第18号 - 東京大学大学院経済学研究科・経済学部

Graduate school of Economics,
Faculty of Economics
The University of Tokyo
東 京 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 ・ 経 済 学 部
地 方 公 共 団 体 金 融 機 構 寄 付 講 座 ニ ュ ー ズ レ タ ー
第 18 号
日 時
2013年 2 月19日(火)
16:00∼18:30
第16回フォーラム
「地方債計画と地方財政計画」
場 所
東京大学本郷キャンパス
東京大学大学院経済学研究科学術交流棟
(小島ホール)2階 小島コンファレンスルーム
内 容
● 報 告
杉本 達治
(総務省自治財政局地方債課長)
● 討 論
2013年 2 月19日(火)、小島コンファレンスルームにお
いて地方公共団体金融機構寄付講座第16回フォーラム「地
方債計画と地方財政計画」が開催され、総務省自治財政局
江夏 あかね
(株式会社野村資本市場研究所研究部主任研究員)
地方債課長の杉本達治氏より、平成25年度の地方財政対策、
小西 砂千夫
(関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授)
地方財政計画・地方債計画とともに、前年度から導入され
● 報告者リプライ
前年度と同様に通常収支分と東日本大震災分に分けられた
た民間等資金債の届出制度の状況、近年における地方債の
発行状況、地方債の信用維持の仕組み、ふるさと融資制度
の改正などについてもご報告いただきました。二人の討論
● 質疑応答
者からは、住民参加型市場公募地方債や共同発行市場公募
地方債の現状、新政権における財政再建策と地方財政との
関係などについて、報告内容をさらに掘り下げる論点が提
示されるとともに、フロアからも数多くの質問が出るなど、
活発な議論が交わされました。
※当日の報告資料は寄付講座のホームページでご覧頂けます。
( URL:http://www.e.u-tokyo.ac.jp/kifu/jfm.html )
主催/東京大学大学院経済学研究科寄付講座、
地方公共団体金融機構 April.2013 No.18
1
報告
総務省自治財政局地方債課長
杉本 達治
えますので、東日本大震災等の教訓を踏まえて
緊急に行わなければならない防災・減災事業や、
地域活性化等の事業について、給与削減額に見
合った事業費を特別枠として計上しています。
具体的には、全国防災事業費を約1,000億円、
緊急防災・減災事業費を約5,000億円、「地域の
元気づくり事業費」を3,000億円措置することに
なっております。この「地域の元気づくり事業
費」については、地方公共団体における人件費
の削減努力を反映するため、 3 分の 1 を人口を
基礎に各団体に配分し、 3 分の 1 をラスパイレ
ス指数を参考にして、さらに 3 分の 1 を、定数
の削減努力などを参考として配分することとし
ております。
それから、平成25年度の地方財政を考えると
きの非常に大きなファクターが、平成24年度補
正予算です。この補正予算では地方負担分の 8
平成25年度の地方財政対策
割について、1.4兆円の「地域の元気臨時交付金」
まず、地方債計画を定めるにあたっての前提
が充てられることになっています。通常ですと、
となる平成25年度の地方財政対策のポイントに
これは平成24年度内に交付を行い、年度内の歳
ついて、報告資料の 1 ページにまとめておりま
出に充てられるということになります。しかし、
す。昨年度と同様、通常収支分と東日本大震災
各省の意向を伺っていますと、各省の補助金に
分に分けているのが大きな特徴かと思います。
ついては基本的に年度内に各地方公共団体向け
つまり、東日本大震災関係の復旧・復興事業を
に配分されるようですが、臨時交付金は、補助
円滑に推進するとともに、復興特区をはじめと
裏分について各地方公共団体ごとに積み上げる
する手厚い措置を行うために、分離して経理を
という作業が別途出てきますので、年度内の配
行っているわけです。
分はなかなか厳しい状況になると思います。
通常収支分については、地方が安定的な財政
それから、東日本大震災分につきましては、
運営を行えるように、一般財源総額を平成24年
各被災団体の事業の状況を踏まえて、震災復興
度よりも約1,300億円増の、59.8兆円確保しまし
特別交付金6,000億円を確保しております(報告
た。具体的には、地方税と譲与税が4,000億円増
資料 p1)。
えたのですが、地方交付税が同程度減少しまし
続きまして、平成25年度の地方交付税の姿に
た。また、後ほどご説明するように、臨時財政
ついて、報告資料の 2 ページをご覧いただきた
対策債が、新発分は少し減っているのですが、
いと思います。「入り口ベース」と言われる、一
既往分の借換えが増えているために、1,000億円
般会計から特別会計への繰出しについては、交
程度増えております。
付税の法定率分が11.2兆円、それに法定加算や
それから、今年度の地方財政対策の一番大き
別枠の加算、さらには折半ルールに基づく臨時
なポイントは、地方公務員給与費の臨時特例で
財政対策加算が加わって16.3兆円となり、前年
す。国家公務員については、平成24・25年度の
度よりも2,000億円の減となっています。
2 年間で、平均7.8%の給与削減を行っています。
それと同様の措置を地方公務員で行うと仮定し
さらに、交付税特別会計の中でも色々と工面
て、約8,500億円の給与費を削減します。ただ、
税収が好調だったことなどを受け、繰越金が約
給与削減だけを行うと地域経済に負の影響を与
5,000億円あったのですが、これが3,000億円減
2
をしております。実は平成24年度は、前年度の
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り、それから剰余金の活用もできず、大幅な減
平成25年度の地方債計画
になるところでした。しかし、地方交付税の総
続いて、平成25年度の地方債計画についてご
額を確保するという観点から、地方公共団体金
説明します。地方債計画は地方財政対策を受け
融機構の準備金を活用するため、 3 年間の計画
て、通常収支分については、普通会計分が11兆
を 2 年目に前倒しし、残っている6,500億円を使
1,517億円となっています。各事業債の規模につ
わせていただくことで、17兆1,000億円を確保し
いて、原則として投資的経費のうち、補助直轄
ました。機構の準備金については、 3 年のとこ
事業は 1 %の減、単独事業は3.1%の減というこ
ろを 2 年にしましたが、 1 兆円についてはもと
とを念頭に置いています。その他の事業債につ
もと予定していたものですので、機構の運営に
いては、これまでの事業の実績と来年度に向け
何か影響を与えるようなものではないと考えて
ての制度改正を踏まえて、おのおの計上してい
います(報告資料 p2、5)。
ます。
以上を含めた地方財政収支の見通しの概要で
例えば、公共事業等債については、地方財政
すが、歳入・歳出の合計が81.9兆円です。給与
対策の中で公共事業の伸びがマイナス1.2%であ
関係費のうち、退職手当以外は、先ほど申し上
るということのほかに、最近の事業量が少し過
げた給与削減のほかに、定数削減も含めて計上
大でしたので、その分を削減しております。そ
しています。退職手当については、国家公務員
