超伝導とはどんな現象か 対称性の自発的破れの観点から

超伝導とはどんな現象か 対称性の自発的破れの観点から
物理学専攻 物性理論 久保木一浩
* 超伝導の基礎的な理論 (等方的超伝導状態の場合) Ginzburg-­‐Landau 理論 BCS 理論
* 異方的超伝導状態 銅酸化物高温超伝導体
d 波超伝導、時間反転対称性の破れ
Sr2RuO4
カイラル p 波超伝導状態
* 磁性と超伝導の共存 複数の対称性の破れ
超伝導
*電気抵抗がゼロになる *磁場を排除する(マイスナー効果)
応用面でも重要
理論的な興味
* 巨視的な量子現象
* ゲージ対称性の自発的な破れ
* 臨界温度 Tc はどのように決まっているか
福山秀敏 「大学院物性物理2」
超伝導は相転移によって起こる
比熱のとび
相転移:対称性の自発的破れ
オーダーパラメタが出現
対称性の破れの例:
固体: 並進対称性の破れ
強磁性体: 回転対称性の破れ
Landau 理論
自由エネルギー:
F = E - TS オーダーパラメタで展開する: (強磁性体の場合; 磁化 M) 超伝導の場合
オーダーパラメタは何か?
Ginzburg-­‐Landau の現象論 (GL理論) (1950)
GL 自由エネルギー
Ψ: オーダーパラメタ(複素数)
F
T < Tc
BCS理論 (Bardeen-­‐Cooper-­‐Schrieffer (1957)) 超伝導を微視的に記述する理論
電子間の引力 (V) によるペアリング
波数、スピンが (k,↑) の電子と (-­‐k, ↓) の電子が対を組む これが超伝導のオーダーパラメタである
(GL理論の
ψ は実は Δ である:
Gorkov (1959)) 励起スペクトル
S 波(等方的)超伝導体では
Δ は定数(波数 k に依らない)
|Δ| がエネルギーギャップを与える
クーパー対のスピン 一重項(singlet) S=0 -­‐-­‐-­‐ > l=0 (s 波), l=2 (d 波), … 三重項(triplet) S=1 -­‐-­‐-­‐ > l=1 (p 波), …
超伝導状態の対称性 引力相互作用の k 依存性(r 依存性) フェルミ面の形状 で決まる
電子格子相互作用 弱い k 依存性(実空間で短距離相互作用) -­‐-­‐-­‐-­‐ > スピン1重項、S 波状態
BCS Dirac 粒子
青木秀夫 日本物理学会誌 (2009)
London 方程式 Maxwell 方程式
B
と連立して
ーーー> マイスナー効果
λ:
磁場侵入長
超伝導電子密度
x
photon が有限の mass をもったように見える
-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐ > ゲージ対称性 U(1) の自発的破れ 注) Response funcXon はゲージ不変 P.W. Anderson (1958), Y. Nambu (1960) Goldstone モード
連続な対称性が自発的に破れたとき、 波数ゼロの極限で励起エネルギーがゼロになるモードが存在する。
例: フォノン、マグノン(スピン波)
超伝導の場合
クーロン相互作用(長距離相互作用)と couple として massive になってしまう。 Anderson-­‐Higgs 機構
異方的超伝導状態
ここまでの話では、Δ は定数だった。 (波数 k に依らない) -­‐-­‐-­‐-­‐-­‐-­‐ > S−波超伝導状態(等方的)
銅酸化物高温超伝導体など:
電子間の強い斥力相互作用が重要 (強相関電子系) Δ が 波数 k に依存する 対称性がさらに破れる 格子点 j と l 上の電子のペアリング
強い電子相関 -­‐-­‐-­‐-­‐ > 同一サイトの2重占有禁止 したがって
----> 異方的にならざるを得ない
Δ は必ずゼロ点を持つ 銅酸化物
CuO の2次元面が伝導をになう
d−波超伝導体であることがわかっている
ξ(k) と Δ(k) の両方がゼロになる k 点があれば
------- > ギャップレス
フェルミ面
ξ(k)=0
熱力学的諸量の振舞がS波超伝導体と 定性的に異なる ARPES
H. Ding et al. PRB (1996)
Bi-­‐2212
位相を直接見るには:
-­‐-­‐-­‐-­‐ > Josephson juncXon S 波超伝導体では
d 波超伝導体では となる場合がある。(接合面と結晶軸の角度に依る。)
π –juction: vortex が自発的に発生する C. C. Tsuei and J. R. Kirtley, Rev. Mod. Phys. (2000)
YBCO SrTiO3 substrate
c-­‐axis epitaxial film さらに特徴的な振舞:
異方的超伝導状態: 対波動関数の強い角度依存性のため 表面、接合界面の影響を大きく受ける バルクでは存在しない第2のオーダーパラメタが出現 時間反転対称性を破る可能性がある
GL理論で考える
KK-­‐Sigrist, Matsumoto-­‐Shiba, Fogelstrom et al.
自発カレント ゼロバイアスコンダクタンスの splikng が理論的に予言されている 実験は: splikngが観測されている Covington et al., PRL (1997)
Sr2RuO4
Knight shil Tc で変化が見られない
-­‐-­‐-­‐-­‐ > spin-­‐triplet pairing K. Ishida et al., Nature (1998)
µSR: relaxaXon rate Tc 以下で spontaneous magneXc field 時間反転対称性の破れ G.M. Luke et al., Nature (1998)
(カイラル p 波状態)
表面付近で自発カレントが発生する
強磁性体との接合:自発スピンカレントが発生
F/S/F 接合で磁化が反平行の時
チャージカレントはゼロ、 スピンカレントのみ流れる F S F KK-­‐ H. Takahashi, PRB (2004)
超伝導と磁性の共存
多層系銅酸化物: (単層、2層では共存は見られない)
超伝導と反強磁性の共存
H.Mukuda et al., PRL(2006), JPSJ (2008)
超伝導を発現する引力の起源は AF AF と SC : 同じフェルミ面を使うため競合 GL でいうと斥力項が存在
t-­‐J モデルでの計算(スレーブボソン平均場近似)
M.Yoneya et al.
-­‐-­‐-­‐ > フェルミ面の形状によっては共存できる
電子的なフェルミ面だと有利
多層系がなぜ共存(AF)に有利か?
AF: 純粋な2次元系では実現しない(Mermin-­‐Wagner の定理) 3次元性が強い方がよい
SC: 純粋な2次元でも実現する(KT 転移) 共存相でのNMR, 中性子散乱, ARPES -­‐-­‐-­‐-­‐ > 興味深い まとめ
超伝導: U(1) ゲージ対称性の自発的破れ 素粒子論との関係 強相関系: 異方的な超伝導状態 超伝導と磁性の関係