東京TYFGアジア情報レポート 2016年11月号 東京都民銀行 外為営業部 アジア室 八千代銀行 営業統括部 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 CONTENTS 中国進出企業インタビュー 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 <訪問先>上海漫歩創媒広告有限公司(メディア漫歩) <テーマ>「お客様目線にこだわるサービスを提供します」 中国ビジネスQ&A 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 渡邉 <テーマ>「経済補償金の計算方法」 上海駐在レポート <テーマ>「帰任報告 小林(邦) ~現在の中国の印象~」 深圳駐在レポート <テーマ>「着任報告 東京都民銀行派遣行員 東京都民銀行派遣行員 掛川 東京都民銀行派遣行員 西川 ~深圳の紹介~」 タイ駐在レポート <テーマ>「タイ国プミポン国王崩御」 中国文化便り 中泰博緯(北京)諮詢有限公司 <テーマ>「中国における30年間の『造富運動』」 東京TYFG 中国ビジネスサポート業務のご案内 ~東京都民銀行上海現地法人「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」について~ 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 第 67 回「お客様目線にこだわるサービスを提供します」 上海漫歩創媒広告有限公司(メディア漫歩) 営業部 営業課長 菅原 麻衣子 氏 営業部 営業担当 落合 正啓 氏 日本人駐在員が上海で生活するために欠かせないものの 1 つが、日本人向けフリーペーパー。食事の場 所を調べるだけでなく、中国の身近なニュースや生活に関するあらゆる情報を得るために必要なフリーペ ーパーを発行しているのが、広告会社の上海漫歩創媒広告有限公司(メディア漫歩)です。今回は営業部 の菅原課長と落合氏に中国における広告宣伝の現状についてお話を伺いましたので、ご紹介します。 業務内容 上海在住の日本人の方は、当社のことを 1999 年創刊の生活誌「Whenever 上海」 、2001 年創刊 の中国ビジネス専門誌「Whenever Biz CHINA」 などフリーペーパーを発行している会社のイメ ージが強いかもしれませんが、当社は日本人向 けフリーペーパーの発行だけではなく、パンフ レットや飲食店メニュー等の印刷物の作成から、 夏祭りなどのイベント企画まで、企業 PR に関す るあらゆる業務に対応しています。 中国には上海、江蘇、北京、天津、大連、広州の 6 拠点があり、総勢 100 名以上の従業員で取材から編集、 デザイン、営業まで行っています。そのうち、日本人の数は大手企業並みの 30 人以上が在籍していますが、 情報誌は単に広告だけを掲載しても読み応えがなくなるため、読者である日本人の皆様に読んで頂けるよう 日本人の感覚を大切にし、企画・デザイン・編集は日本人が手掛けています。 中国人向けフリーペーパー「微帆」 フリーペーパーは日本人向けだけでなく、中国人のホワイトカラーに向けた中国語媒体「微帆」も発行し ています。これは主に日系企業に勤める中国人ホワイトカラー(年齢 20~30 代)を対象に、日本旅行、グ ルメ、美容&化粧品、芸能ニュースなど日本に関する総合的かつ実用的な情報を提供するもので、現在発行 部数 80,000 部、2,500 箇所以上に配布しています。 中国人向けフリーペーパーの特徴は、SNS「微信(ウェイシン)」など電子メディアとの連動です。日本人 は染み付いた習慣からか紙媒体の情報を好みますが、中国人の特に若年層は紙媒体に対する拘りがなく、SNS やネットで情報を拾います。そのため「微帆」も紙媒体と電子メディアを連動させていますが、SNS「微信」 は読者だけでなく、読者の友人にも情報が伝わり、紙媒体の部数以上に情報の広がりをみせています。 近年「微信」は中国人に対する有効な企業広告となりましたが、「微信」を活用する企業が増えすぎたた め、企業が発信する情報を読者が読みきれない状況が生まれてしまい、企業は自社の情報をいかに読者へ選 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 んでもらうかが課題となっています。 この状況を解決するためには、単純に広告を出すだけでなく、体験イベントとの連動など企画力が重要に なってきます。当社も編集長は 20 代の中国人女性を起用し、読者と同じ感性で紙面を作成するとともに約 20 年上海で培ったネットワークを生かした、異業種がコラボレーションした広告など様々な企画を提案さ せて頂いています。 日系企業の広告 ビジネス情報誌に広告を掲載する企業の業種は、以 前は製造業が中心でしたが、現在ではその製造業向け にサービスを提供する企業(IT や自動化など)が中心 となるなど、時代と共に移り変わってきました。 中国ビジネス専門誌「Whenever Biz CHINA」は、企 業同士の BtoB を目的とした広告媒体ですが、単純な広 告だけでは伝えきれないことが多くあります。そこで 当社では読者目線の企業インタビューを多く掲載する ことで、企業が伝えたいことを記事として読者へお伝 えしており、「Whenever Biz CHINA」は営業現場や展示 会場など様々な場面で企業の PR 資料としてご利用頂 いています。 生活情報媒体での飲食店の広告については、毎月ニ <ビジネス情報を集約した「Whenever Biz CHINA」> ューオープンの店を数店舗紹介できる程、多くの飲食 店が上海に進出しています。しかし掲載するのはニューオープンのお店だけではありません。上海で知名度 がある飲食店も長年広告を掲載し続けて頂いています。