れから、災害復旧事業債は大きく伸びています
の退職手当の改正と同等の改正を、地方におい
が、東日本大震災分は除き、ここ数年間の事業
ても行うという前提で積算しております。地方
の実績を見て必要額を措置しました。社会福祉
債に関係するところでは、投資的経費のうちの
施設についても、最近事業量が相当増えていま
単独分が3.1%の減になっています。また、報告
したので、その分について乖離の是正を行いま
資料には出ていませんが、投資的経費のうちの
した。
補助直轄事業は1.2%の減となっています。以上
それから、地域活性化事業債については、地
を含めた地方一般歳出は66.4兆円で、ほぼ昨年
方特定道路やふるさと農林道の関係が廃止され
並みとなっています(報告資料 p3)
。
ますので、これらがやや減少となっています。
次に、平成25年度の財源不足の補てんの措置
緊急防災・減災事業については、新規で4,550
の内容です。全体として、財源不足額は13.2兆
億円を通常収支分に計上しております。平成24
円余りありました。それに対して財源対策債を
年度は、東日本大震災分で緊急防災・減災事業
8,000億円充て、さらに既往の法定加算分、別枠
の措置をしておりました。基本的な考え方とし
加算、剰余金の活用、機構の準備金の活用を行
て、東日本大震災分については、住民税の均等
い、折半ルールに基づく財源不足は 7 兆2,000億
割の引上げ等の臨時増税で賄っていくために会
余りとなっています。そのうちの半分は、国の
計を分け、平成24年度で約7,700億円を用意して
一般会計からの臨時財政対策加算として当該年
いましたが、それについても使い切るという状
度の交付税に加算され、残りの半分は臨時財政
況ですので、平成25年度については通常収支分
対策債です。臨財債は新発債が前年度に比べて
の中で、給与カットに伴う臨時特例ということ
2,000億円余り減少していますが、既往の借換え
分が前年度よりも3,000億円増えており、この関
係で、昨年度よりも総額が約1,000億円増えてい
ます(報告資料 p4)。
で措置を行うということです。今後とも、必要
経費は通常収支の方で措置をしていくことにな
るかと思います。
臨時財政対策債については、地方財政対策の
中で 6 兆2,132億円と定められておりますし、退
職手当債につきましては、先ほども申し上げま
したように、国家公務員の退職手当法の改正に
見合った改正が行われる前提での措置により、
減少となっています。以上を含めて、通常収支
April.2013 No.18
3
分は13兆3,708億円を措置しております(報告資
は約41兆円でしたが、平成25年度末には45兆円
料 p7)。
に増えるということで、これはやはり、財政が
次に、東日本大震災分の地方債計画です。ま
少し硬直化していることを意味していると思い
ず、被災地で行われる復旧・復興事業について
ます。こうしたことを今後改善していく必要が
は、被災団体の意向を踏まえて措置していると
あると考えています(報告資料 p14)。
ころです。その一方で、被災団体の借換債につ
いては、当該団体において、地方公共団体金融
地方債協議制度の見直しと届出制度の状況
機構からの借入分のうち、借入利率が 4 %を超
次に、平成24年度のトピックの一つであった、
え る 分 に つ い て、 平 成25年 度 で 借 り 換 え る こ
地方債協議制度の見直しについて、少しご説明
とができるようにします。具体的には、補償金
させていただこうと思います。少しおさらいを
を免除して繰上償還を行った上で、借り換えを
しますと、地方債協議制度では基本的に、協議
行って頂きます。この残債額が1,830億円ありま
を行って同意を受けるということになっていま
すので、その全額を借り換えられるように、地
したが、平成24年度から、普通の財政状況の団
方債計画上の措置を行っているところです。そ
体の民間等資金債については、届出制度を導入
れから、全国防災事業の973億円については、補
することとしました。報告資料15ページには、
助事業として行われる全国防災事業の地方負担
協議不要対象団体の基準が書かれていますが、
分を全額措置し、昨年度同様、全額を公的資金
主なものは「①実質公債費比率が16%未満であ
で賄うということで資金手当をしております(報
ること」です。そのほかにも、実質赤字額、連
告資料 p8)。
結実質赤字比率、将来負担比率などについての
通常収支分と東日本大震災分を合計したのが、
基準があり、これらをすべて満たすものについ
報告資料の 9 ページの表です。総計は13兆6,878
て、協議が不要となるという制度です。
億円で、そのうち普通会計分が11兆2,723億円で
また、協議を受けて同意された、もしくは許
す。今申し上げた、被災団体の借換えで地方財
可された地方債については、公的資金の充当が
政対策に出てこない部分が、外書きとして280億
可能となり、元利償還金が地方財政計画へ算入
円あります。あとは、公営企業会計等分が 2 兆
され、交付税措置されるということになるわけ
3,000億円余りあります。資金の内訳は前年度の
割合をほぼ踏襲し、公的資金は 5 兆8,530億円、
うち財投分が 3 兆6,810億円、機構資金はほぼ前
ですが、届出をした地方債については、普通、
年度並みを確保しています。市場公募債は全体
認められるという制度にもなっています。平成
で2.4%の減ですが、地方公共団体が積極的に活
24年度(平成23年 4 月∼24年 1 月)における民
間等資金債の届出情報が、報告資料の16ページ
に示されております(報告資料 p15∼16)。
用していますので、昨年度と同額かつ過去最高
の割合となっています。その分、銀行等引受債
が減っております(報告資料 p9)。
協議をすれば同意されると認められるものに対
しては、元利償還金の地方財政計画への算入が
届出制度のメリットとしては、大きく 2 点あ
報告資料の14ページは全体を踏まえて、地方
るかと思います。 1 点目は、地方債発行の自由
財政の借入金残高の推移を見たものです。平成
度の拡大です。協議、同意の手続きは不要とな
25年度は前年度と同じ201兆円程度になると見込
んでいます。ここ10年ぐらいは約200兆円で行っ
りますので、地方公共団体が市場の動向に応じ
たり来たりと、ほぼ償還額に見合った発行額
を通じて地方債発行の平準化を図ることができ
で、横ばいになっています。GDP に対する割合
るということです。 2 点目は、手続きが簡素化
も41.1%で、昨年度よりも少し下がっています。
されるということです。協議制度では、同意等
ただ、よくご覧いただきたいのは、棒グラフの
予定と正式な同意の 2 往復の手続きが必要です
赤い部分がだんだん増えてきているということ
が、事前届出の場合は片道だけの手続きで足
です。これは臨時財政対策債です。平成24年度
りるので、事務負担が軽減されます(報告資料
4
て機動的に資金の調達を行うことができ、年間
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p20)。
告資料 p21)。
報告資料の17ページは、届出制を実施した結
報告資料の22ページには、民間資金債の月別
果がどうなったかということで、「 3 .合計」を
の発行状況が示されています。11、12、 3 月に
ご覧いただきたいと思います。今年 1 月までの
集中しており、地方公共団体の財政需要に合わ
10カ月間で、約 2 兆円の届出がありました。こ
