鳥獣被害防止対策(サル、シカ、イノシシ、クマ)(PDF:254KB)

伊那市における鳥獣被害防止対策
『サル・シカ・イノシシ・クマ編』
この対策は、直截的には「被害防止対策」ですが、真のねらいは安心して農業にいそしめること
また、地域の住人として安心して暮らしが営めるための手段であり、地区住民にも理解を求め共
通認識の上で長期にわたり取組むものです。
今、「集落ビジョン(集落の将来あるべき姿)」策定をお願いいしているところでもあり、「安心で暮
らしよい環境づくり(もちろん営農上も)」の視点からも集落が目指す構想に位置づけられるもので
もあります。理念的には野生動物との共生の道を探り、「自然との調和」を求めていくものです。
平成19年12月 伊那市農業振興センター
1 対策の実施姿勢
※ 今回被害防止対策を示すが、過去実施してきた対策事例を調査し、検証の上本対策の精度を上げる
※ 他人(猟友会)任せから自らできることから取組む
※ 個別対策から組織的に地区を越えて市全体で統制ある面(線)的な対策により防御網を構築する
※ 農業だけではなく林業とも連携調和した対策が必要
対策の組織づくり⇒地区関係者による総合的に体系的な組織が必要。但し、対策組織の乱立とならないよう調整する
有害鳥獣対策協議会との連絡調整強化。
駆除だけでは防げない⇒複数の防御対策実施が必要。
防護柵は、サル・シカ・イノシシ・の3種合併柵で⇒点でなく面(線)で防御。緩衝帯設置が効果をあげる。
クマは、3種合併柵で防御できるか調査研究し確定する。
防護柵が破られたらその箇所は次に破られないよう頑丈に補修する⇒保守点検を抜かりなく。
おびき寄せない(食害の放置は餌付けと同じ)、野生動物のエサには次の二つがある。①鳥や獣が食べると人が怒るエサ、
②食べても誰も怒らないエサがある。この②を除去する。⇒野菜クズや廃果は耕起または家の近くに埋設、果樹の放置され
た果実除去、墓地への供物は墓参後片付けなど。
(地域一帯でエサの除去をする)市農業振興センターがチラシで啓蒙。
追い払い⇒北海道犬などによる(訓練された犬の管理と出動)
農地回りの環境整備は効果抜群(見通しをよくする) ⇒里山の下草刈、遊休荒廃地の解消、緩衝帯の整備など。
最後は駆除する⇒農作物を荒らす、また里に近づく獣は駆除する。
(檻ワナ、箱ワナ、くくりワナ、銃など資格取得する)
2 獣種別対策
1)
【サル】
◆対策のポイント
-1-
〇 食害の放置は餌付けと同じ
〇 対策は総合的に、捕獲だけに頼ると悪循環
任務を明確に
し、具体的機能
の分担も整理
し示す
〇 電気柵、網は点検整備が必要
〇 農地周りの環境整備も効果抜群
◆対策
被害防止対策
具体的方法
効果を上げるのには
実施主体
1 行動を制御する方法
①
恐怖心や警戒心植え付けと追い 強力発光機、爆音機、爆竹、 身体に安心だと学習し、慣れて 地域的組織
払い
ロケット花火
しまう
パチンコと唸りのする玉
同上、身に危険だと感じさせる 同上
こと
モンキードック(追い払い事 行動のモニタリングが効果を 地域組織
②
業)
上げる
遊休荒廃農地へ牛の放牧
牛の管理に毎日人が行くこと
いつも出てくるところへ嫌がら 山椒、ごぼう、唐辛子、里芋、コ 徐々に侵入が抑えられる
地域組織
地区農業者
せ作物の栽培
ンニャクイモなど
③ 防護柵の設置
しなう支柱とすその長いネッ 一定の効果あり、侵入を防ぎき 地域組織
