こちら - ネスレ ヘルシーキッズ プログラム

2011年10月5日(金)17:00~19:00
都市センターホテル 内 コスモスホール
一般社団法人ニュートリション運動推進会議
子どもの健康づくり委員会
2012年10月5日、第34回日本臨床栄養学会総会、第33回日本臨床栄養協会総会の第10回大
連合大会において、ニュートリション運動推進会議子どもの健康づくり委員会とネスレ日本株式
会社の主催によりサテライトシンポジウムが開催されました。
『だいじょうぶ?日本の食育、子どもの健康』のテーマのもと、世界の子どもの健康データや健
康課題、子どもの食や健康教育の事例から、日本の次世代の食や健康づくりの課題とその解決
のめの食育や健康教育のあり方が語り合われました。当日は、多数の教育・学校関係の方々が
ご参加くださいました。
◆開催概要
日
会
主
時:2011年10月5日(金)17:00~19:00
場:都市センターホテル 内 コスモスホール(3F)
催:一般社団法人ニュートリション運動推進会議 子どもの健康づくり委員会、
ネスレ日本株式会社
共 催:第34回日本臨床栄養学会総会、第33回日本臨床栄養協会総会、
第10回大連合大会
後 援:公益社団法人日本栄養士会、公益財団法人日本学校保健会、全国養護教諭連絡協議会
参 加 者:120名
教育関係者(小学校栄養教諭・栄養職員、養護教諭)、地域の食育推進者、
日本臨床栄養学会・協会会員 94名、メディア関係者 9名、その他 17名
◆プログラム
〔プログラム1〕「世界の子どもの健康・食育調査」についての発表
古畑 公(一般社団法人ニュートリション運動推進会議 子どもの健康づくり委員会代表理事)
〔プログラム2〕 「グローバル企業ネスレ ~子どもの健康へのとりくみ~」
村本 正昭(ネスレ日本株式会社 執行役員 パブリックアフェアーズ統括部長)
〔プログラム3〕 パネルディスカッション:「次世代の健康を守るために」
朝山 光太郎(東京家政学院大学現代生活学部健康栄養学科教授、小児科医)
篠宮 正樹(西船内科院長、千葉県医師会生活習慣病対策支援委員会委員長、
NPO小象の会理事長)
中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学学長、日本栄養士会名誉会長)
田中 延子(淑徳大学看護栄養学部客員教授、前文部科学省学校給食調査官)
会場前ホワイエにて、「ネスレ ヘルシーキッズ プログラム」紹介、教材等の展示
◆基調講演「世界の子どもの健康・食育教育調査」について
古畑 公(一般社団法人ニュートリション運動推進会議 子どもの健康づくり委員会代表理事、
和洋女子大学家政学群教授・第33回日本臨床栄養協会会長)
「一般社団法人ニュートリション運動推進会議 子どもの健康づくり委員会」は、心身ともに豊
かな子供の成長サポートを目的に立ち上げられた専門家の会で、現在ネスレヘルシーキッズプ
ログラムのパートナーとして、日本でのプログラムの展開を推進しております。
今回、世界の子どもの健康データをまとめ、その上で日本の子どもたちの健康状態や状況を
他国と比較して健康課題を抽出しようと、ネスレヘルシーキッズプログラムを展開している世界
各国に調査協力を依頼しました。アメリカ・オーストラリア・ロシア・中国・ブラジル・など7カ国の
データが収集でき、文部科学省、厚生労働省などの専門家にも協力を得て、分析を進めていま
す。
まず法律からみると日本の食育基本法、こういったものは他の国にはありません。さらにわが
国の学校給食法、学校栄養教諭制度など他国と比べても素晴らしいものではないかと思われま
す。また運動面に関しても文部科学省から幼児期の運動指針が発表されており、小学校向けの
運動指針も作成中と聞きます。こういった子ども運動指針はアメリカやオーストラリアにもありま
すが、どの国でも子どもたちの運動量が不足しているが現状です。
次に食事ですが、多くの国で朝食を食べていないという問題点が指摘されています。またアメ
リカでの食事の習慣と肥満やドラッグの使用との相関性も注目に値しますし、オーストラリアの
小学校のカリキュラムで、健康的な習慣の維持をいかに実践につなげる工夫をしていくかといっ
た取り組みも大いに参考になると思われます。
これらのデータや報告がこれからの子どもの健康づくりに役立つよう、多くの教育関係に方々
が活用してくださることを願っています。
◆「~グローバル企業ネスレ~子どもの健康へのとりくみ」
村本 正昭(ネスレ日本株式会社執行役員 パブリックフェアーズ統括部長)
ネスレは、1866年にスイスでアンリ・ネスレが乳児用のシリアルの販売で創業し、現在、売上高7兆
