卒業論文の体裁に関するメモ - 一橋大学商学部・大学院商学研究科

卒業論文の体裁に関するメモ∗
松井 剛†
2011 年 11 月 7 日
目次
0
はじめに:読み手フレンドリーな論文を目指して
1
1
とびら
2
2
要約
2
3
目次
2
4
本文
2
4.1
レイアウト、ページ番号、フォント . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
4.2
タイトル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
4.3
文章 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
4.4
接続詞 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
4.5
段落 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
4.6
引用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
4.7
注. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
4.8
図表 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
4.9
表記の統一 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
5
あとがき
10
6
参考文献
11
6.1
書籍の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
6.2
論文の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
6.3
雑誌・新聞記事の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
7
時間管理:むりやり早めに第1稿をつくろう
13
8
推敲:印刷した上でのチェック
13
9
製本:修正する最後のチャンス
13
10
おわりに:健闘を祈る!
14
∗
†
このメモは、松井剛ゼミナールにおいて卒業論文研究に取り組むの学生のために作成されたものです。
一橋大学大学院商学研究科([email protected])
0 はじめに:読み手フレンドリーな論文を目指して
1
0 はじめに:読み手フレンドリーな論文を目指して
卒業論文の体裁があまりにも整っていないため、せっかく製本までしたにも関わらず教員から突き返される
学生が毎年いるようです。そこでこのメモでは、論文の体裁に関して注意すべき点をまとめておきます。
体裁が整っていない論文は、論文ではありません。論文は、ある主張を読み手に説得するために、文章で
もって膨大な情報を体系的にまとめ上げるメディアです。体系を示すためには体裁が整っている必要がありま
す。体系がなく体裁が整っていない、すなわち思いつきのアイディアやたまたま目に付いた事実が無秩序に並
べられている文章を読むことは苦痛でしかありません。このように読み手の立場を考えずに文章を書く人が著
す論文は、ほとんどの場合、内容も劣悪です。少なくとも多くの読者はそう考えているはずです。ですから体
裁が整っていない論文に対する印象は確実に悪くなります。万が一、内容が優れていたにも関わらず体裁が
整っていない―――そんなことはほとんどないのだけれども―――から、あなたの論文の評価が低くなったとした
ら、これほど損なことはありません。論文は、読み手に理解されて、はじめてその存在意義が生まれます。体
裁を整えることで読み手フレンドリーな論文を作るよう努力しましょう。
体裁を整える上で何よりも重要なのは、全体を通じて統一されていることです。様々な書籍を読んでみると
分かるように、引用の仕方や参考文献リストなどには様々な体裁が存在します。ただし一冊の本の中に異なる
体裁が共存することはまずありません。読み手に無用な混乱を招かないために必ず体裁は統一しましょう。信
頼できる一冊の学術書を参考にして(内容ではなく)体裁をそっくり真似るというのもひとつの方法です。
このメモでは、論文の内容ではなくて体裁についての注意点をまとめています。体裁という形式的なルール
を守ることで、内容的に価値のある論文を書いて欲しいというのが、このメモが目指すところです。またゼミ
ナールでの限られた時間を、体裁ではなく内容についての議論に費やしたいという意図もあります。したがっ
て、このメモは、論文の体裁に関して包括的に説明するものではありません。むしろ、これまで学部学生の卒
業論文を指導する際に直面した問題を中心に採り上げています*1 。参考文献にも一部挙げているように、論文
の体裁に関するマニュアルは世の中に多数存在しますので、詳細についてはこれら文献に当たってください。
松井ゼミの卒業論文の構成は、以下の通りにして下さい。紙のサイズは A4 にして下さい(このメモも A4
サイズです)。この構成と紙のサイズを守ってもらえれば,1ページ当たりの字数などレイアウトやデザイン
は自由です(例えば、両面印刷にしたり、縦書きにしたりしても構いません)。
1. とびら
2. 要約
3. 目次
4. 本文
5. あとがき
6. 参考文献
それぞれについて注意すべき点を以下でまとめておきましょう。
*1
実際のところ、大学院生の論文にも同様の問題は多々見られます。
1 とびら
2
1 とびら
必ずつけて下さい。必要な情報は以下の通りです。もちろんレイアウトは自由です。
• タイトル
• 所属大学と学部
• ゼミナール(「松井剛ゼミナール」ですね)
• 本人の氏名(読みにくい名前の場合は読み仮名あるいはアルファベット表記があるとよいです。留学生
の場合は母語でも表示しておくとよいでしょう)
• 学籍番号
• 卒業年度
2 要約
冒頭に論文のタイトルを示し、次の行に氏名を記した上で、本文を 1,200 字程度に要約して下さい。読者は
「目次」や「要約」や「まえがき」に目を通して論文の概要をつかもうとします。したがって適切に本文の内容
