海外インターンシップ体験報告記 04

平成
24 年 09 月 18 日
(Year/Month/Day)
工学系教育研究センター長
(To: Director of CEED)
専攻・学年:総合化学専攻・修士 1 年
(Division/Year: Graduate School of Chemical Sciences and Engineering)
氏
名 :大庭 博司
(Name: Hiroshi Oba )
インターンシップ体験報告書(Internship Report)
(1) インターンシップの概要(派遣先・派遣期間・指導員など)
(2) 研修内容(テーマ・成果概要など)
(3) (2)項以外で学んだこと・後輩等に伝えたいこと
(4) その他
以上
(1) インターンシップの概要(派遣先・派遣期間・指導員など)
研修はポーランドのグリヴィッチェという都市の Institut Spawalnictwa で7月2日から
8 月 31 日の 8 週間行ないました。グリヴィッチェは人口約200,000人が住む都市で,
昔から工業都市として有名です。
グリヴィッチェへは最寄りのカトヴィッチェ空港からバス
で1時間程かけカトヴィッチェ駅まで行き,
そこから電車に約1時間乗り到着することがで
きます。研修先は私の寮から徒歩 20 分の場所にあり,毎日歩いて通勤していました。Instytut
Spawalnictwa は溶接の研究開発において非常に高い技術力を持っており,実験室には多くの溶
接装置や測定装置が置いてあり,研究設備は非常に整っていました。研修内容は様々な溶接方
法や溶接材料の評価方法について学ぶというものでした。私の研修では 4 つの部署を 2 週間
ごとにまわるというものだったため,1 つの研究テーマを与えられそれに従事するような研
修ではなく,
それぞれの部署でいろいろな溶接方法や溶接の評価方法を教えていただくとい
うものでした。その中で実際に行なっている実験を見せてもらい,また実際に実験をやらせ
ていただきました。就業時間は基本的に朝 10 時から昼 4 時でした。朝 10 時に来たあと実験
の準備を行い,その後スーパーバイザーと一緒に実験室へ行き,実験およびディスカッショ
ンを行ないました。また空いた時間には配属しなかった部署に連れていってもらったり,過
去に学会などで発表した内容をパワーポイントで発表してもらったりしました。
会社には食
堂がなく,基本的に昼食はパン等の軽食を持参していました。会社の近くにはパンやインス
タント食品などを売っている店があったので,時々そこを利用して昼食を買いました。
図.研修先とお世話になったスーパーバイザー
(2)研修内容(テーマ・成果概要など)
研修内容は主に様々な溶接方法や溶接材料の評価方法について学ぶというもので,研
修先では約 2 週間ごとに部署を移動し,4 つの部署に配属しました。初めに配属した部
署では摩擦溶接について学びました。摩擦溶接とは部材を回転させながら接触させるこ
とで生じる摩擦熱,圧力によって金属を溶接する方法であり,融点の異なる異種金属間
でも溶接が可能であるため非常に注目されている溶接方法です。本部署では,圧力や溶
接速度,回転速度などのパラメーターを変化させ,サーモビジョンカメラにより溶接中
の温度変化を観測しました。次の部署ではガス-アーク溶接を学びました。ガスーアー
ク溶接は電極-金属間にガスを充満させ電気的アークをかけることにより溶接する方法
です。本部署では筒状の金属と板状の金属の溶接方法について学びました。電流値や電
極の回転速度,電極-母材間距離などをパラメーターとして変化させ溶接を行いました。
3 つ目の部署では抵抗溶接を学びました。抵抗溶接は 2 枚の材料を圧着させ電流を流し,
その抵抗熱を利用することによって金属を溶かし溶接する方法です。とりわけ本部署で
はプロジェクション溶接という抵抗溶接の一種で,母材の溶接部にプロジェクション
(突起部)を設けて,突起部に集中して電流を流すことにより加熱,加圧溶接する方法
を学び,電極を押し付ける力,電流値,通電時間などのパラメータを変化させ溶接を行
ないました。最後の部署ではそれぞれ各部署で溶接した材料の様々な測定,評価方法に
ついて学びました。溶接材料の形態観測,溶接材料を両端に引張りその強度を測定する
引張り試験,器具を高いところから振り子のように落下させ溶接材料に衝突させその強
度を測定する衝撃試験など様々な方法を学ぶことが出来ました。特に溶接材料の形態観
測に関しては,自分自身で試料の切断,研磨を行い試料観察を行いました。研磨は力を
かけなくてはならないにも関わらずムラなく磨かなくてはならず,非常に難しい作業で
した。社員の人は1試料 10 分程で仕上げてしまうのですが,私の場合1試料終わらす
のに何時間もかかってしまいました。しかし何度も練習しているうちに上手くなってい
く実感があり,とてもいい経験になりました。このように私の研修は 1 つの部署に滞在
するのではなく,4 つの部署を回ることができたため,溶接について広く学ぶことがで
きましたし,また多くの人と係わることができました。研修内容は自身の専攻とは異な
り理解が難しい点が多かったのですが,分からない点についてネットで調べたり,社員
の人に聞いたりすることで対応することができました。この研修を通して新しい環境で
新しいことを学ぶうえでの対応力,適応力がついたと実感しています。非常に有意義な
研修生活を送ることができました。
筒状スチールのガス-アーク溶接