トの組合せ
れない
電気牧柵とネット(モンキーショック) 効果高い、緩衝帯設置や漏電の 地域組織
見回りが決め手(柵下の殺草)
2 サルを除去する方法
-2-
備考
① 捕獲
小型・中型の箱ワナ、大型檻 選択的駆除の徹底
型ワナ
有害鳥獣対策協議
オスは駆除、メス・子はお仕置 会
き放獣(子を殺せば翌年また生
有資格者の拡大
ませることになる)
3 農地管理・生産技術の工夫による方法
① 緩衝地帯の整備
里山の下草刈、遊休荒廃地の 農地と一定の距離、藪を除去す 地域組織
農地化
② 忌避作物の栽培
る
ごぼう、唐辛子、里芋、コン
地区農業者
ニャクイモ
③
野菜・果物クズ、収穫残渣(茎 耕起、埋設(人家の近くで)
葉実)の処分
④ 放置された果樹の管理
農業振興センタ-(チラ
シで啓蒙)、農業者
カキ、クリ、クワグミなど始
農業振興センター(チラ
末する
シで啓蒙)、農業者
⑤ 被害の無い作物の栽培
花木等
地区農業者
⑥ 墓地のお供物の始末
果物、菓子などは墓参が済ん
農業振興センター
だら持ち帰る
(チラシで啓蒙)
集落住民
2)
【シカ】
◆ 対策のポイント
〇 ところ変わればシカの生態も変わる(地域の自然に適合した採食)
〇 慣れを起こさせない対策
-3-
〇 防護柵と捕獲は被害防除の両輪
〇 忌避材(剤)
(髪の毛、木酢液・クレオソートなど)は効果が低く気休め程度でありすすめる対策ではない
〇 シカを誘引しない農地管理
◆ 対策
被害防止対策
具体的方法
金属フェンス・ネット
① 防護柵の設置
電牧柵(電線型・ネット型)
効果を上げるのには
もぐりこんで侵入するので裾
を厳重にまたは裾を長くして
地域組織
外側に敷く
漏電対策(柵下の殺草)
里芋、シソ、苦瓜、モロヘイヤ、ユ
② 被害の受けにくい作物の栽培
実施主体
地区農業者
ズ、キウイフルーツ
耕起して雑草を減らす、特に 秋の土手除草は冬期の緑草を 農業振興センター(チラシ
④ シカに配慮した土手・農地管理
春先
⑤ 捕獲
大量捕獲檻
3)
【イノシシ】
◆ 対策のポイント
〇 高い繁殖力のため、捕獲に依存は禁物
〇 被害地管理と生息地管理が重要
〇 イノシシは平野の生き物
-4-
増やす
で啓蒙)、地区農業者
有害鳥獣対策協議会
有資格者の拡大
備考
〇 イノシシにとって農作物は最高の食べ物
〇 忌避材(剤)
(髪の毛、木酢液・クレオソートなど)は効果が低く気休め程度でありすすめる対策ではない
◆ 対策
被害防止対策
具体的方法
① 加害獣の捕獲
小型檻、くくりワナ
トタン柵
② 防護柵の設置
電牧柵
③ 行動制御
牛の放牧
地帯の下草刈
水路、道路、公共施設、緩衝
⑤ 山際の利用促進
地帯の設置
野菜・果物クズ、収穫残渣(茎葉実)
の処分
⑦ 被害を受けにくい農作物の栽培
⑧ 組み合わせによる農作物の栽培
耕起、埋設
ごぼう、白ネギ、シソ、にん
にく、ピーマン
山側に④をつくり、里側に普
通作物を作る
-5-
実施主体
移動ルートを考慮して設置
有害鳥獣対策協議会
被害農地の近くに潜伏
有資格者の拡大
持ち上げ対策、隙間を作らな
い
地域組織
保守点検で漏電防止
1haあたり和牛2頭を放牧
する、管理に毎日人が行く事
遊休荒廃地農地化と里山緩衝 畑まで見通しよくして藪を作
④ 里山(緩衝帯設置)や農地管理
⑥
効果を上げるのには
らない
地域組織
地域組織
