パラグアイ内政・外交報告(3月分) 政治情勢 2015年4月作成 内政では

パラグアイ内政・外交報告(3月分)
政治情勢
2015年4月作成
内政では,昨年,カニンデジュ県において発生したabc紙記者殺害事件に関連し,同事件
を主導したとみられるビルマル・アコスタ元ウペフ市長が,ブラジルで逮捕されたことがメディ
アで大々的に報じられた。右逮捕を受け,同氏がブラジルからパラグアイに引き渡されるか否
かが注目を集めている。議会では,上院がカルテス政権の重要法案である投資保護法案を
否決し,カルテス政権に対抗する姿勢を示した。
外交では,1日,パラグアイが国連人権理事会理事国に就任。また,ヴィエイラ・ブラジル
外相がパラグアイを訪問し,ブラジルで逮捕されたビルマル・アコスタ元ウペフ市長の引き渡
しを巡って,ロイサガ外相との会談が注目を集めた。同会談においては,インフラ統合,通商
関係の多様化,生産チェーンの統合,2+2会合(外相及び国防相)の開催,エネルギー分野
の協力強化,河川運輸の発展に向けた協力,司法協力などにつき,幅広い議論が協議を行
われた。
1 内政
(1)abc紙の地方記者殺害事件を巡る動き
●昨年10月,カニンデジュ県において発生した abc 紙の地方記者パブロ・メディーナ氏の殺
害事件に関連し,同事件を主導したとされ,逃亡していたビルマル・アコスタ元ウペフ市長が,
4日,ブラジルで逮捕された。アコスタ氏の逮捕に関連し,パラグアイ政府はブラジル政府に
対し,犯罪人引き渡しを要請しているものの,同氏がブラジル国籍を有していると主張してい
ることから,現在,ブラジルにおいて,ブラジル国籍の有無につき調査が進められている。
(2)EPPと見られる者による牧場労働者殺害事件
●24日午後,サンペドロ県タクアティ市に所在する牧場内において,労働者3名が複数の銃
弾を受け,死亡する事件が発生した。警察筋の情報によると,被害者の内の1名はタバコを
手にしたまま死亡していたことから,不意の襲撃を受け殺害された可能性がある。また,同牧
場内の宿泊施設,トラクター等が全焼した状態で発見されていることから,犯人が同施設等
に放火したと見られる。更に,被害者3名の傍らには,EPPのシンボルマークが書かれ,森林
伐採,農薬使用及び遺伝子組換え作物栽培の禁止を要求する脅迫状が発見された。
(3)カリガリス情報通信庁長官の議会召喚
●2月28日に行われたアリアナ下院議員のコロラド党党首選立候補表明式を国営放送で放
送したことが問題となっているカリガリス情報通信庁(SICOM)長官が,24日,上院に召喚さ
れた。同長官は,公共放送の役割はカルテス大統領のすべての行事をカバーすることであり,
立候補表明式の放送はその一部として行ったものである旨弁明した。これに対し上院は,同
長官に対する問責決議の可決につき,検討を開始した。
(4)投資保護法案の否決
●13日,上院は先般下院で可決されていた投資保護法案を否決し,下院に差し戻した。同
法案は,既に可決・成立している財政責任法,官民連携法と並ぶカルテス政権の経済政策の
軸となる法案の一つであるが,既存の投資促進に関する法律60/90号と内容が重複して
いることから,その必要性に関し疑問の声が上がっている。
(5)婚姻適齢改正法案
●30日,上院において,民法上の婚姻適齢を16歳以上から18歳以上に引き上げる法案の
審議が行われ,賛成48票,反対5票,棄権9票の賛成多数で同法が可決・成立し,政府によ
る公布手続きに回された。
2 外交
(1)カルテス大統領のウルグアイ大統領就任式参列
●1日,カルテス大統領はウルグアイを訪問し,バスケス大統領の就任式に参列した。カルテ
