国際交流班 鳥取における国際交流と食

国際交流班
鳥取における国際交流と食
【班
員】伊藤
洸太
嘉本
早紀子
小島
菜緒
永井
里沙
野津
舞子
橋本
佳奈
松元
実環
山下
雄一郎
【指導教員】キップ・A・ケイツ
中
朋美
17
2014年度
地域文化調査成果報告書
はじめに
永井里沙
〈テーマ設定に至るまで〉
今年、私たち国際交流班は、『鳥取における国際交流
と食』というテーマで1年間調査してきた。国際交流の
調査は、言語や文化など様々な方面から見ることが可能
だが、私たちはその中で「食」に着目した。人間の生活
に欠かせない「食」について学ぶことは、異文化理解へ
の糸口になると考えたからである。
〈鳥取県の在住外国人に関するデータ〉
まず、鳥取県の在住外国人に関するデータを紹介する。
鳥取県の人口は、平成25年度時点で57万7120人である。
図1
ベトナム料理教室の案内のチラシ
793人の在住外国人の方が
そのうち、65カ国から合計3,
鳥取で暮らし て い る。こ の 数 値 は、鳥 取 県 の 人 口 の
0.
6%にあたる。
調査の一環で鳥取県庁に訪問した際にいただいた資料
によると、鳥取県に住む外国人の方々の出身地は以下の
419人、2位、韓
よ う な も の が あ る。1位、中 国、1,
109人、3位、フィリピン、484人、4位、
国・朝鮮、1,
ベトナム、189人、5位、タイ、83人である。その他に
は、6位から順に、アメリカ、インドネシア、ロシア、
イギリス、台湾などの国々から鳥取に来ているというこ
とがわかった。
398人、
また、鳥取県の地域ごとで見ると、東部に1,
815人の外国人の方が住ん
中部に580人、そして西部に1,
図2
でおり、そのうち留学生は175人である。
ベトナム料理教室で作った料理
私たちは鳥取県庁や国際交流プラザ、国際交流財団な
どの施設を訪問し、施設の方にお話をしていただいた。
図2の料理は、私たちが実際に作って食べたものであ
そしてお話の内容やこれらのデータを元に調査を進めた。
る。見た目は日本食にもありそうなものだが、チャーハ
〈ベトナム料理教室への参加〉
ンのような料理には、パイナップルが入っていたり、デ
私たち国際交流班の最初の活動として鳥取大学の留学
ザートには小豆とココナッツミルクを混ぜたものにナッ
生が主催するベトナム料理教室に参加した(図1、2参
ツと氷が入っていたりと、珍しい組み合わせと感じる一
照)
。
品が多かった。いずれもとても美味しく出来上がり、料
理教室は大成功に終わった(図3参照)
。
調理をしながら私たちは、留学生の方々とベトナム料
理について尋ねてみた。すると留学生の方々から「日本
で母国の料理を作るときに、調味料や材料がなかなか見
つからないことがある」
、「母国の料理をもっと日本の人
に食べてもらいたい」といったコメントを聞くことがで
きた。私たちはこの料理教室での話をヒントにし、鳥取
に住む外国人の方々は日本の「食」に対してどう思って
いるのか、どのような問題を抱えているのか知りたいと
思い、アンケートを作成した。
18
鳥取における国際交流と食
このアンケートでは計15カ国の方々に回答していただ
いた。内訳は、中国が16人、韓国6人、アメリカ5人、
カナダ3人などであった(表2参照)
。
表2
回答者の国籍
宗教についてもうかがった。理由はハラールフードに
ついての調査を行いたいと考えたためである。今回の回
答者においては、無宗教と回答された方が多く、46%を
占めた(表3参照)
。
図3
料理教室での様子
鳥取に住む外国人の食生活について
橋本佳奈・小島菜緒
鳥取に住む外国人の方々の食生活や、食に関して抱え
ている問題を知ることを目的にアンケートを実施した。
国際交流プラザ、国際交流財団にアンケートの設置を依
頼し、対象は、鳥取大学の留学生、鳥取のALTの先生方、
表3
回答者の宗教
国際交流プラザ・国際交流財団の訪問者など、計52人
(男性18人、女性34人)である。
日本での滞在期間は、短期から長期滞在までの様々な
であった。5年以上が11人と最も多く、次いで1年以上
アンケート結果を、回答者に関するデータ、買い物に
1年半未満が10人であった。回答者の平均滞在期間は約
ついて、日常の食生活について、の順に報告する。
4年であった(表4参照)