地域組織
農業振興センター(チラシ
で啓蒙)、各農業者
地域組織
地区農業者
備考
4)
【クマ】
◆ 対策のポイント
〇 嫌がらせ法は組合せるとある程度効果あり、但し馴れが生じやすい(鈴、ロケット花火の発射、ラジオをかける、髪の毛焼きなど)
〇
食性パターン:春~初夏…若草(奥山)
、夏…蟻や蜂(とうもろこし・ハチ・りんごの3種が多い)(里)、秋…どんぐりな
ど(奥山)
〇 夏のクマの活動時間:朝4~7時頃、午後 1 時頃、夕方5~9時頃(満月では遅くまで活動)
〇 単独で行動し縄張りを持たない(行動範囲も大きくかつクマ同士重なり合っている)駆除の効果が薄い
〇 忌避剤(木酢液、クレーソート)は効果なし
〇 山のナラ、ミズナラなど自然林の回復で住み分けの実現
◆ 対策
被害防止対策
具体的方法
① 防護柵の設置
電気柵
② 捕獲
捕獲檻
効果を上げるのには
リボンワイヤーが良い
実施主体
地域組織
地域組織
有資格者の拡大
③ 緩衝地帯の整備
里山の下草刈、遊休荒廃地の 農地と一定の距離、藪を除去 地域組織
農地化
-6-
する
《参考》今ある有害鳥獣対策に関する組織
1) 南アルプス食害対策協議会(事務局:伊那市農林振興課林業振興係)
食害対策のため、国・県・市町村・研究機関が連携協力する組織
2) 上伊那地区野生鳥獣保護管理対策協議会(事務局:上伊那地方事務所林務課)
野生鳥獣に関する保護管理を適正かつ効果的に実施する組織
3) 伊那市有害鳥獣対策協議会(事務局:伊那市農林振興課林業振興係)
被害の把握と有害鳥獣の駆除実施組織
4) 人間・野生動物共生プロジェクト(事務局:伊那市農林振興課農業振興係)
北海道犬による野生動物追い払い事業実施とその訓練事業実施組織
5) 市農業振興センター有害鳥獣対策専門委員会(事務局:農業振興センター)
農業者自らできる対策を検討し運営小委員会へ報告する組織
《参考》防止対策実施の支援事業
1) 市事業
①
負担金
ア
伊那市有害鳥獣対策協議会
-7-
(H19年度当初予算
7,959 千円)
②
イ
有害鳥獣一斉駆除
(
同上
500 千円)
ウ
ツキノワグマ学習放獣事業
(
同上
1,000 千円)
補助金
ア
網ワナ狩猟免許取得補助金
(
同上
189 千円)補助率50%(補助対象経費 35,540 円)
イ
サル捕獲檻新設補助
(
同上
130 千円)補助率50%(事業費)
ウ
鳥防除網・獣防護柵設置補助
(
同上
10,525 千円) 同上
(県事業の場合20%上乗せ含む)
2) 南信農業共済組合事業
①
補助金
ア
有害鳥獣に係る損害防止事業助成金(事業費の30%、但し30万円の限度、または国・県・市ほか団体助成があ
る場合、補助残の30%または30万円限度)
イ
上伊那管内有害鳥獣駆除助成金
(事業費から受益者負担分30%を差し引いた額で10万円を限度、または国・
県・市ほか団体助成がある場合、補助残から30%を差し引いた額で10万円
を限度)
②
器具の貸し出し
(捕獲檻・くくりワナを1年限度で貸し出し)
H19実績 イノシシ捕獲檻 2基、くくりワナ8台
3) 県事業
①
補助金
ア
獣防護柵設置補助金
(
4) 国事業
①
H19年度伊那市では実績なし
-8-
同上
6,000 千円)
②
H20年度関連事業の予想
ア
鳥獣被害防止特別措置法の施行
イ
有害鳥獣特別対策
28億円
-9-