これは、上海は飲食店の入れ替わりが激しい分、お 店が閉鎖していないことを PR するために掲載するケースもありますし、日本人駐在員は数年に 1 度入れ替 わりますので、新しく来る駐在者の為に広告を継続頂いていますね。 当社の強みは媒体のバリエーションの多さと、編集を中国で行っている点です。毎週発行の「らくらくプ レス」や毎月発行の「Whenever」 、その他にもビジネス誌、ゴルフ雑誌などさまざまな媒体がありますので、 企業の状況に合わせて媒体や広告掲載方法を変えることが出来ますし、日本人が中国でインタビュー・編集 を行うことで各業界の難しい話も読者目線で噛み砕いて伝えることが出来ます。 中国での広告宣伝 中国マーケットは、競合相手が中国企業や日系企業だけでなく、欧米や韓国企業など世界各国の企業と競 争しなければならない厳しい環境です。その環境の中、中国でも日本製品・サービスは品質が高いと評価を 受けていますが、世界各国の企業との競争を勝ち抜くためには、評価だけでなく、実物に触れたり、体験し たりしなければ良さが伝わらないとも言われています。 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 また広告費の使い方も日本企業と世界の企業では違います。例えば 3 年間の広告費の予算配分を考えた場 合、日本企業は予算総額を 1 年ごと 3 分の 1 に分けて使いますが、欧米企業では最初の 1 年目に予算総額の 70%を使って広告宣伝を行いますので、消費者へのインパクトが異なります。 この競合の激しい中国市場で効果的な企業 PR を行うためには、中国の現状を知ることが重要です。最近、 企業が重要視している広告の 1 つがブロガーの活用です。先ほどお伝えしたとおり、SNS「微信(ウェイシ ン)」は企業宣伝に利用されていますが、この SNS での口コミ情報を増やすために「微信」上で影響力の高 いアカウント(KOL=Key Opinion Leader)を活用したプロモーションが効果的と言われています。そのため 1 企業が有名ブロガーと個人契約するケースも増えており、企業の商品発表の場では、メディアの記者の前 にブロガーが陣取り、商品発表をブロガーが SNS を通じてリアルタイムで紹介するという光景も見られます。 今後の抱負 私達はもともと広告会社に勤めていた訳で はなく、全く別の業界で働いていたのですが、 広告会社で働いて、自分自身の視野が広がり ましたね。幅広い業界の方にお会いしますし、 広告宣伝するためにお客様から様々なお話を 聞きます。今まで知らなかった業界を知るこ とが出来ますし、経営者の視点も学ばせて頂 けるので、広告の仕事は非常に面白いですね。 広告費というのは企業にとって決して安い ものではありません。広告を掲載するからに は、広告費以上の売上効果を出さなければい けません。これからも広告費を出してくれる <メディア漫歩 営業部の皆様> お客様の期待に応えられるよう、お客様と共 <上段左から 2 人目が菅原課長、上段左から 3 人目が落合氏> に良い広告を作っていきたいです。 中国では探したい企業をインターネットで検索しても、上手く情報がヒットせず、企業のホームページに 辿り着くのが非常に難しいです。中国で良いサービス・商品を取り扱っている企業でも、その企業が中国に 進出していることが知れ渡っていないことがよくあります。このようなまだ知られていない企業を、中国で 周知させる方法を考えて、お客様に喜んでもらいたいですね。 ※情報(URL ご参照) 上海漫歩創媒広告有限公司(メディア漫歩) http://new.whenever-online.com/ ※連絡先 / [email protected] 聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 中国ビジネスQ&A 第 65 回「経済補償金の計算方法」 このレポートはすべてお読み頂いて 1 分 42 秒です。 <質問> 私は上海現地法人の総務部長です。昨年、期間 1 年、手取 4,000 元で入社した中国人従業員と更新せず労 働契約終了することを検討しています。想定より総務部門の業務量が減少した結果、本人は残業もなく担当 業務も限定され、モチベーション維持も困難になっています。このような場合、経済補償金を支払う必要が あると思いますが、いくら支給すればいいでしょうか?勤務年数×1 ヵ月の給与とよく耳にしますが、その ような計算でいいのでしょうか。よろしくご教示ください。 <回答> まず「労働契約期間の満了」は労働契約終了事由となっていますので問題ありません(労働契約法第 44 条 1 項)。次に経済補償金の計算方法ですが、同法第 47 条に「労働者のその単位における勤務年数に基づき、 満 1 年ごとに賃金の 1 ヵ月分を基準として、労働者に対して支払う。6 ヵ月以上 1 年未満の場合、1 年とし て計算する。6 ヵ月に満たない場合は労働者に対して賃金の半分に相当する経済補償金を支払う」 、 「月間賃 金とは、労働者の労働契約解除又は終了前 12 ヵ月の平均賃金をいう」と規定されています。今回の中国人 従業員の場合、経済補償金=勤務年数 1 年×手取 4,000 元=4,000 元と計算できるように思いますが、間違 った計算方法になりますので注意が必要です。 労働契約法実施条例第 27 条に「労働契約法第 47 条に規定する経済補償金の賃金は労働者が得るべき賃金 により計算しなければならない。労働者が得るべき賃金には時間払い賃金又は出来高払い賃金並びに賞与、 手当及び貨幣収入が含まれる」と規定されていますので、年間賞与、残業手当、交通手当等も加算されるこ とになります。 上海では給与条件を手取ベースで中国人従業員に提示することが多いと思いますが、経済補償金の支払基 準は手取給与のみならず、会社が実質負担している個人負担の社会保険、個人所得税も加算されます。