WEBRTC のビジネスケース:最高の顧客体験を 実現する

WEBRTC のビジネスケース:最高の顧客体験を
実現する
2015 年 3 月
周知のように、現代の顧客は複数のチャネルで情報を利用し、好きなチャネルを使って企業とやりとりをしたいと考えています。企業はこの要
望に対応するため努力を重ねていますが、複雑なマルチチャネル型のやりとりによって顧客側は不要な労力を強いられています。本書では、企
業が複数のチャネルで顧客とやりとりをする際、ウェブリアルタイムコミュニケーション(Web Real-Time Communications、略して WebRTC)に
よっていかにして最大限の成功を引き出すことができるかについて考察していきます。
 コンタクトセンター・顧客体験管理担当
リサーチディレクター、Omer Minkara
複数のチャネルでのやりとりがますます複雑さを増
すなか、WebRTC によってウェブサイトやモバイル
アプリケーションにリアルタイムコミュニケーショ
ン機能を組み込むことが可能になり、顧客体験に新
しい風が吹き込まれました。
顧客は最小限の労力で
企業とやりとりをした
いと考えています。オ
ムニチャネル型プログ
ラムの利点を活かしつ
つ、その要望を満たす
のが WebRTC です。
Aberdeen が 2015 年 3 月に実施した調査、「CEM Executive's
Agenda 2015:Leading the Customer Journey to Success」(CEM 担
当役員の 2015 年の課題:カスタマージャーニーを成功へと
導く)の結果によると、企業は顧客体験管理(CEM)プログ
ラムの一環として平均 4 種類のチャネルを利用していました。
そのチャネルの種類は組織によって異なりますが、きめ細や
かで一貫性のある応対を提供しようとする姿勢は、大きな成
功を収めている企業に共通してみられました。この取り組み
はオムニチャネル(3 ページのサイドバーを参照)と呼ばれ
ることが多く、Aberdeen が 2014 年 11 月に実施した調査、
「Omni-Channel Contact Center:The Smarter Way to Engage
Customers」(オムニチャネル型のコンタクトセンター:よ
りスマートなカスタマーエンゲージメント)によると、顧客
の企業が現在 WebRTC
を活用しています。さ
らに 17%は導入に向け
た評価を行っていま
す。
が力を持つようになった今の時代、これが成功を決定づける
主な要因になっているといいます。
オムニチャネルの重要性を理解し、事業活動の中に取り入れ
ようとする組織が増えるなか、企業が直面する課題のひとつ
が、それを顧客にとって便利なサービスにすることです。す
なわち、顧客が複数のチャネルを自在に利用し、きめ細やか
で一貫性のある方法でニーズに対応してもらえるようなサー
ビスを提供することを目指しています。もうひとつの課題は、
コンタクトセンターのオペレーターがすべてのチャネルで行
われた顧客応対の履歴をタイムリーに、そして関連性の高い
情報に絞って確認できるようにすることです。可視化が不十
分だとオムニチャネル型の応対を実現することができず、顧
客体験に途切れが生じてしまいます。図 1 のデータによると、
WebRTC 導入企業はこうした課題にうまく対応しており、結
果的に未導入企業と比べてパフォーマンスを前年比で大幅に
改善していたことが分かります。
図 1:WebRTC 導入企業は未導入企業よりも優れた成果を達
成している
30%
28.7%
WebRTC 導入企業
25%
対前年比変化率
7%
未導入企業
19.2%
20%
18.8%
15%
9.3%
10%
5%
2.6%
5.2%
0%
代理店利用率
回答者数=407
品質 SLA 適合数
顧客満足度
出典: Aberdeen Group、2016 行進 2 月
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定義:WebRTC
WebRTC は、「Web Real-Time
Communications」(ウェブリア
ルタイムコミュニケーション)
の頭文字を取った言葉です。本
調査では、「WebRTC」とは「企
業がウェブブラウザやモバイル
アプリケーションによる音声通
話、ビデオチャット、ファイル
共有機能を使って、顧客に応対
することができるよう支援する
ための技術」を指します。
この技術を使用すると、企業は
複数の通信手段を同時に活用す
ることができるようになりま
す。たとえば、ビデオ機能とフ
ァイル共有機能を同時に使用す
ることもできるし、希望に応じ
て 1 種類の通信手段(音声通話
など)のみを使用することも可
能です。
顧客の立場から見ると、WebRTC
