過去の学生アルバイト事情 1 経01-11 赤松 雅子 経01-24 有本 真季 経01-156 大原 直人 経01-173 岡本 麻里 目次 1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p1 2 過去の学生アルバイト経験率・・・・・・・・・・・・・p2 3 過去のアルバイト業種・職種・・・・・・・・・・・・・p3 4 アルバイト時間給の変化・・・・・・・・・・・・・・・p6 5 学生アルバイトの月平均労働時間・・・・・・・・・・・p11 6 過去のアルバイト目的・・・・・・・・・・・・・・・・p12 7 実例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p13 8 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・p17 2 はじめに 過去のアルバイトの実態を知る事からこの章は始まる。 “アルバイト”という言葉が生まれたのは 1950 年代前半である。内職というイメージで しか無かったアルバイトが、今や雇用の中心となっている。アルバイト依存産業が増えてき ているのが現代の特徴なのである。 更に、アルバイトの中心も学生である。学費を稼ぐために働くという「苦学生」ではなく、 小遣いや社会勉強の為に、という目的に変わってきているのではないだろうか? では、 何をきっかけにアルバイト依存産業が増えてきたのだろうか?経済の流れと大きく 関連しているのは明らかである。 又、アルバイトの依存産業が増えていくに連れ、学生アルバイトの実態がどのように変わ っていったのか?そしてそのことが、現在の社会にどう影響しているのか?を探っていきた い。 過去のサンプルを必要とした為、20 歳から 59 歳の方に、過去のアルバイト経験について のアンケートを実施した。 有効回答は 113 名 複数のアルバイト経験職種を挙げて頂いた為、178 事例回収できた。 (H16.12.6 現在) 年齢区分は 20 代、30 代、40 代、50 代と4段階で表記する。 過去、アルバイトをしていた時期の年齢を聞き、平均を出すと、20 代 19.3 歳、30 代 19.3 歳、40 代 18.6 歳、50 代 19.7 歳であることから、分かりやすくする為に、20 代は 1998 年 (平成 10 年)、30 代 1988 年(昭和 63 年)、40 代(昭和 53 年)、50 代 1968 年(昭和 43 年)にア ルバイトをしていたと考える。 以下の項目は、アンケートの項目を元にしているものである。 実際に過去のアルバイトの実態をみることができる、貴重なサンプルに仕上がっていると 思われる。 最後に、忙しい中アンケートにご協力を頂いた多くの方々に御礼申し上げると共に、数々 の助言を頂いた森岡教授にも厚く御礼申し上げます。 以上 3 項目 1. 過去の学生のアルバイト経験率 グラフ1 学生時代の周囲のバイト経験率 90.00% 80.00% 70.00% 60.00% 50.00% 40.00% 30.00% 20.00% 10.00% 0.00% 76.50% 78.80% 60.30% 高校 大学 47.10% 29.70% 30.00% 21.30% 8.60% 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 (年代) アンケート結果より 30歳代、20歳代には目立った差は見られないが、50歳代,40歳代,30歳代と若 くなるにつれアルバイト経験率は上昇している。 これは、一つには時代背景による、雇用形態の変化に大きく関連しているものと考えられ る。例えば、40 歳の方が高校生 17 歳の時は 1981 年、大学生 20 歳の時は 1984 年と考え てみると、日本の経済が安定期に入ることにより、機械化も進み、第三次産業へ産業が移行 していったこともあり、学生でも気軽にできる職業が増えてきたと考えられる。 40 代、50 代でアルバイトをしなかった理由について調べたところ『クラブ活動のため』 という回答が一番多い。他には『仕送りで足りた』 、 『時間がない』等があった。意外と『学 生は学業が中心』といった回答は見られなかった。しかしそれだけその考えは現在と比べ自 然としていた時代だったとも考えられる。 大学生になると、全体のアルバイト率が高くなるのは今も昔も変わらないようだ。 しかし、 50 代では約半数だった大学での周囲のアルバイト率が、 20 代では約 8 割にまでなっている。 学業とアルバイトを両立するということが、あたりまえになってきたと考えられる。そのこ とが、大学生の学業の低下にも少なからず影響が出ていると思われる。 