今回、 期間 1 年、手取 4,000 元、各種手当無し、年間賞与 1 回 1.5 ヵ月分 6,000 元にて経済補償金を計算しますの でご参照ください。関連「中国ビジネス Q&A」 、第 13 回「賞与への課税」 、第 20 回「経済補償金について」 、 第 41 回「新入社員の個人所得税と社会保険について」も是非一読ください。 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 (年間手取給与) ① 月間給与 4,000 元×12 ヵ月分+賞与 6,000 元=54,000 元 (年間個人所得税) 月間給与分:(4,000 元-基礎控除 3,500 元)÷(1-0.03)×0.03=15.46 元、 15.46 元×12 ヵ月分=185.52 元 年間賞与分:6,000 元÷(1-0.03)-6,000 元=185.57 元 ② 年間個人所得税:185.52 元+185.57 元=371.09 元 (年間社会保険) 基数:(手取 4,000 元+個人所得税 15.46 元)÷(1-個人負担社会保険率合計 0.175)=4,868 元 ③ 年間社会保険:4,868 元×0.175×12 ヵ月分=10,220.80 元 (経済補償金支払基準) 年間経済補償金支払基準:上記①+②+③=64,591.89 元 月額経済補償金支払基準:64,591.89÷12 ヵ月=5,382.66 元(上海市の場合、上限 17,817 元) (経済補償金額) 経済補償金額:5,382.66 元×1 ヵ月=5,382.66 元 尚、労働契約法第 47 条に「労働者の月間賃金が所在する直轄市、区を設ける市レベルの人民政府が公表 した当該地区における前年度の従業員月間平均賃金の 3 倍を上回る場合、労働者に対する経済補償金の支払 基準は、従業員月間平均賃金の 3 倍に相当する額とする」と規定されています。つまり上海市の場合、2015 年従業員月額平均賃金 5,939 元×3=17,817 元が上限値となっていますのでご留意ください。 以上 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 渡邉 和俊 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 ―上海駐在レポート― 「帰任報告~現在の中国の印象~」 2013 年 10 月からの上海駐在を終え、10 月末に日本へ帰国することになりました。変化の激しい中国にお いて 3 年という駐在生活は毎日が新鮮で、新たな発見や学びが多い貴重な経験となりました。また出張や旅 行で中国大陸 29 の省・自治区・直轄市を訪問し、地域ごとの発展の様子、生活している人々の様子を垣間 見ることが出来ました。 今月のレポートではこれまでの駐在生活を通して感じた現在の中国の「ヒト・モノ(サービス)・カネ」の 印象をお伝えし帰任報告としたいと思います。 ○ ヒト ヒトというキーワードでは、ここ 2、3 年の中国人の「中所得者層の台頭」が印象的でした(中所得者層の 定義は年収 73 万円~182 万円程度)。特に上海に至っては、人口の増加と共に一人当たりの可処分所得も増 加し、さらに地下鉄路線の拡大に伴い、上海市郊外でも市内中心部と相違ない生活が送れるほどに街の発展 が進みました。また所得格差が大きいといわれる海岸沿いと内陸部でも中国全体でみれば中所得者層は増加 し、徐々にですが中国全土の人々の生活水準は上がっているように感じました。 一方で、貧困層、低所得者層(貧困層は年収 7 万 3 千円以下程度、低所得者層は年収 7 万 3 千円~36 万 5 千円程度と定義)が依然と多く存在するのも今の中国の実情です。筆者が内陸部の都市を訪れる際、その都 市に住んでいる人々の所得水準を図る一つの目安として、欧米料理店の有無を参考にしていました。理由は、 暮らしが豊かになると地元料理以外にイタリアやフランス料理を食したりワインを飲んだりする傾向にあ るからです。そのような観点で述べると、内陸部の都市でも、例えば青海省の西寧市など省都レベルの都市 では欧米料理店は多く見受けられましたが、内陸部の中心地から離れた都市では地元料理ばかりが目立つ印 象を持ちました。また、欧米料理の観点以外にも地下鉄やマンション、ビルの建設状況も参考に各地方都市 の発展を見てきましたが、建設途上の地域も未だ多く見受けられました。こうした地方都市が今後どのよう に発展し、そこに住む人々の生活がどのように変化してくるのか将来非常に楽しみです。 ○ モノ(サービス) モノというキーワードで印象的な出来事は、皆さんご存知の「爆買い」です。爆買いは元々、2014 年 11 月頃からの急激な円安が進んだことがきっかけとなりましたが、それが 2015 年 2 月の春節の大型連休時期 に一気に加熱したのが中国人による爆買いです。2016 年 10 月の直近の国慶節では爆買いに陰りが見え始め たという報道もありましたが、中国人の求めるものが家電製品や化粧品等を大量に購入する「モノ」から観 光地巡り、医療ツーリズムなどの「サービス」へと変化しているだけで、訪日中国人の数は年々上昇を続け ています。そしてこの勢いはまだまだ続くと思われます。 さらに爆買いというキーワードから、 「越境 EC」というビジネスにも注目が集まりました。中国にいなが 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 らインターネットで日本製品を購入することが出来、関税や増値税など税制面が通常の貿易よりも優遇され ている点が中国人消費者に受け入れられ、ブームとなりました。この越境 EC というビジネスモデルにより 依然として日本製品の人気の高さを窺えることが出来ました。 