せた発行が行われているということがお分かり
れは、民間等資金約 8 兆円のうち、 4 分の 1 を
頂けるかと思います。一方で、民間の証券会社
占める規模となっています。個別に見ると、一
や銀行、投資家の方々などのお話を伺いますと、
番多く発行しているのは東京都で約6,400億円、
資金需要は基本的に 4 月と10月にあるというこ
それから、神奈川県が約2,900億円、埼玉県が約
とです。現在は金利が非常に安定しているので
2,300億円となっています。東京都は平成24年度
問題ないかと思いますが、やはりこれからは長
の民間等資金のほぼ全額について、届出制度を
期的な視点を持ちながら、引受側の意向や資金
活用しているという状況です。東京都に少しお
需要に合わせた発行を心掛けていく必要がある
話を伺ったところ、臨機応変に発行ができ、超
かと思います。そのためにも届出制度をご活用
長期債を含めて、一番環境のいい時期に発行が
いただきたいと思っているところです(報告資
できたということです(報告資料 p17)。
料 p22)
。
報告資料の18ページには、どの団体が届出制
届出制度については、地方債の信用は大丈夫
を利用したかというデータを示しております。
か、デフォルトしないのかといったご懸念の声
まず、どれくらいの団体が協議不要になったか
もいただきます。これにつきましては報告資料
ということですが、平成24年度には基準となる
の23ページ以下で、そうした心配はございませ
実質公債費比率14%で判定しますと、71.3%と
んということを書いております。一つには、国
なっています。参考として掲げた平成25年度に
における制度的対応、地方公共団体における
は、 こ れ が16% に 上 が る た め に85.5% に 増 え、
色々な努力、さらには、最近行っている信用維
普通の財政状況の団体であれば、ほとんど届出
持のための努力といったものがございます。簡
ができるということになります。平成24年度に
単に言いますと、地方交付税制度によって、マ
利用した団体の延べ数を見ますと、やはり規模
クロ・ミクロの両面から財源の保障を行ってい
が大きくて民間等資金の割合の大きい都道府県
るということ、あるいは、地方財政法で起債許
や政令市が多く、市区町村はまだ 1 割強という
可制度を設けていることとか、財政健全化法に
状況です(報告資料 p18)。
基づく早期健全化・再生を行うということです。
報告資料の19ページには、実質公債費比率ご
それから、地方公共団体においても不断の行
との団体数が示されております。これを見てい
革の努力を行っていただいておりますし、最近
ただきますと、18%未満の団体が93.6%となっ
でも平成の大合併を行っています。また、税源
ています。一番下の表からお分かりのように、
の涵養や財務状況の開示、IR なども推進してい
財政健全化法が施行されて以降、ここ数年のう
ただいています。さらに、第三セクターなどの
ちに18%未満の団体が順次増えてきています。
経営改革も行っていただいたり、今後は地方公
実質公債費比率の基準である14%未満と16%未
会計の改革にも取り組むこととなっています(報
満の団体は、それぞれ71.5%と85.9%となってい
告資料 p23)。
ます(報告資料 p19)。
地方債の元利償還金がマクロでどのように
報告資料の21ページには、平成23年度決算に
なっているかということですが、公債費につい
おける県、政令市、市町村の地方債の発行実績
ては標準的歳出の中で見ており、それらを含め
が、資金区分別に示されています。都道府県と
た地方財源の不足について手当を行っています
政令市は市場公募債の規模が非常に大きく、市
(報告資料 p24)。ミクロでは、公債費の一定割合
区町村には公的資金が手厚く配分されていると
を交付税で措置するような内容のものについて
いう状況がお分かりいただけるかと思います(報
需要額に積み上げ、その他の公債費は留保財源
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でまかないつつ、財源不足分は交付税措置がさ
れまでよりも責任あるガバナンスの確保を行う
れるという制度になっています(報告資料 p25)。
とともに、国内・海外市場から資金調達を行う
報告資料の26ページには、財政健全化法の内
という特徴を持ち、これまで持っていた健全化
容が書かれております。例えば、実質公債費比
基金を使い、運用益で利下げを行いながら、一
率であれば、25%を超えれば早期健全化団体に
般会計に対しても幅広く資金供給を行っており、
なりますし、財政再生基準を超えれば、財政再
大変安定した運営となっています。貸付対象も
生計画を策定するということになって、財政が
順次拡大してきました(報告資料 p31∼33)。
破綻しないよう事前から制度が整えられていま
報告資料の34ページには、公社債の種類別の
す(報告資料 p26)。
残高が示されています。国債は市中消化分が716
これらの指標を模式図的にまとめたのが、報
兆円と、大変大きくなっています。さらに、欄
告 資 料 の27ペ ー ジ で す。 そ し て、 平 成23年 度
外の注にありますように、このほかに日銀の応
決算で財政再生団体や健全化団体がどのように
募などが64兆円程度ありますので、国債の総額
なっているかということが、報告資料の28ペー
は781兆円となっております。一方、地方債は69
ジに書かれております。早期健全化基準以上の
兆円となっております(報告資料 p34)
。
団体については、平成22年度決算で 5 団体だっ
報告資料の35ページには、地方債の投資家区
たのに対して、平成23年度に新しく入った団体
分別の保有率が示されています。ゆうちょを含
はなく、逆に 3 団体が卒業したことにより、 2
む中小金融機関、かんぽを含む生命保険、銀行
団体となっております。
がそれぞれ 2 割程度保有しております。そのほ
財政再生基準以上の団体としては夕張市が対
か、色々な政府関係機関や事業会社等が約 4 割
象となっていまして、早期健全化基準以上につ
保有しております(報告資料 p35)。
いては、将来負担比率において夕張市のほか、
報告資料の36ページには市場公募地方債の発
泉佐野市も対象となっています。いずれにして
行実績が示されています。これを見ていただき
も地方団体は、実質公債費比率も年々良くなり、
ますと、発行額が順調に拡大してきているとい
基本的に財政状況は好転しております(報告資
う状況がお分かりいただけるかと思います。ま
料 p27∼29)
。
た、表中に住民参加型市場公募地方債というも
のがございます。これは平成13年度から始まっ
地方債の発行状況
たのですが、平成25年度も前年度と同様、2,500
報告資料の30ページでは、地方債計画の資金
億円の発行を予定しております。ただ、平成18
額の推移が示されています。左側が実際の資金
年度を境に発行団体数が減るとともに、規模も
別の計画額の推移で、右側がその比率です。大
縮小してきております(報告資料 p36)
。
きく言うと平成23年度が一つの転換点で、市場
住民参加型市場公募債は市町村が唯一発行で
公募債がだんだん増え、それまで一番大きかっ
きる市場公募債ですし、住民の皆さんに行政に
た「その他の民間等資金」(具体的には銀行等引
対する関心を持っていただくという意味でも大
受債です)、それから公庫資金を上回って一番
切だと思います。基本的には 5 年債が中心で、
大きくなりました。さらに、市場公募債が財政