がまとめられていることが重要になります。この要約だけで、この論文がどのような内容なのか理解できる自
足した文章として作成して下さい。
3 目次
章だけではなく節レベルまで列挙してください。なぜならば読み手は目次を見て論文の流れを知ろうとしま
すし、書き手もまた目次を見ることで自分の論文の論理展開を客観的に評価できるからです。またページ数も
必ず付けて下さい。このドキュメントの 0 ページにある目次を参考にして下さい。多くのワープロソフトで
は、目次を自動的に作成することができます。またページ番号、章・節・図表の番号なども、自動的に振るこ
とができます。こうした機能を学ぶのは多少面倒なことですが、一度身につけると体裁に気をとられず内容に
集中できるため生産性が飛躍的に向上します。ぜひ活用してください。
4 本文
4.1 レイアウト、ページ番号、フォント
行間はあけた方が読みやくなります。A4 サイズであれば 1,600 字ほど詰めることができます(40 字× 40
行)。しかしそれでは読みにくいので行間を空けた方が良いでしょう(例えば 40 字× 30 行)。文字間の間隔
は行間よりも少なくするのが基本です。手元の書籍をご覧下さい。意外と行間が空いていることに気づくで
しょう。
ただしページ数があまりにも少なくならないよう気を付けましょう。そのような場合、あまりにも薄すぎて
4 本文
3
製本ができないため白紙を後ろに挿入することになります。卒業論文に「メモ欄」をつけるのは、かなりみっ
ともないので避けましょう。
製本することを考慮して、上下左右に余白を空けることも忘れないでください。製本所にもよりますが、多
くの場合、製本の際に上下左右を何ミリかカットします。あまり余白がないと文字がページ一杯に溢れてしま
い、これもまたみっともないです。上下左右に2∼3センチの余白があるときれいに仕上がると思います。少
なくとも綴じる側(横書きなら左、縦書きなら右)は必ず2∼3センチあけましょう。
ページ番号は、各ページに必ず付けましょう。これは最終チェックを行う際にも非常に役立ちます。
フォントは、明朝体を用いるのが普通です(この文章のフォントも明朝体です)。まれに文章全体において
ゴシック体を用いている文書がありますが、目が疲れるのでやめましょう。この文章では数カ所でゴシック体
を用いて強調していますが、これは例外的であると理解してください。文章のあちこちにおいて、太字にした
・・
り圏点を打ったり 下線 を引いたりするのはやめましょう。洗練された文章を書けないためイイタイコトを適
切に表現できない人が、こうした装飾を過剰に施す傾向にあります。
以上はあくまでも論文の「見た目」に関する注意点です。確かに内容が乏しいのに見た目だけが美しい論文
はみっともないですが、形から入ることの良さもあります。見た目も美しい論文にすることで、論文の質を高
める上で不可欠な愛着やこだわりを生み出しましょう。
4.2 タイトル
内容を適切に要約したタイトルになるよう最後まで悩み抜いて下さい。内容を反映しないタイトルは、読み
手の不信感を醸成します。タイトルの付け方にはいろいろとありますが、代表的なものとして2つ挙げられま
す。ひとつは、その論文のキーワードを列挙するというものです(例:「セーラー服と機関銃」)。こうしたタ
イトルには、読み手に対してこの論文のカギ概念が何か明確に伝わるというメリットがあります。もうひとつ
は、その論文の問い自体をタイトルにするというものです(例:「なぜあのセーラー服を着た少女は機関銃を
乱射したのだろうか」)。こうしたタイトルには、読み手に対してこの論文の問いが何か明確に伝わるというメ
リットがあります。
実は、自分の論文のカギ概念が何か、自分がどんな問いを問うているのかが分からなくなっていることは決
して少なくありません。タイトルを考えるということは、研究の基本的な部分を最確認するという意味で非常
に重要な作業です*2 。
『男はつらいよ:寅次郎忘れな草』のようにコロン(「:」のこと)を用いることでメインタイトルとサブタ
イトルを組み合わせるという方法もあります。例えばメインタイトルでキーワードを列挙して、問いをサブタ
イトルとするといった使い分けが可能です。しかしタイトルを長大にしてはいけません。簡潔さと明瞭さを心
がけてください。
なおタイトルには通常、句点(「。」)や読点(「、」)は用いられません。「伝染るんです。」ではなく「伝染る
んです」としましょう。
*2
初めて確認するというケースもあります。
4 本文
4
4.3 文章
このメモは「ですます調」で書いていますが、論文では「である調」が標準的です。「である調」と「ですま
す調」が混ざっていないかよく確かめましょう。
論文は名文や美文である必要はありません。わかりやすさを追求しましょう。難しい文章の方が格好良いと
考える学生が時折いますが、これはとんでもない誤りです。インテリ気取りで無駄に難解な表現を使うことほ
どみっともないことはありません。難解で複雑な概念を用いることが許されるのは、それを使わなければどう
しても説明ができないという場合のみです*3 。複雑な現象や論理を誰でも分かる表現で説明することこそが、
あなたが取り組むべき知的作業なのです。この難しさを書き手が引き受けることで、読み手にフレンドリーな
文章を作りましょう。
分かりにくい文章を改善する方法としてここでは4つ挙げましょう。第1に無駄に難解な表現を平易なもの
に変える。第2に不要な表現を省く。第3に長い文章を分割する。4点目について説明する前に、以下の<例
>でこの3点について確認しましょう。
<例>
× 家電業界におけるメーカー間競争が激烈なるものに化して久しいが、かつてマネ
シマスタ電器によって提供が行われてきた製品群は、同社と競合を繰り広げてき
た他社によって市場に投入されてきた製品群を模倣しているに過ぎないという批
判的言説がなされていたが、同社が近年高い成果を挙げることを可能ならしめた
諸要因はいかなるものであったのであろうか、という疑問を抱かざるを得ない。
△
近年、家電業界における競争が厳しくなっている。かつてマネシマスタ電器は他
社製品を模倣しているとよく批判された。なぜ同社は近年高い成果を挙げられる
ようになったのだろうか?