日本にいる知人の話でも、最近では銀座や秋葉原、新宿等どこを歩いても中国人がいると聞きますが、爆 買い、越境 EC という現象は日本(人)と中国(人)の距離間をより身近なものにしてくれたのではないでしょ うか。 ○ カネ 駐在期間中、カネというキーワードでは、 「2015 年 11 月、10 年ぶりに新 100 元札が発行」されたことが ニュースに挙がりました。これは、偽札の横行がひどく、銀行の ATM からも偽札が出てきてしまうことから、 中国人民銀行が偽札防止対策として 10 年ぶりに行ったものです。ただ、筆者がそれよりも印象に残ってい るのが支付宝(アリペイ)、微信(ウェイシン)などの「電子決済の台頭」です。電子決済については 2016 年 9 月号でご紹介した通りですので内容は割愛させて頂きますが、偽札等関係なく現金なしで何でも決済が出 来てしまう電子決済の台頭はやはり衝撃的でした。今や電子決済を中心に、タクシーの配車、食事のデリバ リー、市内での自転車レンタルの利用などにも波及し、生活になくてはならないツールとなりました。 中国の IT 技術は日本よりも遥か前を進んでいるように感じます。爆買いと相まって、支付宝の決済は日 本でもユニクロなどで一部利用されていますが、これから益々日本でのビジネスにも参入してくることが期 待されます。 ○ おわりに 中国人中所得者層の台頭は、身近な生活用品を海外へ求 める「爆買い、越境 EC」といったブームを生み、電子決済 サービスは海外に広く普及しました。今回取り上げた「中 所得者層、爆買い、電子決済」は現在の中国ビジネスに欠 かせないキーワードであると筆者は考えます。 筆者が駐在した 3 年間で中国は益々国際化が進み、それ は身近な消費者の視点から見ても明らかです。中国に駐在 しながら、中資系企業の日系企業買収、中国人の爆買いを 見てきて、最近の日本経済を動かしているのは中国(人)な んだと肌で感じることが出来ました。 一方日本では、一部の報道などの影響により中国に対し ≪晴れた日の上海の街並み≫ て良い印象を持っていない方も多く見受けられます。しかしビジネスでもプライベートでも中国の方との共 存なしには今後の日本の発展はないと思います。帰国後はこうした筆者の認識を広く伝えていければと思っ ております。 以上 上海駐在 小林邦寛 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 ―深圳駐在レポート― 「着任報告 ~深圳(シンセン)の紹介~」 みなさんこんにちは、10 月より深圳に赴任しました掛川です。これからは、上海より帰任した行員の上 海レポートに替え本深圳レポートを掲載します。引き続きよろしくお願いします。 さて、深圳と聞いてすぐにピンとくる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。筆者も赴任前 は、中国の南の方に位置し、香港の隣にある都市という漠然としたイメージを持つだけでした。しかし降り 立ってみると、広大な土地に立ち並ぶ東京とはまた違った高層ビルの数々や熱気に溢れた人々に圧倒されて しまいました。深圳は 1980 年経済特区(経済発展のために法的、行政的に特別な地位を与えられている地 域の事を言います。 )に指定されて以降、急速な経済発展を遂げ上海・北京・広州に次ぐ国際的な都市に成 長しています。 今回は皆さんに深圳という都市がどんな都市であるかご紹介したいと思います。 ○深圳の歴史 深圳は 1970 年代まで小さな漁村でしたが、鄧小平の改革開放以降に中国の経済特区に指定されました。 また 1988 年に副省級市に格上げされ、国務院から省レベルに相当する経済管理権限を付与されました。そ して 1992 年には、鄧小平の「南巡講和(改革開放を推し進めるために表明した講和)」で豊かさの象徴とし て取り上げられるまでになりました。その後、経済特区として外国資本や技術導入を積極的に取り入れた事 と香港のすぐ隣という地理的条件が整っていた為、香港人が深圳に次々と工場を作り始めました。原料から 完成品を生産しそれを香港から世界各地に出荷するといった加工貿易を始めてから、他の外資系企業がこぞ って生産を始め、瞬く間に「世界の工場」と呼ばれるほどの一大生産拠点となりました。 ○深圳の基本情報 (1)深圳の位置 深圳は、中国南部の広東省にあり、珠江デルタの東側に位置しています。市の 南側は香港と接していて、西側と南東側に面しており、貿易に有利な地理的条件 となっています。 また、香港と陸続きの部分にはフェンスが設置され「口岸」と呼ばれる出入国ポ イント(イミグレーションからの出入りが可能で、外国人はパスポートが必要と なります) 。 (2)深圳への入国方法 ≪深圳の周辺地図≫ 深圳に入国する方法はまず大きく分けて 2 つの方法があります。1つ目は、日本から深圳国際空港へ直接 飛行機に乗り入国する方法、2 つ目は日本からまず香港国際空港へ飛行機に乗り、その後イミグレーション を通過して深センへ向かう方法の 2 つです。 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 実際に今回の赴任にあたり、筆者は後者の方法を選びました。赴任準備当初は、直接深圳国際空港から入 国するほうが便利なのでは、と考えていましたが日本からの便数も少なくまだまだ一般的な方法ではないよ うです。また香港国際空港から深圳へ向かう方法を選んだ場合、その選択肢は大きく分けて 3 つあります。 それは、①バスを利用する、②MTR(Mass Transit Railway)と呼ばれる香港最大の鉄道路線システムを利 用する、 ③フェリーを利用するというものです。今回はフェリーを利用しましたが、他の方法と比べ徒歩 移動も少なく、飛行機の機内預け荷物も香港から輸送してくれるので、初めての方には快適かつ安全に深セ ンへ向かう事ができるのではないかと感じました。