外来生物の分布拡大予報

2013/12/26
本日の話題
外来生物分布拡大予報
ー現状と将来ー
小池文人 [email protected]
横浜国立大学
大学院 環境情報研究院
理工学部 地球生態学EP
http://vege1.kan.ynu.ac.jp
1
1.外来生物について
・外来生物とは
・被害と問題意識,コンフリクト
・対策
2.外来生物分布拡大予報について
・分布情報の大切さ
・導入経路があきらかなときの予測
・経路が不明なときの予測
3.外来生物とGBIF
2
生物に国境はないが,それぞれ「自然の分布域」がある
Russia
人間が
移動さ
せると
外来種
になる
外来生物とは
Korea
China
3
国内の
分布域外
カブトムシ
アメリカ
日本
シュロ
トウネズミモチ
ハクビシン
セイタカアワダチソウ
ブタクサ
アライグマ
ブラックバス
4
1
2013/12/26
導入された理由と分布パターン
どうやって持ち込まれるか?
JWRC報告書
すべて外来生物
意図的導入
鑑賞用や,家畜,毛皮獣,食用に輸入され野生化した
http://www.city.akita.akita.jp/city
/in/zo/map/syoudoubutu/hakubis
hin.htm
•森林など自然の多い地域に野生化する植物
•体が大きな哺乳類
天敵として導入した(とても危険)
•肉食の動物(昆虫,哺乳類)
(アメリカ,ニュージーランドでは現在も盛ん
ホスト特異性が高い昆虫など)
非意図的導入
その他
外来生物を減らそうと導入した天敵が有害な外来生物になった
持ち込むつもりはなかったが,荷物に混じっていた
•畑の雑草
•河川・湖沼・海の小さな生き物
地方から
5
外来生物の定義
アライグマ
(毛皮用として東南アジアから)
(ペットとして北アメリカから)6
どれくらいの距離を移動させれば外来種になるか
純粋に科学的な定義
・自然の分布域外に
・人間が持ち込んだもの(意図的・非意図的とも)
・どんなに昔に導入されても外来生物
神奈川県に自生する植物の分布幅
60
シダ
草本
木本
Fern
Herb
Woody plant
50
種の数(%)
Frequency
多くのひとのイメージ
・自然の分布域外に
・人間が持ち込んだもの(意図的・非意図的とも)
・明治時代以降に導入された生物
都市から
ハクビシン
40
30
20
10
0
日本の「外来生物法」での定義
・国境を越えて
・人間が持ち込んだもの(意図的・非意図的とも)
・明治時代以降に導入された生物 ヨーロッパでは大航海時代以後,など
7
国ごとにいろんな区切り方がある
10
100
1000
10000
100000
Geographical distribution range (km)
県内
日本列島
アジア
世界
地理的な分布の広さ(東西の幅,km)
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/isp/pdf/Koike.pdf
8
2
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生物も自然に分布を広げるが
人間の持ち運びはケタが違う
6 0
自然の移住
5 0
4 0
3 0
生物の分布の大きな偏り
木本植物の地理分布(東西方向)
種数
冷帯
2 0
1 0
0
1 7 .7 8 2 7 9 4 1
100m
1km
10km
5 5 .1 2 6 6 6 1 7 1
1 7 7 .8 2 7 9 4 1
100km
5 6 1 .9 3 6 2 9 3 6
1 7 7 8 .2 7 9 4 1
5 6 2 2 .9 1 9 4 9 5
1 000km
1 7 7 8 2 .7 9 4 1
10 000km
温帯
地球のサイズ
1桁
貿易による移動(日本-アメリカ)
アメリカの東西の幅(温帯)
日本の東西の幅(温帯)
イギリスの東西の幅
チョウやトンボの移住
風による種子散布
鳥が食べて運ぶ種子散布
種子が地面に落ちる
4桁(種分化に必要)
マツ類
サボテン
熱帯
温帯
冷帯
9
ユーカリ,
メラロイカ,
etc.