4 項目 2. 過去のアルバイト業種・職種 グラフ2 (%) 学生時代のアルバイト業種 40 35 30 25 20 15 10 5 0 33.3 32.8 36.8 33.9 36.7 28.8 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 23.3 19.7 18.7 19.7 15.8 13.3 13.3 10.2 10 8.5 5.3 6.6 5.3 11.5 9.8 6.7 そ の 他 教 育 関 連 飲 小 食 売 (コ ン ビ ニ 以 外 ) コ ン ビ ニ サ ー ビ ス 0 0 (業種) アンケート結果より ◎グラフ 2 から、最初に飲食業での大きな変化をとらえることができる。 30歳代と40歳代の間に大きな差が見られることから 1980 年代の飲食業界の急激な成長 に焦点を当ててみた。以下のグラフが示すように、急激な成長をもたらしたものは、外食産 業の参入である。 グラフ3 (兆円) 外食産業の規模の推移 35 30 25 20 15 10 5 0 19 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 90 89 売上 91 92 93 94 95 96 97 98 99 000 2 ,01 年度 資料 (財)外食産業総合調査研究センター『外食産業市場規模の推移(平成14年4月)』 5 上記のグラフを見ても分かるように、外食産業の進出が大きく関わっていると予想できる。 ファミリーレストランとよばれる外食店が出現したのは 1970 年であり、このころから外食 産業は急激な発展を遂げた。これは大阪万博がきっかけと言われる。 1975 年で 8.6 兆円だった市場規模はわずか 20 年弱で 3 倍の成長をみせた。当初は日本 人がいだく西洋文化の憧れを具現化するものであったが、それが日本人の日常生活に取り入 れられた(参考:日本実業出版社『よくわかる外食産業』)と考えるのが妥当であろう。 こうして、40 代 50 代には殆ど見られなかった、 “飲食(ホール、キッチン) ”というアル バイト職種が、今はアルバイト依存産業として大きく求人をのばしている。 (40 歳代、50 歳代にみられた飲食業の内訳は喫茶店などが多い。 )このことから文化と雇用にも相関関係 があるのではないだろうか。 ◎ 次の注目点は、小売業アルバイトの形態の変化である。 40 代以上、特に 50 代に見られた傾向であるが、小売業では『デパート・百貨店』での アルバイト経験が多い。50 代では小売アルバイト経験者の内 75%の人が『デパート・百貨 店』でのアルバイトを経験している。この理由は 2 つ考えられる。 理由 1. コンビニエンスストア等がほとんど存在していなくこれら大型店舗の存在がとて も大きかった。以下のグラフ 4 で検討してみる。 グラフ4 全店舗の年間合計売上高 (億円) サ 1995年 ミニ ス トッ プ ン パ ャ ・ジ イ ケ ル ク ー ン ブ セ 1985年 サ ン ク ス ア ン ドア ソ シ エ イ ツ フ ァ ミリ ― マ ー ト ロ ー ソ ン イ レ ブ ン ・ジ ャ パ ン 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 1996年 資料 日本実業出版社『よくわかるコンビニ業界』 6 このグラフはスーパー系コンビニエンスストア上位 6 社の年間合計売上高の推移を示し たものだが、どのコンビニエンスストアも昭和 60 年から 10 年ほどで約 4 倍の売上増に成 功している。更に平成 7 年と平成 8 年を比較しても全社が売上増となっている。 コンビニの歴史を少し振り返ってみる。1969 年に開店した『マイショップ』が日本第一 号のコンビニとされている。(コンビニエンスストア評論家 安部幸男の定義による)現在 多く見ることができるチェーン店方式のコンビニは 1971 年のココストアである。以後 73 年ファミリーマート、74 年セブンイレブン、75 年ローソンと現在の売上企業も参入してき た。 チェーン方式による各店舗の経営の簡略化、 販売に専門的な知識を必要としない品揃え等 の影響でアルバイトの求人が増えたと考えられる。 また現在のコンビニはほとんどの店舗が 24 時間営業なので『昼間は働けないが、長期のアルバイト』を求める学生労働力の供給と 見事にマッチしているのではないか。 理由 2. 以前は長期休暇を利用して、アルバイトをする学生が多数を占めていた。 また、雇用側も夏、冬の中元、歳暮など、季節特有の繁忙期に求人を出したため。 実施したアンケートの結果を見ても50歳代、40歳代の人は長期休みのみアルバイト 経験していたという人が多かった。