別の 2 つの方法も今後試したいと思います。 (3)深圳の面積・人口 深圳の面積は約 1,997 ㎢で人口は実質約 1,830 万人です。 これは東京の面積が 2,187 ㎢で人口は約 1,300 万人との統 計と比較しますと、ほぼ同じ規模となっています。特徴と しては、高齢者の割合が低く、在住者の半数以上が深圳市、 広東省以外から流入している移民都市となっており、数年 経つと故郷に帰ってしまう人が多いということです。さら に出稼ぎに来る人の多くが若者であり、平均年齢は推定 ≪深圳のフェリーでの様子≫ ≪荷下ろしの様子≫ 30 歳と若いため「希望の街」 、 「チャンスの街」とも呼 ばれています。 使用言語について広東省以外の出身者が多い為、広東省にありながら広東語よりも普通語(北京語)の使用 比率が高いようです。筆者も深圳では、広東語しか使われてないのかと心配しておりましたが、生活圏内に あるお店やタクシーの運転手等は、普通語を使用しています。中国語は勉強中で、まだまだ学習している身 ではありますが、普通語が通用しておりまして一安心しているところです。 ○終わりに 深圳の発展してきた背景には、やはり世界有数の大都市である香港に隣接していることが挙げられると思 います。経済面、人的、文化的な面でも、香港の影響を大きく受けているようです。現在では、金融やハイ テク IT(情報技術) 、サービス業へとシフトしています。全世界で登録ユーザー数 11 億人を超えると言わ れている中国国内のコミュニケーションツールとして欠かせない微信(ウェイシン。中国版 LINE)というア プリを開発した事で有名な騰訊(テンセント)の本社や、日本では携帯電話会社として有名な華為(ファー ウェイ)など有名ハイテク企業本社や工場が拠点を構えています。 今後中国の中でも著しく成長を続けていくだろう深圳そして香港、華南、東南アジア地区を見据えながら 筆者の実体験を交えながら今後お伝えしていきたいと考えております。 以上 深圳駐在 掛川 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 ━タイ駐在レポート━ 「タイ国プミポン国王崩御」 10 月 13 日木曜日、タイで最も愛された存在である、タイ国プミポン国王が崩御されました。 この場を借りましてご逝去を悼み謹んでお悔やみ申し上げますと共に、心からご冥福をお祈り致します。 そこで今月はタイ国プミポン国王の歩みと功績、及び崩御に伴う現地の状況についてご紹介します。 ○プミポン国王の歩みと功績 プミポン国王は 1927 年 12 月 5 日アメリカのマサチューセッ ツ州でお生まれになりました。その後、一時タイへ帰国される も 5 歳の時にスイスのローザンヌに渡り学生時代をお過ごし の最中に、先代のアマンタマヒドン殿下(ラマ 8 世)が事故死 されたことから若干 18 歳の若さで即位、ラマ 9 世となられま した。プミポン国王は即位後、国王自らが開発計画を立案され、 政府とともに実施するプロジェクトである「ロイヤル・プロジ ェクト」を通じて、タイ国民の生活を豊かにする活動に精力的 に取り組まれました。 ≪ロイヤルプロジェクトショップ≫ 一例と致しましては、バンコク市内の「ロイヤルプロジェク トショップ」では農産品・加工品販売を通して山岳地帯に住む貧困層の人達の支援をされました。また、1992 年 5 月に起きた民主化デモの鎮圧による流血事件が発生した際には、武力衝突への発展を憂慮したプミポン 国王は当時の首相及び民主化デモの指導者を呼び出し事態の鎮静化を指示するなど、政治的にもタイの近代 史の中で極めて重要な役割を果たされてきました。そのような数々の功績もあり、在位 70 年の間タイ国民 から深い敬愛を受けられているため、タイでは街の至る所に国王の肖像画や写真が掲げられているのです。 ○プミポン国王崩御後の様子 次に、10 月 13 日(木)にプミポン国王崩御のニュース発表後の翌日及び週末の様子を紹介致します。 プミポン国王崩御後、プラユット首相はテレビ放送を通じて、「公務員、国営企業関係者、政府職員の 1 年 間の服喪」 「30 日の娯楽自粛」を指示しました。但し、経済活動については通常通りに行ってほしいとの発 言があったことから、翌日 14 日(金)からほとんどの日系企業が通常営業をしておりました。また、空港、 港湾、税関なども平常通りであった、とのことです。 次に街の様子でございますが、筆者が収集した情報に下記の通りです。 ・人々は服喪の意を込め黒色(Y シャツなどは白色)の服を着ていた。 ・飲食店は通常営業を行っており、お酒も通常通り注文可能。 ・歓楽街については、14 日(金)は休業、週末は 22 時までの営業に短縮となった。 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 ・水などの生活必需品については、13 日(木)の夜については外国人向けのスーパーを中心に品薄状態。 しかし、週末には平静を取り戻していた。 ・ゴルフ場は通常通り営業も、日本人がゴルフ場にて不敬罪で罰金を科された、という噂もあり。 ・テレビはプミポン国王の追悼番組が全局で服喪の意を込めて白黒での放送。 上記の通り、様々な場面で普段と違う状況が起こっておりましたが、筆者の印象では経済活動面・生活面 での影響は特になかったものと感じています。しかし、イベント開催については中止・延期が続々と決定し ており、今後観光面などを中心に影響が出てくるものと予想されます。 ≪黒色の服を着て歩く人々≫ ≪白黒で放送されているテレビ≫ ○最後に プミポン国王のご遺体はシリラート病院から王宮に 14 日(金)の午後 に移送されましたが、その際に沿道を敬愛するタイ国民が埋め尽くして別 れを惜しんでおり、プミポン国王の存在の偉大さを改めて感じました。