地球全部が同じ生物相になって行く
Great Mixture
10
PALEOMAP Project http://www.scotese.com/earth.htm
進化・生物地理の視点から
地球の歴史と生物の地理分布
1. 地球の歴史を反映した生物
のパターンが消失
ゴンドワナ大陸
ジュラ紀
最終氷期
2. これからの種分化に必要な
隔離がうまく得られない
(長距離移動する外来種,近距離の
生息地分断)
白亜紀
•ミミズ(ヨーロッパとアメリカで違う)
•有袋類(オーストラリア)
•NZには有袋類もいない
現 代
11
12
3
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激しい被害の例 1
森林総研ホームページから
「寄生」
北アメリカ原産の
マツノザイセンチュウ
による松枯れ
外来生物による
生態系被害
北アメリカ産の線虫
マツタケが高級食材になった
森林総合研究所
昔の教科書
沼田眞編 図説植物生態学 1969年
13
激しい被害の例 2
そのなかで大きな
影響を与える種数 X 100%
あまり
入らないが,
ツボにはまると
被害甚大
14
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/isp/pdf/Koike.pdf
体の大きな動物による捕食
グループの外来種数
大形の肉食・
雑食動物
アライグマが両棲・爬虫類の固有種を食害する
>10%
食害された痕跡
アライグマ,大きなヘビ
大形・中形の
草食動物
>3%
中形の肉食・
雑食動物
サル,ヤギ,ネズミ,
大きな草食魚
撮影:金田正人
多くの魚類,鳥類
トカゲ,カエル,ザリガニ
小笠原のヤギ
小形の
草食動物
小形の肉食・
雑食動物
草食昆虫
草食カタツムリ
肉食昆虫,小エビ
肉食カタツムリ
三浦半島の
トウキョウサンショウウオ
絶滅危惧II類(VU)
撮影:金田正人
撮影(写真提供):
NPO法人カメネットワークジャパン
緑色植物
樹木,草本,シダ
デトリタス食動物
ミミズ
濾過食動物
フジツボ,シジミ貝 15
房総半島の
16
在来の淡水カメ類
4
2013/12/26
激しい被害の例 3
特殊なハビタットでの植物
アライグマの
集中捕獲期間
卵塊数
ヤマアカガエル
保全すべきハビタット
ランキング
800
700
600
500
400
300
200
100
0
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
年
外来生物対策
の重要性
評価を記入した
回答者数(74名中)
1.海洋島の植生
0.353
33
2.水生植物群集
0.337
43
3.河原・崩壊地の貧栄養砂礫地
0.327
48
(4.里山の二次草原)
0.306
52
5.貧栄養湿地
0.294
30
6.砂浜海岸
0.293
32
7.高山植生
0.279
27
8.塩性湿地
0.275
19
9.雑木林・都市林
0.266
42
10.極相林
0.256
29
11.低地岩場
0.249
18
12.海岸岩場
0.195
7
分布拡大
データ:金田
もとのフロラが特殊なハビタット ×人間の活動が活発18
17
極相林が外来植物に
注意すべき外来生物
陸続きになった
ことがない海洋の島
(海洋島)
アジア大陸
35
日本
小笠原諸島
ハワイ
20
寄生生物(マツノザイセンチュウ,病原体など)
→ 野生化しにくい(宿主との組み合わせ)
しかし野生化できるものは被害が大きい
体があるていど大きな動物(タイワンリスなど)
→ 体が大きいと被害が大きい傾向あり
ただし,あまり大きな種は人間がいると
野生化しにくい
フィリピン
マリアナ諸島
マーシャル諸島
5
深澤
ニューギニア
A アカギ(外来樹木)
N 在来種
‐10
19
植物
→ 簡単に野生化しやすいが
1種の被害はあまり大きくないことも多い
特殊なハビタットで甚大な被害
20
5
2013/12/26
1930‐1980年代
大型哺乳類 絶滅危惧
1900年代
1970年代
自然環境問題の歴史
1970年代
1990年代 1990年代 1990年代 2000年代
原生自然 宅地開発 化学物質 里山消失 絶滅
地球
の開発
富栄養化 (伝統的自然の価値) 危惧種 温暖化
(尾瀬)
外来
生物
2000年代
大型哺
乳類
増えす
ぎ
外来生物問題への
問題意識
利用
原生自然
里山地域
遷移
基本的なポリシー 人間の影響をなるべく残さない(「地図に残る仕事」の逆)
22
伝統的な自然文化を大切にする
21
社会の発達段階と
環境問題
生物多様性
低リスク受容
↓未来の日本?