4600億円の世界最大の食品企業に成長しました。ネスレには、長期的な視野に立ち「社会と株主の
双方に共通価値を創造する」「短期的に無理をして急成長することを考えるのでなく、堅実な経営を
し、すべてのステークスホルダーから信頼される企業を目指す」「世界をリードする栄養、健康、ウエ
ルネス企業を目指す」の3つの基本的な考え方があります。食品を製造販売するプロセスの中で社
会問題を解決する、つまり社会とネスレの双方にとって価値をつくり出すことがネスレのCSV「共通価
値の創造」の考え方で、世界共通のビジネスの基本戦略です。食品企業として、栄養を考え将来の
ウェルネスを感じる生活への貢献が最重要であり、これが子どもの健康支援への取り組みにもつな
がっています。
「ネスレ ヘルシーキッズ グローバル プログラム」はネスレがビジネスを展開するすべての国で政
府・省庁・団体などと協働し、それぞれの子どもが抱える健康問題に応じた子どもたちの健康なから
だづくりや改善を目的として、2001年から始まりました。現在、世界の60か国で65プログラムが展開
され、600万人を超える子どもたちに対して教育プログラムを支援しています。
発展途上国、新興国の子どもの健康課題は肥満、絶対的な食糧不足や栄養不良、運動不足、衛
生上の問題、さらには正しい栄養に関する知識不足、理解不足です。先進国では子どもの肥満、偏
食(新型の栄養失調)、屋外活動の不足が問題であり、栄養と運動の重要性の理解不足もあげられ
ます。このように各国の子どもの健康課題は共通点、相違点があり、同一のプログラムでは解決でき
ませんので、プログラムは各国のニーズに合わせた開発が重要となります。
日本の子どもの健康課題は、栄養面では新型の栄養失調(微量栄養素の不足)や小学校の高学
年女子の痩せ願望があげられます。一方で運動する子としない子の二極化や遊ぶ機会や経験の欠
如が問題となっています。そのため「たくさん動いてしっかり食べて元気なからだをつくる」意識づけ
が必要ではないかと考えております。そこで、「自分のからだは自分でつくる」をテーマに、栄養と運
動を組み合わせたプログラムを一般社団法人ニュートリション運動推進会議 子どもの健康づくり委
員会の協力を得まして、展開しております。
2010年のトライアルを経て、2011年度から本格的始動し、全国の小学校でプログラムが実施されて
います。栄養テキストを開発、配布するとともに、栄養知識とリンクした「ヘルシーキッズ鬼ごっこ」を
開発し、からだを動かすこともあわせて提唱しております。ウエブサイトでは、プログラムの紹介や教
材の受付をしております。2011年は、東北の被災県もふくめて47都道府県の小学校1200校以上から
お申し込みがあり、12万部以上のテキストを無料提供いたしました。2012年度からは、新たに小学校
高学年用テキストを開発し9月現在で1300校を超え、低学年用テキスト約17万、高学年用15万を無
料提供いたしました。
ネスレは、ただ単に製品を販売するというだけではなく、食品企業として健康な子どもたち、これか
ら大人になっていく子どもたちに真に健康であって欲しいと願っています。その願いから、「ネスレ ヘ
ルシーキッズ プログラム」の取り組みを世界中でコミットメントしています。このような企業の姿勢、活
動をご理解いただき、テキストをご活用、プログラムを実施していただければ、ネスレとしても貢献で
きてたいへん嬉しく思います。
◆パネルディスカッション
「次世代の健康を守るために」
講演1 小児科医の立場から
「日本人小児の肥満症・メタボリックシンドロームをどう見るか」
朝山光太郎(東京家政学院大学現代生活学部健康栄養学科教授・小児科医)
小児科医として25年以上小児肥満の研究をしてきましたが、今日、小児肥満の問題は子ども
を見ているだけでは解決しないという状況になっていると思われます。子どもの肥満といっても
いろいろなタイプがあり、内臓脂肪の蓄積によって代謝異常(血液などの異常)が生じる者とそう
でない者とがいます。そのために小児肥満症の診断基準をスコア化して医学的介入の必要な肥
満とそうでない肥満を分けています。わが国で小児メタボリックシッドロームに該当するのは一般
の子どもの1~2%で、欧米と比べてけして多くはありません。小児肥満の一つのピークが12歳と
いうことで、その年齢のデータをとっていますがここ数年、肥満児は減少傾向にあり、逆に僅か
ですがやせが増加の傾向にあります。
また日本人の基準からみると欧米人の60%以上は肥満であり、かつ欧米では両親とも肥満だ
