ISSN 1882-9384 中村学園大学薬膳科学研究所 研究紀要 第7号 2014 中村学園大学薬膳科学研究所 研究紀要 第7号 目 次 〈分子栄養学部門〉 二次出版論文 マカ(Lepidium meyenii )は雌ラットにおいて黄体形成ホルモンサージを亢進する ……… 1 内山 文昭、治京 玉記、竹田 亮介、緒方みさと 〈生体応答部門〉 総説 体温調節反応とそれに作用する食物について …………………………………………… 9 治京 玉記 〈栄養疫学部門〉 研究ノート 腸内細菌叢クラスターと中医体質に関するパイロット調査 …………………………… 29 徳井 教孝、三成 由美 〈開発・教育部門〉 原著論文 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 ………………………… 35 楊 萍、嶋川 成浩、木村 秀樹、三成 由美、徳井 教孝 分子栄養学部門 二次出版論文 マカ(Lepidium meyenii )は雌ラットにおいて黄体形成ホルモンサージを亢進する 内山 文昭、治京 玉記、竹田亮介、緒方みさと 中村学園大学・薬膳科学研究所 (2014年8月6日 受理) キーワード Lepidium meyenii 、マカ、黄体形成ホルモン、生殖力 下垂体機能において、その他の下垂体ホルモンである成 要 約 長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン、甲 ●民族薬理学的な関連性 状腺刺激ホルモンでは有意差は認められなかった。さら マカ(Lepidium meyenii )は多産を支える食材として に、LH 血中濃度は3∼30 g マカ /kg のマカ摂餌量にお アンデス地域で伝統的に用いられている。 いて用量依存的な上昇した。 ●研究目的 ●結論 本研究は性周期の発情前期でのマカの血清中の下垂体 本研究で、雌ラットの性周期の発情前期の LH サージ ホルモン濃度への影響について雌ラットを用いて調べ のタイミングにおいて、マカは LH 血中濃度を特異的に た。 上昇させること、そして、その作用は薬理学的かつ用量 ●材料と方法 依存的作用であることを証明した。これらの結果は、多 マカ粉末は学名 Lepidium meyenii Walp の塊茎から 産を促進する伝統的なマカの使用を支持し、その作用に 調製した。マカの塊茎はペルーのフニンの高原で採取、 LH が関与する分子メカニズムの可能性が示唆された。 乾燥、粉砕されたものを(株)ヤマノ Yamano del Perú SAC より入手した。マカ粉末はケミカルプロファイリン 1.緒論 グおよび植物分類学的方法で同定した。ラット動物実験 では Sprague-Dawley ラットを用い、コントロール群に Lepidium meyenii は ア ブ ラ ナ 科 の 二 年 草 植 物 で ペ は通常飼育で用いられる餌 (CE2) を、テスト群では CE2 ルーのアンデス高地に植生している。ペルーでは何世紀 にマカ粉末を各々5%、25%、50% 含有させた餌を自由 にも渡り、Lepidium meyenii の塊茎(マカ)を滋養の 摂餌させて7週間飼育した。ラットの性周期をモニター ある食物、および多産に効く薬草としてヒトや動物で摂 し、発情前期の18時に断頭採血を行い、血清を採取し 取されてきた。ヒト臨床試験において、マカは軽い勃起 た。血清中の下垂体ホルモン濃度は酵素結合免疫吸着法 性機能障害への効果1、更年期女性における性欲改善効 を用いて測定した。 果2が示唆されている。これらの報告を含むマカの臨床 ●結果 試験のシステマティック・レビューではマカの有効性を 両群ラット間での摂餌量、体重において6週齢以降で 支持する予備実験結果として位置づけられており、さら 有意差は認められなかった。50% マカ含有の餌を与え なる臨床研究の必要性に言及されている3。マカを用い たラット群は、性周期の発情前期においてコントロール た動物実験では、様々な健康に関するマカの生理学的、 群のラットに比べて黄体形成ホルモン(LH)血中濃度 薬理学的特性が報告されてきた。それらは、生殖能力の が4.5倍(P < 0.01)、卵胞刺激ホルモン(FSH)では19 促進作用4、性行動の亢進5,6、精子形成の促進7-9、骨粗 倍(P < 0.01)に上昇した。LH および FSH を産生する 鬆症改善10、神経細胞機能11、記憶障害の改善12-14、化 脚注 本論文は、Uchiyama F, Jikyo T, Takeda R, Ogata M, J Ethnopharmacol. 151, 897-902 (2014), Lepidium meyenii (Maca) enhances the serum levels of luteinising hormone in female rats にて最初に報告された研究に基づくものである。ただし論文内容に記載 した文章表現を理解しやすいように表2を追加している。 −1− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 学的、物理的ストレス反応の緩和15-17、前立腺肥大症改 18 ル1ml に溶解させ、0.45μ m PTFE シリンジフィルター 5 善 、自発運動の促進効果 に関して研究されている。 (Millipore) で 濾 過 し た 後、HPLC-UV-MS/MS 分 析 に 生殖能力は視床下部 ‐ 下垂体 ‐ 性腺系(HPG 軸) 付した。 の生理機能に基づいている。女性では発情前期に下垂 体前葉から一過性に分泌される LH 分泌現象は LH サー 2.4 HPLC 分析 ジと呼ばれ、卵子形成、排卵、黄体の発育の引き金役 HPLC は紫外可視(UV-vis)検出器を備えた Shimazdu を担っている。発情前期に誘起される LH サージでは、 LC-30A HPLC シ ス テ ム を 使 用 し た。macamide 類 の LH 血中濃度がそれ以外の時期、いわゆる LH パルスで 定 性・ 定 量 分 析 に は Inertsil ODS-3カ ラ ム(250×4.6 分泌される LH 血中濃度よりはるかに高い。LH 分泌に mm2id、5μ m 粒 子 )(GL Science) を 用 い た。 溶 媒 は遺伝的な背景、環境、身体的状況に大きく影響され シ ス テ ム は(A)0.005% ト リ フ ル オ ロ 酢 酸 水 溶 液 と る。マカは標高4,000m 以上の気候の厳しい環境下の生 (B)0.005% トリフルオロ酢酸アセトニトリルで20:80 活においてヒトや動物の繁殖を促進する目的で伝統的に (A:B)から0:100の濃度勾配を24分間で行った。カラ 使用されてきた。しかし、マカ、あるいはマカの化学成 ムオーブンを40℃に設定し、5μ l のサンプルを注入し 分を用いた研究では、LH を含む下垂体ホルモンの血中 た。macamide 類 の 定 量 は210nm と280nm の 波 長 の 濃度の変化は全く報告されていない19。それゆえ、生殖 ピークエリアを算出し、その相対値から各ピークの質量 系に対してマカが作用するタンパク質は不明であり、マ を算出した。 カの作用メカニズムの研究に対して全くアプローチする macamide 類の化合物同定は保持時間、紫外線吸収率と ことができない。 可視光吸収の比率、およびサンプルの公知データの MS 本研究では、マカの LH サージでの雌ラットにおける 分析値の比較により行った20,21。 LH 血中濃度の変化を検討した。 2.5 Macamide 類 の MS/MS 分析 HPLC-MS/MS シ ス テ ム は サ ン プ ル 自 動 注 入 器、bi- 2.材料、方法 Pump、紫外可視検出器を備えた Shimazdu LC-30A HPLC 2.1. 植物原料 シ ス テ ム と Thermo Fisher Scentific series Q-Exactive 本研究で使用した Lepidium meyenii Walp はペルー MS/MS から構成されるものを使用し、測定動作パラ の標高4200∼4500m の中央アンデス地域のフニンの メ ー タ ー は high voltage capillary, 4500 V; capillary 高原で2010年に収穫した。Lepidium meyenii Walp の exit, 143.6V; skimmer 1, 31.1V; trap drive, 44.2; scan 塊茎は、フニン高原の栽培場で集荷、乾燥、粉末状に粉 range (m/z),1800を用いた。質量分析計は正イオン検 砕した後、マカとして市販されており、このマカ粉末を 出モードで測定した。MS/MS 測定時の HPLC は分析用 (株)ヤマノの Yamano del Perú SAC から入手した。 HPLC と同じ条件で使用した。 入手したマカ粉末は植物標本(MG-2A/YDP-S002-2011) として San Marcos University Natural History Musium の植物博 2.6 動物と飼育 物館に預けた。そこでマカ粉末は Cronquist 分類法に基 2週 齢 の 雌 Sprague-Dawley ラ ッ ト( チ ャ ー ル ズ リ づき Lepidium meyenii Walp であることを植物分類学 バー)はオリエンタルイーストより入手し、8週間中村 的に同定した。 学園大学アニマルセンターで飼育した。ラットは1匹ず つ個別にステンレス網のケージに入れ、常温(25℃)、 2.2 溶媒と化学物質 日照時間12時間(6時点灯18時消灯)の条件下で飼育 ア セ ト ニ ト リ ル、EDTA 二 カ リ ウ ム 塩(EDTA-2K)、 した。ラットは自由摂餌で、7週間飼育した。本論文に 石油エーテル、トリフルオロ酢酸は(株)和光純薬から 述べる動物実験は本学の動物倫理委員会の承認を得て 入手した。 行った。 コントロール飼料は CE2飼料(日本クレア)を使用し 2.3 石油エーテル抽出物の製法 た。5%、25%、50% マカを含むテスト飼料は、CE2に マカ粉末の石油エーテル溶媒抽出は McCollom らの それぞれ乾燥重量として5%、25%、50%(w/w)のマ 20 方 法 に 基 づ い て 行 っ た。 マ カ 粉 末10 g に 石 油 エ ー カ粉末を加え、100回撹拌したものを使用した。CE2、 テ ル50 ml を 加 え、20 ℃、150 rpm で24時 間 撹 拌 し マカ含有飼料は室温で保管した。マカ栄養成分の分析は た。濾過後、抽出液の溶媒を除去し、43.0 mg の残渣 日本食品分析センターに依頼して分析し、使用した CE2 (石油エーテル抽出物)を得た。残渣はアセトニトリ ロットの栄養成分の分析は日本クレア(株)より入手し −2− マカ(Lepidium meyenii)は雌ラットにおいて黄体形成ホルモンサージを亢進する。 た。 2群間比較は IBM SPSS(Statistical Package for the Social ラットは実験開始1週間前からアニマルセンターで飼 Sciences)Version 19(IBM) を 使 用 し、Student s t-test いならした後、ランダムに3つのテストグループと1つ により一元配置分散分析で分析した。P < 0.01の値を有意 のコントロールグループにわけた。テスト1グループ 差とした。 には5% マカ含有飼料を(n=10)、テスト2グループに は25% マカ含有飼料を(n=10)、テスト3グループには 3.結 果 50% マカ含有飼料を(n=20)、コントロールグループに 3.1 ケミカルプロファイリングによるマカの品質評価 はコントロール飼料(n=20)を与えた。体重、摂餌量 多くの植物と同様に、Lepidium meyenii Walp の塊 は8時15分から9時の間で2日毎に測定した。ラットの 茎( マ カ ) は 栽 培 地、 栽 培 方 法、 気 候 等 に よ り 化 学 摂餌量は残渣量を2日毎に測定し、給与量から残渣量を 成分が変化することが知られている。Macamide 類は 減算して算出した。飼料効率は摂餌量(g)/ 体重(kg) Lepidium meyenii の特異的な二次代謝産物であり、品 で表した。 質管理のマーカーとしてよく用いられている20,21。本研 究で使用したマカの macamide 類を定量した。マカ粉 2.7 性周期測定 末を石油エーテルで抽出したところ0.460% w/w の収率 性周期は膣のスメア検査を2週間毎日行った。スメア でマカ抽出物を得、HPLC-UV-MS 測定の分析を行った。 検査にはラットの膣口の表皮細胞を用いた。スメア採取 抽出物から検出した12種類の macamide は質量分析ス は8時30分から9時の間に行った。スメア検査は採取し ペクトルでの分子イオンピーク、保持時間、および紫外 たスメアをギムザ染色液(メルク)で染色し顕微鏡検査 /可視吸収スペクトルの吸収比率は Lepidium meyenii により行った。発情期は有核細胞数と角化細胞数の比率 Wlap のものと一致した20,21。その結果を表 1に示す。 により判定した。各細胞数の測定は Burker-Turk 血球計 マカ塊茎の macamide 類の化学構造を同定するために、 算器を用いて顕微鏡下で行った。この判定に基づき4日 周期の性周期のサイクルを測定した。 表1.マカ粉末の PHLC-UV-MS/MS 分析による macamide 化合物のケミカルプロファイリング 2.8 断頭とサンプル採取 Compund Number 全てのサンプルの採取は各ラットの発情前期の16時 Identified Chemical Structure Retention Time (min.) Main [M-H]+ Fragment Ions MS 1 30分から18時(±15分)の間に断頭後、ただちに胴体 15.8 332.3 Relative amount (%) CV% 0.19 11.2 13.56 4.4 0.10 10.8 4.73 5.7 5.73 0.8 2.28 8.3 3.37 9.7 4.82 4.3 0.82 7.9 0.46 3.1 <0.10 NC 3.37 3.5 2 [332.3]: 91.1 MS2 から血液を EDTA-2K 入りとなしの空のチューブに採血 2 18.2 346.3 [346.3]: 91.1 し、3000rpm で10分遠心を行った。採取した血清、血 MS2 3 20.8 360.3 漿は ‐ 80℃で保存した。ラットの各臓器は解剖学的に [360.3]: 91.1 MS2 4 分離し、脂肪を除去後、重量を測定した。 12.4 368.3 [368.3]: 91.1 MS2 5 H N 15.2 370.3 O [370.3]: 91.1 2.9 ホルモンの定量 MS2 6 LH、FSH、成長ホルモン(GH) 、甲状腺刺激ホルモ 18.7 372.3 [372.3]: 91.1 MS ン(TSH) の 血 清 濃 度 の 測 定 は そ れ ぞ れ、Libs LH ELISA kit、Libs ELISA kit、Libs Rat FSH ELISA kit、Libs Rat 7 23.4 374.3 2 [374.3]: 91.1 MS2 Rat GH 8 17.6 376.3 [376.3]: 121.1 Rat TSH ELISA kit( シ バ ヤ ギ ) を 用 MS2 いる酵素結合免疫吸着法 (ELISA) で行った。血清 PRL 9 12 398.3 [398.3]: 91.1, 121.1 濃度の測定は Pama-test Rat PRL EIA kit(Panapharm MS2 10 Laboratories)を用いる酵素免疫測定法(EIA)で行っ 14.7 400.3 91.1, 121.1 た。血漿の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度測定 MS 11 は Siemens-Immulyze [400.3]: 18.1 402.3 R ACTH II(Siemens Healthcare 2 [402.3]: 91.1, 121.1 MS2 Diagnostics) を 用 い る 生 物 発 光 酵 素 免 疫 測 定 法 12 22.6 404.4 (CLEIA)で行った。全ての測定手順はメーカーのプロ [404.4]: 91.1, 121.1 トコールに従って行った。 13 10.3 279.2 㻌 35.40 1.5 14 12.9 281.2 㻌 25.16 1.3 2.10 データ解析 Compound number ࣒࢝ࣛ ࡢ 1-12 ࡣ macamide 㢮ࢆ♧ࡋࠊ13ࠊ֦ࡣྛࠎȚ-ࣜࣀࣞࣥ㓟ࠊࣜࣀ࣮ࣝ㓟ࢆ♧ࡍࠋ データは平均値±標準偏差(SD)で表示した。また、 CV ್ࢆᖹᆒ್ᑐࡍࡿ㸣࡛⾲♧ࡋࡓࠋ㹌㹁ࡣྜ≀ࡣྠᐃ࡛ࡁࡓࡀࠊᐃ㔞ࡢ㝈⏺್௨ୗࢆ♧ࡍࠋ ྜ≀ࡢྵ㔞ࡣ 4 ᅇࡢศᯒ⤖ᯝࡢᖹᆒ್ࢆ⏝࠸ࠊ࣐࢝ᢳฟ≀ࡢ┦ᑐ್ࢆ㸣⾲♧࡛ relative amount ࡢ࣒࢝ࣛ♧ࡍࠋ4 ᅇࡢศᯒ⤖ᯝࡢ −3− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 macamide 由来のイオンフラグメントピークの MS/MS 群とコントロール群の間で HPG 軸に関連する臓器であ 分析を行った。macamide の12種類の化合物のうち、7 る卵巣、子宮、視床下部、下垂体の臓器重量差は認めら 種 類 の macamide と5種 類 の macamide は 各 々、m/z れなかった(表 3)。また、その他の臓器の重量におい 91.05、m/z 121.06の MS/MS イオンフラグメントピー ても有意差は認められなかった。以上の結果、マカの摂 クを示し、それぞれベンジルイオン(C7H7+ )、メトキ 餌によるラットの成育における一般所見に差異は認めら + 。抽出物 シベンジル(C8H9 )として同定した(表 1) れなかった。 の主成分は、MS 分析によりリノール酸とリノレン酸を LH 分泌は概日リズム22、排卵周期23、およびストレス 同定した(表 1)。これらの結果は、使用したマカ粉末 24 は化学的に Lepidium meyenii の塊茎であること、およ れている。そのため、排卵周期、排卵時間に基づいてサ に強く影響受け、LH 血中濃度は変化することが知ら び実験項に記載した植物分類学の結果から、本研究で使 用するマカは Lepidium meyenii Wlap であることおよ 表2.乾燥重量100g 当たりのコントロール飼料、マカ粉末 含有率5%、25%、50%飼料の各栄養素成分比較 びその化学成分である macamide 類は表 1に示す成分含 量比から構成されていることを示している。 3.2. ラット実験における一般所見 飼料間における栄養成分分析の結果を表2に示してい る。すべての飼料においてラット飼育の栄養必要量を満 たしており、飼料間における栄養成分による生理学的影 響は望めない。本研究を通して、マカを摂餌したラッ ト、摂餌していないラットにおいて摂餌量(図 1a)、体 重増加による成長曲線(図 1b)を図1に示している。 体重では23日齢(食餌実験開始2日目)以降、摂餌量で は43日齢(食餌実験開始22日目)以降において両群間 ࣐࢝⢊ᮎ 5%ྵ᭷㣫ᩱ ࣐࢝⢊ᮎ 25%ྵ᭷㣫ᩱ ࣐࢝⢊ᮎ 50%ྵ᭷㣫ᩱ せồ㔞 8.5 8.3 7.6 6.7 - ࢱࣥࣃࢡ㉁㸦g㸧 25.0 24.3 21.5 17.9 ⬡㉁㸦g㸧 4.7 4.7 4.7 4.7 5.0 ⅊ศ㸦g㸧 6.7 6.6 6.1 5.4 - ⢾㉁㸦g㸧 51.0 51.1 51.6 52.3 - 㣗≀⧄⥔㸦g㸧 3.9 4.8 8.5 13.0 - ࢚ࢿࣝࢠ࣮㸦kcal㸧 346 346 346 345 380 ࢼࢺ࣒ࣜ࢘㸦mg㸧 330.0 315.2 255.8 181.7 ࣜࣥ㸦mg㸧 1010.0 976.0 840.0 670.0 400.0 㕲㸦mg㸧 27.7 26.6 22.2 16.7 3.5 ࢝ࣝࢩ࣒࢘㸦mg㸧 1070.0 1030.3 871.5 673.0 500.0 ࣒࢝ࣜ࢘㸦g㸧 1.0 1.0 1.1 1.2 0.4 ࣐ࢢࢿࢩ࣒࢘㸦mg㸧 320.0 307.7 258.4 196.9 40.0 㖡㸦mg㸧 0.7 0.7 0.6 0.5 0.5 ள㖄㸦mg㸧 5.5 5.4 4.8 4.2 1.2 ࣐ࣥ࢞ࣥ㸦mg㸧 9.9 9.5 7.9 6.0 5.0 ࣅࢱ࣑ࣥ A㸦ȣg㸧 625.5 594.2 469.1 312.8 120.0 ࣅࢱ࣑ࣥ D㸦ȣg㸧 -a 0.3 1.5 3.0 2.5 ࣅࢱ࣑ࣥ K㸦ȣg㸧 -a -a -a -a 3 ࣅࢱ࣑ࣥ B1㸦mg㸧 1.8 1.7 1.4 1.0 -b ࣅࢱ࣑ࣥ B2㸦mg㸧 1.3 1.3 1.2 1.1 -b ࣅࢱ࣑ࣥ B6㸦mg㸧 1.3 1.3 1.2 1.1 ࣅࢱ࣑ࣥ B12㸦ȣg㸧 16.0 15.6 14.0 12.0 5.0 ࣅࢱ࣑ࣥ E㸦mg㸧 7.1 6.9 6.3 5.4 3.0 ࣅࢱ࣑ࣥ C㸦mg㸧 17.0 16.2 12.8 8.5 -b 50䠂䝬䜹 ᭷᰾ ᰾⣽⬊䚸ゅ⣽⬊ẚ ẚ⋡ (%) 25䠂䝬䜹 25 ** ** 20 ** ** 15 0.6 図2 100 5䠂䝬䜹 50.0 -a㸸᳨ฟࡉࢀ࡚࠸࡞࠸ࡇࢆ♧ࡍࠋ 図1A 䝁䞁䝖䝻䞊䝹 12.0 せồ㔞ࡣ RG Warner, LH Breuer Jr - NUTRIENT requirements of laboratory animals (1972)ࢆཧ↷ࡋࡓࠋ 定値となり15 g/ 日であった。50% マカ摂餌したテスト ᦤ㣵㔞 㔞 (g/day) ࢥࣥࢺ࣮ࣟࣝ㣫ᩱ Ỉศ㸦g㸧 -b㸸せồ㔞ࡀྠᐃࡉࢀ࡚࠸࡞࠸ࡇࢆ♧ࡍࠋ で有意差は認められなかった。摂餌量は38日齢から一 10 ᡂศ ** ** 5 (0'3(0'3(0'3( nucleated ᭷᰾⣽⬊ epithelial cells 50 cornified cells ゅ⣽⬊ 0 1 2 3 4 5 6 0 23 27 31 35 39 43 47 51 55 59 63 7 8 9 10 11 12 13 14 ᪥ᩘDay 67 ᪥㱋 表3.50%マカ粉末の添加有無による10週間の飼育での 体重変化と臓器重量(n =10/ 群) 図1B 䝁䞁䝖䝻䞊䝹 5䠂䝬䜹 25䠂䝬䜹 50䠂䝬䜹 320 య㔜 㔜 (g) 270 220 170 120 70 ** 20 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 㔜㔞J ࠶ࡿ࠸ࡣ PJ ༢ ࢥࣥࢺ࣮ࣟࣝ య㔜J s s ୗᆶయPJ s s どᗋୗ㒊PJ s s ༸ᕢ㸦ྑ㸧PJ s s ༸ᕢ㸦ᕥ㸧PJ s s ᏊᐑPJ s s ⩌ ࣐࢝⩌ 69 ᪥㱋 ࡍ࡚ࡢ್ࢆᖹᆒ್s6' ࡛♧ࡍࠋࡍ࡚ࡢ㔜㔞࠾࠸࡚᭷ពᕪࡣ࡞ࡗࡓࠋ −4− マカ(Lepidium meyenii)は雌ラットにおいて黄体形成ホルモンサージを亢進する。 ンプル採取を厳密に行う必要があり、実験に使用した 表4.10週齢ラットにおける発情前期の±15分での 下垂体ホルモンの血中濃度 ラットはスメア検査の結果から、4日周期の性周期サイ クルパターンであることを確認した(図 2)。 㻌 3.3 LH サージ期におけるマカ摂餌による下垂体ホルモ ୗᆶయ䝩䝹䝰䞁㻌 a 㻌 GH (pg/mL) 㻌 LH (ng/mL)a 䝁䞁䝖䝻䞊䝹⩌㻌 50%䝬䜹ᦤ㣵⩌ 1231.0 ± 725.5 1912.6 ± 1717.9 4.9 ± 3.5 22.1 ± 10.7*** 㻌 FSH (ng/mL) a 0.6 ± 1.0 9.45 ± 11.1** 㻌 PRL (ng/mL)a 18.8 ± 12.7 パターンで発情前期、発情期、発情後期、発情間期に分 㻌 TSH (ng/mL) a 類することができた(図 2) 。