<低成長・高リスク・中進国>
ひとり当たりGDP
ひとりあたりGDP
( 1990年 USD購 買力)
10000
オランダ
農 業
国際貿易
生物多様性の考え方
イギリス アメリカ アメリカ
工業 工業 新興国
サービス
工業化が完了した国
の環境問題
アメリカ
オランダ
新興国の環境問題
イギリス
イタリア
日本
1000
中国
インド
発展途上国の環境問題
100
1500
1600
旧ソ連
1700
1800
1900
2000
昔の意味
・とにかく生物の種類数が多い
外来種 ←種数が増えて
生物相が豊かになる
(かつてオーストラリアで
ヨーロッパの生物を
野生に放す事業もあった)
今の意味
・自然の望ましい姿を考えて,ふさわしい種がたくさんいた方が良い
→里山には里山らしい種
外来種 ←種数は増えるが
→原生自然にはそれにふさわしい種
ふさわしくない変化
2100
西暦
西 暦
国・地域ごとの格差
ひとり当たりGDPのばらつき
(ひとりあたりGDP)
(20ヵ国のGDP対数値のSD)
<発展途上国段階>
・薪,家畜飼料不足
・土壌浸食 生態系機能
高リスク受容
↓
<新興国段階>
・自然の開発
・化学物質,富栄養化
↓
<先進成熟国段階>
・絶滅危惧種
・外来生物問題
100000
0.4
0.35
0.3
0.25
0.2
0.15
0.1
A
0.05
0
1500
1600
1700
B
1800
西暦
西
1900
C
2000
2100
23
24
暦
6
2013/12/26
<遺伝子レベルの影響>
遺伝的なタイプのちがう
アオキの植栽
外来種の影響と問題意識
全てのレベルの多様性を守るべきだが...
遺伝子レベル
雑種形成
問題意識は弱い
在来種の絶滅
社会的コンセンサスあり 在来種の個体数減少
個体群レベル
群集レベル
種組成が変化
問題意識は弱い
生態系レベル
相観が変化(湿原が高木林へ)
社会的コンセンサスあり 食物網が変化,湖の水質が変化
25
<群集レベルの影響>
良くないこと,というコンセンサス
研究者: 論争→最近は成立?
市 民: ほとんどなし
大井・小石川植物園
26
関東地方は
ヤシ類の常在度が
高い森林になった
シュロが優占した林床
まだ絶滅した種はないが,
種組成や優占度が
変わってきている
コンフリクトの例
良くないこと,というコンセンサス
研究者: ほとんどなし
市 民: ほとんどなし
27
28
7
2013/12/26
多様性 vs. 生態系機能 の対立
「やっぱりかわいそう...」の対立
エバーグレーズ国立公園(フロリダ)
湿地にメラルーカ
(オーストラリア産樹木)が侵入
ベトナム
は導入中
Melaleuca quinquenervia
侵入後(密な森林)
もとの湿原(草原,ヌマスギ疎林) ・光合成速度などは速い
野生の生物もかわいそう
アライグマがかわいそう
これは魚
(CO2吸収,バイオマス生産)
・昔からの生物種が多い
・生物相は貧弱になる,自然が変わ
先進国 → 生物多様性を重視
29
発展途上国 → 生態系機能重視
昨日は家族が食べられた
明日は私が食べられる...
30
経済的なメリットと被害
過去の教訓
経済的なメリットと被害
特定外来生物
セイヨウオオマルハナバチ
http://www.city.akita.akita.jp/city
/in/zo/map/syoudoubutu/hakubis
hin.htm
ハクビシン
攪乱してしまう
・自然のハナバチ類
・自然の植物の送受粉
(模式図)
2000
はじめは利益だけ
後から被害が出る
被害は永遠に続く
未来
1950
平成
昭和
31
1900
日露戦争
植物ホルモン剤を使わなくてもトマトができる
毛皮のメリット
日清戦争
明治
1850
被 害
2050
32
8
2013/12/26
もとにもどせるか?
根絶事業に費やした労力
1時間
千円で
換算
根絶は可能か
植物の例
マメ科低木
ナガエツルノゲイトウ
キク科ヤグルマギク属
キク科ヤグルマギク属
クロモ(水草)
オオヒレアザミ
1億円
このグラフを見て
わかること
10×10 m2あたり
1千万円 10時間労働
1. 100×100 mに拡がる
前に根絶する
(予算規模は数十万
~百万円)
100万円
10万円
10×10 m2あたり
1時間労働
2. 10×10 km2まで拡がった
ら,1億円かけても根絶
できない
1万円
10x10
m
面積に比例した労力投入で根絶できるか?