と子どもの80%が肥満になるというデータがあります。これは遺伝的な問題ではなく、肥満とジャ
ンクフードがリンクしており、ジャンクフードは貧困とリンクしているが故に貧困な親から貧困な子、
すなわち肥満の親から肥満の子、という図式が描かれています。
またアメリカの報告では、大人のメタボリックシンドロームの68%程度が小児期に端を発してい
るというデータがありますが、日本の場合、子どもの頃からの継続は17%弱(6人に1人)程度で
状況はいささか異なっています。
わが国の問題はむしろ若年成人にあり、男性の場合、20歳代で肥満が確実に増加します。社
会人になったと同時に長時間労働、長時問通勤により食事が夜遅くなる、かつ運動不足といっ
た生活パターンとなり、その結果40歳以降になると半数以上がメタボリックシンドロームまたはそ
の予備軍になるといわれます。一方、若年女性の肥満は5%程度で25%近くは痩せている。にも
かかわらず、普通の体型の人ですら半分以上がダイエットをしているという現状。最近、低体重
児の増加が問題となっていますが、新生児の体重が減少する程、女性が痩せているということ
だと思います。このように著しく異なる両親のボディイメージのなかでの子どもの成長を考えたと
き、単なる肥満や痩せといった面ばかりでなく、栄養に関して何か新たな問題が起こりつつある
のではないかという印象を持たざるをえません。
講演2 内科医の立場から「人間という奇跡を子どもたちに伝えよう」
篠宮 正樹(西船内科院長・千葉県医師会生活習慣病対策支援委員会委員長・
NPO小象の会理事長)
私は、小中学校に出向いて、人間の身体と心の素晴らしさを話しています。その場でわかるよ
うな錯覚などを用いて、人間の脳は、網膜に映る像をそのままではなく、周囲の状況によってう
まく判断して見ているという、素晴らしい働きをしているのだと話しています。だから、道の角から
自転車の車輪が見えただけで、自転車全体を見る前に「あ、自転車が来る」と思い、身構えるこ
とができるなどで危険を回避できるのです。
大阪医大の田中英高先生によれば、中学生の心身健康調査で日本とスウェーデンを比較す
ると、日本の中学生は「よく死にたいと思う」とか「しばしばカッとする」などネガティブな回答がス
ウェーデンの2倍も3倍あるのです。逆に「自分に良いところがある」「家族は私のことを分かって
くれる」などのポジティブな回答はスウェーデンの半分位でした。日本の子ども達の自尊感情が
低いことを知り、私共はこの活動を始めたのです。自尊感情が低くて、「自分がつまらない、自分
の生きている意味がわからない」と思っていたら、「自分の健康を守ろう、病気を予防しよう」とい
う気にはならないでしょう。それ故、身体の不思議さを説いて、自分たちは素晴らしい身体と心を
持って生まれてきたことを実感して貰おうというわけです。このような講話をすると、子ども達は
「人間に生まれてきて良かった。だから身体を大切にしよう」と実際に思ってくれます。
千葉県の調査で「早寝・早起き・朝ご飯」を守れている人ほど、「肥満度が低い、野菜が好き、
ファストフードを食べることが少ない」ことに加え、「学校に行くのが楽しい」とか、「自分に良いと
ころがあると思える」という自尊感情も高いことが分かりました。つまり生活習慣の良い子どもほ
ど自尊感情が高く、健康に対する意識も高かったのです。このような啓発を子どもだけでなく、親
も一緒に、地域ぐるみで行うことが必要だと思います。ほかの動物ではなく、人間として生まれて
きたからには、人間の素晴らしい能力に気づいてほしいと思います。
身体や心や生まれてきたことの不思議さ、さらには世の中には素晴らしいことが沢山あること
を理解してもらうことが、出発点になると思います。
講演3 栄養学の立場から「次世代の健康を守るために」
中村丁次(神奈川県立保健福祉大学学長・日本栄養士会名誉会長)
次世代の健康を守るために最も重要なことは、子どもたちに栄養に関する正しい知識を植え
付けて、それに基づいた食習慣が根付くように教育することです。わが国は栄養教育や栄養指
導が世界の中でも最も進んでいる国です。したがって栄養知識は普及しているのですが、本当
に正しい栄養学が伝わっているかどうか、そして、その栄養学が正しく使われているかどうか、こ
の2点が問題となります。
栄養素というのは生命に不可欠なもので、不足すると欠乏症を起こして最後は死に至るという
のが特徴です。栄養学は生命に不可欠な成分としての栄養素を発見し、食物中に栄養素となる
成分を見出し、健康状態を維持・増進できる栄養状態を科学的に明らかにしたものです。近代栄
養学が偉大なる科学になりえた理由は、人間のからだの中にも存在し食物中にも存在する共通
