2005年カリフォルニア防災会議の議事概要

カリフォルニア防災会議 2005 議事概要
(Disaster Resistant California 2005: “Let’s Do It”)
■ 主催
・
カリフォルニア州危機管理局
(OES: The California Governor’s Office of Emergency Services)
・
減災協働機構
(CDM: The Collaborative for Disaster Mitigation)
■
日時
2005 年 5 月 16 日(月)~5 月 18 日(水)
■
場所
ハイアット・リージェンシー・サクラメント・ホテル
(カリフォルニア州サクラメント市内)
※ URL : http://www2.sjsu.edu/cdm/drc05/venue.html
■
会議の概要
1. 【第 1 日】2005 年 5 月 16 日(月)
1-1. 全体会議 I
モデレーター:メアリー・シドニー
SJSU 財団
最高執行責任者(COO)
【Mr. Henry Renteria, カリフォルニア州危機管理局
局長】挨拶
【Ms. Karen Armes, 連邦緊急事態管理庁(FEMA)第 9 地方局
・
局長代理】挨拶
先月、国家対応計画(National Response Plan)を始動させ、カリフォルニ
ア州の SEMS や ICS の概念と NIMS(National Incident Management System:
SEMS をもとに国家版としてつくったシステム)との融合によって、より
効率的かつ効果的な危機管理を行っていくよう努めている。
【Mr. Matthew Bettenhausen, カリフォルニア州国土安全保障室
室長】挨拶
1-2. 基調講演「食糧テロリズム:過去の教訓と新たな脅威」
【Mr. A.G.Kawamura, カリフォルニア州食糧農業局
【Dr. Richard Breitmeyer, カリフォルニア州
・
局長】
獣医】
2004 年 1 月 30 日、新たな大統領令 HSPD(Homeland Security Presidential
Directive)を施行し、食糧テロに対抗する手段を確立した。
・ 害虫のモニタリングも重要であり、その危険度マップを作成し、適宜対応
1
策を決めている。
【Mr. Pat Minyard, 植物健康疫病防止サービス局
・
局長】
狂牛病(口蹄疫)について説明。
1-3. 特別講演「Strategic Disaster Mitigation Policy for Large-scale Earthquakes」
【平井
秀輝, 内閣府地震火山対策担当企画官】
・ 新潟県中越地震および福岡県西方沖地震の概要、東海、東南海・南海地震
の危険性を説明し、また、被害シミュレーションを作成し、新たな法制度、
地震防災戦略を打ち出したことを紹介。
1-4. 開会にあたって【Dr. Guna Selvaduray, 減災協働機構(CDM)事務局長】挨拶
・
Town(住民・官)-Gown(学)-Business(産) Community をキーワー
ドにさらなる連携の和を広げていくべき旨を強調。
1-5. 分科会 I-H「Disaster Preparedness for Vulnerable Populations: A Presentation
by Assisted Living」
○
「The Impact of 2003 Wildfires on People with Disabilities」【Mr. Mike Collins,
California State Independent Living Council (SILC) Sacramento】
・ 災害弱者にとっては、情報が命で、煙に対する警報装置があるだけで助か
った例もある。米国では逆 911(救急ダイヤル)システムで行政側から緊
急事態を通報することが可能となっている。
・ 2003 年の山火事の際、災害弱者にとっては、どこに逃げていいのかさえ教
えてもらえず、何人か死に至るはめになった。
・ 避難所のトイレについては、災害弱者にとって通常のものでは使いにくく、
問題がある。
・ 【Q】ADA のシステムを変更し、災害弱者を最初に逃す可能性はあります
か?→【A】最初に逃がす必要はない。詳しくは www.calsilc.org を参照の
こと。
・
【Q】日本では、通常、障害者の個人情報を災害時に利用することはでき
ないことになっているが、米国ではどのように扱っているのか?→【A】
災害時要援護者側が 911(救急ダイヤル)に電話すれば、どのような人で
どこに住んでいるのかが瞬時に分かるようになっている。また、米国では
コミュニティーがしっかりしており、バーベキューに行く等、日頃からの
つきあいを大事にしているので、災害時においても隣近所の人間が助ける
ようにしている。
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2. 【第 2 日】2005 年 5 月 17 日(火)