○
家電業界における競争が激化している。これにも関わらずマネシマスタ電器は近
年高い成果と挙げている。しかしかつて同社は、他社製品を模倣しているに過ぎ
ないという批判を浴びてきた。なぜマネシマスタ電器は高収益を挙げる革新的な
企業に変革することができたのだろうか?
この「×」の文章は、不必要に長過ぎるし無駄に難解な言い回しが使われています。これは書き手自身が混
乱していることのあらわれです。このような文章を読まされた人はイライラするに違いありません。そこで
「△」では、平易な表現に改めて不要な表現を省き、3つの文章に分けてみました。しかしこれら3文の間の関
係が不明瞭なため、意味が通じません。「○」では第2文を付け加え、さらに第3文に接続詞を、第4文に説明
を追加することで、意味のある文章の流れを作りだしています(接続詞については、次の節で説明します)*4 。
上記3つの方法に加えて、文章を明瞭なものにするためによく用いられる第4の方法は、節や句の順序を変
かみそり
*3
こうした考え方を「オッカムの剃刀」と言います。
*4
実際のところ、この文章には依然として問題があります。例えばこの<例>の論文で問いたいのは、マネシマスタ電器が他社に比
べて好業績であることの理由なのか、それとも他社にはない独創的な製品を開発できるようになった理由なのか、どちらなのか不
明です。もしかしたら両方に関心があるのかもしれません。その場合は、両者の関係をどう著者は捉えているのかを説明する必要
があります。このように文章を磨くという作業は、自ずと自分の思考の至らなさを痛感して論理構成を鍛えていく作業となります。
4 本文
5
える、というテクニックです。例えば以下の<例>に示した「○」の文章は「×」の文章よりも読みやすいこと
は明らかでしょう。 これについての詳細な解説は、本多 (1982) の第2章と本多 (1994) の第3章にあります。
<例>
× 私は馬鹿な A 君とあほな B 君と頭がいい C 君と D 君は男だと主張した。
○
馬鹿な A 君とあほな B 君と頭がいい C 君と D 君は男だと私は主張した。
○
私が主張したいのは、馬鹿な A 君とあほな B 君と頭がいい C 君と D 君は男だ、
ということである。
このように明快な文章を作成する上で大切なのは、ひたすら書き直すことです。パソコンやワープロを使っ
ているだから、手書きしかできなかった昔とは違って書き直しは手間をかけず何度もできるはずです。繰り返
し読み返して、分かりにくかったり意味が通じなかったりする箇所は徹底的に直しましょう。
4.4 接続詞
接続詞を意図的に多く使いましょう。そうすることで論理展開を明確に読み手に伝えることができます。た
しかに接続詞を多用するとエレガントな文章にはなりません。しかし読み手は、結論に向かう論理展開におい
て飛躍がないかどうかをチェックしながら読んでいます。批判に開かれた堂々とした文章を書くために、文章
と文章(あるいは段落と段落)をつなぐ適切な接続詞が何かを常に意識しましょう。
接続詞を多用することは、読み手に対してだけでなく書き手にとってもメリットがあります。冒頭で述べた
論文の定義を再確認しましょう。論文とは、ある主張を読み手に説得するために、文章でもって膨大な情報を
体系的にまとめ上げるメディアです。しかし実際に論文を書き進めていると、いま執筆している部分が論文全
体でどのような意味を持つのか分からなくなってしまう場合があります。こうした論理展開上での混乱を避け
る上でも、文章と文章(あるいは段落と段落)がどのような論理的関係にあるのかを確認する、すなわち挿入
すべき適切な接続詞は何かを常に悩むことが必要です。
4.5 段落
段落の最初は全角スペースを 1 文字分空けましょう。半角スペースは分かりにくいのでダメです。最近は
ウェブサイト上の文章のレイアウトが影響しているためか、1文字分を右にずらすことをせずに、段落間に1
行分のスペースを設けて段落が新しくなったことを示す書き方をする学生が時々います。こうした段落の示し
方は、論文では避けてください。
段落の長さにも注意してください。ひとつの段落が実に長い文章を書く人もいれば、5∼6行で段落を改め
る人もいますから、適切な段落の長さについては一概には言えません。しかしながら読みやすい文章に共通し
ているのは、文章を通じて段落の長さがあまり大きく変動しない、ということです(もっとも意図的にある段
落を短くするといったテクニックもあります)。学部学生の場合、1段落が長大なものになってしまう傾向が
あるようです*5 。段落が長くなってきたら、書き手である自分自身が混乱している可能性が高いので注意して
ください。
*5
逆に社会人の文章は、1段落が短くなる傾向にあります。1文からなる段落も見かけますが、これでは段落の意味がないのでやめ
ましょう。
4 本文
6
では何が段落の長さを決めるのでしょうか?原則は、ひとつのトピックでひとつの段落を構成する、という