発情前期の LH サージは 㻌 ACTH (pg/mL)b ンの血中濃度 実験に使用したラットは4日周期の性周期サイクルの 26.3 ± 6.9 2.4 ± 1.8 2.7 ± 3.7 57.4 ± 25.9 119.4 ± 53.2* 18時に起こり、排卵前に LH が最大濃度になることが 知られている23。そのため、ラットの血液は発情前期の ࡍ࡚ࡢ್ࡣᖹᆒs6'್࡛♧ࡍࠋ D Q ༉⩌ 18時±15分で採取した。ラットの血清中下垂体ホルモ E Q ༉⩌ ンは ELISA を用いて測定した。その結果、血清中 LH は 3YVࢥࣥࢺ࣮ࣟࣝ 50% マカ群で22.1 ng/ml、コントロール群で 4.9 ng/ml 3YVࢥࣥࢺ࣮ࣟࣝ で あ り(P < 0.001)、FSH は50% マ カ 群 で9.5 ng/ml、 3YVࢥࣥࢺ࣮ࣟࣝ コントロール群で0.5 ng/ml であった( P < 0.01)。こ れらの結果はマカ摂餌が雌ラットで LH および FSH の したラットはコントロール群と同じタイミングで FSH 血中濃度を有意に上昇させることを示している(表4 ) 。 上昇を示した(図 3)。 一 方、 他 の 下 垂 体 ホ ル モ ン で あ る GH、ACTH、TSH、 このことはマカ摂餌の有無に関わらず、HPG 軸の作 PRL は50%マカ群とコントロール群の間で有意差は認 用経路において LH サージ開始時に FSH 血中濃度の上 められなかった(表 4) 。これらの結果は、発情前期の 昇が開始されるという生理反応機構25に同調していた。 雌ラットにおいて、マカ摂餌後、血清中 LH レベルが特 これらの結果から、マカ摂餌は正常な LH サージのタイ 異的に4.5倍上昇すること(P < 0.01)を示している。 ミングにおいて下垂体ホルモンのである LH の血中濃度 スメア検査では、テスト群、コントロール群で排卵 を上昇させていることを示している。 (発情周期)は同様に正常の4日周期であることを示し LH 産生は LH サージとパルス期で異なるメカニズム た。LH サージのタイミングは排卵のタイミングを判断 が関与している。LH パルス期の LH の増加は閉経期と する基準となるため、マカ摂餌後の LH 促進効果が LH の関連が示唆されているが、排卵誘導の改善の直接的作 サージのタイミングでの特異性および LH 分泌後に続い 用の報告はない。マカの LH パルス期での影響を調べる て分泌される FSH の血中濃度の上昇時期を調べた。LH ため、発情前期の16時30分に血液を採取し、LH 血中濃 サージの開始時間を判断するため、発情前期の18時以 度を測定し、LH サージ期に採取した血中濃度と比較し 前での LH および FSH の血中濃度を測定した。その結 た(図 4)。16時30分に採取したコントロール群の血清 果、図3に示すように LH サージのタイミングは50% LH レベルは低値(1.8 ng/ml)であったが、およそ1時 マカ群、コントロール群で同じパターンを示し、17時 間後の LH サージ期で増加がみられた。(6.6 ng/ml, P < に上昇し始めた。このことから LH サージのタイミング 0.01)これらの結果は、排卵前期の16時30分は LH パ は50% マカ群、コントロール群での差異は認められな ルス期であることを示し23、この LH パルス期の LH 血 かった。また、FSH においても同様に50% マカを摂餌 中濃度では50%マカ群とコントロール群で有意差は認 図3 図4 50 LH⾑Ύ⃰ ⃰ᗘ (ng/m mL) ⾑Ύ⃰ ⃰ᗘ (ng/mL L) 40 30 䠄䝁䞁䝖䝻䞊䝹⩌䠅 LH (control) 䠄50%䝬䜹⩌䠅 LH (Maca) 20 䠄䝁䞁䝖䝻䞊䝹⩌䠅 FSH (control) FSH (Maca) 䠄50%䝬䜹⩌䠅 10 0 1715 hr 1715ศ 1730 hr 1730ศ 1745 hr 1745ศ *** 38 *** ** 25 5 13 0 䠄้䠅 1630ศ 1630 −5− 1745ศ 1745 C t l Control 䝁䞁䝖䝻䞊䝹⩌ 1630ศ 1630 1745ศ 1745 hr M Maca 䝬䜹⩌ 䠄้䠅 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 められなかった(図 4) 。それ故、マカ摂餌による LH 物実験では、ラットで7.5 g/kg のマカ粉末の単一投与 促進効果は正常な HPG 軸の生理的なプロセスにおける による血漿中エストラジオールの上昇が報告されている LH サージ期に特異的であることが判明した。 29 。また、マカ粉末の高用量摂餌で栄養価値が見出され ており、30% マカ含有飼料を摂餌したマウスの総血清 3.4 マカの LH 血中濃度上昇作用における用量依存性 タンパク質やアルブミンは有意差のある上昇効果が報告 LH 血中濃度の上昇と用量依存性の関係を評価するた されている30。これらの報告から考察すると、血清中の め、ラットに5%、25%、50% のマカ粉末を加えた飼料 バイオマーカーの変化は齧歯類ではマカの高用量摂餌で を与えて用量依存性を調べた。ラットの摂餌量は38日 のみ引き起こされている。本研究では、LH の血中濃度 齢から一定になったため(図 1A) 、与えたマカ粉末の の上昇作用は15g/kg 以上のマカ粉末の摂餌により観察 濃度はそれぞれ3.0、15、30 g 経口摂取に相当する。血 された。このようにマカ摂餌の用量において齧歯類のバ 液は10週齢のラットの発情前期の18時±15分に採取 イオマーカー変化はマカの高い摂餌量が必要であるとい し、LH 血中濃度を ELISA で測定した。その結果、LH う従来の研究結果と一致している。一方、ヒトでのマカ 血中濃度とマカの摂餌量との用量依存的な関係が明らか 摂食量では、ペルー・フニンの現地先住民は伝統的に、 になった(図 5)。この LH 血中濃度上昇作用は、25% 週に2∼3回、1人当たり約50∼100 g のマカを食事とし マカの自由摂餌、すなわち15 g マカ /kg/ 日以上で持続 て消費していた31。さらに、Valerio と Gonzales は中央 作用を示した。 アンデスの先住民は1日当たり100 g 以上のマカを使用 していたことを報告している32。標高の高いアンデスに スペイン人が入った際、フニンでは周辺の先住民とは異 図5 なり、多産で背の高い成人が多いことに気づき、マカの LH⾑Ύ⃰ ⃰ᗘ (ng/m mL) 50 食事摂取が多産になると推論し、マカの伝統的薬食文化 が広まることになった33。現在の日常生活ではマカの使 38 用は時代や生活環境で変化してきているが、標高4,000 25 m 以上の生活環境および代替食品がない時代において 比較的多い量のマカ摂食が伝統的薬食文化を生み出した 13 ことになる。このような伝統的薬食文化を背景にして、 標準的な生活環境におけるマカ臨床試験では3.5 g/ 日の 0 0 3 15 䝬䜹ᦤ㣵㔞 䜹ᦤ㣵㔞 マカが使用されており、この用量は現在サプリメントと 30 (g/kg) (g g) して用いられている用量である。残念なことにこれらの 臨床試験では明確な効果としてまだコンセンサスが得ら れていない。本研究でラットにおけるマカの摂餌量がア ンデス先住民の伝統的なマカの摂食に相当している。そ 4.考 察 のため、高用量のマカの摂食は、ある過酷な環境下での これまでの研究において、マカの様々な健康促進効果 ヒトあるいは動物の繁殖に効果的であったかもしれない。 26 が報告されてきた 。しかし、従来研究では、HPG 軸を 本研究では、下垂体ホルモンの一つである LH 血中濃 通して卵子形成における重要な役割を持つ LH の血中濃 度の特異的な上昇、LH サージに関する正常なタイミン 度の変化は観察されていなかった。本研究は、マカ摂 グ、そして LH 分泌に続く FSH 分泌についてそれらの 餌がパルス期でなく、LH サージ期において雌ラットの 血中濃度の変化を示した。これらの効果は HPG 軸の下 LH 血中濃度を上昇させることを示した初めての研究で 垂体機能による排卵作用を促進することになる。性腺刺 ある。この LH 血中濃度の上昇作用は、マカがヒトや家 激ホルモン放出ホルモンは LH 分泌のメカニズムをコン 畜において多産に寄与し、女性の生殖機能を促進させる トロールしており、環境的、栄養的、及び身体的状況は 効果があるという中央アンデスの伝統的薬食文化の知見 発情前期の LH サージに強く影響する。これらの情報は に対して1つの科学的傍証を提供している。 視床下部に統合され、下垂体に生体信号を送り、その信 マカの生殖機能における効果は臨床研究において上限 34 号を受けた下垂体は LH を分泌する 。 3.5 g/ 日の低い投与量で調査している 3,27,28 。そのような 本研究での発見は、LH 血中濃度の上昇が正常な月経 低い投与量では、マカによるヒトの血清中の生殖関連す サイクルでの発情前期の LH サージ期に起因すること、 るホルモンの血中濃度の変化はみられなかった。投与量 そして月経サイクルがマカ群、コントロール群で同じタ と生化学的パラメーターの変化に関して、これまでの動 イムコースでみられたことを示した(図 3) 。このこと −6− マカ(Lepidium meyenii)は雌ラットにおいて黄体形成ホルモンサージを亢進する。 は LH サージにおいて、ストレスなどの影響で有効な血 Walp. improves sexual behaviour in male rats independently 中 LH 濃度に達しない状態においてマカ摂取が有効な手 from its action on spontaneous locomotor activity. Journal 段となりうる可能性を示している。また、本研究の結果 of ethnopharmacology 75, 225-229 (2001). は、マカの生体反応メカニズムを解析する上で LH およ 6 Zheng, B.L., He, K., Kim, C.H., Rogers, L., Shao, Y., Huang, び LH に関連するタンパク質に焦点を当てた研究、たと Z.Y., Lu, Y., Yan, S.J., Qien, L.C., Zheng, Q.Y., 2000. Effect of a えばそれらの遺伝子発現研究に活用されるであろう。 lipidic extract from lepidium meyenii on sexual behavior in 結論として、マカの多産への伝統的な使用は、雌ラッ mice and rats. Urology 55, 598-602. トの LH 血中濃度の上昇作用から考えると有効であっ 7 Chung, F., Rubio, J., Gonzales, C., Gasco, M. & Gonzales, G. F. た。本研究では、マカは雌ラットの LH サージ期におい Dose-response effects of Lepidium meyenii (Maca) aqueous て、下垂体ホルモンである LH の血中濃度を上昇させる extract on testicular function and weight of different organs こと、その効果は薬理学的に用量依存的な様式を有する in adult rats. Journal of ethnopharmacology 98, 143-147, ことを実証した。また、本研究はマカを多産に使用する doi:10.1016/j.jep.2005.01.028 (2005). という伝統的薬食文化の様式を支持し、さらにその作用 8 Gonzales, G. F. et al. Effect of Lepidium meyenii (Maca) 機構に LH を介した分子メカニズムが関与する可能性を on spermatogenesis in male rats acutely exposed to high 示唆している。 altitude (4340 m). The Journal of endocrinology 180, 87-95 (2004). 9 Gonzales, C. et al. Effect of short-term and long-term 謝 辞 treatments with three ecotypes of Lepidium meyenii (MACA) 本研究の遂行にあたり、中村学園大学・薬膳科学研究 on spermatogenesis in rats. Journal of ethnopharmacology 所の研究資金の支援に深謝します。また、技術面でのご 103, 448-454, doi:10.1016/j.jep.2005.08.035 (2006). 指導、動物実験での動物飼育にご協力いただいた中村学 10 Zhang, Y., Yu, L., Ao, M. & Jin, W. Effect of ethanol 園大学 中野裕史博士、中村学園大学 アニマルセン extract of Lepidium meyenii Walp. on osteoporosis in ター 田中芳博氏に深く感謝申し上げます。 ovariectomized rat. Journal of ethnopharmacology 105, 274-279, doi:10.1016/j.jep.2005.12.013 (2006). 1 1 P i n o - F i g u e r o a , A . , N g u y e n , D . & M a h e r , T. J . 引用論文 Neuroprotective effects of Lepidium meyenii (Maca). 1 Zenico, T., Cicero, A. F., Valmorri, L., Mercuriali, M. & Annals of the New York Academy of Sciences 1199, 77-85, Bercovich, E. Subjective effects of Lepidium meyenii (Maca) doi:10.1111/j.1749-6632.2009.05174.x (2010). extract on well-being and sexual performances in patients 12 Rubio, J., Caldas, M., Davila, S., Gasco, M. & Gonzales, G. with mild erectile dysfunction: a randomised, double-blind F. Effect of three different cultivars of Lepidium meyenii clinical trial. Andrologia 41, 95-99, doi:10.1111/j.1439- (Maca) on learning and depression in ovariectomized 0272.2008.00892.x (2009). mice. BMC complementary and alternative medicine 6, 23, 2 Brooks, N. A. et al. Beneficial effects of Lepidium meyenii doi:10.1186/1472-6882-6-23 (2006). (Maca) on psychological symptoms and measures of sexual 13 Rubio, J. et al. Aqueous and hydroalcoholic extracts of dysfunction in postmenopausal women are not related to Black Maca (Lepidium meyenii) improve scopolamine- estrogen or androgen content. Menopause (New York, N.Y.) induced memory impairment in mice. Food and chemical 15, 1157-1162, doi:10.1097/gme.0b013e3181732953 toxicology : an international journal published for the British (2008). Industrial Biological Research Association 45, 1882-1890, 3 Shin, B. C., Lee, M. S., Yang, E. J., Lim, H. S. & Ernst, E. Maca doi:10.1016/j.fct.2007.04.002 (2007). (L. meyenii) for improving sexual function: a systematic 14 Rubio, J., Yucra, S., Gasco, M. & Gonzales, G. F. Dose- review. BMC complementary and alternative medicine 10, response effect of black maca (Lepidium meyenii) in mice 44, doi:10.1186/1472-6882-10-44 (2010). with memory impairment induced by ethanol. Toxicology 4 Ruiz-Luna, A. C. et al. Lepidium meyenii (Maca) increases mechanisms and methods 21, 628-634, doi:10.3109/15376 litter size in normal adult female mice. Reproductive biology 516.2011.583294 (2011). and endocrinology : RB&E 3, 16, doi:10.1186/1477-7827- 15 Gonzales-Castaneda, C., Rivera, V., Chirinos, A. L., Evelson, 3-16 (2005). P. & Gonzales, G. F. Photoprotection against the UVB- 5 Cicero, A. F., Bandieri, E. & Arletti, R. Lepidium meyenii induced oxidative stress and epidermal damage in mice −7− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 using leaves of three different varieties of Lepidium meyenii Lepidium meyenii (Maca), a Plant from the Peruvian Highlands. (maca). International journal of dermatology 50, 928-938, Evidence-based complementary and alternative medicine : doi:10.1111/j.1365-4632.2010.04793.x (2011). eCAM 2012, 193496, doi:10.1155/2012/193496 (2012). 16 Lopez-Fando, A. et al. Lepidium peruvianum chacon 27 Gonzales, G. F. et al. Effect of Lepidium meyenii (Maca), a restores homeostasis impaired by restraint stress. root with aphrodisiac and fertility-enhancing properties, on Phytotherapy research : PTR 18, 471-474, doi:10.1002/ serum reproductive hormone levels in adult healthy men. ptr.1455 (2004). The Journal of endocrinology 176, 163-168 (2003). 17 Rubio, J. et al. Lepidium meyenii (Maca) reversed the lead 28 Meissner, H. O. et al. Hormone-Balancing Effect of Pre- acetate induced -- damage on reproductive function in male Gelatinized Organic Maca (Lepidium peruvianum Chacon): rats. Food and chemical toxicology : an international journal (II) Physiological and Symptomatic Responses of Early- published for the British Industrial Biological Research Postmenopausal Women to Standardized doses of Maca in Association 44, 1114-1122, doi:10.1016/j.fct.2006.01.007 Double Blind, Randomized, Placebo-Controlled, Multi-Centre (2006). Clinical Study. International journal of biomedical science : 18 Gasco, M., Villegas, L., Yucra, S., Rubio, J. & Gonzales, G. IJBS 2, 360-374 (2006). F. Dose-response effect of Red Maca (Lepidium meyenii) 29 Meissner, H. O., Kedzia, B., Mrozikiewicz, P. M. & Mscisz, on benign prostatic hyperplasia induced by testosterone A. Short and long-term physiological responses of male and enanthate. Phytomedicine : international journal of female rats to two dietary levels of pre-gelatinized maca phytotherapy and phytopharmacology 14, 460-464, (lepidium peruvianum chacon). International journal of doi:10.1016/j.phymed.2006.12.003 (2007). biomedical science : IJBS 2, 13-28 (2006). 