。
〈回答者に関するデータ〉
20代∼50代の人に回答していただいた。20代が全体の
65%を占めている(表1参照)
。
表4
日本での滞在期間
日本語の能力について、読めるか・聞けるか・話せる
表1
回答者の年齢
かの観点から質問をした。今回の回答者は日本語がある
19
2014年度
地域文化調査成果報告書
程度できる方が多いことがわかった。話せるかという質
問では、全然話せないと回答者はいなかった(表5∼7
参照)
。
表8
よく行く店
成分表示などが理解度についての質問に対しては少し
理解できると回答した人が多かった。しかし、英語表記
表5
があるとわかりやすいので増やすべきだ、といった意見
日本語能力(読む)
も多かった(表9参照)
。
表6
日本語能力(聞く)
表9
成分表示などが理解できるか
母国の食材を買うことができるかという質問に対して、
同じ商品はあまり買うことができないが、類似商品は買
えることがわかった。つまり、母国の料理を日本で作る
には、日本にある代用品を使って作っている人が多いと
。
いうことがわかった(表10参照)
表7
日本語能力(話す)
〈買い物について〉
買い物でよく行く店はどこかという質問では、イオン、
Sマート、TRIAL、コンビニ、サンマートが多く挙げら
れていた。少数の回答として業務スーパー、マルイ、
ラ・ムーといった回答があった(表8参照)
。
表10 母国の料理を作るために必要な材料が買えるか
会計の時にトラブルがあったか、という質問に対して
は、ないとの回答がほとんどであった。しかしあるとの
回答の中には、店員の早口な接客で日本語が聞き取れな
いというものや、店員による質問の内容(袋が必要かど
うか・ポイントカードについて)が理解できないという
20
鳥取における国際交流と食
。
意見が多く見られた(表11参照)
。
ようである(表14参照)
表11 会計のときにトラブルがあったか
表14 来日前に食べたことがある日本食
〈日常の食生活について〉
好きな日本食を3つ答えていただいた。結果は、1位、
1ヶ月の1人分の食費はいくらかという質問の答えと
、2位、お好み焼き(15人)
、3位、味噌汁
寿司(30人)
、
して最も多かったのが2万円以上∼3万円未満(10人)
(12人)であった。お好み焼きは来日前に食べたことが
次に多かったのが、1万円以上∼2万円未満(5人)と
ある日本食ではランクインしておらず、日本に来て初め
。
なっている(表12参照)
て食べて好きになった場合が多いことがわかった(表15
参照)
。
表12 1ヶ月の1人分の食費
表15 好きな日本食
日本の物価は高いと思うかという質問で、高いと答え
たのは38人で、野菜、果物、魚、肉、パンが挙げられた。
嫌いな日本食についても同様に3つ回答していただい
安いと答えた人は11人で、学食、外食など、外で食べる
、2位、うなぎ(10人)
、
た。結果は、1位、納豆(25人)
。
ものが安いという意見であった(表13参照)
3位、漬物(7人)となった。納豆が嫌いだとの回答の
中には、においやネバネバが苦手だという意見が多かっ
た。好きな日本食で1位だった寿司であるが、嫌いな日
本食でも4位に入っていた。嫌いな理由は生魚の生臭さ
。
であった(表16参照)
表13 日本の物価は高いと思うか
来日前に食べたことがある日本食を複数回答可で答え
、2位、天ぷら
ていただいた結果、1位、寿司(30人)
、3位、豆腐(20人)となった。豆腐はヘルシー
(22人)
であるとの印象からか、20代の若い人の間で人気がある
表16 嫌いな日本食
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2014年度
地域文化調査成果報告書
ハラールフードのアンケート結果について報告する前
アを含むASEAN諸国が経済成長を続けている。将来、
に、ハラールフードについて紹介する。イスラム法にお
全世界のイスラム市場は1000兆円の市場になるとも言わ
いて食べられるものをハラール(合法・清浄・安全)と
れているため、日本の企業もそのイスラム成長市場に注
いい、食べられないものをハラーム(非合法・不浄)と
目し、動き始めている。2020年の東京オリンピック開催
。
いう(表17参照)