項としての栄養素を発見し、食品の中からそれを分析・抽出したところにあります。これらの栄養
素は食べさえすればよいのではなく、消化吸収されなければからだの中で利用されることはあり
ません。口腔からはじまり、腸管の壁を通過し、血中から細胞壁を通過してはじめて利用される
のです。これは栄養学の第一歩です。
21世紀になり、栄養問題は複雑化し、多様化しています。世界中に低栄養や過剰栄養に悩ん
でいる子どもたちが大勢いますが、わが国でも戦後の低栄養、その後の過剰栄養を経て、現在
は中高年の過剰栄養による肥満と生活習慣病が増加する中で、若年女子と高齢者、さらに病人
が低栄養となり、問題となっています。各種の健康食品や健康法に関する情報も過剰で、多くの
人々が混乱状態に陥っているといっても過言ではないでしょう。
世界中に同様の現象が起こっており、国際的にはWHOの提唱によりDBM(Double Burden
Malnutrition)と呼ばれています。同じ地球に、同じ国に、同じ地域に、同じ家族に低栄養と過剰
栄養が混在しているという概念です。このような状態は子どもにも現れ、肥満児と食の細い痩せ
とが共存し、同様に健康に対するリスクとなっています。このような時こそ、非科学的で不確かな
情報に惑わされることなく、栄養学の持つ科学としての原理・原則を踏み外さないような教育を
子どもたちにしていく必要があります。栄養学を正しく普及して、人々の健康と幸せに活用する。
このことが次世代の健康を守るためのキーワードになると考えています。
講演4 学校健康教育の立場から「学校における食育の推進」
田中 延子(淑徳大学看護栄養学部客員教授・前文部科学省学校給食調査官)
「食」に関する指導については、学校関係者の方々はご存じの通り、食に関する指導の手引き
において「食事の重要性」「心身の健康」「食品を選ぶ力」「感謝の心」「社会性」「食文化」の6つ
の目標を掲げ、子どもたち自身がこれらを実践する能力を身に付けられるような取り組みが推
進されています。
文部科学省は食育の推進のための法的整備として、まず平成16年に栄養教諭制度を創設。
20年3 月には学習指導要領に「食育の推進」を明記、同年6月には学校給食法を改正し、法の
目的を食生活の改善から食育の推進に変えました。指導の中心となる栄養教諭の職務内容は
「食に関する指導の連携・調整」「児童生徒への教育指導」「児童生徒への個別的な相談指導」
「給食の管理」などで、24年4月現在、全国に4,325名が配置されています。学習指導要領に関し
ては総則に「食育の推進」という言葉を載せ、学校の教育活動全体を通じて行うということが明
記されました。体育科、家庭科、特別活動のみならず学校の教育活動全体を通じて、体系的・継
続的な実施に意味があることをご理解いただきたいと思います。そして従来の知育、徳育、体育
に食育を加えて、生きる力を育み、人格の完成につなげるという構造になりました。
次に児童生徒の「食」に関する現状はどうでしょう。状況はあまり良いとはいえません。小学生
を例にとると、一人で朝食を摂っている、いわゆる孤食は平成17年の14.8%から19年には11.4%
と若干改善されたものの、最近のデータでは15.3%とまた増加しています。これは中学生におい
ても夕食においても同様な傾向がみられます。もうひとつはエネルギーの摂収不足です。中学
生の女子のエネルギー不足の割合が顕著となります。また運動に関しても中学生の女子で週5
日以上している子どもが増えてくる反面、まったく運動しないという者も増えて、二極化していま
す。
このようなデータから見ますと、どうも食育に陰りが見えてきているように思われます。それは
学校の食育の低下ではなく、家庭の保護者の方々の意識が低下しているのではないか、食育と
いうブームから若干熱が冷めているのではないかというのが私の感想です。さらに不安な点は、
冒頭で述べた6つの目標に迫るのではなく、米さえ食べさせていればよい、地産地消で食育は
完結する、味覚教育こそ食育、こういった偏った食育を多々見かけることです。食育は望ましい
食習慣の形成にとどまらず、望ましい生活習慣の形成につながらなければ意味がありません。
単発的な食に関する指導ではなく、計画性・継続性を重視して行っていくことが大切です。生活
習慣の出来上がった大人を変えていくのは非常に難しいことですが、まだ生活習慣が確立され
ていない子どもたちをしっかり教育することによって、その子どもたちが、大人になり、自分の子
どもへ、更に次の世代へと繋げることで、日本の未来は明るくなると期待しています。