19 Gonzales, G. F., Gonzales, C. & Gonzales-Castaneda, C. 30 Canales, M., Aguilar, J., Prada, A., Marcelo, A., Huaman, Lepidium meyenii (Maca): a plant from the highlands of Peru- C., Carbajal, L., 2000. Nutritional evaluation of Lepidium -from tradition to science. Forschende Komplementarmedizin meyenii (Maca) in albino mice and their descendants. (2006) 16, 373-380, doi:10.1159/000264618 (2009). Archivos. latinoamericanos de nutricion 50, 126-133. 20 McCollom, M. M., Villinski, J. R., McPhail, K. L., Craker, L. 31 Hermann, M., Bernet. T., 2009. The transition of maca E. & Gafner, S. Analysis of macamides in samples of Maca from neglect to market prominence. 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L., Conn, P. M. & Walker, R. F. Characterization of the LH surge in middle-aged female rats. Biology of reproduction 23, 611-615 (1980). 24 Krulich, L., Hefco, E., Illner, P. & Read, C. B. The effects of acute stress on the secretion of LH, FSH, prolactin and GH in the normal male rat, with comments on their statistical evaluation. Neuroendocrinology 16, 293-311 (1974). 25 Butcher, R. L., Collins, W. E. & Fugo, N. W. Plasma concentration of LH, FSH, prolactin, progesterone and estradiol-17beta throughout the 4-day estrous cycle of the rat. Endocrinology 94, 1704-1708 (1974). 26 Gonzales, G. F. Ethnobiology and Ethnopharmacology of −8− 生体応答部門 総 説 体温調節反応とそれに作用する食物について 治京 玉記 中村学園大学 薬膳科学研究所 生体応答部門 (2014年8月6日 受理) キーワード 体温調節反応、熱産生、マカ(Lepidium meyenii WALP ) ところで、世界には寒冷環境に適応している民族が幾 要 旨 つか存在している。高緯度地帯であるスカンジナビア半 島からシベリアをへてグリーンランドに至るまでの極北 ヒトをはじめ恒温動物では、外環境の温度が変化して 地域には、カナダのイヌイット、北欧のサーミ、極東ロ も、生体の体温調節反応によりその核心温度は一定の範 シアのネネツ、ハンティらの先住諸民族が分布してい 囲内に保持されるように働いている。また近年、生理機 る。極北地域の食物の特徴としては、トナカイ、アザラ 能を調節する薬用植物が注目されている。本稿では、体 シ、ホッキョクイワナなどの動物資源に依存しておりタ 温上昇反応とそれに作用する幾つかの植物について報告 ンパク質と脂肪の割合が非常に高く、レバーペーストな する。 どの内臓料理やアザラシ脂液ミソガクなどの脂肪を大量 に消費するため摂取カロリーが高く、森林限界以北であ 緒 論 るため植物性の食物が相対的に少ないことがあげられ る。これは、北方先住民が住む自然環境を反映してお 恒温動物をとりまく地球環境のうち外気温度の条件が り、彼らが高タンパク質、高カロリーの食事を摂取する 最も基本的な環境因子である。恒温動物では、生体恒常 ことにより寒冷環境へ適応している8。さらに、極北地 性の維持の1つとして生体内外の温度変化に応じて体温 域以外で寒冷環境に適応している民族として、南米ペ を一定に調節されており、約43℃以上と約15℃以下は ルーアンデス地方やヒマラヤの Tibetan plateau の高地 体温感覚に加えて痛みをもたらすと考えられている。特 に住む先住民インディオが知られている。南米ペルーア に自然の気象条件がもたらす寒冷環境では、生体恒常性 ンデス地方で寒冷対策として用いた食物が、アブラナ科 を維持することが難しく寒冷障害として、凍死、凍傷さ の多年生植物マカ Lepidium meyenii WALP である。マ らに寒冷ストレスにより引き起こされる腰痛、神経痛、 カは、標高4,000m 以上の高原、日中の寒暖の差が厳し 高血圧、気管支炎、喘息など局所性・全身性健康障害が く、常時低気圧の環境で育つ植物であり、他の植物では 報告されている1-5。 生息できない環境下で栽培がなされいる。過酷な環境ス 体温を上昇させる食物として、ニンニク、ごぼう、カ トレスに適応したマカの塊根は、伝統的に滋養強壮、活 ボチャ、春菊、クルミ、人参、蓮根、ネギ、山芋、ニ 力増強、栄養補給などとして用いられてきた植物であ ラ、プルーン、羊肉、鶏肉、牡蠣、海鼠、鰻、胡麻、山 る。その1つに、マカは、農夫の早朝時の寒さ対策と 椒、芥子、ロイヤルゼリーなどが知られているが6,7、科 しても用いられてたとの報告がある9-11。これはマカが、 学的な根拠となるデータは殆ど得られていない。しか 寒冷対策として用いられている食物と考えられ、ヒトの し、麻黄(Ephedra )、生姜(Zingiber officinale )、唐辛 生体恒常性の維持を高める手段として体温の上昇を促す 子(Capsicum )、およびブシ末(Aconitum )など一部 作用があると考えられる。 の植物については、一過性での体温上昇効果が報告され 本稿では、体温調節反応の一般的所見からそれに作用 ている。また、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、温経湯、当帰 する植物として麻黄、生姜、唐辛子、ブシ末およびマカ 四逆加呉茱萸生姜湯など漢方薬も体温を上昇させること の体温上昇作用について概説する。 が知られているが、詳細なメカニズムは明らかにされて いない。 −9− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 および血流量も関係するため、直腸温よりも高温とは限 体温とは12,13 らない。これに対して肺は呼気の加温ならびに加湿をお 生物の特性として、新陳代謝を営む作用と環境との間 こなっているので低温である。したがって、大動脈血の に動的な平衡を保つ作用がある。生命現象は、一種の化 温度も直腸温より低い。血流量が比較的一定している脳 学反応とみなす事ができ、環境温が変化すると、体温を 内でも、部位的ならびに時間的にかなりの温度差が生じ はじめとする生体機能は大なり小なり影響を受けるが、 ていることが知られいる。このうちの一部は体温調節機 その場合の生体の反応様式には従合型適応動物と調節型 構への入力刺激として重要な役割を果たしている。 適応動物の2つのタイプに分けることが出来る。前者 なお、検温に用いられる部位の体温の相互関係16をみ は、体温が外界条件に同調して変化する爬虫類、両生類 ると、その平均値は直腸温が最も高く、膣温、口腔温、 などの変温動物であり、後者は環境条件が変化しても、 腋窩温の順になる。またその標準偏差は直腸温と膣温 それが一定の範囲内であれば体温があまり変化しないよ とでは殆ど差はなく0.20∼0.25℃、口腔温では0.25∼ うに生理的に調節されるという恒常性の保持能力をもつ 0.30℃、腋窩温では0.30∼0.35℃である。各部位相互 鳥類や哺乳類のような恒温動物である。この能力が最も 差は、直腸温に対して膣温では0.1℃、口腔温では0.4∼ 発達してるのが人類である。 0.6℃、腋窩温では0.8∼0.9℃低い。また、口腔温と腋 体温は、体内における化学反応、すなわち生命現象が 窩温の差は臥床時には0.2∼0.3℃であるが、椅坐時には 進行する場の温度であり、新陳代謝の経路ならびに速度 0.3∼0.5℃に増大する。 を決定する重要な因子である。したがって体温を生命維 次に、外殻温(shell temperature)では、皮膚にはそ 持が可能な範囲に持ち込む事が重要であり、さらに、こ の表面に平行して幾層かの微細血管網がある。表面か れを可及的に狭い範囲で一定に保つことにより、種々の ら1mm 以内の真皮中に細動脈網(arteriolar network: 身体機能の恒常性を維持することが生体にとっては望ま AN)があり、これを上下に挟むように2層の微細静脈網 しく、ゆえにより体温調節機能が要求されている。 (venule network:VN1, VN2)が表面から0.5mm およ 体温が調節されているといっても、全身が常に一定温 び1.4mm のところにある。このように組織学的関係か 度になっているわけでなく、部位によって大きな差異が ら、皮膚の温度差は AN により、また皮膚の色調は VN ある。寒冷環境ならびに暑熱環境下における体温分布を の血流の多寡によって決定されいる。 比較すると、身体は高温な中核部をそれよりも低温の末 皮膚表層の静脈血は外気温によって冷却されて VN2 梢組織からなる外殻層で取り囲んだ二重構造であると模 にはいる。したがって深部へ向かっての温度勾配は AN 型的に考えることができる。これは、解剖学的な区分は の所で1つの峠を形成した後、いったん下降して VN2 なく、生理的・機能的な概念に基づくものである。 の層で反転して谷をつくり、それから順次上昇してゆく したがって、一概に体温といっても、どの部位の体温 が、約2.0mm で真皮層が終わり皮下に達すると、ここ で代表されるべきかが問題となるが、少なくとも、1) には細動脈網があり、温度勾配はこのあたりで急上昇 体内諸臓器の機能や代謝に直接関係するような意味のあ し、最後は約20mm あたりの所から中核温の高さに達 る部位の温度であり、2)全身の温度の推移を示す部 して恒定する。また、温度勾配の経過は、環境気温や体 位、3)個々の外的あるいは内的条件で無意味な変動を 内環境の条件次第で大幅に変化する。すなわち、温暖 せず、4)外部から比較的容易に測定できる部位ではな 環境では皮膚血管が最大に拡張すると中核領域は拡大 らない。これらの条件を満たす部位としては、直腸内あ し、外殻は皮膚の厚みだけになる。これに対して寒冷環 るいは膣内でともに入口から8cm 以上の深さの所にな 境中では中核の領域は縮小し、その境界は皮下4∼5cm る。これに変わる部位として口腔や腋窩がよく用いられ にも及ぶといわれている。このような状況下では四肢は ている。また、研究上の目的で脳温の指標として鼓膜 すべて外殻に属することになる。もし、仮に外殻の厚さ 温14、体温調節反応の時間的経過の指標として食道温15、 を1cm とすると全体の1/5が、また2cm では2/5とうい また心臓カテーテル法により心房内の血液温が測定され 大量の組織が外殻を構成することになり、新陳代謝活動 ることもある。 をはじめ、組織における血液の酸素解離などの相当量が また、中核温(core temperature)の部分でもかなり かなり低温で行われていることになる。外殻にきた動脈 の部位差が存在している。心、肝、腎などの臓器は、安 血がもつ熱エネルギーは、動静脈間の対向流熱交換に 静時の骨格筋よりも高い代謝活動をおこなっており、熱 よって静脈血に吸い取られ、比較的低温になって末梢に 産生は多く、しかもそれぞれ厚い体幹壁、脂肪嚢、頭蓋 達するが、末梢血管の収縮によって血流量が減少し、表 骨が熱遮断の役割を果たしているので、高温になる条件 面部への熱を移送をはじめ、伝導は極めて制限された状 がそろっている。しかし、臓器の温度には輸入動脈血温 態にある。その結果、皮膚温は低下し、熱放散も節減わ −10− 体温調節反応とそれに作用する食物について れる。したがって、末梢組織が極端な低温のため凍傷な わば一種の界面温度的性格をもつものと考えられる。こ どの障害を受ける可能性も出てくるが、これに対して、 のような特徴のため皮膚温は生体内および外的環境の両 指先、耳翼、鼻尖などの突出部には動静脈吻合枝17があ 者の温度あるいは熱の運搬に関する因子の影響を鋭敏に り、非常事態に際しては熱の節約よりも全体の保全を優 反映して変化することが可能なのである。これが、皮膚 先させる機能が備わっている。 温の体温調節的意義の根拠であるといえる。 皮膚温(skin temperature)は、生体の外表面組織と 皮膚温を規定する因子として、皮膚表面からの外界へ して体温調節の末梢性機序に関して、他の臓器には見ら の熱放射、対流、伝導による dry heat loss と発汗など れない特殊な役割を担っている。皮膚は、第一にそこに 水分蒸発による wet heat loss の両者によって行われる。 存在する皮膚血管、汗腺などの体温調節反射の末梢効果 皮膚表面からの単位面積、単位時間当たりの熱放散量は 器の活動を介して熱放散調節にあずかるととも、第二に 定常状態では皮膚深層部から皮膚表面に向かって皮膚組 は皮膚温度受容体の活動によって体温調節反応の動因と 織内を移動する熱量に等しい。 なる皮膚温度感覚情報の発生する場でもある。この皮膚 の一見異なる機能は、皮膚温を介在して体温調節反応系 体温変動の要因12,13 の出力と入力との間のフィードバック機構に組み込まれ 体温を変動させる要因として、DuBois らは19、熱性 ている(図1)。 疾患、筋労作、日間変動、年齢、環境温度、食物摂取、 個人差、睡眠、女性の性周期、感情興奮を挙げている。 እⓗ⎔ቃ ጼໃ䞉➽㐠ື䛺䛹 ヒトの体温は恒常を維持するように調節されていると ⇕ はいえ、完全に一定ではなく、体内および体外の環境や 生活日課により修飾され、さらに体内リズムによって調 節レベルも影響を受ける。数か月にわたる体温の記録 ⓶⾲㠃 ᗘ 㸦⓶ 㸧 ờ⭢άື ⓶ᨺ⇕ᶵ⬟ ⾑⟶άື ⓶ から、一日の周期はもちろんのこと、6,7,9,12.8, ⓶⤌⧊ ⓶ ᗘཷᐜჾ 20,29,45日など数多くの周期が報告されている20,21。 しかしながら、単に現象的に見出されたこれらの周期の ⏕⌮ⓗㄪᩚ య ㄪ⠇୰ᯡ すべてに生体リズムとしての裏付けがあるわけではな ⾜ືⓗㄪᩚ い。 生体リズムに乗った体温の周期的変動のうち、もっと 図1.体温調節系における皮膚温の位置づけ も典型的なものが体温の概日リズムである。36.7℃とい しかし、皮膚温度受容体の刺激から出発した体温調節 う体温に対して、われわれは経験的基準に照らして直感 反応の皮膚へのフィードバックの仕方は調節の方法が異 的に、 「朝の割には」や「昼だから」と判断している。こ なる。例えば、寒冷時における皮膚温の低下は皮膚寒冷 れは、正常範囲は固定したもので無く、時刻ととも変動 感覚を誘起するが、生理的調節としては皮膚血管収縮反 するという時間生物学の前提を無意識のうちに容認し活 応が起り、その結果、皮膚温がさらに下降するように正 用している。通常の生活下での体温の経過は、早朝の睡 のフィードバックの関係にあるのに対して、行動的体温 眠中には最低体温が現れ、起床、朝食直後に急激に上昇 調節としては低皮膚温による寒冷不快感が動因となって する。その後、極めて緩やかな上昇を呈しつつ、夕刻前 厚着、暖房使用など皮膚温を上昇させる行動を起こす負 に最高となる。夕刻後は下降に転じ、夜が更けるとその のフィードバックの関係になる18。 下降速度はさらに早まり、睡眠への準備状態を形成する。 皮 膚 温 と は、 正 し く は 皮 膚 表 面 の 温 度(surface なかなか寝つかれない夜や、睡眠がたびたび中断される temperature of the skin)のことで、皮膚組織の皮内温 ような場合には、体温の低下が不充分なことが多い。 度あるいは皮下温度とは明確に区別されている。通常の 概月リズムは、平均30日の月経サイクルの女性に対し 生活環境下では外気温は体温よりも低いので体の深層部 て、早朝覚醒時の基礎体温を口腔温測定した場合、排卵 から皮膚組織を経て外気に向かって温度勾配が存在し、 期に最低で、それに続く分泌期の前半に0.2∼0.4℃に及 それに応じて体深層部→皮膚→外環境への熱放射があ ぶ急上昇を呈し、以後その水準を維持し続けるが、月経 る。皮膚表面から外界への熱放散量は定常状態では皮膚 開始ととも再び急激に下降し、増殖期を通じて低体温に 深層部から皮膚表面への熱の移動量に等しく温度勾配が とどまるという一般的経過をたどる。月経周期に対応し 存在する。皮膚温とはこのような皮膚を通って外界に向 た約30日のリズムは、視床下部−脳下垂体−卵巣系のホ かう温度勾配曲線が皮膚表面を切る点の温度であり、い ルモンの動向を反映して現れるプロゲステロンの体温上 −11− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 昇作用によるものである。卵胞期にエストロゲンによっ 体温調節反応12,13,16,22-25 て脳内に蓄えられたノルエプネフリンが、排卵後に黄体 ホルモンによって放出され、これが体温調節中枢に作用 恒温動物をとりまく物理的環境のうち外気温度の条件 する。また視束前野に直接注入されたプロゲステロンは は最も基本的な環境因子であり、温度の影響に関して 脳の温ニューロンを抑制し、冷ニューロンを促進すると は、体温調節や気候適応の面から生理学の分野での研究 いう発熱物質と同類に作用があることも知られている。 が行われている。恒温動物では、生体恒常性の維持とし 概年リズムは、同一の環境温下でも熱産生、皮膚温、 て生体内外の温度変化に応じて働く体温調節反応が備 発汗性をはじめ温度感覚など体温調節に関係のある機能 わっており、外部環境温度の変動によっても温度が変化 が季節により変動することが知られているが、それを証 しない核心温度と外部環境温度が変動すると体表血流が 明する科学的データは見当たらない。 変動し、これにより温度が変化す外殻温度とがある。寒 年齢による体温変動は、新生児の体温は生後3日間は 冷刺激や暑熱刺激を受けると、核心温が一定の狭い範囲 比較的高温であり、これは臍帯脱落、消化管への細菌の 内に維持されるように体温調節反応が引き起こされる。 侵入などが関係しているといわれている。4日以降7日 核心温や環境温の低下などの寒冷刺激に対する反応は対 目ごろまでは多少低下するが、2週目からは再び上昇し 寒反応といわれ、核心温の環境温の上昇などの暑熱刺激 て37℃台を維持する。生後6カ月までの乳児では、体温 に対する応答は対暑反応と呼ばれている。環境温が急激 調節機能が不完全で、環境気温の影響を受けやすいが、 に低下または上昇した場合の自律神経性体温調節反応を 概して高温である。体温が比較的安定するのは満1歳を 表2に示す。 すぎた幼児期にはいってからである。幼児期、少年期を 表2.恒温動物の自律性および行動性体温調節 通じて体温は成人に比べ高く、日本の夏季の午後には約 半数が37.0℃以上の腋窩温を示す。幼少期型から成人 ≀⌮ⓗせᅉ 型への移行にはかなりの個人差があり、思春期を含む ⮬ᚊᛶㄪ⠇ ⎔ቃ ㄪ⠇⾜ື ⛣ఫ 10∼16歳の間に順次移行する。老年期にはいると体温 ᪥㝜䚸᪥ྥ䛾㑅ᢥ は下降し、しかも個人によるバラツキが大きく、これは ேᕤᬮ෭ᡣ 特に低温側に大きいことは温度調節機構の衰退、特に寒 ⇕⏘⏕ 冷感覚の賦活機転の鈍化を示唆している。 また、性差、人種および個人差では、口腔温および腋 䜅䜛䛘 ព㆑ⓗ㐠ື 㠀䜅䜛䛘 㣗≀ᦤྲྀ ≉␗ⓗຊᏛⓗస⏝ 窩温で差は認められていない。さらに、すぐれた耐寒性 ෭䛯䛔䚸 䛛䛔㣗≀ で注目されたアフリカ、南米、オーストラリアの原住民 ⇕ᢠ ⓶⾑ὶ ╔⾰ れていない。 䠄ᨺᑕ䚸ఏᑟ䚸ᑐὶ䠅 ᕢస䜚 皮膚温度は熱交換量を支配するだけでなく、人間の熱 ❧ẟ ⇕ఏᑟ䛾␗䛺䜛⎔ቃ䛾㑅ᢥ の体温も、無感温度環境ではとくに異なった点は認めら 環境に対する快適さの感覚や、人の温・冷・痛の諸感覚 ㏦㢼䛻䜘䜛㢼 を表わす指標にもなる。また、体温調節の機能が皮膚温 ✵ㄪ 度からなる信号によって引き起こされるとする体温調節 ỈศⓎ Ⓨờ య 䛾‵₶ モデルと対比して考えれば、体温制御の様式に関係する ྾ᛶ䚸Ⓨᛶᨺฟ 䠄Ỉ䚸ၚᾮ䚸㰯Ồ䛺䛹䠅 重要な指数ともなる。表1に皮膚温度と感覚および生理 㰯䞉ཱྀ⭍⭢䛾ศἪ ╔⾰䜢䛼䜙䛩 的状態に関する一般的な関係を示す。 ᗄఱᏛⓗせᅉ ጼໃ ᩘಶయ䛾㞟ྜ 表1.皮膚温度と感覚の一般的関係 ⓶ ᗘ䠄䉝䠅 ≧ែ 㻠㻡௨ୖ ᛴ⃭䛺⓶⤌⧊䛾◚ቯ 㻠㻟䡚㻠㻝 ↝䛡䜛䜘䛖䛺③䛥䛾㜈್ 㻟㻥 㻟㻡 㻟㻥䡚㻟㻡 ᬬ䛥䛾ឤぬ 㻟㻣䡚㻟㻡 ᬮ䛛䛥䛾ឤぬ 㻟㻠䡚㻟㻟 㻟 㻟㻟 ఇᜥ䛻୰❧ⓗ ᗘឤぬ䚸ᛌ㐺 㻟㻟䡚㻟㻞 ㍍సᴗ䛻୰❧ⓗ ᗘឤぬ 㻟㻞䡚㻟㻜 ປാ䛻୰❧ⓗ ᗘឤぬ 㻟㻝䡚㻞㻥 ఇᜥ䛻ᐮ䛥䛾ᛌឤ 㻞㻡䠄ᒁᡤ䠅 ために外殻温度は一定に調節されていない。体温調節反 応は、環境温度の変化に対応して体内における熱生産量 と体表からの熱放散量のバランスを調整し、体温を適度 な範囲内に維持する機構である。体温調節反応には、熱 産生、熱放射、液性調節反応がある(図2)。 ⓶ឤぬ䛾㯞⑷ 㻞㻜䠄ᡭ䠅 ᐮ䛥䛾ᛌឤ 㻝㻡䠄ᡭ䠅 ᴟ➃䛺ᐮ䛥䛾ᛌឤ 㻡䠄ᡭ䠅 そのため外殻温度は、核心部の温度を一定に維持する ③䛔䜘䛖䛺෭䛯䛥 −12− 体温調節反応とそれに作用する食物について ⇕⏘⏕ య ㄪ⠇ᛂ ⇕ᨺᩓ ᾮᛶㄪ⠇ᛂ 有量の増加に用いられている。 ࣭࢚ࢿࣝࢠ࣮௦ㅰ ࣭㠀ࡩࡿ࠼⇕⏘⏕ ࣭ࡩࡿ࠼ エネルギー代謝の測定法としては、直接的熱量測定 法(direct calorimetry)と間接的熱量測定法(indirect calorimetry)とがある。直接的熱量測定法とは、エネ ࣭⓶⾑⟶ᛂ ࣭Ⓨᛶ⇕ᨺᩓ ルギーを熱の形で物理的に補足する方法で、その原理は 食品の熱量を測定すために用いられる Berthot の bomb ࣭ෆศἪᛂ ࣭ࣇ࣮ࢻࣂࢵࢡᶵᵓ ࣭యᾮᛂ calorimeter が基本であるが、対象が生物である場合、 図2.体温調節反応の分類 換気、二酸化炭素および水の除去、酸素の補給、室温の 図2.体温調節反応の分類 制御に関する装置を付加する必要がある。直接法は高度 な技術水準に支えられた大規模装置が必要であり多額の 1.熱産生 費用を要するのが難点である。一方、間接的熱量測定法 まず、熱産生とはエネルギー代謝であり、これは摂取 は、求める産生熱は糖質、脂質、タンパク質の酸化に された糖質、脂質、タンパク質といった熱源物質や、無 よって発生した熱量の総和であるので、代謝された各栄 機塩類、ビタミンなど栄養素は、体内で水および酵素の 養素の重量とその燃焼熱から求めることが可能である。 存在下、非常に複雑な中間代謝の過程を経て終末産物と 例えば、ブドウ糖を高温で酸化させると次の通りであ なり体外へ排出される。この一連の過程を代謝といい、 る。 C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O + 673 kcal 特に物質の化学構造の変化には必ずエネルギーの出入り を伴う物質代謝をエネルギー代謝という。代謝は、生物 また、ブドウ糖を発酵させてできたアルコールを燃焼 に特有な過程であり、生命現象の根源であると同時に、 させると次のように表わすことが出来る。 熱力学の法則に支配を受けていることは無生物の場合と C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2 + 18 kcal 同じである。