フランス ボルドー第2大学 Laboratoire de genetique humaine(`07)

自主研究レポート
渋谷倫太郎(0600161321)
<研修先> Laboratoire de genetique humaine, Pr. Benoit Arveiler,
Universite Bordeaux2, (France)
<期間>6 月 20 日∼8月30日
今回の自主研究の概要と感想、そして海外での生活に関して自分なりに感じたことにつ
いて述べます。これから海外(特に非英語圏)での自主研究を希望される方の参考になれ
ばと思います。
<研修先の決定>
大学入学当初より自主研究期間には海外に行こうと決めていたこともあり、1月下旬か
ら武田先生に何度も相談させていただきました。行き先として様々な国があり、はじめは
非常に迷いました。(アメリカ、イタリア、スイス、ドイツ、フランスなどあり、そのうち
いくつかの研究室の秘書の方々と連絡をとってみたのですが、やはり 3 月あたりになると
安い寮などは満室になるようで上手くいかず、早い段階から計画しておかないと厳しいな
と感じました。)結局、第二外国語でフランス語をとっていたこともあり、興味があったの
でゲノム疫学の松田文彦先生の紹介でボルドー第二大学へ行くことに決めました。
語学面での不安、そして何より実験経験がほとんどなかったために、「研修するといって
も何ができるんだろう?こんな初心者が海外に行って恥をかくんじゃないか?」といった
不安は大いにありましたが、松田先生から「知識云々よりも様々なバックグラウンドを持
った人達とのコミュニケーションのとり方をきちんと見て学んで来なさい。」と言っていた
だき、それを目標にフランス行きに挑戦してみることにしました。ちょうどボルドー大学
医学部の Vincent Dousset 先生がこられていたので実際にお会いして受け入れをお願いし
ました。ボルドー大学からこちらの自主研究期間に医学生が来て神経内科で研修する予定
だったので、自分と「交換留学」のようなかたちをとることになりました。
<渡仏準備>
さて、いざフランスに行くぞ、と決まったところで海外旅行の経験も一度(しかもアジ
ア)しかなかったため、何をしていいのやら問題は山積でした。まずボルドー大学の留学
生受け入れを担当しておられる方と連絡をとって、書類を書いてフランスに郵送し(自分
は正式な留学生ではないので実際は特に必要なかったのですが…)、交換留学で来るフラン
ス人と連絡をとりつつお互いの情報を交換し合いました。何より困ったのは宿舎選びでし
たが、最終的に知り合いにアパートメントホテル(キッチンつきのホテルで一泊5000
円程度します)を探してもらいました。なにぶん正式な手続きをとっていない分、大学に
は宿舎の斡旋などはしてもらえず、個人のつてなどに頼るしかありませんでした。滞在先
の検索にしろ、先方とのやりとりにしろ割と時間がかかるので早めに準備しておく必要を
強く感じました。
次に勉強面での準備ですが、2月∼3月まで同級生の川口君と一緒に武田先生の教室に
お世話になり、分子生物学の基本手技を教わりました。自分の場合はかなり短期間でした
が、やはり外国で一から教わることを考えると少しでも早めから自分のペースである程度
の手技は行えるようになっている必要があると思います。それ以外は何もしませんでした。
語学面では英語は TOEFL を二年生のときに受けたり、語学学校に通ったりしていたの
で日常のやりとりには困らない状態でした。またフランス語の方は一年、二年のときに大
学で8時間コースと6時間コース(半期のみ)を受けたり、会話学校に通ったりして、必
要最低限はまぁしゃべれるかな?と思える程度でした。
<海外での生活>
研修先がボルドー(フランス南西部、パリより TGV で3時間)であったため、宿舎を探
してもらった方に空港まで来てもらい、そしてパリ一泊の後ボルドーへ向かいました。そ
して生活に必要な知識をいろいろ教えてもらいました。海外旅行の経験がないと本当に何
もできないものだと自分がいかに無力か痛感しました。パリならまだしも、ボルドーで英
語はあまり通じない(というかフランス人が英語を話してくれても英語には聞こえない)
ので、言葉の面でも「生の」フランス語(日本にいるフランス人が話してくれる「きれい
な」フランス語とはかなり異なる)にはじめの一ヶ月は耳がまったくついていかず大変苦
労しました。そんな状態で友達も研究室以外にはできるはずもなく、7月下旬まではかな
り孤独な生活を送りました。
肝心の研修先の内容ですが、はじめの2週間は午前中は小児科にお世話になり、午後は
Arveiller 先生のラボに通うというスケジュ‐ルでしたが、フランス語での小児科の外来を
見学するのはあまりにタフであったため、Dousset 先生にお願いしてその後2週間は
Dousset 先生のもとで午前は医学生と共に CT・MRI を見学し、午後はラボに通いました。
そして七月下旬からはほぼラボにだけ通い、Pr.Arveiler の教室で院生の方に PCR など基
本 的 な 手 技 を 任 せ て も ら っ て 実 験 の お 手 伝 い を さ せ て も ら っ た り 、 sequencer や
DNAextracter などの機械の使い方の説明を受けたりしていました。
病院を回るのも非常に学ぶことや感じることが多かったのですが、やはり現場の方々は
みなフランス人らしからず多忙であったため、じっくり言いたいことを表現できる時間と
フランス語力が無く、また人とのコミュニケーションを目標にしていたので、最終的には
ラボにばかり行くことになりました。ラボではほんとうに「手伝い」といった感じでした
が、むしろその分院生の方と一対一で会話することができたのでフランス語も8月になる
ころにはかなり進歩しました。
(とはいえポリクリで行くためにはまだまだで、実際かなり
のフランス語力がいると思います)
このようなスケジュールで八月に入り、フランス人が続々とバカンスに入る中、ラボ自
体もほぼ閉まっているような状態になったので、自分も旅行することにしました。とりあ
えずパリへ行き、ユースホステルを泊まり歩きました。英語が通じることもあり、また世
界中から様々な人が集まっているので、ボルドーに一人とどまっていては決して経験でき
ないような様々な出会いがあり、自主研究期間も後半になってやっと楽しく日々を送るこ
とができるようになりました。そして向こうで行動を共にして、現在も連絡をとりあえる
友人ができたことも、何よりの喜びです。
<最後に>
日本では知らず知らず周りのお世話になって日々過ごしていたため、どこかで甘えがで
てしまうことがあったり、多少楽観的になるところがあったりしました。しかしたった 3
ヶ月弱のこの自主研究の期間に日本を離れて一人で生活できたことで、単に言葉の壁以上
に(これもやはり非常に大切ですが)
、中途半端なところでひかず、あつかましく生きてい
ないとやっていけないということ強く感じました。そして文化的にも、年齢的にも大きく
離れた方々と接するなかで、いちいち物怖じすることなくコミュニケーションをはかって
いくことができるようになったのではないかと思います。
この機会を提供していただいた武田先生、、松田文彦先生、武田研のキョウさん、村川さ
ん、そしてボルドー大学の先生方には本当に感謝しています。
フランスでの自主研究を考えている方がいらしたら何でもご質問くださればと思います。