ものです。論文の書き方に関する古典のひとつである Strunk and White (1999) では、段落について3つの
原則を挙げています。
1. トピック・センテンス(その段落で一番イイタイコトを示している文章)が冒頭またはその近くにくる
2. これに続く文章が、トピック・センテンスの内容をより詳しく説明したり、より確固たるものにしたり、
発展させたりしている
3. 最後の文章では、トピック・センテンスの主張を強調するか、または何か重要な結論を述べる
まとめると、
(1)主張を最初に述べ、
(2)それが説得的であることを論理やデータで示し、
(3)その主張
を最後に再確認もしくは展開する、という流れをひとつの段落でつくるということです。これはあくまでも原
則であり、すべての段落をこのようにする必要はありません。例えば時間の流れに沿って事実を記述する場合
は、こうした段落を構成することは時には難しいかもしれません。しかし特に議論を展開する際には、この原
則を強く意識してください。
4.6 引用
他の本や論文に書いてあることをあたかも自分が考えたような書き方を決してしていけません。丸写しなど
ひょうせつ
もってのほかです*6 。 剽 窃 はカンニングと同じくらい学生にとって重い罪です。出所を明確にすることが論
文執筆上、非常に重要です。
引用の体裁はいくつかありますが、ここではマーケティングの分野で一般的な形式を紹介します。ただし上
で述べたように、統一する限りこれ以外の形式でも一向に構いません。文章の引用には基本的に、間接的な引
用と直接的な引用の2種類があります。以下の<例>は間接的な引用の例です。
<例>
1. 山田(1998)によると、太陽は必ずしも東から昇るわけではないとある種の人々は考えているとい
う(p. 56)。
2. 後者の立場の代表例として山田(1998)や West(1987)、Smith(1988)などが挙げられるだろ
う。以下では山田(1998)を例として取り上げて、こうした立場の考え方を検討していくことにし
よう。(以下、山田(1998)の概略が続く)
以上のように文章の引用には、(1)文献名(名字と出版年で示す)と(2)引用ページ、(3)引用した内
容の3つの情報が含まれていることが分かると思います。ただし、(2)は必ず記す必要はありません。とい
うのも引用内容が、その文献の全体を通して主張されていることであったり、繰り返し論じられていたりする
場合もあるからです。
*6
実際、教員に見つからないようにして丸写しをするのは非常に難しいし、それなりの知的な労力もかかります。この点についてウ
ンベルト・エーコ (1991) は次のように述べています。
「たとえ外国語によるものであれ、すでに印刷された著作をコピーするのは
よくない。なぜかといえば、教員がほとんど情報に通じていないにしても、それの存在していることをもう知っているに違いない
からだ。けれども、カターニャで作成された論文をミラノでコピーすれば、うまくやりおおせるであろう。もちろん、論文の指導
教員がミラノで教える以前にカターニャで教鞭をとったことがないかどうかを知る必要がある。したがって、論文をコピーするた
めにも、研究という知的作業が前提になるのである」
(p. 7)。
4 本文
7
次の<例>は直接的な引用の例です。
<例>
日本において今やクリスマスは年中行事の一つとして確実に定着しているように思える。しかしながら
現在においてもこうした状況は必ずしも好意的に受け止められているわけではない。例えば新聞の投書
欄で 70 歳(無職)の男性は次のように述べている。
「キリスト教を信じているわけでもないのになぜ日本人がクリスマスを祝うのだ。私の家庭ではク
リスマスに関わる行事は一切行わない。妻も私もそれが普通だと考えてきたし、娘たちもそう考え
ているに違いない」(『朝売新聞』2010 年 12 月 25 日夕刊, p. 8)
このように直接的な引用の場合は、引用ページも明記しましょう。
4.7 注
注があるといかにも論文らしくなるのですが、無理をして付ける必要はありません。必要な場合だけ使いま
しょう。不要な注をたくさん付けることは、かえって読み手の心証を害することになるでしょう。
注には大きく2つの役割があります (斉藤, 1998, pp. 100-106)*7 。
ひとつは補足説明のための注です。本文の大きな流れでは必ずしも重要ではないが、語句の説明など簡単に
触れる必要がある場合がこれにあたります。このメモの注はこうした役割を果たしています。
もうひとつは引用の出所の注です。引用については 4.6 で説明しました。そこで紹介した引用の様式は、参
考文献リストを巻末に載せて、本文では「山田(1998)は、」という形で言及していますが、注を用いて引用
の出所を表示する方法もあるのです。
4.6 の例を用いると次のようになります。
<例>
キリスト教を信じているわけでもないのになぜ日本人がクリスマスを祝うのだ。私の家庭ではクリスマ
スに関わる行事は一切行わない。妻も私もそれが普通だと考えてきたし、娘たちもそう考えているに違