2-1. 全体会議 II「フロリダのハリケーンと津波を伝えるメディアの視点」
モデレーター:Mr. Frank McCarton, カリフォルニア州危機管理局
【Mr. Adam Houslye, FOX ニュース
特派員】
【Ms. Anne Woolsey, FOX ニュース
プロデューサー】
上席次長
・ スマトラ島沖大地震・インド洋大津波の被害状況、ハリケーンによる被害
等、様々な災害現場におけるメディアの実態について説明。
2-2. 分科会 II-D「Getting the Message Out: Strategies & Technology for Mass
emergency Notifications」
(1)
「New Ways for Doing Old Things」
【Mr. Ben Green, カリフォルニア州危機管理
局広報担当アシスタントチーフ】
・
EDIS: Emergency Digital Information System(携帯情報端末:ページャーよ
うなもの)のシステムについて説明(www.edis.ca.gov 参照)。
・
【Q】情報ネットワークシステムに組み込まれていないコミュニティーに
対しては、どのように情報を伝達するのか?→【A】逆 911 システムを活
用し、事前に登録された番号(すべての番号について、その家庭の住所や
家主の名前等を登録済み)に、緊急事態を通報することが可能となってお
り、ある特定のエリアに限定して情報伝達することもできる。もちろん、
ラジオやテレビでメッセージを出すことは言うまでもない。
・
【Q】実際問題として、エリアを限定して情報を出した際、同じ名前のエ
リアがあり、間違った情報を流したということを経験したが、そういう場
合はどう解決すればいいのか?→【A】現在、ストリートの名前も合わせ
てエリアを限定することが可能であり、さらに、各電話番号にその他の情
報も持たせて、情報を伝達する相手をより限定することもできる。
(2)
「Creating Mass Notification Strategy」【Mr. Patrick Stuver, National Notification
Network, 上級副社長】
・ マスインフォメーション戦略の 5 ステップ(①ミッションの明確化、②準
備、③システムの選択、④実行、⑤アクションプランの策定)について説
明。
(3)
「Supplemental Communications Technology for Disaster Relief and Emergency:
Interoperability Solutions」
【Mr. Scot Smith, Nextel マネージャー】
・
米国全土に渡る情報ネットワークシステム(NCS: National Communication
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System)、つまり、連邦政府における防災関連機関、消防、警察等の情報
連絡手段(携帯電話を通じたラジオネットワーク)構築の仕組みについて
説明。
2-3. 全体会議 III「コミュニティー・パートナーシップ」
モデレーター:Ms. Kathleen Tierney, コロラド州立大学
【Ms. Tricia Wachtendorf, デラウェア州立大学
教授】
【Mr. Ines Pearce, シアトル市】
・
ハザードマップや被害シミュレーションモデルを使って、住民に対して、
防災に必要な情報を提供し、被害の軽減を図っている旨の説明。
【Ms. Anne Patton, タルサ市】
・ 近隣の 50 もの企業や団体、住民と連携して、
「コミュニティー」を構築し
ていったタルサプログラムの経緯について説明(www.tulsapatners.org 参照)
。
2-4. 分科会 III-A「Transportation and Lifeline Systems: Successful Case Studies &
Practical Tools」
(1)
「Potable Water System Hazard Mitigation」
【Ms. Kristin Swihart】
・ 水供給に関する減災対策について説明。具体的には、管のジョイント部分
をフレキシブルなものに取り替えたり、代替水供給タンクを用意したり等、
地震発生時に備えた対策を紹介。また、災害発生後、水供給がストップし
た場合の経済へのインパクトと減災対策に必要なコストを比較し、費用対
効果について検討。
(2)
「Advanced Traveler Information Systems: An Overview of California’s System
Application and its Performance as Part of Emergency Response Planning」
【Mr.