筆 者の駐在しているカシコン銀行でも哀悼の意を込めた慰霊碑を特別に設 置しております。 一方で、70 年に渡るプミポン国王の治世が終わったことで、タイは変革 を迎えることから、海外のメディアでは今後のタイの動向に対してネガテ ィブな報道も見られます。しかしながら、タイ国民はこの悲しみを乗り越 える底力を発揮し更なる発展に向けて邁進するはず、と筆者も現地にて肌 で感じています。 今後タイ国は日本にとって、更にビジネスや旅行などの交流先として 重要な存在となっていくといえるのではないでしょうか。 ≪カシコン銀行前の慰霊碑≫ 以上 タイ駐在 西川 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 ━中国文化便り━ 中国における 30 年間の「造富運動」 中国で、改革開放から 30 数年経ちました。その間、経済高度成長の波に乗り好景気が続き、「造富運動」 といわれる「富の蓄積」が各地で繰り広げられました。80 年代の「万元戸」の出現はまだ珍しいことでし たが、90 年代を経て、2010 年代に入り百億ないし千億クラスの大富豪が数多く登場してきました。ある意 味では、富の蓄積のスピードや億万長者の人数という点について、西側諸国が百年くらい掛かって歩んでき た道を中国は非常に短期間でドラスチックに改革を成し遂げ、世界に類例のない「奇跡」だと言えるかもし れません。 1.大富豪が誕生する三回のビッグチャンス 何時の時代も、大きな夢を見ながら豊かな暮らしを求めているのが世の常です。改革開放はこのような夢 を可能なものにさせました。 ① 1980 年代の「倒爺」 「倒爺」とは北京の方言で、計画内商品と計画外商品の二重価格制を利用して、服装、腕時計、乗車券、 劇場入場券など各種のチケット、大豆油や食糧や卵や布などの割当商品券を売買して儲けた商売人を指しま す。それがエスカレートして、北京で一部の「コネクション」のある倒爺たちは、計画経済から市場経済へ の移行期に、鉄鋼、石炭、セメントなどの原材料・資源商品、農薬や化学肥料、及びテレビや冷蔵庫などの 家電製品を闇取引し、大金を手に入れて、次第に全国各地に広がりました。続けて、1980 年代末の前ソビ エトの解体及び東ヨーロッパの激変を背景に、先方側の国々で軽工業製品が不足していたのを商機と捉え、 倒爺たちは国際舞台に出没するようになり、中国産の紡織製品などの軽工業製品を輸出してロシアから木材 や鉄鉱石や皮革などを輸入していました。北京-満州里-モスクワ間の鉄道は全長 9000 キロくらいで、当時、 国際列車は片道 6 昼夜を掛け毎週往復しており、途中では強盗・殺人事件も多発していましたが、中国とロ シア間のバーター貿易は盛んに行われていました。その頃から、北京の「秀水街」はただの商店街だけでな く「国際倒爺の大倉庫」としても大繁盛するようになりました。「4 億人民元に相当する 500 台の貨物列車 に詰め込んだ缶詰などの日用品と引き換えに、4 機の TY-154 飛行機を持ち帰ってきた」という伝説が中国 ナンバーワン倒爺の壮挙として今でも世間で広く言い伝えられています。 ②1990 年代の二大投資ブーム(株式と先物取引) 1990 年代の繁栄する中国で、大金を獲得する「近道」と言えば、頭の中にまず株式取引と先物取引を思 い浮かべる人が多いのではないでしょうか。このブームは、人々の生活に大きな影響をもたらしました。 <株式取引> 1950 年代初頭に鎖された上海証券取引所は 1990 年 12 月に 40 年ぶりに再開しました。当 初、一般市民の株式に対する知識も認識も薄いため、政府は赤いタイトルの通達を公布して、割当制で幹部 や従業員から先に株式を購入するよう、動員していました。その後、新株発行の「予約抽選券」を限定販売 するようになりましたが、株価が高騰するにつれて、抽選券の転売や株取引の闇市場が増え、一部内部不正 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 もありました。当時、「撑死大胆的、餓死胆小的」(度胸のある者が豊かになる、臆病者が餓死する)とい う言葉が流行りましたがここで言う「度胸」とは二種類の人を意味します。一つ目は、「株式」というまっ たく未知の世界に思い切って足を踏み入れた人たち。二つ目は、導入したばかりの株式市場がまだ実験的段 階であったため、その運営管理の経験不足を利用して、インサイダー取引や株価操作及び会計問題など法外 な株取引を行っていた人たち。前者にも後者にも大金を手に入れた人がいて、昔から特に商売上手といわれ る地元上海人の中から、「股神」(株の神)まで誕生しました。 <先物取引> 1990 年代の半ば頃に入って先物取引が急にオーバーヒートとなり、メイン商品は食糧な どの農副産品、ゴムなどの工業製品及び非鉄金属などでしたが、国債や外貨も半ばアンダーグランドで取引 されていました。市場経済に適した法整備を進めている途上で、リスクコントロール体制が完全に確立され ておらず、情報ディスクロージャーが不十分な事を巧みに利用して大儲けした人もいれば、運悪く詐欺事件 に遭遇し大損した人もいました。 1990 年代の株式売買と先物取引の大盛況ぶりを振り返って、「ドラマチックどころか、はらはらさせら れた恐怖の日々だったよ」と、漏らした当事者の言葉は実に興味深いものがあり、「勝者為王、敗者為寇」 (勝てば官軍、負ければ賊軍)という中国版の「平家物語」が今でも記憶に新しいです。 ③2000 年代の「時代の恩恵」 新世紀に入って、百億・千億クラスのスーパー富豪が相次いで現れました。彼らの成功の「秘訣」につい て、中国が「世界の工場」となったこと。外資の導入を機に、国内の低コスト労働力を武器にした「メイド インチャイナ」の商品が世界の至る所に進出するうちに、大量の民営企業家が急速に成長しました。次に、 不動産の市場化や鉱山の私有化。こうした過程で富の再分配が行われました。