金利上もあまり魅力がないということで、借り
投融資資金を上回ったのも平成23年度で、平成
手の皆さんに対するアピール度が低いのかもし
25年度には32.4%となっております(報告資料
p30)。
れませんが、地方公共団体の皆さんには今後と
地方公共団体金融機構についてはご案内のと
用していただきたいと考えています。
おり、平成21年度に機構法が施行され、地方公
全国型市場公募地方債発行団体の推移につい
営企業等金融機構から改組されました。出資金
ては、報告資料の37ページに示されております。
は166億円で、すべての地方公共団体から出資を
平成24年度に熊本市が加入した後、平成25年度
受けております。基本的な仕組みとしては、そ
には高知県と佐賀県が加わり、それぞれ100億円
6
も、住民参加型市場公募債についても十分に活
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の発行を予定しており、公募団体は全体で54団
ドの状況です。平成15年度以降、共同発行市場
体になっています(報告資料 p37)。
公募地方債は順調な金利動向を描いており、東
共同発行市場公募地方債は平成15年 4 月から
日本大震災直後の一昨年の 3 月には一時的に跳
発行されています。発行団体は順次増えており、
ね上がっていますが、その時期以外は大体 2 ∼
平成24年度には福井県が入り、現在、36の府県
とすべての政令市が発行しています。平成24年
3 ベーシス・ポイントの間に入っており、東京
都債と比較しても非常に順調なのではないかと
度 の 発 行 予 定 額 は 1 兆5,150億 円 で、 平 成25年
考えています(報告資料 p40)。
度もほぼ同額程度が発行されると見込んでいま
それから、住民参加型市場公募地方債につい
す。共同発行市場公募地方債は、連帯債務方式
ては、住民の行政参加意識の高揚や、住民に対
を取っているということと、毎月できるだけ平
する首長の施策の PR ができるということがあり
準化しながら発行していくということで、投資
ますし、資金調達手法の多様化というメリット
家の方々にも安心して買っていただけるのでは
がございますので、今後とも前向きにご活用い
ないかと思っています。それから、流通性の補
ただければと考えているところです(報告資料
完措置としてファンドを用意しており、そうい
う意味でもご安心していただけるものと考えて
p41)。
IR 活動については報告資料の42ページに書か
います(報告資料 p38)。
せていただいております。総務省、公募団体、
報告資料の39ページには、共同発行市場公募
地方公共団体金融機構、地方債協会などととも
地方債の発行団体と発行額の推移が示されてい
に、市場公募地方債の合同 IR 説明会を昨年10月
ます。大きな団体が抜けたこともありますが、
に実施しておりますし、今年の 3 月には共同発
基本的には順調に成長してきたのではないかと
行市場公募地方債の IR を予定しております。海
考えています。平成15年度に発行を開始したと
外でも昨年10月に、北欧や英国で投資家向けの
きには8,470億円で、現在 1 兆5,000億程度となっ
セミナーや個別訪問を行いました。また、東京
ていますが、最近は横ばいというような状況で
都や静岡県、愛知県は、アジアを中心に IR を実
す。そうした意味で、共同発行市場公募地方債
施しています。
は成熟期を迎えていると思っていますが、まだ
また、国内における個別団体の IR 活動につい
10年債しかありませんので、発行団体はもう少
ては、16の都県、政令市が実施していますが、
しバリエーションを設け、多様化を図りながら、
特徴的なのは、ほとんどの団体で市長や知事が
さらなる規模の拡大をご検討いただけたらと考
直接ご説明をしているということです。こうす
えています(報告資料 p39)。
ることで、投資家の方々にとってはトップの方
資料にはありませんが、市場公募債の規模に
の考え方が聞ける良い機会になりますし、投資
ついて申し上げます。新発債は 4 兆4,400億円で、
家ニーズに合った場になっています。そればか
その内訳は、全国型市場公募地方債が 4 兆1,900
りではなく、地方公共団体の側にとっても発行
億円、住民参加型市場公募地方債が2,500億円で、
環境の整備ができるということがありますし、
いずれも前年度と同額を見込んでいます。借換
情報公開するとともに、首長自身が市場の雰囲
債を含んだ規模は 7 兆7,600億円です。年限ごと
気をよく理解できるということがあります。や
の内訳は、10年債が 5 兆円で、前年度より2,000
はり、投資家を意識した運営は非常に重要だと
億円程度増えています。 3 年、 5 年、 7 年の短
思いますので、そうしたことを首長に理解して
期債は1.9兆円で、前年度より3,000億円増えてい
頂く良い機会になると思います。
ます。その一方で、20年、30年の超長期債は昨
ただ、裏返せば、こうした IR を実際に行って
年度の約8,000億円から約6,000億円へと、2,000
いるのは16の都県、政令市だけです。そうした
億円減っております。
意味では、まだまだ数が少ないような状況であ
次に、市場公募債、特に共同発行市場公募地
り、もっと積極的に IR 活動をしていただくこと
方債の対国債利回りの格差、すなわちスプレッ
で、地方債全体に対する信用度も上がってくる
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と思いますので、実施されていない団体にはぜ
いては 1 人以上に緩和しております(報告資料
ひご検討いただければと考えています(報告資
p44)。そのほかにも、条件不利地域に対する特
料 p42)。
例措置の期限を延長したり、計画区域を拡大し
たりしております。
ふるさと融資制度の改正
例えば前提条件として、都道府県が通常の地
今年度の地方債関係の大きな制度改正として、
域で、複合施設ではない単体施設に融資する場
ふるさと融資制度の改正があります。正式には
合、総事業費が80億円で、そのうち自己資金が
「地域総合整備資金貸付事業」ですが、これは平
10億円、長期プライムレートの民間借入金利が
新規雇用だけでも16万人を超えており、雇用創
2 %だったとします。そうしますと、融資限度
額が42億円に広がった上、ふるさと融資額が12
出や地域の政策課題を解決する上で非常に大き
億円から24.5億円になり、金利軽減効果が0.4%
な役割を果たしてきたと考えています。実際に
から0.82%に大幅に拡大します。地方公共団体
は、民間金融機関と地方公共団体が、総額の 2
は企業誘致のために、補助金を出したり税の優
割を無利子で融資することにより、全体の金利
遇を行ったりしますが、融資の面でこのように
水準を下げて企業誘致や地元企業の拡充を行お
制度が大きく拡充されましたので、ぜひご活用
うとしているわけですが、市中金利がずっと下
いただき、地域の活性化にも役立てていただき
がってきており、そうした意味で魅力が薄れて
たいと考えています(報告資料 p45)。
成元年度から行っているもので、制度創設以来、
きているというような状況がありました。
そうした中で現在、安倍内閣は日本の再生と
いうことで、地域経済の活性化の一つの大きな
ツールとして、このふるさと融資制度について
拡充を行うこととなりました。主な内容として
は、 融 資 比 率 に つ い て、 通 常 地 域 に お い て は
20%から35%に、過疎地域等においては25%か
