エヌ・エス配合散の薬力学的同等性に関する資料 日 新 製 薬 株 式 会 社 安 全 管 理 部 エヌ・エス配合散は消化器症状(食欲不振、胃部不快感、胃もたれ、嘔気・嘔吐)の改善を効能効果とする 健胃・消化剤で、1.3g 中に下表の成分を含有する。 そこで、エヌ・エス配合散(日新製薬)と、標準製剤(散剤、カンゾウ末配合剤)との、制酸力試験、Fuchs 変法による中和能試験、でんぷん消化力試験、胃腸薬の pH 試験の in vitro 効力比較試験を実施し、両剤の同 等性を検討した。 含量 (mg) 成 分 名 制酸剤 炭酸水素ナトリウム 600 速効性の制酸作用を示す。 炭酸マグネシウム 120 沈降炭酸カルシウム 300 乾燥水酸化アルミニウムゲル 比較的持続性の制酸作用を示す。 70 過量の胃酸を中和し、粘膜を被服保護する。 消化酵素 α−アミラーゼ 50 でんぷん消化力を有する。 ケイヒ末 20 精油の芳香が嗅覚を刺激して、消化液分泌を促進し、食欲 10 を増進する。直接刺激により消化管運動も促進する。 ウイキョウ末 ニガキ末 生 薬 作 用 オウバク末 10 苦味質及びアルカロイド等の苦味成分が口腔内において味 9.5 覚を刺激し、消化液分泌や胃運動を促進する。 ショウキョウ末 10 カンゾウ末 精油と辛味成分を有し、直接的及び反射的に消化液分泌や 胃運動を促進し、口腔内に爽快感をもたらす。 100 鎮痙作用により胃の緊張を緩和する。 1.制酸力試験 エヌ・エス配合散あるいは標準製剤(散剤)400mg に 0.1mol/L 塩酸 100mL を加え、過量の塩酸 を 0.1mol/L 水酸化ナトリウム溶液で滴定し、制酸力を測定した。 その結果は以下のとおりで、制酸力はエヌ・エス配合散で 392.8mL、標準製剤(散剤)では 392.7mL と同等の値を示した。また、危険率 5%で検定を行ったところ、両剤間に有意差は認められなかった。 エヌ・エス配合散 (10検体) 制酸力(mL) 平均値±標準偏差 392.8±1.667 標準製剤(散剤) (10検体) 392.7±1.029 不偏分散 :1.818 T分布値(5%):2.101 T0 :0.1615 T0<T(5%)であるので、双方の平均値には差がないと判断する。 1 2.Fuchs変法 塩酸を一定速度で滴下した場合に pH3.0 以上を維持する時間を測定し、両剤の中和能を比較した。 0.1mol/L 塩酸 50mL に、精製水 100mL とエヌ・エス配合散あるいは標準製剤(散剤)を 1.3g 添 加した。10 分間放置後、1mol/L 塩酸 0.2mL を滴下しながら pH を測定し、薬剤添加後、pH3.0 以上 を維持する時間を測定した。 その結果は以下のとおりで、pH3.0 以上の平均維持時間はエヌ・エス配合散、標準製剤(散剤)とも に 59.4 分と同等の値を示した。また、危険率 5%で検定を行ったところ、両剤間において有意差は認め られなかった。 8 7 6 pH 5 4 3 エヌ・エス配合散 2 標準製剤(散剤) 1 0 0 20 40 60 経過時間(min) 添加前 エヌ・エス配合散 1.51 ±S.D. 0.026 標準製剤(散剤) 1.50 ±S.D. 0.020 5min 6.65 0.042 6.58 0.026 10min 6.95 0.054 6.89 0.020 15min 6.77 0.051 6.71 0.018 20min 6.60 0.039 6.53 0.053 pH 25min 6.42 0.021 6.40 0.025 51min 5.04 0.080 5.13 0.030 52min 4.94 0.066 5.02 0.018 53min 4.84 0.087 4.97 0.016 54min 4.76 0.063 4.83 0.069 55min 4.63 0.095 4.72 0.087 56min 4.46 0.094 4.48 0.148 薬剤名 30min 6.20 0.032 6.22 0.025 35min 6.02 0.033 6.02 0.021 40min 5.81 0.070 5.88 0.030 45min 5.55 0.040 5.64 0.029 50min 5.16 0.060 5.24 0.036 57min 4.20 0.184 4.22 0.123 58min 3.68 0.168 3.65 0.286 59min 