により、1 つのウェブブラウザ上
で 1 種類以上の通信手段を使っ
て企業と連絡を取り合うことが
できるようになります。たとえ
ば、企業ウェブサイトにアクセ
スしたら、同じウェブブラウザ
上で音声通話を開始して製品の
情報を集めたり、オペレーター
とビデオチャットをして問題解
決のためのサポートを受けたり
することができます。
上図の通り、WebRTC の導入企業は未導入企業と比べて、顧
客満足度を年間で 202%も改善していました(18.8%と
9.3%)。このことから、つながる世界に生きる現代の顧客
にとって、1 つのウェブサイト上に複数の連絡手段を設ける
ことがいかに重要であるかが分かります。
小売業、サービス業、教育産業、通信業、金融サービス業を
含む幅広い業種の顧客は、定期的に複数のチャネルを利用し
ています。そんな中、誰もがよりシームレスなやりとりを求
めています。WebRTC の導入企業が顧客を満足させていると
いう事実は、あらゆる業種の企業がオムニチャネルの取り組
みから高い成果を上げるため、この技術の果たす役割を評価
すべきであるということを物語っています。
特に小売業者は、めまぐるしく変化する顧客の期待に直面し
ています。消費者の好みの変化は、まず消費者とのやりとり
に表れることが多いからです。ウェブがすっかり普及し、消
費者がインターネットで製品やサービスの情報収集を行うよ
うになった今日、WebRTC は小売業者に多大なメリットをも
たらすと考えられます。したがって、CEM 業務に WebRTC を
取り入れることで、ウェブに精通した消費者は 1 つのウェブ
ブラウザ上で製品の詳細を集めることができるようになりま
す。また、顧客のコンテキスト(背景情報)に応じたメッセ
ージを送ることで、買い物カートの放棄率を下げ、ウェブサ
イト訪問を購入につなげることができるようになるはずです。
小売業者のパフォーマンスを評価した調査では、小売業者の
52%以上が両方の対策を講じていました。
WebRTC は、他の業種の企業にとっても大きなビジネスチャ
ンスを意味します。たとえば、見込み客に様々なサービスプ
ランを紹介している通信サービス事業者の場合、ウェブやモ
バイルアプリケーションでリアルタイムコミュニケーション
を活用することにより、各種サービスパッケージのブラウザ
画面を共有し、各プランのメリットを説明して、個別の顧客
に応じたきめ細やかな体験を提供することができます。同様
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定義:オムニチャネル型のコンタクトセ
ンター
本調査では、「オムニチャネル型のコン
タクトセンター」とは「複数のチャネル
(電話、ソーシャルメディア、ウェブ、
モバイル、電子メールなど)とデバイス
(店内、ノートパソコン、スマートフォ
ン)においてきめ細やかで、かつ一貫性
のある顧客体験を実現するために、正式
に戦略を策定し導入している企業」を指
します。
このようなプログラムの最終目標は、途
切れのない顧客体験を実現することにあ
ります。具体的には、あるチャネルやデ
バイスでの状況や体験を他のすべてのタ
ッチポイントに引き継ぐことで、会話を
スムーズに進行できるようにします。
マルチチャネル型のプログラムも同じく
複数のタッチポイントを使用することに
重点を置いていますが、定義上はデバイ
スをきめ細やかで一貫性のある応対のた
め最大限に利用すべきタッチポイントと
してとらえていません。
 レポート全文
『Secrets to Unlock
the True Potential of
WebRTC』(WebRTC
の真の潜在能力を
引き出すための秘
訣)
に金融機関の場合、住宅ローンを申し込もうとしている顧客
がいたら、ビデオチャットで住宅ローン担当者と直接会話で
きるようなシステムを設けることで絆を深め、その顧客に選
んでもらえるような関係を徐々に築き上げていくことができ
ます。また、金融機関の資産管理部門では、顧客がビデオチ
ャットや高音質の音声通話を使ってポートフォリオマネージ
ャーとリアルタイムでやりとりできるようにすることで、電
話でのやりとりと比べて、真の意味できめ細やかなサービス
を提供することができるようになります。
顧客を満足させ、その心を強くつかむようなやりとりを実現
するのみならず、WebRTC によってオペレーター人員の有効
活用を進めることができます。図 1 によると、この技術を活
用する企業ではオペレーター稼働率が前年比で 28.1%上昇
していたのに対し、そうでない企業の上昇率はわずか 2.6%
にとどまりました。WebRTC を導入することで、顧客は通信
手段を変えるたびにチャネルを切り替える必要がなくなるた
め、1 人のオペレーターが同じ顧客に対応し続けることが可