の決定や、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録で日本
ハラールなものは、イスラム教の作法に従って処理さ
食が世界に認められたこともあり、大勢のイスラム国家
れたもの、水の中でしか生きられない生物、毒性・泥酔
の人々の訪日が予想されるため、イスラム教徒の方々が
性・健康に害があるもの以外の植物、キノコ類と細菌類、
安心して利用できるハラール認証を取得した宿泊施設や
ミネラル、飲料、遺伝子組み換え食品である。そして、
レストラン等での「おもてなし」
が大変重要となる。よっ
イスラム法の作法に従って処理された牛肉や鶏肉、その
て私たちはハラールフードについての質問をアンケート
他の調味料などをハラールフードという。
項目に取り入れることにした。
ハラームなものは、合法な手段で屠殺されていない動
(一 般 社 団 法 人 日 本 ハ ラ ー ル ユ ニ ッ トhttp://www.
halalunit.jp)
物、ナジス(不浄なもの)を含んだもの、毒物、健康に
害のあるもの、泥酔性のあるもの、ナジスに触れた器具
を使用して製造されたもの、人体的なものが含まれたも
ハラールフードについてのアンケート結果によると、
の、全ての製造工程においてハラームなものから分離さ
普段からハラールフードを食べると回答したのは、中国、
れていないものである。
スーダン、インドネシアの3人であった。この方たちは、
ハラールフードをどこで購入するかという質問で、業務
スーパーか、東京から取り寄せと回答し、購入場所はイ
スラム教徒の友人から聞いたと回答している。
私たち国際交流班は、文献学習だけでなく、実際にハ
ラールフードを食べて理解を深めようと考え、調査の一
環としてハラールフードのレトルトカレーを実際に食べ
てみた(図5参照)
。この調査に携わるまでは、ハラー
ルフードという言葉に特別なイメージを抱いており、イ
スラム教徒しか食べないものだと考えていたが、実際に
食べてみると、私たちの口にもあい、抱いていたイメー
表17 ハラールとハラーム
ジとは異なることに気付くことができた。
食べてはならないとされている動物は、最も不浄なも
のとされている重度のナジスの動物であるブタ・イヌ、
害虫または毒性を持つネズミ・ヘビ・ハチ・サソリ・ゴ
キブリなど、牙を持ち、その牙で獲物を獲るゾウ・サ
ル・ネコ・クマ・トラなど、捕食動物であるフクロウ・
タカなどが挙げられる。他にも、イスラム法で殺しては
ならないミツバチやキツツキ、イスラム法で食べてはな
らないロバやラバ、不快なものであるノミやシラミ、ま
た、ハラールな生き物であっても、これらのハラームな
動物を餌として育ったものは、同じくハラームとされる
ため、食べてはならないことになっている(日本ハラー
ル協会http://www.jhalal.com/halal)
私たちがハラールフードに注目した理由は、世界での
イスラム教徒人口の増加にある。一般社団法人日本ハ
ラールユニットによると、現在、イスラム教徒の人口は
世界の4分の1を占め、国民の約90%がイスラム教徒で
あるインドネシアや、イスラム教を国教とするマレーシ
22
鳥取における国際交流と食
マクドナルド
モスバーガー
土間土間
すき家
吉野家
かば
ジョイフル
かっぱ寿司
一休
くら寿司
はま寿司
牛角
スタミナ太郎
図6
図7
よく訪れるチェーン店
ちよしうどん
カフェソース
神楽ラーメン
ドロップカフェ
バリうまラーメン
カフェニー
PJ’
s RASOI
ハチドリテーブル
ゆめや
ビリーブ
トントン
えんや
タオカフェ
虎我
よく訪れる鳥取の店
外食の際に困ったこととしては、宗教的なトラブル
図5
(成分表示や言語トラブル)、マナーのトラブル(みん
ハラールフード実食
なで食べ始める習慣への戸惑いや正座)
、言語トラブル
(注文・会計における店員とのやりとり)などの回答が
あった(図8参照)
。
鳥取に住む外国人の食事情ついて
松元実環
外食についてのアンケートでは、月にどのくらい外食
をするか、よく行くレストランはどこか、その具体的な
店名、外食について困っていること、店への要望につい
て調査を行った。今回アンケート調査に参加した鳥取在
住の外国人の方々の回答からは、平日は自炊をするが、
図8
困ったこと
