応に寄与す る。 発熱センター・発熱外来の設置に関する準備を開始する。 ③ 警察との連携 社会秩序の維持と発生に伴う区民生活の不安によるパニック防止のため、 パトロールの強化などを要請する。 ④ 消防との連携 新型インフルエンザ患者の円滑な搬送を要請する。 2 情報提供体制 新型インフルエンザ対応に関する情報提供を含む広報活動は、原則として総務 企画部広報課(以下「広報課」という。 )が、保健所と連携の上、区全体の窓口と して実施する。 (1) 区民への情報伝達 新型インフルエンザの区内発生があった場合、速やかに区民に情報提供を行う。 ① 想定される情報提供内容 区長の区内発生宣言 感染拡大防止のための外出自粛の呼び掛け、感染予防策 ライフラインに関する情報 区及び官公署行事、イベント中止などの情報 新型インフルエンザ相談窓口 区内発生状況(個人のプライバシーに配慮する) 発熱センターなど医療に関する情報 7 ② 情報提供の方法 <ホームページ> 区のホームページのトップページに「緊急情報」を設ける。 <区報の特集(臨時)号の発行> 「通常号」から「特集号」の編集に移行し、発行条件などが整い次第発行 する。 <ケーブルテレビ区民チャンネル> 東京ケーブルネットワークの協力により、災害用のテロップなどを活用し、 ホームページの「緊急情報」を提供する。 <防災行政無線> 防災課と協力して、防災行政無線(固定系無線)を活用し、提供する。 <「安全安心パトロールカー」 (通称「青パト」 )> 生活安全課と協力して車載スピーカーにより提供する。 <学校情報配信システム> 区立の幼稚園・こども園・小学校・中学校の園児・児童・生徒の保護者に 学校情報配信システムのメール配信により情報を提供する。 <マスコミへ> 必要な情報をマスコミ各社に提供する。 (2) 関係機関への情報提供 関係機関に必要な情報を提供する。 <主な提供先> 関係機関名 荒川消防署 尾久消防署 荒川警察署 南千住警察署 尾久警察署 水道局東部第二支所荒川営業所 下水道局北部管理事務所 東京電力上野支社 NTT 東日本東京支店 東京ガスカスターマーサービス荒川事業所 電話番号 3806-0119 3800-0119 3801-0110 3805-0110 3810-0110 3802-2161 5820-4341 0120-995-002 0120-084-012 3842-0111 FAX 番号 3801-1591 3810-0119 3801-6150 3805-1610 3810-1700 3802-2648 3 相談体制 (1) 健康相談 新型インフルエンザの区内発生に伴い、区民の健康不安に対応するため、相 談体制の充実を図る。 8 ① 保健所における対応 区民からの新型インフルエンザに関する相談や問い合わせに対応するた め、 「荒川区新型インフルエンザ専用電話」を設置する。 新型インフルエンザに関する一般的な相談や問い合せには、主に、拡大防 止班が当たる。 新型インフルエンザ疑い患者や、患者接触者などに関する相談は、 「4(1) 発熱相談」参照のこと。 ② 東京都における対応 東京都総務局及び福祉保健局が都庁9階防災センター内に、 「新型インフル エンザ専用窓口」を設置するため、保健所への問い合わせや相談が殺到する 場合、東京都の専用相談窓口の利用を案内する。 (2) 一般相談 健康相談以外の区に関する業務状況などの問い合わせについては、秘書課総 合相談係で電話対応する。 (3) 教育相談 休校中の児童生徒の教育に関する相談や問い合わせについては、各学校及び 教育センター等において対応する。 4 医療体制 (1) 発熱相談 患者の早期発見、疑い患者とそれ以外の患者が同一医療機関を受診すること による感染拡大の防止、特定の医療機関への患者集中回避による適切な医療体 制の維持及び、区民への心理的サポートを目的として、発熱相談を実施する。 ○ 保健所の対応 発熱など新型インフルエンザを疑う症状を有する患者から相談を受けるた めの相談体制を整備する。 発熱相談は、原則として電話対応とする。電話以外の方法では、聴覚障が い者のため、FAX での相談とする。 本人の情報(症状、患者接触歴、渡航歴など)から新型インフルエンザが 疑われる場合、患者はマスクを着用した上で、発熱センターなどを受診する よう指導する。新型インフルエンザの可能性のない患者に関しては、適切な 情報を与え、必要に応じて近くの医療機関を受診するよう指導する。 (2) 発熱センター 発熱センターとは、発熱患者、疑い患者が、それ以外の患者と同一医療機関 を受診することによる感染拡大の危険性を最低限に抑えるため、区が医師会等 の協力を得て、主体的に設置するものである。 9 ① 機能(役割) 新型インフルエンザとそれ以外の患者の振り分けと、疑い患者を確定診断 するために検体を採取し診療協力医療機関に入院させる。 感染が拡大し、流行が広がる時期は、患者を重症、軽症に分け、重症者に は入院の要否を決定し、軽症者にはタミフルなどを処方し自宅療養を勧める 役割へと変化する。 ② 設置時期 準備 ステージ3-①(区長による警戒宣言) 開設 ステージ3-②(区長による区内発生宣言) ③ 設置形態 及び 設置数 陰圧テント(内部圧を外より低くし病原体がテント外に出ることを防止す る機能を持った医療用テント)を設置し診療を行う。 ④ 陰圧テントの設置(封じ込め期) 疑い患者など待合用1~2張(疑い患者が増加した場合1張増設) 診察用 1張 診察後患者待機用 1~2張 スタッフ準備室用 1張 ⑤ 診療(従事)体制 医師1名・看護師1名・事務1~2名等で1班を編成し、交代で診療・相 談などに当たる。 ⑥ 運営 発熱センターの運営については、医師会などと調整していく。 (3) 発熱外来 発熱外来は、新型インフルエンザ患者とそれ以外の患者が、医療機関の受付、 待合、外来病棟などで接触することによる感染拡大を防ぐため、医療機関自ら が発熱者、疑い患者とそれ以外の患者を別に診察するように設置する施設であ る。 (4) 感染症指定医療機関 新型インフルエンザ発生初期には、患者(疑い患者を含む)は病状の程度に かかわらず入院勧告の対象となる。入院先は、東京都と調整の上、感染症指定 医療機関の感染症病床に勧告入院を行う。 現在のところ、荒川区の患者の入院先は都立駒込病院が想定されている。 なお、疑い患者が多数発生し、多くの患者が入院を必要とする場合は、診療 協力医療機関において病原体検査による検査結果が判明後、陽性だった場合の み、入院を受け入れることになる。 10 (5) 診療協力医療機関 診療協力医療機関は、保健所が発熱相談でトリアージした「新型インフルエ ンザの疑いのある患者」の外来診療を行い、病原体検査の結果が出るまでの間、 経過観察を行う(必要に応じて、一泊入院の取扱いとする) 。 5 防疫体制 保健所は、新型インフルエンザ患者又は疑い患者が発生した時には、患者の行 動調査・周囲への感染拡大防止・診断の確定と患者への入院勧告、接触者調査な どを迅速に進める。 (1) サーベイランス 国の新型インフルエンザ発生状況や患者情報及び都のサーベイランスシステ ムなどを活用し、迅速・的確に把握できるよう、日ごろから国内外の情報収集に 努める。WHO(世界保健機構)及び厚生労働大臣の発生宣言が行われた際は、 その内容を確認するとともに、その旨を区民や関係機関に周知できるよう、迅 速に把握する。 疑似症サーベイランス※の徹底によって、報告件数が増加した場合は、症例の 確認を再度行う。 また、新型インフルエンザを疑う症状を有する区民から相談を受ける体制の 確立により、新型インフルエンザの早期発見につなげる。 ※疑似症サーベイランス 原因不明の感染症の発生を迅速に把握することにより、国民の健康に対する 脅威を早期に発見し、迅速に対応するため、以下の届出を行う。 a. 摂氏 38 度以上の発熱及び呼吸器症状(原因不明で、入院を要する程に 重症の感染性呼吸器疾患) *明らかな外傷又は器質的疾患に 起因する場合を除く。 b. 熱及び発しん又は水疱 (原因不明の感染性皮膚疾患等)症状 (2) 患者調査 新型インフルエンザの感染が疑われる場合には、速やかに感染症法第 15 条に 基づく積極的疫学調査(必要な検査を含む)を行う。 調査の際は、調査対象者の理解を得た上で(感染症法に基づく調査の必要性、 移送、入院勧告、就業制限、経過観察、接触者管理、情報公開(報道など)の 可能性など) 、人権に配慮した対応を行う。 ① 初動体制の確立 平常時から出動体制を整えておき、当日の出勤状況と健康チェックにより、 調査班を決定する。 調査班は医師 1 名、保健師 1 名、事務 1 名の3名で構成する(保健予防 課) 。 11 ② 積極的疫学調査(患者調査) 患者調査は、以下の内容を調査する。患者への直接の面談は防護衣などを 着用して行い、面談時間・回数は最少限とする。 