ら45%に引き上げることとしました(報告資料
p43)。
算定基礎の改正についてご説明しますと、こ
れまでは、借入金、自己資金、補助金とある中
で、借入総額の 2 割がふるさと融資だったわけ
ですが、平成25年度からはそれに自己資金を加
えて比率が35%になります。また、報告資料の
44ページをご覧いただきたいと思いますが、東
日本大震災の被災地域について、特定被災地方
公共団体、もしくは被災区域を一部含む地方公
共団体において、一番高い融資比率、もしくは
限度額のところに位置付けました。それから、
福島の原子力発電所の事故を受け、再生可能エ
ネルギーが非常に重要視されていますが、そう
した産業を誘致することは地域経済にとっても
非常にメリットが大きいので、再生可能エネル
ギー電気事業に係る特例措置として、県、政令
市であれば通常10人以上、市町村は 5 人以上と
していた雇用要件を、再生可能エネルギーにつ
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The University of Tokyo
討論
予定額が開示されます。一方、国債の場合、平
株式会社野村資本市場研究所研究部主任研究員
公債と赤字公債の合計で約43兆円、借換債が約
江夏 あかね
成25年度の発行計画においては、新規債が建設
112兆円という形で、発行体が単一で銀行等引受
債がないということもあるのですが、すべての
借換債の発行予定額が公表されています。国債
に比して、地方債の借換債の規模は、小さいと
想定されます。これは、国債は60年償還が基本
であるのに対し、地方債の償還期間は、原則と
して30年以内という制度上の違いがあることに
加えて、債務残高が200兆円程度で推移している
地方債と、今でも大幅に発行残高が増加してい
る国債という違いが要因と考えられます。ただ、
今後、臨時財政対策債の借換需要も本格化する
見通しであることを踏まえて、市場公募地方債
の借換分を含めた発行予定額のみならず、借換
平成25年度の地方財政対策と地方債計画は、
分を含めた銀行等引受地方債の発行予定額を開
政権交代等があったために例年よりも 1 カ月ほ
示するご予定はあるか、統計の状況やお考え等
ど公表時期が遅れていたこともあり、地方債市
をお伺いできましたらと存じます。こちらが 1
場では待ち望んでいたわけですが、杉本様には
点目のご質問です。
とても詳しくご解説いただきました。また、平
2 点目のご質問ですが、ご報告資料の36ペー
成24年度は地方債届出制度がやはり大きなテー
ジと41ページに、住民参加型市場公募地方債の
マでしたが、その現状についても分かりやすく
発行状況が示されています。先ほどもご指摘い
ご説明いただきましたことは意義があったと思
ただいたように、2006年度以降、発行額はそれ
います。
ほど伸びておらず、それは金利の魅力があまり
私ども地方債市場参加者にとって、平成25年
ないため、アピールが難しいことが要因という
度の地方債計画の中で一番注目されるところは、
ことでした。しかし、それは逆に考えると、発
借換債を含めた市場公募地方債の額だと思いま
行体にとっては資金調達コストの観点からとて
す。具体的には、ご報告資料の11ページの注に
も妙味のある発行手法だろうと思います。ご指
書かれている 7 兆7,600億円という額です。2012
摘いただいた点以外に何か、住民参加型市場公
年 9 月に公表された平成25年度地方債計画(案)
募地方債の発行が伸び悩んでいる背景を把握さ
の段階では 8 兆7,500億円とされていたので、約
れているようでしたら、ご教示いただければと
1 兆円少なくなったわけですが、この要因はお
そらく、現在、金融機関における民間セクター
思います。
への貸出需要が伸び悩む一方、公的セクターに
ページで、共同発行市場公募地方債の仕組みと
対する貸出需要が比較的あること等を背景に、
現状をご紹介いただきました。2003年度から発
地方公共団体が当初市場公募地方債で発行した
行が始まり、2012年度末には残高が約13.2兆円
臨時財政対策債の償還に当たって、銀行等引受
に達し、当初目指した地方債市場におけるベン
地方債での借換えを実施しようとするケースが
チマーク的な位置付けを達成されたのだろうと
多いからではないかと思います。この点につい
思います。
てお伺いしたいことがございます。
なぜここまで根付いたのかを勘案すると、海
例えば、地方債の場合、例年は地方債計画を
外でも、例えばドイツであれば複数の州が債券
通じて、市場公募地方債の借換債を含めた発行
を共同発行するレンダー・ジャンボ( Länder
3 点目のご質問ですが、ご報告資料の38∼39
April.2013 No.18
9
Jumbo )債、フランスであれば複数の都市共
同体が共同発行する債券である Communautés
Urbaines de France と い う よ う に、 共 同 発 行
ありますので、そこからお聞きしたいと思いま
の地方債は存在するのですが、各団体が持ち分
と思うことが 1 点だけあります。
に応じて償還義務を負う方式になっており、連
まず、地方財政対策は、地方が安定的に財政
帯債務方式ではありません。それに比べて、日
運営できるように、平成24年度と同水準の一般
本の共同発行市場公募地方債は、連帯債務方式
財源総額を確保すると一番最初のところに書か
や流動性補完措置等も含めて信用力の点でとて
れています。ところが、同様のことは去年まで
も魅力ある商品設計となっており、そのことが、
も書いてあって、去年までの場合は、財政運営
ベンチマーク的位置付けになった要因の一つだ
戦略や中期財政フレームに基づいてと書いてあ
ろうと考えています。
りました。ただ、財政運営戦略は鳩山政権のと
このように10年間の成功の歴史を蓄積してき
きに閣議決定されたものなので、政権交代が起
た共同発行市場公募地方債ですが、現在では成
きると基本的に反故になるのではないかと思い
熟期に入ってきて、今後は年限の多様化や規模
ます。課長が「反故になりました」とおっしゃ
の拡大といった可能性もあるのではないかとい
るのはおかしいと思うのですが、民間人から見
うご指摘を頂きました。このほかに何か、さら
れば、やはりそれは反故なんだろうと思います。
す。私自身が気付いたことをこれから申し上げ
ますが、杉本課長に、特にここはお願いしたい
に地方債市場に根付いて確固たるポジションを
つまり、同じ書きぶりではありますが、財政
築いていくための方策はお考えでしょうか。例
運営戦略が生きていると受け取ってはいけない
えば、地方債協会は2011年 8 月から、共同発行
と思います。特に、財政運営戦略には公債発行
市場公募地方債の売買気配情報を公表しており
を抑制するということがあって、当初予算ベー
ます。また、格付け取得等も有効な手段になる
スでは確かにきれいな形になっていますけど、
可能性もあると考えられますが、商品性の向上
現在参議院に回っている補正予算で国債と地方
に向けたお考えがございましたら、ご教示いた
債がどっと出ます。そういう意味では財政運営
だけましたらと存じます。
戦略から外れているので、見かけ上似ています
が、やはりそこは、政権交代によって違うもの
になったということだろうと思います。
関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授
小西 砂千夫
そうすると、自公政権の財政再建プログラム
は、今のところはまだはっきりとしたものがな