一方20歳代ではほとんど見られなかった。継続的な アルバイトを望む近年の学生には御中元、御歳暮の時期のみ等といったアルバイトよりも 年間を通して雇ってもらえる職種に人気が傾いていた。小売業のアルバイトが年々減少し、 目立った繁忙期が少ない飲食業に人気が集まっている原因の一つでもあると思う。短期雇 用のアルバイトは現在では掛け持ちでされていることが多いのではないか。 ◎ 3 つ目の注目点は、 『その他』の変化である。 キャディのアルバイトが 50 代にはみられたが 20 代から 40 代は見られない。また 40 代、 50 代には『郵便局』 『図書館』 『税務署』 『日本電信電話会社』という回答が見られた。公 的な職務のアルバイトも過去には多かったことがわかる。 現在、郵便局でアルバイトをするのと、飲食店でアルバイトをするのとでは、どうして も前者のほうが時給は安くなるが昔は公的な職務を選ぶより他になかったということも考 えられる。 また郵便局のアルバイトには上記した長期休みのみのアルバイト(冬休み)を学生が求め ていたことにも当てはまる。 1 件だけではあるが 50 代で『卒論の下書き』というアルバ イトもあった。 現代では考えにくいアルバイトと思うがワープロが普及していない時代を反 7 映している。 項目 3. 時間給の変化 グラフ5 アルバイト時間給の変化 (円) 1200 1000 989 835 800 600 506 400 373 200 0 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 (年代) 系列1 アンケート結果より 注)1. 昇給後等比較的高い賃金を解答したものが多いと思われるので実際値との差があり 注)2. 50代の回答で一件明らかな間違いと見られるものがあったのでそれは無効とした グラフ6 最低賃金の推移(全国平均) 700 600 500 (円) 400 300 200 100 0 1978 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 2000 ,02 (年) 系列1 資料:厚生労働省HP 8 http://www.mhlw.go.jp/sinngi/2003/12/s1202-3.html 二つのグラフを見比べると 20 代から 40 代はある程度合致する。しかし 50 代で大きなず れが生じた。(実際比べきれていないが最低賃金は昭和 40 年代には 200 円代になっている と読み取れるので) 理由はこのアンケート自体がかなり昔のことを回答していただいたことで記憶が薄れて しまったからだと思われる。有効回答のうち半数強の方が時間給については 『覚えていない』 としている。このずれに関する見解は後述する。 次に正社員の賃金の動きを示した。 1971年~72年当時のドル資金の大量流入に端 を発したマネーサプライ残高の急増、いわゆる過剰流動性の発生があり、また労働力の需要 も逼迫していたために、1973年~74年の賃金上昇が生産性を上回り、賃金コストが上 昇したことも、大きなコスト圧力となって物価を押し上げた。 グラフ 7 賃上げ等の率(%) 35 30 25 20 % 15 10 5 03 20 01 20 99 19 95 97 19 19 93 19 91 19 89 19 87 83 85 19 19 19 81 19 79 19 77 19 73 75 19 19 71 19 19 69 0 年度 賃上げ等の率(%) 資料 労働厚生省『毎月勤労統計調査』 9 グラフ 8 (月給) (時給) 正社員とアルバイト給与の上昇比較 500000 1200 400000 1000 800 300000 600 200000 400 100000 200 0 現金給与総額 アルバイト時給の変化 99 200 0 96 97 98 94 95 92 93 90 91 87 88 89 85 86 83 84 81 82 79 80 76 77 78 74 75 72 73 197 0 71 0 (年代) 資料 厚生労働省『毎月勤労統計調査』 厚生労働省『労働白書』 参考として初任給の上昇についても示した。 グラフ9 (千円) 学歴・男女別初任給の推移 250 200 150 100 50 0 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 (年代) 大卒・男 大卒・女 高卒・男 高卒・女 資料 厚生労働省「平成10年賃金構造基本統計調査結果速報(初任給) 」 大阪商工会議所調査部 昭和48年度 新規学卒者初任給の実態 明らかにアルバイトの賃金上昇率が正社員の賃金上昇率をはるかに上回っていることが わかる。 (注 1) 理由の一つとして考えられるのは、深夜営業の小売(コンビニ)や飲食店(ファミレス) が増加したことで時間給の高いアルバイト職種が多くなったからではないだろうか。 グラフ 10 3、グラフ 4 参照。 もう一つの理由としては、今まで正社員がしていた仕事がアルバイトにも任され、専門的 な知識や能力が必要とされることにより、時間給の高い仕事が増えたと考えられる。情報化 によるパソコン関連の仕事や、 飲食業の店長等といった高度な仕事までアルバイトがする時 代になったからではないか。 次に、グラフ 8 を見てもわかるように、1970 年代のアルバイト賃金が大きく飛び出てい ることがわかる。(注2) ではなぜ 1970 年代のアルバイト時間給はこんなにも高いのだろうか。いくつかの原因を 挙げてみた。 原因 1、 情報化の未発達 現代ではアルバイト募集は比較的簡単にできる。インターネットの整備や人材 関係の仲介企業が増えたことで募集の意思がと応募の意思と簡単につながるが 1970 年代にはアルバイトを雇うことが困難であった。その為、高時給でアルバ イトをつ なぎとめた。 原因 2、 労働力の増加 1970 年代前後に学生の進学率が上昇していることが下記グラフでわかる。この ことから、学生のアルバイト供給率が増え、賃金の増加につながった。 過年度の進学率 60.00% 50.00% 40.00% 30.00% 20.00% 10.00% 0.00% 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1992 年度 大学進学率 11 短大・大学進学率 1994 1996 1998 2000 原因 3、 短期アルバイト 1970 年代には継続的に雇用する業種、例えば 24 時間営業の小売店や、飲食業 が少なく、学生の雇用は短期に限られたものが多かった。忙しい時期に人手が足 りなくて募集をかけるので、それに見合う時間給になり、長期アルバイトに比べ 時間給は割高になる。今日でも『ド短期時給 1200 円』という求人はよく目にす るが『長期 1200 円』で学生を対象とした求人はほとんど見ない。一部の業種だ けである。 (注 3) 原因4、 アルバイト雇用に対する認識の違い 原因4 前述したように、以前は現在の学生のように、アルバイトが生活の一部ではなか った。学校に通いながらバイトをするといった、長期という認識はなく、ゴルフ 場のキャディや土方など、 数少ない労働時間で小遣い稼ぎをするといった考え方 が濃かったと思われる。また、雇用者側の考えも、今のように多くのアルバイト を抱え持つといった型ではなく、準社員に近い労働力を、といった考えがあった のではないだろうか。 (注 1)1980 年の賃金を 100 とした時、正社員は 90 年 142、2000 年 158 である。同じく アルバイトの賃金について同じことをすると、90 年 165、2000 年 195 となり、伸 び率はアルバイトの方が上である事は明らかである。 (注 2)1980 年の正社員、アルバイトの賃金を 100 とすると 1970 年の正社員賃金が 29、 アルバイト賃金が 74 であった。今回実施したアンケートは 30 年以上前のことを 思い出して回答していただいたこともあり 1970 年のアルバイト賃金については多 少のずれがあるかもしれない。しかし社員の相対給与 29 と同じ比率でアルバイト 賃金も変化していたと仮定する。正社員の 1970 年から 1980 年の賃金伸び率は、 1970 年 77000 円で 1980 年 262000 円であることから(262000÷77000)=3.4 倍。この伸び率でアルバイト賃金についても 1970 年の時間給を x 円として計算し てみる。X:506=1:3.4。X=約 150。 今回のアンケートで時給が 150 円未満と答えた50歳代の人は 15.8%に過ぎなか ったことからアルバイトの相対賃金 74 は信頼がある程度おけるものと考えた。 (注 3) 短期アルバイトが比較的高給なことを示す。調査方法は現代の求人情報から短 期バイト、それ以外のアルバイトを各 100 事例挙げ平均時給を求めた。なお日 給で示されたものは日給÷労働時間で時給に換算した。短期の求人で多かった 『コンパニオン、フロアレディ』等、また長期アルバイトでみられた『家庭教師』 12 等は特別に高給なアルバイトと判断し、意図的にサンプルから外した。 その結果、短期アルバイトの平均時給 1101 円 その他のアルバイトの平均時給 895 円となった。 