コ・ブラウジング:顧客満足と業績アップを実現するた めの第一歩 2016 年 2 月 企業は顧客満足のために特別な費用をかける必要はありません。本レポートでは、コンタクトセンターでのコ・ブ ラウジング活用によりいかにして顧客満足度を高めつつ、コストを削減し、ひいては増収を実現することができる のかについてご紹介いたします。 コンタクトセンター・顧客体験管理担当 リサーチディレクター、Omer Minkara 適切な状況でサポートを提供することができれば、 オペレーターの生産性が高まり、最高の顧客体験を 実現することができます。 どの企業も顧客目線で会話を進めることを目指しています。 顧客のニーズを正確に把握できないと、問題の処理時間が長 引くため、コンタクトセンターのオペレーターの稼働率が悪 くなり、最終的には顧客を苛立たせる事態を招きます。 顧客は自分たちのニー ズがたやすく効率的に 解決されることを求め ています。コ・ブラウ ジングを通じて、オペ レーターにそうしたニ ーズを取り巻く背景情 報を提供することで、 企業はその要望に応え ることができます。 真の意味で顧客目線の会話を実現するためには、企業はオペ レーターに適切な情報とツールを提供し、背景情報の把握を サポートする必要があります。そこで登場するのが、コ・ブ ラウジング(定義は次ページのサイドバーを参照のこと)で す。この技術を採用する企業では、コンタクトセンターのオ ペレーターにウェブページやデジタルドキュメントなど特定 のアプリケーションを表示し管理できる手段を与えることで、 基本的に顧客の立場で物事をとらえることができるようにし ています図 1 には、コ・ブラウジングが組織の成功にどのよ うな影響を与えているのかを主な指標別に示します。 定義:コ・ブラウジン グ 本調査では、「コ・ブラウジ ング」とは「サービスプロバ イダーと顧客がウェブを通じ てリアルタイムでアプリケー ション(ウェブページ、デジ タルドキュメント、モバイル アプリケーションなど)を共 有し操作できるようにする機 能」を指します。顧客とオペ レーターの双方が、デスクト ップやタブレット、スマート フォンを含むさまざまな手段 でコンテンツにアクセスする ことができます。 図 1:コ・ブラウジングはコンタクトセンターの目標達成に 貢献している 10% 10.0% 対前年比変化率 8% 6% ブラウザ共有プログラム導入企業 6.2% 7.3% その他 5.1% 4% 2% 0% 年間収益 -2% n=215 1.4% 2.4% 0.2% 顧客あたりの 平均利益率 顧客満足度 -0.4% 顧客契約あたりの 平均コストの改善 出典: Aberdeen Group、2016 年 2 月 コ・ブラウジングは、パフォーマンスにかかわる主に 3 つの 分野で企業の成功に影響を及ぼします。それぞれの分野をさ らに掘り下げて確認しながら、コ・ブラウジングを採用する 企業がこの技術をいかにして活用し、最大限の成果を上げて いるのかを見ていきましょう。 顧客満足の実現:コンタクトセンター業界では、すべての道 は顧客の満足につながっていなければなりません。図 1 によ ると、コ・ブラウジングを採用する企業では、採用していな コ・ブラウジングの実行中は 同じアプリケーションを同時 に見ることができるだけでな く、「クリック・ツー・コー ル」(クリック通話機能)や 「クリック・ツー・ビュー」 (クリック表示機能)などを 使って音声やビデオといった 数々の通信媒体から互いに連 絡を取り合うことができま す。 コ・ブラウジングに関係する 機能として画面共有がよく知 られていますが、これは一方 の当事者のみがアプリケーシ ョンを操作できるのに対し、 コ・ブラウジングではカスタ マーサービス担当者と顧客の 両者が画面を操作することが できます。 www.aberdeen.com たとえば、サポートに 年間 1,000 万ドルを投 じている企業の場合、 コ・ブラウジングを導 入することで毎年 28 万ドルを節約できると されています。 25 % のコンタクトセンター では現在、事業活動の 一環としてコ・ブラウ ジングを活用していま す。 コ・ブラウジングを賢 く活用すれば、コンタ クトセンターをコスト センターからプロフィ ットセンターに変える ことができます。 い企業と比べて顧客満足度の年間上昇率が大幅に高いことが 分かります(5.1%と 1.4%)。これは主に、顧客とコンタ クトセンターのオペレーターが共通のアプリケーションをリ アルタイムで操作することができるために、顧客側の労力を 最小限に抑えることができるからだと考えられます。このプ ロセスによって、オペレーターが問題の原因究明と対応にか ける時間を短縮できるため、処理時間の短縮につながります。 顧客としては、問題への対応が早ければ、それだけ応対への 満足度が高まります。 サポートコストの削減:問題の原因究明に要する時間が減り、 処理時間が短くなれば、コンタクトセンターの効率がアップ します。すなわち、顧客ニーズの処理時間を短縮することで、 その分を他の顧客の応対に充てることができるわけです。そ の結果、オペレーターの稼働率が高まり、ひいては人件費の 削減につながります。事実、コ・ブラウジングを採用する企 業ではそうでない企業に比べて、オペレーターの稼働率が 10%高いというデータが出ています(65%と 59%)。 コ・ブラウジングのビジネスケースを評価し策定する際によ く検討されるのは、オペレーターの勤務時間をもっとうまく 活用することで、どの程度のコスト節約が見込まれるのかと いう点です。この技術を導入するには別途投資が必要ですが、 企業はその費用をコスト節約や収益増加という形で回収して います。特に前者に関して言えば、コ・ブラウジングを採用 する企業では、サポートコストを前年比で年間 2.4%削減し ているのに対し、採用していない企業では 0.4%増加してい ます。