研修を終えて 青森山田高等学校 小玉 大伸 今回、私をこのような研修に参加させていただいたことを皆さんに本当に感 謝したいと思います。12日間という短い期間でしたが、学ぶことがとても多 く、貴重な体験をたくさんさせていただきました。数多くの出願者からこの8 人が選ばれ、引率の皆さんと一緒に参加できたことは何かの縁だと感じ、楽し く研修を終えることができました。 選ばれた当初はとても驚き、自分でも信じられませんでした。青森県内で自 分が8人の中に選ばれるとは正直誰も思ってもいなかっただろうと思います。 選ばれて嬉しいという気持ちもありましたが、やはり知らない人達の中で果た して自分はやっていけるのだろうかという緊張が、喜びと同時に込み上げてき たのを通知が来たときから今でも鮮明に覚えています。しかし、事前研修を繰 り返しているうちに本番の研修でのプレゼンテーションや英語での自己紹介で の不安が消え、落ち着いて本番に取り組むことができ、男女8名仲良く参加す ることができました。 フランスへは12時間の空路で移動しました。ヨーロッパどころか、初めて の海外渡航だったので、引率の方々にバッグの持ち方、財布の管理のしかた等、 いろいろ教えてもらいました。フランスでの一日目は移動だけで終わってしま いましたが、二日目は世界の歴史的文化遺産のモン・サン・ミシェルを見るこ とができました。一日目の移動で感じることができた日本とフランスの建物の 造りの違いと同様、モン・サン・ミシェルの造りは日本の文化遺産とはまった く違い、友達と夢中で写真を撮りながら観ていました。よく頻繁にテレビで見 る世界遺産を自分の目で見られたことに、自分でもとても驚きました。フラン スでの昼食は、私の口には合わず失礼ながら残してしまうことが多く、モン・ サン・ミシェルでは、有名なオムレツを残してしまいました。 宿泊したホテルは疲れが取れてしまうほどとてもキレイで、逆に研修以上に 舞い上がってしまうこともしばしばありました。 フランス三日目では、アレバ社のラ・アーグ再処理施設を見学し、再処理に ついていろいろ学びました。 「研修のしおり」のメモ欄を、この視察で全て使い 切ってしまうほどメモすることが多く、正直、頭が混乱してパニックになりそ うでした。ラ・アーグを実際に見学してみて、日本(六ヶ所)の施設と大して 違いがなく、規模が大きいだけで、日本と同様に安全性を主張するために広報 に力を入れていることが分かりました。 今回の海外研修の主旨は、原子力やエネルギーについて考えることでしたが、 自分では理解しようとしても上手く理解できず、悔しい思いをしました。質問 する機会も逃してしまい、本当に辛かったです。原子力はとても難しいですが、 今回の研修を機に少しずつ勉強して将来に役立てたいと思っています。 ラ・アーグ視察日の夜は、翌日の現地高校生との交流に向け、自己紹介やプ レゼンテーションのリハーサルを皆で行い、自信につなげることができました。 語学力など、8名がそれぞれ得意・不得意なものがありましたが、8人みんな で失敗を笑ったりせず、真剣に取り組んでいました。その様子は、私自身当事 者でありながらも、客観的にすごいと感心してしまいました。 4日目のグリニャール高校での交流は、正直言うと昨晩の時点で緊張のあま り「面倒くさい」と感じ、 「どうせ、英語が話せないから、相手に伝えられるは ずがない」と思いながら校門をくぐったのです。いざ、交流の時間となったと きに、イジイジしている私を見た引率の方々が「何か話しかけてみたら」とア ドバイスしてくれました。とても緊張したもののがんばって話しかけてみると、 私のつたない英語を、相手も自分なりにがんばって理解しようとしてくれてい るのが分かりました。それを見て、自分もちゃんと伝えられるようにしようと 話しかけることで、少しずつ友達を増やすことができました。事前研修でがん ばったプレゼンテーション、自己紹介も成功し、さらに事前研修で口を開くこ とができなかったディスカッションでは、自分からいろいろとフランスの高校 生に意見交換でき、本当に良かったです。 グリニャール高校の生徒との夕食会は本当に楽しくて、一生の思い出になり ました。夕食前のフリータイムで仲良くなった3人と同じテーブルで食べるこ とができ、何もかもが楽しくて夢のような時間でした。