資料:Workin 大阪版 12 月 7 日号(2004 年) Town Work 奈良版 12 月 6 日号(2004 年) from 項目 4. A navi 12 月 9 日掲載分 www.froma.com 労働時間について グラフ 10 学生時代、月平均労働時間 (時間) 80 70 60 62.4 50 40 41.5 69 58.9 45 系列1 系列2 30 20 10 0 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 (年代) アンケート結果より 40歳代、30歳代になるにつれ労働時間は上昇している。50歳代は40歳代、30歳 代の労働時間を上回っているが原因は長期休みのみアルバイトをしていた人が多いからだ と考えられる。 (注 4) 20 代、30 代になると短期と長期アルバイトの兼業をしていた人も出てくる。 いずれにせよ、 学生生活に占めるアルバイトの時間数に大きく変化が出てきていることは 明らかである。24 時間の仕事場所が増えたのと同時に、どんな時間でも自分の希望する時 間に合う職選びができるようになったことがきっかけと言えよう。 (注 4)アンケートの回答は 58%の人が月 80 時間と答えていた。そして 29%の人が 50 時 間未満であった。20 代、30 代の労働時間が 60 時間台であることから 50 代のほと んどが短期アルバイトでないとすると不自然な数字である。 以上の理由から上記の 結論になった。50歳代の回答で普段の学生には不可能な労働時間(月140時間 13 以上)を無効としての数値を出した。月140時間は月20日勤務としても一日あ たり7時間の勤務なので不可能とする。その結果が系列2である。 項目 5. 過去のアルバイト目的について グラフ11 (%) 学生時代のアルバイト目的 70 60 59 61.7 63 61.2 50 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 40 30 23.4 18.5 20 25.8 23 11.1 10 8.5 3.2 11.1 6.1 9.6 7.7 6.3 0 小遣い稼ぎ 社会勉強 学費・生活費 その他 アンケート結果による 注)免許取得の目的は学費とみなした どの年代でも特に目立った目的は『小遣い稼ぎ』であった。50 代が唯一 60%を切ってい るが『合宿費・旅費』といった準娯楽の回答が他の年代と比べ多かったので実質この項目は 横ばいの変化と考えられる。 過去に遡るほど『学費・生活費』の回答が増えると予想していたが目立った変化は見られ なかった。50 代の方が学生のころは 1970 年頃であり、既に高度成長期である。更に過去 の『苦学生』がたくさんいた時代は終わっていたのかもしれない。また、今より進学率が低 かった頃は学費が無ければ進学しないという人も多かった為、自然と学費に困っている学生 は少なかったのではないだろうかとも考えられる。 なお社会勉強、学費・生活費の項目で、30 歳代の結果が他年代の結果との間に著しい差 を示している。これは 30 歳代のサンプルが少なかった影響と思われる。 (20 歳代、40 歳代、 50 歳代のグラフがほぼ一致するため。)今回実施したアンケートの項目の中では、50 歳代 から 20 歳代にかけてあまり結果に差が生じなかった唯一の項目であった。 14 項目 6 実例の紹介 今回30歳の女性、47歳女性の二名に過去のアルバイト経験についてインタビューした。 アルバイトの目的は卒業旅行の資金(約 10 万) 高校 3 年生の時ショッピングセンターの紳士服売り場にて、夏冬休暇限定の短期アルバイ ト。 夏休みは土日のみ、冬休みはほぼ毎日出勤。 時給は 750 円。勤務時間は 10 時~17 時(休憩は 1 時間) 衣料売り場は、専門の知識や客への接客が、レジ係よりも多様化するので、人数構成は 社員:アルバイト=8:2 メリット 職場に社員が多かった為、仕事はその補助的なもの(主に衣料売り場でのレジ)が多 く楽だった。 年始年末の出勤に対して時給アップが無いが寸志と言う形で特別給与が出た。 食事補助としては食券が配布され社員食堂が利用できた。 デメリット アルバイト禁止の高校に通っていたため、学校から離れたところでアルバイトをしなく てはいけなかった。 Q1。お金を貯める目的のアルバイトですが、時給に不満はありませんでしたか? A1。当時は時給が 800 円でとても割がいいと思われていたので、750 円で全然不満は無か った。 Q2。同じ所で期間があいてもアルバイトできたのはどうしてですか? A2。普段はあまり学生を募集していなかったが、休み期間中は子供を持つ主婦が忙しくな る為、学生を必要としていたらしくアルバイト採用が緩かった。学校期間中は働ける 場所が無かったので都合がよかった。 