週末になると友人たちと外食をすることが多いことがわ
かった。
店への要望としては、ハラールフードの取り扱いを増
よく訪れる店としてはチェーン店が13店、それ以外が
やして欲しい、英語やその他の外国語のメニューを設置
15店挙がった。これらの多くは鳥取大学、または鳥取駅
して欲しい、英語で接客して欲しいなどの意見が多く
周辺のお店で、チェーン店の利用が多く、自国の料理を
あった。また、メニューにふりがなをふって欲しい、写
取り扱うお店には訪れないことなどがわかった(図6、
真を増やして欲しい、などの声もあった。さらに、ブラ
7参照)
。
ンチや食べきれなかった料理の持ち帰りなどのシステム
を導入して欲しいという意見もあった。その他、辛いも
のを増やして欲しい、赤ワインを冷やさないで欲しいな
どの、日本との味覚・習慣のギャップについてなどの回
答があった。
私たちはこれらのアンケート結果を受けて、メキシコ
、マレーシアから
からの留学生アイェニアさん(図10)
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2014年度
地域文化調査成果報告書
も留学生イサンさん(図11)をゲストスピーカーとして
戸市や京都市などの都市部のタウンページと比較してみ
招き、実際にお話をうかがった。
たところ、その数には大きな違いがあった。神戸では、
中華料理店686店、フランス料理店104店、イタリア料理
店186店、韓国料理店90店、インド料理店44店と多く掲
載されており、またこの他にも珍しい外国料理の店も紹
介されていた。ここから、都市部と比較すると、鳥取の
外国料理店の掲載数は非常に少ないことがわかった。し
かし、インターネットで調査してみたところ、タウン
ページには掲載されていない外国料理店が複数あるよう
だったため、私たちは、実際に現地調査を行うことにし
た。
図10 アイェニアさん
メキシコからの留学生であるアイェニアさんの話では、
自分が慣れ親しんだ食生活とは異なる点として、日本の
食べ物が母国メキシコの食べ物とは異なり、油ものが少
インタビュー調査
ないこと、生ものが多いこと、ご飯がいつも出てくるこ
野津舞子
となどの指摘があった。また外食の際に困っていること
としては、外国語のメニューが少ないこととのコメント
私たちは、鳥取駅周辺と湖山で外国料理レストランの
があった。
経営者を対象に、インタビュー調査を実施した。協力し
てくださったのは、鳥取駅周辺では、ビストロフライパ
ンさん、台湾屋台さん、ペペネーロイタリア館さん、
PJ’
s RASOIさん、湖山周辺では、上海茶楼さん、仏区
里屋さん、HOT SPOTさんである。ここではこれらのレ
ストランの中から、3つ紹介する。
ビストロフライパンさんは、1996年に開業した、鳥取
駅周辺にお店を構えるフランス料理店である。店長の奥
平常男さんは、東京赤坂の三ツ星レストランをはじめ、
様々な場所で修行を積まれた方である。誰でも馴染みや
図11 イサンさん
すく、親しみやすいよう、フライパンとしたのが店名の
マレーシアからの留学生であるイサンさんのお話では
由来である。お店では地産地消を基本としており、鳥取
マレーシアの食文化について、手で食事をすることや油
で採れた食材を使ったフランス料理を提供している。外
を使った料理、辛い料理、甘い料理が多いことなどが
国人客向けの対応については、英語のメニューの導入を
あった。またイサンさんは、イスラム教信者であるため、
。
考えている段階とのことであった(図13参照)
ハラールの食べ物を食べるが、鳥取のレストランでハ
ラールフードを扱っているお店は少ないことから、自炊
が中心であると語った。できればスーパーにハラール
フードのコーナーを設けて欲しいとコメントがあった。
私たちはアンケート結果とゲストスピーカーの方々の
意見を受けて、鳥取のレストランではどのような外国人
のお客様への工夫あるのかを実際に調べることにした。
その事前予備調査として、鳥取にはどのくらい外国料
理店があるのかをタウンページで調べた。タウンページ
には、料理店が料理の種類別に掲載されている。タウン
ページの鳥取のレストランの欄に登録されていたのは、
中華料理店27店、フランス料理店1店、イタリア料理店
10店、韓国料理店3店、インド料理店2店であった。神
