『ルーヴル – DNP ミュージアムラボ』第 10 回展 「古代ギリシアの名作

2013 年 1 月 30 日
ルーヴル美術館
大日本印刷株式会社
『ルーヴル – DNP ミュージアムラボ』第 10 回展
「古代ギリシアの名作をめぐって ―― 人 神々 英雄」開催と第 3 期への展開について
ルーヴル美術館と大日本印刷株式会社(以下:DNP)は、新しい美術鑑賞を探求する共同プロジェクト
「ルーヴル – DNP ミュージアムラボ」第2期の最終展示として、西洋文化・美術の礎のひとつである古代
ギリシア美術に焦点をあてた第10回展を開催します。同展は、ルーヴル美術館が世界に誇る古代ギリシ
ア陶器の傑作《アンタイオスのクラテル》をはじめ、4点の所蔵作品を展示するほか、DNPが独自に開発
した多様な鑑賞システムによって、楽しみながら古代ギリシア美術のキーポイントを理解できる体験型の
展覧会です。
なお、本展で開発した鑑賞システムのうち3点が、2014年6月、ミロのヴィーナスの展示室を含む、パリ・ル
ーヴル美術館の古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門の3つの展示室に設置される予定です。
また、ルーヴル美術館とDNPは、第1期・第2期の約7年にわたって、映像やITを活用した新しい美術鑑
賞方法を開発してきた同プロジェクトの活動が、美術作品とのより豊かな“出会い”に有効であると判断し、
新たな方針でプロジェクトを継続することで合意しました。
■ 展示作品
展示 作 品の《アンタイオスのクラテル》は、ルーヴル美
術館の代表作品のひとつで、古代ギリシア美術の質の
高さを示すギリシア陶器の名品です。本作品に署名を
残したエウフロニオスは、「赤像式」という陶器技法を駆
使した、ギリシア陶器の最も革新的な作家の一人です。
主要な面に描かれているのは、ギリシア神話で最も有
名な英雄ヘラクレスが巨 人 アンタイオスを退治 する冒
険 譚 の一 場 面 です。簡 素 で力 強 い空 間 構 成 や躍 動
的な人体表現など、エウフロニオスの芸術性や巧みさ
が冴える傑作と言われています。この極めて美しい壷
は、古 代ギリシア時 代に「シュンポジオン」と呼ばれた
宴会の中で、葡 萄 酒を水で希 釈するために使 われた
実用品でもありました。
展示室では他にも、《赤像式の杯》、《休息するヘラク
レス》、《ディオニュソスの仮面》の3点が展示されます。
《赤像式萼形クラテル》、通称《アンタイオスのクラテル》
陶器画家エウフロニオスによる署名、陶工エウクシテオス作とい
われる/アテナイ、紀元前515‐紀元前510年頃/粘土/高さ44.8
cm、直 径 55 cm/チェルヴェーテリ(イタリア) 出 土 /カンパー
ナ・コレクション、1861年 /古 代 ギリシア・エトルリア・ローマ美 術
部門/G103(Cp748)/パリ、ルーヴル美術館
© Photo DNP / Philippe Fuzeau
左.赤像式の杯 陶工エウフロニオスによる署名、陶器画家オネシモス作といわれる/アテナイ、紀元前500‐紀元前490年頃/
粘土/高さ9.6cm、幅49cm、直径39.9cm/チェルヴェーテリ(イタリア)出土/1871年取得/古代ギリシア・エトルリア・ローマ
美術部門/G104(MNB166)
中.休息するヘラクレス 彫刻家リュシッポスが紀元前4世紀末に作ったブロンズ像(現存せず)の模刻/ギリシア(?)、紀元前3
世紀‐紀元後1世紀/ブロンズ/高さ42.5cm/フォリーニョ(イタリア)出土/1870年取得/古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術
部門/Br652
右.ディオニュソスの仮面 ボイオティア、紀元前450‐紀元前400年頃/粘土/高さ30cm/ボイオティア(ギリシア) 出土/1895年取
得/古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門/CA640
パリ、ルーヴル美術館
© Photo DNP / Philippe Fuzeau
■第10回展の概要と主な鑑賞システム
観覧者は、まず会場入口に設置された映像地図で、古代
ギリシアの地理的な広がりや、その芸術の変遷について概
観することができます。その後 、展 示 室に入って作 品を鑑
賞するとともに、作品《アンタイオスのクラテル》の前に設置
された鑑賞システム【アンタイオスのクラテル、ギリシア陶器
の傑作】によって、同作品の鑑賞の要点や、ギリシア美術・
文明の主 要な特徴を学ぶことができます。こうしたギリシア
美術・文明に関するキーポイントは、会場各所に設置された
【展示室】
他の鑑賞システムからも学ぶことができます。また、他の3点
の展示作品にも同様の特徴をみることができます。例えば、《休息するヘラクレス》には“人体表現”の規
範が見られ、《赤像式の杯》に描かれた神々や英雄は“ギリシアの神々の識別”というテーマに沿ってお
り、《ディオニュソスの仮面》に表された葡萄酒の神ディオニュソス信仰に結びつく“シュンポジオン”の儀
式では、人々と神々の密接な関係性が表われています。
● 鑑賞システム【古代ギリシア世界】
古代ギリシア世界は千年を超える歴史をもち、現代のギリシ
アをはるかに越える広い地域に広がり、その影響下で芸術
が大きく発展、革新をとげてきました。鑑賞システム【古代ギ
鑑賞システム【古代ギリシア世界】
リシア世界】では、ルーヴル美術館所蔵の名品とともに古代ギリシア世界の変遷を概観できます。このシ
ステムは、古代ギリシア美術鑑賞に必要な基礎知識の紹介を目的とし、パリのルーヴル美術館展示室
に設置される予定です。