いということなんだろうと思います。自民党の
政権公約には、財政再建期間を 5 年間とすると
いうことが出てくるので、いずれは作るんだろ
うと思いますが、それはおそらく、 6 月の経済
財政諮問会議ではないかと思います。「骨太の方
針」が復活しますが、マクロ政策と財政再建プ
ログラムは裏表だからです。これは、政権とし
てどう運営するかですが、一つの見方として一
番大きなところではないかと思います。
それから、地方公務員給与費の臨時特例で、
国は平成24年度から 2 年間、最近走ったものを
(細かく言えばいろいろありますが)、平成25年
度だけにして、 7 月から防災・減災に充てて、
今日は地方債計画がお話の中心でしたが、地
算定にあたっては人件費削減の努力を反映した
方財政対策についても色々と気になるところが
ということです。地方自治体がこれをどのよう
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に理解し、どのように反応するかです。おそら
通、通常年度はやらないんです。その代わり、
く 6 月の地方議会で、補正予算で給与条例を改
補正予算債の元利償還金を交付税に100%算入す
正してくれということになるだろうと思います。
るなどのやり方をします。その辺もあって、こ
そのときに、下げるにしろ下げないにしろ、そ
れは地方債計画の通常予算分ですが、本当は平
れぞれの地方自治体が説明するのは結構きつい
成24年度の補正予算分を地方債計画としてのっ
と思います。
てきているということも重要ではないかと思い
次に、平成26年度以降をどうするかです。人
ます。
事委員会制度や労働基本権の関係もあって、平
それから、地方公共団体金融機構資金の一部
成26年度以降も下げるのはなかなか難しいと思
について借換措置を実施したということをさ
いますが、自民党の政権公約には 5 年間で 2 兆
らっとおっしゃいましたが、ここは機構がスポ
円と書いてあるんですね。 2 兆円というのは腰
ンサーですので、この辺についてはもう少し丁
だめの数字のようですが、7.8%の引き下げを
寧におっしゃったほうがよろしいかと思います。
国と地方でやって、退職金を入れるとぴったり
できれば追加のご説明をお願いします。
2 兆円になるそうです。ですから、これは腰だ
めの数字ではないんですね。
協議制度のメリットについてはお話していた
また、地方公共団体金融機構の準備金を 3 年
いう言葉がよくありますが、市場化というのは、
間で 1 兆円活用するということでしたが、 2 年
ご報告にもありましたように、市場資金が大き
目で全部使っちゃったという感じです。来年度
くなるということだと思います。自由化につい
は消費税の増収分が予定としてあるので、 2 年
ては、協議制度をもって自由化と考えるか、そ
目で全部使うというのはありだろうと思います
もそも国がくちばしを挟むことがいけないんだ
が、今年の地方財政対策は全体的に苦しいと思
という議論があるんですが、地方債は投資的経
います。特に、一番苦しいのがここだと思いま
費にしか充てないという原則があるわけです。
す。本当は3,500くらいの予定のところ、6,500
投資的経費にしか充てないときに、適債性の
いってますので、プラス3,000です。そもそも地
チェックを誰かがやらないといけません。しか
財対策は、プラス4,000からマイナス2,000くらい
し、適債性のチェックをすることは、そもそも
のところで動いています。ですから、やはりか
市場化・自由化の話ではなく、法律に準拠する
なり無理をしたと言いますか、見かけ上は一般
という話なんだと考えると、協議制度をもって
財源総額を維持していますが、自公政権はそう
自由化と言うわけですが、適債性の議論なんか
優しくないと思います。
どうでもいいんだと言うと、適債性の議論で抑
また、一般行政経費の単独補助が伸びている
えていることが、自由化がまだまだ進んでいな
のは、平成26年度以降に備えているという感じ
いという評価になって、たぶんこの辺が、議論
があって、地方消費税を取るときに、これはい
すると一番面白いところではないかと思います。
だいた通りです。地方債の市場化とか自由化と
るんだと言ったということの「芽出し」だと思
います。
それから、地方債計画で、地方財政計画の財
源不足の状況と投資的経費の伸び率を反映して
いるのは当然ですが、通常収支分と東日本大震
災分の振り分けが少し変わっていて、復興増税
が財源にあたっているかどうかで変わっている
ということがあります。国が補正予算を立てた
ときは地方債計画を作り直すんですが、地方財
政対策は通常はそのままです。なぜかというと、
地方債の手当てはしますが、交付税の増額は普
April.2013 No.18
11
報告者リプライ
利で一度発行してみろと言われました。要は、
住民の皆さんにご理解いただければ、金利はゼ
まず江夏様から、臨時財政対策債の借換額に
ロでもいいじゃないかとか、そうしたことを検
ついてご質問をいただきました。まず、昨年の
討し、それを住民の皆さんに説明しながら進め
夏の概案の段階で 8 兆7,500億円としていたの
るのが、住民参加型市場公募地方債の一つの意
が、本計画では 7 兆7,600億円に減少していると
義だと思います。
いうことがあります。概案の段階では財政状況
ただ、やはり現実の問題としては、開始から
を含めた具体的な状況が分かっていませんでし
何年も経つうちに珍しさがなくなって、発行体
たので、前年度までの傾向を踏まえて機械的に
側の意欲が少し低下しているというのが、近年
算出していました。臨時財政対策債は平成15年
の発行額の減少の要因の一つとしてあると思い
度に約 1 兆円拡大しており、その償還を踏まえ
ます。また、発行に手間が掛かるということも
て 8 兆7,500億円となりました。実際には、具体
あるかと思います。それから、 5 年債が中心で
的にどの程度借り換えますかと地方公共団体か
すので、同じ事業で借り換えるということが実
ら聞きながら積み上げたところ、8 兆7,500億円
際には難しいということもあるのかと思います。
まではいかなかったということです。
住民参加型市場公募地方債は、住民の方からの
借換債を含めた臨財債の額を、今後は地方債
声もあり、毎年買ってくださっている方もある
計画を発表するときに公表すべきではないかと
とも伺っていますので、ぜひ拡充していただき
いうことについては、都道府県や政令市につい
たいと思っていますし、どこに隘路があるのか
ては、現在では地方債協会で発表していただい
も含めて話を伺いながら、一つひとつ具体的に
ていると考えております。銀行等引受地方債の
解決できることはしていきたいと考えています。
発行予定についても、借換債を含めた形で発表
それから、共同発行市場公募地方債について
されていると思います。ただ、今年は計画を作っ
です。共同発行市場公募地方債は地方債のベン
た時期が 1 月でしたが、普通は12月のさらに前
チマーク的な地位を占めていると言っていただ
の時期に、市町村に対して次年度いくら借り換
き、大変ありがたいことだと思っています。こ
えるんですかと聞き、それを積み上げる作業が
れは、発行団体の連帯債務方式をとり、流動性
日程的に厳しいことと、市町村によっては、そ
補完措置としてのファンドといった仕組みをき
の段階ではまだ決められていないということが
ちんと整えているということもありますし、運
実態としてあるということもあり、国のように
営の面でも、色々な団体のロットをそろえなが