すなわち、生物を分子あるいは原子レベル 2C2H5OH + 6O2 → 4CO2 + 6H2O + 655 kcal でみると、その原子配列は常に不平衡状態にあると考え この様に、2段階の反応を通算した結果と直接燃焼さ られ、生体内に見られる電位や圧力は一種の位置エネル せた場合と同じ結果になる。このような in vitro の酵素 ギーの発現と考えられる。 作用のみならず、in vivo での中間代謝の過程にも Hess 生物として利用可能なエネルギー源は、熱エネルギー の法則が適用することができ、エネルギー代謝を論ずる を効率よく活用するために大きな温度差の存在が前提条 に当っては、摂取する熱源物質と排泄される週末代謝産 件になるが、生体内での代謝過程は37℃の恒温環境で 物ならびにその間の発生するエネルギーのみに着目すれ 行われることから、熱エネルギーを体温の保持には利用 ば良いということになる。 できるが、ほかの形のエネルギーに転換しうる見込みは 身体の活動水準とエネルギー代謝の間には、食物の消 ない。また、生体は光、電気、機械的エネルギーのよう 化、吸収、肉体的ならびに精神的緊張、環境気温などの な外部エネルギーを利用することは不可能ある。した 体内および体外の条件によって左右される。このような がって、生体が利用できる唯一のエネルギーは摂取した 影響を可及的に取り除いた基礎条件における代謝を基礎 特定の物質の分子構造に固有なもの、言いかえれば食物 代謝(basal metabolism)という。これは、生物が正常 の化学的自由エネルギーだけとなる。消化、呼吸、循 な状態で生命を保持するために必要最低限の覚醒時代謝 環、排泄の諸系統は代謝活動の運行に直接関与してお 量である。 り、神経および内分泌系統はその調節を担っている。消 基礎代謝量は、年齢とともに推移することが知られて 化、吸収された熱源物質のエネルギーがすべて自由エネ いる。乳児期に急増し、その後やや増加の速度が減少 ルギーとして利用されるのではなく、その一部はエント し、思春期に再び増加が著明になり、成人期にはいり、 ロピー増大のため熱に転換される。自由エネルギーは 20∼40歳の間は一定の水準を保ち、その後は徐々に低 ATP(adenosine triphosphate)などの高エネルギーリ 下するが、この低下には個人差が大きい。また、性差に ン酸化合物として蓄えられるが、この合成段階での効率 関しては、体表面積当りの代謝量で同一年齢層の男女を が悪く、利用可能な自由エネルギーの半分以上が熱とし 比較すると、幼児期では男女差はないが、小児期では女 て浪費される。このようにして自由エネルギーは、骨格 性は男性より約5%低く、思春期以後はその差は約10% 筋の収縮、体内機能の維持、生化学的および構造的安定 となり、70歳以降では再び5%になる。これは、女性で 状態の維持に用いられ、最終的には熱として体外に放散 は脂肪細胞が多い事が主因で、さらに性ホルモンの影響 される。筋収縮の場合、外部仕事のために使われるエネ も加わっていると考えられている。妊娠の影響に関して ルギーの割合は、約∼25%で、残りは熱として体熱保 は、妊娠の代謝量は妊娠6∼7カ月までは殆ど影響が認 −13− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 められていないが、それ以降の時期では総量として15 SDA が高いのは吸収後のアミノ酸分解と尿素生合成に ∼20%の増加を示す。これは比較的代謝活動の旺盛な 伴うエネルギーの産生で説明されており、タンパク質に 胎児と、代謝活動の比較的低調な母体側の付属組織、体 由来するエネルギーは機械的エネルギーとは成り得ず、 液の増量によるものであり、体重当りあるいは体表面積 熱エネルギーとして身体の熱保有量を増加させている。 当りの値としては変化は認められない。したがって、正 急性飢餓状態、すなわち絶食の場合では、代謝は低下 常な妊娠自体は母親のエネルギー代謝値に特殊な影響を する。体重が10%減少した際に基礎代謝量が15%低下 及ぼしていないと考えられる。 したとすると、単位体重当りの基礎代謝値の低下は5% 温熱環境や気候適応として、低温環境では体温放散の となる。このように飢餓の持続によっても体重が減少す 増加に対処するために代謝は亢進する。この亢進はふる るので、これらの関係も含めると、基準化した基礎代謝 え、すなわち骨格筋繊維のランダムな収縮による熱発生 の15%減の水準が生命維持の最低限度であると考えら が主体をなしている。ふるえの発現は深部体温がある程 れる。慢性飢餓状態、すなわち減食による栄養失調時の 度下がった状態で皮膚温が一定以下に低下するときに起 代謝の変化は断食の場合とほぼ同様であるが、基礎代謝 る寒冷感覚によって反射的に引き起こされる。やがて深 量の減少がより大きく20%減にも達する反面、タンパ 部体温の降下がさらに著しくなると、有効な刺激として ク質の消耗は少ない。反対に過食により体重が増加する 作用する。それゆえ、寒冷による代謝亢進量は脳温およ 場合には、体重増を考慮されて代謝も亢進されている。 び平均皮膚温によって決定される。季節の影響に関して その他、代謝に影響を及ぼす因子として重要なもの は、欧米の成績ではこれを認めないとするものが比較的 に精神的・肉体的労作がある。これは、重筋労働者や 多いが、日本人の基礎代謝量に関しては、冬高く夏低 スポーツマンのように肉体的に鍛錬した人は、5∼7% い著明な季節変動を示し、年間変動の幅は約10%であ の高い基礎代謝を示すが、坐業者では低下しており、日 26 る 。このような冬季の上昇や夏季の下降は、たとえ測 常の生活様式は代謝量に大きな影響を与えている。精神 定の前夜から20∼25℃の室に留まっていても消失せず、 的作業時の代謝では、脳の重量は体重の2.5%にすぎな このことは身体が季節に対して馴化していることを示し いが、他の諸臓器の血流に対する需要のいかんにかかわ ている。したがって、ある時点での気温よりも、それま らず常に750ml/min という安定した血液の供給を受け での気温の経過あるいは気候的前歴のほうが意味があ ている。この量は安静時の心拍出量の13%に当り、脳 り、同じ気温であっても春と秋とではその生理的状態が の代謝基準が極めて高い事を物語っている。すなわち脳 異なるのである。 100g当りの酸素消費量は3.5ml/min. で、安静時の筋 栄養について、絶食中の人に食事を与えると、たとえ 組織の20倍に近い高率である。脳のブドウ糖代謝量は、 身体を安静にしていても、食後数時間にわたって代謝は 睡眠中でも活発な精神活動時でも殆ど変わらないことが 一過性に亢進するのであって、この現象を特異的動的作 確かめられている。また、精神薄弱者や精神分裂病患者 用(specific dynamic action;SDA)という。絶食時の でも健常人との差はない。したがって、精神作業による 代謝水準をこえる超過代謝量は摂取量に比例するととも 中枢神経系自体の代謝亢進は、ほどんど無視しうる程度 に、栄養素の種類によって異なる。タンパク質が最も のものである。むしろ精神作業の随伴する無意識のうち 顕著で、100kcal のタンパク質摂取によって十数時間に 筋の緊張、内分泌の関与による亢進が現実的に現れる。 わたり30kcal の過剰発熱がみられる。糖質や脂質でも かなり激しい精神労働によっても4∼5%の増加をみる SDA に基づく代謝亢進が認められるが、摂取熱量に対 にすぎない。 する割合はそれぞれ6%と4%に過ぎず、また亢進の持 また人種により、基礎代謝の高さがことなることが知 続時間も短い。日本人の通常の食事の場合には SDA は られている。熱帯の土着民の代謝値は北米や欧州の白人 摂取熱量の約10%とされている。 に比べ約10% 低いのに対して、エスキモーは15∼20% この現象は、Lusk(1928)によって広範囲な研究が 高い事が明らかにされているが、熱帯に移住した白人の なされたが、その原因の機序はまだ完全には解明されて 中にも同程度の低下を示す者もあるので、この様な差が いない。消化管の運動、消化液の分泌、循環系、排泄系 本質的な人種差によるものなのか、気候によるものなか の負担などがまず考えられるが、これらの活動による代 のかは明らかにされていない。エスキモーの場合でも、 謝上昇はわずかで、それ以外の重要な過程、すなわち吸 常食としている特異な高タンパク質食の影響は考慮すべ 収された栄養素の中間代謝の過程に伴う産熱反応に焦点 き事項であり、米食に頼る東洋人の代謝にやや低い傾向 が向けられており、肝臓が反応の場であろうと考えられ が認められていることもあわせると、摂食食糧中の栄養 ている。糖質や脂質の SDA による過剰エネルギーは筋 素の比率が大きく関与していると考えられる。このよに 肉作業にも用いられるといわれる。一方、タンパク質の 人種による差は、その人種の体格、体質の差だけでな −14− 体温調節反応とそれに作用する食物について く、固有の居住地域に結びついた気候風土をはじめ、衣 らかにされていない。典型的な NA 性 NST ラットを用 食住にわたる生活環境が複雑に相互作用している。 いた温暖および寒冷馴化実験では、温暖馴化ラットでは 非ふるえ熱産生(nonshivering thermogenesis:NST) ふるえが唯一の熱産生方法であり、そのため耐寒能力が は、骨格筋の収縮の関与しない熱産生であり、生体の 弱い結果となった。一方、寒冷馴化ラットでは他の熱産 最小のエネルギー要求に関係している熱産生である基 生機構である NST が温度中和帯より外気温が低くなる 礎的あるいは不可避的 NST(basal or obligatory NST) 、 と発現するため、ふるえは外気温より低くなってから起 つまり基礎あるいは安静時基礎代謝量に相当するもの り、NST とふるえの両者は体温調節のために利用され と、環境温度が臨界温度より低くなったときに起る体 るため耐寒能力が著しく促進する。また NA により NST 温調節 NST(regulatory NST)とに分けられる。Claude の程度を測定すると NST は一定の範囲内で馴化温度が Bernard(1876)は、脊髄切断とクラーレ処置でふる 低ければ低いほど大きくなっている。また寒冷暴露期間 えを除去した動物で、寒冷下における熱産生にふるえに が長ければ長いほど大きくなる。馴化完成までの期間は よらない化学的過程によるもの、すなわち NST が存在 寒冷の程度のいかんにかかわらず約4週間であり、最大 することを示唆している。その後、多くの研究がなさ NST に到達するまでの1/2期間は8∼10日である33。再 れ、その存在の確実な証拠が得られたのは1950年代に び温暖環境にもどした時の NST 能力の減退、すなわち 入ってからである。Janský ら27-30は、寒冷馴化ラットが 脱馴化期間、1/2期間も、寒冷の程度、寒冷の暴露期間 寒冷下でふるえによらないで熱産生を増大して体温を維 のいかんにかかわらず馴化完成期間をほぼ同じである。 持すること、寒冷馴化ラットがクラーレによって骨格筋 持続的な寒冷暴露のみでなく、間歇的な寒冷暴露によっ の収縮を除去したあとにおいても寒冷下で熱産生を起こ ても NST の促進による馴化が認められ、その程度は寒 すことが出来たことを明らかにした。 冷暴露の総期間によって決定される。この型の寒冷馴化 NST は、 主 に 哺 乳 動 物 で 寒 冷 馴 化 に よ っ て 促 進 し が寒冷地におけるヒトの場合でも相当すると考えられて て 耐 寒 能 力 を 増 強 さ せ る。NST は ノ ル ア ド レ ナ リ ン いる。しかし、-20℃の厳しい寒冷の間歇的に暴露され (noradrenaline:NA)の熱産生作用と密接に関係して たラットやマウスには耐寒能力の増強がみられるにもか おり、寒冷馴化によりラット、モルモット、リス、ウ かわらず NA による NST の促進が認められておらず28、 サギ、ネコおよびヒトなどで NA による NST の発現が NA 以外の因子による NST の促進、さらに慣れの関与が 観測されいる31。しかし、寒冷馴化したハト、ニワトリ 示唆されいるが確かなことは明らかにされていない。こ や小型ブタでは NA による熱産生が認められず、しか のような場合、ヒトでは NA による NST の促進が認め も寒冷馴化後もふるえが減少しないことから寒冷馴化 られている31。 に NST 以外の作用機序が関係していることが示唆され NST の解剖学的発現部位とそれが NST の何%を受け るが明らかにされていない。マウス、イヌ、ハリネズミ 持っているかという問題は最終的には解決されていな では、温暖および寒冷馴化群ともに NA により著しい熱 い。組織の血流量、チトクロームオキシダーゼ活性、酸 産生を起こす。しかも寒冷馴化したこれらの動物の寒冷 素消費などの指標によって、寒冷馴化ラットの NST の 下における熱産生に対して NA はさらに追加的に熱産生 50∼57%を骨格筋、23∼24%を肝臓、10%を腸管、6 を促進する。したがって、これらの動物では寒冷馴化し ∼8%を褐色脂肪細胞、その他数%を心臓および脳がま ても寒冷暴露による熱産生がラットなどとは異なり NA かなっている。また、骨格筋の NST への寄与は50%以 による熱産生によって置き換えられていないことにな 下であり、内臓諸期間が重要であるとも報告されている る。これらの結果は、ある種の恒温動物では NST の促 27 進因子としての NA の意義は明らかではなく、他の作用 (radioactive minute ball)を用いた方法で組織血流量 機序があることを示唆している。おそらく NA 以外のホ を再検討した。この結果によると、寒冷馴化ラットでは ルモン因子が関与していることが示唆されている32。こ 褐色脂肪細胞における熱産生が実に NST の60%を供給 。近年、Foster ら34は、放射性プラスチック微小球体 のように、恒温動物は、寒冷馴化と NST の観点から3種 しており、心臓、横隔膜が15∼20%、骨格筋はわずか 類に分類することができる。第一のグループはラット、 12%程度、肝臓などの内臓が残りを引き受けていた。 モルモットのように寒冷馴化により NA を主要因子とす ふるえ(shivering)は、筋収縮による熱産生機構は る NST が促進するもの、第二のグループはマウス、イ 大脳皮質を介する随意運動と無意識的な不随意筋収縮の ヌ、ハリネズミのように寒冷馴化により NST が促進す 一種である。ふるえと呼ばれる筋の振戦様式は寒冷刺激 るが、NA の意義が明らかではなく NST の作用機序が不 によって誘発され、かつ筋活動のパターンが伸筋群と 明なもの、第三のグループは小型ブタのように寒冷馴化 屈筋群の両者において、同期性収縮をする点に特徴があ によって NST が発現しないもので、その作用機序が明 る。このように、身体の筋群が同時に等尺性収縮をする −15− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 と体の外部への仕事がなく、かつ対流性熱放散も小さい 増える。逆に寒いと血管は収縮し、中心部−殻の距離が ので恒温動物における体温調節の熱産生としては極めて 増えて熱放射が減る。深部の臓器で産生された熱は、皮 有効な手段である。ふるえと NST や代謝との関係は古 膚までの組織を純物理的に伝導によって運ばれるが、生 くから検討がなされており、筋緊張の発現は代謝量の増 理的にはこの熱は殆どは血液によって運搬される。さら 加が伴うこと、ヒトの寒冷暴露実験では、熱産生の増加 に暑いときの皮膚血管の拡張は、汗腺に十分な水を供給 は即時的であるが、筋緊張は最初の1時間において観測 して皮膚面から蒸発量を増すと同時に、皮膚温を高めて されないことなど、NST がふるえに先行してすること 蒸発の効率を上げる。このように皮膚血管は体温調節で 35 を示唆した報告もある 。ふるえは末梢性と中枢性温度 もとりわけ熱放射の面で重要な役割を担っている。皮膚 受容器に興奮が入力となり視床下部体温調節中枢を介し 循環は、全身の血流分配の調節という面で重要な役割を 36 て発現する。ふるえの中枢に関しては、Perkins は視 もち、中枢、末梢の温度受容体からの情報以外に圧受容 床下部、赤核腹側部、延髄をあげ、Stuart ら37はふるえ 体、容量受容体、化学受容体からの情報や運動によって の一次中枢を後部視床下部に求め、体温調節の熱産生 引き起こされた血管運動反射の最終効果であり、運動時 機構の中か、またはその近傍と結論づけている。また、 の血流減少は極めて合目的な変化である(図3) 。しか 38 Hemingway はふるえの中枢は他の幾つかの中枢から し、神経系のどこがどのような機序でこの血流の再分配 神経性情報を受けて作用し促進・抑制されると報告し、 を統合するかは明らかにされていない。また、温度受容 ふるえ中枢からの遠心性出力は後部視床下部から中脳の 器または温度受容組織は生体の様々な部位に存在してい 被蓋や橋を介して脊髄に下がり、視蓋脊髄路や赤核脊髄 る。皮膚・粘膜にある末梢温度受容体、視床下部、中 路に含まれると考えられている。しかし、後部視床下部 脳、延髄、脊髄にある中枢神経内温度受容体、腹壁内 から遠心性出力パターンや脊髄レベルでそれがふるえ発 側、大血管、肝臓にある中枢神経外深部温度受容体が存 現に果たす作用機序は明らかにされていない。寒冷ふる 在している。温度受容器で感受された温度情報は、脊髄 えは体温調節の熱産生に主要な役割を果たしており、ふ 神経由来の第1次ニューロンを介して脊髄後角で第2次 るえに関する研究・報告は代謝・体液・内分泌・循環系 ニューロンにつながり、第2次ニューロンは、直ちに交 のみならず、筋−神経生理学分野など広きにわたってお 叉して外側脊髄視床路を直上して視床後腹側外側部に至 り、今後の研究が期待されている。 り髄反射経路に伝達される。第3次ニューロンは、大脳 皮質の中心前回、中心後回の体性感覚野に至り、温度感 2.熱放散 覚が認知される。温度感覚の第2次ニューロンは脳幹毛 熱放射は中心部(core)から殻(shell)への熱の移 様体、視床非特異的核に入り意識水準に関与したり、内 動と循環である。ヒトでも動物でも、暑いと皮膚血管は 側前脳束を通って視床下部に至り、自律性体温調節に関 拡張する。温かい血液が体表面を流れ、体の中心部と殻 与している(図3) 。 の熱伝導距離、すなわち組織の熱絶縁の減って熱放射が ୰ᚰ ⓶ ⬻⓶㉁ どᗋୗ㒊 どᗋ᰾ ≉␗ⓗ 㠀≉␗ⓗ ୰ᚰ ⅊ⓑ㉁ ⾑⟶ᣑᙇᛶ⚄⤒ ⾑⟶㐠ື୰ᯡ ⾑⟶⦰ᛶ⚄⤒ ୰⬻ 㸦ṇ୰⦭⥺᰾㸧 ⬨㧊ᚋゅ ᅽཷᐜయ Ꮫཷᐜჾ ᮎᲈ ᗘཷᐜయ 図3.体温入力経路と皮膚の細小動脈径の調節因子 −16− 㐠ື ⓶ࡢ⣽ᑠື⬦ 体温調節反応とそれに作用する食物について 皮膚血管の循環には、皮膚自体への酸素供給と熱放射 え以外に NST に関与する臓器にも比較的大量の血液が の2つ役割がある。しかし、皮膚への酸素需要は極めて 送られている。冷水に手をつけると収縮期圧、拡張期圧 少量であるため、皮膚血流量の調節は殆どが体温調節機 ともに上昇し、心拍数が上がる。寒冷刺激と共に皮膚血 序の一部と考えられる。とくに手の血管には豊富な交 管の強い疼痛からくる交感神経の賦活によるもので、寒 感神経支配にあるが、殆どが収縮性(α−アドレナリ 冷昇圧試験として臨床試験にも応用されている。寒冷に ン作動性)神経であり高温環境下での血管拡張はこの 馴化したヒト、例えばエスキモーは冷水中に手をつけて 神経の緊張低下による。前腕の皮膚には、交感神経性 も血圧の上昇は少ない。 の拡張神経(コリン作動性)があり、環境温度の変化 皮膚血管の収縮・拡張による皮膚表面からの熱放散量 に応ずる皮膚血管の反応は、部位により量的にも質的 の調節は、最も重要な体温調節反応の1つである。しか にも差異があるのが特徴である。皮膚では、動静脈吻 し、皮膚血管活動に影響するのは温熱因子のみではな 合(arteriovenous anastomosis:AVA)が熱放射を調節 い。いろいろな非温熱性因子にも影響され、皮膚血管の する重要な血管であることはよく知られているが、AVA 収縮・拡張は、局所性要因と全身性要因が関与してい と毛細血管の血流分配、その調節機序についてはあまり る。局所性要因としては、局所の液性要因と局所温度 明らかにされいない。 がある。局所の血管拡張物質(vasodilator substance) 暑熱・寒冷にヒトや動物が暴露されると、皮膚血流以 は、皮膚血管に作用する局所の液性因子として二酸化炭 外の全身血行動態に変化が起きる。暑熱下では皮膚血管 素、乳酸、アデノシン、アデノシンリン酸、ヒスタミ が拡張して血流量が増すが、腹部内臓とくに腎の動脈な ン、水素イオン、ブラジキニンなど、全身性のホルモン どでは逆に血管の収縮が起り血流量は減少する。筋血量 として NA、アドレナリン、レニン−アンジオテンシン もわずかながら低下し、皮膚血管の拡張による末梢血管 などが作用する。局所組織内の物質代謝率が増加する 抵抗の減弱を補償する。極度の暑熱下では、皮膚血管量 と、局所血流が増す。これは代謝率が大きくなるほど血 は寒冷環境下でほぼ0に近い値と比較して50∼100倍の 管拡張物質の生成率が高くなるためである。血管収縮 高い値を示し、その血管抵抗は極めて低い。この血管抵 を起こすイオンとしてカルシウムイオンが知られてい 抗の減弱に見合うだけ、他の臓器の血流量を抑制するこ る。カルシウムイオンは、平滑筋を収縮させる。血管拡 とはその機能を維持するうえで不可能であり、二次的に 張を起こすイオンとして、カリウムイオン、マグネシ 心拍出量、血圧とくに収縮期圧の上昇が起る。心拍出 ウムイオン、ナトリウムイオンが知られている。カリ 量は、心臓の1回拍出量と心拍数の積で表わされる。暑 ウムイオンとマグネシウムイオンは、平滑筋を弛緩さ 熱下では心拍数と1回拍出量の両者が増加するが、暴露 せる。ナトリウムイオンの作用は、イオン自身の作用 当初は心拍数の増加が主であり、やがて1回拍出量が増 ではなく液体の重量モル浸透圧濃度亢進によるもので える。視床下部の温熱刺激で同様に心拍数の増加が起 ある。局所加温による皮膚血流増加には、皮膚毛細血 る。暑熱暴露によって心拍出量は約15ml/min.、通常の 管拡張による毛細血管血流量増加が関与している。ヒ 約3倍程度に上昇する。しかし、これが全部皮膚血管だ トで局所皮膚温が42℃以上になると、血管平滑筋緊張 けを流れるのではなく、皮膚以外の臓器を流れる血液の が抑制されるので血液量は最大値に達する。局所皮膚 量は、心拍出量比では減少するが、その絶対値は常に大 温が42℃以上になると、温刺激に対する血管の神経と きい。これは、一部分体温上昇に伴う組織の代謝亢進が 介する応答がみられなくなる。一方、環境温が15℃以 その部分の血流量の増加を必要とするからである。暑熱 下になると、よく知られている寒冷皮膚血管拡張反応 暴露下の体温上昇によって心拍出量は著しく変化する。 (cold vasodilatation)が起り、皮膚血流量が周期的に 体温0.5℃上昇で、心拍出量は30∼70%増加する。これ 増加する。全身性要因としては、神経要因と内分泌性要 は心臓の洞房結節の細胞の興奮頻度が血液温度の上昇に 因とがある。生体に与えられた種々の刺激によって皮 よって増加されるためで、発熱時の心拍数の増加の機序 膚血管が拡張・収縮する。これらの刺激の情報は血管 とも類似している。環境温度が低くなるにつれて、心 運動調節中枢に伝達されて処理され、その結果、神経 拍数、1回拍出量が減り、心拍出量が減少する。これは およびホルモンを介して効果器である皮膚血管に伝え 15℃付近で最低になり、それより環境温度が低下する られる。皮膚血管は交感神経の支配を受けている。皮 と逆にわずかに心拍出量が増加する。