資料(抜粋) - 一般社団法人 火力原子力発電技術協会

系統にやさしいタービン発電機制御システム
電気油圧式タービン制御装置
(EHC:Electro Hydraulic Control system)
<EHCとは何か>
<APPENDIX>
1.タービン制御の基本
A1. GRID CODE
2.EHCの機能・構成
A2. 水車ガバナ
3.機械油圧系の理解
A3. 発電機AVR
<再生エネルギー拡大に向けて>
4.FLEXIBILITYニーズ
5.What shall we do?
2015-6-20
株式会社 東芝 火力情報制御技術部
戸根 洋一
© 2015 Toshiba Corporation
1.タービン制御の基本
EHC主機能・インタフェイス
EHC オペレータステーション (OPS)
EHC
・タービン起動
・速度制御
・負荷制御
・弁開度制御
・圧力制御
・タービン補機制御
・運転、監視、保守機能 (OPS)
サーボ駆動電流
負荷指令、起動指令
DCS
サーボ駆動電流
発電機電流、MW
速度信号
弁開度
弁開度
E/H
E/H
MSV/CV
CRV
(L) (R)
電力系統
ボイラ
HP-T
IP-T
LP-T
G
発電機遮断器
電磁ピックアップ
復水器
ボイラー給水ポンプ
E/H : Electro/Hydraulic Converter
or Servo Valve
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1.タービン制御の基本
過速防止
JIS B8101: 2012 「蒸気タービンの一般仕様」
(当該JISはIEC60045-1に由来)
 調速装置

非常調速機

タービンには調速装置の他に独立して作動する過速度保護の為の非常調
速機を設置して、異常に速度上昇しないように保護しなければならない。
非常調速機は定格速度の111%以下で作動しなければならない。
任意負荷遮断時の最大速度を
109%以下に抑えること
(IEC:機械式非常調速機は
109%~111%で動作と規定)
TURBINE OVERSPEED AT LOAD REJECTION
OVERSPEED

調速装置及び蒸気加減弁操作装置は、定格負荷から瞬時に遮断した場
合でも、タービンをトリップさせる速度まで上昇させてはならない。
10.0
%
8.0
6.0
6.0
8.0
7.0
OVERSPEED
4.0
PLU作動
2.0
IV急閉作動
0.0
0
50
100
%
LOAD
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1.タービン制御の基本 ガバナフリー(GF)の役割
1.
2.
電力系統出力・負荷変動の周期の早
い成分に速やかに応答し、系統周波数
維持安定化に貢献すること
大電源脱落時の系統周波数低下に速
やかに応答し、系統周波数の更なる低
下を防止すること
<電力系統からのGF要求仕様と現状実力>
系統周波数低下時の予備力発動状況
1. 応答速度:10秒~数分程度の負荷変動に対応
⇒数秒で立ち上がり、10秒程度の応答を確保
2. GF容量:瞬動予備力として約3%程度の要求
⇒GFとしては容量制約なし、負荷制限余裕値を
5%程度以上とればOK
瞬動予備力=ガバナフリー
系統周波数
LFC+手動出力増
慣性応答
予備力0の場合の周波数低下
運転予備力発動期
待機予備力発動期
瞬動予備力発動期
3. 風力ramp変化に対応する速やかな出力応答
ex. 英National Grid: +10%/10秒@Δf=-0.5Hz
⇒GFのみでは不足、HP/LP抽気カット、OLV等
の増出力対策要
瞬動予備力
10秒程度
LFC+手
動出力増
数分
停止中
水力起動
停止中
火力起動
数時間
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ELDC: Economic Load Dispatching Control, LFC: Load Frequency Control, GF: Governor Free
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1. タービン制御の基本 サンプリングタイム(1/2)