ス大統領は,就任式後,記者団に対し,これまでパラグアイとウルグアイとの間には不要な隔
たりが少しあったものの,両国は過去を振り返るのではなく,未来志向で,互いを必要としな
ければならない旨述べた。また,カルテス大統領は,スペインのフアン・カルロス前国王と,二
国間関係につき30分以上にわたり,意見交換を行った。
(2)ロイサガ外相のスイス訪問
●2日~4日,ロイサガ外相は第28回人権理事会ハイレベルセグメント出席のためスイス・ジ
ュネーブを訪問し,同会合でステートメントを行うとともに,同会合のマージンで宇都外務大臣
政務官との会談等を行った。
<ロイサガ外相のステートメント>
●2日,ロイサガ外相は,ステートメントにおいて,パラグアイが歴史的に民主主義の強化に
努めてきた文脈において,今回,人権理事会理事国入りを果たした旨述べるとともに,パラグ
アイ政府の優先課題が社会的不平等の解消にある旨述べた。また,同外相は,人権の促
進・擁護がカルテス政権の主軸である旨述べるとともに,各種人権関係国際機関の勧告等を
フォローアップしつつ,極貧層削減国家プログラム「Sembrando Oportunidades」やテコポラ
計画を通じた所得移転政策を促進する旨述べた。
<ブルカルテール・スイス外相との会談>
●同日,ロイサガ外相は,人権理事会ハイレベルセグメントのマージンにおいて,ディディエ・
ブルカルテール・スイス外相との会談を行った。ブルカルテール外相は,パラグアイの人権理
事会理事国入りを歓迎するとともに,EU-メルコスールFTA締結交渉の重要性,中南米の経
済統合に向けた太平洋同盟の役割を強調した。これに対し,ロイサガ外相は,パラグアイの
経済ブームを念頭に置き,パラグアイが外国との貿易と外国投資に対して,より良い条件の
機会を提供する旨述べるとともに,右が両国間の協力関係を強化しうる旨述べた。
<宇都外務大臣政務官との会談>
●3日,ロイサガ外相は,宇都外務大臣政務官との会談を行った。ロイサガ外相は,同会談
において,日本人の尊い人命が犠牲となったISILの事件を非難するとともに,日本との連帯
を示した。また,両国間の伝統的な友好関係を強調した。
(3)ロイサガ外相のフランス訪問
●5日,ロイサガ外相はパリを訪問し,フランス外務省において,ファビウス・フランス外相と
の会談を行い,経済,文化,防衛分野における協力につき,意見交換を行った。ファビウス外
相は,同会談の冒頭において,本年1月11日の週刊誌襲撃事件が発生した際に,パラグア
イ政府が連帯の意を表明したことにつき,カルテス大統領,ロイサガ外相及びパラグアイ国民
に対して,感謝の意を表明した。
(4)ドミニカ国との外交関係樹立
●6日,パラグアイ外務省は,同日付けプレスリリースを通じて,ドミニカ国との外交関係樹立
を正式に発表するとともに,共同声明を発出した。なお,同共同声明の内容は以下とおり。両
国は,国連憲章及び国際法の原則と目的に則り,相互理解及び友好・協力関係,世界の平
和と安定,主権の尊重と平等,国際条約の遵守,独立・領土保全の尊重を促進するため,兼
轄大使の配置を通じ,外交関係を正式に樹立することを決定した。
(5)ロイサガ外相のUNASUR臨時外相会合の出席
●14日,ロイサガ外相は,エクアドル・キトにおいて開催されたベネズエラ情勢分析のための
UNASUR臨時外相会合に出席した。同会合においては,3月6日にカラカスを訪問した特別
委員会の報告書,及び,米国がベネズエラは米国の安全保障及び対外政策上の脅威である
として国家緊急事態を宣言したことにつき,協議が行われた。
(6)ヴィエイラ・ブラジル外相の当国訪問