これは、ふるえの 膚血管を支配する交感神経線維は2種類ある。皮膚血管 開始時期とほぼ一致しており、骨格筋への血液供給量の 収縮神経線維(cutaneous vasoconstrictor:CVC)と皮 増加にみあう心拍出量増加であるようにみえる。このよ 膚血管拡張神経線維(cutaneous vasodilator:CVD) うな寒冷環境下では皮膚血流量は減少するが、骨格筋、 である。CVC の活動性増加によって皮膚血管が収縮し、 内臓とくに腎臓、肝臓などの血流分配量が増える。ふる 逆に CVC の活動性減少によって皮膚血管が拡張する。 −17− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 CVC 節後繊維の伝達物質はアドレナリンである。CVD 動物は、生体からの熱喪失を可能なかぎり減少させ、同 の活動性増加により皮膚血管が拡張する。CVD の活動 時に生体内での熱発生の増大に努めて体温の可及的恒常 は温刺激が強くなってはじめてみられており、温刺激 性をはかっている。後者は筋緊張の増加、収縮さらには 以外に CVD の活動性に影響する刺激は現在のところ知 振戦などによる熱産生と筋緊張を伴うことなく物質代謝 られていない。中間環境条件では CVD は活動しない。 を高めて産熱を増加させる。この二つの生体内の作用機 この条件でみられる皮膚血管の拡張は、CVC の活動低 序に基づいて体温の低下を防止している、ホルモンの一 下によって引き起こされる。CVD 節後繊維の伝達物質 部はふるえの中枢機構に作用して神経系の刺激に対する はまだ明らかにされていない。non-adrenergic、non- 興奮性を非特異的に高めることによって、ふるえ熱発 cholinergic 機構の存在が確認されており、伝達物質候 生(shivering thermogenesis)を誘起しやすい状態を導 補としてプリン、ATP、サブンタンス P、その他のペプ き、耐寒性に関与している。一方、NST の点からは末 チドなど多くの物質が検討されており、ドパミンの関 梢細胞組織の代謝促進、酸素摂取増大をうながしたり、 与も報告されいる。しかしながら、いずれにしても統 中枢神経内の体温調節機構に直接働いて、体温調節に関 一的な支持を得るには至っていない。内分泌性要因と 与しているものと考えられている。これら種々の体温調 しては、カテコールアミン(NA、アドレナリン)によ 節機序に関与するホルモンの働きについて多くの研究が る血管収縮がある。カテコールアミンは、特に皮膚の なされているが39-42、大部分のものは寒冷馴化に関する 血管に対する作用が強く、作用も早い。種々の身体的、 研究であって、急性寒冷ストレスに対してのホルモンの 精神的刺激により副腎髄質よりカテコールアミンが分 役割についての研究は少ない。精巣摘出ラットを寒冷環 泌される。レニン−アンジオテンシンによる血管収縮 境に急性暴露させるとテストステロンプロピオネート処 の作用は、神経性反射や NA に比べて遅く、これに相応 置の有無にかかわらず体温の上昇が観測されている。こ して持続時間が長いのが特徴である。また、視索前野 の実験で投与したテストステロンプロピオネートが副腎 /前視床下部温度ニューロン活動に対する液性因子の から放出されるホルモンの1つであるグルココルチコイ 作用として、体温上昇効果のある物質は、インターロ ドと競合的に働き産熱に関与するのか、直接的副腎に働 イキン1/内因性発熱物質、エンドトキシン、NA、甲 き、副腎から二次的に放出される物質が体温維持に重要 状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin releasing な役割を果たしているのか、あるいは投与したテストス hormone:TRH)、ソマトスタチン、血管作用性小腸ペ テロンプロピオネートが筋組織をはじめ種々の産熱組織 プ チ ド(vasoactive intestinal peptide:VIP)、 ム ラ ミ に作用して産熱量を高めるのか、その作用機序は明らか ル・ペプチドなどが知られている。一方、体温下降効果 にされていないが、副腎摘出ラットではテストステロン のある物質は、セロトニン、アンジオテンシンⅡ、バソ プロピオネート投与による体温上昇効果は認められてい プレシン、モルフィン、カプサイシン、コレシストキニ ない。グルココルチコイドは、筋レベルで酵素の合成を ンオクタペプチド(cholecystokinin octapeptide:CCK- 促進し、ultimate oxydative step に影響を及ぼし、また 8)などがある。その他、オピオイドは動物種、環境温、 寒冷暴露中には肝の酵素の活動を増進する働きを持って 投与量などにより作用が異なり、アルギニンバソプレ いいる43-45。しかも、グルココルチコイドは、視床下部 シン(arginine vasopressin:AIP)、副腎皮質刺激ホル の体温調節中枢への作用も知られている46。副腎髄質か モン(adrenocorticotrophic hormone:ACTH)、αメラ ら放出されるアドレナリンは、種々の生理機能を動員し ニン細胞刺激ホルモン(α ‐ melanocyte stimulating て寒冷に暴露された際に生体の体温維持に大きく貢献し hormone:α− MSH)は内因性発熱抑制物質であり、 ているホルモンであり、甲状腺ホルモンとの競合的活動 発熱物質投与による発熱を抑制する作用がある。 によって生体の酸素消費量を著しく高める働きをしてい る47-49。この様に生体の体温維持に重要な役割を担って 3.体液調節反応 いる副腎を摘出することは、寒冷暴露された際に体温維 体温調節に及ぼすホルモンの影響は、種々の生理現 持に大きな欠陥を生じることになる。 象からその作用機序が推測されてきた。しかし、どの ヒトでは体重の2/3を水分で占められ、この水分は脈 ホルモンが生理的量の範囲内でいかなる作用機序を介 管内、組織間隙および細胞内に分布している。この水分 して末梢性、中枢性の体温調節に関与しているかとうい を総称して体液と呼び、この体液は細胞内液と細胞外液 う点については、その実験報告はきわめて少ない。その の二つに大別される。細胞内液とは細胞内にある水分 中で、アドレナリンなどの一部のアミン類やプロゲステ で、細胞外液とは細胞外にある血漿、リンパ液、間質液 ロンおよびその誘導体の発熱性が報告されている。耐寒 などの総称である。この細胞外液は、ホルモンや栄養分 と性ホルモンとの関係において、寒冷環境に暴露された および老廃物の運搬を行うとともに、体液の浸透圧、イ −18− 体温調節反応とそれに作用する食物について オン組成、体液量などの内部環境を一定に保つことによ は、末梢血管拡張により毛細管前−毛細管後抵抗比が変 り、生体細胞の物理化学的な反応、ひいては正常な生体 化し、毛細管における有効濾過圧が低下することによっ 機能を維持している。各種の内部環境のうちでも、体液 て組織液の流入が引き起こされると考えられている。温 量およびその調節に重要な役割を演じる電解質濃度は、 熱負荷による体液の変化については文献上種々雑多な結 最も厳密な調節を受けている。一般にフィードバック機 果が報告されており、一定の反応としてまとめることが 構には一定のセットポイントがあり、このセットポイン 非常に困難である。これは温熱負荷による体液の変動が トからのずれを感知して調節機構が作動し、調節機構が 単に温熱の影響にとどまらず、多数の因子によって影響 作動しはじめるまでにセットポイントからの一定のず を受けるためである。体液バランスに影響を与えるもの れ、すなわち調節幅がある。この調節幅は生体にとって として、水分摂取量、脱水の程度、運動量、塩分代謝を 重要な因子ほど小さく、重要度が減少するにしたがって 含めた栄養状態、さらに季節の影響および高温馴化など 大きくなる50。体液量および体液の電解質濃度に関して があげられる。また温度に関するものとして、外気温、 は、この調節幅が非常に小さく、その恒常性が生体の正 とくに寒波や暑熱波の影響、測定時の温度も体液変動の 常な機能にとって重要であることを示唆している。 要因になるとともに体液区分測定法の精度が低いことな 穏和な環境条件下に安静な生活を営む成人の水分出納 どに留意する必要がある。 値は、約2,500 ml / 日である。主な水分排出経路として 寒冷に対する生理的反応では、体液変化との関連が考 は、腎より尿として排泄されるものであって普通1,000 えられるものとして、末梢血管の収縮とふるえによる熱 ∼1,500 ml / 日である。次に不感蒸泄であり、普通の 産生および寒冷利尿がある。寒冷暴露時の血液の変化に 生活条件下では約900ml/ 日であり、このうち1/3は呼 関しては、Bass53は、7人の被験者を約15℃の室温に2 吸による損失であり、2/3が皮膚からの水分蒸発である 時間暴露した結果、血漿量は7%の減少を示しこの減少 が、いずれも代謝量や環境温ならびに外気の湿度により は有意であった。血液量は3%の減少で有意差はなく、 変動する。この様に生体からは絶えず一定量の水分が失 循環血中の血漿タンパク質および血球量に変化は無かっ われていく一方、生体は水分出納のバランスをとるため た。この寒冷暴露による血漿量の減少は、抗利尿ホルモ に、体液の状態に応じて口渇によって水分の摂取量を大 ン(antidiuretic hormone:ADH)投与による寒冷利尿 まかに定め、さらに腎臓において尿量および尿の組成を を抑制しても同程度に生じ、この結果から寒冷暴露によ 変化させることにより、体内の水分塩分の微細な調節を る血漿量の減少は、寒冷利尿による血漿が失われるので 行っている。 はなく、末梢血管の収縮が血圧上昇をきたし、脈管内か しかし、環境条件の変化は、この体液量の水分・塩分 ら間質液への濾過が亢進したためとされている。また、 のバランスに非常に大きな影響を与える。すなわち、環 Svanes ら54は、ウサギを用いて低体温時の毛細血管圧 境温の上昇や代謝の亢進により体温が上昇すると、発汗 および毛細血管の浸透圧を測定した。その結果、腸管膜 による皮膚表面からの熱放散が始まる。このことは体温 の毛細血管を用いて毛細管濾過圧および濾過係数を求め の恒常性が体液の恒常性以上に重要であり、体液の恒常 濾過圧は低体温により幾分上昇したが有意な増加ではな 性を一時的に犠牲にしても体温を一定範囲内に保つこと く、濾過係数にも差は得られていない。 を示している。 次にふるえによる熱産生が起ってくると、細胞外液か 51 Barcroft ら は、外気温と血液量との関係を最初に報 ら細胞内へと水分の移動が生じる。直腸温20℃および 告した。彼らは、英国からペルーは航海する間に、船が 凍死の段階では、血漿水分量が対象のレベルに復してい 南下するに従って血液量が増加することを認め、血液量 る以外、水分の移動は28℃の場合と比較して殆ど変化 の増加は17%にも及び、気温と非常に良い相関を示す していない。また、直腸温が28℃に下がるまでに激し ことを報告している。温熱負荷を加えられた際の人体の いふるえを認めており、この水分の細胞内への動きは 主要な反応は、末梢血管の拡張と発汗反応である。これ 一般の筋運動時に認められる水分の動きと同じであっ らの防御反応は、水分代謝率を上昇させるとともに、循 て、筋運動による代謝産物が細胞内に蓄積し、水分の浸 環系および各体液区分に変化を生じさせる。温熱負荷の 透流が生じるためと考えられている55-57。寒冷暴露時に 初期に生じる体液の変化のうち最も知られているのは 認められる寒冷利尿はほぼ等張液であることが多く、し 血液の希釈であり血漿タンパク濃度の減少が報告され たがって、ナトリウム、塩素、マグネシウムなどの排泄 52 ている 。また、発熱時にも血液量および血漿量が25∼ 増加を伴う。この利尿は比較的容易に起こす事が可能で 30%増加する。発熱物質の投与により発熱させたウサ あり、裸体のヒトでは20%の環境温で始まる。成長ホ ギでは血液量が14∼20%増加し、ヒトでも同様な増加 ルモン放出因子(growth ‐ hormone releasing factor: が認められている52。この血液水分量の増加機転として GRF)および腎血漿流量には変化はなく、また ADH の −19− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 投与により抑えることができる53,58。このことは寒冷刺 し、各種の運動は鈍化し、動物は嗜遅鈍の状態になる。 激により末梢血管が収縮し、そのために胸腔内充満度が 一方、恒温動物では、毛皮層、皮膚および皮下脂肪層を 上昇し ADH の分泌が低下されるためであると考えられ 厚くして、放熱量の節減をはかるとともに、場合によっ 59 58 ている 。また、Itoh はラットを用いた実験で、ADH ては熱産生量を増加して、体温を正常値に保っている。 作用が高温暴露により増加、寒冷暴露により低下するこ 身体幹部はその内部に生命保持の重要な臓器を収容して とを報告し、さらに寒冷に暴露されたラットでは、腎の おり、その温度変化をなるべく少なくしており、一方、 ADH に対する感受性が副腎皮質ホルモンの分泌上昇に 四肢の皮膚温は外囲の温度に影響されて変動するがこれ より抑えられる可能性を示唆している。また寒冷利尿に はその部の血流量の変化に依存している。生体が寒冷に よりナトリウムが失われるが、寒冷暴露が長期にわたれ 暴露されると、熱放散の調節とともに、一方では熱産生 ば血液量に変動をきたす可能性がある。北満居住者の食 の促進も起る。この場合、肝臓やその他の臓器における 塩摂取量が冬期に上昇し、寒冷利尿で失われたナトリウ 代謝の上昇も無視できないが、熱産生の主体をなすのは ムが補給されてることで血液量の維持と関連して合目的 ふるえである。生体が寒冷にさられると、まず、副腎髄 な変化であり、また、アラスカにおいて行われた冬期屋 質からアドレナリンの分泌が増加し、これが皮膚血管の 外生活時の栄養バランスの研究において、普通食群に比 収縮を促進して熱放散の調整を行う。しかし、筋血管の 較してナトリウム添加食群のほうが寒冷耐性ならびに活 収縮は行われ無いので、筋の血流は増加し、一方では血 性能が高かった結果からも血液量の変動との関連性につ 糖値を上昇させ、筋収縮やふるえによる熱産生を容易に いての検討が必要である。 する。また、寒冷暴露に伴う代謝亢進時には、糖の利用 温度により引き起こされる感覚には、温度感覚、温熱 増加や尿中窒素排泄量の上昇、したがってタンパク質の 感覚の他に温熱快・不快感がある。温熱的快・不快感 利用も増加する。さらに貯蔵脂肪の動員が起り、呼吸商 は、皮膚、中枢神経系、および中枢神経外体深部の温度 が低下することも知られている。 受容器により情報が統合された体温調節反応を引き起こ 極地住民としてエスキモーが知られている。彼らの家 すのと同じ信号により左右される。さらに、引き起こさ 屋は氷雪を半円形に積み上げて外気とまったく遮断し、 れた体温調節反応(ふるえ、血管運動など)によっても 出入口に当る地下道には鯨油灯をおいて、ここで空気を 左右される。したがって、図4に示すように温度感覚は 暖めて家屋内に送り込んでいる。そしてその家の頂点に 核心温度によって影響されないのに対して、温熱的快・ は小孔があり、ここから空気が外界へ流れる仕組みに 不快感は強く影響を受けている。 なっている。したがって、室内は暖かく、上半身は裸体 で生活している。外界へ出るときは、二重の毛皮衣服と ⇕ⓗᛌ䞉ᛌឤ 革靴を用いて充分な防寒を行っている。しかし、狩猟や ᗘឤぬ 手技のため手は寒気に露出することが多いが、この手が 凍傷にかからないように、エスキモーの手の血流量は白 人に比べ2倍に及ぶと報告されている。この事実は、多 くの極地動物にみられるような、四肢の冷却によって体 ࡩࡿ࠼ ⾑⟶⦰ Ⓨờ 温の低下を防ぐという適応が、エスキモーにはできてい ないことを示している。その代わりに体内熱産生を増加 させて体温を保っており、彼らの基礎代謝は、一般の基 準値よりも20∼30%高い。これはタンパク質と脂肪の ⇕ሗ⤫ྜ 多い食物を摂取していることが、大いに関係しているも のと考えられている。このように極地土民は充分な防寒 設備をもって身体を保護し、一方では体熱の産生を上昇 ୰ᯡ⚄⤒ෆ ᗘཷᐜჾ య῝㒊 ᗘཷᐜჾ ⓶ ᗘཷᐜჾ させて体温を一定に保って生活している。人類はもとも 図4.快適感覚と温度感覚に関与する因子 と熱帯性動物に属し、寒冷馴化能が弱いため、極地気候 に対処するにはこのような生活様式が常識的である。 4.寒冷適応と栄養12,13,60,61 寒冷適応とは、恒温動物が寒冷の長時間暴露されたと 哺乳類と鳥類とを除くすべての動物は、変温動物で き生理的適応、すなわち寒冷馴化の調節機構であり、そ あって、周囲の温度につれて体温は変動する。この際、 れは生体が寒冷下で体温を維持して、正常に生存でき 生体の温度が低下するにつれて、色々な生理的反応過程 るような適応性の生理的調節機構の総和である。しか のスピードは変動する。すなわち、酸素消費量は低下 し、寒冷馴化は生体側の条件(種差、性差、年齢、活動 −20− 体温調節反応とそれに作用する食物について 状態、栄養など)と寒冷の暴露条件(寒冷の程度、暴露 ン、NA の前駆体アミノ酸であるチロシン、フェニルア 期間、暴露様式など)によって種々の様相を呈する。寒 ラニンの代謝を促進して、これらのホルモンの分泌を増 冷馴化の型としては、絶縁によって体熱の放散を減少さ 加させるのに関係していることが考えられるが科学的な せる保熱機序による適応である断熱性寒冷馴化と熱産生 証拠は得られていない73-75。副腎皮質ホルモンの分泌過 の促進に基づく適応である代謝性寒冷馴化がある。寒冷 剰が寒冷による低体温を促進することから、ビタミン C 馴化の発現機序としては、体温調節性末梢および中枢神 による副腎皮質ホルモン分泌抑制がその効果に関係して 経系、自律神経系、内分泌系、物質代謝、呼吸循環系が いる可能性も考えられる。 ある。また、寒冷馴化時の熱産生の促進に栄養が量的に 体温調節反応に作用する植物 も質的にも重要であることは明らかである。寒冷馴化に より動物の摂取カロリーは増大する。ヒトでも−40℃∼ 38℃の種々の気候下での摂取カロリーと気温との間に 以上のように、ヒトをはじめ恒温動物では、外環境 は負の相関関係が知られている。また、栄養の質の問題 の温度が変化しても、生体の体温調節反応によりその も重要である。-3℃の寒冷下で赤外線ランプをレバーで 核心温度は一定の範囲内に保持されるように働いてい の点燈して熱を獲得するように訓練したラットに高脂肪 る。体温調節反応は、意識の上らない自律性体温調節と 食を与えると、レバーを押す回数が普通の食に比べて少 意識的に行う行動性体温調節とに大別することができ なくなる。高糖質の場合も少なくなるが高脂肪食よりは る。自律性調整には、熱産生(ふるえ、非ふるえ)、熱 多い。高タンパク食では効果が認められなかった報告が 放散(皮膚血流の変化、発汗)のバランスによって行わ ある。また、寒冷下でラットは高脂肪食を選択的に摂取 れている。この自律性体温調節には限界があり、環境温 する。しかし、マウスの場合は高糖質を好むが、このよ 度によって決定されている。一方、行動性体温調節と 62-64 。ま は、ヒトでは衣服の着脱や冷暖房装置の使用、動物では た、高脂肪食が耐寒性を増強させることが示されてお 日陰に移動、体表面をぬらすなど多様な行動をとる。ま り、エスキモー、ラップのような極地住民が高脂肪食を た、体温調節中枢によって、生体内外の温度情報を受け 摂取していることはよく知られている。高脂肪食はラッ 取り、情報処理を行い、神経系や内分泌系を介して体温 トでは寒冷馴化能力を促進して、これが NST の促進に を一定に調節する反応を引き起こし、体温が一定に調節 基づくことが示されている65。高タンパク食は、耐寒能 されている。その最高司令中枢は視床下部に存在してお うな差の要因については明らかにされていない 66 力には影響を与えない 。高脂肪食は、脂質酸化の促 り、延髄、脊髄レベルでの階層支配を制御している。視 進、糖新生の促進によって NST を増強させていると考 床下部の中でも、特に内側視索前野・視床下部前野複合 えられている。高脂肪食が甲状腺機能を高めて耐寒能力 体(medial preoptic- anterior hypothalamic continuum, に影響しているという報告がある一方、むしろ抑制的に medial:PO/AH)が体温調節に重要な役割を担ってい 66-68 。また、寒冷暴露はビ る。PO/AH 領域を破壊すると熱放散機構が正常に働か タミン C の代謝を促進して尿中へのビタミン C 代謝物 ず高温環境下では体温が上昇する。また、PO/AH 領域 働いているという報告もある 69 の排泄を増大させる 。ビタミン C はサル、ヒト、モル を加温すると皮膚血管の拡張などの放熱反応が起り、逆 モットで耐寒能力を促進するが、この効果の作用機序は に冷却すると皮膚血管の収縮やふるえや非ふるえの熱産 70-72 明らかにされていない 。ビタミン C が甲状腺ホルモ 生が起る。PO/AH ニューロンは温度感受性があり、温 ⬻⓶㉁㐃ྜ㔝ࠊ⬻㎶⦕⣔ どᗋୗ㒊 32$+㡿ᇦ ᗘ่⃭ ෆศἪ⣔ ⮬ᚊ⚄⤒⣔ యᛶ⚄⤒⣔ ୗᆶయ๓ⴥ 㦵᱁➽ ⭈㧊㉁ ờ⭢ ᚠ⎔⣔ ௦ㅰ⣔ 㠀ࡩࡿ࠼ ⇕⏘⏕ Ⓨᛶ ⇕ᨺᩓ ⇕⛣ື ⇕ᨺᩓ 㠀ࡩࡿ࠼ ⇕⏘⏕ ᮎᲈෆศἪ⭢ 㠀ࡩࡿ࠼ ⇕⏘⏕ 図5.体温調節に関与する調節系の分類 −21− ࡩࡿ࠼ ⇕⏘⏕ 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 度上昇に反応して放電頻度を増す温ニューロンと温度低 明らかにされていない。生姜のジンゲロンの体温上昇作 下に反応して放電頻度を増す冷ニューロンが存在してい 用の研究では、食事誘発性体熱産生を増大させることが る。PO/AH の温度感受性ニューロンに末梢温度受容体 報告されているが、詳細な自律性体温調節への作用は明 からの情報が入力し、他の視床下部の部位や大脳辺縁系 らかにされていない。また、生姜のジンゲロン、唐辛子 および大脳皮質連合野との情報交換を行い、それらが統 のカプサイシン、胡麻のペパリンは、副腎髄質からのア 合されて、内分泌系、自律神経系ならびに体性神経系を ドレナリンの分泌を亢進することにより交感神経活動が 介して自律性体温調節ならびに行動性体温調整を行うこ 活性化されることにより体温が上昇することが報告され とで体温が一定に保たれている(図5)。 ている91。また、唐辛子のカプサイシンの皮膚温熱刺激 温度刺激により熱の出納に関与する体温調節反応のう 作用は、高めの温度閾値をもった一次感覚神経に対して ち、体温上昇に関与する因子としては、交感神経系を亢 作 用 し TRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 進させて血流量を増加させて行う一過性のものとエネル 1)受容体に作用することが知られている。末梢感覚神 ギー消費を増大させて行う代謝性の継続的な体温上昇反 経が温度刺激を活動電位に変換してその情報が中枢へと 応とがある76-81。 伝達されると考えられているが、温度受容に関わる分子 まず、体温を上昇させる食物、植物および漢方薬の として哺乳類では6つの TRP チャネル;TRPV 1(VR 一部を紹介する。中医学において熱性食品は、ニンニ 1)、TRPV 2(VRL- 1) 、TRPV 3、TRPV 4、TRPM ク、ごぼう、カボチャ、春菊、クルミ、人参、蓮根、ネ 8(CMR 1)、TRPA 1(ANKTM 1) が 知 ら れ て お ギ、山芋、ニラ、プルーン、羊肉、鶏肉、牡蠣、海鼠、 り、それぞれに活性化温度閾値が存在する。