自分で決めればいいという状況にはなかなかな
ら定期的に発行し続けていることで、償還も非
いので、地方債計画を策定する段階で積み上げ
常に順調に行われるということが基本にありま
るのはかなり困難かと思います。
す。
色々なものがすべてオンラインで積み上げら
これからどのようにしていくのかについては、
れるようになればもう少し早くなるのかもしれ
地方自治体の意向もありますし、市場環境が緩
ませんが、今の段階で借換えまでは厳しいので
やかで、資金調達の多様化をあまり考えなくて
すけど、市場のニーズとしてはよく理解できる
も起債が消化できるというような時期ですので、
ところですので、そうした物理的なことも含め
現在は少し厳しいかと思っていますが、やはり
て、工夫ができるかもう少し考えてみたいと思
市場環境が悪くなってきますと、できるだけ
います。
色々な発行方法を考えようという動きも出てく
それから、住民参加型市場公募地方債が伸び
ると思います。具体的には、10年債のほかにも
悩んでいるのは、私どもとしても頭が痛いとこ
バリエーションのある起債をしようとか、資金
ろですが、本当はメリットが非常に大きいと
需要としても、単体で発行するとスプレッドが
思っています。私は福井県にいたことがあるの
相当広がってくると思いますので、そうしたこ
ですけど、知事から、通常の国債よりも低い金
とからしても、共同発行の方向にシフトしてく
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ると思います。
では、平成25年度における標準的な人件費とは
次に、小西先生からのお話です。財政運営戦
何かと考えたとき、給与削減については地方公
略や中期財政フレームについては、新たな閣議
務員も国家公務員と同様なのではないかという
決定がないので形の上では廃止されていません
ことで、地方財政計画上は歳出の人件費のとこ
が、予算編成や地方財政対策を行うときに、財
ろで水準の見直しを行い、他方で元気づくり交
政健全化目標を除いて過去の財政運営戦略を前
付金や、臨時の緊急防災・減災事業費などを積
提とした作業は行わなかったというのが実態で
み上げているということです。
す。
そういう意味では、自民党の公約である、 5
それから、自公政権における財政再建の道筋
年 間、 国・ 地 方 合 わ せ て 公 務 員 の 総 人 件 費 を
については、おっしゃるとおり、
「骨太の方針」
も復活すると言われていますので、これから順
2 兆円削減するということをどのように実行し
ていくのか。それから、私どもが地方公共団体
次、経済財政諮問会議などで大きな方針が決め
の皆さんに、今後に向けてのお話としてさせて
られていくのだろうと思います。
いただいているのは、今回はあくまで平成25年
給与の関係については、総務大臣から地方公
度の措置であって、平成26年度以降については、
共団体の皆さま方に、お願いのお手紙を出させ
皆さん方とよくご相談しながらやらせていただ
ていただいています。また、閣議決定で要請も
きたいということです。
行っているところです。これは、私どもはあく
平成26年度の人件費の議論のときには、地方
までも要請をするという立場ですので、基本的
公共団体の皆さんからは、俺たちはこれだけ定
には地方公共団体がすべてご自身でお考えを決
数削減をしているが、国はいったいどういうこ
めていただくということだと思っています。
とを実行しているんだということになります。
ただ、地方財政計画を策定する段階では、標
人件費はあくまでも、単価×人数だろうという
準的な水準の歳出・歳入を見積もっています。
ような議論が、相当大きな話になってくると思
April.2013 No.18
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います。そうしたことを踏まえて、平成26年度
だくというお話をしているところです。
に向けては新たな措置が決められていくものと
平成24年度の補正予算分の地方債計画につい
考えております。
てはおっしゃったとおりで、大きく言いますと、
ただ一つだけ、地方公共団体の皆さんにもご
主な部分は補正予算債の関係です。大きな方針
理解いただきたいのは、今回、国家公務員給与
としましては、総事業費が増えるとともに、地
の削減も、給与が高いからやっているわけでは
方負担が1.7兆円増えます。これについては、地
なく、東日本大震災の復興で巨額のお金がかか
方財政計画を作り直すということをしていませ
るため、まず「隗より始めよ」ということで、
んので、財源が困らないようにするため、補正
国家公務員給与の削減分6,000億円を、被災地向
予算債を用意するということでやっております
けの事業費に充てていくということをしている
が、他方で、先ほど申し上げた元気交付金が1.4
わけです。そういう意味では、地方公共団体の
兆円ございます。
皆さんにおかれましても、決して給与の水準が
こちらのスタンスとしては、補正予算債につ
高いということを言っているわけではなく、現
いて、元気交付金は法律補助には充てられませ
状はあくまでも人事委員会の勧告に基づいた給
んので、そうした事業の地方負担の全額ですと
与水準だと思いますので、そうしたものについ
か、あとはこの交付金がおおむね予算補助の補
ては尊重されるべきだと思っています。
助裏の 8 割くらい充てられているので、元気交
ただ、行政サービスとの関係で考えたときに、
付金を除いた補助裏の 2 割部分について計上す
日本の再生ということを考えたときには、地域
るという形を地方債計画上は取るつもりですが、
の活性化のためにもっとお金を使うべきじゃな
元気交付金は実際には来年度にしか入ってきま
いかとも考えております。また、東日本大震災
せんので、結果的に言えば、地方公共団体の皆
を踏まえて、全国で防災・減災を急がなければ
さんには今年度の補助事業の補助裏には補正予
ならないということは明らかになっています。
算債を全額充てて今年度はそれを使っていただ
そうした事業に充てるお金を、給与削減に見
くか、もしくは繰り越していただき、来年度に
合った額で積ませていただいておりますので、
入ってきた元気交付金は来年度に行う事業の一
そうしたこともご理解いただき、議会も含めて
般財源と振り替えていくというようなことをし
住民の皆さんともよく対話をして、お決めいた
ていただくことになると思っておりまして、現
だきたいと思っているところです。
在、必要な補正予算分の地方債計画の改訂につ
それから、地方公共団体金融機構の準備金に
いても考えているところです。
ついては、本当におっしゃるとおりで、今年度
それから、地方公共団体金融機構の借換債の
の地方財政の一般財源総額をどうするかという
お話がございました。報告資料の10ページに、
ときに、まだ残っていたお金を使うしかないと
特定被災地方公共団体借換債の確保について考
いうことが一つありました。それから、平成26
え方を書かせていただいております。先ほども
年度はやはり、地方財政の大きな枠組みが変
申し上げましたが、特定被災地方公共団体の復
わってくると思います。具体的には消費税率が、
旧・復興を支援するため、平成25年度限りの措
地方消費税を合わせて 5 %から 8 %に上がりま
置として、地方公共団体金融機構の方で、1,830
す。そうすると、平成26年度では地方交付税を
億円になるのですが、 4 %以上の旧公庫資金に
含めた地方税収が 2 兆円近く増えてくるので、