アナログ並みの性能を実現するには?
 ディジタル制御は本質的にサンプリング制御の遅れ有り
 サンプリングタイムTの零次ホールドの位相遅れはωT/2rad(or 3ωT/2)
> タービン速度制御上、目標とすべき応答速度ω(=2.5~3.3rad/s)で問題を
生じない位相遅れ(<10度)とするには、ωT/2≦π*10/180
制御仕上がり位相余裕は30°~45°、
> すなわちT ≦100msが必要
その時の位相遅れは150°~135°、
事象
発生
事象
発生
制御
出力
制御
出力
故に10°の位相遅れならば一桁小さい
ので無視できる
サンプリング遅れの
概念説明
入力
入力
演算
出力
出力
演算
平均時間遅れ
ωT/2
平均時間遅れ
入出力と演算処理の順
序によっては時間遅れ
が増大するので注意
3ωT/2
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3.機械油圧系の理解蒸気加減弁(CV)油筒系統図
~負荷遮断時~
非常トリップ油
高圧制御油
高圧制御油ドレン
無励磁状態
無励磁状態
特徴
EHCからの負荷遮断信号によりトリップ電磁弁が無励磁となる→
→電磁弁スプールが動作し、ダンプ弁パイロット油圧を開放→
→油筒シリンダー内部のEHC制御油がドレンに排出される
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5.What shall we do?
火力タービン発電機運用性向上のポイント
③負荷応答性改善
④最大負荷運転
⑥系統安定化制御
②負荷変化率最大化
①最短時間起動
速度
負荷
⑤最低負荷運転
VOC
運用性向上/運転範囲拡大
負荷応答性向上
①最短時間起動
②負荷変化率最大化
向上
④最大負荷運転
③負荷(周波数)応答性改善
内容
⑤最低負荷運転
タービン
発電機
技術
要件
①伸び差予測、熱応力予測
最適化
④OLV、ヒーターカット運転
⑤BFPT-EHC化、ポンプ切
替自動化
②熱応力予測最適化
③複合変圧運転、純変圧運
転+OLV+復水調整運転、
ヒーターカット運転
系統安定化
⑥系統安定化制御
⑥FRT:Fault Ride Through
対応、慣性応答、EVA
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5.What shall we do?
変圧運転方式とアドミッションパターン
③負荷応答性改善
120
純変圧運転
100
80
60
主蒸気圧力
CV開度(1,2,3,4)
40
OLV
•
•
•
•
欧米標準の純変圧運転方式
CV全開で主蒸気圧力により出力変化
効率は良いが負荷応答は遅い
OLVを組み合わせることで過負荷運転
と応答性改善
20
0
0
50
100
150
主蒸気流量(%)
120
複合変圧運転
100
80
60
主蒸気圧力
CV開度(1,2,3)
40
CV開度(4)
20
0
0
20
40
60
主蒸気流量(%)
80
100
120
• 日本標準の複合変圧運転方式(2アドミ
ッション方式)
• 起動~初負荷(7~10%)はFA(1アドミッシ
ョン)
• 初負荷でFA(1アドミッション)/PA(2アド
ミッション)切り替え
• 25~約90%ではCV1,2,3全開で主蒸気圧
力により出力変化
• 約90~100%ではCV4により出力変化
• 効率は少し落ちるが負荷応答は速い
• 他に約75%から100%でCV3,CV4により出
力変化させる3アドミッション方式もある
8
© 2015 Toshiba Corporation
8
5.What shall we do? 今後に向けて

火力FLEXIBILITYの更なる向上

HP・LPヒーターカット運転による負荷応答性向上(STG)

SSSクラッチ活用GTCC急速起動(GTCC)

貫流HRSG活用急速起動(GTCC)

部分負荷運転時の効率向上

今後の電力自由化に際しての適切な制度設計

欧州電力市場のメカニズム(MERIT ORDER制)を日本にそのまま取り入れないこと

火力のアンシラリーサービス能力と必要経費(燃料費、調整運転保守費等)を適正に評
価し、売電単価に反映要

適正価格での取引を前提にアンシラリー市場設置も可

REバックアップとしての火力電源容量確保に対する適正な対価反映も必要

適正価格での取引を前提に容量市場設置も可

終わりに

以上に必要な機能・サービスを考え、システム化するのは皆様の役割。(小生はその応
援団長)

EHC、AVR、タービン・発電機監視制御システムの将来は皆さんの双肩にかかる。皆様
の今後の活躍を期待します。
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A1. 独、英、日グリッドコード要綱
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ドイツ
VDN
Transmission code
2007
RE電源
無効電流供給
0V-0.15s
(電圧低下期間要求無し)
2%I/%ΔV、MAX100%
出力復帰レート
20%P/min
FRT 火力
周波数
変動
0V-0.15s
85%V-1.5s
RE電源
火力
+0.2Hz以上時、
5%調定率で出力減
調定率制御
出力調整幅±2%
イギリス
National Grid
Grid Code
2012
0V-0.14s
15%V-0.14s
80%V-1.2s
85%V-2.5s
90%V-3min
日本
日本電気協会
系統連係規程
2013
風力
太陽光
0V-0.15s
20%V-0.3s迄は運
90%V-1.5s
転継続
但し2サイクルGB 20%V-0.3s未満で
許容
は2サイクルGB
許容
-
MAX100%
-
電圧回復後0.1s
事故回復後0.5sで90%P
で80%P(20%V以
電圧回復後1sで
電圧低下中、電圧比例出力
上)
80%P
電圧回復後1sで90%P
電圧回復後1sで
80%P(20%V未満)
±0.8Hz(50Hz)、±1.0HZ(60Hz)で3サ
-0.5Hz以下時、
イクル迄のSTEP変動時、運転継続
10sで10%負荷増、30min継続
±2Hz/sのランプ変化時、47.5~
(2005年以前の既設火力や
51.5Hz、57~61.8Hzで運転継続
50MW未満の小規模ウィンド
パークは対象外)
-
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