TRPV 1> 鰻、胡麻、山椒、芥子、ロイヤルゼリーなどが知られ 43 ℃、TRPV 2 >52 ℃、TRPV 3 >32−39 ℃、TRPV ているが6,7、科学的な根拠となるデータは殆ど得られて 4>27−35℃、TRPM 8<25−28℃、TRPA 1<17℃ いない。しかしながら、麻黄(Ephedra )の (-)- エフェ である。TRPV 1、TRPV 4と TRPM 8は、その活性化 ド リ ン82、 生 姜(Zingiber officinale ) の ジ ン ゲ ロ ン83- 温度閾値が一定ではなく変化する。TRPV 1の活性化温 87 86 、唐辛子(Capsicum )のカプサイシン およびブシ末 度閾値は代謝型受容体との機能連関によって30℃近く (Aconitum )のアコニチン系アルカロイド88-90による一 まで低下し,体温が活性化刺激となって痛みを惹起して 過性での体温上昇効果についての報告があるので紹介す いる92,93。一方、からしのアリルイソシアネートやニン る(図6)。 ニクのジアリルジスルフィドには、この様な作用は認め られていない(図6) 。中永94は、ヒトを用いたブシ末 の皮膚温および組織血流量に及す影響について、ブシ末 のアコニチン系アルカロイドが血管が拡張されることに よる血流増加作用と末梢性知覚神経を刺激による温熱作 用を報告している。しかし、ブシには強い強心作用があ り、その影響による血流増加作用や逆に末梢の熱産生に より結果として血流が増加したのかは明らかにされてい ない。この解明には、NO、アドレノメジュリンをはじ めとした様々なケミカルメディエターとの関連性を詳細 に検討する必要がある。 漢方薬としては、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、温経湯、 当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが知られており、これらの 作用は、自律神経系に作用することで末梢循環の改善に 図6.体温調節に関与する植物成分 よるものと考えられているが、詳細なメカニズムは明ら かにされていない95。 山原ら82によるラット及びマウスを用いた麻黄の体温 他方、代謝性の継続的な体温上昇メカニズムは、寒冷 上昇作用の研究では、エンドトキシン発熱に対して麻黄 環境での高タンパク質、高脂肪の摂取で各組織に十分な および麻黄配合漢方方剤には解熱作用が認めらず、逆に エネルギーを補給することにより体温を上昇させてい 発熱作用を有することが明らかにされている。この体温 る。このメカニズムには寒冷ストレスでの甲状腺刺激ホ 上昇作用は正常動物に投与した場合でも観測され、その ルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone: 作用成分が (-)- エフェドリンであることが明らかにされ TRH) か ら 甲 状 腺 刺 激 ホ ル モ ン(thyroid stimulating ているが、発熱に関与している体温調節中枢への作用は hormone:TSH)、 さ ら に 甲 状 腺 ホ ル モ ン で あ る ト リ −22− 体温調節反応とそれに作用する食物について ヨードチロニン(Triiodothyronine:T3)とチロキシン 78,96,97 効果について検討を行った。その結果、コントロール飼 。その結 料摂取とマカ飼料摂取の直腸温および尾部表面温度とも 果、糖−脂肪代謝経路はグルコースの産生を促し、骨 に、マカ摂取後10日目で体温上昇作用が現れ、その作 格筋では glycogenolysis によって glucose-6-phosphate 用はマカ摂取下で継続した。この様に、マカは外殻温で (G6P) が生成され、解答系経路によってエネルギーを ある尾部表面温度のみならず中心温である直腸温にまで 生じ、乳酸が放出され、肝臓でグルコースに変換され、 体温上昇効果が認められたことから、これまで知られて グルコースが血中に放出されることにより血糖が上昇 いた植物の体温上昇効果とは異なり、循環系あるいは代 する。また、脂肪組織では、HSL(Hormone-sensitive 謝系に作用している可能性がある。さらに、体温上昇効 lipase)が働き大量の脂肪酸を血中に放出される。これ 果が継続していることから交感神経系を亢進させて血流 らを骨格筋や心筋が利用することにより、生体恒常性が 量を増加させて行う一過性での体温上昇効果とは異なる 維持されている。 作用機序が推測される。 ところで、植物には砂漠、塩性湿地、鉱山跡地、高地 (Thyroxin:T4)の分泌増大に起因する など過酷な条件下で様々な環境ストレスに適応した植物 将来への展望 が存在する。砂漠でも生育するサボテンが最も有名で 近年、世界的に伝統医療が再評価されており、それに あるが、それ以外にも塩性湿地に生息するシチメンソ 伴って薬用植物の需要も年々増加傾向にある。薬用植物 ウ (Suaeda japonica M. )、マングローブ、アッケシソウ、 は、人類が長年にわたる使用経験によってその効能・効 ハマアカザなどの塩生植物、鉱山跡地でも生息すること 果が認められ評価されたものである。 ができ、重金属をため込んでしまうグンバイナズナ、ヘ マカは伝統的な食文化としてアンデスの山岳地域で農 ビノネゴザ、ハクサンハタザオなどの重金属集積植物な 夫の早朝時寒冷対策に使用されたり、アメリカ西海岸の どがある。さらに、大気が薄く気候の変化が激しい環境 サーファーへの寒冷対策のサプリメントとして人気があ ストレスに順応出来た植物として高地植物がある。マカ る。今回紹介したマカの体温上昇効果は、中心部体温が Lepidium meyenii WALP は、南米ペルーに植生するア 上昇されており、他の植物とは異なる生理活性現象が認 ブラナ科の多年生植物である。マカは、フンニ県ワイレ められた。今後、マカの体温に対する効果は、新たな寒 区/カルアマイ区/ウコ区/オンドレス区/フニン区と 冷対策に有用であると考える。 パスト県ナニカカク区/ピコ区に限られるが、マンタロ 川流域の高地でも栽培されている。これらマカの栽培地 参考文献 域はブナと呼ばれる生態学環境区にあたる標高4000∼ 4450m内にある。同地区は、平均気温4∼7℃、強烈な 1 Chen, F., Li, T., Huang, H. & Holmer, I. A field study 日光の照射が注ぎ、頻繁に凍てつく寒波や強風にも晒さ of cold effects among cold store workers in China. れる過酷な自然環境下にあり、土壌は酸性(pH<5)で Arctic medical research 50 Suppl 6, 99-103 (1991). ある。耐寒性のある多年草で、地上部は地面に這うよう 2 Cooke, R. A. Essential acquired cold urticaria: にして成長する。食用部分である塊茎はカブ似た形で stimulated only by systemic as well as local cooling. 10∼30gほどになる。色は、赤、黄、紫、黒など品種 Occupational medicine (Oxford, England) 46, 157158 (1996). により様々で、現在は殆どが人工栽培されたものであ る。このマカは、毎日の食生活において主食の1つであ 3 Kaminski, M., Bourgine, M., Zins, M., Touranchet, A. り保存食としても利用され、焼いたり蒸したり煮込んだ & Verger, C. Risk factors for Raynaud's phenomenon り、乾燥させた粉末は水や牛乳などと煮ておかゆにした among workers in poultry slaughterhouses り、その他、発酵飲料マカチャーチの原料にもなる。乳 and canning factories. International journal of 幼児にもミルクに混ぜて食べさせることもあり、アンデ epidemiology 26, 371-380 (1997). ス地方の人々にとって日常生活には欠かせない食用植物 4 Pope, D. P., Croft, P. R., Pritchard, C. M., Silman, A. である。 J. & Macfarlane, G. J. Occupational factors related マカの塊根は、伝統的に滋養強壮、活力増強、栄養補 to shoulder pain and disability. Occupational and 給などの補助栄養剤として用いられてきた薬用植物であ environmental medicine 54, 316-321 (1997). る。さらに近年、新たに不妊症、更年期障害改善にも有 5 Wieslander, G., Norback, D. & Edling, C. Local cold 効であることが知られている。さらに、マカは、農夫の exposure of the hands from cryosectioning work 早朝時の寒さ対策としても用いられてたとの報告がある in histopathological and toxicological laboratories: 9-11 signs and symptoms of peripheral neuropathy 。そこで、我々は、ラットを用いてマカの体温上昇 −23− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 and Raynaud's phenomenon. Occupational and Quantitative Method for the Measurement of the Rate environmental medicine 53, 276-280 (1996). of Water Loss from Small Areas Am. J. Physiol 132, 6 Ody, P. メディカルハーブ . (1995). 748-756 (1941). 7 ティエラオナ・ロウ・ドッグ , ス . フ ., レベッカ・ ジョンソン , デビッド・キーファー , アンドルー・ワ 22 村上悳 . 発熱と生体防御 . (1988). 23 児島将康 . 実験医学増刊 29―5―摂食・エネルギー イル . メディカルハーブ事典 . (2014). 調節に関わる生理活性ペプチドの機能 代謝・内分泌 8 Snodgrass, J. J., Leonard, W. R., Tarskaia, L. A., ネットワークと医薬応用 (2011). Alekseev, V. P. & Krivoshapkin, V. G. 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Changes in o f t h e t h e r m a l p r o t e c t i ve a c t i o n o f a t s e f e n . fasting-induced adrenocortical secretion of cold- Eksperimental'naia i klinicheskaia farmakologiia 58, acclimated rats. The Japanese journal of physiology 68-71 (1995). 40, 463-470 (1990). 80 Fregly, M. J., Rowland, N. E. & Cade, J. R. 69 Monier, M. M. & Weiss, R. J. Increased excretion of Relationship between drinking and increase in dehydroascorbic and diketogulonic acids by rats in tail skin temperature of rats treated with L-5- the cold. Proceedings of the Society for Experimental hydroxytryptophan. Pharmacology 52, 69-77 (1996). Biology and Medicine. Society for Experimental 81 Wijers, S. L., Saris, W. H. & van Marken Lichtenbelt, Biology and Medicine (New York, N.Y.) 80, 446-448 W. D. Individual thermogenic responses to mild cold (1952). and overfeeding are closely related. The Journal of 70 LeBlanc, J. & Cote, J. 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The effects of Fu Zi on changes in −27− endocrinology and metabolism 70, 965-974 (1990). 栄養疫学部門 研究ノート 腸内細菌叢クラスターと中医体質に関するパイロット調査 徳井教孝1 木村秀樹2 嶋川成浩2 三成由美3 1.産業医科大学健康・予防食科学研究室 2.西部ガス株式会社総合研究研修所 3.中村学園大学栄養科学部 (2014年8月11日 受理) キーワード に、腸内細菌叢データからタイプを分類しそのタイプと 要 旨 体質の関連を検討するパイロット研究を行った。さらに それぞれの腸内細菌叢タイプに対する薬膳の機能性につ 漢方治療と腸内細菌叢には密接な関連があり、詳細な いても述べる。 腸内細菌叢の科学的分析が可能であれば、腸内細菌叢分 析をもとに証の判定が可能となることが期待される。そ 方 法 こで、今回地域住民を対象にした健康調査のデータを用 いて、腸内細菌叢をクラスター分析して得られた6つ タイプと8つの中医体質(気虚、脾虚、陽虚、血虚、陰 1.対象者 上毛町住民全男女30∼79歳の2259名のうち腸内細 虚、気滞、湿熱、血瘀)の関連を検討するパイロット調 菌叢分析を希望した395名である。 査を行った。タイプ1では陰虚、湿熱、タイプ2では気 虚、脾虚、タイプ4は気虚、脾虚、血虚、気滞、タイプ 2.調査方法 5は陽虚、血虚、血瘀、タイプ6湿熱との関連性が推測 調査は対象者に自己記入式で行ってもらい、調査票 された。タイプ4は特徴的な体質がみられず中医学的に を郵送し配布、回収した。 は平の体質と考えられた。今回用いた腸内細菌叢分析法 3. 調査内容 と体質評価法は妥当性の問題が残っており、今後さらに 1)生活習慣 精度を上げた分析法、調査法を実施して腸内細菌叢と体 対象者の生活習慣に関する調査内容は、運動の頻 質の関連を検討していく必要がある。 度、喫煙状況、飲酒の頻度、ストレスを感じる頻 度、朝食の摂取頻度、睡眠時間の6項目である。 2)排便状況 目 的 対象者の排便状況に関する調査内容は、一週間当 たりの排便回数、排便時のりきみ、排便時の肛門の いくつかの漢方薬の薬効発現には腸内細菌叢による代 痛み、排便のだいたいの量、普段の便の色、普段の 謝が重要な役割を果していることが科学的に証明されて 便の硬さ、普段の便の形状、おならの頻度、おなら いる(1)。そのため、腸内細菌叢の個人差が適正な処 のにおい、便が便器の底に沈むか、便秘薬服用の有 方の決定に大きな影響を及ぼすことが想定される。中医 無、便秘薬服用者の服用頻度の12項目である。 学では個人への処方を行うときは、その人の証を鑑別し 3)体質調査(付表1) て処方する弁証施治が行われている。しかし、弁証は客 対象者の体質調査に関する調査内容は、疲れやす 観的な診断という面ではかなりきびしい内容となってお い、身体がだるい、風邪を引きやすい、汗が出やす り、証の科学的診断は重要な課題となっている。腸内細 い、食欲がない、食後に眠たくなる、下痢しやすい 菌叢が漢方治療と密接な関連があり、腸内細菌叢の科学 的分析が可能であれば、腸内細菌叢の分析をもとに、漢 など30項目である。 4)食習慣 方の選択と治療が可能となることが期待される。そこ 対象者の食習慣に関する調査内容は、ヨーグル で、今回、地域住民を対象にした健康調査データをもと トの摂取頻度、味噌汁の摂取頻度、ご飯の摂取頻 −29− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 度、朝食のタイプ、食生活全般についての5項目で それぞれタイプ1 が21.5、20.4、タイプ2 が12.8、 ある。 14.6、 タ イ プ 3 が15.1、26.3、 タ イ プ 4 が22.7、 5)中医体質スコア 18.9、タイプ5が25.0、17.5、タイプ6が2.9、2.2 付表1に示した体質調査票を用いて、個々人の体 であった。タイプ4と5は男性に多く、タイプ3は女 質(気虚、脾虚、陽虚、血虚、陰虚、気滞、湿熱、 性に多い傾向がみられた。 血瘀)のスコアを算出した。 6)腸内細菌叢分析(2、3) 腸 内 細 菌 叢 の 分 析 は、T-RFLP(Nagashima 法 ) で解析した。T-RFLP を簡単に説明すると末端を蛍 光標識したプライマーを用いて PCR をおこない、 そ の 増 幅 産 物 を 制 限 酵 素 処 理 後、DNA シ ー ケ ン サーによりフラグメント解析し、蛍光標識された末 端 DNA 断片を検出する。そして、各 DNA 断片の 大きさ、蛍光強度により細菌構成を比較する方法で ある。16S rDNA を標的とした解析が多く、この塩 基配列は細菌種により異なり、制限酵素による切断 部位も細菌種によって異なる為、得られる DNA 断 片が細菌種固有であるということに基づいている。 また、16S rDNA の情報を利用しやすく、DNA 断片 がどの細菌種に由来するのかを推定できる。データ の解釈には配列データの充実が必要となり、ヒト腸 内細菌叢の T-RFLP 解析のため、最優勢に存在する 342菌種の専用データベースが構築されている。操 作は比較的簡単ではあるが、異なる細菌種でも同じ 長さの DNA 断片を生じることもあり、系統的に近 縁な細菌種間では同じ長さの DNA 断片を生じるこ とが多いので、使用する制限酵素の種類を増やし、 図1.腸内細菌叢のクラスター分析 分離能を上げることも必要である。また、定量性に 欠け、PCR のバイアスについても考慮する必要が ある。T-RLFP では105cfu/g 以上の細菌種が検出可 2.腸内細菌叢タイプとビフィズス菌、乳酸菌の 高割合者の比率 腸内細菌叢の分析からのビフィズス菌、乳酸菌の構 能であるとされている。 成割合が得られた。これをもとにビフィズス菌、乳酸 4.データ解析 菌の構成割合の上位30% を高割合者と定義して、タ 腸内細菌叢のデータをクラスター分析して、6つの イプ別の高割合者を検討し、図2に示した。ビフィズ タイプに分類した。この6つの腸内細菌叢タイプが各 ス菌の高割合者の割合はタイプ1が18.5%、タイプ 体質とどのような分布になっているのかを検討した。 2が14.3%、タイプ3が19.4%、タイプ4が67.7%、 タイプ5が26.9%、タイプ6が12.5%となった。タ イプ4がビフィズス菌の割合が高いタイプであるこ 結果及び考察 とが判明した。次に乳酸菌についてみると、タイプ 1が26.2%、タイプ2が9.5%、タイプ3が54.8%、 1.腸内細菌叢のクラスター分析による6つの腸 内細菌叢タイプ分類 タイプ4が23.1%、タイプ5が23.9%、タイプ6が 図1に上毛町住民の腸内細菌叢のクラスター分析の あった。タイプ6は少人数なため高いと結論的なこと 結果を示している。それぞれの人数はタイプ1が65 はいえない。以上から、ビフィズス菌と乳酸菌の分布 名、タイプ2が42名、タイプ3が62名、タイプ4が をタイプ別に総括すると、タイプ1はビフィズス菌が 65名、タイプ5が67名、タイプ6が8名となり、タ やや低く、乳酸菌は平均のタイプ、タイプ2はビフィ イプ6が少数となった。また男女別にみると(%) 、 ズス菌、乳酸菌とも低いタイプ、タイプ3はビフィズ −30− 75.0%で、タイプ3が乳酸菌の割合が高いタイプで 腸内細菌叢クラスターと中医体質に関するパイロット調査 ス菌が低く , 乳酸菌が高いタイプ、タイプ4はビフィ フィズス菌は平均、乳酸菌は平均、タイプ6はビフィ ズス菌が低く、乳酸菌が高いタイプといえる。これら の結果を表1、図2にまとめた。 表1.タイプ別の腸内細菌叢の割合 ࢱࣉ 䝍䜲䝥ϭ ズス菌が高く、乳酸菌は平均のタイプ、タイプ5はビ ࣅࣇࢬࢫ⳦ ங㓟⳦ ప ୰ ప ప ప 㧗 㧗 ୰ ୰ ୰ ప 㧗 Ẽ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ ᅗ䠏䠊䝍䜲䝥䠍䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ 䝍䜲䝥䠎 䠂 㧗䝡䝣䜱䝈䝇䈈 㧗ங㓟⳦ྜ Ẽ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ ᅗ䠐䠊䝍䜲䝥䠎䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ 䝍䜲䝥䠏 䝍䜲䝥 䝍䜲䝥䠎 䝍䜲䝥䠏 䝍䜲䝥䠐 䝍䜲䝥䠑 䝍䜲䝥䠒 図2.腸内細菌叢タイプとビフィズス菌、乳酸菌の高割合者の比率 3.腸内細菌叢タイプ別の体質診断判定 次に8つの体質である気虚、脾虚、陽虚、血虚、陰 虚、気滞、湿熱、血瘀について、各体質スコア得点 Ẽ の上位30パーセンタイルの者をそれぞれの体質傾向 ⭁ 㝧 があると判定した。体質傾向の割合は気虚が28.0%、 脾虚が32.1%、陽虚が32.1%、血虚が37.4%、陰虚 が33.2 %、 気 滞 が19.4 %、 湿 熱 が35.4 %、 血 瘀 が 20.4%を示した。そこでこの割合を基準に、各腸内 細菌叢タイプと8つの体質について体質傾向がある割 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ 䝍䜲䝥䠐 合を検討した。タイプ1では、陰虚、湿熱の割合が高 値であった。陰虚、湿熱が高いことは、熱を冷ます津 液が少ない体質傾向にあることがうかがえる(図3)。 ⾑ ᅗ䠑䠊䝍䜲䝥䠏䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ タイプ2では、気虚、脾虚が高い割合を示した。虚の Ẽ 体質が高いことは、根本的には気虚が存在しその影響 で脾虚がみられるのではないかと考えられる(図4)。 く、これらの体質的特徴があるとは考えにくいもので あった。つまり、体質的には平に近い体質ではないか と思われた(図5)。タイプ4は、気虚、脾虚、血虚、 気滞の割合が高かった(図6) 。脾虚のため運化機能 が失調し、気血虚を招いていると考えられる。また、 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ Ẽ −31− 㝧 䝍䜲䝥䠑 タイプ3は、8つの体質傾向の割合が基準値より低 気虚による気の循環が障害され気滞が生じやすい病態 ⭁ ᅗ䠒 䝍䜲䝥䠐䛾Ẽ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ ᅗ䠒䠊䝍䜲䝥䠐䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ᅗ䠓䠊䝍䜲䝥䠑䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ ⾑⑻ 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 4.