ついて補償金免除繰上償還を行い、さらにその
色々な制度が変わると思われます。そうしたこ
借換債を発行できることとしています。
とを今から議論することは困難ですので、今年
もう少しさかのぼって私どもの考えを申し上
度はとにかく、平成25年度の一般財源総額を確
げ れ ば、 被 災 地 だ け で は な く て、 平 成24年 度
保するという観点から、さらに地方公共団体金
までは公的資金全体で補償金免除の繰上償還を
融機構の運営に影響を与えない範囲ということ
やってきまして、非常に大きな効果がありまし
で、6,500億円を取り崩し、繰り入れさせていた
た。それまで12∼13兆円あった 5 %以上の残債
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も、今年度末には1.3兆円くらいに減り、その事
質疑応答
業については一応終えるということで考えまし
た。
○質問者 1 今回の地方公務員給与の削減につ
一方、被災地及び財政状況の厳しい地方公共
いて、私は最初、国の財政が厳しい中、財政再
団体については、その対象を 4 %以上に引き下
建のために地方公務員にも給与削減に協力して
げて、さらに公的資金全体でというような議論
くれないかということなのだと思っていました。
もさせていただきました。この点について、財
しかし、今回の地方財政計画を見ると、支出総
務省理財局ともよく話し合いをさせていただき
額や地方債の金額が変わっていないので、これ
ましたが、財投資金については、一般会計に繰
は財政再建を目的とした給与の削減ではないの
り出しなどを行い、現在では金利変動準備金は
ではないかと思いました。また、東日本大震災
枯渇している状況です。なおかつこれから生ま
に伴うインフラ整備の重要性が高まる中、その
れてくる利益分については、全部被災地向けに
費用を捻出するための給与の削減なのかなとも
振り替えていくという決定がされていますので、
思いました。これらについてお話を伺えたらと
そうした中で財投資金にまで補償金免除繰上げ
思います。
償還の対象を広げるのはなかなか難しいという
○杉本 東日本大震災の被災地向けと言ったの
ことで、被災地に係る旧公営企業金融公庫資金
は、国家公務員給与の削減分6,000億円の件でし
について、地方公共団体金融機構と話し合いを
て、あくまでも今回は、まず閣議決定で要請さ
させていただいたところです。
せていただき、それから今後の地方財政計画や
一方で、地方公共団体金融機構は地方自治体
地方財政対策の中で、人件費の単価の標準的な
が作ったものだから何でもやるかといったら、
水準はどこにあるかと考えて、客観的な指標と
それはやはり市場との関係がありますので、市
して削減後の国家公務員と同様の額を積み上げ
場に影響を与えない範囲ということでご理解を
ていくこととしたということです。ですので、
いただき、 4 %以上、1,830億円の借換えを今回
国の財政再建のために給与のカットを行うとい
させていただくことになったということです。
うことでは一切ございません。
ただし、当然のことながら、地方財政に影響
を与えたり、日本の再生にとって足かせになら
ないように、歳出の方でも同額の見積もりを立
てさせていただいておりますし、また、振り替
えた先が、交付税の地域の元気づくり事業費
3,000億円分はともかく、5,000億円の緊急防災・
減災事業では、それは起債なんだから一般財源
としては減っているじゃないかというお考えも
あるかもしれませんが、当然のことながら、今
回発行する緊急防災・減災事業債は後年度に基
準財政需要額の中に入れていくということに
なっておりますので、トータルで見れば、地方
財政の規模が縮小していくということではあり
ません。そういう意味でも、地方に国の財政の
ツケを回したということでは決してないと考え
ております。
○質問者 2 何年か前の事業仕分けのときに、
地方債の交付税措置による政策誘導の問題が指
摘されて以降、新規事業に対しての事業費補正
April.2013 No.18
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がカットされているという状況がございました。
○杉本 地方債を使った政策誘導となる事業費
今回、政権交代後初めての地方財政計画、地方
補正の縮減ですが、基本的な方向は何も変わっ
債計画ということになるのですが、一括交付金
ておりません。自民党政権時代にも、事業費補
が廃止されて防災関係の交付金になったり、地
正には不透明な部分も大きいという議論もあり
方の政策誘導化が徐々に見えてきていると思い
ましたし、地方分権改革推進委員会の勧告の中
ます。今年の地方財政計画の策定にあたっては、
でも、これはできるだけ小さくしていくべきだ
そうした動きが見えるのか、また今後そういっ
というお話もありましたので、そうした方向性
た動きが見えるのか、何かお分かりになること
は変わらず、今回についても、事業費補正拡大
があればご教示いただけないでしょうか。
という方向には決してなっておりません。
○質問者 3 臨時財政対策債の役割というもの
臨財債の役割ですが、やはりこれは特例債で
は、社会資本などに充当する一般会計債や公営
すので、建設地方債とは違う役割がございます。
企業債とはまったく別な、財政の補填という意
そういう意味で、何かを作るための資金を集め
味合いを持っている地方債だと考えてよいので
るものではありませんので、世代間の負担の公
しょうか。それとも、他の地方債とも役割は変
平ということから言うと、財政補填的な部分は
わらない、つまり、世代間で負担を分かち合う
否めないと思っています。つまり、本来では地
という役割は変わらないと考えていらっしゃる
方財政法の 6 条の 3 で、地方交付税率を見直し
のか、その辺の捉え方を教えていただければと
て補填すべきところを、こうした形で補填させ
思います。
ていただいているものです。
寄付講座の組織・機構
◆ 東京大学大学院経済学研究科寄付講座運営委員会
伊藤 正直
(東京大学大学院経済学研究科教授)
井堀 利宏
(東京大学大学院経済学研究科教授)
神谷 和也
(東京大学大学院経済学研究科教授)
持田 信樹
(東京大学大学院経済学研究科教授)
◆ 地方公共団体金融機構寄付講座フォーラム運営委員会
稲生 信男
(東洋大学国際地域学部教授)
江夏 あかね
(株式会社野村資本市場研究所研究部主任研究員)
緒方 俊則
(地方公共団体金融機構地方支援部長・総括主任研究員)
小西 砂千夫
(関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授)
遠松 秀将
(東京都財務局主計部公債課長)
三富 吉浩
(川崎市財政局財政部担当部長)
持田 信樹
(東京大学大学院経済学研究科教授)
16
◆ フォーラム運営委員会事務局(※は事務局長)
青木 世一
(財団法人地方債協会企画調査部副参事)
※天羽 正継
(東京大学大学院経済学研究科特任助教)
石橋 美秀
(地方公共団体金融機構地方支援部調査企画課主査)
東 京 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 ・ 経 済 学 部
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tel 03-5841-5598 fax 03-5841-5521
ነઃ⻠ᐳࡎ࡯ࡓࡍ࡯ࠫ http://www.e.u-tokyo.ac.jp/kifu/jfm.html