● 鑑賞システム【ギリシアの神々や英雄を見分ける】
古代 ギリシア人は多 神 教 で、さまざまな儀 式や祭 典を執 り
行い、多くの神々や英雄を祀りました。この神々や英雄たち
は、それぞれにまつわる物語や、役割を示す象徴(アトリビ
ュート)、装身具、衣服や身体の特徴によって見分けること
ができます。《アンタイオスのクラテル》にも、ヘラクレスを表
すライオンの毛皮や棍棒などのアトリビュートが描きこまれ、
何の物語かを明示しています。この鑑賞システムでは、アフ
鑑賞システム
ロディーテやアポロンなど、おなじみの神々の識別の方法を
【ギリシアの神々や英雄を見分ける】
学ぶことができます。本システムは、ルーヴル美術館のミロ
のヴィーナスのギャラリーに設置される予定で、年間600万
人におよぶ来館者に対応して、作品画像をタッチするだけで解説情報にアクセスできるようにするなど、
操作のしやすさに配慮しています。
● 鑑賞システム【シュンポジオンへようこそ】
宴会 「シュンポジオン」は単 なる社 交 の場にとどまらず、社
会的 ・宗 教 的にも重 要 な役 割を担 うものでした。宴の際 に
は、葡萄酒と演劇の神であるディオニュソスの像に見守られ
る中、人々は寝台に身を横たえ、葡萄酒を酌み交わしなが
ら音楽、詩、舞踏、遊戯を嗜み、政治や哲学を語ったと言
われ、その様子は多くの陶器に生き生きと描かれています。
本システムでは、陶器画に描かれた人々によって繰り広げ
られる、賑やかな音楽の流れるシュンポジオンの様子を、フ
ロントプロジェクションスクリーンを3面連結した映像で体験
できます。
鑑賞システム【シュンポジオンへようこそ】
● 鑑賞システム【男性の裸像 完璧を求めて】
古代ギリシアにおいて人物像は、芸術家が好んで選んだテ
ーマで、解剖学、均衡、プロポーションに関する絶え間ない
研究が行われていました。本展では、《アンタイオスのクラテ
ル》、《赤像式の杯》における絵画での人体表現と、古代ギ
リシアを代表する彫刻家リュシッポス原作の《休息するヘラ
クレス》における彫刻での人体表現を紹介します。リュシッポ
スは、均衡に基づく美の規範を打ち立てた、人体表現の歴
鑑賞システム【男性の裸像 完璧を求めて】
史に欠かすことのできない芸術家で、今回はリュシッポスの原作に基づいて作られた希少なブロンズ製
の模刻を展示します。また、鑑賞システム【男性の裸像 完璧を求めて】では、観覧者は、自らがとるポー
ズをリアルタイムに反映するCG(コンピュータグラフィックス)と、ギリシアの各時代を代表する彫刻作品の
画像を比較しながら、古代ギリシアの人体表現の推移を理解することができます。
■「ルーヴル – DNP ミュージアムラボ」の第3期への展開について
ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボは、美術館の来館者と美術作品とをつなぐアプローチ手法の革新を
目的として、2006 年 10 月に活動を開始しました。活動の中心となる東京・五反田の体験スペースでは、
ルーヴル美術館の所蔵作品を各回 1 点~数点展示するとともに、映像や IT を活用した鑑賞システムを
通じて、美術作品と鑑賞者の“出会い”を豊かに広げるユニークな展覧会を開催しています。
2010 年 10 月に開始した第 2 期の活動では、同ミュージアムラボで運用したシステムを順次パリのルーヴ
ル美術館に導入しています。これまでに、第 7 回展と第 8 回展で開発した 4 種の鑑賞システムがルーヴ
ル美術館内に設置され、稼動しています。さらに 2013 年 6 月には第 9 回展で開発した 2 種の鑑賞シス
テムが絵画部門に設置される予定です。
第10回展をもって第2期の満了を迎えるにあたり、ルーヴル美術館とDNPは、第1期、第2期の取り組み
を通じ、映像やITを活用した新しい美術鑑賞が作品とのより豊かな出会いに有効であるとの確証を得た
ことから、プロジェクト第3期を推進することで合意しました。第3期は、第2期で実践してきた学校の美術
の授業を対象としたデジタル技術を活かした鑑賞ワークショップの取り組みを発展させ、五反田での展
覧会と連動させながら、美術館という場所にとどまらない、人と美術の新しい関係性を提案するべく活動
の幅を広げていきます。第3期は、2014年から3年間の予定で推進します。
■開催概要 「古代ギリシアの名作をめぐって ―― 人 神々 英雄」
主催
: ルーヴル美術館、大日本印刷
協力
: 日本航空
学術担当 : ソフィー・マルモア [ルーヴル美術館研究員]
会場
: ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボ(東京都品川区西五反田 3-5-20 DNP 五反田ビル 1F)
会期
: 2013 年 2 月 1 日(金)~9 月 1 日(日)
開館時間 : 金:18:00~21:00、土・日:10:00~18:00
休館日
: 金曜日が祝日の場合、保守点検日、展示替え期間、年末年始
申込・問い合わせ : 観覧には予約が必要です(観覧は無料)
<ウェブサイト> http://museumlab.jp
<お電話> ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボ カスタマーセンター(03-5435-0880)
[受付時間]月~木 11:00~17:00/金 11:00~21:00/土・日 9:00~18:00
(月~金の祝日、年末年始は休み)
■報道関係者からのお問い合わせ先
大日本印刷 広報室
Tel:03-5225-8220:Fax:03-5225-8239
ルーヴル美術館 広報部
Marion Benaiteau:[email protected]