腸内細菌叢タイプ別と生活習慣 䝍䜲䝥䠒 腸内細菌叢タイプ別と生活習慣の関連を表3に示し た。タイプ1はヨーグルト摂取不足と関連を示し、ビ フィズス菌の割合が低いことから整合性がみられた。 タイプ2は食習慣で野菜不足、味噌汁摂取不足、朝食 抜きなどと関連がみられることから、食習慣に問題が あるタイプと考えられた。腸内細菌叢でもビフィズス 菌、乳酸菌の両方が低いことからも食習慣の問題が推 Ẽ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ ⾑⑻ 測された。タイプ4は喫煙、運動不足、ストレス、肉 ᅗ䠔䠊䝍䜲䝥䠒䛾Ẽ䚸⭁䚸㝧䚸⾑䚸㝜䚸Ẽ䚸‵⇕䚸⾑⑻ 好き、朝食抜き、味噌汁不足と健康的なライススタイ ルではないことがうかがえた。しかし、腸内細菌叢で になっているのではないかと思われる。タイプ5は、 はビフィズス菌が高いことから、ヨーグルト摂取も不 陽虚、血虚、血瘀が高い割合を示した。気虚が高くな 足はないためプロバイオティクスなどの摂取があるタ いにもかかわらず陽虚、血虚が高いことをどのように イプの可能性がある。しかし、これまでの生活習慣と 考えるのか検討が必要である(図7) 。タイプ6は少 健康状態の関連の研究から考えると、タイプ4の健康 人数のため割合の値は不安定であるが、湿熱が高い値 状態は必ずしもいいとはいえないため、腸内細菌叢の を示した(図8)。 タイプを考える上で、このような場合どのように考え 以上、タイプと体質、それとビフィズス菌、乳酸菌 ればいいのか、今後の重要な課題である。タイプ5は の関連をまとめて表2に示した。特徴的な体質が見ら 運動不足、ストレスがあることから、陽虚、血虚など れにくかったタイプ3には○印が付いていないが、タ と関連がみられた可能性がある。タイプ6は少人数の イプ4はビフィズス菌が高いタイプであるが体質的に ため生活習慣との関連は検討が難しかった。 は問題のある体質の可能性があり、有用菌といわれる ビフィズス菌と体質との関連をどのように考えるの か、今後検討していく必要がある。 表2.腸内細菌叢タイプと体質(〇は体質傾向有り) 䝍䜲䝥 䝡䝣䜱䝈䝇⳦ ங㓟⳦ 㻝 ప ୰ 㻞 ప ప 㻟 ప 㧗 㻠 㧗 ୰ 㻡 ୰ ప 㻢 ప 㧗䛔 Ẽ ⭁ 㝧 ⾑ 㝜 Ẽ ‵⇕ 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 ⾑⑻ 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 表3.腸内細菌叢タイプと生活習慣(〇は傾向有り) 䝍䜲䝥 䝡䝣䜱䝈䝇⳦ ங㓟⳦ ႚ↮ 㻝 ప ୰ 㻞 ప ప 㻟 ప 㧗 㻠 㧗 ୰ 㻡 ୰ ప 㻢 ప 㧗䛔 㐠ື㊊ ẖ᪥㣧 ▷╧╀ 䝇䝖䝺 㔝⳯ ᮅ㣗ᢤ ჯỒ 䝶䞊䜾䝹䝖 ⫗ዲ䛝 㓇 㛫 䝇 ㊊ 䛝 ㊊ ㊊ 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 䕿 −32− 䕿 腸内細菌叢クラスターと中医体質に関するパイロット調査 5.腸内細菌叢タイプと薬膳食材(4) 付表.体質評価の調査票 ≧ 各体質にはその改善を行うための機能を有する薬膳 食材がある。図3に示したように、各体質に対する機 ࡼࡃ࠶ ࠎ࠶ࡿ ࠶ࡲࡾ࡞ ࠸ ࢇ࡞࠸ ⑂ࢀࡸࡍ࠸ ㌟యࡀࡔࡿ࠸ ㌟యࡀࡔࡿ࠸ 㢼㑧ࢆࡦࡁࡸࡍ࠸ ờࡀฟࡸࡍ࠸ 㣗ḧࡀ࡞࠸ 㣗ᚋ╀ࡓࡃ࡞ࡿ ୗ⑩ࡋࡸࡍ࠸ る。散寒は体を温める作用、解表は発汗作用、補血は ౽ᚋࡶ౽ࡀṧࡿឤࡌࡀ࠶ ࡿ 㣗ᚋ࠾⭡ࡀᙇࡾࡸࡍ࠸ 血を補う作用、補陽は陽を補う作用、止咳 ( しがい ) ⭜ࡸ⭸ࡀࡔࡿࡃឤࡌࡿ ኪ㛫ࢺࣞ⾜ࡃ ᡭ㊊ࡸ㌟యࡀ෭ࡓ࠸ឤࡌ ࡿ ࡵࡲ࠸ࡸ⪥㬆ࡾࡀ࠶ࡿ タイプ1は清熱、補陰、袪風除湿である。タイプ2は ➽⫗ࡀࡘࡾࡸࡍ࠸ 㧥ࡢẟࡀᢤࡅࡸࡍ࠸ 㧥 ẟࡀᢤࡅࡸࡍ 補気と消食、タイプ4は補気と消食と補血、タイプ5 ┠ࡀࡍࢇࡔࡾ⑂ࢀࡿ は補陽と補血、タイプ6は清熱、袪風除湿となる。タ 㢦Ⰽࡀ࠶ࡲࡾࡼࡃ࡞࠸ ⓶ࡀ⇱ࡋࡸࡍ࠸ ᡭࡢࡦࡽࡸ㊊ࡢࡀ⇕ࡗࡱ ࠸ ⬚ࡸ⭡ࡀᙇࡗࡓឤࡌࡀࡍࡿ ⬥⭡ࡀࡘ࠼ࡓឤࡌࡀࡍࡿ ⬥⭡ࡀࡘ࠼ࡓឤࡌࡀࡍࡿ ႃࡀࡘ࠼ࡓឤࡌࡀࡍࡿ ᒀࡢⰍࡀ⃰࠸ ⓶ࡺࡳࢆឤࡌࡿ ‵⑈ࡀ࡛ࡁࡿ が、定量性に欠けており必ずしも対象者の腸内細菌叢 ཱྀࡀࡀ࠸ を完全に反映しているとは限らない。構成割合におい ⓶ୗฟ⾑ࡍࡿ ┠ࡢࡲࢃࡾࡃࡲࡀ࡛ࡁࡿ ┠ࡢࡲࢃࡾࡃࡲࡀ࡛ࡁࡿ てもその割合の多様性も検討していくことが必要であ ⫙ࡀⲨࢀࡸࡍ࠸ 㢦ࡸ㌟యࡢ࡚ࡾࢆឤࡌࡿ 能を示した。理気は体内の循環を促進する作用、清熱 は体を冷やす作用、活血化瘀は血行促進作用、化痰は 痰を取り除く作用、利水滲湿は利尿作用がある。補気 は気を補う作用、消食は消化機能を高める作用、補陰 は陰を補う作用、袪風除湿は風邪を除去する作用があ 平喘 ( へいぜん ) は咳や喘息を軽減したり止める作用 がある。各タイプの体質に適した機能を検討すると、 イプ3は体質的に特徴が存在しなかったため、今回は 適合した機能性食材は述べなかった。 6.今後の展開 腸内細菌叢の分析は腸内細菌の構成割合を検討した る。また、体質評価も今回の質問票ではまだ妥当性に 問題があり、中医師の診断を活用して妥当性の高い体 質調査票を導入して行く必要がある。そのため、今後 参考文献 は精度の高い腸内細菌叢分析と体質評価を行い、その 関連を検討することが重要である。 1.服部征雄、漢方薬の薬効には腸内細菌が関与する、 腸内細菌学雑誌 26 : 159-169、2012 2.藤澤倫彦、大橋雄二、腸内細菌検索法の変遷と現 状、腸内細菌学雑誌 25 : 165‒179、2011 3.坂本光央、腸内フローラの構造解析: T-RFLP 法を 利用した腸内細菌叢の解析.腸内細菌学雑誌18:155‒ 159、2004 4.徳井教孝、三成由美、張再良、郭忻、薬膳と中医 学、建帛社、2003 図9.8つの体質に対応する薬膳食材の機能 −33− 開発・教育部門 原著論文 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 楊 萍1)・嶋川 成浩2)・木村 秀樹2)・三成 由美1、3)・徳井 教孝4、5) 1)中村学園大学 栄養科学部 2)西部ガス株式会社総合研究研修所 3)中村学園大学 薬膳科学研究所 開発・教育部門 4)中村学園大学 薬膳科学研究所 栄養疫学部門 5)産業医科大学 産業生態科学研究所 健康予防食科学研究室 (2014年8月10日 受理) 61.7%を占めていた。五性では、温・熱性が38.4%、 要 旨 寒・涼性が25.8%、平性が35.8%を占めていた。これ らの薬膳食材から、チキンスープに添加する食材として 【目的】本研究は、一般家庭で想定される調理条件下で、 生姜、白葱、昆布を選択した。 ガス加熱と電気の電磁誘導加熱(IH 加熱)を用い、未 薬膳チキンスープの pH、塩分濃度、におい濃度は、 利用食品である鶏がらのチキンスープに、中国の中医学 2試料間で有意な差は認められなかった。総アミノ酸含 基礎理論より消化吸収に関連のある薬膳食材を添加し、 有量は100ml 中、ガス加熱と IH 加熱において161.37 健康的で嗜好的にもおいしい薬膳チキンスープの調理方 ±15.45mg、157.94±15.64mg であったが、有意な差 法を確立することを目的に行ったので報告する。 は認められなかった。核酸関連物質含有量についても、 【方法】1.中医学基礎理論に基づいて、消化吸収に関 連がある帰経で脾・胃の薬膳食材を整理した。2.加 2試料間に有意な差は認められなかった。 薬膳チキンスープの官能評価について、旨味の項目 熱方法はガスコンロ C3WD7PJAS7ST2(ハーマン)、電 が、ガス加熱1.07が IH 加熱0.53に比べて有意に高い数 磁調理器 KZ-75VS(パナソニック)で、ステンレス製 値を示した。 パスタポットを用い、火力は加熱対象物に与える熱量 【考察】 を同一に調整した。火力調整はガス加熱、IH 加熱で沸 ガス加熱および IH 加熱を用いて同一熱量で90分間加 騰までは4.20kW、1.85kW、沸騰持続するは0.95kW、 熱した場合、薬膳チキンスープの各呈味成分に有意な差 0.60kW とした。薬膳チキンスープの調製に関しては、 は認められなかった。官能評価において、旨味の項目の 試料は鶏がら1kg、水2L、塩、薬膳食材として、昆布、 みガス加熱が IH 加熱に比べ有意に好まれた。 このこと 白葱、生姜およびかつお節を使用し、加熱時間は90 は、味の相乗効果によるものだと考えられる。本研究に 分とした。3.分析方法:pH(pH 計 SG2スタンダー おいて、未利用食品の鶏がらを材料に、薬膳食材である ド)、塩分濃度(塩分計 SAL-1)、におい濃度(ポータブ 生姜10%、白葱10%、昆布2%およびかつお節2%を ルニオイセンサ XP-329Ⅲ) 、透過率(分光光度計 UV- 添加することで、日常的においしいチキンスープができ 2200A)の測定、遊離アミノ酸の測定は、高速液体クロ ることが示唆された。 マトグラフィー(HPLC と略記)と全自動アミノ酸分析 Ⅰ.緒言 機 JLC-500/V を用いた。核酸関連物質の測定は HPLC 近年、日本の高齢化が急速に進み、65歳以上人口の を用いた。4.官能評価:20歳代女性15名をパネルと 割合は2025年に総人口の4分の1に達すると見積もら し、薬膳チキンスープを5点評点法で評価した。5.解 れている1)。高齢者は嚥下困難、消化液の分泌減少、腸 析方法:試料間については、 の運動機能低下など原因により、たんぱく質・エネル の 検定を用い、 嗜好調査は、ノンパラメトリックのウィルコクソンの符 ギー低栄養状態(PEM)に陥ると報告されている2)。 号順位和検定を用いた。有意水準は p<0.05とした。 特に、高齢者に対応した調理品の一つである鶏がらで 【結果】中医学の基礎理論では、脾・胃は「後天の本」 調理されたチキンスープは、エキス分やゼラチン質に富 と 言 わ れ、 消 化 吸 収 と 関 わ り が 深 い。 脾・ 胃 の 食 材 み、呈味成分であるイノシン酸(5'-IMP)やアミノ酸、 は、酸・苦・甘・辛・咸の五味のうち、甘味が全体の 結合組織を多く含んでいる3)。馬渡らによると、このア −35− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 ミノ酸は骨格筋タンパク質合成の促進作用、肝再生促進 作用など生理機能があると報告されている 4)、5) 。 加熱方法はステンレス製パスタポットの中に鶏がら、 塩及び水を入れ、ガスコンロと電磁調理器を用いて、加 一方、中国には四千年の長い歴史の中で伝承されてき 熱対象物に与える熱量を同一に調整し、30分、60分、 た中医学の基礎理論があり、古代から植物、動物そして 90分、120分加熱したチキンスープが試料1とした。 鉱物に至るまで、膨大な人を対象に摂取され、実践の繰 火力は、沸騰までガス加熱4.20kW、IH 加熱1.85kW、 6) り返しで淘汰伝承されてきた 。その経験により、空腹 沸騰後はガス加熱0.95kW、IH 加熱0.60kW とした。 を満たすときには「食」 、病を治すときには「薬」など ⑶ 実験2:薬膳チキンスープの調製 7) や中国最古の薬物書の『神 薬膳チキンスープは出来上がり1L に対して、鶏が 農本草経』8) には、食べ物と薬物は同じ源である「薬 ら1㎏、水2L、塩3g(0.3%) 、薬膳食材として生姜 が選別され、『黄帝内経』 6) 食一如」、「薬食同源」という考えが記載されている 。 100g(10 %) 、 白 葱100g(10 %) 、 昆 布20g( 2 %)、 本研究は、高齢者の健康に寄与するスープを作ること かつお節20g(2%)を使用した。 を目的に、鶏がらのチキンスープに、中国の中医学基礎 鶏がらの下処理は実験1と同様。添加した薬膳食材の 理論に基づいた消化吸収に関連のある薬膳食材を選別 切り方は、生姜は皮つき2cm の厚さ、葱は5cm の長 し、鶏がらのチキンスープに添加し、さらに、家庭で実 さ、昆布は7cm の長さに切断した。 用化されるように、ガス加熱と IH 加熱を用いて、加熱 加熱方法はステンレス製パスタポットの中に鶏がら、 後、呈味成分と嗜好調査を比較検討した。 塩及び水を入れ、ガスコンロと電磁調理器を用いて、火 力は実験1と同様。加熱時間は実験1の結果より90分 Ⅱ.研究方法 とした。 1.中国の中医学基礎理論に基づいた薬膳食材の整理 薬膳食材の加熱は、昆布は水から入れ、沸騰直前の 中医学を基本とした薬膳食材を整理するために、中医 約7分加熱後に取り出した。生姜と葱は60分加熱後に 学に関する文献6)、7)、8)、9)、10)、11)を使用した。五臓六 入れ、消火まで30分加熱した。かつお節は90分加熱後、 腑について、整理した。 消火して入れ、下に沈んで約5分後、布で漉して試料2 2.実験方法 とした。これらの昆布やかつお節は日本の和風だしの取 ⑴ 使用機器、器具及び食材 り方に準じた。 加 熱 調 理 機 器 は、 ガ ス コ ン ロ C3WD7PJAS7ST2 3.分析方法 (ハーマン)と電磁調理器 KZ-75VS(パナソニック) ⑴ pH および塩分濃度 を使用した。温度の測定は、熱電対温度計T型および ガ ス 加 熱 と IH 加 熱 で、 チ キ ン ス ー プ30分、60分、 データーロガー GL220(グラフテック)を用いた。 90分、120分と薬膳チキンスープ90分の pH および塩 調理器具は、ステンレス製パスタポット YH-5747 分 濃 度 は、pH 計 SG2ス タ ン ダ ー ド( メ ト ラ ー ・ ト レ (ヨシカワ)を用いた。鍋の側面は材質ステンレス鋼、 ド)、塩分計 SAL-1(島津製作所)で測定した。 軟鉄、ステンレス鋼の三層構造で、厚さは0.8mm、底 ⑵ におい濃度および透過率 面は材質アルミニウム、ステンレス鋼の五層構造で、厚 ガス加熱と IH 加熱でチキンスープ30分、60分、90 さは3.5mm、鍋の内径は20㎝、高さは20㎝、満水容量 分、120分と薬膳チキンスープ90分のにおい濃度は、 は6.1L である。 ポータブルニオイセンサ XP-329Ⅲ(新コスモス電機) 試料の鶏がらは、株式会社ヨコオ産のみつせ鶏であ を用いて測定した。透過率は分光光度計 UV-2200A(島 り、80日間成育の鶏を屠殺後7時間以内で解体し、− 津製作所)を用いて、検出波長は500nm で測定した。 35℃で冷凍保存したものを用いた。1羽の鶏がらは ⑶ 遊離アミノ酸 250∼300g であった。塩は100%国産原料を使用した チキンスープと薬膳チキンスープの遊離アミノ酸 「CGC 日本の塩」株式会社シージーシージャパン製で の 測 定 は、 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー(HPLC と ある。生姜は長崎産、白葱は福岡産、昆布は北海道産、 略記) (日本ウォーターズ)と全自動アミノ酸分析機 かつお節は福岡産である。 JLC-500/V( 日 本 電 子 ) を 用 い た。HPLC 法 の カ ラ ム ⑵ 実験1:チキンスープの調製 は AsahipackGS-320HQ( 昭 和 電 工 ) を 用 い、 カ ラ ム チキンスープは出来上がり1L に対して、鶏がら1 の 大 き さ は、 内 径7.5mm、 長 さ300mm、 粒 径30μm ㎏、水2L、塩3g(0.3%) 、を使用した。 とした。データ処理ソフトは、illennium2010J(日本 鶏がらの下処理は、脂肪や血液などの汚れを除き、縦 ウォーターズ)を用いた。試料溶液の調製は、プレカラ に2等分(約150g)に切断後、30分間流水でさらし、 ムの Pico-Tag アミノ酸分析法に従って調製した。 熱湯1L をかけた。 −36− 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 ⑷ 核酸関連物質 Ⅲ.結果 チキンスープと薬膳チキンスープの核酸関連物質 1.中国の中医学基礎理論に基づいた薬膳食材の整理 は、HPLC(日本ウォーターズ)用いた。試料溶液の ⑴ 中医学における五臓と六腑 調製は薬膳チキンスープ10g に10ml の5%過塩素酸 中医学は、独特な理論体系を持っている中国の伝統医 (PCA)を加え、よく撹拌し、氷中で30分静置した後、 学であり、四千年の長い歴史がある。また、その時代の 遠心分離(3000rpm、5分)を行い、上清を回収後、 哲学思想の影響を受けながら長期にわたる実践経験を踏 10M-KOH もしくは1M-KOH で中和した。生ずる沈殿 まえ、今日においても予防医学、臨床医学に大きな役割 を少量の milliQ で洗浄し、洗液を上清と合わせ milliQ を果たしている6)。 で25ml に定量し、試料溶液とした。試料溶液はメンブ 中医学理論体系の中で、五臓六腑と関わりのある臓象 ラ ン フ ィ ル タ ー(0.45μm) で ろ 過 し、 ろ 液10μl を 学説は重要な学説である。中医学における臓腑とは内臓 HPLC で分析した。条件はカラム温度:30℃、溶離液: の総称であり、臓は五臓のことで、肝・心・脾・肺・腎 200mM リン酸緩衝液(pH3.0) 、流速0.6ml/min、検出 がある。五臓は主に精気を貯蔵し、気・血・精・津液な 波長260nm で行った。標準物質の IMP(イノシン酸)、 どの精微物質を生み出し、貯える。次に、腑は六腑のこ GMP(グアニル酸)はいずれも0.01%溶液を調製した。 とで、胆・胃・小腸・大腸・膀胱と三焦がある。六腑は 試薬はいずれも和光純薬工業)製であった。 管状の内臓で、水穀と水液の通り道であり、飲食物は六 4.官能評価 腑を通過する過程の胃で消化され、糟粕は下へ通降して ⑴ チキンスープの官能評価 大便として排出される6)。 ガス加熱及び IH 加熱の60分、90分調製したチキン 中医学の五臓の中で、脾は運化作用があり、飲食物の スープ4試料について嗜好型官能評価を行った。パネ 消化・吸収および水液の代謝など全身の栄養状態と関わ ルは20歳代の中村学園大学栄養科学部の学生と助手の りがあり、また、筋骨の壮健や手足の活動にも関わりが 15名とした。試料のチキンスープは70℃で提供し、各 深い。飲食物は胃の中に入って消化され、さらに脾で消 50ml とした。4試料について、香り、透明度、甘味、 化・吸収され、栄養物質に富んだ「水穀の精微」として 酸味、苦味、うま味および総合評価の7項目について、 変化し、全身に供給される6)。 悪い=−2点、やや悪い=−1点、普通=0点、やや 中医学の六腑の中で、胃は主に飲食物を受納・腐熟さ 良い=1点、良い=2点の5段階で評価した12)。なお、 せ、消化された水穀を小腸に送るといわれている6)。 各試料について順位を記入させた。そして、自由に意見 ⑵ 薬膳と薬膳食材 を記述させた。 薬膳とは、 「中医学理論の指導のもとで、中薬(中医 ⑵ 薬膳チキンスープの官能評価 学で用いる薬物の総称)と食物を配合し、伝統的飲食調 ガス加熱及び IH 加熱の薬膳チキンスープ2試料につ 理技術と現代的加工方法を用い、色・香・味・形の全て いて嗜好型官能評価を行った。パネルは20歳代の中村 によく、保健と治療に効果のある食療食品、料理の総 学園大学栄養科学部の学生と助手の15名とした。試料 称」と記載されている。中医学では、人体は自然界の変 の薬膳チキンスープは70℃で提供し、各50ml とした。 化の影響を受けている有機的な統一体であり、体の陰陽 2試料について、香り、透明度、甘味、酸味、苦味、う のバランスが崩れると病気になると考えられてきた。薬 ま味および総合評価の7項目について、悪い=−2点、 膳は、これらのバランスを調えるために、毎日の食生活 やや悪い=−1点、普通=0点、やや良い=1点、良い を通じて行う飲食療法であり、「食療」または「食治」 =2点の5段階で評価した 12) 。なお、各試料について とも言われている6)。 自由に意見を記述させた。 薬膳に使われる食材には、薬物と同様に一定の性味が 5.統計処理 ある。「性」は、薬膳食材の性質を示し、体に取り入れ 試料間については、Excel 統計ソフトを用い、 ることで現れる反応や症状によって、温、熱、涼、寒、 の 検定で統計処理を行った。官能評価について、Excel 平の五性に分類されている。「味」は、味覚のみでなく、 統計ソフトを用い、順位法の Kramer 検定、Freedman 臨床の症状反応によって、酸味、苦味、甘味、辛味、咸 検定と二項検定およびノンパラメトリックのウィルコク 味の五味に分類されている。酸味は収斂、固渋と生津の ソンの符号順位和検定12) で行った。危険率5%未満で 作用が、苦味は泄や燥湿作用が、甘味は補益、和中、緩 有意差ありと判定した。 和作用、滋養、強壮作用が、辛味は発散、行気、活血作 用が、咸味は軟堅、散結、瀉下などの作用がある6)。 中医学では、人体の幹線を直行する脈を経絡と呼び、 経脈と絡脈の二つがある。食材が体内に取り入れた後、 −37− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 これらの経絡に入って臓腑の各部分へ運ばれる。食材が る薬膳食材は高良姜、火麻仁など63品、胃に寄与する 6) 人体のどこに薬効があるのかを示すのが帰経である 。 薬膳食材は黄瓜など83品あった。 ⑶ 消化吸収に寄与する薬膳食材の整理 脾 ・ 胃に寄与する薬膳食材の五性を整理し、表2に示 中医学理論に基づき、五臓の肝・心・脾・肺・腎より した。脾 ・ 胃に寄与する薬膳食材の中で、温性が51品、 消化吸収と関わりの深い脾と、その表裏関係のある胃に 熱性が7品、涼性が21品、寒性が12品、平性が54品で 寄与する薬膳食材を整理し、表1に示した。脾に寄与す あった。 表1.中医学における帰経で脾、胃の食材の整理 Ᏹኺ Ꮞኺ ᭗ᑣۃίἅỸἼἹỸỿἹỸὸ ້ʶίἪὅἩỉᆔὸ ᓈⳬ܇ίἒỶἅὅỉᆔὸ ᨑႝᵆἱỽὅỉႝửẲẺཋὸ ⸷ᬐίỽὁἱἛἼὸ ჿʶίἉἷἁἉἵỉᆔὸ ᎹᝃᔊίἝἁἌἁὸ ᰄϋίἝὁἚἼỉᏎᐏὸ ᒝίἻỶἓὸ ᇕაᎹίἼἷỸỾὅἝἁὸ పίỸἳὸ పίỸἳửẲềẟẺཋὸ ከᕽίἉἏὸ ᒵӬίἡἋỉᓶὸ ᓳᔅίἧἊἜὸ 傜喯㣻ίἋἫἼἤἸὸ ဃۃίἉἹỸỾὸ ႝίἝἕỿὸ ݱᒥᬐίỸỶỿἷỸὸ ᢷபʶίἝὁỸἳώἅỸἳỉᆔὸ ɠᬐίἓἹỸἊὸ ᒢᑿίἨἁἼἹỸὸ ᰾ίỿἷỸἼὸ эίἪἓἰὸ ឭίἉἿỸἼὸ ᓖᓔίἭỸἾὅἏỸὸ ᑹᓔίἍἿἼὸ ᪤ᓔίἝἻὸ ⲙᔙίἉἷὅἀἁὸ ᩷ᮄίỴỼỸỼὸ ᕋᮄίἃἀἹὸ ᮄίἉἻỸỼὸ ᩑᮄίἻỶἀἹὸ ᣒίἇἃὸ ᣫίἉἹỸἸὸ ᣖίἋὸ ႉⱀίἺἿỶἂἇὸ ᖻᗆίἡἓἱὸ ခʶίỴὊἴὅἛὸ ಜ܇ίỽἶỉܱὸ ఒʶίἴἴỉᆔὸ పίỸἳὸ ᓳᔅίἧἊἜὸ 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および塩分濃度の測定結果 ⑵ 透過率の測定結果 各加熱方法におけるチキンスープの時間別 pH および 各加熱方法におけるチキンスープの時間別透過率を表 塩分濃度を表5に示した。 5に示した。30分、60分、90分120分の透過率は、ガ 30分、60分、90分120分の pH は、ガス加熱で6.82、 ス 加 熱 で46.94 %、37.14 %、37.34 %、28.42 % で あ 6.80、6.79、6.79で あ り、IH 加 熱 で6.84、6.85、 り、IH 加熱では48.58%、42.36%、29.57%、15.22% 6.82、6.80であった。加熱時間に伴い変化がなかった。 であった。加熱時間に伴い減少しており、2試料間有意 30分、60分、90分120分の塩分濃度は、ガス加熱で 差は認められなかった。 0.10 %、0.14 %、0.18 %、0.22 % で あ り、IH 加 熱 で ⑶ 遊離アミノ酸の測定結果 0.11%、0.13%、0.18%、0.23%であった。