10×10 m2あたり1時間労働
P: 取り除き作業後に,10×10
1メッシュに残存する確率
10×10 m2あたり10時間労働
m2の
根絶事業に費やした労力
xメッシュ作業して,根絶できる確率
根絶確率
10x10
m
100x100
m
1x1
km
10x10
km
根絶事業開始前の分布面積
10メッシュに1つ残存
100メッシュに1つ残存
1000メッシュに1つ残存
10000メッシュに1つ残存
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.0001
10x10
m
0.01
0.1
1
10
根絶事業開始前の面積 (km2)
100x100
m
1x1
km
カリフォルニアの例 34
Rejmanek & Pitcairn 2002
わかることは?
ニュージーランドの島での成功例
10×10
km
ドブネズミ ネコ
横須賀市
100.7km2
ヒツジ
ナンヨウネズミ
1.7×1.7 km
ネズミ類
毒えさの
一斉散布
ヤギ
ウシ
ハツカネズミ
ウサギ
ブタ
中型哺乳類
トラップ
偶蹄類
ライフル等
クマネズミ
フェレット
100
間接的な
根絶
10x10
km
比例した労力では根絶できない
35
大面積にはさらなる労力
10x10 km
面 積
1×1 km
0.001
1x1
km
根絶の実現可能性 -哺乳類-
(1-P)x
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
100x100
m
根絶事業開始前の分布面積
33
動物の体重
36
Clout and Russell 2006
9
2013/12/26
日本のプロジェクト評価の例
事業
分布域の
拡大速度
主な防除
手法
防除
効果
セイヨウオオマル
ハナバチ、北海道
オオクチバス、ブ
ルーギル、琵琶湖
極めて早い
20 km / year
早い
6 km / year
捕虫網捕獲
×
網漁業
○
マングース、
沖縄
中程度
1.7 km / year
トラップ
○
アライグマ、
北海道
中程度
1.7 km / year
トラップ
○
グリーンアノー
ル、母島
アルゼンチンア
リ、東京
遅い
0.6 km / year
極めて遅い
0.1 km / year
粘着トラップ
○
毒エサ
◎
在来生態系回復
×
近縁種に繁殖干渉?
○
固有種
○?モニタリング不足
固有種
(奄美はデータ有)
?
日本での法的な対策
北海道での在来生態系への
影響を要調査
分布拡大速度が遅ければ,より容易に制御できる
外来種密度が低下すれば生態系が回復する
ただし,根絶には至っていない
○
固有種
○
普通種
小池ほか(未発表)
37
38
外来生物法 (2005年6月から)
検疫システムの拡張
外来生物
(侵入阻止,侵入初期の根絶)
侵略的外来生物
• ヒトの病気
↓
• 農業など経済活動に有害な生物
↓
• 野外の生態系に有害な生物
(外来生物法,2005年より)
日本に導入済みか,
未導入(海外で甚大な被害)
特定外来生物 (政令)
•自然等への影響が大きい
要注意外来生物
(環境省のリスト)
•規制の実効性が低い
•情報不足の種
•注意喚起
39
•飼養の禁止
•放逐の禁止
•防除を実施
(原因者負担)
特定外来生物の同分類群の種
(日本に未導入)
未判定外来生物 (省令)
•特定外来生物と同属(同科)
•生態特性が類似
•被害を及ぼす恐れがある
•輸入する前に届け出
•6ヶ月以内に判定
これ以外に植物防疫,
動物防疫等
に関するものもある
40
国外からの導入のみに対応.小笠原などは都道府県の条例が必要
10
2013/12/26
「禁止」だけでなく,経済的なメカニズムでのリスク管理
検疫システムで使える道具
意図的導入
非意図的導入
未導入種や侵入初期の種に有効
困ったこと
(1) リスク評価
(2) 境界(国境や地域の境)での導入阻止
(3) 侵入初期の検知
←外来生物法では実装されず
分布を把握できない
detection
(4) 侵入初期の緊急対処 ←外来生物法では
emergency control
明示的に実装されず
(5) 根 絶
利 益
伝統的な自然の喪失
ヒトの健康被害
農林水産業の被害
根絶・駆除のための費用,etc. 販売収入,運送料,
楽しみ,etc.