いない 1 。
————————————
∗1
『朝売新聞』
「緊急特集:クリスマスなんて大嫌い!」2010 年 12 月 25 日夕刊, p. 8。
何度も説明したように、統一さえされていればどちらを用いても構いません。こちらの様式を採用した場合
は巻末の参考文献リストを付けない場合が多いようです。しかしこの場合でも参考文献リストを載せる方が読
み手に対して親切だと思います(6 を参照)。
注を載せ方にも 2 つの方法があります。このメモの注のように注があるページの下に載せる場合と、章や論
文全体の終わりに一括してまとめて載せる場合です。これも好みの方を選んで下さい。
*7
なぜこの場合、「p.」とせずに「pp.」としたのでしょうか。1つのページの場合は「p.」、複数のページの場合は「pp.」と表記し
ます。
4 本文
8
4.8 図表
図表をめぐって多くの学生が犯しやすい間違いは、図表に示された事実や論理を文章で説明をしていないと
いうことです。図表は文章の補助です。図表を示したからといって、文章による説明を省いてはいけません。
最近はパワーポイントが大学でもビジネスの現場でも多用されており、文章を伴わない資料が増えています。
注意して欲しいのは、こういった資料の多くは誰かが口頭で説明することを前提にして作られている、という
ことです。一方、論文が読まれる際に、書き手が読み手に対して直接、補足説明するということはほとんどあ
りません。すなわち論文は自足して理解できる文章でなければなりません。文章が主であり図表はあくまでも
従であるということを強く意識してください。
図表は、多くの場合、次の4つから構成されています。
1. タイトル
2. 図表そのもの
3. 注
4. 出所
タイトルは必ず付けましょう。論文のタイトルと同様に、内容を適切に要約したものにしてください。タイ
トルの前には、第2章の1つ目の図の場合は「図 2.1:」、第3章の4つ目の表の場合は「表 3.4:」というか
たちで番号を振ります。タイトルは、図表そのものの上に付けてもよいですし、図表そのもの、注、出所の下
に付けてもよいです。ただし位置についてはすべての図表について統一してください。
図表そのものについては、重要なのはわかりやすさです。上で述べたように、図表は文章の補助です。文章
の理解を深めるために図表があるのですから、図表が分かりにくかったら存在する意味はありません。
例えば、以下の文章を補足するために作成したのが、図 1 です。
実際、文化庁による平成 13 年度(2001 年)
『国語に関する世論調査』
(文化庁文化部国語課, 2002)に
よれば、
「癒し」という表現が 2000 年代初頭の日本において定着しつつあったことがうかがわれる(図
1)。この調査では「彼は理科系に進んだ」(a)と「この曲は癒やし系だね」(b)の「二つの言い方を挙
げ,どちらを使うかを尋ね」ている。回答者の年齢別に分けたのが図 1 である。「癒やし系」を使うと
いう回答とどちらも使うという回答の比率は年齢が上がるにつれて減っているのに対して、「理科系」
は使うという回答とどちらも使わないという回答の比率は逆に年齢とともに上昇している。すなわち
「癒やし系」という言葉は若い層に普及した新しい言葉であり、しかも若い層のほとんどがこの言葉を
使っている、ということである。興味深いのは、若年齢層になるほど、「理科系」というコトバよりも
「癒やし系」というコトバが用いられているということである。例えば「癒やし系」のみを使うという
解答は、60 歳以上ではわずか 9.5 %であるのに対して 16∼19 歳では 43.3 %に達している。
この引用にあるように、図 1 は、出所のデータを引用者がグラフに加工したものです。元のデータをそのま
ま引用するのではなく、より理解しやすい形に変えることが必要になる場合もあります。
また図 1 には「注」を付けて、内容を理解しやすいようにしてあります。図表は文章の補助であることを本
節では強調していますが、一方、図表だけ見た場合にも内容が適切に理解されるような工夫も必要です。
さらに図表が誰かによって作成されたものであるならば、当然、出所を明記しなくてはなりません。
表は、多くの場合、クロス表の形をとるでしょう。ハンス・ザイゼル (2005) によれば、クロス表を作成す
4 本文
9
図1
「理科系」と「癒やし系」のどちらを使うのか
60
50
40
a の方を使う
30
b の方を使う
20
どちらも使う
10
どちらも使わない
0
注:a は「彼は理科系に進んだ」、b は「この曲は癒やし系だね」を意味する。
出所:文化庁文化部国語課 (2002) より引用者が作成
表1
1年のあいだに重罪の容疑で検挙された男性の数、年齢別
年齢区分
重罪による容疑で検挙(%)
検挙なし(%)
合計(%)
実数(単位:千人)
10-15
3.4
96.6
100
(352)
16-19
7.1
92.9
100
(264)
20-29
3.5