彼女曰く、学校が 17 時くらいに終わってそれから働けると言う場所はあまり見かけず、 17 時からシフトに入れたとしても店舗の営業時間が 19 時、20 時だったりするので稼げな かったと言う。 15 現在ならば、もし 24 時間営業のコンビ二でアルバイトをした場合、高校生は 22 時まで 働けるので 17 時からだと 5 時間働けることになる。 コンビ二の 24 時間営業の店舗増大、スーパーの 24 時間営業化、または営業時間延長に 従って学生(特に高校生)のアルバイトできる場が増えたと思われる。 (この営業時間延長、24 時間化は、女性の社会進出によって兼業主婦が増え、主婦が仕事帰 りに夜遅くスーパーなどで買い物をする機会が多くなり、人々の生活のサイクルが昔に比べ て夜遅くまで延長されたなどが考えられる) ここで勤務の時間帯についてのデータを示しておく。果たして深夜勤務(22時から5時) までのアルバイト勤務はどのように変化してきているのか。同様に午前勤務(5時から12 時)までのデータも示した。 グラフ12 勤務時間帯の変化 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 深夜勤務率 午前勤務率 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 (年代) アンケート結果より 以上のような極端な結果になった。深夜勤務率での30歳代と20歳代の差は、サンプル が30歳代は 75%が男性、逆に20歳代は 63%が女性に片寄った影響であると考えられる。 しかし深夜勤務経験者の性別を見ると決して女性も少なくない。 24時を超える時間帯で働 いている女性は見られなかったが女性の労働力が年々重要視されていることがわかる。 一番目立った結果となったのは50歳代である。回答者の全員が深夜勤務の経験がなく、 90%近い人が午前からの勤務経験がある。このことからも長期休暇ではない平日にアルバ イトをすることは稀であったと思われる。 ここで話を戻す。 16 ちなみに彼女は高校卒業後就職したが 4 年後人間関係が複雑になり辞め、その後 22 歳~ 現在に至るまでフリーターをしている。 ボーナスは出ないが、社員よりも休みがもらえやすく、就業時間(10 時~17 時)が短いので 満足しているとのこと。しかし、昔アルバイトをしていた頃に比べ社員とアルバイトの比率 が逆転し、 「仕事のできない社員」と「仕事のできるアルバイト」の間に軋轢もあるという。 現場で働くアルバイトと、それを管理する社員という構造は合理的なのかもしれないが、 実際「管理できる」社員は少ないのではないのだろうか。 また、彼女が今勤める会社でも社員の離職率は高いという。ついつい自分達の仕事内容と 責務具合を「アルバイト」と比べ、フリーターをしたほうが得ではないかと考える社員も少 なくないと言う。 近年目立つ『実力主義』という響きがいい年功序列制度の崩壊、年俸制導入による賞与の 削除が進むと上記のように考え、フリーターへ移行する人が更に増えるのではないだろうか。 グラフ8,9で示したように正社員の給与上昇率は近年横ばいである。報酬という面で正社 員、アルバイトの距離が近づいてしまうと、今後のフリーターの増加も否めない。 アルバイトの目的は小遣い稼ぎ(ちなみに小遣いは月 5000 円) 高校1~2年生の時近所の酒屋さんで、2 年間の長期アルバイト 特にシフトが無かったが、主に土日出勤 時給は定かではないが月 1 万弱。勤務時間は 16 時~19 時 家族経営の為、社員は家族 3 人とアルバイトは彼女を含めて 2 人 メリット 家族経営の為、マニュアルも無くアットホームな職場だった。 デメリット 夏冬場のお中元、お歳暮の時期は連勤が続いた。 Q1。お小遣い稼ぎとありますが、使途目的は? A1。本やレコード購入の為。 (ちなみに文庫は安いものなら 100 円代、高くても 400 円し なかったという。またレコードは 500 円から 2000 円) 17 Q2。同級生はアルバイトをしていましたか? A2。まだ、周りにファーストフードやコンビ二が少なく、している子は少なかったが家業 を手伝うことをアルバイトにしている子は多かった。 アルバイトできるような場があっても、主婦の方が優先的に採用された。 彼女の家の周りは個人商店が多く、 今のようなチェーン店を見かけることは少なかったと 言う(1970 年代、ちょうど外食産業が日本に入って来た頃である)この時代の個人商店に現 在のようなシフトやマニュアルがあまり存在しないのは、店主とアルバイトの距離が短く、 意思疎通が今より自然に行われていたからではないだろうか。また店舗に複雑な機械やシス テムの導入が少なく、人と人とのやりとりが多かったと考えられる。現在では本部との連絡、 発注、検品、退勤までほとんどの業務がコンピューターで管理されている事が多い。 