運送業者,輸入者,ペット業者
園芸業界,趣味のひと,新しい
作物などを育てるひと
市民,伝統的な農業者や漁業者
政府 (対策に費用がかかる)
無責任な輸入が続く
外部経済の内部化
法律の仕組みが必要
受益者による
損害賠償・損失補償
41
本当にできるか?
もし損害賠償を求めるなら
•放逐者を特定できない
•有害かどうかは不確実
リスクをフィードバックする仕組みがない
42
なぜ「外部経済の内部化」ができていないのか
公害問題(化学物質)とは,原因物が自己増殖する点が違う.
制御不可能なものでの商売(意図的導入)に対する新発想の法律が必要.
時間スケールが法律の想定外
タイワンリス
逃がしてしまった動物園
1. 時間的・空間的な問題:
今年神奈川県で放した生物が,100年後に青森県で大きな被害を
起こし始める.100年後の青森県民は損害賠償を請求できるか?
アライグマ
かつての飼育者,ペットショップ,輸入業者
2. 犯人を特定できない:
ごく少量の野外への放出でも被害をもたらす(公害では大量に放
出).ゴミの不法投棄より難しそう.
ハクビシン
戦前の養殖業者
3. 被害額の合意:
自然の改変に対する価値を上手く評価できていない(公害は主に
人間の健康影響)
両極端: 根絶は巨額
→将来の分布を予測して事前に賠償金を取り立てておく? 賠償に
対する保険?
→遺伝子や個体群モデルにより,いつ・どこで放されたか推定
→他の自然の保全の問題と同じ.
(社会全体でマイナスになる事業を抑止するメカニズムのひとつ)
43
あきらめれば無料
4. 被害意識があまりない:
農業被害でも,野外の外来生物による被害に対して人災(人間が
引き起こした問題)だと思う意識が弱い.天災と誤解されている.44
11
2013/12/26
外来生物分布拡大予報
45
外来生物対策は,分布情報から
1. 潜在的に分布可能なリスクのある地域を予測
2. 防除対策を立てる
(根絶事業・防除の有効性を知るのにも必要)
3. 自主検疫の対象の場所がわかる
(どこから持ち出すとあぶないか,持ち込むと
危ないか)
4. 自分の町に近づいているのか知ることで
市民が興味を持ち,自分の問題として理解で
きる
外来生物 → 分布域が本来のところでないもの
分布を知るのは全ての対策の原点
2008年より
 分布予測
 調査方法・予測方法
メリット 1
http://vege1.kan.ynu.ac.jp/forecast/
46
対策を取るべき場所がわかる
寒すぎる
生息適地
飛び火
これまでの分布域
優先的に
根絶する
暑すぎる
47
48
12
2013/12/26
メリット 2
未分布地域に,外来生物の放逐・放流・植え
だし,をすることがなくなるだろう
メリット 3
ふつうの市民が日本の地図の中で分布拡大
中の外来生物のイメージをもつようになる
非常に重要!
拡大中の分布域
拡大中の分布域
自分が住む町
自主検疫
分布域内の町
未分布域の町
今年まで
絶対ダメ
ホーホケキョ
×
被害
来年から
キョロキョコキーヤキーヤ
奥山放獣
不思議な
常緑樹
こちらに放したら大変なことになる
捕獲
小さな貝がたくさん
見慣れてしまえば外来生物に対す
る緊張感はない.普通の野生生物
と同じように扱われることが多い.
49
犬のような鹿
いまの自然を見ることができるのは今年かぎり...
50
アオナガタマムシ(東アジア産)の例
スペリオル湖
外来生物の分布を調べる
ヒューロン湖
ミシガン湖
トネリコ類(White Ash)
を枯死させる
アメリカ ミシガン州
皮付木の移動禁止
I→II
II→III
III→それ以外
最大の難関
County(郡,日本の市区
町村くらい)ごとに設定
51
52
13
2013/12/26
2006年
平成18年度自然環境
保全基礎調査
種の多様性調査(アラ
イグマ生息情報収集)
業務報告書
個別の調査を引用
それ以外は市区町村に
直接アンケート
GBIF
アライグマの分布
2013年12月13日現在
2011年
福岡県
交通事故
2013年
島根県
捕獲
53
54
在来植物の例
ミツバツチグリ (里山の指標種)
潜在的な分布可能域を調べる
GBIF(Global Biodiversity Information Facility) 世界的な標本データベース
どんなところに多いか?