日本とフランスの高校 生の違いを直に感じることができ、自分の目標に掲げたことも達成しながら、 無事にフランスでの研修を過ごすことができました。 スウェーデンでは、添乗員さんが言っていたとおり、フランスの2倍近くの 早さであっという間に過ぎてしまいました。スウェーデンでの一番の思い出は、 フランスと同様、現地の高校生との交流でした。カテドラル高校では、高校生 だけでなく大学に通う卒業生も来てくださって、ストックホルム市内観光に同 行いただくなど、いろいろ思い出になることがたくさんあり、とても貴重な体 験をさせていただきました。フランスとスウェーデンで仲良くなった友達とメ ールアドレスを交換して、今でも連絡を取り合っています。 研修参加前の自分と今の自分を比べると、多少ではありますが自分でも変化 を感じることがあります。事前研修では、他の7人の顔色をうかがいながら手 を挙げて発表していましたが、研修の中盤あたりからは、誰一人顔色を伺った りせず、積極的に自分から手を挙げて発言していました。 今回の研修はとても楽しくもありましたが、同時に辛い体験、失敗したこと、 いろいろ経験することがあり、一人の人間として一回り大きく成長できたので はないかと感じています。私も実際、自分の将来について具体的な考えを持つ ようになり、それに向けての今後の生活も考えるようになりました。青森県商 工会議所連合会の皆さんが企画してくれたこの海外エネルギー事情研修会が私 たちだけではなく、今後も末永く続いて欲しいと切に思っています。本当にこ の研修に参加できて、一緒に過ごした8人、引率の皆さん、関係者の皆さんに 感謝したいと思います。 私が自分の目で直に見た海外の教育の良い点を将来、自分が教育者になる上 で、日本の教育をよりよい方向に持っていこうと思います。今回の研修では本 当にありがとうございました。 【追記】 今回の福島第一原子力発電所の事故に関しては、原子力を学んで帰ってきた すぐ後のことだったので非常に驚きました。研修を通して原子力の管理はきち んとなされているものだと感じていたので、この事故によってとても衝撃を受 けました。もちろん私だけではなく、日本中の人々が何らかの影響を受け、一 人ひとりがそれぞれの意見を持っているに違いないでしょう。 そんな中、私はこの事故に関して父と話をしてみました。父が言うには「こ の事故に関してはとても残念だった。だが未だに日本のエネルギーは原子力で 賄われているため、今すぐに原子力の使用を止めるべきという意見には賛成で きない」とのことで、確かに私もそう思います。テレビに出ている政治家や評 論家の一部には、 「原子力は危険だから、今すぐにでも原子力を扱うのは止めた 方がいい」といった発言がありましたが、私はそうは思いません。将来的には 自然エネルギーで電力を賄うことが理想的ですが、それには多くのコストと長 い年月が必要だと考えています。そのような点を考えると、やはり原子力は必 要であり、政治家たちが今、目の前に起こった事ばかりを対処しようとしてい るのは間違っていると思います。 さらに私は、この事故発生によって不思議だと思うことがあります。それは、 日本と海外のメディアとの報道の違いです。海外のメディアでは当初から、大 変なことになるのではないか、最悪の場合はチェルノブイリ並みの惨事になり かねないと報じていました。しかし日本では、海外の報道は大げさにとらえ過 ぎている、事態は収束に向かうなどと報じています。もちろん私は、日本の報 道を信じたかったですが、事態は悪化するばかりで、原子力を守ろうと言わん ばかりに「安全だ」と評価しているのではないかと疑う気持ちも生じたりしま した。一人ひとり何を信じるかは自由ですが、国民を本当に守ろうとするので あれば、何も隠さずにきちんと報道すべきだと思いました。 将来のエネルギー事情についての考え方は人それぞれだと私は思います。原 子力を止める場合でも良い点、悪い点それぞれあります。また、自然エネルギ ーにも良い点、悪い点が色々生じます。これは私の個人的な意見ですが、現在 の原子力の利用はやむを得ないと思います。また、今回の事故で見直さないと いけない点を見つけることができると思うので、これを機に、さらなる安全を 目指してもらいたいと思います。
© Copyright 2024 Paperzz