Osama Elhamshary, Division of Traffic Operations, Mr. David Liverly & Division of
Transportation Planning, California Department of Transport】
・
ATIS: Advanced Traveler Information Systems(511)について説明。交通網
において、災害が発生した際、どのような情報が、どのようなタイミング
で必要なのか、また、この仕組みがどのように構築されているのかについ
て説明。
(3)
「Bullet Train Derailment during the Niigata Chuetsu Earthquake」【荒井
東日本鉄道事業本部安全対策部
・
稔, JR
部長】
JR 東日本の会社概要、新潟県中越地震による被害状況、および地震対策
について説明。
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・
【Q】65 日という短期間で復旧できたのはなぜか?→【A】グループ会社
を含め、社員一丸となって正月までに復旧しなければならないという意識
で取り組んだため、比較的短期間での復旧が実現した。
・
【Q】周辺の地盤状況はどうなっていたのか?→【A】周辺で液状化現象
が起きたと言われているが、新幹線の脱線事故とは関係ないと判断してい
る。
・ 【Q】地震発生からどのくらいの時間で新幹線を止めることができたのか?
→【A】P 波を感知してから 3 秒程度で自動的に電源を切り(非常ブレー
キが自動的にかかる)
、その後約 1 分程度で(約 1.6km 先で)新幹線を止
めることができた。これについては、今後、より短時間で停車できるよう
検討しているところ。
・
【Q】高架橋のピラーはどのように耐震化したのか?→【A】鉄板でまい
て補強した。これが最もコストがかからず強度が上がる方法。
3. 【第 3 日】2005 年 5 月 18 日(水)
3-1. 全体会議 IV「ヘルスケア:公衆衛生をどう守るか-教訓」
モデレーター:Ms. Rebecca Rozen, カリフォルニア州ホスピタル協議会
副理事
長
【Mr. Dan Smiley, 救急サービス協会】
・ 災害医療対応(Disaster Medical Response)に関する活動内容と連邦政府や
州政府の各計画とのリンクをどのように構築しているかについて説明。具
体的には、ヘルスケアに関連して、連邦政府の国家対応計画(National
Response Plan)に盛り込んだ施策の内容、NIMS や SEMS とのリンク、な
らびに、連邦政府や州政府から活動予算を獲得し、いかに効率的かつ効果
的に災害医療の対応を行っているか等を紹介。
・ 災害医療の現場において、災害発生から 8 時間後には通常 98%の対応が終
わっているため、スピードが命(災害発生から 1 時間後に約 50%、2 時間
後に約 75%の重症患者が病院に到着する)
。
【Mr. Tony Iton, アラメダ郡公衆衛生局】
・ 公衆衛生においては、災害が起きた場所ではなく、なぜ起きたのかが最も
重要で、どの時点でバイオテロリズムとして認めるかが大きな問題となる。
このタイミングが遅くなれば、多くの人々を死に至らしめてしまうことに
なり、一方、あまりにも早すぎて間違っていれば、多くの人々の日常生活
を数日間(最大 2 週間)奪ってしまうことになる。
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3-2. 全体会議 V「津波」
モデレーター:Mr. Richard McCarthy, カリフォルニア州地震安全対策委員会
(CSSC)
事務局長
【Mr. Jose Borrero, 南カリフォルニア州立大学】
・
インド洋大津波の実態調査とカリフォルニアにおける津波の危険性
(NOAA で浸水シミュレーションを実施)について説明。サンフランシス
コ周辺の 7 つの断層で地震が発生した場合を想定して検討した結果、サン
フランシスコ湾までの想定津波到達時間は概ね 20~40 分ということが判
明。
【Mr. George Crawford, ワシントン州立大学危機管理学部】
・ コミュニティーにおける津波避難対策の普及啓発(賞を与えるような住民
参加型イベントにすると効果的)について説明。
【岩田
孝仁, 静岡県防災局防災情報室
室長】
・ 静岡県における津波防災対策(津波警報・注意報、津波シミュレーション、
津波ハザードマップ、防潮堤、津波避難ビル等)について説明。
以上
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