基本情報・臨床情報 発病時期、発病場所、症状経過、受診状況、治療内容、既往歴 等 行動調査 発症の前日から医療機関受診までの行動及びその間の接触者 等 感染源調査 渡航歴等の情報により、海外ではなく国内で感染を受けた可能性が高い 場合には、感染源の特定を目的として感染源調査を実施する。 ③ 検査対応 新型インフルエンザ感染の確定のため、検体を採取し、検査班が東京都健 康安全研究センターへ搬送する。 病原体検出及び遺伝子検査のための検体 咽頭拭い液、鼻腔拭い液、気管吸引液などを採取する。 検体の搬送 採取した検体は、輸送の際に容器が破損しても外に漏れ出さないよう 3 層構造の容器に密閉し、感染の恐れのある検体としてハザードマークを付 ける。 ④ 入院勧告 新型インフルエンザ発生初期において、患者(疑い患者を含む)は病状の 程度にかかわらず、感染症法第 19 条に基づく入院勧告の対象となる。 患者には、書面で入院の必要性などを説明し、了解を得て入院勧告を行う。 ⑤ 患者搬送 患者の移送は、消防庁を中心に関係機関と綿密な連携を取りつつ対応する。 搬送する時、患者からの感染予防のために必要な PPE(個人防護具:N95 マスク、フェイスシールド又はゴーグル、手袋、ガウンなど)を装着する。 (3) 接触者調査 新型インフルエンザは発症する前日から周囲に感染させると想定されている。 そのため、接触者の範囲は、患者(疑い患者を含む)が発症した前日から適切な 感染源対策が開始されるまでの間に患者と接触した者等多数の者が対象となる。 接触者調査を行う調査班は、保健師又は衛生監視員と事務各 1 名の2名1組 のチームを編成する(保健所職員を中心に編成) 。 ① 接触者の範囲決定 積極的疫学調査の結果から、患者(疑い患者を含む)の行動範囲を確認し、 12 バス、電車などの大量輸送機関利用者などの特定できない接触者を除き、接 触者調査を行う範囲を決定する。 ② 接触者のリストアップ 患者の行動範囲から接触者をリストアップし、個々に高危険接触者※ と低 危険接触者※ に分類し、高危険接触者から調査を開始する。 ※高危険接触者(濃厚接触者) a. 世帯内居住者:患者と同一住所に居住する者 b. 医療関係者:診察や処置などに感染防御せずにかかわった医療関係者等 c. 汚染物質への接触者:患者由来の血液、体液、分泌液(汗を除く)、排 泄物などに、防護装備なしで接触した者 d. 直接対面接触者:対面での会話やあいさつなどの接触のあった者。接触 時間は問わない。勤務先・学校・医療機関の待合室などでの近距離接触者 ※低危険接触者(軽度接触者) a. 上記の直接対面者のうち、患者との距離が 2m 以上の者 b. 閉鎖空間の共有者:比較的閉鎖された空間において、2m 以内の距離に 居た者。→乗用車、バス、列車、航空機などの交通機関内やホテル、レ ストラン、映画館などで顔見知りではない近距離接触者(情報発信には 注意が必要) ③ 接触状況と健康状態の確認 リストアップされた接触者の接触状況と健康状態などを確認する。 健康状態の確認は、患者と接触した日の翌日から起算して 10 日目まで行 う。 リストアップが遅れた場合も、10 日目までの残りの期間を行う。 接触者には 1 日 2 回の体温測定と、その他の健康状態の報告を依頼する。 ④ 抗インフルエンザ薬(タミフルなど)の予防投与 リストアップされた者に対しては、本人の同意を得た上で保健所などの公 衆衛生機関において、抗インフルエンザ薬の予防投与を行う。 ⑤ リストアップされた接触者に対する指導と受診の基準 人が集まる場所での活動を可能な限り避けるべきことをあらかじめ指導 し、可能な限り、自宅待機をお願いする。やむを得ず外出する際はマスクを 着用するように指導する。 また、何らかの症状が出現した場合、直ちに保健所へ相談するよう説明し、 必要に応じて、感染症指定医療機関などの受診先と受診方法を指示する。 その場合、可能な限り公共の交通機関の利用を避けるよう指導する。 13 ⑥ リストアップされなかった接触者について 調査により接触者であることが判明したものの、リストアップする必要が ないと判断された者に対しては、保健所は可能な範囲でインフルエンザウイ ルスへの感染の可能性、症状、潜伏期間などに関する説明を行い、基本的に は自己観察を依頼する。 症状が出現した場合、前記⑤と同様の取扱いとする。 (4) 区民の二次感染予防 新型インフルエンザが発生した場合、新型インフルエンザに対する免疫を持 つ人がいないため、最初の患者疑い患者の症例が把握されず、他の人に感染を 起こすことも考えられるため、区民に対して感染の防止と、社会機能破綻回避 のための対策を行う。 