アプト式鉄道と 鉄道の歴史を体感する

アプト式鉄道と
鉄道の歴史を体感する
2009. 7 月公開
(イメージ)
大井川鐵道の SL は千頭駅が終点。駅には、SL の終点駅らしく、歴史ある転車台や SL 資
料館があります。その先は、小さな列車に乗り換えて、ギザギザのレールと歯車を噛み合わ
せて急坂を登るアプト式鉄道を体験する、南アルプスあぷとラインの旅の始まり。ここでは、
アプト式鉄道や転車台など、鉄道テクノロジーのいくつかについて紹介していきます。
急坂を登る技術を見る
アプト式鉄道
普通の鉄道は、レールと車輪の摩擦を利用して進
みますが、かなりの急勾配になるとそのままでは
レールと車輪の摩擦が勾配に勝てなくなり、滑っ
て登り降りができなくなるため、ラックレールと
いうギザギザの歯形レールと機関車に付いている
歯車を噛み合わせて登り降りするように考案され
た方式が利用されます。ラックレールを使う方法
は、スイスをはじめ、世界の山岳鉄道で利用され
ており、大井川鐵道で使われているアプト式はそ
のひとつ。歯形の違いによって、他にもいくつか
の方式があります。アプト式を採用している区間
(イメージ)
アプト専用機関車
列車はアプトいちしろ駅に着くと、歯車の付いた
は、アプトいちしろ∼長島ダム間で、水平距離
1,000m あたりの高低差が 90m にもおよぶ鉄道
としてはかなりの急勾配を登ります。
専用電気機関車を今まで押し上げてきたディーゼ
ル機関車の千頭側に連結して、急坂を押し上げて
いきます。ディーゼル機関車は、常に坂の一番谷
側の位置となる千頭側に連結しているので、登り
坂では機関車は下から押し上げますが、運転士は
視界が十分開ける先頭の制御車に乗り操作します。
下り坂では、先頭車となる機関車に運転士が乗り
操作します。アプト式区間だけは電化されている
ので、アプト専用の電気機関車を、ディーゼル機
関車のさらに谷側に連結して坂道に挑む仕組みに (イメージ)
なっています。
機関車の下部についている歯車
3∼5 分間ほどの停車の間、連結の作業の様子を
見学できるので、ぜひ列車から降りて見てくださ
い。2 本ある普通の走行用レールの間に、ギザギ
ザのレールが横に 3 列並び、歯形が前後に少しず
つずれているのがわかります。南アルプスあぷと
ラインには、エレクトロニクスを応用した安全装
(イメージ)
ギザギザのラックレール
置の導入、日本では珍しい鉄枕木の使用や、橋梁
の設計での新しい手法の活用など、車両以外の面
でも最新の技術が生かされています。
長い歴史を物語る登録有形文化財
千頭駅構内の転車台
千頭駅ホームの南側に転車台があります。転車台
とは、蒸気機関車の向きを変えるために作られた
施設で、英語でターンテーブルと呼ばれます。か
つては蒸気機関車が全盛の頃には全国にありまし
たが、蒸気機関車に替わって方向転換の必要のな
い電気機関車やディーゼル機関車の時代になる
と、次第に姿を消していきました。ここにある転
車台は、明治 30(1897)年にイギリスで作られ
た人力で回転させるタイプのもので、4 人で回転
させます。日本に輸入された後、東北本線などの
駅で使用。その後旧国鉄赤谷線東赤谷駅に移設さ
れ、昭和 55(1980)年に千頭駅に来ました。今
(イメージ)
登録文化財の転車台
でも使用できる状態で保存されており、日本に現
存する転車台としてはかなり古いものです。全長
15.24m、自重は 17t、最大 95t までの機関車を
載せることができます。平成 13(2001)年に国
の登録文化財に登録されました。
SL の仕組みやアプト式鉄道について学ぶ
SL 資料館
千頭駅構内には、転車台の他にも、SL の火室に石炭を入れ
るための投炭練習機、様々な種類のレールや鉄道関連の展
示物があり、ぐるっと見回してみると鉄道の歴史に触れる
ことができます。また、改札を出てすぐの左には SL 資料
館があり、大井川鐵道の SL の紹介や様々な鉄道古グッズ
が展示されています。どれもが年代物で、歴史を感じさせ
るものばかり。蒸気機関車はたくさんの管を使って蒸気を
送り、動かしている様子がわかります。また、世界各地の
山岳鉄道で利用されているアプト式などのラックレールの
紹介もあり、アプト式鉄道についてより深く知ることがで
きます。
(イメージ)
SL 資料館の展示品
1km
大井川鐵道 Map
N
0
井川
(いかわ)
駅
1km
川
大井
関の沢橋梁
尾盛
(おもり)
駅
長島ダム
(ながしまダム)
駅
ひらんだ駅
アプトいちしろ駅
閑蔵
(かんぞう)
駅
接岨峡温泉
(せっそきょうおんせん)
駅
奥大井湖上
(おくおおいこじょう)
駅
接岨湖
大井川鐵道南アルプスあぷとライン
奥泉
(おくいずみ)
駅
川根小山
(かわねこやま)
駅
土本
(どもと)
駅
沢間
(さわま)
駅
川根両国
(かわねりょうごく)
駅
千頭
(せんず)
駅
至金谷駅
取材協力
大井川鐵道
※天候により景観がきれいにご覧いただけない場合がございます。あらかじめご了承ください。