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鳥取における国際交流と食
図14 台湾屋台さん
図13 ビストロ
フライパンさん
台湾屋台さんは、鳥取駅周辺にある台湾料理を中心と
PJ’
s RASOIさんは鳥取駅周辺にあるインド料理のお店
する家庭料理店である。特に台湾料理にこだわっている
である。インド人スタッフが働いていて、インド風の雑
というわけではなく、日本人の味覚に合わせた料理を
貨などが飾られている。客席から厨房が見えるように
作っているとのことであった。こちらでは、外国人客へ
なっているため、実際にインド料理を作っているのを見
の対応として、メニューに写真を多く使用し、視覚的情
ることができることも特徴の1つである。こちらのお店
報によりわかりやすくする工夫がなされている。表記は
ではメニューに英語での表記があり、外国人の方への配
日本語だが、隣に写真もあることでわかりやすくなって
慮がうかがえる。また、写真も添えられているため、ど
いる。店長の翁美玲さんは台湾出身で、中国語等で対応
。
のような料理かがわかりやすくなっている(図15参照)
ができることもあり、多くの中国人や台湾人のお客さん
。
の来店があるとのことである(図14参照)
図15 PJ’
s RASOIさん
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2014年度
地域文化調査成果報告書
私たちが今回調査したレストランでは、ハラールフー
おわりに
ドの取り扱いをしているお店がなかった。そこでレスト
嘉本早紀子
ランではないが、ハラールフードの販売を行っている業
務スーパーさんへインタビューにうかがった。業務スー
今回の調査を通して、私たちは食を通じての国際交流
パーさんは、イオン鳥取北近くのトリニティモール内に
について多くのことを学ぶことができた。例えば、鳥取
あるお店である。インタビューには店長の角さんが応じ
に住む外国人の方々が自炊するとき、買い物に行っても
てくださった。元々は他店との違いをつけるためにハ
日本では類似商品しか買えないことを知った。また、イ
ラールフードを導入したそうだが、それにより外国人の
スラム教徒が増加している現在、日本でハラールフード
お客さんが増えたとおっしゃっていた。
が重要視されているにも関わらず、その認知度は必ずし
店内にはたくさんのハラールフードが陳列されており、
も高くないこと、そして鳥取ではハラールフードを取り
お肉や調味料だけでなく、レトルトカレーやお菓子など
扱っている店が少ないことがわかった。さらに、鳥取に
もあった。これらはイスラム教徒のお客さんだけでなく、
は外国料理のレストランに対する情報があまり集約され
日本人を含めその他のお客さんも購入されるほど人気が
ていないことを知った。文献調査のみならず、実際に外
あるそうだ。今回実施したアンケートでも多くのイスラ
国人の方々にお話を聞いたり、ハラールフードを買って
ム教徒の人が、買い物を業務スーパーで行っていること
食べてみたりなどの行動を起こすことで、食を今までと
からも、ハラールフード人気の高さがうかがえる。
は違う観点で見ることができた。
最後に、今後の課題として私たちが感じた3つの点、
「食文化に対する知識不足の克服」
「異文化へのステレ
オタイプの解消」
「外国人の方達に対する気遣い」につ
いて述べたい。
1点目は、「食文化に対する知識不足の克服」の大切
さである。私たちは今回の調査で食文化に対する知識不
足を実感した。ハラールフードの学習から得たような、
宗教と食の結びつきはまだ調べる課題が多くある。また、
私たちは1年間で1人最低、3冊、計18冊以上の文献を
読み、本から得た知識を交換し合った。
図17 ハラールマークの付いた食品
しかし、まだ世界の食について書かれた文献は多く、
(赤く印がハラールマーク)
今後も新しい知識を増やさなければならない。また私た
私たちは今回のアンケート結果、また現地でのインタ
ちは外国人の方々から実際にお話を聞くことによって、
ビュー調査の結果を受けて、留学生をはじめ、鳥取在住
文献に書かれていた事実とは異なるものがあったり、現
の外国人の方々の外食の様子を知ることができた。
