貴重な上高地の岩魚

貴重な上高地の岩魚
2009. 5 月公開
写真提供・松本市アルプス観光協会(イメージ)
穂高神社奥宮の境内にある明神池。池畔から望む明神岳も素晴らしく池には魚の泳ぐ姿が見
られます。かつて池にはさらに多くの岩魚がいたとか。池の脇にある嘉門次小屋では今でも
甘露煮の岩魚を丸ごと一匹乗せた嘉門次そばや、塩焼きの岩魚を食べることができます。上
高地の岩魚の生態系をはじめ、おいしい岩魚料理を紹介します。
貴重な上高地の岩魚
上高地の岩魚の今昔
昔、上高地では岩魚が梓川を溢れるように泳ぎ、「岩魚七
分に水三分」と語られたほどでした。岩魚専門の職業漁師
までいたのだそう。ところが大正 14 年以降、魚を増やす
目的で岩魚、カワマス、ブラウントラウトなどが放流され、
上高地の岩魚であるニッコウイワナはほとんど姿を消して
しまいます。そこで昭和 52 年以降、在来種保護の観点か
ら岩魚のみの放流となり、さらに昭和 48 年から中ノ湯よ
り上流を半永久的に禁漁とし、岩魚の保護が図られてきま
した。現在では岩魚の数も戻りつつあり、カワマスやブラ
ウントラウトとともに梓川を泳ぎます。
見るとラッキー?
(イメージ)
明神池
写真提供・信州・長野県観光協会
岩魚を見る
岩魚は大正池から標高 1900m 付近の槍沢にかけて梓川
全域に生息しています。川には岩魚だけでなく、カワマス
やブラウントラウトが泳ぎ、よほど渓流魚に詳しい人でな
いと、見分けるのは難しいもの。カワマスやブラウントラ
ウトは流れのゆるい環境を好むため、本流でのカワマスの
上限は徳沢付近、ブラウントラウトの上限は明神橋付近で
す。大正池から明神にかけての平坦地を流れる支流では、
岩魚以外の魚がよく見られます。大勢の観光客が通っても、
まったく動じる気配がなく悠々と泳ぐのがカワマスやブラ
ウントラウト。渓流魚の岩魚は警戒心が強く、人の姿を見
(イメージ)
池を泳ぐ魚の影
写真提供・信州・長野県観光協会
かけた瞬間に泳ぎ去ってしまいます。流れの中に見つけて
も、よほど慎重に近づかないとすぐに気づかれてしまうで
しょう。岩魚を見ることができるのは、とてもラッキーな
ことなのです。
岩魚を食べよう
岩魚を食べる
上高地バスターミナルから明神に向かう散策路を
歩くこと 1 時間半。どこからともなく漂う香ば
しい匂いが鼻をくすぐります。明神池の脇に立つ
嘉門次小屋で、岩魚が焼かれているのです。ここ
に来たらぜひ、岩魚の塩焼きをひとつ頼んでみま
しょう。生粋の上高地岩魚が少なくなった昨今、
養殖のニッコウイワナが使われていますが、塩味・
焼け具合ともに最高。散策で汗をかいた体に、熱々
の塩焼きはたまりません。小屋の囲炉裏でじっく
り焼かれた岩魚は骨まで食べられるほどのやわら
かさ。一口食べると病み付きになり、ここの岩魚
が食べたくて上高地まで来るという人もいるほど
です。
(イメージ)
嘉門次小屋の囲炉裏で作られる岩魚の塩焼き
お腹に余裕があればもう一品頼みたいのが嘉門次そば。
魚とそばの組み合わせといえば、京都の鰊そばが有名で
すが、上高地ではやっぱり岩魚。岩魚の甘露煮が上に丸
ごと一匹乗った、ちょっとほかでは見られないメニュー
です。きのこや山菜をトッピングしていただきましょう。
迫力ある見た目に圧倒されつつ食べてみてびっくり。
あっさりした味に仕上がっていて、岩魚は箸で簡単にほ
ぐれるような柔らかさ、口に運べば骨も一緒にほろほろ
と崩れます。それでいて、岩魚のしっかりした肉質も楽
しめる、予想外のおいしさです。おみやげには、岩魚を
桜チップでじっくりとスモークし、酒やブラックペッ
嘉門次そば
取材協力
信州・長野県観光協会
嘉門次小屋
(イメージ)
パーで味付けした薫製をどうぞ。日本酒やビールによく
合う大人の味わいです。