55
56
14
2013/12/26
潜在的な分布域の予測
原産地(ニュー
ジーランド)の環
境から予測した
分布可能域
ニュージーランド原産だ
が,思っていたより南に
も分布可能
調査努力量がわかりにく
いGBIFデータはEnvelope
として利用するのが簡単
かも
35
Average maximum seawater temperature (℃)
コモチカワツボ
LOOほか(2007)
年最高海水温
潜在的な分布可能域を調べる
原産地の情報からでは過小評価(未経験地)
世界の野生化したところの情報が有益
Sea of Azov
Black Sea
Mediterranean Sea
30
Nansei
25
20
15
EHI
10
-5
0
5
10
15
20
25
Average minimum seawater temperature (℃)
年最低海水温
ただし,アメリカでも分布拡大中
なのでもっと広い分布域を持つ
可能性もある.
侵入先(アメリカ)
の環境から予測し
た分布可能域
Nansei Islands
Honshu, Shikoku & kyusyu Islands
Hokkaido Island
57
チチュウカイミドリガニ
58
分布拡大のシナリオ
1.外航船による海外からの継続的な新規導入
2.内航船による港間の人為移動
分布拡大予報
地中海地域から
導入経路に心当たりがあるとき
59
3.自然の分布拡大
チチュウカイミドリガニ
60
15
2013/12/26
自然の分布拡大
で移住しない確率
内航船で移住
しない確率
外航船で移住
しない確率
移住確率
p = d {1‐ (1 ‐ exp(ax)) (1 – (1 ‐ exp(by))) (1 – (1 ‐ exp(cz)))}
内航船で移住
する確率
外航船で移住
する確率
1
5年間の移住(侵入)確率
5年間の移住(侵入)確率
自然の分布拡大
による移住確率
少なくともひとつの経路による移住確率
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
0
50
50000
100
150
200
250
100000 150000 200000 250000
すでにチチュウカイミドリガニが
いるセグメントからの距離
(km)
0
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
00
50
000 100
000 150000000
150 000 200000000
200 000
50000000
100000000
x : 再近隣の既生息地からの海上距離 (m) → 自然の分布拡大
セグメントの間の移動物資
(1000 ton year-1)
 個体群からの距離(自
然の分布拡大)が最も
効いていた
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
00
50
50000
100 150000
150 200
100000
200000 250
250000
すでにチチュウカイミドリガニが
いるセグメントからの距離
(km)
 内航船はその
次に効いてい
た
5年間の移住(侵入)確率
どの経路でも移住しない確率
5年間の移住(侵入)確率
少なくともどれかひとつの経路で運ばれれば良い
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
00
50
000 100
150 000200000000
50000000
100000000
000 150000000
200 000
セグメントの間の移動物資
(1000 トン /年)
外航船の効果は検出できなかった
→ 地中海地域から一回だけ日本に侵入
y :内航船貨物のトン数 → 内航船による二次的な運搬
z :地中海からの外航船貨物のトン数 → 海外からの侵入
61
62
シミュレーションでの分布拡大予測
放置シナリオ: 自然の分布拡大+内航船による移動
1985
2055
2005
2105
2015
2205
2030
生息確率 (%)
100
80
60
40
20
0
63
検疫の効果
64
16
2013/12/26
シミュレーションでの分布拡大予測
内航船による移動を制限: 自然の分布拡大のみ
対策は可能か?
(詳しくないですが...)
シーチェスト
船体につく生物群集
1985
2005
2055
2015
2105
2030
2205
広島大学の
ホームページ
チチュウカイミドリガニの子供や親が
便乗して運ばれる
このような装置で対策できる?