区内で1例目の新型インフルエンザ患者が確認されると、区長が患者の区内 発生宣言を行い、必要最低限の業務を除き、区では原則として業務を停止し、 区民の健康を守る為の対策に当たる。 保育園、幼稚園、学校等は休園、休校とし、区が主催する講座やイベントは 全て中止し、帰宅を促し、その後、感染を防ぐため不要不急の外出を控えるよ う徹底する。 区の業務停止(学校は休校、保育園、幼稚園は休園)以降、その場で自宅へ 帰るまでの感染を防ぐため、区はあらかじめウイルス防御機能のあるマスクを それぞれの施設に備蓄しておき、発生の際には、そのマスクを着用させた上、 帰宅させる。 ① 区民活動の制限 区民に集会などの各種行事の自粛を要請するとともに、不要不急の外出を 控えるよう周知する。 ② 学校、保育園、高齢者施設などの閉鎖や臨時休業 学校、保育園、高齢者施設などについて、一定期間の閉鎖や臨時休業を行 うことを要請する。 施設から帰宅時には備蓄されているマスクを配布し、着用を依頼する。 学校などに行かない子どもたちが、地域で接触しないように注意を促す。 ③ 区内事業者への要請 事業者に対し、職場での感染拡大防止対策に努めるよう要請する。 14 Ⅴ 庁内体制の確立 1 各部の主な役割 新型インフルエンザが発生し、荒川区健康危機対策本部設置後、各部は以下の役 割分担に基づき、区民の生命と健康を守り、安心を確保していく。 なお、職員の健康状態等により、各部の業務遂行に支障をきたす場合、各部にお いては、相互に応援体制をとって対応するものとする。 部 役 1 総務企画部 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 割 国、東京都、その他関係機関との協議、交渉、要請などの統括に 関すること。 危機管理対策本部の設置、運営に関すること。 関係機関との連絡に関すること。 各部の連絡調整に関すること。 広報など情報提供に関すること。 車両など輸送機関の調達その他財務に関すること。 情報の収集、伝達及び処理に関すること。 広報に関すること。 報道機関対応に関すること。 相談体制の調整及び統括に関すること。 住民からの問合せの対応及び要望のとりまとめに関すること。 前号に掲げるもののほか、他の部に属しないこと。 管理部 1 区職員の感染予防・服務・罹患状況に関すること。 2 緊急の新型インフルエンザ対策物品の契約に関すること。 区民生活部 1 2 3 4 5 産業経済部 1 事業所の事業活動の自粛などに関すること。 環境清掃部 1 ごみの排出抑制に関すること。 2 ごみの収集に関すること。 福祉部 1 2 3 4 5 地域団体・関係団体などの連絡調整に関すること。 戸籍などの届出窓口の確保に関すること。 ライフライン情報の収集に関すること。 東京都総務局総合防災部との情報連絡に関すること。 備蓄物資の搬送及び配分に関すること。 福祉施設利用者の感染状況の把握に関すること。 福祉施設の感染予防に関すること。 在宅の高齢者・障害者などの支援に関すること。 応援職員の調整に関すること。 地域団体・関係団体などの連絡調整に関すること。 15 健康部 子育て支援部 1 新型インフルエンザ発生状況の把握に関すること。 2 新型インフルエンザの感染予防などの広報に関すること。 3 区医師会その他の医療機関との連絡調整に関すること。 4 医薬品、医療器具及び防疫資器材の整備、調達及び補給の要請に 関すること。 5 発熱センター及び臨時医療機関の設置及び管理運営に関すること。 6 食品衛生、環境衛生及び薬事衛生の監視並びに感染症の予防に 関すること。 7 区民、医療機関などからの相談に関すること。 (相談窓口の設置等) 8 感染症法(積極的疫学調査など)に関すること。 9 抗インフルエンザ薬に関すること。 10 ワクチンに関すること。 11 患者搬送に関すること。 12 東京都への報告、調査、検査依頼に関すること。 1 公私立保育園等、私立幼稚園等、母子生活支援施設などにおける 感染予防に関すること。 2 公私立保育園等、私立幼稚園等、母子生活支援施設などにおける 感染状況の把握に関すること。 都市整備部 1 福祉部の支援に関すること。 (在宅高齢者などへの食糧などの搬送) 土木部 1 遺体の収容及び搬送に関すること。 2 健康部の健康危機対策などの支援に関すること。 (北庁舎が関係者以 外立入禁止となるため) 収入役室 1 対策に必要な現金及び物品の出納に関すること。 