能になります。その結果、企業はオペレーターの稼働率を最
大限に高めることができるだけでなく、他のチャネルでのト
ラフィック低下により、全体としてオペレーター人員の数を
減らすことができます。人員削減によるコストの節約分は、
企業の収益増大につながる革新的なプロジェクトの資金に回
すことができるのです。
要点
顧客を満足させようとする取り組みは、どんどんハードルが
高くなっています。Aberdeen が 2012 年 2 月に実施した調査、
「Multi-Channel Digital Marketing:Addressing the Why's and
How's to Achieve Success in the New Era of Customer Engagement」
(マルチチャネル型のデジタルマーケティング:新時代のカ
スタマーエンゲージメントで成功を収めるための「理由」と
「方法」に対処する)では、CEM プログラムで複数のチャネ
ルを活用することが重要な差別化要因であると指摘していま
す。その一方で、現代の企業は顧客とのやりとりに平均 4 種
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WebRTC を導入するこ
とで、企業はオムニチ
ャネル型の事業活動を
顧客にとってより便利
なサービスにすること
ができます。
類のチャネルを利用しています。つまり、マルチチャネルは
すでに新たな常識となっているのです。オムニチャネルは企
業が自社の差別化を図るうえで重要な要素ですが、そのメリ
ットを最大限に引き出すためには、チャネル間で途切れのな
いシームレスなやりとりを確保するだけでは不十分です。企
業は、顧客の今いる場所、すなわちウェブとモバイルに組み
込まれているすべてのチャネルを簡単に使えるようにしなけ
ればなりません。
WebRTC は、オムニチャネルと現代の顧客が抱く期待との間
に存在する隔たりを埋めます。顧客にたった 1 つのプラット
フォーム(ウェブブラウザやモバイルアプリケーション)を
提供し、そこで複数の通信手段を利用して企業とやりとりが
できるようにします。そのため、顧客はデバイスやチャネル
を切り替えることなく、応対を受けることができます。オム
ニチャネル型のプログラムにこうした顧客目線の機能を設け
ることで、企業は顧客にとっての利便性を高め、カスタマー
ジャーニーを短縮すると同時に、コスト節約という形で事業
効率を実現することができるのです。
この重要な技術を活用して成功を手にするための第一歩は、
WebRTC のビジネスケースを確立することです。また、技術
の活用から最大限の利益を達成するため、適切な取り組みを
行うことも同じくらい重要だと言えるでしょう。望ましい成
果を上げるための取り組みについては、Aberdeen が 2015 年
3 月に実施した調査、「Secrets to Unlock the True Potential of
WebRTC」(WebRTC の真の潜在能力を引き出すための秘訣)
をお読みください。
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Aberdeen Group のご紹介
Aberdeen Group は 1988 年以降、世界中の企業の業績向上に役立つ調査結果を発表してきました。当社は、業界関係
者を対象とした一次調査で最高クラス企業を特定しています。アナリストチームは、外部の影響を受けない独自の
分析フレームワークから、ベンダーに依存しないファクトベースのデータを導き出しました。その調査結果は数十
万人ものビジネスプロフェッショナルに活用され、スマートな意思決定の促進と事業戦略の改善に役立てられてい
ます。
Aberdeen のコンテンツマーケティングソリューションは、コンテンツのライセンス供与、スピーキングエンゲージ
メント、カスタムリサーチ、コンテンツ作成サービスなどの手段を通じて、B2B 組織が販売サイクルの主導権を握
ることができるよう支援しています。 Aberdeen Group は米国マサチューセッツ州ボストンに本社を構えています。
本書は、Aberdeen Group が行った一次調査の結果をまとめたものです。Aberdeen Group は事実に基づく客観的な調査を行っており、発表時にお
いて最善の分析結果を提示しています。別途記載がない限り、Aberdeen Group, Inc.が本書全体の著作権を有しています。書式や手段を問わず、
Aberdeen Group, Inc.からの事前の書面による同意なしに、本書のいかなる部分も複製、配信、保存あるいは送信してはならないものとします。
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