●13日,当国を訪問したヴィエイラ・ブラジル外相は,大統領府において,カルテス大統領を
表敬するとともに,ロイサガ外相との会談等を行った。
●ロイサガ外相は,共同記者発表において,今次会談では,インフラ統合,通商関係の多様
化,生産チェーンの統合,2+2会合(外相及び国防相)の開催,エネルギー分野の協力強化,
河川運輸の発展に向けた協力.司法協力,両国間の第2の橋(プレシデンテ・フランコ市-フォ
ス・ド・イグアス間)の建設等につき,話し合いを行った旨述べた。
●これに対し,ヴィエイラ外相は,今次会談において,ロイサガ外相のブラジル公式訪問にか
かる招待を行った旨述べるとともに,可能であれば,ブラジルで行われるメルコスール首脳会
合までに訪問が実現することを望む旨述べた。また,パラグアイとの二国間関係は,戦略的
かつ中核をなすものであり,すべての分野において,二国間関係を深化させたい旨述べた。
(7)ロイサガ外相のコロンビア訪問
●24日~25日,ボゴタを訪問したロイサガ外相は,オルギン・コロンビア外相との会談,第
三回二国間政策協議,覚書署名への立ち会い,共同記者発表,パラグアイ政府からオルギ
ン外相に対する叙勲の伝達式を行った。
●ロイサガ外相は,共同記者発表において,コロンビア政府からパラグアイ政府に対する,
治安面での協力・支援に対し感謝の意を述べた。また,同外相は,パラグアイ政府はコロンビ
アの和平交渉を注視しており,引き続き,サントス政権を支援する旨述べた。更に同外相は,
両国経済関係の強化に向けて,今後,コロンビアの経済ミッションがパラグアイを訪問する旨
述べた。
●これに対し,オルギン外相は,今次会談では,二国間の多岐に亘る議題を協議し,有意義
な会談となった旨述べた。また,同外相は,CELACやUNASURの場において,両国は協調
関係にある旨述べた。更に,同外相は,パラグアイが太平洋同盟のオブザーバー国であるこ
とに言及しつつ,7月に開催される太平洋同盟首脳会合において,パラグアイを含めた約10
カ国との協力につき,決定がなされることを期待する旨述べた。
(8)中国共産党代表団の当国訪問
●18日付当地主要紙は、17日,中国共産党の代表団が当地を訪問し,上院外交委員会と
の会談を行った旨報じた。サギエル上院外交委員長(野党リベラル党)は同会談後,記者団
に対し,会談がパラグアイの政界関係者との関係構築を目的とする表敬であった旨述べた。
また,同委員長は,同会談を重要なものと評価した上で,中国との貿易額は莫大であり,個
人的には,中国との関係を正常化させ,完全な形で中国との外交関係を樹立するべきである
旨述べた。なお,同委員長によれば,同会談において,中国におけるパラグアイ人死刑執行
問題は触れられなかった。
3 要人往来
(1)来訪
●13日,ヴィエイラ・ブラジル外相(カルテス大統領表敬等)
●23日,シャミール・イスラエル農業・農村開発大臣(ロイサガ外相との会談)
(2)往訪
●1日,カルテス大統領,ウルグアイ訪問(バスケス大統領の就任式参列)
●1日~11日,レイテ商工相,スペイン訪問(投資誘致セミナー出席)
●2日~4日,ロイサガ外相,スイス訪問(第28回人権理事会関連会合出席)
●5日,ロイサガ外相,フランス訪問(ファビウス外相との会談)
●9日~10日,ペーニャ蔵相,ペルー訪問(アンデス開発公社関連会合出席)
●9日~20日,バイアルディ女性相,米国訪問(国連女性の地位委員会出席)
●14日,ロイサガ外相,エクアドル訪問(UNASUR 臨時外相会合出席)
●17日~20日,ロイサガ外相,米国訪問(OAS 事務局長選挙)
●24日~25日,ロイサガ外相,コロンビア訪問(オルギン外相との会談)