たとえば、企業がサポートコストとして毎年 1,000 万 ドルを投じていると仮定した場合、この 2.8%の差を考慮す ると、コ・ブラウジングを採用する企業はそうでない企業と 比べて、毎年 28 万ドル(1,000 万ドル×2.8%)を節約でき るという計算になります。 収益成長の促進:サポートコストの削減によってコ・ブラウ ジングへの初期投資に生じた費用を回収することができる一 www.aberdeen.com 方で、収益が増大するという側面もあります。この点に関し、 コ・ブラウジングを採用する企業ではその他すべての企業と 比べて、年間収益の成長率が前年比で 61%高くなっていま した(10.0%と 6.2%)。こうした企業では、サポートコス トの削減と営業収益の増加によって、最終的に顧客の利益率 が高まるという影響が出ています。実際のところ、コ・ブラ ウジングを採用する企業ではこの主要指標に関して年間 7.2%の上昇を達成している一方で、その他の企業では 0.2%という最小限の伸びにとどまっています。 コ・ブラウジングには、オペレーターに顧客ニーズに関する 背景情報を提供することで、収益成長率が高まるという利点 があります。たとえば、オペレーターがソフトウェアの問題 を解決するため顧客のブラウザ画面を共有している場合、そ の顧客が使用している具体的な製品をもとに、クロスセル (関連製品の販売)やアップセル(上位製品の販売)を行う ことができます。こうすることで、顧客のニーズに即した製 品やサービスを提案することができるのです。クロスセルや アップセルのビジネスチャンスを見極め、また追求すること に長けた経験豊富なオペレーターにこのような背景情報を提 供すれば、その力は計り知れません。コンタクトセンターで のやりとりを収益性のある事業活動に変えることができます。 そのとき注意すべきなのは、コ・ブラウジングからのクロス セルやアップセルがオペレーターの手腕にかかっているとい うことです。もし顧客のブラウザ画面を共有しているオペレ ーターが不慣れで、カスタマイズしたオファーの見極め方や 提示方法に精通していない場合、問題を解決する前にオファ ーを提示したり、顧客のニーズに合わない製品を提示したり することで、顧客を苛立たせてしまう可能性があります。御 社のコンタクトセンターのオペレーターがまだクロスセルや アップセルに熟達していないのであれば、まずは応対を終え てから、やりとりの中で見えてきた顧客ニーズを事業開発や アカウント管理の担当者に伝えることをおすすめします。こ レポート全文『OmniChannel Customer Care: Best-in-Class Steps to Success』 (オムニチャネル方 式の顧客ケア:最高 クラス企業が実践す る成功のためのステ ップ) 関連調査 『Agent Desktop Optimization: Three Strategies to Maximize Agent Productivity & Customer Experience』(オペレ ーターのデスクトッ プ最適化:オペレー ターの生産性と顧客 体験を最大限に高め るための 3 つの戦 略) www.aberdeen.com うすることで、社内の他の関係者がクロスセルやアップセル を行うことができます。 要点 優れた顧客体験は、今日のコンタクトセンターにおける最優 先課題です。顧客満足度を高めるため特別な費用をかけてい る企業も多くあります。本書では、コストの増大と顧客満足 の板挟みに遭う必要はないことを指摘してきました。現実は その逆で、コ・ブラウジングを導入した企業は顧客満足度を 高めつつ、サポートコストの削減と収益の増大を実現してい ることが分かっています。 コンタクトセンターが前述の成果を達成することができたの は、何よりもオペレーターに問題の背景となる情報を提供し ていたからでしょう。コ・ブラウジングでは、問題の内容を 実際に見ることができるだけでなく、遠隔操作でその問題に 対応することもできます。現在コ・ブラウジングをお使いの 場合、あるいはその導入をお考えの場合は、あらゆるチャネ ルの活動から収集した顧客応対の履歴を統一された方法で提 供することを強くお勧めします。こうすることで、オペレー ターは背景情報に照らして問題の内容を確認し、顧客情報を 掘り下げて把握することができるようになります。経験豊富 なオペレーターであれば、すべての情報を集約して顧客に応 じたきめ細やかな応対を実現し、カスタマージャーニー全体 を通じて一貫したメッセージを伝えることができるはずです。 www.aberdeen.com 11979 Aberdeen Group のご紹介 Aberdeen Group は 1988 年以降、世界中の企業の業績向上に役立つ調査結果を発表してきました。当社のアナリス トは独自の分析フレームワークからベンダーに依存しないファクトベースのデータを導き出し、業界関係者を対象 とした一次調査で最高クラス企業を特定しました。その調査結果は数十万人ものビジネスプロフェッショナルに活 用され、スマートな意思決定の促進と事業戦略の改善に役立てられています。Aberdeen Group は米国マサチューセ ッツ州ボストンに本社を構えています。 本書は Aberdeen Group が実施した一次調査の結果であり、発表時において最善の分析結果を提示しています。別途 記載がない限り、Aberdeen Group が本書全体の著作権を有しています。書式や手段を問わず、Aberdeen Group から の事前の書面による同意なしに、本書のいかなる部分も複製、配信、保存あるいは送信してはならないものとしま す。 www.aberdeen.com 11979
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