65
66
浮游幼生で急速に拡がることはないのかも → 原産地でも遺伝的距離が大きい
検疫で船体付着個体数を減少させる場合を想定
100
90
100
80
参考:
今から700年前は
鎌倉時代
70
60
50
40
内航船による
Without
coastal
shipping
運搬を制限
30
20
With
coastal
対策なし
shipping
10
0
2000
90
侵入した海岸長
(九州以北の日本の海岸を100%として)
チチュウカイミドリガニが
% infested coastal length
生息する海岸線(日本全体の%)
700年
自然の分布拡大は極めて遅い
 1.7 km /年 オーストラリアの実際の値 (Thresher et al. 2003)  3.5 km /年 今回の予測
生息
確率(%)
100
80
60
40
20
0
80
70
60
50
40
検疫せず
検疫で混入個体数を1/2に減少
検疫で混入個体数を1/10に減少
検疫で混入個体数を1/100に減少
完全遮断
30
20
10
2500
3000
Year
西暦
(年)
内航船での運搬を止めると,本来の自然を700年間保てる
67
0
2000
2500
3000
3500
西暦(年)
船体の付着個体数を1/10に減少させることができれば効果がはっきり現れる
68
17
2013/12/26
8000
検疫の経済効果
900
コストの想定
 同じ作業をn回くり返
す状況を想定
 1回で1/x
 n回で1/xnにする
この コストはn倍
6000
5000
4000
3000
2000
700
効果/コスト
(相対値)
検疫効果
(海岸km×年)
最適な検疫努力がある
800
7000
600
500
400
300
200
100
1000
0
コストなし
無限大のコスト
0
検疫努力
69
検疫努力量
 「検疫効果/相対コスト」では最適値が現れる
 この場合は付着個体を1/100に減らすレベルが最適(完全除去
70
はコストパフォーマンスが悪い)
梁(卒業生)
タイワンリス(クリハラリス)の自然の分布
環境と移住を同時に推定したとき
71
Wikipedia
72
18
2013/12/26
梁(卒業生)
関東地方の野生化個体群
タイワンリスの日本での野生化
南ヨーロッパでも野生化
図 2011年現在タのイワンリスの分布地域
神奈川県南東部、東京都伊豆大島、あきる野市、
静岡県東伊豆町、浜松市、岐阜県金華山、大阪市、
和歌山市、和歌山県友ヶ島、姫路市、大分県高島、
長崎県壱岐、福江島、熊本県宇土半島
(田村,2003)(安田,2010)(あきる野市,2011)
主に動物園からの野生化が多い
太平洋ベルト地帯の都市に近い海岸
Tamuraほか
伊豆半島と三浦半島に野生化
現在は分布拡大中
73
タイワンリスが生息できる地域
生息適地 = 気温が高い × 森林
分布データの解析結果
神奈川
出現確率=exp(‐0.00073 在メッシュからの距離m) ×
1/(1+exp(‐ (9.860 気温℃ + 8.647)))×
1/(1+exp(‐ (42.98森林率% -0.03851住宅率% -0.43159)))
内陸は
寒すぎる
74
修士学生: 梁さん
市街地には
入れない
伊豆半島
出現確率=exp(‐0.00009.2 野生化地点からの距離m) ×
1/(1+exp(‐ (9.860 気温℃ + 8.647)))
冬の寒さが厳しいとタイワンリスは生息できない
森林率が多いと生息しやすい
住宅街・都市が多いと生息しにくい
75
現在の分布
76
19
2013/12/26
タイワンリスの分布拡大予測
初期状態
18年後
36年後
54年後
導入経路が不明のとき
過去の分布拡大パターンから統計的に予測
72年後
90年後
・関東南部では100年後に飽和する
108年後
126年後
・房総半島には行けない77
78
用意するデータ
侵入した年を入れたファイル. 未侵入の場合は「未分布」
2009年H1N1
新型インフルエンザ
都道府県名$
 緊急に情報が必要
 病原体の運ばれ方がわからない
→詳細なモデルを構築できない
→これまで知られている外来生物の分布拡大パ
ターンを適用(森本さんとの共同)
79
アワダチソウ カキクダアザ ミナミキイロア オンシツコナ グラジオラス ミカンキイロ
グンバイ
ミウマ
ザミウマ
ジラミ入力中 アザミウマ
アザミウマ
兵庫県
2000
1980
1984
未分布
1986
奈良県
2003
1982
1984
未分布
1986
1995
1994
大阪府
2003
1983
1984
未分布
未分布
1994
静岡県
2004
1988
1980
未分布