96.5
100
(720)
30-39
1.8
98.2
100
(536)
40-49
.9
99.1
100
(392)
50+
.2
99.8
100
(1,032)
出所:ザイゼル (2005), p. 37
る際の一般的な原則は、クロス表に挙げられているいくつかの要素のうちのひとつが他の要素の原因であると
考えられる場合は、原因となる要素の方向にパーセントの数値を計算する、というものです (ザイゼル 2005)。
表 1 が具体的な例です。
図表は、写真などは除いて、基本的には色を使わないで白黒で作成してください。多様な色を使った図表の
表現は美しいですが、本質的ではない装飾に走ってしまう危険があるからです。図表は単純化することでわか
りやすさを追求するものですから、こうした表現上の制約を設けたいと思います。
5 あとがき
10
4.9 表記の統一
論文の体裁で大事なのは統一されていることだと冒頭で述べました。これは表記に関しても言えます。例え
ば「申込」と「申し込み」という異なる表記が混在している場合、統一してください。パソコンの便利なとこ
ろは、修正作業を一部自動化できるということです。いちいち全部読んで書き直すよりも、「置換」機能で修
正した方が効率的ですし、なによりも正確です。ただし作業後には、置換がきちんとなされているか必ずひと
つひとつ目で確認をしましょう。誤った言葉に置換してしまうと、最悪の場合、論文の内容が理解不可能にな
る場合もあります。
数字の表記も統一しましょう。すなわちアラビア数字(1, 2, 3…)か漢数字(一、二、三…)のどちらか
に統一しましょう。通常、横書きの場合はアラビア数字、縦書きの場合は漢数字を用います。ただし「石川五
右衛門」のような固有名詞を「石川5右衛門」と表記してはいけません。あるいは「21 エモン」を「二十一エ
モン」と表記してはいけません。アラビア数字の場合、1桁の場合は全角、2桁以上の場合は半角にするとよ
いでしょう。このメモでもそうしてあります。
やくもの
また約物(句読点や括弧類のこと)の表記も統一しましょう。縦書きの句読点は、点(、)と丸(。)を使用
します。これに対して横書きの句読点には次の3つの方式があります (日本エディタースクール, 2001)。どれ
かひとつに統一しましょう。
1. コンマ(,)とピリオド(.)
2. コンマ(,)と丸(。)
3. 点(、)と丸(。)
括弧については、和文の部分には全角、欧文の部分には半角を使用してください。前括弧が半角、後括弧が
全角といった不統一は避けましょう。
5 あとがき
「あとがき」では、論文を書き終えての感想を書いて下さい。(a)謝辞と(b)下の学年へ向けての論文作成
上のアドバイスの2点を書くことを松井ゼミのローカル・ルールとします。
(a)については、まずゼミでの2年間を振り返った上で他のゼミテンに向けて素直に感謝の気持ちを書くよ
うにして下さい。また大学での学びを終えるにあたって、長年サポートしてくれたご家族の方々への感謝も記
すべきです。さらに重要なのは、調査に協力をしてくださった方への謝辞です。インタビューや質問票調査、
フィールドワークなどで時間を割いてくれた方々に御礼を述べてください。ただし匿名を希望される方々の名
前や所属先を示してはいけません。この点、注意してください。
(b)については、論文を作る過程でどのようなことに悩み、どのようにして乗り越えたのかについて書いて
下さい。そういった情報は、次年度、卒業論文を書く学生にとってきっと役に立つでしょう。見方を変えれ
ば、今まさに卒業論文に取り組んでおりこのメモを読んでいる皆さんにとって役に立つ金言が、上の学年が
作った文集にたくさんつまっている、ということになります。
6 参考文献
11
「2 要約」と「5 あとがき」については、4年生全員の分を綴じて、「卒業論文集」という
冊子にまとめて卒業論文発表会において、4、3年生に配布します。また次年度に新たに入っ
てくる新3年生にも渡します。製本した論文を提出すると同時に、この2つのファイルをメー
ルなどで担当者に提出して下さい。
6 参考文献
参考文献リストも必ず付けましょう。なぜならば参考文献リストにはいくつかの役割があるからです。まず
は自分のため。すなわち自分が持っている情報がどれだけ揃っているのかを目で確認することができます。リ
ストを見て絶対必要なのにまだ集めていない文献があったら、急いで図書館に駆けつけましょう。そのために
も早めに文献リストを作っておくことをお薦めします。
次に引用の出所を明示することです。これは既に説明しました。
また参考文献リストを見ることで論文に必要な情報にきちんとあたっているかどうか指導教員がチェックす
ることができます。つまり評価の手掛かりになるということです。専門の研究者の論文でもその参考文献リス
トを見るだけで、どの程度の研究をしているのか、その分野で何か新しい貢献をしたのか、おおよそは想像す
ることができるのです。