在では変わっているものがあったりすることにも気付い
外国語レストランの情報が鳥取のタウンページでは限
た。このことから、文献から得た食習慣、食事のマナー
定されていたので、私たちはインタビューさせていただ
などは、現在はどうなっているのかを注意し、実際に現
いたお店を中心に、鳥取の外国料理店のガイドマップを
地で知る情報や、現地の方達から教えてもらうことなど
制作している。ガイドマップには、店名、電話番号、定
に注意しなければならないと考えている。
休日、駐車場の有無、ホームページ、料理の種類、営業
2点目に、「異文化へのステレオタイプ」について述
時間、値段、駐車スペース、座席数、駐車スペース、座
べる。私たちは身近な食を通して「異文化」へのステレ
席数などの情報を掲載している。下記が、ガイドマップ
オタイプを持っていることに気付いた。宗教と結びつい
のURLである。
たハラールフードに対して、特別なものだというイメー
〈鳥取インターナショナルレストランマップ〉
ジを持っており、イスラム教を信仰していない私たちが
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=zyCQOaqnW
気軽に食べてよいものではないと考えていた。しかし、
qAs.kF-ID2B7sO1I
フィールドワークでは、日本人でも購入していることを
知った。また実際に食べてみて、私たちが特別なものと
して、一方的に自分たちの生活から勝手に切り離してい
るだけであったことに気付いた。このような経験から、
ステレオタイプを1つずつ解消していくことは、異文化
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鳥取における国際交流と食
理解に欠かせないことだと考えることができた。もし、
もいれば、苦手な方もいることを改めて認識する必要が
ハラールフードに対して特別なイメージを持っている人
あり、彼らのサポートを怠ってはならないと考え、今後
がいたら、実際に食べてみたり、外国料理教室に参加し
の私たちの支援活動として、レストランの英語メニュー
てみたりしてもらいたい。
の作成のお手伝いといった案が挙がっている。
以下は今回の調査に協力していただいた方々である。
本当にありがとうございました
・鳥取県庁
・鳥取市役所
・国際交流財団
・国際交流プラザ
・鳥取県立図書館
・鳥取市立図書館
・アイェニアさん
・イサンさん
・茨木透先生
・ケイツ佳寿子さん
図19 神戸のハラールフードレストラン
・インタビューに協力してくださったお店の皆さま
・アンケート回答に協力してくださった鳥取に住む
外国人の皆さま
3点目に、「外国人の方々に対する気遣い」について
・鳥取大学留学生の皆さま
述べる。今回のアンケートの回答やゲストスピーカーの
方々のお話から、鳥取に住む外国人の方々の食生活や、
食に関して困っている様々なことを知ることができた。
その例の1つとして、日本語がだいたい読めると回答し
た人でも、成分表示になると読めないと回答する人が多
いことが挙げられる。
図20 食品成分表示の例
図20の成分表示に書かれている大豆やココアバターを
読み取ることができなければ、アレルギーを持っている
人が間違えて購入してしまう危険性がある。その他にも、
ポイントカード、メニューに使われている材料などの表
記の読み取りに苦労している方が多いことがわかった。
私たちは、在住外国人の方々の中には日本語が得意な方
27
2014年度
地域文化調査成果報告書
Food and International Exchange
∼A Study of Food Culture and Foreign Residents in Tottori∼
To answer these questions, our Kokusai Koryu team read
books, researched websites, designed a questionnaire, visited
local restaurants, listened to guest speakers and interviewed
foreign and Japanese people about food and culture.