加熱時間 各加熱方法におけるチキンスープの時間別アミノ酸 表5.各加熱方法におけるチキンスープの時間別 pH、塩分濃度、透過率 ᶎᵦ ỾἋь༏ طЎຜࡇᵆήᵇ ᵧᵦь༏ ᾿͌ ỾἋь༏ ᵧᵦь༏ ᡢᢅྙίήὸ ᾿͌ ỾἋь༏ ᵧᵦь༏ ᾿͌ ᵑᵎЎ ᵔᵌᵖᵐᶠᵎᵌᵎᵔ ᵔᵌᵖᵒᶠᵎᵌᵎᵐ ᵎᵌᵔᵖ ᵎᵌᵏᵎᶠᵎᵌᵎᵏ ᵎᵌᵏᵏᶠᵎᵌᵎᾀ ᵎᵌᵓᵔ ᵒᵔᵌᵗᵒᶠᵐᵌᵑᵔ ᵒᵖᵌᵓᵖᶠᵖᵌᵑᵗ ᵎᵌᵗᵏ ᵔᵎЎ ᵔᵌᵖᵎᶠᵎᵌᵎᵔ ᵔᵌᵖᵓᶠᵎᵌᵎᵓ ᵎᵌᵑᵔ ᵎᵌᵏᵒᶠᵎᵌᵎᵏ ᵎᵌᵏᵑᶠᵎᵌᵎᵎ ᵎᵌᵏᵗ ᵑᵕᵌᵏᵒᶠᵒᵌᵑᵕ ᵒᵐᵌᵑᵔᶠᵕᵌᵏᵖ ᵎᵌᵒᵏ ᵗᵎЎ ᵔᵌᵕᵗᶠᵎᵌᵎᵓ ᵔᵌᵖᵐᶠᵎᵌᵎᵓ ᵎᵌᵒᵐ ᵎᵌᵏᵖᶠᵎᵌᵎᵏ ᵎᵌᵏᵖᶠᵎᵌᵎᾀ ᵎᵌᵖᵖ ᵑᵕᵌᵑᵒᶠᵗᵌᵎᵎ ᵐᵗᵌᵓᵕᶠᵑᵌᵗᵏ ᵎᵌᵓᵐ ᵏᵐᵎЎ ᵔᵌᵕᵗᶠᵎᵌᵎᵔ ᵔᵌᵖᵎᶠᵎᵌᵎᵓ ᵎᵌᵖᵎ ᵎᵌᵐᵐᶠᵎᵌᵎᵏ ᵎᵌᵐᵑᶠᵎᵌᵎᵐ ᵎᵌᵒᵎ ᵐᵖᵌᵒᵐᶠᵗᵌᵕᵕ ᵏᵓᵌᵐᵐᶠᵒᵌᵒᵎ ᵎᵌᵐᵖ ͌רᶠแ͞ࠀ ᶌᵛᵔ 表6.各加熱方法におけるチキンスープの時間別アミノ酸含有量 −40− 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 表7.各加熱方法におけるチキンスープの時間別呈味アミノ酸含有量 含有量を表6に示した。チキンスープ中にはグルタミ 表8.各加熱方法におけるチキンスープの時間別核酸関 連物質含有量 ン酸やアルギニンが多く含まれ、各アミノ酸は、ガス 加熱、IH 加熱において加熱時間に伴い上昇傾向があっ た。120分ガス加熱、IH 加熱で100ml 中、アスパラギ ン 酸(Asp) は3.71mg、5.19mg で あ り、 ア ル ギ ニ ン (Arg)は10.31mg、13.95mg であり、1%の危険率で IH 加熱が有意に高い値を示した。グルタミン酸(Glu) は9.69mg、14.13mg で あ り、 ヒ ス チ ジ ン(His) は 2.26mg、3.16mg であり、プロリン(Pro)は3.64mg、 5.64mg で あ り、 シ ス テ イ ン(Cys-Cys)0.13mg、 0.21mg であり、5%の危険率で IH 加熱が有意に高い 値を示した。 主な遊離アミノ酸を呈味別に分類し、各加熱方法に ロリン(Pro)スレオニン(Thr)の多い順に含まれた。 おけるチキンスープの時間別呈味アミノ酸含有量を表 苦味アミノ酸については、時間別ガス加熱、IH 加熱と 7に示した。酸味・うま味アミノ酸(Glu、Asp) 、甘味 もにアルギニン(Arg)の占める割合が多く、次にリシ アミノ酸(Ala、Ser、Gly、Thr、Pro)と苦味アミノ酸 ン(Lys)の順であった。 (Lys、Arg、Leu、Val、Tyr、IIe、His、Phe、Met) に ⑷ 核酸関連物質の測定結果 分類した。酸味・うま味アミノ酸については、時間別 各加熱方法におけるチキンスープの時間別核酸関連物 ガス加熱、IH 加熱ともにグルタミン酸(Glu)の占める 質の含有量を表8に示した。イノシン酸とグアニル酸の 割合が多く、甘味アミノ酸については、90分ガス加熱、 含有量は、ガス加熱、IH 加熱において、30分、60分、 IH 加熱において、グリシン(Gly) 、アラニン(Ala)、 90分、120分のイノシン酸含有量は100ml 中5.73mg、 セリン(Ser) 、プロリン(Pro)スレオニン(Thr)の 6.87mg、8.30mg、10.83mg であり、IH 加熱において、 順に多く含まれた。120分ガス加熱、IH 加熱において、 共に加熱時間に伴い上昇傾向があったが、時間別で、各 ア ラ ニ ン(Ala)、 グ リ シ ン(Gly) 、 セ リ ン(Ser)、 プ 加熱方法において、いずれも有意な差が認められなかっ −41− 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 Kramer䛾᳨ᐃ ᵟ ᵠ ᵡ ᵢ ᵆỾἋᵔᵎЎᵇ ᵆᵧᵦ ᵔᵎЎᵇ ᵆỾἋᵗᵎЎᵇ ᵆᵧᵦᴾᵗᵎЎᵇ ӳᚘໜ ᵔᵎ ᵒᵗ ᵑᵕ ᵓᵒ ˮ ᵒ ᵐ ᵏ ᵑ 㡯᳨ᐃ ᾃᚾ૰᧓ൔ᠋ίᵟẆᵠẆᵡẆᵢὸ ᾁᚾ૰᧓ൔ᠋ίᵟẆᵡὸ ⥲ྜホ౯ 䛖䜎 㻞 㻝 㻜 㻙㻝 㻙㻞 ㏱᫂ᗘ ⥲ྜホ౯ 䠆 ⏑ ⱞ ᾁᚾ૰᧓ൔ᠋ίᵡẆᵢὸ 㤶䜚 㤶䜚 㤶䜚 㓟 䛖䜎䠆䠆 㻞 㻝 㻜 㻙㻝 㻙㻞 ㏱᫂ᗘ ⥲ྜホ౯ 䠆䠆 䠆 䠆 ⱞ ⏑ 䛖䜎䠆䠆 㻞 㻝 㻜 㻙㻝 㻙㻞 ⱞ 㓟 ㏱᫂ᗘ ⏑ 㓟 ṲᵟίỾἋᵔᵎЎὸ ṲᵠίᵧᵦᵔᵎЎὸ ṲᵡίỾἋᵗᵎЎὸ ṲίᵧᵦᵗᵎЎὸ ό᾿ᾋᵎᵌᵎᵓ όό᾿ᾋᵎᵌᵎᵏ 図1.各加熱方法によりチキンスープの官能検査結果(n =20) 表9.各加熱方法におけるチキンスープの嗜好調査 た。 ⑸ チキンスープの官能評価 各加熱方法におけるチキンスープの官能評価について 図1に示した。まず、順位法の Kramer の検定より4試 料間においてガス90分加熱が5%の危険率で有意に優 れていると示唆された。しかしケンドールの順位相関係 数では0.143であった。次に Freedman の検定より4試 料間に有意差が認められたので、二項検定を行った結 果、ガス60分と90分加熱の間に、またガスと IH の90 分加熱の間において有意差が認められた。 5点評点法の結果を対応のある平均値の差の検定を用 いて表9に示した。透明度および甘味については、ガス 60分と90分加熱の間に有意差が認められ、うま味およ び総合評価はガス60分と90分加熱の間、ガスと IH の 表10.各加熱方法における薬膳チキンスープ 90分加熱の間に有意差が認められた。 の pH、塩分濃度、におい濃度、透過率1) 3.薬膳チキンスープの調理特性 ⑴ pH および塩分濃度の測定結果 薬膳チキンスープの pH および塩分濃度を表10に示 した。pH は、ガス加熱6.07±0.04、IH 加熱6.06±0.03 であった。塩分濃度は、ガス加熱0.76±0.10、IH 加熱 0.71±0.10であった。いずれも2試料間に有意差は認 められなかった。 ⑵ におい濃度および透過率の測定結果 薬膳チキンスープのにおい濃度および透過率を表10 に示した。におい濃度は、ガス加熱219±36、IH 加熱 233±30であり、2試料間に有意差は認められなかっ た。透過率は、ガス加熱57.19±6.77%、IH 加熱64.36 −42− 㻡㻣㻚㻝㻥㼼㻢㻚㻣㻣 㻢㻠㻚㻟㻢㼼㻟㻚㻞㻡 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 表11.各加熱方法における薬膳チキンスープのアミノ酸含有量 ±3.25%であり、ガス加熱に比べ IH 加熱の方が透過率 は有意に高い数値を示した。 ⑶ 遊離アミノ酸の測定結果 薬膳チキンスープの遊離アミノ酸含有量を表11に示 䛾᳨ᐃ した。総アミノ酸含有量は100ml 中、ガス加熱161.37 ±15.45mg、IH 加 熱157.94±15.64mg で あ り、 2 試 料間に有意差は認められなかった。薬膳チキンスープ のアミノ酸含有量の上位5つは、ガス加熱及び IH 加熱 と も に100ml 中、 ヒ ス チ ジ ン(His)34.93±3.08mg、 35.95±2.86mg、グルタミン酸(Glu)31.33±2.36mg、 㡯᳨ᐃ 29.89±1.77mg、アルギニン酸(Arg)21.53±1.84mg、 21.54±2.22mg、アスパラギン酸(Asp)17.14±2.73mg、 16.64 ± 2.80mg、 ア ラ ニ ン(Ala)9.50 ± 0.64mg、 9.81±0.91mg であった。いずれのアミノ酸においても、 2試料間に有意差は認められなかった。 0.88 䠆 䠆䠆 䠆 主な遊離アミノ酸を3群に分類し、図2に示した。A 群は酸味・うま味アミノ酸(Glu、Asp) 、B群は甘味ア 表12.各加熱方法における薬膳チキンスープの核酸関連物質含有量 䠆 ミノ酸(Ala、Ser、Gly、Thr、Pro) 、C群は苦味アミノ ᵆᶋᶅᵍᵏᵎᵎᶋᶊᵇ 䠆䠆 䠆䠆 酸(Lys、Arg、Leu、Val、Tyr、Ile、His、Phe、Met) ỾἋь༏ ᵧᵦь༏ ᵮ͌ ỶἠἉὅᣠ ᵆᵧᵫᵮᵇ ᵏᵗᵌᵑᵖᶠᵎᵌᵗᵏ ᵏᵖᵌᵐᵖᶠᵐᵌᵎᵐ ᵎᵌᵑᵎ ἂỴἝἽᣠᵆᵥᵫᵮᵇ ᵎᵌᵐᵖᶠᵎᵌᵎᵑ ᵎᵌᵐᵓᶠᵎᵌᵎᵐ ᵎᵌᵏᵐ ᵏᵗᵌᵔᵔᶠᵗᵌᵓᵓ ᵏᵖᵌᵓᵐᶠᵗᵌᵎᵐ ᵎᵌᵕᵗ とした。酸味・うま味アミノ酸については、ガス加熱、 IH 加熱ともにグルタミン酸(Glu)の占める割合が多 く、甘味アミノ酸については、ガス加熱、IH 加熱にお いて、アラニン(Ala)、 グリシン(Gly) 、スレオニン (Thr)、セリン(Ser) 、プロリン(Pro)が同様に含ま ӳᚘ れた。苦味アミノ酸については、ガス加熱、IH 加熱と ᵆᵲᶍᶒᵿᶊᵇ もにヒスチジン(His)の占める割合が多く、次にアル ͌רᶠแ͞ࠀ ギニン(Arg)の順であった。 ᶌᵛᵔ ᵟ፭ᾉᣠԛẆạộԛỴἱἠᣠίᵥᶊᶓᵊᵟᶑᶎὸ ỾἋь༏ ᵥᶊᶓ ᵧᵦь༏ ᩓᄬᛔݰь༏ ᵟᶑᶎ ᵥᶊᶓ ᵎ ᵟᶑᶎ ᵏᵎ ᵐᵎ ᵑᵎ ᵒᵎ ᵓᵎ ᵔᵎ ᵕᵎ ᵖᵎ ᵗᵎ ᶋᶅᵍᵏᵎᵎᶋᶊ ᵠ፭ᾉԛỴἱἠᣠίᵟᶊᵿᵊᵱᶃᶐᵊᵥᶊᶗᵊᵲᶆᶐᵊᵮᶐᶍὸ ỾἋь༏ ᵟᶊᵿ ᵥᶊᶗ ᵲᶆᶐ ᵱᶃᶐ ᵮᶐᶍ ᩓᄬᛔݰь ᵧᵦь༏ ༏ ᵟᶊᵿ ᵥᶊᶗ ᵲᶆᶐ ᵱᶃᶐ ᵮᶐᶍ ᵎ ᵏᵎ ᵐᵎ ᵑᵎ ᵒᵎ ᵓᵎ ᵔᵎ ᵕᵎ ᵖᵎ ᵗᵎ ᶋᶅᵍᵏᵎᵎᶋᶊ ᵡ፭ᾉᒊԛỴἱἠᣠίᵪᶗᶑᵊᵟᶐᶅᵊᵪᶃᶓᵊᵴᵿΆᵊᵲᶗᶐᵊᵧᶊᶃᵊᵦᶇᶑᵊᵮᶆᶃᵊᵫᶃᶒὸ ỾἋь༏ ᵪᶗᶑ ᩓᄬᛔݰь༏ ᵧᵦь༏ ᵪᶗᶑ ᵎ ᵟᶐᶅ ᵪᶃᶓ ᵴᵿΆ ᵲᶗᶐ ᵧᶊᶃ ᵟᶐᶅ ᵏᵎ ᵪᶃᶓ ᵴᵿΆ ᵲᶗᶐ ᵧᶊᶃ ᵐᵎ ᵑᵎ ᵒᵎ ᵮᶆᶃ㻹㼑㼠 ᵦᶇᶑ ᵮᶆᶃ㻹㼑㼠 ᵦᶇᶑ ᵓᵎ ᵔᵎ ᵕᵎ ᵖᵎ 図2.各加熱方法における薬膳チキンスープの呈味アミノ酸含有量 −43− ᵗᵎ ᶋᶅᵍᵏᵎᵎᶋᶊ 薬膳科学研究所研究紀要 第7号 ⑷ 核酸関連物質の測定結果 2.チキンスープの調理特性 薬膳チキンスープの核酸関連物質の含有量を表12に 橘らの先行研究よりチキンスープは加熱時間に伴う呈 示した。薬膳チキンスープの核酸関連物質の含有量は 味成分の抽出が60分加熱が好ましいと報告されている 100ml 中、ガス加熱と IH 加熱において、イノシン酸 が、本研究では、同一加熱条件で、ガス加熱、IH 加熱 (IMP) は19.38±0.91mg、18.28±2.02mg で あ り、 を用い、60分と90分加熱したチキンスープの4試料に グ ア ニ ル 酸(GMP) は0.28±0.03mg、0.25±0.02mg おいて、アミノ酸、核酸の含有量は有意差が認められな と微量であり、2試料間に有意差は認められなかった。 かった。しかし、嗜好型官能評価をした結果で、嗜好的 ⑸ 薬膳チキンスープの官能評価 にガス90分加熱が最も好まれ、次に IH 加熱60分が好ま 薬膳チキンスープの官能評価において、香り、透明 れた。 度、甘味、酸味、苦味、うま味、総合評価についての 3.薬膳チキンスープの調理特性 評点結果を表11に示した。香りの評点について、ガス ガス加熱、IH 加熱を用い、熱量を同一に調製し、加 加熱1.00±0.92、IH 加熱1.13±0.85であった。透明度 熱時間を90分とした薬膳チキンスープの呈味成分を定 の評点は、ガス加熱0.53±0.70、IH 加熱0.73±0.99を 量し、嗜好調査を行い、比較検討した。pH、塩分濃度、 得た。ガス加熱に比べ IH 加熱が、香りで若干高い評点 におい濃度は、2試料間で有意差は認められなかった。 を得たが、透明度では有意に低い評点を得た。うま味で このことより、同一熱量で、ガス加熱と IH 加熱が調理 は、 ガ ス 加 熱1.07±0.92、IH 加 熱0.53±0.88で あ り、 特性に及ぼす影響がないと考えられた。 IH 加熱に比べガス加熱の方が有意に高い評点を得た。 薬膳チキンスープのアミノ酸含有量の上位は、ガス加 総合評価でもガス加熱の方が高い評点を得たが、2試料 熱及び IH 加熱ともにヒスチジン(His)、グルタミン酸 間に有意な差が認められなかった。 (Glu)、アルギニン酸(Arg) 、アスパラギン酸(Asp) Ⅳ.考察 であった。昆布の遊離アミノ酸組成ではグルタミン酸 1.中医学を基本とした薬膳食材の整理 (Glu)は約55%と最も多いと報告されており13)、ま 中医学の基礎理論では、脾・胃は「後天の本」と言 た、かつお節には、ヒスチジン(His)が多く含まれて われ、健康を維持・増進させるためには脾・胃が重要 いると報告されており14)、昆布とかつお節の添加によ 3) であり 、五性による分類で、平性が35.8%と一番高い り、薬膳チキンスープには、ヒスチジン(His)とグル 値を示した。温性が33.8%、同様な性質の少し強い熱 タミン酸(Glu)が多く含まれていることと関連がある 性が4.6%であり、合計すると38.4%であった。寒性で と考えられた。 は11.9%、同様な性質の少し弱い涼性が13.9%であり、 薬膳チキンスープの総アミノ酸含有量は100ml 中、 合計すると25.8%であった。これらの結果より、体を ガス加熱161.37±15.45mg、IH 加熱157.94±15.64mg 温める食材、冷やす食材、その中庸の食材ともそれぞれ であり、市販されているアミノ酸飲料は100ml 中、ア 3分の1ずつを占めていた。次に陰陽五行説によると、 ミノ酸含有量は200∼400mg であるため、今後、薬膳 五味のうち、甘味は脾・胃の働きを調節するとあるが、 チキンスープはアミノ酸飲料として、高齢者が口から美 本研究でも五味のうち、甘味が全体の61.7%を占めて 味しく食べられる調理品と期待できると考えられる。 おり、甘味は脾・胃の働きを調節、消化吸収機能と関係 ガス加熱及び IH 加熱で調製した薬膳チキンスープに が深いことが示唆された。 ついて、5点評点法を用い、パネルである中村学園大学 栄養科の助手と学生の15名に嗜好調査を実施した。7 表13.各加熱方法における薬膳チキンスープの官能評価 1) 項目のうち、うま味の項目については、ガス加熱が有意 に高い評点を得られたが、他の項目については、有意差 Ⴘ ỾἋь༏ ᵧᵦь༏ ᵮ͌ ᬐụ ᵏᵌᵎᵎᶠᵎᵌᵗᵐ ᵏᵌᵏᵑᶠᵎᵌᵖᵓ ᵎᵌᵔᵖ ᡢଢࡇ ᵎᵌᵓᵑᶠᵎᵌᵕᵎ ᵎᵌᵕᵑᶠᵎᵌᵗᵗ ᵎᵌᵓᵕ ԛ ᵎᵌᵔᵕᶠᵎᵌᵕᵒ ᵎᵌᵒᵕᶠᵏᵌᵐᵖ ᵎᵌᵔᵏ 熱されるため、加熱原理の違いと関連があるのではない ᣠԛ ᵎᵌᵐᵕᶠᵎᵌᵔᵒ ᵎᵌᵒᵕᶠᵏᵌᵏᵏ ᵎᵌᵒᵗ かと考えられる。今後、加熱特性についても研究を進め ᒊԛ ᵎᵌᵎᵕᶠᵎᵌᵖᵑ ᵎᵌᵒᵎᶠᵏᵌᵐᵐ ᵎᵌᵑᵑ ていきたい。 ạộԛ ᵏᵌᵎᵕᶠᵎᵌᵗᵐ ᵎᵌᵓᵑᶠᵎᵌᵖᵖ ᵚᵎᵌᵎᵓ Ⅴ.要約 ዮӳᚸ̖ ᵏᵌᵎᵎᶠᵎᵌᵗᵒ ᵎᵌᵖᵎᶠᵎᵌᵖᵓ ᵎᵌᵓᵓ {Ϳ फẟᵛᵋᵐẆởởफẟᵛᵋᵏẆ୍ᡫᵛᵎẆởởᑣẟᵛᵏẆᑣẟᵛᵐỉᵓെ᨞ỂໜẲẺ͌רᶠแ͞ࠀ ᶌᵛᵏᵓ は認められなかった。このことから、嗜好はうま味の相 乗効果などが関与していると考えられる。ガス加熱は鍋 全体を均一に加熱し、IH 加熱は鍋底のみが発熱して加 本研究は、未利用食品である鶏がらを有効利用し、高 齢者の健康に寄与する中国の中医学基礎理論に基づいた 薬膳食材を取り入れたチキンスープを、家庭で実用でき −44− 加熱方法が薬膳チキンスープの食味と呈味成分に及ぼす影響 ることを目的に、加熱方法を変えて調整し、食味と呈味 参考文献 成分について検討した。 中医学基礎理論で、薬膳食材を五味で分類すると、本 甘味が全体の61.7%を占めていた。甘味の食材は脾・ 1)国立社会保障 ・ 人口問題研究所 : 日本の将来推計人口(平 胃の働きを調節し、消化吸収機能と関係が深いことと報 成18年12月推計) 告されているが、薬膳食材は脾・胃と関係の深いことが 2)Izawa S, Kuzuya M, Okada K, Enoki H, Koike T, Kanda S, 明らかになった。本研究の薬膳スープには、薬膳食材 etal: The nutritional status of frail elderly with care needs で、脾胃に関わりの深い生姜、白葱、昆布を選択し、さ according to the mini-nutritonal assessment, Clin Nutr 25, らに、かつお節を取り入れて、薬膳スープを調製するこ 962-967(2006) とができた。 3)Kato, H. and Nishimura, T. Taste componenents and ガス加熱及び IH 加熱を用い、同一熱量で90分加熱 Conditioning of Beef, Pork, and Chichen, Umami: A した薬膳チキンスープの呈味成分の総アミノ酸含有 BasicTaste Kawamura, M. and Morley, R. K., Ed., Marcel 量 は100ml 中、 ガ ス 加 熱161.37±15.45mg、IH 加 熱 Dekker, Inc., New York, 289-306(1987) 157.94±15.64mg であり、有意な差は認められなかっ 4) 馬 渡 一 徳: ア ミ ノ 酸 の 生 理 機 能,Ajico News,206, たが、嗜好調査のうま味の項目において、IH 加熱に比 べガス加熱が有意に好まれた。 呈味成分のイノシン酸や 23-28(2002) 5)小林久峰:高齢者の骨格筋減弱(サルコぺニア)の対策と グルタミン酸は単独よりも合せて使うとうま味が約7倍 15) 強く得られると Yamaguchi らの報告 もあり、本研究 アミノ酸,化学と生物,45,126-131(2007) 6)徳井教孝,三成由美,張再良,郭忻:薬膳と中医学,建帛 においても成分の相乗効果によるものと考えられるた 社,2-53(2003) め、今後も更に研究を進めたい。これからは、チキン 7)黄帝内経:春秋戦国時代(B.C475年∼221年) スープをベースに、中医学的機能のある薬膳食材を加 8)神農本草経:南朝(A.D439年∼586年) え、個々人に対応し、アミノ酸リッチで美味な薬膳チキ 9)施杞:中国食療大全,上海科学技術出版社(1996) ンスープを開発していきたいと考えている。 10)譚興貴:中医薬膳学,中国中医薬出版社(2003) 11)上海科学技術出版社小学館(株):中薬大辞典(上編・下 謝 辞 編・附編)(1998) 12)日科技連官能検査委員会:新版 官能検査ハンドブック, この研究にあたり、アミノ酸および核酸の分析におい てご指導・ご協力いただきました福岡県工業技術セン 日科技連出版社(1973) 13)木村友子,菅原達幸,福谷洋子,佐々木弘子:昆布出し ター生物研究所赤尾哲之所長、黒田恵理子様、上田京子 汁の浸水法に及ぼす超音波照射の影響,日本家政学会誌, 様に深く感謝申し上げます。 47,453-460(1996) 官能評価にご協力いただきました、中村学園大学職員 14)山崎吉郎:鰹節および煮干しだし汁中の呈味成分の比較, また学生の皆様に深謝いたします。 日本家政学会誌,45,41-45(1994) 15)Yamaguchi S.: The Synergistic Taste Effect of Monosodium Glutamate and Disodium 5′ -Inosinate, J. Food. Sci, 32, 473478(1967) −45− 中村学園大学薬膳科学研究所紀要刊行規程 第1条 中村学園大学薬膳科学研究所(以下「本研究所」という)は、研究成果を発表するため、研究所紀要を刊行する。 第2条 研究紀要は中村学園大学薬膳科学研究所紀要と称し、英文名は Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University とする。 第3条 研究論文の研究紀要への投稿者は、研究所運営委員、研究所員および編集委員会が認めた者とする。 第4条 研究所紀要刊行のため、分子栄養学部門、栄養疫学部門、生体応答部門、開発・教育部門の各部門長より構成 する編集委員会を置く。 第5条 編集委員会の委員長は研究所長とする。 第6条 投稿する論文の査読は各部門で行い、査読責任者は部門長とする。 第7条 論文の採択は編集委員会が承認する。 附則 この規程は、平成20年3月1日より施行する。 中村学園大学薬膳科学(PAMD)研究所 研究紀要投稿規程 1.雑誌名:中村学園大学 薬膳科学研究所紀要 英語名:Proceedings of PAMD Institute of Nakamura Gakuen University 2.投稿は査読制とする。査読は各部門長によって行う。 3.原稿はA4サイズ(297mm 210mm)に,パソコンのワープロソフトで作成する。 4.原稿の上下に20mm,左右に25mm の余白をとり,英文原稿の設定は1行約70文字,縦40行,和文原稿の設定は 1行約37文字,縦40行を基本とする。文字サイズは英文・和文ともに12ポイントを基準とする。 5.図表・グラフ等は Microsoft® PowerPoint® にレイアウトする。 6.原稿は,注・参考文献・グラフ・図表・数表等を含めてページの限度はありません。 7.研究紀要は次の種類によって構成する。 ① オリジナル論文:要旨,目的,実験方法,結果及び考察,引用文献で構成する。 オリジナルは他雑誌に投稿したものでも良いが,その場合著作権(通常投稿した雑誌社にあります)に注意して ください。 ② レビュー論文:要旨,本文で構成する。但し,引用文献は50報以上とする。 ③ パーセプティブ論文:要旨,本文で構成する。主題の論文は本文中でも構わない。 8.論文の構成は,①論文題目・②氏名・③所属機関・④要約・⑤キーワード・⑤本文[⒜目的 ⒝方法 ⒞結果及び 考察]・⑥参考文献の順序とする。 ① 論文題目:原稿の1ページ目の最初に,論文題目を書くこと。和文原稿の場合は,日本語と英語の論文題目の順 にそれぞれ記入すること。 ② 氏 名:和文原稿の場合は,日本語表記の下にローマ字表記も添えること。執筆者が2名までの場合は,10 行目までに入るようにフォントサイズを調整すること。タイトルが長い場合や執筆者が2名を越える場合は,これ に準じる。 ③ 所属機関:第1の所属機関は「中村学園大学 薬膳科学研究所∼部門,英文名:Department of ∼,Institute of Preventive and Medicinal Dietetics, Nakamura Gakuen University」とする。和文原稿の場合は英語を添え,所属機 関名はイタリック体で記入すること。 ④ 要 約:所属機関から行送りして見出しを付ける。要約は,英文とする。 ⑤ キーワード:要約の次の行にキーワードを3つから5つ程度,論文の使用言語で入れる。 ⑥ 本 文:キーワードから行送りして本文を書き始めること。和文原稿の場合,句読点・カギ括弧(「 」)など は1文字に数える。各セクションのタイトルはゴシック体を用い,センタリングするとともに,前後に1行の空白 を設けること。 ⑦ 参考文献の書式:Corma, A. Inorganic solid acids and their use in acid-catalyzed hydrocarbon reactions. Chem. Rev. 95, 559‒614 (1995). Nature 誌 に準拠していること。 −47− 中村学園大学薬膳科学研究所 研究紀要 第7号 平成26年9月11日 印刷 平成26年9月17日 発行 発 行 所 中村学園大学薬膳科学研究所 〒814-0198 福岡市城南区別府5丁目7番1号 TEL(092)851-2531番 印 刷 所 株式会社 津村愛文堂 TEL(092)821-0173番
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