さらにその論文と似たようなテーマで研究する者にとって格好の情報源になります。情報を共有するという
意味でこれも非常に重要です*8 。
参考文献の書式にもいろいろなものがあります。ここでもやはりマーケティングの分野で一般的と思われる
書式を紹介します。この形式はもちろん 4.6 で紹介した引用の形式と対応しています。以下では文献の種類に
応じた書式を説明します。
6.1 書籍の場合
<例>に示されているように、書籍の場合必要なのは以下の通りです。
1. 著者名(欧米人名の場合は「名字, 名前」というようにカンマを間に付けて日本人名と同じ順序にし
ます)
2. 出版年
3. 書名(和書の場合は『』でくるむ。洋書の場合はイタリック体*9 にする)
4. 出版社名(洋書の場合は出版社名の前にコロンをつけてその所在地を記すことが多い)
<例>
赤川ジローラモ(1978)『セーラー服とワイシャツと私』, 角山書店.
Yamada, Yamakichi (1987), The World of New Age Science, Onebridge: Onebridge University
Press.
*8
逆に言えば、自分のテーマに必要な文献を集める手法のひとつが参考文献をどんどん辿るという方法になります。
*9
Italic のように傾いた書体です。
6 参考文献
12
上の<例>のように文献情報が 2 行以上になる場合は、2 行目以降を全角2文字分くらい右に字下げしてく
ださい*10 。「•」などの行頭文字を用いて箇条書きの形で文献リストを示してはいけません。
6.2 論文の場合
学術雑誌や書籍に掲載された論文の場合に必要な情報は以下の通りです。
1. 著者名
2. 出版年
3. 論文名(日本語の場合は「」でくるむ。欧文の場合は“ ”でくるむ)
4. 論文が掲載されていた雑誌または単行本の名前(単行本の編者がいる場合はそれも記す)
5. 雑誌の場合は巻と号(年刊の場合、もちろん号はいらない)
6. 論文が掲載されているページ
<例>
山田山吉(1998)「地動説再考:太陽は東から昇るのか?」『地球大学紀要』45, 50-73.
山田山吉(1992)「地動説の現在・過去・未来」田中五郎編『ニューエイジサイエンスのニューウェイ
ブ』, 筑摩書店, 156-165.
Yamada, Yamakichi (1999), ”Geocentric Theory Reconsidered,” Journal of New Age Science, 32(1),
13-24.
6.3 雑誌・新聞記事の場合
無記名の雑誌・新聞記事の場合に必要な情報は以下の通りです。
1. 媒体名(『』でくるむ)
2. 記事名(「」でくるむ)
3. 記事掲載年月日
<例>
『朝売新聞』「緊急特集:クリスマスなんて大嫌い!」2010 年 12 月 25 日夕刊, 8.
『LENON』「プロフェッサーはちょい枯れセクシー!」2005 年 3 月 2 日号, 33-45.
ただし記名記事の場合は、著者名も明記する必要があります*11 。この場合は、6.2 に準じてください。
以上の規則に従って文献情報を整理してそれらを並べましょう。並べる順番は、欧文文献が多くない限り著
者名の五十音順にしておけばいいでしょう。なお同じ著者の複数の著書や論文を用いた場合は、刊行年が古い
ものを先に、新しいものを後に、という順に並べて、2つ目以降の文献の著者名は「——–」と表記します。こ
のメモの最後にある「参考文献」を参考にして下さい。
*10
この字下げは「インデント」と呼ばれています。
*11
日本の新聞記事のほとんどは無記名ですが、英文の新聞記事の多くには著者名が明記されています。
7 時間管理:むりやり早めに第1稿をつくろう
13
7 時間管理:むりやり早めに第1稿をつくろう
以上が論文の体裁に関する注意点です。この節で申し上げたいのは、体裁ではなく時間管理です。慌てない
よう少しずつ準備しましょう。そのためにまず大切なのは、書ける部分から書き始めることです。論文は頭か
ら順に書く必要はありません。書ける部分から書き始めて、書きあげたパーツを体系的に結びつけていくとい
うのが効率的です。頭から書くことにこだわってしまえば、未来永劫論文は完成しません。
もうひとつ大切なのは、むりやり第1稿を書き上げることです。このことのメリットは3つあります。第1
に、精神的に非常に楽になります。書き上げたことへの満足感から高いカタルシスを得ることができるでしょ
う。第2に、論文の全体像を見つめることで、足りない部分が何か、余計な部分が何か、明瞭になります。足
りないデータを収集して足りない論理は構築して、贅肉を削ぐことができます。第3のメリットは、書き直し
の時間ができることです。これが最も重要なポイントです。論文の質を高めるためには書き直すことが決定的
に大切です。第1稿を締め切り直前までを練りに練って書き直すよりも、荒い内容で良いのでまず第1稿を仕
上げてそこから書き直す方が、はるかに論文の質が向上します。理由はシンプルです。第1稿を仕上げること