1 教育委員会 区立の幼稚園・こども園・小学校・中学校の園児・児童・生徒の 感染予防に関すること。 2 区立の幼稚園・こども園・小学校・中学校の園児・児童・生徒の 感染状況の把握に関すること。 3 教育・文化施設における感染予防に関すること。 議会事務局 1 議会との連絡調整に関すること。 2 総務企画部の応援に関すること。 選挙管理委員 会事務局 1 総務企画部の応援に関すること。 監査事務局 1 総務企画部の応援に関すること。 2 各部の業務について 新型インフルエンザ区内発生宣言後の各課の対応については、別に「荒川区新型 インフルエンザ業務対応マニュアル」として定める。 16 Ⅵ 発生前に必要な対応 新型インフルエンザ発生時に迅速、確実に対応するには、発生前からの対応が 何よりも必要である。そのため区では、以下の対応を事前に行う。 1 普及・啓発の推進 新型インフルエンザ発生時に区民がパニックに陥らないようにするためには、 発生前から新型インフルエンザの正しい知識に関する普及・啓発が大切のため、 積極的な普及・啓発に努める。 (1) 新型インフルエンザリーフレットの配布 平成 20 年度に、新型インフルエンザの基礎的知識を深めるためのリーフレットを 全5回発行し、配布する。配布方法は、新聞折込、区立小中学校、区施設において 行う。また、同じ内容を荒川区ホームページにも掲載する。 (2)区報掲載 リーフレット発行後に、コラムとして再度知識の普及を図る。 (3)荒川区ホームページ ホームページにより新型インフルエンザに関する情報の提供と更新を行う。 (4)通常のインフルエンザ対策の徹底 通常のインフルエンザの予防策である、「せきエチケット*」や外出後の手洗いや うがいを日常的に行えるよう、啓発を行う。 <せきエチケット> ♦ 咳やくしゃみをする時は、必ず口と鼻をティッシュなどでおおい、他の人から顔を そむけ 1m 以上離れる。 ♦ 鼻汁・痰などがついたティッシュは、ビニール袋等に密封して廃棄する。 ♦ 咳やくしゃみをした後は、必ず手をきれいに洗う。 ♦ マスクの使い方をよく読み、正しく装着する。 2 各家庭における備蓄の推奨 新型インフルエンザ発生時、新型インフルエンザの感染を防ぐためには、外出自 粛が最も効果的である。そのため、発生時に不要不急の外出をしなくても生活がで きるよう、各家庭で最低限(2 週間程度)の食糧・日用品などの準備をすすめておく。 そのための広報を積極的に行うとともに、発生時には、感染防御に必要な物品の 欠乏が予想されるため、区ではマスクや防護服等の備蓄を可能な限りあらかじめ奨 めておく。 17 (1) 国の個人での備蓄物品の例 ①食品(長期保存可能な物を基本とする) <主食類> 米 乾麺類(そば、ソーメン、うどんなど) 切り餅 コーンフレーク・シリアル類 乾パン 各種調味料、 <その他> レトルト・フリーズドライ食品 冷凍食品(家庭での保存温度ならびに停電に注意) インスタントラーメン 缶詰 菓子類 ミネラルウォーター ペットボトルや缶入りの飲料 ②医療品の例 <常備品> 常備薬(胃薬、痛み止め、その他持病の処方薬) 絆創膏(大・小) ガーゼ・コットン(滅菌のものとそうでないもの) 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど) →薬の成分によってはインフルエンザ脳症を助長する可能性がある ため、購入時に医師・薬剤師に確認する必要がある。 <対インフルエンザ対策の物品> ウイルス防護用マスク ゴム手袋(破れにくいもの) 水枕・氷枕(頭や腋下の冷却用) 漂白剤(次亜塩素酸:消毒効果がある) 消毒用アルコール など ③日用品の例 <通常の災害時のための物品(あると便利なもの)> 懐中電灯 乾電池 携帯電話充電キット ラジオ・携帯テレビ 18 カセットコンロ・ガスボンベ トイレットペーパー ティッシュペーパー キッチン用ラップ アルミホイル 洗剤(衣類・食器など) ・石けん シャンプー・リンス 保湿ティッシュ(アルコールのあるものとないもの) オムツ(乳児用、高齢者用) 生理用品(女性用) ビニール袋(汚染されたごみの密封に利用) 3 関係機関との連携 新型インフルエンザ発生時の関係機関との連携を円滑に行うためには、事前の連 絡調整が欠かせない。 そのため、新型インフルエンザ発生前から、区の対策の周知、情報の共有など、 関係機関との連携を積極的に図る。 19
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