これが中国のスーパー富豪の うち、不動産デベロッパーや鉱山所有者が半数以上を占めている由縁です。そして、人民元為替レートの上 昇に伴い、投資・投機のために海外からホットマネーが大量に流入したこと。これを背景に、2007 年の A 株株価の急騰、2011 年の創業板(GEM, Growth Enterprises Market)株価のピーク及び 2013 年の不動産価 格のバブルなどを加速させたと同時に、大量のニューリッチの出現をもたらしました。 2.国民消費生活のレベルアップと中流階級の焦燥感 先般、「投資者報」(2016.7.26)にこんな記事がありました。1979 年の、中国の人口 80%を占めた農民 一人当たりの銀行預金残高が約 10 元、安徽省のある農村ではわずか 0.5 元だった。これに比べて、2009 年 は、国民一人当たりの銀行預金残高が 10,000 元以上、北京市民では 10 万元前後となった。インフレや貧富 の差などのファクターを除いて、単純計算して、この 30 年間に一人当たりの銀行預金残高はおよそ 1000 倍増え、そして、同じ期間に中国の GDP が 100 倍、人民元総量が 700 倍、それぞれ増加した、とのことです。 いわゆる「中流階級」とは、価値観やライフスタイルなどを除いて、単純に家庭資産と一世帯の年間収入 で計算すると、中国全体で、家庭資産が 300 万元~1,500 万元、あるいは年間収入が 30 万元~150 万元のグ ループ。もう少し詳しく分類すると、小さい地方都市で家庭資産が 300 万元、あるいは年間収入が 30 万元 のグループ。北京などのような中心都市で家庭資産が 1,000 万元、あるいは年間収入が 100 万元のグループ、 と中国で定義されています。なお、中国式の中流階級の特徴の一つとして、主に中小企業主や商売人を指し、 高等教育を受けた専門人材の割合は比較的低く 20%以内だろうと推定されている(「新浪財経」2016.7.20.) 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 とのことです。近年、中流階級の方たちから一番よく聞く嘆きの声はというと、中長期的な資産保全が難し いことです。現状では、銀行預金は年間で 7%くらい目減りし、資産運用は年間の収益率が数年前の 10%前 後から 4%以下に低下し、株式投資は 2014 年に高利貸しが崩壊したのに続いて、2015 年に株式市場が急落 しそれ以来は乱高下を繰り返しています。安全で最適な資産運用ルートが限られているため、不動産バブル の恐れがあるにも係わらず、2016 年上半期に国内の銀行融資が引き続き大量に不動産市場へと流入してい ることが裏付けているように、不動産市場がやはり主な投資ルートとなっています。近年、比較的新しい資 産運用の方法として、Equity Investment が注目されていますが、新興産業向けが大多数を占めており、関 連の法整備や信用体系が不十分であるため、如何にリスクヘッジをすればよいのか依然として不透明なもの が多いようです。それに、中長期的に人民元の為替相場が下落傾向を辿ると予測されていますが、現時点で、 外貨管理局の規定により、一人当たりの人民元両替上限額が年間 5 万米ドル(もしくは相当額)までと定め られています。このように、中流階級の家庭にとって、せっかく手に入れた財産が何時の間にか蒸発してし まうじゃないかと心配し、得体のしれない焦燥感は募る一方です。 3.経済高度成長の「光と影」 近年に入って、バブル崩壊、環境破壊及び生産能力の過剰など 30 年以上続けてきた経済高度成長の背後 に山積している問題点がクローズアップされ、反省する動きが顕著になってきています。中には、誰が、何 時、どのようにこれらの「穴埋め」をすればよいのか?新しい時代に、富の「洗牌」(reshuffle、トラプ カードの切り直し)が必然的に始まろうとしているのではないか?今後 5~10 年以内に、90%の中流階級の 家庭の「返貧現象」(再び貧乏になること)は避けられないだろう、というクールな指摘もあり、世間を騒 がせています。 ①不動産市場の繁栄と衰退 不動産のバブル崩壊に関する論評がなされて久しく、現に、浙江省温州市や内モンゴルのオルドス市で不 動産価格が暴落し、投資者の債務が雪だるま式になり、一部の町がゴーストタウンと化したなどの報道もあ りました。一方で、こんな統計データ(「新浪財経」2016.7.20.)も発表されました。2016 年上半期、 国内の銀行融資総額が最高記録の 7.53 万億元に達し、2009 年に実施された「4 万億元の経済刺激策」より も金額が多い。これらの銀行融資の「行方」を調べた所、民間の固定資産投資額の増加率は、前年度の同期 に比べて、2015 年は 11.4%、2005 年は 50%だったが、2016 年上半期は過去最低記録の 2.8%に止まった。 実際、新たに増加した融資額 7.53 万億元のうち、個人住宅向けが 2.36 万億元、全体の約 3 分の 1 弱を占め、 それに自動車ローンなどの個人消費向けと合計すれば、全体の 40%を占めることになる。要するに、銀行 から放出した大量の資金は実態経済よりも、不動産市場へ流入したものが多いことが分かりました。不動産 市場については、北京、上海及び広州などの中心都市における不動産投資ブームは一向に衰えることがない ようです。その理由について、第一、すでに海外へ移住した華僑たちも含めて、中国人の心の奥には農耕民 族の意識と習慣が浸透しており、せっかく持家の個人所有権が認められたのだから、何よりも先にそれを手 に入れたい。第二、中国人は教育・医療環境の比較的よい大都市に住みたい。人口流入超の大都市や中心都 市に不動産投資すれば、近い将来人生の「赢家」(winner)になる確率が高い。