光学顕微鏡により観察した溶接部
(3) (2)項以外で学んだこと・後輩等に伝えたいこと
私は IAESTE を通してこの研修に行ったのですが,IAESTE ではまず初めに現地で研修している
研修生と交流することができ,研修以外は基本的に彼らと生活しました。バスケをしたり,映画を見
たり,クラブへ行ったりと毎日充実していましたし,また彼らとの会話は日々英語のトレーニングでし
た。友達の英語が聞き取れないことや自分の英語が相手に伝わらないことが時々ありましたが,何
度も彼らとコミュニケーションをとっているうちに英語が上達していく実感がありました。何より英語を
話すことに対する抵抗がなくなったような気がします。週末には IAESTE Weekend という企画がポー
ランドの各都市で行われ,多くの IAESTE 研修生が来るため,いろいろな国の人と交流することが
できました。この企画を通して多くの友達を作ることができましたし,彼らと会話することで様々な国
の情勢や歴史,文化を学ぶことができました。また日本について英語で紹介するのも自分にとって
とても貴重な経験になりました。その他ポーランドだけでなくオランダ・ベルギー・チェコ・ドイツと多
くの国を観光することができたのもいい経験でした。このように研修以外でも多くのことを学び,経
験することができました。
海外インターンシップでは研修でいろんなことを学べるのはもちろんですが,海外の友達との
日々の生活だったり観光だったりと全てが新鮮で,これは日本にいては味わえないものだと感じま
した。行ってみないと味わうことができないものだと思うので後輩にも是非海外インターンに行って
欲しいと思います。
IAESTE の現地メンバーと
プラハにて
IAESTE Weekend にて
ビルケナウ収容所前
(4) その他
最後に少し重複する部分もありますが生活全般等について述べたいと思います。
私の仕事が 10 時からだったので,平日は毎朝 8 時半起床で 9 時半頃に仕事に向かっていまし
た。仕事から帰るのは午後の 4 時半頃でした。私の寮には他の IAESTE メンバーも滞在していたた
め,就業時間以外の時間はほとんど彼らと過ごしました。仕事が終わった後はみんなで映画を見に
行ったり,バスケットやサッカーをしたり,市内を観光したりといろいろなことをしました。基本的に毎
日グループメールに誰かの「今日はこれをしましょう」というコメントがありました。私も何度か今日は
バスケをしようとコメントしました。ポーランドの 7,8 月は午後の 9 時頃まで明るく,その時間まで外
で遊ぶことが出来ました。夜はみんなでお酒を飲み,酔っ払った後にクラブへ行くということが多か
ったです。お酒は基本的にビールとウォッカを飲み,ビールは日本のものよりも強く,中には 10%
以上のものもありました。ウォッカの強さは 40 度ととても強く,飲むたびに酔っ払いました。クラブへ
行くときは寮から歩いて 15 分程のメインスクエアーに行き,そこにいくつかあるクラブへ行っていま
した。クラブでは最新の洋楽やポーランドの曲が流れていて,日本にいるときに洋楽を聞いておけ
ばと後悔しました。最初は踊ることに抵抗があったのですが,みんなと何度もクラブへ行き見よう見
まねで踊っているうちに躊躇なく踊れるようになりました。寮へ帰るのは夜の 12 時くらいで,1時に
就寝という生活を送っていました。
また平日に International evening といい,それぞれの国の伝統料理を自分たちで作りみんなに
紹介するという企画があり,私は味噌汁とご飯とインスタントラーメンを出したのですが,作り終わっ
てから食べ始めるまで時間があったため,味噌汁は冷え,ラーメンはのびてしまっていたので私の
料理は残念なことになってしまいました。友達が作った料理はとても美味しく,特に中国の友達の
中華料理は絶品でした。この企画以降時々お願いして中華料理を作ってもらっていました。私の
料理はダメでしたが,日本の料理を紹介することができ,それと同時に各国の伝統料理を知り,食
すことができるこの企画はとてもいいものだと感じました。
食事は寮の近くにあるポーランド料理の店へ行くか,近くにあるスーパーで買い物をしていまし
た。そのポーランド料理店は 15 ズウォティー(400 円)ぐらいでお腹いっぱい食べることができ,また
スーパーでも非常に安く物を購入することが出来ました。物価はだいたい日本の半分ぐらいに感じ
ました。
週末はポーランド国内外を旅行することに費やしました。また IAESTE の主催する IAESTE
Weekend にも参加しました。IAESTE Weekend ではポーランド国内のジェシュフとグダンスクに行き
ました。それぞれ自分の研修先の IAESTE メンバーだけでなく,ポーランド各都市から参加した
IAESTE メンバーと交流することができ,行事を通して多くの友達を作ることができました。ポーラン
ド国内外の旅行としては,ベルギーのブリュッセル,オランダのアムステルダム,チェコのプラハ,ポ
ーランドのクラコフ,オシフェンチムへ行きました。ブリュッセル,アムステルダム,プラハはドイツに
インターンシップで来ていた日本人の友達と現地で会い,小便小僧,アンネフランクの家,プラハ
城などの観光名所を訪れました。またクラコフ,オシフェンチムへは一人で行き,ビルケナウ-アウ
シュビッツ収容所を訪れたり,クラコフの綺麗な街並みを散策しました。このように各地でその土地
ごとの名産や歴史的な遺産を見れたことは非常に貴重な経験となりました。