3.08 0.043 3.10 0.108 60min 2.89 0.075 2.85 0.088 61min 2.66 0.066 2.64 0.119 pH 62min 2.43 0.103 2.46 0.134 平均維持 時間(min) 59.4 0.317 59.4 0.314 平均維持時間:pH3.0以上を維持する時間 平均維持時間(min) 平均値±標準偏差 エヌ・エス配合散 (10検体) 標準製剤(散剤) (10検体) 不偏分散 :9.503×10-2 T分布値(5%):2.101 T0 :0.6496 -1 59.4±3.169×10 59.4±3.143×10-1 T0<T(5%)であるので、双方の平均値には差がないと判断する。 2 3.でんぷん消化力試験 試料溶液:エヌ・エス配合散あるいは標準製剤(散剤)をでんぷん糖化力試験では約5g、でんぷん糊精 化力試験では約 2.6g に、酵素希釈液を加えてろ過した液。 基質溶液:バレイショデンプンに水と水酸化ナトリウム溶液(2→25)を加えて糊状にした後、塩酸試 液で中和し、1mol/L 酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)と水を加えて調製した液。 3-1 でんぷん糖化力試験 基質溶液 10mL に試料溶液1mL を加え 10 分間放置した後、でんぷん消化力試験用フェーリング試 液、濃ヨウ化カリウム試液、薄めた硫酸を加え、遊離したヨウ素を 0.05mol/L チオ硫酸ナトリウム液 で滴定し、でんぷん糖化力を算出した。 その結果は以下のとおりで、でんぷん糖化力はエヌ・エス配合散で 11.4 単位/g、標準製剤(散剤) で 11.5 単位/g と同等の値を示した。また、危険率5%で検定を行ったところ、両剤間において有意差 は認められなかった。 でんぷん糖化力(単位/g) 平均値±標準偏差 エヌ・エス配合散 (10検体) 11.4±1.687×10-1 標準製剤(散剤) (10検体) -1 11.5±1.647×10 不偏分散 :3.011×10-2 T分布値(5%):2.101 T0 :1.2306 T0<T(5%)であるので、双方の平均値には差がないと判断する。 3-2 でんぷん糊精化力試験 基質溶液 10mL に試料溶液1mL を加え 10 分間放置した後、0.1mol/L 塩酸試液及び 0.0002mol/L ヨウ素試液を加え、水を対照として波長 660nm における吸光度を測定し、でんぷん糊精化力を算出した。 その結果は以下に示したとおりで、でんぷん糊精化力はエヌ・エス配合散で 14.4 単位/g、標準製剤 (散剤)で 14.1 単位/g と同等の値を示した。また、危険率5%で検定を行ったところ、両剤間におい て有意差は認められなかった。 エヌ・エス配合散 (10検体) 標準製剤(散剤) (10検体) でんぷん糊精化力(単位/g) 不偏分散 :1.982 平均値±標準偏差 T分布値(5%):2.101 14.4±0.3974 T0 :0.4967 14.1±0.4551 T0<T(5%)であるので、双方の平均値には差がないと判断する。 4.胃腸薬のpH試験 ファクターを 1.000 に調製した 0.1mol/L 塩酸 50mL にエヌ・エス配合散あるいは標準製剤(散剤) を 1g 加え、10 分後の pH を pH 測定法により測定した。 その結果は以下のとおりで、エヌ・エス配合散は pH6.83、標準製剤(散剤)は pH6.81 と同等の値を 示した。また、危険率5%で検定を行ったところ、両剤間において有意差は認められなかった。 :1.255×10-3 pH 平均値±標準偏差 不偏分散 エヌ・エス配合散 (10検体) 6.83±3.062×10-2 T0 標準製剤(散剤) (10検体) 6.81±3.777×10-2 T0<T(5%)であるので、双方の平均値には差がないと判断する。 T分布値(5%):2.101 3 :1.3188 5.まとめ エヌ・エス配合散と標準製剤(散剤)の薬力学的比較試験を行った結果は以上のとおりであり、いずれ の試験においても両剤間に有意差は認められなかった。 よって、エヌ・エス配合散と標準製剤(散剤)は臨床の場においても同等の効果が期待できるものと判 断する。 2010.4 改訂 4
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