第三、中国は人口が一番多 い国で、10 年後には世界で GDP が一番高い国になる見込みだ。そうなれば、不動産価格の上昇も十分に見 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 込まれる。第四、目下、中国国内で不動産の外に資産運用のルートが限られている、などが挙がりました。 こうして、人口流入超の大都市や中心都市の繁栄ぶりと対照的に、地方都市の衰退が加速し、地域差がます ます拡大されるでしょう。 ②生産能力過剰の緩和 中国の伝統文化に、「寧為鶏頭、不為鳳尾」(諺:鶏頭となるも鳳尾となるなかれ)、すなわち、大勢の 中で、下の方にいるよりは、少人数の仲間でも、その中心人物となれ、という信条があります。そのため、 中国人はできることならば、自分で「老板」(ボス)になりたいのが普通で、これまでの 30 年間に、比較 的優位という原理の下、中国各地で起業ブームが起きました。経済の高度成長も一転して低成長の時期を迎 えた今、土地・人件費コストが急上昇した上、ベトナムやカンボジアなど強力なライバルも現れ、労働集約 型で付加価値の低い一般加工製造メーカーにとっては、企業の浮沈をかけた生存競争は文字通り「熾烈」を 極めており、最終的には、「赢家通喫」(winner-take-all、勝者独り占め)の法則が通用されるのではな いでしょうか。 結び インターネットが普及し、グローバリゼーションが急速に進んでいる中、世界的範囲で富の蓄積の「ゲー ムルール」が根本的に変化しています。中国も例外ではなく、これまでのような「銭が銭を生む」時代はも う過ぎ去り、今後、経済・金融の改革が進むにつれて、トランプカードの切り直しと同じように、全社会の 富の「洗牌」(再分配)が繰り返されていくことが予想されます。そうした過程で、「草莽英雄」(水滸伝 のような英雄)が淘汰され、社会的責任を自覚しながら、リスクを恐れずにチャレンジする企業家が新しい 時代の新しい舞台で今まで以上に活躍するでしょう。究極的には、科学技術の進歩、イノベーションの創出 及び堅実な運営管理、これこそが経済の持続的な発展を遂げるための唯一の道で、外に「近道」はないので はないでしょうか。 以上 徐 槑(大連市出身) 吉林大学外国語学部(日本語)卒 岡山大学大学院経済学研究科修士修了 広島大学大学院経済学研究科博士後期修了 中国銀行大連分行、中信実業銀行総行、第一勧業銀行を経て、2004 年 4 月に中泰博緯(北京)諮詢有限公司設立 に参加、大連地区総経理に就任(現職) 。現職の傍ら大連外国語大学にて非常勤講師としても教鞭をとるなどマ ルチに活躍中 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。 都民銀商務諮詢(上海)有限公司について 東京TYFGでは中国上海市に「都民銀商務諮詢(上海)有限公司」を開業しております。「都 民銀商務諮詢(上海)有限公司」ではコンサルタント業務を取り扱い、日本側のアジア投資相談窓 口である「東京都民銀行外為営業部アジア室」「八千代銀行営業統括部」と連携して、中国ビジネ スサポートを行っております。中国ビジネスでお困りの事がございましたら、中国または日本の下 記担当者へお気軽にご相談下さい。 会社概要 1.商 号 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 2.所在地 中国上海市黄浦区淮海中路 918 号久事復興大廈 24‐C1 室 3.資本金 25 万米ドル 4.事業内容 企業管理コンサルティング、貿易情報コンサルティング、投資コンサルティング、企業登記代理 5.URL http://www.tomin-bc.com.cn/ コンサルティング内容 項目 現法設立コンサルティング とみんチャイナビジネスサポート 業務内容 事業化計画、設立申請書類の作成、認可当局との交渉サポート。増資、 各種登記、親子ローン、商標サポート。 日常業務から専門的な各種照会事項に対して、原則、回数無制限にてお 答えします。 出資持分譲渡、合併・分割、撤退、設備売却サポート。 事業戦略コンサルティング 本社ガバナンス強化を目的として、現地法人の抱える問題点や構想の実 現可能性をモニタリング調査。 信用・市場調査に関する コンサルティング ビジネスマッチング 各種企業の側面調査・実態調査コンサルティング、市場動向レポートの 提供。 日系企業、中国企業とのビジネスマッチング(中国提携銀行あり)、候 補先リスト作成、売買契約締結および交渉サポート。 お問合せ 東京都民銀行外為営業部アジア室 都民銀商務諮詢(上海)有限公司 電話:86-21-6467-0011 八千代銀行営業統括部 電話:【東京都民】03-3582-8681 【八千代】03-3352-2256 E-mail:[email protected] E-mail:[email protected] 担当:渡邉(総経理) 、蓑田(副総経理) 担当:【東京都民】中島(室長)小林(智)小林(邦) 北川 : 【八千代】 尾崎 森 五十嵐 本レポートに記載の事項は情報提供のみを目的としたものであり、記載されているデータ、意見などは東京都民銀行が信頼に足り、且つ正確であ ると判断した情報に基づき作成されたものではありますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。当レポートに記載された内容が 事前連絡無しに変更されることもあります。当レポートに記載された条件などはあくまで仮定的なものであり、かかる取引に関するリスクを全て 特定・示唆するものではありません。事業展開の最終決定は貴社ご自身の判断でなされるよう、また必要な場合には顧問弁護士、顧問会計士など に御相談の上でお取扱下さいますようお願い致します。
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