1986
1992
徳島県
2004
1981
1986
1976
未分布
未分布
京都府
2004
1984
1985
未分布
1986
1995
滋賀県
2004
1984
1986
未分布
未分布
未分布
香川県
2005
1980
1981
未分布
1989
1995
特殊報:新しい病害虫発見などのときに発表する情報 (県は報告義務がある)
日本植物防疫協会のデータベースJPP‐NETがある
1976年まで遡ってデータベース化
利用料金は高価.整理に人力が必要
80
県によって熱心でないところも → 結果をフィードバックすれば未来につながる
20
2013/12/26
統計的な分布拡大予測(侵入順序解析)
同じプログラムを2回使う
1. 分布拡大パターンを比較し,種をグループ化する
種1
A県とB県の
どちらが先か, A県
B県
の星取り表
C県
種2
A県
B県
C県
A県
1
2
2
B県
C県
A県
1
2
0
1
2
0
B県
0
1
0
2
2
1
C県
0
0
1
類似度計算
2. 星取り表が似ている種群で,標準的な分布拡大パターンを作る
種グループ
平均の星取り表
A県
B県
A県
1
1.8
C県
2
B県
0.2
1
1.5
C県
0
0.5
1
座標付け
A県
B県 C県
固有ベクトルによるスコア
計算は「みんなでGIS」
http://www13.ocn.ne.jp/~minnagis/
既分布地域の
初発見年
3. 種ごとに絶対時間を割り当てる
D県
B県
A県
C県
E県
未分布地域
侵入順は同一グループ
の種では同じ予測になる
固有ベクトルによるスコア
81
82
危険な外来生物
セアカゴケグモの分布拡大予測
色の濃いところで
早くから侵入する
83
都道府
県
福島
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
山梨
長野
静岡
岐阜
愛知
2013年3月現在
未分布
2013年1月23日
未分布
2005年8月16日
未分布
未分布
未分布
2012年9月20日
未分布
未分布
未分布
2008年6月9日
2005年8月19日
発見時期
の予測
2020年
2019年
2021年
2017年
2017年
2012年
2014年
2010年
2021年
2020年
2009年
2010年
2006年
(予測
±標準
偏差)
2014年 ~ 2026年
2013年 ~ 2025年
予測の
幅
2015年 ~ 2027年
2011年 ~ 2023年
2011年 ~ 2023年
2006年 ~ 2018年
2008年 ~ 2020年
2004年 ~ 2016年
2015年 ~ 2027年
2014年 ~ 2026年
2003年 ~ 2015年
2004年 ~ 2016年
1999年 ~ 2012年
84
21
2013/12/26
分布を調べることの難しさ
まとめ
 ひとりで詳しく分布を調べることができるのは,
1つの市~数市くらいまで.空間スケールは市区町村
 全国的に調べるには,地元の専門家の助けが
不可欠 (政府が予算を確保しても,実際に調べるのは地元
1. 外来生物対策では,鮮度の高い分
布情報が生命線
2. 分布拡大を予測する方法はめどが
ついた
3. 分布情報の継続的な把握が課題
の専門家)
 行政担当者は管理責任・風評(公表したことで
社会を騒がせる責任)を恐れる
・自然の管理が難しいことを知らない担当者も(行政の無謬性)
・情報公開スローガンでなく仕組みが必要
 市民参加で広域・継続的・正確な調査を行うに
は,とりまとめ・励ましのための専従者が必要
(市民も忙しい.「仕事外のライフワーク」も難しくなってきている)
市区町村レベルの人材育成が望ましい
85
市区町村の庁内に
専門家が
存在しない問題
総合的な
生態系管理
の担当者
が必要
(人間社会のセンス
も必要だが)
市区町村,県,国
1. さまざまな担当課
に分散している
2. 担当課は生態系
が専門外
生活環境,化学物質,
自然環境など
公園,空から見た地域内の
「緑地」の空間配置
人間が見た景観,交通,建物
環境全般
外来生物の地理情報とGBIF
 行政関係
市区町村,県,国
都市計画
(建築, 造園)
 研究者
 地元の専門家
砂浜の浸食・養浜
海浜生態系
河川の流量・水位
河川生態系
下水路の流量・水位・生態系
(魚類やエビ類,水草も)
耕地・農業用水路,農業生産,
耕地と周辺の生態系
養殖,漁法,流通
漁場の生態系,資源管理
86
海・川・
下水
(土木)
農林業
87
(農学)
水産業
発見
GBIF
データベース
公的なNGO
GBIFの信頼性担保システム
 社会の
ひとたち
自動公開
ホームページ
88
22