Students: Kana Hashimoto, Kohta Ito, Sakiko Kamoto, Nao
Kojima, Miwa Matsumoto, Risa Nagai, Maiko Nozu,
Yuichiro Yamashita
Instructors: Kip A. Cates, Tomomi Naka
Research and Fieldwork
Students carried out the following research:
Regional Culture Research
The Department of Regional Culture of the Faculty of Regional Sciences offers a special course called“Regional Survey”(Chiiki Chosa)
. This course offers 2nd year Tottori
University students the chance to do fieldwork and research
in the local community. The course is divided into 4 research groups. One of these is the “Inter- national Exchange”
(Kokusai Koryu)group.
Each year, this group chooses an exciting topic on the
theme of “International Exchange and Tottori”
. Previous
topics have included:
2005:
2006:
2007:
2008:
2009:
2010:
2011:
2012:
2013:
Books, Data, Documents
books reports on world food and food issues
information and data from Internet websites
Talks by Guest Speakers
Kazuko Cates(TIME President)
Toru Ibaraki(Tottori University)
Ayenia(a student from Mexico)
Ihsan(a student from Malaysia)
Research Visits
Tottori International Exchange Center
Tottori City International Exchange Plaza
Local grocery stores and supermarkets:
Marui
S-Mart
Trial
Gyomu Super(with a Halal Food Corner)
Ethnic restaurants in Tottori including:
PJ’
s Rasoi(Indian)
Shanghai Charo
Bistro Fry Pan
Pepenero(Italian)
Taiwan Yatai
Cheju(Korean)
The status of foreign residents in Tottori
International marriage in Tottori
Education and international exchange
Work and international exchange
The 1927 Tottori-USA doll exchange
Tottori, history and emigration to Brazil
Sister city exchanges in Tottori
Religion and international exchange
Support for foreign residents in Tottori
This year, students selected the theme:
2014: Food and international exchange
Questionnaire Survey
students carried out a survey about food-related needs and
problems faced by foreign residents:
research subjects: 52 people(20 countries)
Food and Foreign Residents in Tottori
Everybody eats but food and eating customs vary widely
in cultures and countries around the world. Our students began their research on this topic by considering a number of
questions:
Regional Contribution
To share what they learned and to contribute to making
Tottori a better place to live, students:
How many foreign residents live in Tottori?
What types of food problems do they face?
Can they read Japanese menus or food labels?
Do they have food taboos linked to religion?
What food do people eat in other countries?
How many ethnic restaurants are there here?
What support is provided for foreign residents such as
Muslims who eat Halal food?
How can we make Tottori a better place for foreign(and
Japanese)residents to live?
organized a display table about world food for the 2014
international TIME Festival in Tottori
gave a formal presentation on their research at Tori-gin
Bunka Kaikan on January 24, 2015
designed an ethnic restaurant guide for local & foreign
residents which is accessible online
Thanks!
Our Kokusai Koryu group would like to thank all the people who helped us over the year. Arigato!
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