で、自分が書いた文章をあたかも他人が書いた文章のように客観視することができて、問題点を発見しやすく
なるからです。その意味で、第1稿を書き上げたらその日の夜は一切論文のことは忘れてしっかり寝て、翌朝
からすっきりしとした気分で論文を読み直して書き直すことをおすすめします。
むりやり書き上げるといっても、書けないという人もいるかもしれません。実は研究者も含め多くの人が書
きたくても書けないという悩みを抱いています。ひとつの解決案は、書くためのモチベーションを自分で作る
ことです。例えば1ページ分の文章を書き上げたら甘いものを自分へのご褒美としてあげるとか、1日に何文
字書いたのかを記録してグラフにするといった工夫は、意外と効果的です。こうした工夫については、Silvia
(2007) を参考にしてください。英書ですが、小さな本ですし、とても面白く分かりやすい内容です。
8 推敲:印刷した上でのチェック
何回も読み直して書き直すことの重要性は繰り返し述べてきました。おそらくパソコンの画面を見ながら修
正することがほとんどでしょう。しかし時折すべてを印刷した上で読み直して、赤ペンなど黒色以外のペンで
修正することをお勧めします。些細な間違いが意外に多いことに気づくでしょう。図 2 は推敲の例です。推敲
に用いる校正記号については、日本エディタースクール (2007) を参照してください。
これにも増して重要なのは、紙に印刷をして一覧性を確保することで論文全体の流れについての問題点を発
見できる、ということです。特に第1稿が完成してから行う修正作業では、要所要所で印刷して推敲と良いで
しょう。紙代をけちけちしてはいけません。紙代(や環境負荷)を有り余る質的向上を期待できます。紙1枚
に複数ページを印刷する、裏紙を使う、両面印刷をする、など工夫をしてください。
9 製本:修正する最後のチャンス
最終稿ができあがると、印刷をして製本する作業が待っています。提出前のチェックも細心の注意をもって
行いましょう。よくあるミスは、ページが抜けたり逆順になったりするというものです。一度製本したら、直
すことはできませんから、抜けや順番についてよく確認しましょう。これを怠ると、また高い製本代を支払う
10 おわりに:健闘を祈る!
14
図2
推敲の例
はめになります。
また2冊以上製本する場合は、自分で予めコピーをとっておきましょう。製本所はその名の通り製本をする
だけでコピーまでしてくれません。完成した卒業論文は1部を大学に提出することになります。自分の手元に
残すためにもう1部製本することを強く勧めます。文集とともにとても良い記念になるでしょうから。プリン
トアウトした論文をクリップで留めて保存しようとする人も少なくありませんが、その場合、書類(あるい
はゴミ)の山の中に一瞬のうちに埋もれてしまい、二度と発見できなくなります。またファイルを保存して
いても、いつかなくしてしまいます。100 %の確率でそうなりますから、ぜひ製本して形にして残しておきま
しょう。
10 おわりに:健闘を祈る!
卒業論文研究は大学での学びの集大成です。意味のある問いを立てて、説得的な答えを導くために、大規模
な文章を論理的に破綻することなく構成することは簡単なことではありません。この難しさを、あなたは今ま
さに味わっていることでしょう。この困難を仲間とともに乗り越えて良い論文を書き上げて、すがすがしい気
持ちで卒業論文発表会を迎えましょう。あなた方が書き上げた論文を読むことを、心から楽しみにしていま
す。健闘を祈ります。
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参考文献
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参考文献
Silvia, Paul J. (2007) How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing, Washington, DC: American Psychological Association (APA), 1st edition.
Strunk, William and E. B. White (1999) The Elements of Style: Longman, 4th edition.
ウンベルト・エーコ (1991) 『論文作法:調査・研究・執筆の技術と手順』,而立書房.
斉藤孝 (1998) 『学術論文の技法』,日本エディタースクール出版部,第 2 版.
ハンス・ザイゼル (2005) 『数字で語る:社会統計学入門』,新曜社.
日本エディタースクール(編) (2001) 『パソコンで書く原稿の基礎知識』,日本エディタースクール出版部.
(2007) 『校正記号の使い方:タテ組・ヨコ組・欧文組』,日本エディタースクール出版部,第 2 版.
本多勝一 (1982) 『日本語の作文技術』,朝日新聞出版.
(1994) 『実戦・日本語の作文技術』,朝日新聞社.