実際、彼女の勤めていた商店街はどの店もアットホームな感じで、客との会話が多く、客 の名前を覚えることも仕事のうちであったと言う。 今のアルバイトでも常連客ともなれば話をしたり、名前を覚えたりもするのだろうが、マ ニュアルどおりにレジ、接客をこなすことの方が多い。私がアルバイトをしていた頃、「フ レンドリーな接客を」、と店長が指示したことに対して、アルバイト仲間が「レジを通るお 客さんは、さっさと買い物を済ませたいのであって、会話なんか望んでない。実際自分が客 だったら、話し掛けられても困る」と言われたことが印象的だった。 この時代あくまでもアルバイトは社員、店主の補佐的役割だったと考えると、現在のアルバ イト業務は、店長や、社員のいない時間、業務に携わったりすることが多い為、大変責任の 大きなものになっていると考えられる。また、上述にあるマニュアルのおかげで業務内容が 誰にでも実行可能になった点が多いということもある。 現在では、店長と顔を合わさず働くアルバイトも多いのではないだろうか。 「外食産業」「コンビ二」などに代表されるアルバイト依存産業はマニュアルだけに頼らず、 独自の教育ができるかが、業界の中で個性を持つ事になり、アルバイトの受身的な考えを変 えることになるのではと考えられる。 18 項目7. 最後に グラフ13 (%) 国民総生産 対前年比成長率(名目) 25 20 15 10 5 90 92 94 84 86 88 76 78 80 82 70 72 74 64 66 68 1956 58 60 62 0 年度 国民総生産 対前年比成長率(名目) 資料 経済企画庁『平成7年度国民経済計算』 旧大蔵省大臣官房調査企画課 編『年表で見る日本経済の足取り』 経済企画庁『経済要覧』 参考として:1973年10月 第一次オイルショック 1978年12月 第二次オイルショック 1985年~1986年 円高不況 1987年~1990年 バブル経済の発生 1991年 バブル経済の崩壊 上記のグラフは大まかな日本経済の景気を見るためのものである。景気動向を元にこの章 のまとめとしたい。 経済と雇用の因果関係を考えてみる。 1960 年代後半はいざなぎ景気により好況にみまわれていた日本経済だが、1973 年のオイ ルショックを期に低成長期に陥ることになった。日本企業伝統の雇用形態である『終身雇用 制度』がこの頃から少しづつではあるが見直し始められた。更に外食産業等、大衆向け産業 が参入してくる中で、産業の形態も第二次産業から第三次産業へと変化していった。前記し た年代区分でいうと、40 歳代前後である。 あらゆる分野で時代が進むにつれ、高度成長期から成熟経済へ移行していく過程で、経済 活動の中で変化が進み、経営環境も大きく変貌した。現代の成熟経済は、全体の経済規模は 19 大きく拡大しない状況の中で、需要・供給構造の変化が進んでいく。 需要面では、消費の「モノ」離れ、サービス化が進み、消費者ニーズは個性化・多様化・ 高度化してきている。一方、供給面では新しい技術・新しい利便性を持った商品が次々と市 場に登場している。そのため、ヒット商品のライフ・サイクルも短くなってきている。 このような環境のもとで、企業は新商品の開発、商品改良、販売方法の革新を図ることで 業績を伸ばしていく。そこにコストを費やすことで、人件費にしわ寄せが来、正社員よりも 安く雇えるアルバイトが増加し、また今では大学生がアルバイトをすることが当たり前のよ うになってきている。 これらの条件によりアルバイトの求人需要が増大し、職種も、家庭教師や公職、キャディ などの分野から、ファミレスやコンビニなどの大衆向けサービス業に依存度を高めていった と考えられる。 一方学生側から見てみると、物価高などの影響で休暇中のアルバイトから持続的な長期の アルバイトへの需要が高まったと考えられる。いずれにせよ、時間的にも職種でみても学生 の働く場が、時代と共に増えてきたことは事実である。そして、その機会を多くの学生が利 用するようになったのも、時代の流れを反映している。 問題なのは、学生が卒業しても非正規雇用として働くことができる職場が増えてしまった ことである。中には、アルバイトに溺れ、中退する学生も少なくない。今ではほとんどの若 者がすぐに求人情報をキャッチし応募することができ、その日の生活に困ることは少ない。 しかしフリーターの増加はミクロ的に見れば個人の将来、マクロ的にみれば社会保険の問題 や、未熟練労働者の増加など数々の問題を引き起こすことは必然である。 経済の流れ自体が、非正規雇用を望んでいる以上、まだまだフリーター増加の問題は深刻 化されるであろう。 20
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